金属製のパイプ部材に対する溝の加工装置
【課題】切粉の発生する切削によらず、また、芯金をパイプ部材の径内に挿置することによらず、パイプ部材の外周の偏平度(真円度)を保って溝の縁部におけるダレの発生を抑え、所定形状の溝をパイプ部材の軸線に対して直交する方向に簡単な機構で正確に付形可能な溝の加工装置を提供する。
【解決手段】
溝付形時にパイプ部材Pがセットされる治具3と、所定形状の溝を付形するのに相応しい輪郭形状を有する突条歯1aを備えたローラ1と、ローラ1が支持されたローラホルダー1dと、治具3にセットされたパイプ部材Pの軸線に対して直交する方向よりローラ1の突条歯1aをパイプ部材Pに摺接させるべくローラホルダー1dを移動させるための動力手段2と、ローラホルダー1dの移動と同期してローラ1を回転させるための駆動手段20とを有する。
【解決手段】
溝付形時にパイプ部材Pがセットされる治具3と、所定形状の溝を付形するのに相応しい輪郭形状を有する突条歯1aを備えたローラ1と、ローラ1が支持されたローラホルダー1dと、治具3にセットされたパイプ部材Pの軸線に対して直交する方向よりローラ1の突条歯1aをパイプ部材Pに摺接させるべくローラホルダー1dを移動させるための動力手段2と、ローラホルダー1dの移動と同期してローラ1を回転させるための駆動手段20とを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製のパイプ部材を治具にセットし、そのパイプ部材の所定部位をパイプ部材の軸線と交差する方向から押圧陥入させて所定形状の溝をパイプ部材に付形する、パイプ部材に対する溝の加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用のヘッドレストステーを金属製のパイプ部材から形成する場合を例示して説明すると、その製品は、図17で示すように金属製のパイプ部材をコの字状に軸曲げすると共に、ヘッドレスト高さ調整用のレの字状を呈する1〜6個程度のフリー溝g1と、ヘッドレスト抜外れ防止用のコの字状を呈する1または2個程度のストッパ溝g2とを、コの字状に軸線曲げしたパイプ部材の片縦軸部の所定部位をその片縦軸部の軸線と交差する方向へ窪ませて付形することによりヘッドレストステーとして完成される。このヘッドレストステーがヘッドレストに立て付け装備された状態では、溝g1,g2にラチエット爪が離脱自在に係止されることによりヘッドレストステーは任意の高さに維持される。
【0003】
これらの溝をパイプ部材に付形するのに、切削刃によるブローチまたはスライス加工を適用すると、所定形状の溝を容易に形成できるが、切粉が発生すると共に、パイプ部材を傷付け易くなるばかりでなく、パイプ部材の削取りはパイプ部材の剛性の低下を招いてしまう。
【0004】
パイプ部材に対する溝の付形には、先端側を溝形状に合わせて曲面形に形成したポンチ(特許文献1)、先端側を溝形状に合わせて楔形状に形成した成形刃(特許文献2)をパイプ部材の軸線と直交する方向からパイプ部材に下降動させて溝をプレス成形し、また、先端側を溝形状に合わせて斜めに面取りしたパンチ(特許文献3)をパイプ部材の軸線に対して斜め方向からパイプ部材に下降動させて溝をプレス成形することが提案されている。
【0005】
そのプレス加工では、パンチによる圧力をパイプ部材の軸線に対して交差する方向から加えてパイプ部材の所定部位を径内方向へ押し込む押圧力により溝を成形するため、パンチによる圧力が溝の縁部にまで作用し、パイプ部材の外周の偏平度(真円度)を大きく変えてしまって、大きなダレが溝の縁部に生じてしまう。
【0006】
そのプレス成形のみによる以外、パンチを回動させながら刃先をパイプ部材の軸線と直交する方向から圧接させて溝の予備成形を行った後、プレスポンチによるシェービング加工によりパイプ部材の所定部位を削り取ることが提案されている(特許文献4)。
【0007】
その溝の加工装置では、パンチを回動させながらパイプ部材の軸線に対して直交方向へ移動させて刃先をパイプ部材に圧接させるものであるため、所定形状の溝を付形するに必要なパンチの回動と移動とを適度に合わせるのが難しい。また、異なる工具を個別に作動させて溝を形成するものであるから、プレスポンチを予備成形溝の形状に合わせて正確に作動することが難しく、パイプ部材の所定部位の削取りによる切粉が発生し、パイプ部材の剛性の低下も免れ得ない。
【0008】
上述したプレス成形と併用し、溝形状に相応する切欠を軸線上に設けた芯金をパイプ部材の径内に挿置することも提案されている(特許文献5)。
【0009】
その芯金を併用する場合、芯金の出入れに著しく手間が掛かるため、製品の生産性に劣ると共に、パイプ部材の上述した外周の偏平度(真円度)の変化乃至は成形断面のダレが生じて満足し得る溝を付形できない。
【0010】
その他に、エピサイクロイド機構と球継手による揺動運動をスピンドルに起させ、スピンドルの先端に取り付けた所定の溝形状に相応する先端形状を有する成形具により、溝をスエージング加工でパイプ部材に付形することも提案されている(特許文献6)。
【0011】
そのスエージング加工では、プレス成形と比べれば、成形具がパイプ部材の所定部位を所定の溝形状にまで徐々に陥入させるよう作用するため、溝の縁回りに生ずるダレの発生を抑えられる。然し、エピサイクロイド機構が機構的に複雑で高価なものであるところから、製品コストが嵩む。
【特許文献1】特開2001−239340号
【特許文献2】特開2001−18014号
【特許文献3】特開2002−204733号
【特許文献4】特開2002−210519号
【特許文献5】特開2002−120022号
【特許文献6】特開2000−51957号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は、切粉の発生する切削によらず、また、芯金をパイプ部材の径内に挿置することによらず、パイプ部材の外周の偏平度(真円度)を保って溝の縁部におけるダレの発生を抑え、所定形状の溝をパイプ部材の所定部位に簡単な機構で正確に付形可能な溝の加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、溝付形時にパイプ部材がセットされる治具と、所定形状の溝を付形するのに相応しい輪郭形状を有する突条歯を円周面に備えたローラと、前記ローラがローラ軸で軸承支持されたローラホルダーと、前記ローラの前記突条歯を前記治具にセットされた前記パイプ部材の軸線に対して直交する方向より摺接させるべく前記ローラホルダーを移動させるための動力手段と、前記ローラホルダーの移動と同期して前記ローラを回転させるための駆動手段とを備えた、金属製パイプ部材に対する溝の加工装置としたことを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記ローラを複数並列的に並べて前記ローラホルダーに軸承支持し、それら複数のローラで前記パイプ部材に対して前記所定形状を有する複数の溝を同時付形できるようにしたことを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記治具が、ローラホルダーが移動自在に受け入れられるゲートを有していることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明は、溝付形時にパイプ部材がセットされる治具と、所定形状の溝に形状的に近づく溝を前記パイプ部材に段階的に付形して最終的に前記所定形状の最終溝を付形する形状の互いに異なった突条歯を円周面に夫々備えた複数のローラと、前記複数のローラが支持されたローラホルダーと、前記複数のローラの前記突条歯を前記治具にセットされた前記パイプ部材の軸線に対して直交する方向より摺接させるべく前記ローラホルダーを移動させるための動力手段と、前記ローラホルダーの移動と同期して前記複数のローラを回転させるための駆動手段とを備え、前記複数のローラが、前記最終溝よりも浅くて狭幅のV字溝を付形する突条歯を円周面に備えた先頭ローラと、前記V字溝から溝幅,深さを徐々に増加させて前記最終溝の前記所定形状に近い中間溝を付形する歯形状の異なる突条歯を円周面に夫々備えた複数の中間ローラと、前記中間溝から前記所定形状の最終溝を付形する突条歯を円周面に設けた最後尾ローラとを含み、前記先頭ローラと前記複数の中間ローラと前記最後尾ローラーとを順次直列的に並べて前記ローラホルダーに前記ローラ軸で軸承支持し、前記先頭ローラ及び中間ローラで段階的に溝を形成し、前記最後尾ローラで前記最終溝を付形するようにしたことを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の構成に加え、前記最終溝の所定形状が略レの字状であって、前記複数の中間ローラーが、前記先頭ローラによって付形された前記V字溝の溝口側を深く付形する突条歯を円周面に備えた第一の中間ローラと、前記第一の中間ローラーによって付形された溝口側の広い前記V字溝の溝奥側を扁平面とすると共に、溝口側の広い前記V字溝の片斜面を垂直面とし且つ溝口側の広い前記V字溝の他斜面を溝奥より緩やかな上り勾配の傾斜面として付形する突条歯を円周面に備えた第二の中間ローラと、前記第二の中間ローラによって付形された溝をその溝の深さ,扁平面の幅及び傾斜面の長さが最終溝のそれらと近づくまで付形する突条歯を円周面に備えた第三の中間ローラとを含み、前記最後尾ローラの円周面に設けられた前記突条歯が前記第三の中間ローラによって付形された形状の溝から前記略レの字形状の最終溝を付形するのに相応しい輪郭形状を有し、前記先頭ローラと前記複数の中間ローラと前記最後尾ローラーとを順次直列的に並べて前記ローラホルダーに前記ローラ軸で軸承支持してなるローラ列で段階的に前記略レの字状の最終溝を付形するようにしたことを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の構成に加え、前記最終溝の所定形状が略コの字状であって、前記複数の中間ローラーが、前記先頭ローラによって付形された前記V字溝の溝口側を深く付形する突条歯を円周面に備えた第一の中間ローラと、前記第一の中間ローラーによって付形された溝口側の広い前記V字溝の溝奥側を扁平面に付形する突条歯を円周面に備えた第二の中間ローラと、前記第二の中間ローラによって付形された溝をその溝奥側の深さ及び扁平面の幅を最終溝のそれらと近づくまで付形する突条歯を円周面に備えた第三の中間ローラとを含み、前記最後尾ローラの円周面に設けられた前記突条歯が、前記第三の中間ローラによって付形された形状の溝から前記略コの字形状の最終溝を付形するのに相応しい輪郭形状を有し、前記先頭ローラと前記複数の中間ローラと前記最後尾ローラーとを順次直列的に並べて前記ローラホルダーに前記ローラ軸で軸承支持してなるローラ列で段階的に前記略コの字状の最終溝を付形するようにしたことを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項5及び6に記載の構成に加え、請求項5に記載のローラ列と、請求項6に記載のローラ列とを相平行に整列させて備え、そのローラ列を複数の異なる溝の同時成形手段として備え付けたことを特徴とする。
【0020】
請求項8に記載の発明は、請求項4〜7のいずれかに記載の構成に加え、前記治具が、前記ローラホルダーが移動自在に受け入れられるゲートを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の発明に依れば、所定の溝形状に相応する輪郭形状を有する突条歯を円周面に備えたローラを軸承支持したローラホルダーをパイプ部材の軸線に向けて直交方向より移動させることに同期してローラを回転移動させて、その回転移動するローラの突条歯で溝をフォーミング成形するものであるため、突条歯による圧力を溝の付形部分に集中させてパイプ部材の外周の変形を抑え、溝を所定形状へと進行させて付形することができるから、外周の偏平度(真円度)を保ち、溝の縁部におけるダレのない所定形状の溝を正確に付形することができる。
【0022】
それに加えて、上述したようにローラを支持したローラホルダーをパイプ部材の軸線に向けて移動させることにより、ローラの突条歯で溝をフォーミング成形するものであるため、所定形状の溝を簡単な機構で容易に形成できると共に、固定刃のような消耗工具の損耗によるランニングコスト高も防げる。
【0023】
請求項2に記載の発明に依れば、所定の溝形状に相応する輪郭形状を有する突条歯を円周面に設けたローラを複数並列的に並べてローラホルダーに軸承支持し、それら複数のローラでパイプ部材に対して所定形状を有する複数の溝を同時付形できるようにしたため、上述したと同様に、溝の縁部に生ずるダレの発生を抑えて所定形状の溝を簡単な機構で容易に付形でき、また、ランニングのコスト高も防げると共に、必要とされる複数の溝を一工程で付形できて製品の生産性を効率よく高めることができる。
【0024】
請求項3に記載の発明に依れば、セット治具がローラホルダーを移動自在に受け入れるゲートを有しているため、ローラホルダーを安定よく移動ガイドさせることができると共に、ローラの突条歯がパイプ部材の所定部位に食い込むことに伴う逃げの発生を防げ、所定の加圧力を保ってパイプ部材の所定部位を押圧陥入させることができるから、溝形状を所望通りに形成できる。
【0025】
請求項4に記載の発明に依れば、先頭ローラで細いV字溝を成形し、そのV字溝を複数の中間ローラで幅方向,深さ方向に押し広げる圧力を順次作用させることにより、溝形状を所定の溝形状に徐々に近付けるよう付形するため、ローラの突条歯による圧力を溝の付形部分に確実に集中させ、溝を所定形状にまで徐々に進行させて付形することができ、パイプ部材の外周の変形を抑えられると共に、溝の縁部に生ずるダレの発生を抑えて所定形状の溝として一層正確に付形できる。
【0026】
請求項5に記載の発明に依れば、先頭ローラで細いV字溝を成形し、そのV字溝を複数の中間ローラで所定のレの字形に徐々に近付けるよう順次付形するため、ローラの突条歯による圧力を溝の付形部分に確実に集中させ、溝を所定のレの字形にまで徐々に進行させて付形することができ、パイプ部材の外周の変形を抑えられると共に、溝の縁部に生ずるダレの発生を抑えてレの字溝を正確に付形できる。
【0027】
請求項6に記載の発明に依れば、先頭ローラで細いV字溝を成形し、そのV字溝を複数の中間ローラで所定のコの字形に徐々に近付けるよう順次付形するため、ローラの突条歯による圧力を溝の付形部分に確実に集中させ、溝を所定のコの字形にまで徐々に進行させて付形することができ、パイプ部材の外周の変形を抑えられると共に、溝の縁部に生ずるダレの発生を抑えてコの字溝を正確に付形できる。
【0028】
請求項7に記載の発明に依れば、請求項5に記載のローラ列と、請求項6に記載のローラ列とをパイプ部材の軸線上に形状の異なる複数の溝を同時付形する手段として備え付けたので、ヘッドレストステーにおけるようにレの字溝並びにコの字溝が共に必要とされるものに対しては、溝加工を一工程で行えて製品の生産性を効率よく高めることができる。
【0029】
請求項8に記載の発明に依れば、請求項4〜7に記載の発明において、パイプ部材をセットする治具が、ローラホルダーが移動自在に受け入れられるゲートを有するものであるため、複数のローラを支持したローラホルダーでも安定よく移動ガイドさせることができると共に、各ローラの突条歯がパイプ部材の所定部位に食い込むことに伴う逃げの発生を防げ、所定の加圧力を保ってパイプ部材の所定部位を押圧陥入させることができるから、複数の溝でも所望通りに形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
発明を実施するための最良の形態としては、図1〜図9で示すように一つのローラで所定形状の溝を金属製のパイプ部材に付形するものと、図10〜図16で示すように複数の直列的に配置されたローラで所定形状に近づく溝を順次段階的に付形して、最終的に所定形状の溝を金属製のパイプ部材に付形するものとを挙げることができる。
【0031】
そのいずれの形態も、一つのローラ又は複数のローラに基づいて説明するが、一つのローラを複数並列的に並べまたは複数の直列的に並ぶローラを複数相平行に並べて複数溝の同時付形手段として構成することもできる。ローラとしては、合金工具鋼製(JIS規格:SKD11、HRC58±1.0)又は超硬合金製のローラを備え付けることができる。
【0032】
図1は、一つのローラ1による溝の加工装置を示す。この装置全体は、所定の溝形状に相応する輪郭形状を有する突条歯1aを円周面1bに備えたローラ1と、ローラ1がローラ軸1cで軸承支持されたローラホルダー1dと、被成形材である金属製パイプ部材Pが溝付形時に位置決め保持される治具3と、治具3にセットされたパイプ部材Pの軸線に対して直交する方向よりローラ1の突条歯1aを摺接させるべくローラホルダー1dを移動させるための動力手段2と、ローラホルダー1dの移動と同期してローラ1を回転させるための駆動手段20とを有している。この加工装置としては、複数の直列的に並ぶローラによるものも同様に構成することができる。
【0033】
ローラ1としてレの字状の溝を形成するローラを例示して説明すると、そのローラは、図2で示すように略中央の有幅な起立面からテーパ状を呈する断面略台形のリング面となる外郭形状の突条歯1aを円周面1bに備えている。その形状中、起立面の立上り高さhはレの字溝の深さに相当し、平坦な突端幅wはレの字溝の底に相当し、リング面の傾斜角θはレの字溝の傾斜面に相当するよう形成されている。このローラ1の直径φは、円周面1bがパイプ部材Pの軸線に対して直交する方向から摺接することができる大きさに形成されている。
【0034】
ローラ1は、図1及び図3に示したように、ローラ側面に開孔する中心孔と緊密に嵌り合うローラ軸1cで軸承すると共に、このローラ軸1cを断面略逆凹状のローラホルダー1dの側部間に掛渡し固定することによりローラホルダー1dに支持されている。ローラ軸1cの一端部はローラホルダー1dの片側の側部を貫通し、その貫通したローラ軸1cの先端部には、後述する駆動手段20のピニオン22が装着されている。ローラホルダー1dは、ローラ1の突条歯1aが下部開放側から一部露出された状態でローラ1を内部に収容している。
【0035】
ローラホルダー1dの後端側には動力手段2が連結され、この動力手段2により、ローラ1の突条歯1aを治具3にセットされたパイプ部材Pの軸線に対して直交する方向より摺接させるようにローラホルダー1dが水平に移動させられる。動力手段2としては、サーボ駆動機構又は油圧サーボ駆動機構等を用いることができる。
【0036】
セット治具3には、ローラ1が支持されたローラホルダー1dが移動自在に受け入れられるゲート3aが内部に貫通するよう設けられている。このゲート3aは、ローラホルダー1dの天部面がゲート3aの上部面と摺接し、ローラホルダー1dの片側部でローラ軸1cによって支持されたピニオン22がゲート3aの側面と摺接せず、また、ローラホルダー1dの下部より露出した突条歯1aの一部もゲート3aの底面と摺接しない大きさの略四辺形の空洞状に形成されている。また、パイプ部材Pを挿通する軸受け孔3bがゲート3aと交差する方向に設けられている。その軸受け孔3bは、溝が付形されるパイプ部材Pの所定部位をゲート3aの空洞内に露出させる形状に形成されている。
【0037】
ローラホルダー1dの移動と同期してローラ1を回転させるための駆動手段20は、上述したようにローラホルダー1dの片側部を貫通したローラ軸1cの先端部に装着されたピニオン22と、セット治具3のゲート3aの片側部内面に取り付けられてその片側部に沿って水平に延びた長尺なラック24とを有している。ローラ軸1cに取り付けられたピニオン22の歯22aは、ラック24の歯24aと噛合している。セット治具3にセットされたパイプ部材Pに向かってローラホルダー1dが動力手段2によって移動させられた時に、ピニオン22がラック24と噛合しつつラック24に沿って回転することによりローラ1が回転するようになっている。
【0038】
このように構成する溝の加工装置では、パイプ部材Pをセット治具3の軸受け孔3bに挿通させて位置決め保持した後、ロール1が支持されたローラホルダー1dをパイプ部材Pの軸線に向けて動力手段2で直交方向より移動させて、ラック24に沿ったピニオン22の回転によりロール1を同期回転させることにより、ローラホルダー1dの下部より部分的に露出する突条歯1でパイプ部材Pの軸線と交差する方向に所定形状の溝を付形することができる。
【0039】
ローラ1を支持したローラホルダー1dが、図4で示すように治具3のゲート3a内を移動する際にローラホルダー1dの天部面がゲート3aの上部面に摺接するので、ローラ1をゲート3a内で水平に移動ガイドできる。また、ローラ1の突条歯1aがパイプ部材Pの軸線と交差する方向へ食い込むに伴う逃げの発生を防げるため、所定の加圧力を保ってパイプ部材Pの軸線と交差する方向にパイプ部材Pの所定部位を押圧陥入できるから溝形状を所望通りに付形することができる。
【0040】
その溝の付形にあたっては、図5aで示すように突条歯1aの突端面がパイプ部材Pの周面にパイプ部材Pの軸線と交差する方向から当接することにより浅い領域の溝を突端幅w(図2参照)で窪ませ、ローラ1が更に回転移動し、ローラ1の中心とパイプ部材Pの中心とが図5bに示したように一直線上で一致した状態となった時に、起立面の立上り高さh(図2参照)による深さ、平坦な突端幅w(図2参照)による底、リング面の傾斜角θ(図2参照)による傾斜面を深い領域の溝として付形する。
【0041】
ローラ1の中心とパイプ部材Pの中心とが一直線上で一致した状態に達すると、図5cで示すようにレの字の深い領域に相当する溝を付形しながら、ローラ1の円周面1bがパイプ部材Pの所定部位にパイプ部材Pの軸線と交差する方向から摺接することにより外周の偏平度(真円度)を保つ。ローラ1が回転しつつパイプ部材Pの軸線を最終的に通過すると、浅い領域の溝を突端幅wで窪ませることにより、図5dで示したように所定形状のレの字溝を付形することができる。
【0042】
ローラ1は、ローラホルダー1dの移動に伴って回転しつつパイプ部材Pの軸線と交差する方向から摺接すると共に、突条歯1aによる圧力を溝の付形部分に集中させてパイプ部材Pの外周の変形を抑えつつ、溝を所定形状へと進行させて形成する。このため、図6で示すようにパイプ部材Pの外周の偏平度(真円度)を保ちつつ、溝の縁部eにおけるダレのない所定形状の溝g1として正確に付形することができる。
【0043】
パイプ部材に所定形状の溝を付形してヘッドレストステーを製造する場合には、パイプ部材としては、肉厚:1.3〜2.0mm,直径:13mm程度の高張力合金でなるシームレスパイプ部材又は電縫パイプ部材を用いることができる。この金属製のパイプ部材に対しては、ダレを0〜0.5mm以内、外周の偏平度を0.05mm以内(真円度:±0.03mm程度)に抑え、深さ:1.5〜2.5mm、最肉薄部:0.6mm以上の溝を設けるようにできる。
【0044】
ローラホルダー1dの移動と同期してローラ1を回転させるための駆動手段20としては、ピニオン22とラック24との組合わせの代わりに、図7に示したように、ピニオン22と、ローラホルダー1dに取り付けたモーター30の回転軸に装着された第二のピニオン30aと、これら第一のピニオン22と第二のピニオン30aとの間に懸架されたチェーン26との組合わせを採用することができる。モータ30はローラホルダー1dの側面に取り付けられ、その回転軸はローラホルダー1dを横方向に貫通し、その回転軸の先端に第二のピニオン30aが装着されている。この場合には、ローラホルダ1dの移動に同期してモータ30の回転軸を回転させることにより、ローラホルダー1dの移動と同期してローラ1を回転させることができ、ピニオン22とラック24との組合わせの場合と同様の作動をもってローラ1を回転させて、所定形状の溝をパイプ部材に付形させることができる。
【0045】
上述した以外に、図8を参照して、ローラとしてコの字状の溝を付形するローラ1’を例示して説明すると、このローラ1’は略中央の有幅な突端面から両側の起立面を呈する外郭形状の突条歯1a’を円周面1b’に備えている。この形状中、起立面の立上り高さh’はコの字溝の深さに相当し、平坦な突端幅w’はコの字溝の底に相当するよう形成されている。このローラ1’の直径φ’も、円周面1b’がパイプ部材Pの軸線と交差する方向から摺接可能な大きさに形成されている。
【0046】
このローラ1’によっては、図9で示すようなコの字溝g2をパイプ部材の軸線と交差する方向へダレを発生させることなく付形することができる。このコの字溝g2であっても、上述した肉厚,直径のパイプ部材に付形すると、ローラ1で溝を付形した場合と同様に、パイプ部材の外周の偏平度(真円度)、溝の深さ、最肉薄部を保つ溝として設けるようにできる。
【0047】
ローラホルダー1dに複数のローラを直列的に配置した実施の形態においてレの字溝を付形するものを例示すると、このローラ列は、図10で示したように、円周面10bの中央部より立ちあがったV字状の突条歯10aを備えた先頭ローラ10と、同様に円周面11bの中央部より立ちあがったV字状の突状歯11aを備えた第一の中間ローラ11と、略中央の有幅な起立面から片側方のテーパ状を呈する断面略台形のリング面となる突条歯12a,13aを円周面12b,13bに備えた第二及び第三の中間ローラ12,13と、略中央の有幅な起立面から片側方のテーパ状を呈する断面略台形のリング面となる突条歯14aを円周面14bに備えた最後尾ローラ14とを有している。尚、図中、符号10c〜14cはローラ10〜14のローラ軸を示す。こられローラ軸10c〜14cのローラホルダー1dの側部より外方へ突出した先端部には、夫々ピニオン22が装着され、これらピニオン22は、長尺なラック24と噛合している。また、このラック24は、図示していないセット治具のゲート内側面に取り付けられている。
【0048】
ローラ10〜14は、ローラ列の移動方向Xに向かってV字状の突条歯10aを設けた先頭ローラ10を先頭に配置し、中間ローラ11〜13として所定のレの字溝に徐々に近付く互いに異なった形状の突条歯11a〜13aを備えたものを先頭ローラ10の後方に整列配置し、最後尾のローラ14として所定のレの字溝と略同じ形状の突条歯14aを備えたものが第三の中間ローラ13の後方に整列配置されている。
【0049】
ローラ10〜13としては、図11並びに図12で示すように円周面10b〜13bがパイプ部材の軸線に対して直交する方向より摺接しない同じ直径φ1〜φ4を有するものが備え付けられている。これに対し、最後尾のローラ14としては円周面14bがパイプ部材の軸線に対して直交する方向より摺接可能な大きい直径φ5<φ1〜φ4を有するものが配列されている。
【0050】
ローラ10,11に設けられるV字状の突条歯10a,11aを比較すると、先頭ローラ10の突状歯10aは、第一の中間ローラ11の突条歯11aの基部幅w2よりも狭い基部幅w1を有し、且つ、これら突状歯10a,11aの立上り高さはh1=h2,突端の曲部面はr1=r2となっている。
【0051】
ローラ12〜14に設けられる略中央の有幅な起立面からテーパ状を呈するリング面となる断面略台形の突条歯12a〜14aを比較すると、ローラ12〜14の順に、起立面の平坦な突端幅がw3<w4<w5と徐々に広くなり、且つ、リング面の傾斜角がθ1>θ2>θ3と徐々に小さくなっている。
【0052】
図13で示すように、先頭ローラ10で付形されたV字溝g10を第一の中間ローラ11でV字溝g10の溝口側を広くした溝g11として付形し、次に、第二の中間ローラ12で溝口側の広いV字溝g11の溝奥側を扁平面とする溝に付形し、且つ、V字溝gの片斜面を垂直面とすると共に、V字溝の他斜面を溝奥より緩やかな上り勾配の傾斜面とする溝g12として付形し、更に、第三の中間ローラ13で溝奥側の深さ,扁平幅並びに傾斜面の長さを所定形状近くの溝g13にまで付形するように、段階的に溝形状を所定の溝形状に徐々に近付けてから、最終的に、所定形状近くの溝形状を最後尾のローラ14で所定形状の溝g14にまで付形することができる。
【0053】
ローラ10〜14は、ローラホルダー1dの移動に同期して回転させられるものであるので、先頭ローラ10から中間ローラ11,12,13及び最後尾ローラ14がパイプ部材Pの軸線と直交する方向から摺接すると共に、各突条歯10a〜14aによる圧力を溝の付形部分に集中させてパイプ部材の外周の変形を抑えつつ、溝を所定形状へと進行させて形成するため、パイプ部材の外周の偏平度(真円度)を保ち、溝の縁部におけるダレのない所定形状の溝g14としてレの字溝を一層正確に形成することができる。
【0054】
コの字状の溝を付形する場合、図14並びに図15で示すような異なる形状の突条歯10a’〜14a’を備えたローラ10’〜14’がローラホルダーに整列配置される。ローラ10’〜13’としては、円周面10b’〜13b’がパイプ部材の軸線に対して直交する方向から摺接しない同じ直径φ1’〜φ4’を有するものが備え付けられている。最後尾ローラ14’としては、円周面14b’がパイプ部材の軸線と直交する方向から摺接する大きな直径φ5<φ1〜φ4を有するものが備え付けられている。
【0055】
ローラ10’,11’に設けられるV字状の突条歯10a’,11a’を比較すると、レの字溝を設ける場合と同様に、先頭ローラ10’の突状歯10a’の基部幅w1’は第一の中間ローラ11’の突条歯11a’の基部幅w2’よりも狭くなっており、且つ、これら突状歯10a’,11a’における立上り高さはh1’=h2’,突端の曲部面はr1’=r2’となっている。
【0056】
ローラ12’〜14’に設けられる略コ形の突条歯12a’〜14a’を比較すると、ローラ12’〜14’の順に、突端幅がw3’
<w4’ <w5’と徐々に広くなり、且つ、突端の平坦幅がr3’
<r4‘<r5‘と徐々に広くなる突条歯12a’〜14a’が設けられている。
【0057】
図16で示すように、先頭ローラ10’で付形したV字溝g10’を第一の中間ローラ11’の突条歯11a’でV字溝g10’の溝口側を広く付形した溝g11’にし、次に、第二及び第三の中間ローラ12’,13’の突条歯12a’,13a’で溝奥側の深さ,扁平幅を所定の溝形状に徐々に近付けてから、最終的に、最後尾ローラ14’の突条歯14a’で所定形状の溝を付形する。
【0058】
ローラ10’〜14’でも、ローラホルダーの移動に伴ってローラが回転するので、ローラ10’〜14’がパイプ部材Pの軸線に対して直交する方向から摺接すると共に、ローラ10’〜14’の突条歯10a’〜14a’による圧力を溝の付形部分に集中させてパイプ部材の外周の変形を抑えつつ、溝を所定形状へと進行させて付形するため、パイプ部材の外周の偏平度(真円度)を保ち、溝の縁部におけるダレのない所定形状の溝g14’としてコの字溝を一層正確に付形することができる。
【0059】
上述の実施形態においては、複数のローラを五個直列的に配置した場合について説明したが、ローラの個数は、これに限定されることなく、溝の形状や要求される形状精度、パイプ部材の材質等から適宜に選択,設計できる。
【0060】
上述した実施の形態においては、主に、ヘッドレストステーを製造する場合に基づいて所定形状の溝をパイプ部材の軸線上に設けることを説明したが、ハンドブレーキやその他の製品をパイプ部材から製造するにあたり、所定形状の溝をパイプ部材の軸線上に設ける場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一例に係る一つのローラを備える金属製のパイプ部材に対する溝の加工装置を示す側面図である。
【図2】図1の溝加工装置に備えられるローラ及びピニオンを示す平面図である。
【図3】図1の溝加工装置をA−A線で示す断面図である。
【図4】図1の溝加工装置を作動状態で示す説明図である。
【図5a】図2のローラを回転移動させた時の初期状態を示す説明図である。
【図5b】図2のローラを回転移動させることによる途上状態を示す説明図である。
【図5c】回転移動途中に図2のローラによってパイプ部材に付形される溝を示した説明図である。
【図5d】図2のローラのパイプ部材通過直前の状態を示した側面図である。
【図6】図2のローラによって最終的に付形された所定形状の溝を示した断面図である。
【図7】図1の加工装置が有する駆動手段の変形例を示した側面図である。
【図8】図6の付形溝と異なる形状の溝を付形するローラを示した平面図である。
【図9】図8のローラによって付形される所定形状の溝を示した断面図である。
【図10】本発明の別の例に係る金属製のパイプ部材に対する溝の加工装置に備え付けられる複数のローラを示した説明図である。
【図11】図9に示した複数のローラ中の先頭ローラと第一の中間ローラとをそれらのV字状突条歯で比較した説明図である。
【図12】図9に示した複数のローラ中の第二及び第三の中間ローラと最後尾ローラとをそれらの円錐台形の突条歯で比較した説明図である。
【図13】図11並びに図12に示した複数のローラにより段階的に付形される溝の形状変化を示す説明図である。
【図14】図10に示した複数のローラによって付形される溝と異なる形状の溝を付形する複数のローラ中でV字状の突条歯を備えた先頭ローラと第一の中間ローラとを比較した説明図である。
【図15】図13に示した複数のローラ中の第二,第三の中間ローラ及び最後尾ローラとをそれらの突条歯で比較した説明図である。
【図16】図13並びに図14のローラにより付形される溝の形状変化を示す説明図である。
【図17】所定形状の溝が付形された一般例に係るヘッドレストステーを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
1 一つのローラ
1a ローラの突条歯
1b ローラの円周面
1c ローラ支軸
1d ローラホルダー
2 動力手段
3 セット治具
3a ローラのガイド用ゲート
3b パイプ部材の軸受け孔
10〜14 複数のローラ
10a〜14a 複数のローラの突状歯
10b〜14b 複数のローラの円周面
10c〜14c ローラ支軸
20 駆動手段
22 ピニオン
24 ラック
26 チェーン
P パイプ部材
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属製のパイプ部材を治具にセットし、そのパイプ部材の所定部位をパイプ部材の軸線と交差する方向から押圧陥入させて所定形状の溝をパイプ部材に付形する、パイプ部材に対する溝の加工装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車用のヘッドレストステーを金属製のパイプ部材から形成する場合を例示して説明すると、その製品は、図17で示すように金属製のパイプ部材をコの字状に軸曲げすると共に、ヘッドレスト高さ調整用のレの字状を呈する1〜6個程度のフリー溝g1と、ヘッドレスト抜外れ防止用のコの字状を呈する1または2個程度のストッパ溝g2とを、コの字状に軸線曲げしたパイプ部材の片縦軸部の所定部位をその片縦軸部の軸線と交差する方向へ窪ませて付形することによりヘッドレストステーとして完成される。このヘッドレストステーがヘッドレストに立て付け装備された状態では、溝g1,g2にラチエット爪が離脱自在に係止されることによりヘッドレストステーは任意の高さに維持される。
【0003】
これらの溝をパイプ部材に付形するのに、切削刃によるブローチまたはスライス加工を適用すると、所定形状の溝を容易に形成できるが、切粉が発生すると共に、パイプ部材を傷付け易くなるばかりでなく、パイプ部材の削取りはパイプ部材の剛性の低下を招いてしまう。
【0004】
パイプ部材に対する溝の付形には、先端側を溝形状に合わせて曲面形に形成したポンチ(特許文献1)、先端側を溝形状に合わせて楔形状に形成した成形刃(特許文献2)をパイプ部材の軸線と直交する方向からパイプ部材に下降動させて溝をプレス成形し、また、先端側を溝形状に合わせて斜めに面取りしたパンチ(特許文献3)をパイプ部材の軸線に対して斜め方向からパイプ部材に下降動させて溝をプレス成形することが提案されている。
【0005】
そのプレス加工では、パンチによる圧力をパイプ部材の軸線に対して交差する方向から加えてパイプ部材の所定部位を径内方向へ押し込む押圧力により溝を成形するため、パンチによる圧力が溝の縁部にまで作用し、パイプ部材の外周の偏平度(真円度)を大きく変えてしまって、大きなダレが溝の縁部に生じてしまう。
【0006】
そのプレス成形のみによる以外、パンチを回動させながら刃先をパイプ部材の軸線と直交する方向から圧接させて溝の予備成形を行った後、プレスポンチによるシェービング加工によりパイプ部材の所定部位を削り取ることが提案されている(特許文献4)。
【0007】
その溝の加工装置では、パンチを回動させながらパイプ部材の軸線に対して直交方向へ移動させて刃先をパイプ部材に圧接させるものであるため、所定形状の溝を付形するに必要なパンチの回動と移動とを適度に合わせるのが難しい。また、異なる工具を個別に作動させて溝を形成するものであるから、プレスポンチを予備成形溝の形状に合わせて正確に作動することが難しく、パイプ部材の所定部位の削取りによる切粉が発生し、パイプ部材の剛性の低下も免れ得ない。
【0008】
上述したプレス成形と併用し、溝形状に相応する切欠を軸線上に設けた芯金をパイプ部材の径内に挿置することも提案されている(特許文献5)。
【0009】
その芯金を併用する場合、芯金の出入れに著しく手間が掛かるため、製品の生産性に劣ると共に、パイプ部材の上述した外周の偏平度(真円度)の変化乃至は成形断面のダレが生じて満足し得る溝を付形できない。
【0010】
その他に、エピサイクロイド機構と球継手による揺動運動をスピンドルに起させ、スピンドルの先端に取り付けた所定の溝形状に相応する先端形状を有する成形具により、溝をスエージング加工でパイプ部材に付形することも提案されている(特許文献6)。
【0011】
そのスエージング加工では、プレス成形と比べれば、成形具がパイプ部材の所定部位を所定の溝形状にまで徐々に陥入させるよう作用するため、溝の縁回りに生ずるダレの発生を抑えられる。然し、エピサイクロイド機構が機構的に複雑で高価なものであるところから、製品コストが嵩む。
【特許文献1】特開2001−239340号
【特許文献2】特開2001−18014号
【特許文献3】特開2002−204733号
【特許文献4】特開2002−210519号
【特許文献5】特開2002−120022号
【特許文献6】特開2000−51957号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の解決しようとする課題は、切粉の発生する切削によらず、また、芯金をパイプ部材の径内に挿置することによらず、パイプ部材の外周の偏平度(真円度)を保って溝の縁部におけるダレの発生を抑え、所定形状の溝をパイプ部材の所定部位に簡単な機構で正確に付形可能な溝の加工装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、溝付形時にパイプ部材がセットされる治具と、所定形状の溝を付形するのに相応しい輪郭形状を有する突条歯を円周面に備えたローラと、前記ローラがローラ軸で軸承支持されたローラホルダーと、前記ローラの前記突条歯を前記治具にセットされた前記パイプ部材の軸線に対して直交する方向より摺接させるべく前記ローラホルダーを移動させるための動力手段と、前記ローラホルダーの移動と同期して前記ローラを回転させるための駆動手段とを備えた、金属製パイプ部材に対する溝の加工装置としたことを特徴とする。
【0014】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の構成に加え、前記ローラを複数並列的に並べて前記ローラホルダーに軸承支持し、それら複数のローラで前記パイプ部材に対して前記所定形状を有する複数の溝を同時付形できるようにしたことを特徴とする。
【0015】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の構成に加え、前記治具が、ローラホルダーが移動自在に受け入れられるゲートを有していることを特徴とする。
【0016】
請求項4に記載の発明は、溝付形時にパイプ部材がセットされる治具と、所定形状の溝に形状的に近づく溝を前記パイプ部材に段階的に付形して最終的に前記所定形状の最終溝を付形する形状の互いに異なった突条歯を円周面に夫々備えた複数のローラと、前記複数のローラが支持されたローラホルダーと、前記複数のローラの前記突条歯を前記治具にセットされた前記パイプ部材の軸線に対して直交する方向より摺接させるべく前記ローラホルダーを移動させるための動力手段と、前記ローラホルダーの移動と同期して前記複数のローラを回転させるための駆動手段とを備え、前記複数のローラが、前記最終溝よりも浅くて狭幅のV字溝を付形する突条歯を円周面に備えた先頭ローラと、前記V字溝から溝幅,深さを徐々に増加させて前記最終溝の前記所定形状に近い中間溝を付形する歯形状の異なる突条歯を円周面に夫々備えた複数の中間ローラと、前記中間溝から前記所定形状の最終溝を付形する突条歯を円周面に設けた最後尾ローラとを含み、前記先頭ローラと前記複数の中間ローラと前記最後尾ローラーとを順次直列的に並べて前記ローラホルダーに前記ローラ軸で軸承支持し、前記先頭ローラ及び中間ローラで段階的に溝を形成し、前記最後尾ローラで前記最終溝を付形するようにしたことを特徴とする。
【0017】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の構成に加え、前記最終溝の所定形状が略レの字状であって、前記複数の中間ローラーが、前記先頭ローラによって付形された前記V字溝の溝口側を深く付形する突条歯を円周面に備えた第一の中間ローラと、前記第一の中間ローラーによって付形された溝口側の広い前記V字溝の溝奥側を扁平面とすると共に、溝口側の広い前記V字溝の片斜面を垂直面とし且つ溝口側の広い前記V字溝の他斜面を溝奥より緩やかな上り勾配の傾斜面として付形する突条歯を円周面に備えた第二の中間ローラと、前記第二の中間ローラによって付形された溝をその溝の深さ,扁平面の幅及び傾斜面の長さが最終溝のそれらと近づくまで付形する突条歯を円周面に備えた第三の中間ローラとを含み、前記最後尾ローラの円周面に設けられた前記突条歯が前記第三の中間ローラによって付形された形状の溝から前記略レの字形状の最終溝を付形するのに相応しい輪郭形状を有し、前記先頭ローラと前記複数の中間ローラと前記最後尾ローラーとを順次直列的に並べて前記ローラホルダーに前記ローラ軸で軸承支持してなるローラ列で段階的に前記略レの字状の最終溝を付形するようにしたことを特徴とする。
【0018】
請求項6に記載の発明は、請求項4に記載の構成に加え、前記最終溝の所定形状が略コの字状であって、前記複数の中間ローラーが、前記先頭ローラによって付形された前記V字溝の溝口側を深く付形する突条歯を円周面に備えた第一の中間ローラと、前記第一の中間ローラーによって付形された溝口側の広い前記V字溝の溝奥側を扁平面に付形する突条歯を円周面に備えた第二の中間ローラと、前記第二の中間ローラによって付形された溝をその溝奥側の深さ及び扁平面の幅を最終溝のそれらと近づくまで付形する突条歯を円周面に備えた第三の中間ローラとを含み、前記最後尾ローラの円周面に設けられた前記突条歯が、前記第三の中間ローラによって付形された形状の溝から前記略コの字形状の最終溝を付形するのに相応しい輪郭形状を有し、前記先頭ローラと前記複数の中間ローラと前記最後尾ローラーとを順次直列的に並べて前記ローラホルダーに前記ローラ軸で軸承支持してなるローラ列で段階的に前記略コの字状の最終溝を付形するようにしたことを特徴とする。
【0019】
請求項7に記載の発明は、請求項5及び6に記載の構成に加え、請求項5に記載のローラ列と、請求項6に記載のローラ列とを相平行に整列させて備え、そのローラ列を複数の異なる溝の同時成形手段として備え付けたことを特徴とする。
【0020】
請求項8に記載の発明は、請求項4〜7のいずれかに記載の構成に加え、前記治具が、前記ローラホルダーが移動自在に受け入れられるゲートを有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
請求項1に記載の発明に依れば、所定の溝形状に相応する輪郭形状を有する突条歯を円周面に備えたローラを軸承支持したローラホルダーをパイプ部材の軸線に向けて直交方向より移動させることに同期してローラを回転移動させて、その回転移動するローラの突条歯で溝をフォーミング成形するものであるため、突条歯による圧力を溝の付形部分に集中させてパイプ部材の外周の変形を抑え、溝を所定形状へと進行させて付形することができるから、外周の偏平度(真円度)を保ち、溝の縁部におけるダレのない所定形状の溝を正確に付形することができる。
【0022】
それに加えて、上述したようにローラを支持したローラホルダーをパイプ部材の軸線に向けて移動させることにより、ローラの突条歯で溝をフォーミング成形するものであるため、所定形状の溝を簡単な機構で容易に形成できると共に、固定刃のような消耗工具の損耗によるランニングコスト高も防げる。
【0023】
請求項2に記載の発明に依れば、所定の溝形状に相応する輪郭形状を有する突条歯を円周面に設けたローラを複数並列的に並べてローラホルダーに軸承支持し、それら複数のローラでパイプ部材に対して所定形状を有する複数の溝を同時付形できるようにしたため、上述したと同様に、溝の縁部に生ずるダレの発生を抑えて所定形状の溝を簡単な機構で容易に付形でき、また、ランニングのコスト高も防げると共に、必要とされる複数の溝を一工程で付形できて製品の生産性を効率よく高めることができる。
【0024】
請求項3に記載の発明に依れば、セット治具がローラホルダーを移動自在に受け入れるゲートを有しているため、ローラホルダーを安定よく移動ガイドさせることができると共に、ローラの突条歯がパイプ部材の所定部位に食い込むことに伴う逃げの発生を防げ、所定の加圧力を保ってパイプ部材の所定部位を押圧陥入させることができるから、溝形状を所望通りに形成できる。
【0025】
請求項4に記載の発明に依れば、先頭ローラで細いV字溝を成形し、そのV字溝を複数の中間ローラで幅方向,深さ方向に押し広げる圧力を順次作用させることにより、溝形状を所定の溝形状に徐々に近付けるよう付形するため、ローラの突条歯による圧力を溝の付形部分に確実に集中させ、溝を所定形状にまで徐々に進行させて付形することができ、パイプ部材の外周の変形を抑えられると共に、溝の縁部に生ずるダレの発生を抑えて所定形状の溝として一層正確に付形できる。
【0026】
請求項5に記載の発明に依れば、先頭ローラで細いV字溝を成形し、そのV字溝を複数の中間ローラで所定のレの字形に徐々に近付けるよう順次付形するため、ローラの突条歯による圧力を溝の付形部分に確実に集中させ、溝を所定のレの字形にまで徐々に進行させて付形することができ、パイプ部材の外周の変形を抑えられると共に、溝の縁部に生ずるダレの発生を抑えてレの字溝を正確に付形できる。
【0027】
請求項6に記載の発明に依れば、先頭ローラで細いV字溝を成形し、そのV字溝を複数の中間ローラで所定のコの字形に徐々に近付けるよう順次付形するため、ローラの突条歯による圧力を溝の付形部分に確実に集中させ、溝を所定のコの字形にまで徐々に進行させて付形することができ、パイプ部材の外周の変形を抑えられると共に、溝の縁部に生ずるダレの発生を抑えてコの字溝を正確に付形できる。
【0028】
請求項7に記載の発明に依れば、請求項5に記載のローラ列と、請求項6に記載のローラ列とをパイプ部材の軸線上に形状の異なる複数の溝を同時付形する手段として備え付けたので、ヘッドレストステーにおけるようにレの字溝並びにコの字溝が共に必要とされるものに対しては、溝加工を一工程で行えて製品の生産性を効率よく高めることができる。
【0029】
請求項8に記載の発明に依れば、請求項4〜7に記載の発明において、パイプ部材をセットする治具が、ローラホルダーが移動自在に受け入れられるゲートを有するものであるため、複数のローラを支持したローラホルダーでも安定よく移動ガイドさせることができると共に、各ローラの突条歯がパイプ部材の所定部位に食い込むことに伴う逃げの発生を防げ、所定の加圧力を保ってパイプ部材の所定部位を押圧陥入させることができるから、複数の溝でも所望通りに形成できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0030】
発明を実施するための最良の形態としては、図1〜図9で示すように一つのローラで所定形状の溝を金属製のパイプ部材に付形するものと、図10〜図16で示すように複数の直列的に配置されたローラで所定形状に近づく溝を順次段階的に付形して、最終的に所定形状の溝を金属製のパイプ部材に付形するものとを挙げることができる。
【0031】
そのいずれの形態も、一つのローラ又は複数のローラに基づいて説明するが、一つのローラを複数並列的に並べまたは複数の直列的に並ぶローラを複数相平行に並べて複数溝の同時付形手段として構成することもできる。ローラとしては、合金工具鋼製(JIS規格:SKD11、HRC58±1.0)又は超硬合金製のローラを備え付けることができる。
【0032】
図1は、一つのローラ1による溝の加工装置を示す。この装置全体は、所定の溝形状に相応する輪郭形状を有する突条歯1aを円周面1bに備えたローラ1と、ローラ1がローラ軸1cで軸承支持されたローラホルダー1dと、被成形材である金属製パイプ部材Pが溝付形時に位置決め保持される治具3と、治具3にセットされたパイプ部材Pの軸線に対して直交する方向よりローラ1の突条歯1aを摺接させるべくローラホルダー1dを移動させるための動力手段2と、ローラホルダー1dの移動と同期してローラ1を回転させるための駆動手段20とを有している。この加工装置としては、複数の直列的に並ぶローラによるものも同様に構成することができる。
【0033】
ローラ1としてレの字状の溝を形成するローラを例示して説明すると、そのローラは、図2で示すように略中央の有幅な起立面からテーパ状を呈する断面略台形のリング面となる外郭形状の突条歯1aを円周面1bに備えている。その形状中、起立面の立上り高さhはレの字溝の深さに相当し、平坦な突端幅wはレの字溝の底に相当し、リング面の傾斜角θはレの字溝の傾斜面に相当するよう形成されている。このローラ1の直径φは、円周面1bがパイプ部材Pの軸線に対して直交する方向から摺接することができる大きさに形成されている。
【0034】
ローラ1は、図1及び図3に示したように、ローラ側面に開孔する中心孔と緊密に嵌り合うローラ軸1cで軸承すると共に、このローラ軸1cを断面略逆凹状のローラホルダー1dの側部間に掛渡し固定することによりローラホルダー1dに支持されている。ローラ軸1cの一端部はローラホルダー1dの片側の側部を貫通し、その貫通したローラ軸1cの先端部には、後述する駆動手段20のピニオン22が装着されている。ローラホルダー1dは、ローラ1の突条歯1aが下部開放側から一部露出された状態でローラ1を内部に収容している。
【0035】
ローラホルダー1dの後端側には動力手段2が連結され、この動力手段2により、ローラ1の突条歯1aを治具3にセットされたパイプ部材Pの軸線に対して直交する方向より摺接させるようにローラホルダー1dが水平に移動させられる。動力手段2としては、サーボ駆動機構又は油圧サーボ駆動機構等を用いることができる。
【0036】
セット治具3には、ローラ1が支持されたローラホルダー1dが移動自在に受け入れられるゲート3aが内部に貫通するよう設けられている。このゲート3aは、ローラホルダー1dの天部面がゲート3aの上部面と摺接し、ローラホルダー1dの片側部でローラ軸1cによって支持されたピニオン22がゲート3aの側面と摺接せず、また、ローラホルダー1dの下部より露出した突条歯1aの一部もゲート3aの底面と摺接しない大きさの略四辺形の空洞状に形成されている。また、パイプ部材Pを挿通する軸受け孔3bがゲート3aと交差する方向に設けられている。その軸受け孔3bは、溝が付形されるパイプ部材Pの所定部位をゲート3aの空洞内に露出させる形状に形成されている。
【0037】
ローラホルダー1dの移動と同期してローラ1を回転させるための駆動手段20は、上述したようにローラホルダー1dの片側部を貫通したローラ軸1cの先端部に装着されたピニオン22と、セット治具3のゲート3aの片側部内面に取り付けられてその片側部に沿って水平に延びた長尺なラック24とを有している。ローラ軸1cに取り付けられたピニオン22の歯22aは、ラック24の歯24aと噛合している。セット治具3にセットされたパイプ部材Pに向かってローラホルダー1dが動力手段2によって移動させられた時に、ピニオン22がラック24と噛合しつつラック24に沿って回転することによりローラ1が回転するようになっている。
【0038】
このように構成する溝の加工装置では、パイプ部材Pをセット治具3の軸受け孔3bに挿通させて位置決め保持した後、ロール1が支持されたローラホルダー1dをパイプ部材Pの軸線に向けて動力手段2で直交方向より移動させて、ラック24に沿ったピニオン22の回転によりロール1を同期回転させることにより、ローラホルダー1dの下部より部分的に露出する突条歯1でパイプ部材Pの軸線と交差する方向に所定形状の溝を付形することができる。
【0039】
ローラ1を支持したローラホルダー1dが、図4で示すように治具3のゲート3a内を移動する際にローラホルダー1dの天部面がゲート3aの上部面に摺接するので、ローラ1をゲート3a内で水平に移動ガイドできる。また、ローラ1の突条歯1aがパイプ部材Pの軸線と交差する方向へ食い込むに伴う逃げの発生を防げるため、所定の加圧力を保ってパイプ部材Pの軸線と交差する方向にパイプ部材Pの所定部位を押圧陥入できるから溝形状を所望通りに付形することができる。
【0040】
その溝の付形にあたっては、図5aで示すように突条歯1aの突端面がパイプ部材Pの周面にパイプ部材Pの軸線と交差する方向から当接することにより浅い領域の溝を突端幅w(図2参照)で窪ませ、ローラ1が更に回転移動し、ローラ1の中心とパイプ部材Pの中心とが図5bに示したように一直線上で一致した状態となった時に、起立面の立上り高さh(図2参照)による深さ、平坦な突端幅w(図2参照)による底、リング面の傾斜角θ(図2参照)による傾斜面を深い領域の溝として付形する。
【0041】
ローラ1の中心とパイプ部材Pの中心とが一直線上で一致した状態に達すると、図5cで示すようにレの字の深い領域に相当する溝を付形しながら、ローラ1の円周面1bがパイプ部材Pの所定部位にパイプ部材Pの軸線と交差する方向から摺接することにより外周の偏平度(真円度)を保つ。ローラ1が回転しつつパイプ部材Pの軸線を最終的に通過すると、浅い領域の溝を突端幅wで窪ませることにより、図5dで示したように所定形状のレの字溝を付形することができる。
【0042】
ローラ1は、ローラホルダー1dの移動に伴って回転しつつパイプ部材Pの軸線と交差する方向から摺接すると共に、突条歯1aによる圧力を溝の付形部分に集中させてパイプ部材Pの外周の変形を抑えつつ、溝を所定形状へと進行させて形成する。このため、図6で示すようにパイプ部材Pの外周の偏平度(真円度)を保ちつつ、溝の縁部eにおけるダレのない所定形状の溝g1として正確に付形することができる。
【0043】
パイプ部材に所定形状の溝を付形してヘッドレストステーを製造する場合には、パイプ部材としては、肉厚:1.3〜2.0mm,直径:13mm程度の高張力合金でなるシームレスパイプ部材又は電縫パイプ部材を用いることができる。この金属製のパイプ部材に対しては、ダレを0〜0.5mm以内、外周の偏平度を0.05mm以内(真円度:±0.03mm程度)に抑え、深さ:1.5〜2.5mm、最肉薄部:0.6mm以上の溝を設けるようにできる。
【0044】
ローラホルダー1dの移動と同期してローラ1を回転させるための駆動手段20としては、ピニオン22とラック24との組合わせの代わりに、図7に示したように、ピニオン22と、ローラホルダー1dに取り付けたモーター30の回転軸に装着された第二のピニオン30aと、これら第一のピニオン22と第二のピニオン30aとの間に懸架されたチェーン26との組合わせを採用することができる。モータ30はローラホルダー1dの側面に取り付けられ、その回転軸はローラホルダー1dを横方向に貫通し、その回転軸の先端に第二のピニオン30aが装着されている。この場合には、ローラホルダ1dの移動に同期してモータ30の回転軸を回転させることにより、ローラホルダー1dの移動と同期してローラ1を回転させることができ、ピニオン22とラック24との組合わせの場合と同様の作動をもってローラ1を回転させて、所定形状の溝をパイプ部材に付形させることができる。
【0045】
上述した以外に、図8を参照して、ローラとしてコの字状の溝を付形するローラ1’を例示して説明すると、このローラ1’は略中央の有幅な突端面から両側の起立面を呈する外郭形状の突条歯1a’を円周面1b’に備えている。この形状中、起立面の立上り高さh’はコの字溝の深さに相当し、平坦な突端幅w’はコの字溝の底に相当するよう形成されている。このローラ1’の直径φ’も、円周面1b’がパイプ部材Pの軸線と交差する方向から摺接可能な大きさに形成されている。
【0046】
このローラ1’によっては、図9で示すようなコの字溝g2をパイプ部材の軸線と交差する方向へダレを発生させることなく付形することができる。このコの字溝g2であっても、上述した肉厚,直径のパイプ部材に付形すると、ローラ1で溝を付形した場合と同様に、パイプ部材の外周の偏平度(真円度)、溝の深さ、最肉薄部を保つ溝として設けるようにできる。
【0047】
ローラホルダー1dに複数のローラを直列的に配置した実施の形態においてレの字溝を付形するものを例示すると、このローラ列は、図10で示したように、円周面10bの中央部より立ちあがったV字状の突条歯10aを備えた先頭ローラ10と、同様に円周面11bの中央部より立ちあがったV字状の突状歯11aを備えた第一の中間ローラ11と、略中央の有幅な起立面から片側方のテーパ状を呈する断面略台形のリング面となる突条歯12a,13aを円周面12b,13bに備えた第二及び第三の中間ローラ12,13と、略中央の有幅な起立面から片側方のテーパ状を呈する断面略台形のリング面となる突条歯14aを円周面14bに備えた最後尾ローラ14とを有している。尚、図中、符号10c〜14cはローラ10〜14のローラ軸を示す。こられローラ軸10c〜14cのローラホルダー1dの側部より外方へ突出した先端部には、夫々ピニオン22が装着され、これらピニオン22は、長尺なラック24と噛合している。また、このラック24は、図示していないセット治具のゲート内側面に取り付けられている。
【0048】
ローラ10〜14は、ローラ列の移動方向Xに向かってV字状の突条歯10aを設けた先頭ローラ10を先頭に配置し、中間ローラ11〜13として所定のレの字溝に徐々に近付く互いに異なった形状の突条歯11a〜13aを備えたものを先頭ローラ10の後方に整列配置し、最後尾のローラ14として所定のレの字溝と略同じ形状の突条歯14aを備えたものが第三の中間ローラ13の後方に整列配置されている。
【0049】
ローラ10〜13としては、図11並びに図12で示すように円周面10b〜13bがパイプ部材の軸線に対して直交する方向より摺接しない同じ直径φ1〜φ4を有するものが備え付けられている。これに対し、最後尾のローラ14としては円周面14bがパイプ部材の軸線に対して直交する方向より摺接可能な大きい直径φ5<φ1〜φ4を有するものが配列されている。
【0050】
ローラ10,11に設けられるV字状の突条歯10a,11aを比較すると、先頭ローラ10の突状歯10aは、第一の中間ローラ11の突条歯11aの基部幅w2よりも狭い基部幅w1を有し、且つ、これら突状歯10a,11aの立上り高さはh1=h2,突端の曲部面はr1=r2となっている。
【0051】
ローラ12〜14に設けられる略中央の有幅な起立面からテーパ状を呈するリング面となる断面略台形の突条歯12a〜14aを比較すると、ローラ12〜14の順に、起立面の平坦な突端幅がw3<w4<w5と徐々に広くなり、且つ、リング面の傾斜角がθ1>θ2>θ3と徐々に小さくなっている。
【0052】
図13で示すように、先頭ローラ10で付形されたV字溝g10を第一の中間ローラ11でV字溝g10の溝口側を広くした溝g11として付形し、次に、第二の中間ローラ12で溝口側の広いV字溝g11の溝奥側を扁平面とする溝に付形し、且つ、V字溝gの片斜面を垂直面とすると共に、V字溝の他斜面を溝奥より緩やかな上り勾配の傾斜面とする溝g12として付形し、更に、第三の中間ローラ13で溝奥側の深さ,扁平幅並びに傾斜面の長さを所定形状近くの溝g13にまで付形するように、段階的に溝形状を所定の溝形状に徐々に近付けてから、最終的に、所定形状近くの溝形状を最後尾のローラ14で所定形状の溝g14にまで付形することができる。
【0053】
ローラ10〜14は、ローラホルダー1dの移動に同期して回転させられるものであるので、先頭ローラ10から中間ローラ11,12,13及び最後尾ローラ14がパイプ部材Pの軸線と直交する方向から摺接すると共に、各突条歯10a〜14aによる圧力を溝の付形部分に集中させてパイプ部材の外周の変形を抑えつつ、溝を所定形状へと進行させて形成するため、パイプ部材の外周の偏平度(真円度)を保ち、溝の縁部におけるダレのない所定形状の溝g14としてレの字溝を一層正確に形成することができる。
【0054】
コの字状の溝を付形する場合、図14並びに図15で示すような異なる形状の突条歯10a’〜14a’を備えたローラ10’〜14’がローラホルダーに整列配置される。ローラ10’〜13’としては、円周面10b’〜13b’がパイプ部材の軸線に対して直交する方向から摺接しない同じ直径φ1’〜φ4’を有するものが備え付けられている。最後尾ローラ14’としては、円周面14b’がパイプ部材の軸線と直交する方向から摺接する大きな直径φ5<φ1〜φ4を有するものが備え付けられている。
【0055】
ローラ10’,11’に設けられるV字状の突条歯10a’,11a’を比較すると、レの字溝を設ける場合と同様に、先頭ローラ10’の突状歯10a’の基部幅w1’は第一の中間ローラ11’の突条歯11a’の基部幅w2’よりも狭くなっており、且つ、これら突状歯10a’,11a’における立上り高さはh1’=h2’,突端の曲部面はr1’=r2’となっている。
【0056】
ローラ12’〜14’に設けられる略コ形の突条歯12a’〜14a’を比較すると、ローラ12’〜14’の順に、突端幅がw3’
<w4’ <w5’と徐々に広くなり、且つ、突端の平坦幅がr3’
<r4‘<r5‘と徐々に広くなる突条歯12a’〜14a’が設けられている。
【0057】
図16で示すように、先頭ローラ10’で付形したV字溝g10’を第一の中間ローラ11’の突条歯11a’でV字溝g10’の溝口側を広く付形した溝g11’にし、次に、第二及び第三の中間ローラ12’,13’の突条歯12a’,13a’で溝奥側の深さ,扁平幅を所定の溝形状に徐々に近付けてから、最終的に、最後尾ローラ14’の突条歯14a’で所定形状の溝を付形する。
【0058】
ローラ10’〜14’でも、ローラホルダーの移動に伴ってローラが回転するので、ローラ10’〜14’がパイプ部材Pの軸線に対して直交する方向から摺接すると共に、ローラ10’〜14’の突条歯10a’〜14a’による圧力を溝の付形部分に集中させてパイプ部材の外周の変形を抑えつつ、溝を所定形状へと進行させて付形するため、パイプ部材の外周の偏平度(真円度)を保ち、溝の縁部におけるダレのない所定形状の溝g14’としてコの字溝を一層正確に付形することができる。
【0059】
上述の実施形態においては、複数のローラを五個直列的に配置した場合について説明したが、ローラの個数は、これに限定されることなく、溝の形状や要求される形状精度、パイプ部材の材質等から適宜に選択,設計できる。
【0060】
上述した実施の形態においては、主に、ヘッドレストステーを製造する場合に基づいて所定形状の溝をパイプ部材の軸線上に設けることを説明したが、ハンドブレーキやその他の製品をパイプ部材から製造するにあたり、所定形状の溝をパイプ部材の軸線上に設ける場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一例に係る一つのローラを備える金属製のパイプ部材に対する溝の加工装置を示す側面図である。
【図2】図1の溝加工装置に備えられるローラ及びピニオンを示す平面図である。
【図3】図1の溝加工装置をA−A線で示す断面図である。
【図4】図1の溝加工装置を作動状態で示す説明図である。
【図5a】図2のローラを回転移動させた時の初期状態を示す説明図である。
【図5b】図2のローラを回転移動させることによる途上状態を示す説明図である。
【図5c】回転移動途中に図2のローラによってパイプ部材に付形される溝を示した説明図である。
【図5d】図2のローラのパイプ部材通過直前の状態を示した側面図である。
【図6】図2のローラによって最終的に付形された所定形状の溝を示した断面図である。
【図7】図1の加工装置が有する駆動手段の変形例を示した側面図である。
【図8】図6の付形溝と異なる形状の溝を付形するローラを示した平面図である。
【図9】図8のローラによって付形される所定形状の溝を示した断面図である。
【図10】本発明の別の例に係る金属製のパイプ部材に対する溝の加工装置に備え付けられる複数のローラを示した説明図である。
【図11】図9に示した複数のローラ中の先頭ローラと第一の中間ローラとをそれらのV字状突条歯で比較した説明図である。
【図12】図9に示した複数のローラ中の第二及び第三の中間ローラと最後尾ローラとをそれらの円錐台形の突条歯で比較した説明図である。
【図13】図11並びに図12に示した複数のローラにより段階的に付形される溝の形状変化を示す説明図である。
【図14】図10に示した複数のローラによって付形される溝と異なる形状の溝を付形する複数のローラ中でV字状の突条歯を備えた先頭ローラと第一の中間ローラとを比較した説明図である。
【図15】図13に示した複数のローラ中の第二,第三の中間ローラ及び最後尾ローラとをそれらの突条歯で比較した説明図である。
【図16】図13並びに図14のローラにより付形される溝の形状変化を示す説明図である。
【図17】所定形状の溝が付形された一般例に係るヘッドレストステーを示す斜視図である。
【符号の説明】
【0062】
1 一つのローラ
1a ローラの突条歯
1b ローラの円周面
1c ローラ支軸
1d ローラホルダー
2 動力手段
3 セット治具
3a ローラのガイド用ゲート
3b パイプ部材の軸受け孔
10〜14 複数のローラ
10a〜14a 複数のローラの突状歯
10b〜14b 複数のローラの円周面
10c〜14c ローラ支軸
20 駆動手段
22 ピニオン
24 ラック
26 チェーン
P パイプ部材
【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製パイプ部材の軸線と交差する方向に所定形状の溝を付形するための加工装置であって、
溝付形時に前記パイプ部材がセットされる治具と、
前記所定形状の前記溝を付形するのに相応しい輪郭形状を有する突条歯を円周面に備えたローラと、
前記ローラがローラ軸で軸承支持されたローラホルダーと、
前記ローラの前記突条歯を前記治具にセットされた前記パイプ部材の軸線に対して直交する方向より摺接させるべく前記ローラホルダーを移動させるための動力手段と、
前記ローラホルダーの移動と同期して前記ローラを回転させるための駆動手段とを備えたことを特徴とする、金属製パイプ部材に対する溝の加工装置。
【請求項2】
前記ローラを複数並列的に並べて前記ローラホルダーに軸承支持し、それら複数のローラで前記パイプ部材に対して前記所定形状を有する複数の溝を同時付形できるようにしたことを特徴とする、請求項1に記載の金属製パイプ部材に対する溝の加工装置。
【請求項3】
前記治具が、ローラホルダーが移動自在に受け入れられるゲートを有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載のパイプ部材に対する溝の加工装置。
【請求項4】
金属製パイプ部材の軸線と交差する方向に所定形状の溝を付形するための加工装置であって、
溝付形時に前記パイプ部材がセットされる治具と、
前記所定形状の溝に形状的に近づく溝を前記パイプ部材に段階的に付形して最終的に前記所定形状の最終溝を付形する形状の互いに異なった突条歯を円周面に夫々備えた複数のローラと、
前記複数のローラが支持されたローラホルダーと、
前記複数のローラの前記突条歯を前記治具にセットされた前記パイプ部材の軸線に対して直交する方向より摺接させるべく前記ローラホルダーを移動させるための動力手段と、
前記ローラホルダーの移動と同期して前記複数のローラを回転させるための駆動手段とを備え、
前記複数のローラが、前記最終溝よりも浅くて狭幅のV字溝を付形する突条歯を円周面に備えた先頭ローラと、前記V字溝から溝幅,深さを徐々に増加させて前記最終溝の前記所定形状に近い中間溝を付形する歯形状の異なる突条歯を円周面に夫々備えた複数の中間ローラと、前記中間溝から前記所定形状の最終溝を付形する突条歯を円周面に設けた最後尾ローラとを含み、
前記先頭ローラと前記複数の中間ローラと前記最後尾ローラーとを順次直列的に並べて前記ローラホルダーにローラ軸で軸承支持し、前記先頭ローラ及び中間ローラで段階的に溝を形成し、前記最後尾ローラで前記最終溝を付形するようにしたことを特徴とするパイプ部材に対する溝の加工装置。
【請求項5】
前記最終溝の所定形状が略レの字状であって、前記複数の中間ローラーが、前記先頭ローラによって付形された前記V字溝の溝口側を深く付形する突条歯を円周面に備えた第一の中間ローラと、前記第一の中間ローラーによって付形された溝口側の広い前記V字溝の溝奥側を扁平面とすると共に、溝口側の広い前記V字溝の片斜面を垂直面とし且つ溝口側の広い前記V字溝の他斜面を溝奥より緩やかな上り勾配の傾斜面として付形する突条歯を円周面に備えた第二の中間ローラと、前記第二の中間ローラによって付形された溝をその溝の深さ,扁平面の幅及び傾斜面の長さが最終溝のそれらと近づくまで付形する突条歯を円周面に備えた第三の中間ローラとを含み、前記最後尾ローラの円周面に設けられた前記突条歯が前記第三の中間ローラによって付形された形状の溝から前記略レの字形状の最終溝を付形するのに相応しい輪郭形状を有し、前記先頭ローラと前記複数の中間ローラと前記最後尾ローラーとを順次直列的に並べて前記ローラホルダーに前記ローラ軸で軸承支持してなるローラ列で段階的に前記略レの字状の最終溝を付形するようにしたことを特徴とする、請求項4に記載のパイプ部材に対する溝の加工装置。
【請求項6】
前記最終溝の所定形状が略コの字状であって、前記複数の中間ローラーが、前記先頭ローラによって付形された前記V字溝の溝口側を深く付形する突条歯を円周面に備えた第一の中間ローラと、前記第一の中間ローラーによって付形された溝口側の広い前記V字溝の溝奥側を扁平面に付形する突条歯を円周面に備えた第二の中間ローラと、前記第二の中間ローラによって付形された溝をその溝奥側の深さ及び扁平面の幅が前記最終溝のそれらと近づくまで付形する突条歯を円周面に備えた第三の中間ローラとを含み、前記最後尾ローラの円周面に設けられた前記突条歯が、前記第三の中間ローラによって付形された形状の溝から前記略コの字状の最終溝を付形するのに相応しい輪郭形状を有し、前記先頭ローラと前記中間ローラ群と前記最後尾ローラーとを順次直列的に並べて前記ローラホルダーに前記ローラ軸で軸承支持してなるローラ列で段階的に前記略コの字状の最終溝を付形するようにしたことを特徴とする、請求項4に記載のパイプ部材に対する溝の加工装置。
【請求項7】
請求項5に記載のローラ列と、請求項6に記載のローラ列とを相平行に整列させて備え、そのローラ列で形状の異なる複数の最終溝を同時付形できるようにしたことを特徴とするパイプ部材に対する溝の加工装置。
【請求項8】
前記治具が、前記ローラホルダーが移動自在に受け入れられるゲートを有していることを特徴とする、請求項4〜7のいずれかに記載のパイプ部材に対する溝の加工装置。
【請求項1】
金属製パイプ部材の軸線と交差する方向に所定形状の溝を付形するための加工装置であって、
溝付形時に前記パイプ部材がセットされる治具と、
前記所定形状の前記溝を付形するのに相応しい輪郭形状を有する突条歯を円周面に備えたローラと、
前記ローラがローラ軸で軸承支持されたローラホルダーと、
前記ローラの前記突条歯を前記治具にセットされた前記パイプ部材の軸線に対して直交する方向より摺接させるべく前記ローラホルダーを移動させるための動力手段と、
前記ローラホルダーの移動と同期して前記ローラを回転させるための駆動手段とを備えたことを特徴とする、金属製パイプ部材に対する溝の加工装置。
【請求項2】
前記ローラを複数並列的に並べて前記ローラホルダーに軸承支持し、それら複数のローラで前記パイプ部材に対して前記所定形状を有する複数の溝を同時付形できるようにしたことを特徴とする、請求項1に記載の金属製パイプ部材に対する溝の加工装置。
【請求項3】
前記治具が、ローラホルダーが移動自在に受け入れられるゲートを有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載のパイプ部材に対する溝の加工装置。
【請求項4】
金属製パイプ部材の軸線と交差する方向に所定形状の溝を付形するための加工装置であって、
溝付形時に前記パイプ部材がセットされる治具と、
前記所定形状の溝に形状的に近づく溝を前記パイプ部材に段階的に付形して最終的に前記所定形状の最終溝を付形する形状の互いに異なった突条歯を円周面に夫々備えた複数のローラと、
前記複数のローラが支持されたローラホルダーと、
前記複数のローラの前記突条歯を前記治具にセットされた前記パイプ部材の軸線に対して直交する方向より摺接させるべく前記ローラホルダーを移動させるための動力手段と、
前記ローラホルダーの移動と同期して前記複数のローラを回転させるための駆動手段とを備え、
前記複数のローラが、前記最終溝よりも浅くて狭幅のV字溝を付形する突条歯を円周面に備えた先頭ローラと、前記V字溝から溝幅,深さを徐々に増加させて前記最終溝の前記所定形状に近い中間溝を付形する歯形状の異なる突条歯を円周面に夫々備えた複数の中間ローラと、前記中間溝から前記所定形状の最終溝を付形する突条歯を円周面に設けた最後尾ローラとを含み、
前記先頭ローラと前記複数の中間ローラと前記最後尾ローラーとを順次直列的に並べて前記ローラホルダーにローラ軸で軸承支持し、前記先頭ローラ及び中間ローラで段階的に溝を形成し、前記最後尾ローラで前記最終溝を付形するようにしたことを特徴とするパイプ部材に対する溝の加工装置。
【請求項5】
前記最終溝の所定形状が略レの字状であって、前記複数の中間ローラーが、前記先頭ローラによって付形された前記V字溝の溝口側を深く付形する突条歯を円周面に備えた第一の中間ローラと、前記第一の中間ローラーによって付形された溝口側の広い前記V字溝の溝奥側を扁平面とすると共に、溝口側の広い前記V字溝の片斜面を垂直面とし且つ溝口側の広い前記V字溝の他斜面を溝奥より緩やかな上り勾配の傾斜面として付形する突条歯を円周面に備えた第二の中間ローラと、前記第二の中間ローラによって付形された溝をその溝の深さ,扁平面の幅及び傾斜面の長さが最終溝のそれらと近づくまで付形する突条歯を円周面に備えた第三の中間ローラとを含み、前記最後尾ローラの円周面に設けられた前記突条歯が前記第三の中間ローラによって付形された形状の溝から前記略レの字形状の最終溝を付形するのに相応しい輪郭形状を有し、前記先頭ローラと前記複数の中間ローラと前記最後尾ローラーとを順次直列的に並べて前記ローラホルダーに前記ローラ軸で軸承支持してなるローラ列で段階的に前記略レの字状の最終溝を付形するようにしたことを特徴とする、請求項4に記載のパイプ部材に対する溝の加工装置。
【請求項6】
前記最終溝の所定形状が略コの字状であって、前記複数の中間ローラーが、前記先頭ローラによって付形された前記V字溝の溝口側を深く付形する突条歯を円周面に備えた第一の中間ローラと、前記第一の中間ローラーによって付形された溝口側の広い前記V字溝の溝奥側を扁平面に付形する突条歯を円周面に備えた第二の中間ローラと、前記第二の中間ローラによって付形された溝をその溝奥側の深さ及び扁平面の幅が前記最終溝のそれらと近づくまで付形する突条歯を円周面に備えた第三の中間ローラとを含み、前記最後尾ローラの円周面に設けられた前記突条歯が、前記第三の中間ローラによって付形された形状の溝から前記略コの字状の最終溝を付形するのに相応しい輪郭形状を有し、前記先頭ローラと前記中間ローラ群と前記最後尾ローラーとを順次直列的に並べて前記ローラホルダーに前記ローラ軸で軸承支持してなるローラ列で段階的に前記略コの字状の最終溝を付形するようにしたことを特徴とする、請求項4に記載のパイプ部材に対する溝の加工装置。
【請求項7】
請求項5に記載のローラ列と、請求項6に記載のローラ列とを相平行に整列させて備え、そのローラ列で形状の異なる複数の最終溝を同時付形できるようにしたことを特徴とするパイプ部材に対する溝の加工装置。
【請求項8】
前記治具が、前記ローラホルダーが移動自在に受け入れられるゲートを有していることを特徴とする、請求項4〜7のいずれかに記載のパイプ部材に対する溝の加工装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5a】
【図5b】
【図5c】
【図5d】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2006−181613(P2006−181613A)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−378940(P2004−378940)
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(301036571)株式会社ソーワ・テクノ (1)
【公開日】平成18年7月13日(2006.7.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年12月28日(2004.12.28)
【出願人】(301036571)株式会社ソーワ・テクノ (1)
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