説明

金属製支持具

【課題】高架道路または橋梁のコンクリート壁高欄の形成に用いる高欄用鉄筋を床型枠から離して支持することができ、床部にコンクリートを打設するときに取り外し等の追加作業を必要としない、高欄用鉄筋の支持具又は支持方法を提供する。
【解決手段】金属製支持具20は、両端に形成されたコの字型の係合部22と両端の係合部の間に形成された直線状の支持部24を備え、前記両端の係合部22が床型枠36上に並行に配列された主筋10の互いに隣接する主筋10にそれぞれ係合され、前記支持部24が高欄の形成に用いる高欄用鉄筋16を支える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は金属製支持具に関する。さらに詳しくは、高架道路または橋梁のコンクリート壁高欄の形成に用いる鉄筋を床型枠から離して支持する金属製支持具に関する。
【背景技術】
【0002】
高架道路や橋梁には、多くの場合、その両脇に車両等の落下防止や騒音防止等の目的でコンクリート壁高欄が形成される。そして道路や橋梁のコンクリート製の床部とコンクリート壁高欄が一体形成される場合には、このコンクリート壁高欄の内部に、図8に示すように、床部40に達する高欄用鉄筋44が配設され、高欄用鉄筋44により床部40とコンクリート壁高欄42が一体化されている。このとき、コンクリート壁高欄42は次の手順で形成される。
コンクリート壁高欄42の形成に用いる高欄用鉄筋44は、床部40に打設されるコンクリートにより下部が床部40に固定さる。そして、高欄部に型枠を形成してコンクリートが打設され、コンクリート壁高欄42が床部40と一体化されて形成される。
ここで、高欄用鉄筋44を床型枠上に配設するときに、高欄用鉄筋44を床型枠に直接乗せてしまうとコンクリートを打設するときに骨材(コンクリートに混ぜられる砂利・砕石等)が高欄用鉄筋44の下に回らなくなり、骨材がコンクリートの中で均一にならず、コンクリートの強度が不均一となるという問題が生じる。そこで、高欄用鉄筋44を床型枠から離して配設する必要がある。
【0003】
図9は従来技術により、捨て筋58を使用して高欄用鉄筋44を床型枠60から離して配設した状態を示す。図10には、図9のB−B断面図を示す。
従来は、図9,図10に示すように、床型枠60の高欄用鉄筋44が配設される位置に補助ブロック56を並べ、補助ブロック56の上に捨て筋58と呼ばれる鉄筋を支持具として置き、高欄用鉄筋44を捨て筋58で支えることで、高欄用鉄筋44を床型枠60から離して配設して位置決めをしていた。しかし、この状態では、捨て筋58と床型枠60の隙間が狭くコンクリートに混ぜられる骨材が捨て筋58の下に回らず、捨て筋58によって骨材が止められてしまい、骨材がコンクリートの中で均一にならず、コンクリートの強度に不均一が生じる。そこで、すじかい(図示せず)で高欄用鉄筋44を支え、床型枠60上にコンクリート打設する前に、捨て筋58とその下の補助ブロック56を取り外して、コンクリートの骨材が高欄用鉄筋44の下にも均一に回るようにしていた。
なお、床型枠60上には床部の形成用に格子状に主筋50と助筋52が配設されるが、主筋50の下にブロック54を並べてその上に主筋50を配設して、主筋50の上に助筋52を配設することで床型枠60から主筋50及び助筋52を離して配設しており、ブロック54はそのまま残しておいても骨材は主筋50の下に回るため、ブロック54はそのままにして、床型枠60上にコンクリートが打設される。
【0004】
コンクリート壁高欄の形成方法として、特開平6−313304号公報(特許文献1)には、床部とコンクリート壁高欄を一体化して形成する従来技術が開示されている。なお、特許文献1はコンクリート壁高欄の型枠に関する技術の説明に主眼を置いているため、高欄用鉄筋の下部を床部に埋め込む方法についての具体的な説明は記載されていない。
【特許文献1】特開平6−313304号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ここで、従来技術の問題点は、捨て筋を取り外す際に、格子状に配列された主筋と助筋の隙間から取り出さなければならないため、捨て筋をこの隙間を通せるように曲げたり切断したりしなければならず、捨て筋58の取り出しに大変な手間がかかる点にあった。
そこで、本発明が解決しようとする課題は、高架道路または橋梁のコンクリート壁高欄の形成に用いる高欄用鉄筋を床型枠から離して支持することができ、床部にコンクリートを打設するときに取り外し等の追加作業を必要としない、高欄用鉄筋の支持具又は支持方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、本発明は次の手段をとる。
まず、本発明の第1の発明は、高架道路または橋梁のコンクリート壁高欄の形成に用いる鉄筋を床型枠から離して支持する金属製支持具であって、
両端に形成されたコの字型の係合部と両端の係合部の間に形成された直線状の支持部を備え、
前記両端の係合部が床型枠上に並行に配列された鉄筋の互いに隣接する鉄筋にそれぞれ係合され、前記支持部が高欄の形成に用いる高欄用鉄筋を支えることを特徴とする。
この第1の発明によれば、高欄用鉄筋を支える金属製支持具の下にコンクリートの骨材が回るので、床部にコンクリートを打設するとき、金属製支持具を取り外す必要がなく、作業効率がよい。
【0007】
次に、本発明の第2の発明は、上記第1の発明に係る金属製支持具であって、
前記直線状の支持部が長さ方向への長さ調節可能に形成されていることを特徴とする。
この第2の発明によれば、床型枠上に並行に配列された鉄筋の間隔に合わせて金属製支持具の支持部の長さを調節することで、鉄筋の間隔が異なる場合でも同一種類の金属製支持具で対応することができる。そのため、鉄筋の間隔毎に支持部の長さの異なる複数種類の金属製支持具を用意しておく必要がなく、金属製支持具の管理が容易である。
【0008】
次に、本発明の第3の発明は、上記第2の発明に係る金属製支持具であって、
前記金属製支持具は差込部材とホルダ部材から成り、前記差込部材は一端に形成されたコの字型の係合部と係合部に続く直線状の支持部を備え、前記ホルダ部材は一端に形成されたコの字型の係合部と係合部に続く直線状の支持部と支持部に略U字状の金属片を付加して形成した2個以上のホルダ孔を備え、前記差込部材の支持部を前記ホルダ部材のホルダ孔に抜き差し自在の状態で挿通して差込部材とホルダ部材を一体化させて、前記直線状の支持部を長さ方向への長さ調節可能に形成したことを特徴とする。
この第3の発明によれば、簡易な構造で支持部の長さの調節を可能としており、長さの調節を簡便に行うことができる。また、ホルダ孔を通じて2本の支持部で高欄用鉄筋を支えるので、支持部の全長が長くなっても支持部の強度が保たれる。
【0009】
次に、本発明の第4の発明は、上記第1〜第3のいずれかの発明に係る金属製支持具を用いて、コンクリート壁高欄の形成に用いる鉄筋を床型枠から離して配設することを特徴とする高架道路または橋梁のコンクリート壁高欄の形成方法である。
この第4の発明によれば、高欄用鉄筋を支える金属製支持具の下にコンクリートの骨材が回るので、床部にコンクリートを打設するとき、金属製支持具を取り外す必要がなく、コンクリート壁高欄を床部と一体化して形成するときの作業効率がよい。
【発明の効果】
【0010】
上記本発明の各発明によれば、次の効果が得られる。
まず、上述した第1の発明によれば、床部にコンクリートを打設するとき、金属製支持具を取り外す必要がないので、作業効率がよい。
次に、上述の第2の発明によれば、金属製支持具の支持部の長さを調節して、床部に配設された鉄筋の間隔が異なる場合でも同一種類の金属製支持具を使用できるため、金属製支持具の在庫管理が容易である。
次に、上述の第3の発明によれば、簡易な構造により金属製支持具の支持部の長さの調節が可能であり、長さの調節を簡便に行うことができ、支持部の強度も保たれる。
次に、上述の第4の発明によれば、床部にコンクリートを打設するとき、金属製支持具を取り外す必要がなく、コンクリート壁高欄を床部と一体化して形成するときの作業効率がよい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明する。
図1に本発明の第一実施例である金属製支持具20を使用して、高欄用鉄筋16を床型枠36から離して支持した状態を示す。図2は図1におけるA−A断面を示す図である。
図3は第一実施例に用いる金属製支持具20の外観斜視図である。金属製支持具20は直径6ミリの鉄の棒を曲げて作成したものであり、両端に形成されたコの字型に折り曲げられた係合部22と、両端の係合部22をつなぐ直線状の支持部24からなる。支持部24の長さは実施例では250ミリであるが、加工のし易さ及び強度確保の観点から、好ましくは80ミリから300ミリ程度である。
【0012】
ここで、金属製支持具20で高欄用鉄筋16を支持するまでの手順を説明する。
まず、床型枠36の上に配設される主筋10及び助筋12の下にコンクリートの骨材が回る隙間を確保するため、床型枠36の上にブロック14が配設される。実施例ではブロック14の高さは約40ミリであり、コンクリートの骨材の大きさは約25ミリである。
次に、ブロック14の上に直径20ミリの主筋10が等間隔に並行して配設され、その上に主筋10よりも細い助筋12が主筋10に直交し互いに並行して配設される。
【0013】
次に、高欄用鉄筋16を配設する位置で、互いに隣接する主筋10に金属製支持具20を係合させる。
金属製支持具20は係合部22の間隔が主筋10の配設間隔と一致するように形成されており、金属製支持具20の両端のコの字型の係合部22を隣接する主筋10に係合させて金属製支持具20が配置される。
ここで、金属製支持具20のコの字部分の内側の高さは主筋10の直径と同じ20ミリに設定されているので、図2に示すとおり、主筋10の底面と金属製支持具20の底面の高さが一致する。
【0014】
次に、高欄用鉄筋16が金属製支持具20の支持部24の上に配置される。この方法によれば、高欄用鉄筋16及び金属製支持具20の下部には、主筋10の下部と同様にコンクリートの骨材の回る隙間が確保されるので、金属製支持具20を取り外す必要がない。そこで、金属製支持具20は主筋10及び高欄用鉄筋16と結束され、床型枠36上にコンクリートが打設されるとき、主筋10や助筋12と共に、床部に埋設される。そのため、従来の捨て筋を使用する工法に比べて、作業効率がよい。
【0015】
図4に本発明の第二実施例である金属製支持具20Aを示す。金属製支持具20Aは直線状の支持部24の長さの調節が可能であることを特徴としている。
金属製支持具20Aは図5に示すとおり、差込部材26とホルダ部材28からなる。差込部材26は直径5ミリの鉄の棒を曲げて作成したものであり、一端に形成されたコの字型の係合部22と係合部22に続く直線状の支持部24を備えている。
ホルダ部材28は直径6ミリの鉄の棒を曲げて作成したものであり、一端に形成されたコの字型の係合部22と係合部22に続く直線状の支持部24を備え、支持部24の中央及び支持部24の係合部22とは反対側の端の2箇所に直径4ミリの鉄の棒を略U字状に曲げたものを溶接してホルダ30を形成し、ホルダ30と支持部24により、差込部材26の支持部24を差込可能なホルダ孔32が形成されている。
そして、差込部材26の支持部24をホルダ部材28の2箇所のホルダ孔32に抜き差し自在の状態で挿通して、差込部材26とホルダ部材28を一体化させ、支持部24の長さが調節可能な金属製支持具20Aを構成している。
金属製支持具20Aは上述のような簡易な構造により支持部24の長さの調節を可能としており、支持部24の長さの調節は両係合部22を引き寄せたり引き離したりすることで簡便に行うことができる。また、ホルダ孔32を通じて2本の支持部24で高欄用鉄筋16を支えるので、支持部24の全長が長くなっても支持部24の強度が保たれる。
【0016】
金属製支持具20Aは支持部24の長さの調節が可能であるため、主筋10の間隔が異なる場合でも、同一種類の金属製支持具20Aで対応することができる。そのため、支持部24の長さの異なる複数種類の金属製支持具を用意しておく必要がなく、金属製支持具の在庫管理が容易である。
また、ホルダ孔32を通じて2本の支持部24で高欄用鉄筋16を支えるので、支持部24の全長が長くなっても支持部24の強度が保たれる。そこで、主筋10の配設間隔が広く金属製支持具20では強度が不足する場合であっても、金属製支持具20Aでは支持部24の強度が確保できる。
なお、金属製支持具20Aの使用方法は長さの調節が可能であることを除いて第一実施例の金属製支持具20と同様であるので、使用方法の詳細な説明は省略する。
【0017】
図6に本発明の第三実施例である金属製支持具20Bを示す。金属製支持具20Bも直線状の支持部24の長さの調節が可能であることを特徴としているが、金属製支持具20Aとは構成が異なる。
図7に金属製支持具20Bを分解した状態の外観斜視図を示す。金属製支持具20Bは、図7に示すとおり同一形状の相互保持部材34を2個組み合わせた構成となっている。相互保持部材34は直径6ミリの鉄の棒を曲げて作成したものであり、一端に形成されたコの字型の係合部22と係合部22に続く直線状の支持部24を備え、支持部24の中央に直径4ミリの鉄の棒を略U字状に曲げたものを溶接してホルダ30を形成し、ホルダ30と支持部24により、相互保持部材34の支持部24を差込可能なホルダ孔32が形成されている。
そして、2個の相互保持部材34を互いに支持部24の端を他方のホルダ孔32に抜き差し自在の状態で挿通して一体化させ、支持部24の長さが調節可能な金属製支持具20Bを構成している。
金属製支持具20Bは同一形状の構成部品からなるため、部品の管理が容易である。
なお、金属製支持具20Bの使用方法は支持部24の長さが調節可能であることを除いて第一実施例の金属製支持具20と同様であるので、使用方法の詳細な説明は省略する。
【0018】
実施例では鉄製の丸棒を加工した金属製支持具を用いたが、金属製支持具の製造方法、断面形状や太さは実施例に限定されない。金属製支持具の材質については、鉄に限定されず、ステンレスでも良い。
また、実施例では金属製支持具一個で高欄用鉄筋を支える例を示したが、支持荷重に応じて、金属製支持具を複数個並べて使用して高欄用鉄筋を支える構成としても良い。
その他、本発明はその発明の思想の範囲で、各種の形態で実施できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】第一実施例において金属製支持具を使用して高欄用鉄筋を床型枠から離して支持した状態を示す図である。
【図2】図1におけるA−A断面を示す図である。
【図3】第一実施例における金属製支持具の外観斜視図である。
【図4】第二実施例における金属製支持具の外観斜視図である。
【図5】第二実施例のおける金属製支持具を分解した状態の外観斜視図である。
【図6】第三実施例における金属製支持具の外観斜視図である。
【図7】第三実施例における金属製支持具を分解した状態の外観斜視図である。
【図8】高架道路または橋梁のコンクリート壁高欄の構造を示す図である。
【図9】従来技術により捨て筋を用いて高欄用鉄筋を床型枠上に配設した状態を示す図である。
【図10】図9におけるB−B断面を示す図である。
【符号の説明】
【0020】
10 主筋
12 助筋
14 ブロック
16 高欄用鉄筋
20、20A、20B 金属製支持具
22 係合部
24 支持部
26 差込部材
28 ホルダ部材
30 ホルダ
32 ホルダ孔
34 相互保持部材
36 床型枠


【特許請求の範囲】
【請求項1】
高架道路または橋梁のコンクリート壁高欄の形成に用いる鉄筋を床型枠から離して支持する金属製支持具であって、
両端に形成されたコの字型の係合部と両端の係合部の間に形成された直線状の支持部を備え、
前記両端の係合部が床型枠上に並行に配列された鉄筋の互いに隣接する鉄筋にそれぞれ係合され、前記支持部が高欄の形成に用いる高欄用鉄筋を支えることを特徴とする金属製支持具。
【請求項2】
請求項1に記載の金属製支持具であって、
前記直線状の支持部が長さ方向への長さ調節可能に形成されていることを特徴とする金属製支持具。
【請求項3】
請求項2に記載の金属製支持具であって、
前記金属製支持具は差込部材とホルダ部材から成り、
前記差込部材は一端に形成されたコの字型の係合部と係合部に続く直線状の支持部を備え、
前記ホルダ部材は一端に形成されたコの字型の係合部と係合部に続く直線状の支持部と支持部に略U字状の金属片を付加して形成した2個以上のホルダ孔を備え、
前記差込部材の支持部を前記ホルダ部材のホルダ孔に抜き差し自在の状態で挿通して差込部材とホルダ部材を一体化させて、前記直線状の支持部を長さ方向への長さ調節可能に形成したことを特徴とする金属製支持具。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれかに記載の金属製支持具を用いて、コンクリート壁高欄の形成に用いる鉄筋を床型枠から離して配設することを特徴とする高架道路または橋梁のコンクリート壁高欄の形成方法。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−52322(P2009−52322A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−220977(P2007−220977)
【出願日】平成19年8月28日(2007.8.28)
【出願人】(507264310)
【Fターム(参考)】