説明

金属製谷瓦

【課題】解決しようとする課題は、棟側の谷瓦1と軒側の谷瓦1の側面同士の重なり部分にある隙間Sから暴風雨によって雨水が入り込んでも、浸入した雨水が棟側の谷瓦1の下へと回ってしまうことを防ぐ金属製谷瓦を提供することである。
【解決手段】谷瓦の水上縁を上方に折り曲げて被覆面を形成する際、被覆面の左右の端部分が水上方向に延びるように形成しながら、谷瓦面の左右も上方に折り曲げられ、被覆面と側面とが連なって形成される。このように形成された谷瓦を用いることで課題を解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本瓦棒葺き屋根に用いられる金属製の谷瓦に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の技術について、図8に基づいて説明する(特許文献1参照)。これは、特許第3401401号公報に示されている金属製の谷瓦1であり、本瓦棒葺き屋根に用いられる。
図8に示された谷瓦1についていうと、谷瓦の水下縁には、谷瓦面11から下方に折り曲げられた覆い面12が形成されており、谷瓦の水上縁には、谷瓦面11から上方に折り曲げられた被覆面13が形成されている。そして、谷瓦の左右には、谷瓦面から上方に折り曲げられた側面14が形成されている。側面14の一部分は内側に折り返されており、折り返し部141となっている。このような金属製谷瓦が開示されている。
そして、図9に示したように、芯木Kに固定して施工する。図示したものは木製芯木であるが、状況に応じて金属製芯木等が用いられることもある。
芯木Kに固定された谷瓦1に山瓦(図示せず)を被せていくが、山瓦の下辺に設けられたはぜ部を谷瓦1の折り返し部141に差し込みながら被せていくことで施工するものである。
【0003】
【特許文献1】特許第3401401号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図9に示したように、棟側の谷瓦1と軒側の谷瓦1の側面同士の重なり部分には、わずかな隙間Sがある。暴風雨時等、暴風によって図9の矢印の方向から隙間Sに雨水が吹き付けられて入り込んだ場合、雨水が棟側の谷瓦1の下へと浸入することがある。(雨水の様子を、図9において雨滴状に表している。)
【0005】
それで、解決しようとする課題は、前述の隙間Sから暴風雨によって雨水が入り込んでも、浸入した雨水が棟側の谷瓦1の下へと回ってしまう可能性を低くする金属製谷瓦を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1枚のカットされた板材から谷瓦を形成するが、谷瓦の水下縁は、谷瓦面から下方に折り曲げられて形成された覆い面となっており、水上縁は、谷瓦面から上方に折り曲げられて形成された被覆面となっている。この被覆面の左右の端部分が水上方向に延びるように形成されており、谷瓦面の左右も上方に折り曲げられて側面が形成されており、被覆面と側面とが連なって形成されている。
このように、金属製谷瓦の被覆面の左右端を水上方向に延ばし、その端部と側面とが連なって形成された谷瓦を用いることで課題を解決する。
【発明の効果】
【0007】
本発明にかかる金属製谷瓦は、被覆面の左右端が水上方向に延びている構成である。この点を従来の技術である図8・図9と比較する。
図8に示されている谷瓦1の被覆面13は、左右端が水上方向に延びていない。覆い面12とほぼ平行に形成されている面である。ゆえに、谷瓦の被覆面に、棟側に位置する谷瓦の覆い面を被せて施工していくと、図9に見られるように覆い面12と被覆面13がほぼ平行に、そして、近くに、位置している。このため、暴風によって図9の矢印の方向から隙間Sに雨水が吹き付けられた場合、隙間Sに入り込んだ雨水は、覆い面12の近くに位置する被覆面13に達し、被覆面13を乗り越え、棟側の谷瓦1の下へと浸入することがある。
これに比べ、本発明にかかる金属製谷瓦は、被覆面の左右の端部分が水上方向に延びている。
このため、谷瓦の被覆面に、棟側に位置する谷瓦の覆い面を被せて施工していくと、被覆面の左右の端部分が水上方向に延びているため、側面付近において、被覆面が覆い面から離れる。こうして、谷瓦同士が重なっている部分の側面付近に、空間が形成される。
そして、棟側の谷瓦と軒側の谷瓦の側面同士の重なり部分にある隙間から、暴風雨によって雨水が入り込んだ場合、雨水はこの空間に流れ込み、覆い面から離れたところに位置する被覆面に達する可能性は低くなる。したがって、被覆面を乗り越え、棟側の谷瓦の下へと浸入する可能性が低くなる。
また、谷瓦の被覆面と側面とが連なって形成されているので、空間に流れ込んだ雨水は、側面と被覆面とによって、棟側の谷瓦の下へと回るのを阻まれて、谷瓦面を流れて排出されるのである。
このように、浸入した雨水が棟側の谷瓦の下へと回ってしまう可能性を低くするものである。
【0008】
また、本発明にかかる金属製谷瓦は、谷瓦面を全体的に水上方向へ延ばしているのではなく、金属製谷瓦の被覆面の左右の端部分を水上方向に延ばしている構成である。それに伴って、谷瓦面も左右の端部分だけが水上方向へ延びている。このため、図8に示した谷瓦と同じ働き幅の谷瓦を作る際、図8に示した谷瓦を製作する場合と同じ材料幅で製作することができるという利点がある。
この点を説明する。
被覆面の左右の端部分の水上方向に延びている箇所において、谷瓦面も水上方向へ延びている。この水上方向へ延びている部分に挟まれた谷瓦面の中央部分は、図8に示した谷瓦と同じ働き幅の谷瓦を作る場合、図8に示した谷瓦と同じ位置になる。
被覆面は、谷瓦面から上方に折り曲げられて形成されるので、前記谷瓦面の中央部分において、谷瓦面から被覆面が立ち上げられる位置は、図8に示した谷瓦と同じ位置になる。
このため、図8に示した谷瓦と同じ働き幅の谷瓦を作る際、図8に示した谷瓦を製作する場合と同じ材料幅で製作することができる。
このように、本発明は、図8に示した谷瓦と同じ働き幅の谷瓦を作る際、同じ材料幅で作ることができるので、材料のコストを上げずに前述の課題を解決することができるものである。
これに比べ、例えば、図8に示した谷瓦の谷瓦面を、その左右の端部分を水上方向に延ばすのではなく、谷瓦面全体を水上方向へ延ばして形成した場合も、谷瓦の被覆面に棟側に位置する谷瓦の覆い面が被せられている部分において、空間が形成され、この空間によって、浸入した雨水が棟側の谷瓦の下へと回ってしまう可能性を低くすることができる。
しかし、この場合、一枚の谷瓦を製作するために、谷瓦面全体を水上方向へ延ばした分に相当する分、材料を多く必要とする。結果として材料のコストが高くなってしまうという課題が生じる。
本発明はこのような新たな課題を生じさせることなく、前述の課題を解決するものである。
【実施例】
【0009】
本発明第一実施例について、図1〜図6に基づいて説明する。
図1は谷瓦1の斜視図であり、図2は正面図、図3は平面図、図4は図3のA−A線断面図、図5は水上方向から見た場合の斜視図である。そして、図6は本実施例の説明図である。
【0010】
本実施例は、1枚のカットされた板材から谷瓦1を形成する。
図1〜図5に見られるように、谷瓦1の水下縁は、谷瓦面11から下方に折り曲げられて形成された覆い面12となっており、水上縁は、谷瓦面11から上方に折り曲げられて形成された被覆面13となっている。
谷瓦1の水上縁を上方に折り曲げて被覆面13が形成されているが、谷瓦1の水上縁が略直角に上方に折り曲げられており、被覆面13の左右の端部分が水上方向に湾曲して延びるように形成されており、谷瓦面11の左右も上方に折り曲げられて側面14が形成されており、被覆面13と側面14とが連なって形成されている。被覆面13の左右の端部分の水上方向に湾曲して延びている箇所において、谷瓦面11も水上方向へ延びている。
そして、側面14には、水上から水下にかけて、段部142が設けられており、側面14の一部分は内側に折り返されて、折り返し部141となっている。
覆い面12の下辺は水上方向へ略直角に折り曲げられ、被覆面13の上辺は水下方向へ略直角に折り曲げられている。
【0011】
この谷瓦1を、図6に示したように、芯木Kに固定して施工する。図示したものは木製芯木であるが、状況に応じて金属製芯木等が用いられることもある。
芯木Kに固定された谷瓦1に山瓦(図示せず)を被せていくが、山瓦の下辺に設けられたはぜ部を谷瓦1の折り返し部141に差し込みながら被せていくことで施工するものである。
【0012】
本実施例にかかる金属製谷瓦1は、被覆面13の左右の端部分が水上方向に湾曲して延びている構成である。
このため、谷瓦1の被覆面13に、棟側に位置する谷瓦1の覆い面12を被せて施工していくと、被覆面の左右の端部分が水上方向に延びているため、側面14付近において、被覆面13が覆い面12から離れる。図6に見られるように、谷瓦同士が重なっている部分に、空間Bが形成されるのである。
そして、棟側の谷瓦1と軒側の谷瓦1の側面同士の重なり部分にある隙間Sに、図6の矢印の方向から、暴風雨によって雨水が吹き付けられて入り込んだ場合、その雨水は空間Bに流れ込み、覆い面12から離れたところに位置する被覆面13に達する可能性は低くなる。したがって、被覆面13を乗り越え、棟側の谷瓦1の下へと浸入する可能性が低くなる。(雨水の様子を、図6において雨滴状に表している。)
また、谷瓦1の被覆面13と側面14とが連なって形成されているので、空間Bに流れ込んだ雨水は、側面14と被覆面13とによって、棟側の谷瓦1の下へと回るのを阻まれて、谷瓦面11を流れて排出されるのである。
このように、浸入した雨水が棟側の谷瓦の下へと回ってしまう可能性を低くするものである。
【0013】
また、谷瓦面11を全体的に水上方向へ延ばしているのではなく、被覆面13の左右端を水上方向に延ばしている構成である。それに伴って、谷瓦面11も左右端だけが水上方向へ延びている。このため、図8に示した谷瓦と同じ働き幅の谷瓦を作る際、図8に示した谷瓦を製作する場合と同じ材料幅で製作することができるという利点がある。
この点を説明する。(図3、図4参照)
被覆面13の左右の端部分の水上方向に延びている箇所において、谷瓦面11も水上方向へ延びている。この水上方向へ延びている部分に挟まれた谷瓦面11の中央部分は、図8に示した谷瓦と同じ働き幅の谷瓦を作る場合、図8に示した谷瓦と同じ位置になる。
被覆面13は、谷瓦面11から上方に折り曲げられて形成されるので、前記谷瓦面の中央部分において、谷瓦面11から被覆面13が立ち上げられる位置は、図8に示した谷瓦と同じ位置になる。
このため、図8に示した谷瓦と同じ働き幅の谷瓦を作る際、図8に示した谷瓦を製作する場合と同じ材料幅で製作することができる。
つまり、材料コストが図8に示した谷瓦と同等でありながら、前述の通り、隙間Sから暴風雨によって雨水が入り込んでも、浸入した雨水が棟側の谷瓦1の下へと回ってしまう可能性を低くする金属製谷瓦である。
【0014】
さらに、本実施例にかかる金属製谷瓦1は、側面14に、水上から水下にかけて、段部142を設けている。
例えば、チタンで谷瓦1を製作すると、成型後、スプリングバックの作用で谷瓦1の側面14が変形しやすい。しかし、側面14の水上から水下にかけて段部142を設けると、側面14を変形させるスプリングバックの作用を抑えることができる。このため、変形し易いという点を改善できる。
チタン等のスプリングバックの作用が強い材質で谷瓦1を作る時、段部142を設けるとこのような効果がある。
【0015】
図7に基づいて、他の実施例について説明する。
図7は、図4同様の谷瓦1の断面図を用いて、2枚の谷瓦が重なっている様子を表している説明図である。
前述の実施例は、谷瓦1の水上縁を上方に折り曲げて被覆面13を形成する際、谷瓦1の水上縁を略直角に上方に折り曲げ、被覆面13の左右の端部分が水上方向に湾曲して延びるように形成している。
図7に示した他の実施例は、谷瓦1の水上縁を上方に折り曲げて被覆面13を形成する際、谷瓦1の水上縁を斜め上方に折り曲げ、被覆面13の左右の端部分が水上方向に湾曲して延びるように形成している。
このように、谷瓦1の水上縁を上方に折り曲げて被覆面13を形成する際、斜め上方に折り曲げて形成しても、本発明の目的を達成することができる。被覆面13は、谷瓦1の水上縁を略直角に折り曲げたものに限定するものではないことを示す一例である。
【0016】
また、図1〜図7に示した実施例は、被覆面13の左右の端部分が水上方向に延びている構成において、湾曲して延びている構成を採用しているが、本発明は、湾曲して延びることに限定するものではない。被覆面13の左右の端部分が水上方向に延びるように形成して、同等の効果を達成すればよいので、例えば、湾曲ではなく斜め水上方向へ描かれる直線状に延びても良い。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明実施例の谷瓦の斜視図である。
【図2】本発明実施例の谷瓦の正面図である。
【図3】本発明実施例の谷瓦の平面図である。
【図4】図3のA−A線断面図である。
【図5】本発明実施例の谷瓦の水上方向から見た場合の斜視図である。
【図6】本発明実施例の説明図である。
【図7】本発明の他の実施例の説明図である。
【図8】従来の技術を表す図である。
【図9】従来の技術の説明図である。
【符号の説明】
【0018】
1 谷瓦
11 谷瓦面
12 覆い面
13 被覆面
14 側面
141 折り返し部
142 段部
W1 被覆面湾曲部
W2 立ち上げ湾曲部
B 空間
S 隙間
K 芯木

【特許請求の範囲】
【請求項1】
谷瓦の水下縁には
谷瓦面から下方に折り曲げられた覆い面が形成されており、
谷瓦の水上縁には
谷瓦面から上方に折り曲げられた被覆面が形成されており、
谷瓦の左右には
谷瓦面から上方に折り曲げられた側面が形成されている金属製谷瓦において、
被覆面の左右の端部分が水上方向に延びており、
その端部が側面に連なっていることを特徴とする
金属製谷瓦。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−46254(P2007−46254A)
【公開日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−229024(P2005−229024)
【出願日】平成17年8月8日(2005.8.8)
【出願人】(390005005)ルーフシステム株式会社 (15)