説明

金属製配線ボックスのノックアウト構造

【課題】閉鎖板を貫通孔から簡単に除去することができる金属製配線ボックスのノックアウト構造を提供すること。
【解決手段】金属製配線ボックスの底壁11に形成された閉鎖板14は、その周方向の一部が貫通孔13の内周面に連結部15を介して連結されている。閉鎖板14は、底壁11の外面11a側から内面11b側へ向けた閉鎖板14への押圧により連結部15を基点として傾動可能に連結されている。そして、ノックアウト構造は、閉鎖板14を底壁11に対し、一方向(底壁11の外面11a側から内面11b側に向けた方向)のみへ傾動させることにより、連結部15が破断されるように構成されている。具体的には、連結部15は、貫通孔13内に位置すべく貫通孔13の内周面に連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貫通孔を閉鎖板により閉鎖し、金属製配線ボックス内に配線を引き込む際、又は壁部に配管材を接続する際の貫通孔からの閉鎖板の除去を可能にした金属製配線ボックスのノックアウト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示のように、金属製配線ボックスの壁部に形成された円形状の貫通孔(特許文献1では取付孔)は、その未使用時は円板状の閉鎖板(特許文献1ではノック)によって閉鎖されている。この閉鎖板は、一般には、壁部にプレス成形によって形成されている。図8(a)に示すように、金属製配線ボックスの閉鎖板81は、その周方向の一部の連結部83が壁部82に繋がり、その他の部位は壁部82から分断されるように壁部82をプレスして形成されている。また、図8(b)に示すように、金属製配線ボックスの内側において、連結部83は閉鎖板81から貫通孔82aの周縁を越えて壁部82にまで延びており、壁部82と閉鎖板81に跨って形成されている。
【0003】
そして、貫通孔82aに配線を挿通する際、又は電線管等の配管材を接続する際、閉鎖板81は貫通孔82aから除去されるようになっている。閉鎖板81の除去は、まず、ハンマー等により閉鎖板81を金属製配線ボックスの外側から内側に向けて殴打(押圧)する。すると、連結部83のみが壁部82に繋がった状態で、閉鎖板81は金属製配線ボックスの内側へ向けて傾斜するように変形する。その後、閉鎖板81において、壁部82から離間した部位をペンチ等の工具で摘み、連結部83を基点にして閉鎖板81の傾動を繰り返す。すると、連結部83に金属疲労が生じ、連結部83が壁部82から破断される結果、閉鎖板81が貫通孔82aから除去される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−333729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、閉鎖板81の除去作業において、殴打することにより傾いた閉鎖板81を工具で摘み、繰り返し傾動させる必要があり、除去作業が非常に面倒であった。
本発明は、上記従来の問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、閉鎖板を貫通孔から簡単に除去することができる金属製配線ボックスのノックアウト構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、金属製配線ボックスの壁部に形成された貫通孔が閉鎖板により閉鎖されるとともに、前記金属製配線ボックス内に配線を引き込む際、又は前記壁部に配管材を接続する際には前記閉鎖板を前記貫通孔から除去可能にした金属製配線ボックスのノックアウト構造であって、前記閉鎖板は、該閉鎖板の周方向の一部が前記壁部に連結部を介して連結されるとともに、前記壁部の一面側から他面側へ向けた前記閉鎖板への押圧により前記連結部を基点として傾動可能に連結されており、前記閉鎖板を、前記壁部に対し一方向のみへ傾動させることにより、前記連結部が破断されるように構成されていることを要旨とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の金属製配線ボックスのノックアウト構造において、前記連結部は、前記貫通孔内に位置すべく前記貫通孔の内周面に連結されていることを要旨とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2に記載の金属製配線ボックスのノックアウト構造において、前記壁部に対し直交する基準線を想定した場合、前記壁部の一面との前記連結部の連結箇所、及び前記壁部の他面との前記連結部の連結箇所それぞれが前記基準線上に位置していることを要旨とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の金属製配線ボックスのノックアウト構造において、前記閉鎖板は、傾動した閉鎖板が、前記壁部における貫通孔周縁部、又は該貫通孔が形成された壁部に直交する壁部に接する前に破断されることを要旨とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、閉鎖板を貫通孔から簡単に除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態の金属製配線ボックスを示す斜視図。
【図2】(a)はノックアウト構造を示す断面図、(b)はノックアウト構造を示す部分斜視図、(c)はノックアウト構造を金属製配線ボックス内から示す図。
【図3】(a)は第1金型及び第2金型を示す斜視図、(b)は貫通孔形成用凹部内に第2金型及び押戻部材を挿入した状態を示す部分断面図。
【図4】(a)は載置面に底壁を載置した状態を示す部分断面図、(b)は第2金型により底壁をプレスした状態を示す部分断面図、(c)は第2金型を第1金型から離間させた状態を示す部分断面図。
【図5】(a)は実施形態のノックアウト構造を示す部分断面図、(b)は比較例のノックアウト構造を示す部分断面図。
【図6】(a)は実施形態の閉鎖板を90度傾動させた状態を示す部分断面図、(b)は比較例の閉鎖板を90度傾動させた状態を示す部分断面図。
【図7】(a)は実施形態の閉鎖板が破断した状態を示す部分断面図、(b)は比較例の閉鎖板を傾動させた状態を示す部分断面図。
【図8】(a)は背景技術のノックアウト構造を示す部分断面図、(b)は背景技術のノックアウト構造を示す背面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜図7にしたがって説明する。
図1に示すように、金属製配線ボックス10は、矩形板状をなす底壁11と、この底壁11の側縁から立設された側壁12と、から一面に開口する有底四角箱状に形成されている。本実施形態では、底壁11、及び側壁12が金属製配線ボックス10の壁部を形成している。
【0013】
底壁11には、円孔状の貫通孔13が複数形成されるとともに、この貫通孔13は、配線(例えば、ケーブル)を挿通する際、又は配管材(例えば、電線管)を接続する際、以外は、円板状の閉鎖板14によって閉鎖されている。言い換えると、貫通孔13に配線(例えば、ケーブル)を挿通する際、又は配管材(例えば、電線管)を接続する際、閉鎖板14は貫通孔13から除去されるようになっている。そして、底壁11には、貫通孔13からの閉鎖板14の除去を容易としたノックアウト構造が設けられている。
【0014】
次に、ノックアウト構造について説明する。
図2(a)に示すように、閉鎖板14は、周方向の一部に形成された連結部15によって底壁11に連結されている。なお、連結部15は、閉鎖板14と貫通孔13の内周面とを繋ぐ部位である。そして、閉鎖板14は、連結部15のみで底壁11に連結されており、閉鎖板14における連結部15以外の周縁部は貫通孔13の内周面から分断されている。よって、閉鎖板14は、連結部15が破断されれば、底壁11(貫通孔13内)から除去されるようになっている。
【0015】
また、閉鎖板14は、その外面14a(一面)が、底壁11(壁部)の一面としての外面11aよりも、他面としての内面11b側へ退避するとともに、閉鎖板14は、その内面14b(他面)が、底壁11の内面11bより金属製配線ボックス10の内側へ突出している。また、閉鎖板14は、その厚み方向における外面14a側の一部が貫通孔13内に入り込んでいる一方で、厚み方向のほぼ全体が金属製配線ボックス10の内側へ突出している。本実施形態では、底壁11の厚みN1に対し、閉鎖板14の厚み方向の一部N2だけが貫通孔13内に入り込んでいる。そして、閉鎖板14の厚み方向の一部は、その周縁部が貫通孔13の内周面に嵌合しており、この嵌合により閉鎖板14は容易に貫通孔13から外れないようになっている。
【0016】
図2(b)及び(c)に示すように、連結部15は、貫通孔13の内周面(底壁11における貫通孔13の周縁)から閉鎖板14の外面14aに至るまで延びている。また、連結部15は、貫通孔13の内周面よりも貫通孔13の外側へは延びておらず、貫通孔13内に位置している。ここで、図2(a)に示すように、底壁11の外面11a及び内面11bに直交し、かつ貫通孔13の内周面を通過する仮想線を基準線Mとする。この場合、連結部15は、基準線Mから貫通孔13内に向けて延びている。また、連結部15において、底壁11の外面11aとの連結箇所Q1は基準線M上に位置している。さらに、連結部15において、底壁11の内面11bとの連結箇所Q2も基準線M上に位置し、2つの連結箇所Q1,Q2は同一直線(基準線M)上に位置している。また、閉鎖板14の周縁を厚み方向に延びる直線を、閉鎖板14の接線Nとすると、この接線Nは、底壁11の外面11a及び内面11bに直交している。
【0017】
次に、ノックアウト構造の製造方法について説明する。
まず、ノックアウト構造を製造するための金型について説明する。図3(a)及び(b)に示すように、金型は、金属製配線ボックス10の底壁11が載置される第1金型31と、この第1金型31に対し接離可能な第2金型32と、から構成されている。第1金型31の上面には、金属製配線ボックス10の底壁11を載置可能な載置面31aが形成されるとともに、この載置面31aには、貫通孔13の開口形状に沿った円形状の貫通孔形成用凹部31bが形成されている。この貫通孔形成用凹部31bの内周面と、載置面31aとの間に形成される角部の角度θは、直角をなすように形成されている。すなわち、貫通孔形成用凹部31bの開口縁は直角に形成されている。また、貫通孔形成用凹部31b内には、円柱状の押戻部材33が摺動可能に収容されている。
【0018】
第2金型32は、円柱状に形成されるとともに、第2金型32の先端には、底壁11をプレスするための平坦面状をなすプレス面32aが形成されている。第2金型32の直径(プレス面32aの直径)は、貫通孔13の孔径より僅かに小さく設定されるとともに、貫通孔形成用凹部31bの直径より僅かに小さく設定されている。このため、第2金型32は、貫通孔形成用凹部31b内に挿入可能になっている。
【0019】
第2金型32の先端縁には、連結部形成用凹部32bが凹設されている。連結部形成用凹部32bは、プレス面32aの周縁部の一部を四角箱状に切り欠いて形成されている。このため、連結部形成用凹部32bの内上面は、プレス面32aに対し平行をなすように延びるとともに、連結部形成用凹部32bの内上面に繋がる三側面は、それぞれ第2金型32の中心軸に対し平行をなすように延びている。そして、連結部形成用凹部32bの内上面と、三側面との間の角度は直角になっている。
【0020】
次に、上記金型を用いてノックアウト構造を製造する方法について図4にしたがって説明する。
まず、第1金型31に対し第2金型32が上方へ離間し、かつ押戻部材33が載置面31aから退避した状態において、図4(a)に示すように、第1金型31の載置面31aに底壁11を載置する。次に、図4(b)に示すように、第2金型32を第1金型31に向けて移動させ、貫通孔形成用凹部31b内に第2金型32を挿入し、プレス面32aにより底壁11をプレス(押圧)する。
【0021】
すると、プレス面32aにより、底壁11の一部が貫通孔形成用凹部31b内に向けてプレスされる。このとき、連結部形成用凹部32bにより、第2金型32で底壁11をプレスしつつも、プレス面32aでプレスされない部位が存在し、そのプレスされない部位に連結部15が形成される。
【0022】
また、プレス面32aにより底壁11がプレスされると、プレスに伴う閉鎖板14側への引張りにより、連結部15の上面は下面に向けて凹む弧状に成形される。また、プレスに伴う載置面31aへの底壁11の押し付けにより、連結部15の下面には、貫通孔形成用凹部31bの開口縁の角部が食い込み、僅かに窪み部15cが形成される。
【0023】
図4(b)の拡大図に示すように、第2金型32のプレス量F(底壁11の厚み方向への押圧量)は、底壁11の厚みN1(1.6mm)よりも大きくなる(1.6mm+0.1mm=1.7mm)ように設定される。このため、底壁11は、プレス面32aによるプレスによって、底壁11の内面11b側に打ち抜かれるとともに、円板状に打ち抜かれた部位に閉鎖板14が形成される。このとき、連結部形成用凹部32bによって連結部15を形成することで、連結部15により閉鎖板14は底壁11に連結されている。
【0024】
次に、図4(c)に示すように、閉鎖板14を底壁11の内面11b側に打ち抜いた後、第2金型32を貫通孔形成用凹部31bから離脱させるとともに、押戻部材33により閉鎖板14を貫通孔13内に僅かに押し戻し、閉鎖板14の周縁部を貫通孔13に嵌合する。なお、本実施形態では、閉鎖板14が、底壁11の厚み方向に沿って0.2mm押し戻されるように押戻部材33の移動量が設定される。その結果、貫通孔13内には、閉鎖板14が底壁11の厚み方向に沿って0.1mmだけ嵌合され、貫通孔13が閉鎖板14によって閉鎖されてノックアウト構造が形成される。
【0025】
押戻部材33によって閉鎖板14を押し戻す際、閉鎖板14は貫通孔形成用凹部31bの内周面に沿って押し戻される。このため、押し戻しによって貫通孔13の周縁より外側へ底壁11形成用の金属板が逃げることが防止され、貫通孔13の内周面より内側に連結部15が位置するようになる。また、貫通孔形成用凹部31bの開口縁は直角をなすため、閉鎖板14が押し戻されても、底壁11の内面11bに対し、閉鎖板14の周縁部は直交するように押し戻される。
【0026】
次に、ノックアウト構造の作用及び閉鎖板14を除去する方法について図5〜図7にしたがって説明する。なお、図5〜図7の(a)は、本実施形態のノックアウト構造を示し、図5〜図7の(b)は、比較例としてのノックアウト構造を示す。図5(b)に示すように、比較例のノックアウト構造においては、連結部40は、底壁41における貫通孔41aの内周面から閉鎖板42の外面42aに至るまで延びている。また、連結部40は、底壁41の内面41b側において、貫通孔41aの周縁よりも貫通孔41aの外側へ延びている。底壁41の外面41c及び内面41bに直交し、かつ貫通孔41aの内周面を通過する仮想線を基準線Hとすると、連結部40において、底壁41の外面41cとの連結箇所P1は基準線H上に位置している。一方、連結部40において、底壁41の内面41bとの連結箇所P2は基準線Hより外側に位置しており、連結箇所P1,P2は同一直線上に位置していない。よって、連結部40は、底壁41から斜めに延びるように形成されており、底壁41の外面41c及び内面41bと、閉鎖板42の外面42a及び内面42bとの間の角度は、鈍角(90度以上)になっている。
【0027】
まず、閉鎖板14,42をその外面14a,42aからハンマー等で殴打(押圧)する。すると、閉鎖板14,42の貫通孔13,41aへの嵌合が外れ、閉鎖板14,42が連結部15,40を基点にして底壁11,41の内面11b,41b側へ傾斜するように変形する(傾動する)。閉鎖板14,42が僅かに傾動した状態では、連結部15,40は破断されず、閉鎖板14,42は連結部15,40を介して底壁11,41に連結されている。
【0028】
次に、図6(a)及び(b)に示すように、閉鎖板14,42を工具(図示せず)で把持し、閉鎖板14,42を底壁11,41の外面14a,42a側(閉鎖板14,42の外面14a,42a側)から底壁11,41の内面11b,41b側(閉鎖板14の内面14b,42b側)に向けた一方向へ、一度だけ90度傾動させる。
【0029】
続けて、閉鎖板14,42を90度を僅かに越える角度まで傾動させる。すると、図7(a)に示すように、本実施形態のノックアウト構造においては、連結部15の両側に位置する閉鎖板14の周縁部が、底壁11の内面11bに乗り上げ、連結部15には閉鎖板14を底壁11から離間させる方向への応力が発生する。さらに、連結部15の内面側には、窪み部15cが形成されており、また、連結部15の外面側は凹むように弧状に成形されている。その結果、閉鎖板14を傾動させたとき、窪み部15cにより連結部15の破断が助長され、閉鎖板14の内面14bが、底壁11及び側壁12の内面11bに接する前に、連結部15が底壁11から破断される。なお、連結部15は、90度を越える直前や、90度に達したときでも底壁11から破断されることもあり、閉鎖板14を底壁11に対して約80〜100度の間(所定範囲内)で傾動させることで破断される。また、連結部15は、閉鎖板14を一方向へ向けて一度傾動させただけで破断される。
【0030】
一方、図7(b)に示すように、比較例のノックアウト構造においては、閉鎖板42は底壁41の内面41bには乗り上げることなく、さらに、傾動され、底壁41に対しほぼ180度に至るまで閉鎖板42を傾動させる、又は繰り返し、閉鎖板42を傾動させることで、連結部40が破断される。
【0031】
上記実施形態によれば、以下のような効果を得ることができる。
(1)金属製配線ボックス10のノックアウト構造において、閉鎖板14を底壁11の外面11a側から内面11b側(閉鎖板14の外面14a側から内面14b側)に向けて傾動させた際、その一方向へ一度傾動させるだけで連結部15が破断されるように構成した。このため、閉鎖板14を一方向及び他方向へ向けて繰り返し傾動させて連結部15を底壁11から破断する場合と比べると、閉鎖板14を一度傾動させるだけで、閉鎖板14を底壁11から除去することができ、閉鎖板14を簡単に除去することができる。
【0032】
(2)金属製配線ボックス10のノックアウト構造において、連結部15は、貫通孔13内に位置するように、貫通孔13の内周面に連結されている。このため、閉鎖板14を傾動させたとき、連結部15は貫通孔13内で屈曲し、傾動に伴う連結部15の逃げ部がない。したがって、閉鎖板14を傾動させたときに、連結部15に応力を集中させ、連結部15を容易に破断することができる。
【0033】
(3)金属製配線ボックス10のノックアウト構造において、連結部15における底壁11の外面11aとの連結箇所Q1及び、底壁11の内面11bとの連結箇所Q2は基準線M上に位置している。このため、閉鎖板14を90度を僅かに越えた角度まで傾動させると、連結部15を挟むように位置する閉鎖板14の周縁部が底壁11の内面11bに乗り上げることとなり、この乗り上げの際に、連結部15には底壁11から離間する方向への応力を発生させることができ、この応力によって連結部15を破断させることができる。よって、閉鎖板14を一度傾動させるだけで、連結部15を簡単に破断することができる。
【0034】
(4)金属製配線ボックス10のノックアウト構造において、連結部15に繋がる閉鎖板14を挟む周縁部と、底壁11の内面11bとの間の角度は直角になっている。このため、閉鎖板14を90度以上傾動させないと、連結部15を挟む閉鎖板14の周縁部が底壁11の内面11bに乗り上げない。したがって、閉鎖板14が障害物等に接触し、閉鎖板14が多少押圧されて傾動しても、閉鎖板14の傾動角度が90度を越えない限り、閉鎖板14が底壁11から除去されることはない。
【0035】
(5)金属製配線ボックス10のノックアウト構造において、閉鎖板14はプレス成形によって形成されるが、底壁11の厚みN1よりも大きいプレス量Fで底壁11をプレスした後、貫通孔13内に閉鎖板14の厚み方向の一部が入り込むように閉鎖板14が押し戻されてノックアウト構造が形成されている。このため、閉鎖板14は貫通孔13内に一部が嵌合されており、閉鎖板14が簡単に傾動することを防止することができ、軽度の衝撃により貫通孔13が開放されてしまうことを防止することができる。
【0036】
(6)金型における第1金型31においては、貫通孔形成用凹部31bの開口縁を直角に形成するとともに、第2金型32のプレス面32aに連結部形成用凹部32bを形成した。このため、底壁11を第2金型32でプレスしたとき、プレス面32aにより閉鎖板14を形成しつつ、連結部形成用凹部32bにより、連結部15が貫通孔13内に位置するように形成することができる。
【0037】
(7)金型における第1金型31においては、貫通孔形成用凹部31bの開口縁を直角に形成した。このため、底壁11を第2金型32でプレスしたとき、貫通孔形成用凹部31bの角部が、連結部15の内面に食い込み、連結部15に窪み部15cを形成することができる。よって、窪み部15cにより、連結部15の破断を助長することができ、連結部15を破断しやすくすることができる。
【0038】
(8)閉鎖板14を、底壁11の外面11a側から内面11b側(閉鎖板14の外面14a側から内面14b側)へ向けた一方向へ一度傾動させるだけで、連結部15を破断し、閉鎖板14を除去できる。このため、閉鎖板14を、金属製配線ボックス10内で繰り返し傾動させる必要が無くなり、閉鎖板14除去のために繰り返し傾動させるための作業を行う空間を金属製配線ボックス10内に確保する必要がない。したがって、金属製配線ボックス10の開口側に、塗代カバーや蓋体が取り付けられるとともに、金属製配線ボックス10の開口が閉塞され、閉鎖板14を繰り返し傾動させる空間が確保できなくても、閉鎖板14を簡単に除去することができる。
【0039】
(9)閉鎖板14を底壁11に対し約90度傾動させると連結部15を破断して閉鎖板14を除去することができる。このため、傾動させた閉鎖板14の内面14bが、底壁11の内面11bや、側壁12の内面に当接する前に、連結部15を破断し、閉鎖板14を除去することができる。
【0040】
なお、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
○ 実施形態では、底壁11の外面11a側(閉鎖板14の外面14a側、金属製配線ボックス10の外側)から底壁11の内面11b側(閉鎖板14の内面14b側、金属製配線ボックス10の内側)に向けて閉鎖板14を傾動させて、連結部15を破断した。しかし、これに限らず、底壁11の内面11b側(閉鎖板14の内面14b、金属製配線ボックス10の内側)から底壁11の外面11a側(閉鎖板14の外面14a、金属製配線ボックス10の外側)に向けた一方向へ閉鎖板14を傾動させて、連結部15を破断するようにしてもよい。
【0041】
○ 実施形態では、閉鎖板14の貫通孔13への嵌合が外れた後、閉鎖板14を工具で把持して傾動させたが、これに限らない。閉鎖板14の貫通孔13への嵌合が外れた後は、手(指)により閉鎖板14を傾動させて連結部15を破断してもよい。この場合、貫通孔13内に手(指)を挿入して押してもよく、指を閉鎖板14に引っ掛けて金属製配線ボックス10内で閉鎖板14を傾動させてもよい。
【0042】
○ 閉鎖板14は、貫通孔13に嵌合していなくてもよく、その場合は、工具等を用いることなく、手(指)で直ちに閉鎖板14の傾動を開始させることができる。
○ 実施形態において、連結部15を挟む閉鎖板14の周縁部と、底壁11の内面11bとの間の角度を直角にしたが、閉鎖板14を一方向に向けて一度傾動させたとき、連結部15を破断できるのであれば、この角度は若干の誤差があってもよい。
【0043】
○ 実施形態では、連結部15の連結箇所Q1,Q2が基準線M上に位置するようにしたが、閉鎖板14を一方向に向けて一度傾動させたとき、連結部15を破断できるのであれば、連結箇所Q2は基準線Mから若干ずれた位置にあってもよい。
【0044】
○ 閉鎖板14を貫通孔13に嵌合させる量は変更してもよく、閉鎖板14が障害物等に衝突したときの閉鎖板14の傾動を防止するために、閉鎖板14の貫通孔13への嵌合量を実施形態より多くしてもよい。さらには、閉鎖板14を所定範囲傾動させたとき、連結部15を破断できるのであれば、閉鎖板14の外面14aと底壁11の外面11aが同一平面上に位置していてもよい。
【0045】
○ 実施形態では、金属製配線ボックス10として有底四角箱状のものに具体化したが、金属製配線ボックス10としては、底壁11を有しない四角枠状のものに具体化してもよい。この場合、枠に組み付けられる別体の底部材や蓋部材にノックアウト構造を設けてもよい。
【0046】
○ 実施形態では、ノックアウト構造を金属製配線ボックス10の底壁11に設けたが、側壁12に設けてもよい。さらには、金属製配線ボックス10と別体の蓋部材にノックアウト構造を設けてもよい。
【0047】
○ 実施形態では、第2金型32の連結部形成用凹部32bを、第2金型32の先端のみに形成したが、連結部形成用凹部32bを第2金型32の軸方向全体に亘って延びるように形成してもよい。
【0048】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について以下に追記する。
(イ)前記閉鎖板は、前記壁部の外面より凹む位置に配置されるとともに、前記貫通孔に厚み方向の一部が嵌合している請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の金属製配線ボックスのノックアウト構造。
【0049】
(ロ)金属製配線ボックスの壁部に形成された貫通孔が閉鎖板により閉鎖されるとともに、前記金属製配線ボックス内に配線を引き込む際、又は前記壁部に配管材を接続する際には前記閉鎖板を前記貫通孔から除去可能にした金属製配線ボックスのノックアウト構造を形成するための金型であって、前記壁部の載置面を有するとともに、前記貫通孔の開口形状に合わせた貫通孔形成用凹部を有する第1金型と、前記壁部をプレスしつつ前記貫通孔形成用凹部に挿入されて前記閉鎖板を形成する第2金型と、を有し、前記載置面と前記貫通孔形成用凹部の内面とで形成される前記貫通孔形成用凹部の開口縁の角度は直角に形成されるとともに、前記閉鎖板における周方向の一部を前記貫通孔の内周面の一部に連結した連結部を形成すべく、前記第2金型のプレス面に連結部形成用凹部が形成されている金型。
【符号の説明】
【0050】
M…基準線、Q1,Q2…連結箇所、10…金属製配線ボックス、11…壁部としての底壁、11a…壁部の一面としての底壁の外面、11b…壁部の他面としての底壁の内面、13…貫通孔、14…閉鎖板、15…連結部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属製配線ボックスの壁部に形成された貫通孔が閉鎖板により閉鎖されるとともに、前記金属製配線ボックス内に配線を引き込む際、又は前記壁部に配管材を接続する際には前記閉鎖板を前記貫通孔から除去可能にした金属製配線ボックスのノックアウト構造であって、
前記閉鎖板は、該閉鎖板の周方向の一部が前記壁部に連結部を介して連結されるとともに、前記壁部の一面側から他面側へ向けた前記閉鎖板への押圧により前記連結部を基点として傾動可能に連結されており、
前記閉鎖板を、前記壁部に対し一方向のみへ傾動させることにより、前記連結部が破断されるように構成されている金属製配線ボックスのノックアウト構造。
【請求項2】
前記連結部は、前記貫通孔内に位置すべく前記貫通孔の内周面に連結されている請求項1に記載の金属製配線ボックスのノックアウト構造。
【請求項3】
前記壁部に対し直交する基準線を想定した場合、前記壁部の一面との前記連結部の連結箇所、及び前記壁部の他面との前記連結部の連結箇所それぞれが前記基準線上に位置している請求項2に記載の金属製配線ボックスのノックアウト構造。
【請求項4】
前記閉鎖板は、傾動した閉鎖板が、前記壁部における貫通孔周縁部、又は該貫通孔が形成された壁部に直交する壁部に接する前に破断される請求項1〜請求項3のうちいずれか一項に記載の金属製配線ボックスのノックアウト構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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