説明

金属酸化物微粒子分散剤、及び分散体

【課題】 微粒子の凝集を抑制した、各種金属酸化物微粒子の分散体の製造に有用な、分散安定性に優れた分散剤を提供すること。
【解決手段】 ヒドロキシアルキルオキセタンとエポキシ基を1つ有する化合物とを反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオール(A)と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる多分岐(メタ)アクリレート(B)を含有する金属酸化物微粒子分散剤、及び該分散剤に金属酸化物微粒子が分散されてなる分散体を提供すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金属酸化物微粒子を良好に分散させることのできる反応性分散剤、及び該分散剤を含有する分散体に関する。
【背景技術】
【0002】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化塗膜の硬度や耐候性、耐熱性等の向上のため、組成物に無機金属酸化物微粒子を分散させる方法がある。例えば、広く工業的に使用されている金属酸化物微粒子として、シリカ微粒子が知られている。シリカ微粒子には湿式法で製造されるコロイダルシリカや、乾式法で製造されるフュームドシリカがある。シリカ微粒子の表面にはシラノール基があり、金属酸化物微粒子は親水性である。その為、活性エネルギー線硬化型モノマーやオリゴマー等の組成物中の主成分である有機相となじみが悪い。また、シリカ微粒子は有機相に比較して比重が大きい。その為、活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中にシリカ微粒子を長期間にわたり安定して分散させることは一般に困難であり、シリカ微粒子を含有する活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、長期間放置するとシリカ微粒子が凝集や沈降するなど、貯蔵安定性に劣る。加えて、シリカ微粒子は通常、一次粒子間に働く分子間力や静電気力などにより強く凝集しており、このことも貯蔵安定性に悪影響を与えている。
【0003】
活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中にシリカ微粒子を安定して分散させる方法として、例えば、シリカ微粒子を、疎水性基を有する反応性シランカップリング剤で表面処理することでシリカ微粒子の表面を疎水性化する方法が記載されている(例えば、特許文献1参照)。しかしながら、特許文献1に記載された方法により得られるシリカ微粒子でも活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中での分散安定性は十分ではない。
【0004】
また、特許文献2には、分子中にエポキシ基を有するビニル化合物の重合体にカルボキシル基含有(メタ)アクリル化合物を付加反応させてなる反応生成物を分散剤として用いた手法が記載されているが、その合成方法は煩雑である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−348196
【特許文献1】特開2007−289943
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の課題は、上記背景技術に鑑み、金属酸化物微粒子の分散体の製造に有用な、分散安定性に優れた分散剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
即ち、本発明は、ヒドロキシアルキルオキセタンとエポキシ基を1つ有する化合物とを反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオール(A)と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる多分岐(メタ)アクリレート(B)を含有する金属酸化物微粒子分散剤、及び該分散剤に金属酸化物微粒子が分散されてなる分散体を提供するものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、金属酸化物微粒子の分散体の製造に有用な、分散性および分散安定性に優れた分散剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
即ち、本発明は、
1.ヒドロキシアルキルオキセタンとエポキシ基を1つ有する化合物とを反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオール(A)と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる多分岐(メタ)アクリレート(B)を含有する金属酸化物微粒子分散剤、
2.1.に記載の金属酸化物微粒子分散剤に金属酸化物微粒子が分散されてなる分散体、
3.前記金属酸化物が、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化チタン、酸化アルミニウム又は酸化亜鉛である2.に記載の金属酸化物微粒子分散体、
に関するものである。
【0010】
まず、本発明に用いられるヒドロキシアルキルオキセタンとエポキシ基を1つ有する化合物とを反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオール(A)について説明する。
【0011】
本発明に用いられるヒドロキシアルキルオキセタンとエポキシ基を1つ有する化合物とを反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオール(A)は、例えば特開2006−282698に記載の多分岐ポリエーテルポリオールを用いることができる。
【0012】
本発明の多分岐ポリエーテルポリオール(A)は、ヒドロキシアルキルオキセタンと、エポキシ基を1つ有する化合物とを開環反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオールである。
【0013】
ここで、ヒドロキシアルキルオキセタンは、下記一般式(1)で表される構造を有するものが挙げられる。
【0014】
【化1】

【0015】
ここで、一般式(1)中、R1は、メチレン基、エチレン基、若しくはプロピレン基であり、一方、R2は、水素原子、炭素原子数1〜8のアルキル基、炭素原子数1〜5のアルコキシアルキル基、又は炭素原子数1〜6のヒドロキシアルキル基を表す。また、炭素原子数1〜8のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、及び2−エチルヘキシル基が挙げられ、炭素原子数1〜5のアルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシエチル基、プロポキシエチル基が挙げられる。また、炭素原子数1〜3のヒドロキシアルキル基としては、ヒドロキシメチル基、ヒドロキシエチル基、及びヒドロキシプロピル基が挙げられる。
【0016】
かかる一般式(1)で表されるヒドロキシアルキルオキセタンの中でも、R1がメチレン基であり、かつ、R2が炭素原子数1〜7のアルキル基である化合物、とりわけ3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン、及び3−ヒドロキシメチル−3−メチルオキセタンが好ましい。
【0017】
次に、上記ヒドロキシアルキルオキセタンと開環反応させるエポキシ基を1つ有する化合物は、オレフィンエポキサイド、アルキルグリシジルエーテル、アルキルグリシジルエステル等が挙げられる。
【0018】
ここで、オレフィンエポキサイドは、具体的には、プロピレンオキサイド、1−ブテンオキサイド、1−ペンテンオキサイド、1−ヘキセンオキサイド、1,2−エポキシオクタン、1,2−エポキシドデカン、シクロヘキセンオキシド、シクロオクテンオキシド、シクロドデセンオキシド、スチレンオキシド、及び、フッ素原子数1〜18のフロロアルキルエポキシドが挙げられる。
【0019】
アルキルグリシジルエーテルは、メチルグリシジルエーテル、エチルグリシジルエーテル、n−プロピルグリシジルエーテル、i−プロピルグリシジルエーテル、n−ブチルグリシジルエーテル、i−ブチルグリシジルエーテル、n−ペンチルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシル−グリシジルエーテル、ウンデシルグリシジルエーテル、ヘキサデシルグリシジルエーテル、アリールグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、2−メチルフェニルグリシジルエーテル、4−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、4−ノニルフェニルグリシジルエーテル、4−メトキシフェニルグリシジルエーテル、及び、1〜18のフッ素原子数を有するフロロアルキルグリシジルエーテルが挙げられる。
【0020】
アルキルグリシジルエステルは、グリシジルアセテート、グリシジルプロピオネート、グリシジルブチレート、グリシジルメタクリレート、及びグリシジルベンゾエートが挙げられる。
【0021】
ここで、ヒドロキシアルキルオキセタンと、エポキシ基を1つ有する化合物とを開環反応させる方法は、具体的には、以下の(方法1)〜(方法3)が挙げられる。
【0022】
(方法1)
方法1は、ヒドロキシアルキルオキセタンと、エポキシ基を1つ有する化合物とを、モル基準で、(ヒドロキシアルキルオキセタン/エポキシ基を1つ有する化合物)=1/1〜1/10、好ましくは1/1〜1/3となる割合で混合し、これらをパーオキサイドフリーの有機溶媒、例えば、ジエチルエーテル、ジ−i−プロピルエーテル、ジ−n−ブチルエーテル、ジ−i−ブチルエーテル、ジ−t−ブチルエーテル、t−アミルメチルエーテル、メチル−t−ブチルエーテル又はジオキソランで、原料成分/有機溶剤の質量比が1/1〜1/5、好ましくは1/1.5〜1/2.5となる割合で溶解する。
【0023】
得られた溶液を−10℃〜−15℃まで攪拌しながら冷却、次いで、重合開始剤を単独で、或いは溶液状態で、0.1〜1時間、好ましくは0.3〜0.5時間かけて滴下する。ここで、重合開始剤は、原料モノマーの全質量に対して0.01〜1質量%、好ましくは0.75〜0.3質量%なる割合で使用できる。また、重合開始剤を溶液状態で使用する場合、当該溶液中の重合開始剤の濃度は、1〜90質量%、特に25〜50質量%であることが好ましい。ついで、この重合溶液を25℃になる迄攪拌し、次いで、リフラックスする温度まで加熱し、0.5〜3時間かけて原料成分を全て反応するまで反応を行う。原料モノマーの転化率は、GC、NMR、又はIRスペクトルによって確認することによって制御できる。
【0024】
重合後、得られた前記多分岐ポリエーテルポリオール(A)は、前記重合開始剤と当量の水酸化アルカリ水溶液による攪拌、又は、前記重合開始剤と当量のナトリウムアルコキシドやカリウムアルコキシドの添加によって中和する。中和後、濾過し、溶媒で目的物を抽出後、減圧下に溶媒を留去し、目的とする多分岐ポリエーテルポリオール(A)を得ることができる
あるいは、ハイドロタルサイト等の吸着剤にて前記重合開始剤を吸着させ、吸着物をろ過にて除いた後、ろ液を減圧下に溶媒を留去し、目的とする多分岐ポリエーテルポリオール(A)を得ることができる。
【0025】
(方法2)
方法2は、ヒドロキシアルキルオキセタンと、エポキシ基を1つ有する化合物とを、モル基準で、(ヒドロキシアルキルオキセタン/エポキシ基を1つ有する化合物)=1/1〜1/10、好ましくは1/1〜1/3となる割合で、70℃以上の沸点を有する炭化水素系溶媒中に溶解する。ここで、炭化水素系溶媒は、例えば、n−ヘプタン、i−オクタン、シクロヘキサンが挙げられ、とりわけ溶解性の点からシクロヘキサンが好ましい。また、原料モノマーと炭化水素系溶媒との比率は、前者:後者が1:1〜1:10、特に1:2.5〜1:3.5であることが好ましい。
【0026】
この混合物の温度は、0〜25℃、好ましくは5〜15℃、特に好ましくは10〜15℃に保持され、次いで、攪拌下に原料モノマーの全量に対して0.01〜1モル%、特に0.05〜0.15モル%の重合開始剤を一度に加える。
重合開始剤の添加直後、系内は不均一系になって25〜40℃まで系内温度が上昇する。一旦、15〜25℃まで冷却した後、反応混合物を40〜70℃、好ましくは50〜60℃まで加熱して、1〜5時間、好ましくは2〜3時間の間、原料モノマーが全て転化するまで反応を行う。反応終了後は、方法1と同様にして中和、濾過し、次いで、溶媒を留去する。
【0027】
(方法3)
方法3は、原料モノマーの全量に対して0.01〜1モル%、特に0.2〜0.5モル%となる量の重合開始剤を、(方法1)に記載した有機溶剤等に溶解し、これを0〜40℃に保持する。この溶液に対して、ヒドロキシアルキルオキセタンと、エポキシ基を1つ有する化合物とを、モル基準で、(ヒドロキシアルキルオキセタン/エポキシ基を1つ有する化合物)=1/1〜1/10、好ましくは1/1〜1/3となる割合で、混合した混合物を、系内の温度が40℃以下になるように連続的に滴下する。滴下終了後も系内の温度40℃以下にて、原料モノマーが全て転化するまで攪拌を継続する。原料モノマーの転化率は、GC、NMR、あるいはIRスペクトルによって確認することができる。反応終了後は(方法1)と同様にして中和、あるいは、吸着剤にて重合開始剤を処理した後、溶媒を留去する。
【0028】
ここで用いる重合開始剤は、HSO、HCl、HBF、HPF、HSbF、HAsF、p−トルエンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸などのブロンステッド酸、BF・ジエチルエーテル錯体、AlCl、TiCl、SnClなどのルイス酸、トリアリールスルフォニウム−ヘキサフルオロホスフェート、トリアリールスルフォニウム−アンチモネート、ジアリールイオドニウム−ヘキサフルオロホスフェート、ジアリールイオドニウム−アンチモネート、N−ベンジルピリジニウム−ヘキサフルオロホスフェート、N−ベンジルピリジニウム−アンチモネートなどのオニウム塩化合物、トリフェニルカルボニウム−テトラフルオロボレート、トリフェニルカルボニウム−ヘキサフルオロホスフェート、トリフェニルカルボニウム−ヘキサフルオロアンチモネートなどのトリフェニルカルボニウム塩、p−トルエンスルホニルクロライド、メタンスルホニルクロライド、トリフルオロメタンスルホニルクロライド、p−トルエンスルホン酸無水物、メタンスルホン酸無水物、トリフルオロメタンスルホン酸無水物、p−トルエンスルホン酸メチルエステル、p−トルエンスルホン酸エチルエステル、メタンスルホン酸メチルエステル、トリフルオロメタンスルホン酸メチルエステル、トリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルエステルなどのアルキル化剤が挙げられる。
【0029】
これらのなかでも特に、取り扱いが容易であり、反応時においてその開始剤としての活性が安定しているBF・ジエチルエーテル錯体が好ましい。
【0030】
このようにして得られる多分岐ポリエーテルポリオール(A)は、その分子構造中に1級水酸基(H1)と2級水酸基(H2)とを有しており、かつ、前記多分岐ポリエーテルポリオール(A)の数平均分子量(Mn)が1,000〜3,500、水酸基価が150〜350mg・KOH/gであることを特徴としている。
【0031】
即ち、多分岐ポリエーテルポリオール(A)は、ヒドロキシアルキルオキセタンと、エポキシ基を1つ有する化合物とを開環反応させて得られる多分岐構造を有することから該多分岐ポリエーテルポリオール(A)の慣性半径が小さくなり、更に、数平均分子量(Mn)が1,000〜3,500という低い値を有することから、従来になく流動性が極めて良好なポリオールであることを特徴としている。
【0032】
このような多分岐ポリエーテルポリオール(A)の具体的構造は、ヒドロキシアルキルオキセタンと、エポキシ基を1つ有する化合物 とを開環反応させて得られる種々の構造が含まれる。具体的には、下記一般式(1)
【0033】
【化2】

【0034】
(ここで、一般式(1)中、R及びRは、前記したものと同一である。)
で表されるヒドロキシアルキルオキセタンと、下記一般式(2)
【0035】
【化3】

【0036】
(ここで、一般式(2)中、Rは前記エポキシ基を1つ有する化合物のエポキシ基の他の構造を表す。)で表されるエポキシ基を1つ有する化合物を開環反応させた場合、下記の構造で表される繰り返し単位、及び、末端構造単位の中から適宜選択される構造単位で前記多分岐ポリエーテルポリオール(A)は構成されることになる。
【0037】
【化4】

【0038】
【化5】

【0039】
ここで、前記各構造単位において実線部分は当該構造単位内の単結合を示し、破線部分は、他の構造単位とエーテル結合を形成する単結合を示す。また、前記OR1〜OR3、OE1、及びOE2は、ヒドロキシアルキルオキセタンに起因する構造単位であって、OR1〜OR3は繰り返し単位を表し、OE1及びOE2は末端構造単位を表す。
また、ER1、EE1、及びEE2は、前記エポキシ基を1つ有する化合物に起因する構造単位であって、ER1は繰り返し単位を表し、EE1及びEE2は末端構造単位を表す。
【0040】
本発明の多分岐ポリエーテルポリオール(A)は、前記OR1〜OR3及びER1から選択される繰り返し単位によって多分岐構造が形成され、末端に前記OE1、OE2、EE1、及びEE2から選択される末端構造単位を有するものである。なお、これらの繰り返し単位及び末端構造単位はランダムに存在していてもよいし、OR1〜OR3が分子構造の中心部分を構成し、末端に前記末端構造単位を有するものであってもよい。なお、本発明では2級水酸基(H2)が必須であることから、前記EE1は必須の構造単位として多分岐ポリエーテルポリオール(A)中に存在する。
【0041】
本発明の多分岐(メタ)アクリレート(B)は、上記多分岐ポリエーテルポリオール(A)に(メタ)アクリル酸を反応させて得ることができる。
【0042】
本明細書中において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸とメタアクリル酸を総称する用語であり、他の類似の表現についても同様である。
本発明の多分岐ポリエーテルポリオール(A)には、多官能オキセタン化合物のオキセタニル基とエポキシ基との付加反応により生じたヒドロキシメチル基が存在している。多分岐ポリエーテルポリオール(A)は、ヒドロキシメチル基の水酸基と(メタ)アクリル酸との縮合反応によって合成される。
【0043】
(メタ)アクリル酸と多分岐ポリエーテルポリオール(A)との反応は、例えば約−50〜150℃、好ましくは0〜100℃の温度範囲で行なうことができる。
【0044】
(メタ)アクリル酸の使用量は、目的により選定されるが、前記多分岐ポリエーテルポリオール(A)中のヒドロキシ基化学当量に対して、0.1〜2.0モルが好適である。0.1モルより少ないと導入される(メタ)アクリレート基の量が少なくなり、好ましくない。一方、2.0モルを越えて多量に使用すると、未反応の(メタ)アクリル酸が反応液中に多量残存し、減圧除去工程に長時間費やすなどの恐れがあるため好ましくない。より好ましくは、0.5〜1.2モルである。
【0045】
前記反応は、有機溶媒の存在下、又は無溶媒下でも進行するが、反応時撹拌効率を改善するため有機溶媒の存在下で行なうことが好ましい。
使用できる有機溶媒としては、(メタ)アクリレートとの反応に影響を与えるものでなければ、特に制限はないが、好ましくは、炭化水素系有機溶媒、芳香族系有機溶媒、エーテル系有機溶剤を挙げることができる。更に、具体的には炭化水素系有機溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン等を挙げることができ、芳香族系有機溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンを挙げることができ、エーテル系有機溶剤としては、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、シクロペンチルメチールエーテル等を挙げることができる。
【0046】
反応温度は、使用されるエステル化反応触媒、有機溶媒によって異なるが、通常−20℃〜150℃の温度を挙げることができ、反応時間は、通常1〜48時間を挙げることができる。より好ましい温度は、50〜100℃である。
【0047】
本発明の多分岐(メタ)アクリレート(B)の製造では、通常のエステル化反応触媒を用いることができる。このようなエステル化反応触媒としては、HSO、HCl、HBF、HPF、HSbF、HAsF、p−トルエンスルホン酸、トリフロロメタンスルホン酸などのブロンステッド酸、BF、AlCl、TiCl、SnClなどのルイス酸等を挙げることができるが、本発明では、特にスルホン酸系エステル化反応触媒が好ましい。このスルホン酸系触媒の使用量としては、(メタ)アクリル酸と多分岐ポリエーテルポリオール(A)の合計仕込み量に対して通常0.01〜20質量%の範囲であり、より好ましくは0.1〜5質量%である。
【0048】
好ましい触媒として、より具体的には、置換基として炭素数8〜20のアルキル基を有するベンゼンスルホン酸を挙げることができる。このようなベンゼンスルホン酸としては、オクチルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、トリデシルベンゼンスルホン酸、テトラデシルベンゼンスルホン酸等を挙げることができ、工業的に入手可能なドデシルベンゼンスルホン酸が特に好ましい。
【0049】
また、同様に反応後の組成物に析出物を生じないことからビニルスルホン酸を好適な触媒として挙げることができる。
【0050】
また、前記反応においては、(メタ)アクリレートの重合性二重結合の重合によるゲル化を防止する目的で、空気を吹き込んだり、重合禁止剤を加えてもよい。
【0051】
重合禁止剤の例としては、メトキノン、ハイドロキノン、トルハイドロキノン、メトキシフェノール、フェノチアジン、トリフェニルアンチモン、塩化銅、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン1−オキシル等の通常公知の重合禁止剤が挙げられる。
【0052】
また、本発明の多分岐(メタ)アクリレート(B)は、上記の(メタ)アクリル酸を用いる替わりに、(メタ)アクリル酸クロリド、無水(メタ)アクリル酸等の水酸基の(メタ)アクリロイル化剤を用いることができる。
これらの反応においては、公知慣用の反応操作によって、適宜目的とする多分岐(メタ)アクリレート(B)を調整することができる。
【0053】
本発明の多分岐(メタ)アクリレート(B)は、分散剤として金属酸化物微粒子を好適に分散させることができる。すなわち、当分散剤を使用することにより、分散体中の微粒子を平均粒径200nm以下に分散でき、かつ、当分散体を数ヶ月保存しても微粒子の凝集等が見られない、保存安定性に優れた分散体を得ることができる。
本発明で用いられる金属酸化物微粒子を分散させるためには、本発明の多分岐(メタ)アクリレート(B)を単独で用いてもよいし、更に有機溶剤、又は重合性モノマーを添加してもよい。
用いられる有機溶剤としては、該(メタ)アクリレート(A)の分散性の機能を発揮できるものであれば特に制限はない。用いることのできる有機溶剤は、例えば、アセトン、メチルエチルケトン(MEK)、メチルイソブチルケトン(MIBK)等のケトン類、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキソラン、PGM(プロピレングリコールモノメチルエーテル)等のエーテル類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類、トルエン、キシレン等の芳香族類、カルビトール、セロソルブ、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、エチレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテルなどのアルコール類が挙げられ、これらを単独又は併用して使用可能である。
【0054】
重合性モノマーとしては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸ブチル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート等の単官能(メタ)アクリレートや、トリメチロールプロパントリアクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート等の多官能(メタ)アクリレート等を挙げることができる。
【0055】
本発明に用いられる金属酸化物微粒子は、特に限定されないが、例えば、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化チタン(TiO)、酸化ケイ素(SiO)、酸化アルミニウム(Al)、酸化鉄(Fe、FeO、Fe)、酸化銅(CuO、CuO)、酸化亜鉛(ZnO)、酸化イットリウム(Y)、酸化ニオブ(Nb)、酸化モリブデン(MoO)、酸化インジウム(In、InO)、酸化スズ(SnO)、酸化タンタル(Ta)、酸化タングステン(WO、W)、酸化鉛(PbO、PbO)、酸化ビスマス(Bi)、酸化セリウム(CeO、Ce)、酸化アンチモン(Sb、Sb)、酸化ゲルマニウム(GeO、GeO)、酸化ランタン(La)、酸化ルテニウム(RuO)等が挙げられる。また、これらの金属酸化物微粒子は、単独でも複数を複合して用いることもできる。
これらの金属酸化物微粒子の平均一次粒径は、分散体中における分散性、透明複合体を作製した場合の透明性を鑑み、5〜200nmのものを好ましく用いることができる。
【0056】
分散方法は、公知慣用の方法を用いることができる。
機械的手段として、例えば、ディスパー、タービン翼等攪拌翼を有する分散機、ペイントシェイカー、ロールミル、ボールミル、アトライター、サンドミル、ビーズミル等が挙げられる。反応性分散体を製造するには、得られる分散体をコーティング剤等に用いる場合には、塗工性、塗料安定性及び硬化被膜の透明性等の点から、ガラスビーズ、ジルコニアビーズ等の分散メディアを使用するビーズミルによる分散が好ましい。
【0057】
前記ビーズミルとしては、例えば、アシザワ・ファインテック(株)製のスターミル;三井鉱山(株)製のMSC−MILL、SC−MILL、アトライター MA01SC;浅田鉄工(株)のナノグレンミル、ピコグレンミル、ピュアグレンミル、メガキャッパーグレンミル、セラパワーグレンミル、デュアルグレンミル、ADミル、ツインADミル、バスケットミル、ツインバスケットミル:寿工業(株)製のアスペックミル、ウルトラアスペックミル、スーパーアスペックミル等が挙げられるが、これらに限らない。
【実施例】
【0058】
以下、実施例で更に本発明を詳細に説明する。ここで、「部」は「質量部」を表す。
【0059】
(合成例1)<多分岐ポリエーテルポリオール(A)の合成>
窒素、空気リフラックスコンデンサー、マグネット式撹拌棒、温度計を具備した1000mLの3つ口フラスコ中で、BF・ジエチルエーテル錯体1.24g(8.7mmol)を、乾燥かつ過酸化物フリーのメチル−t−ブチルエーテル273gで希釈した。
別途容器にて、3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン140g(1.21mol)とプロピレンオキサイド70.0g(1.21mol)を混合し、上記3つ口フラスコへ、定量ポンプで5.5時間かけて滴下した。このとき、系内の温度を20℃に保つよう、随時アイスバスで冷却を行った。滴下終了後、さらにプロピレンオキサイド63.0g(1.08mol)を、同様に系内の温度を20℃に保ちつつ、3時間かけて滴下し、さらに4時間攪拌した。ここで、BF・ジエチルエーテル錯体0.620g(4.4mmol)を添加し、さらに20℃で6時間攪拌した。
【0060】
反応混合物は、反応に使用したBF・ジエチルエーテル錯体の10倍重量のハイドロタルサイトを加え、1時間還流させることにより吸着除去した。ハイドロタルサイトを濾別したのち、メチル−t−ブチルエーテルを除去し、透明で高粘性の多分岐ポリエーテルポリオール(A)267gを得た。
この多分岐ポリエーテルポリオール(A)は、Mn=2,876g/mol、Mw=7,171g/mol、水酸基価=253mg・KOH/gであり、プロトンNMRから、モル基準で3−ヒドロキシメチル−3−エチルオキセタン:プロピレンオキサイド=1:1.9であることが判明した。また、全水酸基に対する2級水酸基の比率は、40%であった。
【0061】
(合成例2)<多分岐(メタ)アクリレート(B)の合成>
ディーン・スターク管、窒素及び空気導入管、撹拌装置、温度計を具備した500mLの4つ口フラスコ中に、前述の多分岐ポリエーテルポリオール(A)を155g、アクリル酸51g、シクロヘキサン200g、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.21g、触媒としてドデシルベンゼンスルホン酸4g(12.3mmol)を仕込み、窒素と空気2対1の混合ガス流通下で、82℃まで昇温した。シクロヘキサンの還流が始まり、水の流出が徐々に始まった。その後、85℃まで昇温して24時間反応させると、理論脱水量の70%に達したので冷却を開始した。30℃付近まで冷却した後、ディーン・スターク管を水冷コンデンサに交換した。次に50%水酸化ナトリウム0.98g(12.3mmol)を仕込み、80℃まで昇温、保持した。次に減圧装置に接続し、徐々に減圧度を上げながら系内の溶媒及び残存するアクリル酸、微量の水の除去工程を実施した。酸価が5以下になったので、反応容器より取り出し、硝子瓶に充填した。得られた重合性不飽和基含有多分岐ポリエーテルの水酸基価は、73.1mg・KOH/gで、全水酸基のアクリル酸エステル価率は、66%であった。アクリル基濃度は、2.54mmol/gと算出された。以下、これを多分岐(メタ)アクリレート(B)とする。室温で放冷一日後に外観を目視確認した。淡黄色透明で濁りは無かった。
【0062】
(実施例1)
Evonik Degussa GmbH社製ナノシリカ(AEROSIL50;一次粒径30nm)を5部、多分岐(メタ)アクリレート(B)を8.1部(有効濃度61.7%)、PGM(プロピレングリコールモノメチルエーテル)を40部、およびジルコニアビーズ(粒径0.1mm)70部を混合し、ペイントシェイカーにて2時間混合した。混合後、ジルコニアビーズをろ別して分散中のシリカの粒径を動的光散乱法にて測定したところ、平均粒径163nmであった。
【0063】
(実施例2)
実施例1におけるPGM(プロピレングリコールモノメチルエーテル)の替わりに、MIBK(メチルイソブチルケトン)を用いる他は、実施例1と同様にして、分散体を得、分散中のシリカの粒径を動的光散乱法にて測定したところ、平均粒径165nmであった。
【0064】
実施例1におけるナノシリカの替わりに、酸化スズ(三菱マテリアル株式会社製 S−2000;一次粒径30nm)を用いる他は、実施例1と同様にして、分散体を得、分散中のシリカの粒径を動的光散乱法にて測定したところ、平均粒径175nmであった。
【0065】
実施例1におけるナノシリカの替わりに、酸化チタン(シーアイ化成株式会社製 NanoTek;一次粒径32nm)を用いる他は、実施例1と同様にして、分散体を得、分散中のシリカの粒径を動的光散乱法にて測定したところ、平均粒径155nmであった。
【0066】
実施例1におけるナノシリカの替わりに、酸化亜鉛(テイカ株式会社製 MZ−500;一次粒径20−30nm)を用いる他は、実施例1と同様にして、分散体を得、分散中のシリカの粒径を動的光散乱法にて測定したところ、平均粒径180nmであった。
【0067】
実施例1におけるナノシリカの替わりに、酸化アルミニウム(シーアイ化成株式会社製 NanoTek;一次粒径31nm)を用いる他は、実施例1と同様にして、分散体を得、分散中のシリカの粒径を動的光散乱法にて測定したところ、平均粒径180nmであった。
【0068】
(比較例1)
実施例1における多分岐(メタ)アクリレート(B)の替わりに、多分岐ポリエーテルポリオール(A)を用いる他は、実施例1と同様にして、分散体を得、分散中のシリカの粒径を動的光散乱法にて測定したところ、平均粒径276nmであった。
【0069】
(比較例2)
実施例2における多分岐(メタ)アクリレート(B)の替わりに、多分岐ポリエーテルポリオール(A)を用いる他は、実施例2と同様にして、分散体を得、分散中のシリカの粒径を動的光散乱法にて測定したところ、平均粒径284nmであった。
【0070】
(比較例3)
実施例1における多分岐(メタ)アクリレート(B)を用いない他は、実施例1と同様にして、分散体を得、分散中のシリカの粒径を動的光散乱法にて測定したところ、平均粒径405nmであった。
【0071】
(比較例4)
実施例2における多分岐(メタ)アクリレート(B)を用いない他は、実施例2と同様にして、分散体を得、分散中のシリカの粒径を動的光散乱法にて測定したところ、平均粒径5124nmであった。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明の分散剤は、金属酸化物微粒子の分散剤として利用が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヒドロキシアルキルオキセタンとエポキシ基を1つ有する化合物とを反応させて得られる多分岐ポリエーテルポリオール(A)と(メタ)アクリル酸とを反応させて得られる多分岐(メタ)アクリレート(B)を含有する金属酸化物微粒子分散剤。
【請求項2】
請求項1に記載の金属酸化物微粒子分散剤に金属酸化物微粒子が分散されてなる分散体。
【請求項3】
前記金属酸化物が、酸化ケイ素、酸化スズ、酸化チタン、酸化アルミニウム又は酸化亜鉛である請求項2に記載の金属酸化物微粒子分散体。

【公開番号】特開2012−82294(P2012−82294A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−228580(P2010−228580)
【出願日】平成22年10月8日(2010.10.8)
【出願人】(000002886)DIC株式会社 (2,597)
【Fターム(参考)】