説明

金属錯体顔料

【課題】先行技術の欠点を有していない新規な形態の顔料を提供すること。
【解決手段】その互変異性体の形態において式(I)


具体的には、例えば


に従うアゾ化合物の金属錯体であって、その金属錯体はある化合物をゲスト化合物として受け入れており、それが250未満の分散硬度を有することを特徴とする金属錯体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は新規な金属錯体、その製造法及びその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
EP−A−73 463は色彩効果的に有用な顔料を開示している。しかしながら、これらはまだ適用に関する欠点を有している。例えば、記載されている方法で製造される顔料はきめが非常に粗く、所望の色彩効果及び従って適合する粒度を得るために比較的時間のかかる分散プロセスで微粉砕しなければならない。それでもそのような顔料はまだ分散性及び色濃度においていくらか欠点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】DE−A−2 214 700
【特許文献2】DE−A−2 064 093
【特許文献3】DE−A−2 753 357
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って、本発明の目的は上記の欠点を有していない新規な顔料形態(pigmentary forms)を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に従えば、その互変異性構造の形態で式(I)
【0006】
【化1】

[式中、環X及びYはそれぞれ独立して=O、=S、=NR7、−NR67、−OR6、−SR6、−COOR6、−CN、−CONR67、−SO28
【0007】
【化2】

アルキル、シクロアルキル、アリール及びアラルキルから成る群より選ばれる1つもしくは2つの置換基を有していることができ、環X及びYのそれぞれについて環内及び環外二重結合の合計は3つであり、R6は水素、アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、R7は水素、シアノ、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル又はアシルであり、R8はアルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、さらに式(I)において破線で示す通り、5−もしくは6−員環を形成していることができ、それにさらに環が縮合していることができ、R5は−OH、−NR67、アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、R1〜R8に関して挙げたCH結合を含有する置換基はさらに置換されていることができ、m、n、o及びpはそれぞれ1であるか、あるいは式(I)において点線により示す通り、環窒素原子が二重結合のための出発点である場合、ゼロであることもできる]に従うアゾ化合物の金属錯体であって、その金属錯体はゲスト化合物として少なくとも1つの化合物を受け入れ、それらが250未満の分散硬度(dispersion hardness)(DIN 53 775に従って測定)を有することを特徴とする金属錯体が提供される。
【0008】
好ましい有機金属錯体は、その遊離の酸の形態でX環が式
【0009】
【化3】

[式中、L及びMはそれぞれ独立して=O、=S又は=NR6であり、L1は水素、−OR6、−SR6、−NR67、−COOR6、−CONR67、−CN、アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、M1は−OR6、−SR6、−NR67、−COOR6、−CONR67、−CN、−SO28
【0010】
【化4】

アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、置換基M1とR1又はM1とR2は5−もしくは6−員環を形成していることができる]の環を示す式(I)の互変異性体の1つに従うアゾ化合物の金属錯体である。
【0011】
特に好ましい有機金属錯体は、その遊離の酸の形態で式(II)又は(III)
【0012】
【化5】

[式中、R'5は−OH又は−NH2であり、R'1、R"1、R'2及びR"2はそれぞれ水素であり、M'1及びM"1はそれぞれ独立して水素、−OH、−NH2、−NHCN、アリールアミノ又はアシルアミノである]のその互変異性構造の1つに従うアゾ化合物の金属錯体である。
【0013】
特別に好ましい金属錯体は、その遊離の酸の形態で式(IV)
【0014】
【化6】

[式中、M"'1及びMIV1はそれぞれ独立してOH又はNHCNである]の互変異性構造の1つに従う式(I)のアゾ化合物の金属錯体である。
【0015】
その遊離の酸の形態で式(V)
【0016】
【化7】

の互変異性構造の1つに従う式(I)のアゾ化合物の有機金属錯体が殊に好ましい。
【0017】
前記の式において、置換基は好ましくは以下の意味を有する:アルキル置換基は好ましくはC1−C6−アルキルであり、それは例えば塩素、臭素もしくはフッ素などのハロゲン、−OH、−CN、−NH2又はC1−C6−アルコキシにより置換されていることができる。
【0018】
シクロアルキル置換基は好ましくはC3−C7−シクロアルキル、特にC5−C6−シクロアルキルであり、それは例えばC1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシ、Cl、BrもしくはFなどのハロゲン、C1−C6−アルコキシ、−OH、−CN又はNH2により置換されていることができる。
【0019】
アリール置換基は好ましくはフェニル又はナフチルであり、それはそれぞれ例えばF、ClもしくはBrなどのハロゲン、−OH、C1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシ、−NH2、−NO2又は−CNにより置換されていることができる。
【0020】
アラルキル置換基は好ましくはフェニル−又はナフチル−C1−C4−アルキルであり、それは芳香族基において例えばF、ClもしくはBrなどのハロゲン、−OH、C1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシ、−NH2、−NO2又は−CNにより置換されていることができる。
【0021】
アシル置換基は好ましくは(C1−C6−アルキル)カルボニル、フェニルカルボニル、C1−C6−アルキルスルホニル、フェニルスルホニル、場合によりC1−C6−アルキル−、フェニル−もしくはナフチル−置換されていることができるカルバモイル、場合によりC1−C6−アルキル−、フェニル−もしくはナフチル−置換されていることができるスルファモイルあるいは場合によりC1−C6−アルキル−、フェニル−もしくはナフチル−置換されていることができるグアニルであり、ここで挙げたアルキル基は例えばCl、BrもしくはFなどのハロゲン、−OH、−CN、−NH2又はC1−C6−アルコキシにより置換されていることができ、挙げたフェニル及びナフチル基は例えばF、ClもしくはBrなどのハロゲン、−OH、C1−C6−アルキル、C1−C6−アルコキシ、−NH2、−NO2又は−CNにより置換されていることができる。
【0022】
式(I)において破線で示した通り、M11又はM12又はM12及びR1、R2、R3、R4が5−もしくは6−員環を形成する場合、これらは好ましくはトリアゾール、イミダゾールもしくはベンズイミダゾール、ピリミジン又はキナゾリン環系である。
【0023】
また金属塩を意味すると理解されるべき式(I)〜(V)の金属錯体は、好ましくは、金属Li、Cs、Mg、Cd、Co、Al、Cr、Sn、Pb、特に好ましくはNa、K、Ca、Sr、Ba、Zn、Fe、Ni、Cu及びMnとのモノ−、ジ−、トリ−及びテトラアニオンの塩及び錯体を含む。
【0024】
2価及び3価の金属との式(I)〜(V)の塩及び錯体が特に好ましく、ニッケル塩及び錯体が特別に好ましい。
【0025】
ゲストとして少なくとも1つの化合物、特に有機化合物を包含している金属錯体は、ホスト−ゲスト化合物、挿入化合物及び又固溶体として存在することができる。
【0026】
それらは特別に好ましくはアゾバルビツル酸/ニッケル 1:1錯体が式
【0027】
【化8】

の互変異性体の1つに従い、少なくとも1つの他の有機化合物を包含している包接化合物、挿入化合物及び固溶体である。
【0028】
一般に、金属錯体は層状結晶格子を形成し、そこで層内の結合は本質的に水素結合及び/又は金属イオンを介している。好ましくは金属錯体は本質的に平面層から成る結晶格子を形成する金属錯体である。
【0029】
本発明の目的の場合、ゲスト化合物として少なくとも1つの化合物を包含し、250未満の分散硬度を有する式(I)のアゾ化合物の金属錯体を本発明に従う顔料と呼ぶ。好ましい態様の場合、本発明に従う顔料は200未満、特に150未満の分散硬度を有する。
【0030】
分散硬度はDIN 53 775 Part 7に従って測定され、冷間圧延温度は25℃であり、熱間圧延温度は150℃である。
【0031】
本明細書において報告するすべての分散硬度はこの修正DIN法により決定したものである。
【0032】
好ましい態様の場合、本発明に従う顔料は150m2/g未満、特に50〜130m2/gのBET比表面積を有する。
【0033】
有用な金属錯体は金属−含有化合物、例えば塩もしくは金属錯体が他の金属錯体、例えばニッケル錯体の結晶格子中に導入されている金属錯体も含む。この場合、式(VI)においてニッケルを例とする金属の一部が他の金属イオンにより置き換えられていることができるか、あるいはさらに別の金属イオンが金属錯体、好ましくはニッケル錯体と多少明白な相互作用をするようになることができる。
【0034】
包含される化合物は有機化合物及び無機化合物であることができる。包含されることができる化合物は非常に多様な種類の化合物から現れる。純粋に実施上の理由で、標準状態下(25℃、1バール)で液体又は固体であるような化合物が好ましい。
【0035】
液体物質の中で、さらに100℃かそれより高温、好ましくは150℃以上の沸点(1バール)を有するものが好ましい。適する化合物は好ましくは非環式及び環式有機化合物、例えば脂肪族及び芳香族炭化水素であり、それは例えばOH、COOH、NH2、置換NH2、CONH2、置換CONH2、SO2NH2、置換SO2NH2、SO3H、ハロゲン、NO2、CN、−SO2−アルキル、−SO2−アリール、−O−アルキル、−O−アリール、−O−アシルにより置換されていることができる。
【0036】
特定の例はパラフィン及びパラフィン油;トリイソブチレン、テトライソブチレン、石油精留において生産されるような脂肪族及び芳香族炭化水素の混合物、例えば;塩化ドデシル又は塩化ステアリルなどの塩化パラフィン炭化水素;1−デカノール、1−ドデカノール、1−ヘキサデカノール、1−オクタデカノール及びそれらの混合物、オレインアルコール、1,12−オクタデカンジオールなどのC10−C30−アルコール、脂肪酸及びその塩及び混合物、例えばギ酸、酢酸、ドデカン酸、ヘキサデカン酸、オクタデカン酸、オレイン酸、脂肪酸エステル、例えばC10−C20−脂肪酸のメチルエステル、脂肪酸アミド、例えばステアラミド、ステアリン酸モノエタノールアミド、ステアリン酸ジエタノールアミド、ステアロニトリル、脂肪族アミン、例えばドデシルアミン、セチルアミン、ヘキサデシルアミン、オクタデシルアミン及び他;スルホン酸及びカルボン酸との脂肪族アミンの塩、イソ環式(isocyclic)炭化水素、例えばシクロドデカン、デカヒドロナフタレン、o−、m−、p−キシレン、メシチレン、ドデシルベンゼン混合物、テトラリン、ナフタレン、1−メチルナフタレン、2−メチルナフタレン、ビフェニル、ジフェニルメタン、アセナフテン、フルオレン、アントラセン、フェナントレン、m−、p−テルフェニル、o−、p−ジクロロベンゼン、ニトロベンゼン、1−クロロナフタレン、2−クロロナフタレン、1−ニトロナフタレン、イソ環式アルコール及びフェノール及びそれらの誘導体、例えばベンジルアルコール、デカヒドロ−2−ナフトール、ジフェニルエーテル、スルホン、例えばジフェニルスルホン、メチルフェニルスルホン、4,4’−ビス−2−(ヒドロキシエトキシ)ジフェニルスルホン;イソ環式カルボン酸及びその誘導体、例えば安息香酸、3−ニトロ安息香酸、ケイ皮酸、1−ナフタレンカルボン酸、フタル酸、フタル酸ジブチル、フタル酸ジオクチル、テトラクロロフタル酸、2−ニトロベンズアミド、3−ニトロベンズアミド、4−ニトロベンズアミド、4−クロロベンズアミド、スルホン酸、例えば2,5−ジクロロベンゼンスルホン酸、3−ニトロ−、4−ニトロ−ベンゼンスルホン酸、2,4−ジメチルベンゼンスルホン酸、1−及び2−ナフタレンスルホン酸、5−ニトロ−1−及び5−ニトロ−2−ナフタレンスルホン酸、ジ−sec−ブチルナフタレンスルホン酸混合物、ビフェニル−4−スルホン酸、1,4−、1,5−、2,6−、2,7−ナフタレンジスルホン酸、3−ニトロ−1,5−ナフタレンジスルホン酸、1−アントラキノンスルホン酸、2−アントラキノンスルホン酸、ビフェニル−4,4’−ジスルホン酸、1,3,6−ナフタレントリスルホン酸及びこれらのスルホン酸の塩、例えばナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、ニッケル及び銅塩;スルホンアミド、例えばベンゼンスルホンアミド、2−、3−及び4−ニトロベンゼンスルホンアミド、2−、3−及び4−クロロベンゼンスルホンアミド、4−メトキシベンゼンスルホンアミド、3,3’−スルホニルビスベンゼンスルホンアミド、4,4’−オキシビスベンゼンスルホンアミド、1−及び2−ナフタレンスルホンアミドである。
【0037】
カルボキシアミド及びスルホンアミドは包含されるべき化合物の好ましい群であり、尿素及び置換尿素、例えばフェニル尿素、デドシル尿素及び他ならびにまたアルデヒド、特にホルムアルデヒドとのその重縮合物;複素環式化合物、例えばバルビツル酸、ベンズイミダゾロン、5−ベンズイミダゾロンスルホン酸、2,3−ジヒドロキシキノキサリン、2,3−ジヒドロキシキノキサリン−6−スルホン酸、カルバゾール、カルバゾール−3,6−ジスルホン酸、2−ヒドロキシキノリン、2,4−ジヒドロキシキノリン、カプロラクタム、メラミン、6−フェニル−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン、6−メチル−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン、シアヌル酸も特に適している。
【0038】
好ましい固溶体、挿入化合物又は包接化合物は、包含されている界面活性化合物、特に例えばK.Lindner,Tenside−Textilhilfsmittel−Waschrohstoffe,2nd edition,Volume I,Wissenschaftliche Verlagsgesellschaft mbH,Stuttgart,1964から既知の界面活性剤を含有する。それらはアニオン性、非−イオン性又はカチオン性化合物あるいは両性電解質であることができる。適するアニオン性化合物の例は真石鹸(true soaps)、アミノカルボン酸の塩、低級もしくは高級アシル化アミノカルボン酸の塩、脂肪酸サルフェート、脂肪酸エステル、アミドなどのサルフェート、第1級アルキルサルフェート、オキソアルコールのサルフェート、第2級アルキルサルフェート、エステル化もしくはエーテル化ポリオキシ化合物のサルフェート、置換ポリグリコールエーテルのサルフェート(サルフェート化エチレンオキシド付加物)、アシル化もしくはアルキル化アルカノールアミンのサルフェート、脂肪酸、そのエステル、アミドなどのスルホネート、第1級アルキルスルホネート、第2級アルキルスルホネート、エステル様に結合しているアシルを有するアルキルスルホネート、アルキルもしくはアルキルフェニルエーテルスルホネート、ポリカルボン酸エステルのスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルナフタレンスルホネート、脂肪族芳香族スルホネート、アルキルベンズイミダゾールスルホネート、ホスフェート、ポリホスフェート、ホスホネート、ホスフィネート、チオサルフェート、ヒドロサルファイト、スルフィネート、ペルサルフェートである。適した非−イオン性化合物の例はポリアルコールのエステル及びエーテル、アルキルポリグリコールエーテル、アシルポリグリコールエーテル、アルキルアリールポリグリコールエーテル、アシル化及びアルキル化アルカノールアミンポリグリコールエーテルである。適したカチオン性化合物の例はアルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、単純及び第4級イミダゾリン塩、アルキルジアミン及びアルキルポリアミン、アシルジアミン及びアシルポリアミン、アシルアルカノールアミン、アルカノールアミンエステル、アルキル−OCH2−N−ピリジニウム塩、アルキル−CO−NH−CH2−N−ピリジニウム塩、アルキルエチレン尿素、スルホニウム化合物、ホスホニウム化合物、アルセニウム化合物、アルキルグアニジン、アシル−ビグアニジドである。適する両性電解質の例はアルキルベタイン、スルホベタイン及びアミノカルボン酸である。非−イオン性界面活性剤、特に脂肪族アルコール、脂肪族アミン及び又オクチル−もしくはノニルフェノールのエチレンオキシド付加生成物を用いるのが好ましい。
【0039】
ゲスト化合物のさらに別の重要な群は天然樹脂及び樹脂酸、例えばアビエチン酸ならびにその転化生成物及び塩である。そのような転化生成物の例は水素化、脱水素化及び不均化アビエチン酸である。これらをさらに二量化するか、重合させるかあるいは無水マレイン酸及びフマル酸を加えることにより修飾することができる。カルボキシル基において修飾されている樹脂酸、例えばメチル、ヒドロキシエチル、グリコール、グリセリル及びペンタエリトリトールエステルならびに又樹脂酸ニトリル及び樹脂酸アミンならびに又デヒドロアビエチルアルコールも興味深い。
【0040】
ポリマー、好ましくは水溶性ポリマー、例えばエチレン−プロピレンオキシドブロックポリマー、好ましくは2000g/モルより大きい、特に2000g/モルより大きく且つ10,000g/モル未満のMnを有するもの、ポリビニルアルコール、ポリ(メタ)−アクリル酸、修飾セルロース、例えばカルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチル−及び−プロピルセルロース、メチル−及びエチル−ヒドロキシエチルセルロースも包含するために適している。
【0041】
他の適するゲスト化合物は、
A)スルホン化芳香族化合物、
B)アルデヒド及び/又はケトンならびに場合により
C)非−スルホン化芳香族化合物、尿素及び尿素誘導体の群から選ばれる1種もしくはそれより多い化合物
に基づく縮合生成物である。
【0042】
基づくとは、縮合生成物が場合によりA、B及び場合によるCに加えて他の反応物から製造されたことを意味する。しかしながら、本発明の目的のために好適には、縮合生成物はA、B及び場合によりCのみから製造される。
【0043】
成分A)のスルホン化芳香族化合物は、本発明の範囲内でスルホメチル化芳香族化合物も同様に含むことが理解されるであろう。好ましいスルホン化芳香族化合物は、ナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、スルホン化ジトリルエーテル、スルホメチル化4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、スルホン化ジフェニルメタン、スルホン化ビフェニル、スルホン化ヒドロキシビフェニル、特に2−ヒドロキシビフェニル、スルホン化テルフェニル又はベンゼンスルホン酸である。
【0044】
成分B)として有用なアルデヒド及び/又はケトンには特に脂肪族、環状脂肪族及び又芳香族のものが含まれる。脂肪族アルデヒド、特に好ましくはホルムアルデヒド及び3〜5炭素原子の他の脂肪族アルデヒドが好ましい。
【0045】
成分C)として有用な非−スルホン化芳香族化合物の例はフェノール、クレゾール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン及びジヒドロキシジフェニルメタンである。
【0046】
尿素誘導体の例はジメチロール尿素、アルキル尿素、メラミン及びグアニジンである。
A)ナフタレンスルホン酸、フェノールスルホン酸、ジヒドロキシベンゼンスルホン酸、スルホン化ジトリルエーテル、スルホメチル化4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、スルホン化ジフェニルメタン、スルホン化ビフェニル、スルホン化ヒドロキシビフェニル、特に2−ヒドロキシビフェニル、スルホン化テルフェニル及びベンゼンスルホン酸から成る群より選ばれる少なくとも1種のスルホン化芳香族化合物、
B)ホルムアルデヒド及び場合により
C)フェノール、クレゾール、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、ジヒドロキシジフェニルメタン、尿素、ジメチロール尿素、メラミン及びグアニジンから成る群より選ばれる1種もしくはそれより多い化合物
に基づく縮合生成物が好ましい。
【0047】
好ましい縮合生成物は、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、スルホン化ジトリルエーテル及びホルムアルデヒド;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールスルホン酸及びホルムアルデヒド;4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、重亜硫酸ナトリウム、ホルムアルデヒド及び尿素;ナフタレンスルホン酸、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン及びホルムアルデヒド;スルホン化テルフェニル及びホルムアルデヒド;ならびに/あるいはスルホン化2−ヒドロキシビフェニル及びホルムアルデヒドならびに又ナフタレンスルホン酸及びホルムアルデヒドに基づく縮合生成物である。
【0048】
ゲスト化合物として用いるために、メラミン又はメラミン誘導体、特に式(VII)
【0049】
【化9】

[式中、R6は水素又は場合によりOH基で置換されていることができるC1−C4−アルキルであり、特別に好ましくはR6は水素である]のものが特に好ましい。
【0050】
金属錯体の結晶格子におけるゲスト化合物として導入することができる物質の量は、一般に、ホスト化合物の量に基づいて5重量%〜200重量%である。10〜100重量%というゲスト化合物の量が好ましい。本明細書で言及する量は、適した溶媒により洗い出されず、元素分析から得られる物質の量である。当然、上記の量より多いか又は少ない量の物質を加えることもでき、場合により過剰量を洗い出すことを省略することができる。10〜150重量%の量が好ましい。
【0051】
本発明はさらに請求項1の顔料の製造法に関し、その方法はゲスト化合物としてある化合物を含有しており、250より高い分散硬度(DIN 53 755に従い)を有する式(I)のアゾ化合物の金属錯体を水及び場合により有機溶媒の存在下で、1〜4、好ましくは1〜3、特に1.5〜2.5のpHあるいは9〜13、好ましくは10〜11のpHのいずれかにおいてならびに80〜180℃、好ましくは90〜140℃、特に95〜110℃の温度で熱処理することを特徴とする。
【0052】
該方法は好ましくは250未満の分散硬度に達した時に完了する。
【0053】
該方法は100℃より高い温度で、好ましくはオートクレーブ中で行う。
【0054】
可能な有機溶媒は水溶性又は水−混和性溶媒である。種々の溶媒ならびにまた場合によりポリマー性であることができる250℃より高い沸点を有する高沸点溶媒の混合物を用いることもできる。本発明に従うと、用いられるべき溶媒に関して制限はない。さらに特定的には、脂肪族、環状脂肪族又は芳香族炭化水素及びテルペン炭化水素、又アルコール、グリコール及びポリグリコールエーテル、エステル及びケトンの群からの化合物が適している。アミン性溶媒、特に第1級、第2級及び第3級脂肪族及び又芳香族又は環状脂肪族アミンならびにそれらの混合物及び誘導体に基づくものを用いることもできる。
【0055】
適する有機溶媒は、C1−C4−アルコール、例えばメタノール、エタノール、イソプロパノール、n−プロパノール、n−ブタノール、イソブタノール又はtert−ブタノール、脂肪族ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン又はジアセトンアルコール、ポリオール、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、100〜4000、好ましくは400〜1500g/モルの平均分子量を有するポリエチレングリコール又はグリセロール、モノヒドロキシエーテル、好ましくはモノヒドロキシアルキルエーテル、特に好ましくはモノ−C1−C4−アルキルグリコールエーテル、例えばエチレングリコールモノアルキル、モノメチル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル又はジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、チオジグリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル又はモノエチルエーテル、又2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、N−エチルピロリドン、N−ビニルピロリドン、1,3−ジメチルイミダゾリドン、ジメチルアセトアミドならびに又ジメチルホルムアミドである。
【0056】
それらは好ましくは100℃/大気圧より高い沸点を有する。
【0057】
pHは好ましくは無機もしくは有機酸及び塩基を用いて設定される。
【0058】
好ましい酸はHCl、H3PO4、H2SO4、HI、HBr、酢酸及び/又はギ酸である。
【0059】
好ましい塩基はLiOH、KOH、NaOH、Ca(OH)2、NH3、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン及び/又はジメチルエタノールアミンである。
【0060】
好ましい態様の場合、熱処理は1〜4のpH値において行われる。
【0061】
250より高い分散硬度を有するとして本発明の方法で用いられる顔料は、特に好ましくは式(I)のアゾ化合物と金属塩、好ましくは20℃において20g/lより高い、特に50g/lより高い水中の溶解度を有するものを反応させ、続いて挿入されるべき化合物と反応させることにより直接得られる顔料である。
【0062】
下記においてエダクト(educts)と呼ぶ250より高い分散硬度を有する顔料は、好ましくは以下の通りに、金属化合物との反応をpH≦2において行うような方法で得られる。続く挿入は好ましくは1〜7のpHにおいて行われる。挿入をpH<4において行う場合、続いてpHを4.5より高く、好ましくは4.5〜7に上げるのが好ましい。
【0063】
次いでこのエダクト懸濁液をさらに濾過し、残るエダクトを好ましくは水、特に熱水で洗浄し、非−挿入画分、塩及び他の不純物を除去することができる。かくして中間的に単離され、場合により乾燥されるエダクトを次いで80〜180℃において、pH1〜4又は9〜13で熱処理することができる。
【0064】
別の場合、このエダクト懸濁液を1〜4のpH又は9〜13のpHに再調節し、80〜180℃の温度で熱処理することができる。
【0065】
本発明に従う顔料を含有する熱処理された懸濁液は、熱処理の後に好ましくは4.5〜7のpHに再調節される。その後、好ましくはそれを濾過する。かくして得られるプレスケーキを水で洗浄した後に場合により乾燥することができる。
【0066】
有用な乾燥法は一方でパドル乾燥(paddle drying)などの通常の乾燥法を含む。そのような乾燥法及び続く通常の方法での顔料の摩砕は微粉状の顔料を得ることを可能にする。
【0067】
好ましくはプレスケーキは水性スラリとして噴霧乾燥される。特に好ましくは、アンモニアを含有するスラリを噴霧乾燥することによって成され、固体含有率を向上させる。噴霧乾燥されるべきスラリは好ましくは10〜40重量%、特に15〜30重量%の固体含有率を有する。
【0068】
スラリはさらにカルボン酸及びスルホン酸アミドなどの粘度降下性添加剤をスラリに基づいて最高で10重量%の量で含有することができる。
【0069】
有用なカルボキシアミド及びスルホンアミドの例は、尿素及び置換された尿素、例えばフェニル尿素、ドデシル尿素及び他;複素環式化合物、例えばバルビツル酸、ベンズイミダゾロン、ベンズイミダゾロン−5−スルホン酸、2,3−ジヒドロキシキノキサリン、2,3−ジヒドロキシキノキサリン−6−スルホン酸、カルバゾール、カルバゾール−3,6−ジスルホン酸、2−ヒドロキシキノリン、2,4−ジヒドロキシキノリン、カプロラクタム、メラミン、6−フェニル−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン、6−メチル−1,3,5−トリアジン−2,4−ジアミン、シアヌル酸である。
【0070】
さらに別の添加物が用いられるべき場合、それらは好ましくは乾燥の前に加えられる。有用な添加物の例は例えば下記に挙げる本発明の配合物の成分である:乾燥のために適した乾燥機には原則的にすべての乾燥機、例えば真空乾燥機、空気循環乾燥機、特に噴霧乾燥機、特に1−及び2−材料(one− andtwo−material)並びに回転円盤乾燥機が含まれる。流動床乾燥法も適している。
【0071】
適した単一−材料ノズル乾燥機(single−material nozzle dryers)の例はスパイラルチャンバーノズル(spiral chamber nozzle)を有するものである。
【0072】
本発明の方法の特別に好ましい態様の場合、用いられる塩基は、場合により乾燥の間に揮発性でないさらに別の塩基と一緒であることができるアンモニアであり、好ましくは5〜40重量%の固体含有率を有する得られる水性スラリを噴霧乾燥する。このアンモニア−含有スラリの使用は基質上における非常に優れた分散性、色濃度及び明度により傑出している特に有利な顆粒を生ずる。さらに、それはさらさらしており、非常に粉立ちが少ない。
【0073】
本発明はさらに本発明に従う少なくとも1種の顔料及び少なくとも1種の分散剤を含む顔料配合物を提供する。
【0074】
本発明の目的のための分散剤は、顔料粒子を水性媒体中でその微粒子形態に安定化する物質である。微粒子は好ましくは0.001〜5μm、特に0.005〜1μm、特別に好ましくは0.005〜0.5μmの微粉砕物(fine division)を意味すると理解される。
【0075】
適する分散剤は例えばアニオン性、カチオン性、両性又は非−イオン性である。
【0076】
適するアニオン性分散剤は、特に、芳香族スルホン酸とホルムアルデヒドの縮合生成物、例えばホルムアルデヒドとアルキルナフタレンスルホン酸の縮合生成物あるいはホルムアルデヒド、ナフタレンスルホン酸及び/又はベンゼンスルホン酸の縮合生成物、場合により置換されていることができるフェノールとホルムアルデヒド及び重亜硫酸ナトリウムの縮合生成物である。スルホコハク酸エステル及びアルキルベンゼンスルホネートの群からの分散剤も適している。さらにサルフェート化、アルコキシル化脂肪酸アルコール又はそれらの塩も適している。アルコキシル化脂肪酸アルコールは特に、5〜120個、好ましくは5〜60個、特に5〜30個のエチレンオキシドが与えられ、飽和もしくは不飽和であるC6−C22脂肪酸アルコール、特別にはステアリルアルコールを意味すると理解されるべきである。8〜10個のエチレンオキシド単位でアルコキシル化されているステアリルアルコールが特に好ましい。サルフェート化アルコキシル化脂肪酸アルコールは好ましくは塩として、特にアルカリ金属もしくはアミン塩として、好ましくはジエチルアミン塩として存在する。リグニンスルホネート、例えばサルファイト法又はクラフト法(sulphite or kraft process)により得られるものも特に適している。好ましくはそれらは部分的に加水分解、酸化、プロポキシル化、スルホン化、スルホメチル化又は脱スルホン化され、既知の方法に従って、例えば分子量に従って又はスルホン化の程度に従って分別された生成物である。サルファイト及びクラフトリグニンスルホネートの混合物は同様に非常に有効である。1000〜100,000の平均分子量、80%以上の活性リグニンスルホネート含有率を有し、好ましくは多価カチオンが少量であるリグニンスルホネートが特に適している。スルホン化の程度は広く変わり得る。
【0077】
有用な非−イオン性分散剤の例は、アルキレンオキシドとアルキル化可能な化合物、例えば脂肪族アルコール、脂肪族アミン、脂肪酸、フェノール、アルキルフェノール、アリールアルキルフェノール、例えばスチレン−フェノール縮合物、カルボキシアミド及び樹脂酸の反応生成物である。それらは例えばエチレンオキシドと:
a1)6〜22炭素原子の飽和及び/又は不飽和脂肪族アルコールあるいは
b1)アルキル基に4〜12個の炭素原子を有するアルキルフェノールあるいは
c1)14〜20炭素原子の飽和及び/又は不飽和脂肪族アミンあるいは
d1)14〜20炭素原子の飽和及び/又は不飽和脂肪酸あるいは
e1)水素化もしくは非水素化樹脂酸との反応生成物の種類からのエチレンオキシド付加物である。
【0078】
適したエチレンオキシド付加物は、特に、5〜120、特に5〜100、特に5〜60、特に好ましくは5〜30モルのエチレンオキシドと組み合わされた場合のa1)〜e1)の下に挙げたアルキル化可能な化合物である。
【0079】
適する分散剤には先の優先日を有するDE−A 19 712 486又はDE−A 19 535 246から既知の式(X)のアルコキシル化生成物の式(XI)に従うエステルならびにまた場合により式(X)の親化合物と混合されていることができる式(XI)の化合物も含まれる。式(X)のスチレン−フェノール縮合物のアルコキシル化生成物は下記に定義する通りである:
【0080】
【化10】

式中、R15は水素又はC1−C4−アルキルであり、R16は水素又はCH3であり、R17は水素、C1−C4−アルキル、C1−C4−アルコキシ、C1−C4−アルコキシカルボニル又はフェニルであり、mは1〜4であり、nは6〜120であり、R18は指数nを有する各単位に関して同一であるか又は異なり、水素、CH3又はフェニルを示し、但し種々の−(−CH2−CH(R18)−O−)−基中にCH3が存在する場合、R18はnの合計数の0〜60%でCH3であり、nの合計数の100〜40%で水素であり、種々の−(−CH2−CH(R18)−O−)−基中にフェニルが存在する場合、R18はnの合計数の0〜40%でフェニルであり、nの合計数の100〜60%で水素である。
【0081】
アルコキシル化生成物(X)のエステルは式(XI)
【0082】
【化11】

[式中、R15'、R16'、R17'、R18'、m'及びn'はそれぞれR15、R16、R17、R18、m及びnの意味の範囲を帯びるがそれらから独立しており、Xは−SO3、−SO2、−PO3又は−CO−(R19)−COOであり、KatはH+、Li+、Na+、K+、NH4+及びHO−CH2CH2−NH3+から成る群より選ばれるカチオンであり、但しX=−PO3-の場合、2つのカチオンが存在し、R19は2価脂肪族もしくは芳香族基、好ましくはC1−C4−アルキレン、特にエチレン、モノ不飽和C2−C4−基、特にアセチレンあるいは場合により置換されていることができるフェニレン、特にオルト−フェニレンであり、好ましい置換基はC1−C4−アルキル、C1−C4−アルコキシ、C1−C4−アルコキシカルボニル又はフェニルである]に従う。
【0083】
式(XI)の特定の個々の化合物は例えばDE−A 19 712 486から既知であり、式(X)及び(XI)の混合物は例えばDE−A−19 535256から既知であり、それらはそれぞれ本出願の一部を成す。
【0084】
好ましい分散剤は式(XI)の化合物である。Xが式−CO−(R19)−COO-の基であり、R19が上記で定義した通りである式(XI)の化合物が好ましい。
【0085】
式(X)の化合物と一緒に用いられる式(XI)の化合物も分散剤として用いるために同様に好ましい。この場合、分散剤は好ましくは5〜99重量%の化合物(XI)及び1〜95重量%の化合物(X)を含む。
【0086】
ポリマー性分散剤は例えば水溶性ならびに又水−乳化性化合物、例えばホモポリマー及びランダムもしくはブロックコポリマーなどのコポリマーである。
【0087】
特に好ましいポリマー性分散剤は例えばAB、BAB及びABCブロックコポリマーである。AB又はBABブロックコポリマーにおいて、Aセグメントは顔料への結合を与える疎水性ホモポリマー又はコポリマーであり、Bブロックは親水性ホモポリマー又はコポリマーあるいはそれらの塩であり、水性媒体中における顔料の分散を保証する。そのようなポリマー性分散剤及びその合成は例えばEP−A−518 225及びEP−A−556 649から既知である。
【0088】
分散剤は好ましくは顔料配合物中の顔料の使用量に基づいて0.1〜100重量%、特に0.5〜60重量%の量で用いられる。
【0089】
もちろん配合物はさらに別の添加物を含有することができる。例えば、水性懸濁液の粘度を下げ、固体含有率を挙げる添加物、例えば噴霧乾燥に関する上記のカルボキシアミド及びスルホンアミドを、配合物に基づいて最高で10重量%の量で加えることができる。顔料配合物の場合に通常用いられる添加物も可能である。
【0090】
しかしながら、本発明の配合物は90重量%より多く、特に95重量%より多く、好ましくは97重量%より多くの顔料及び場合により分散剤を含有するのが特に好ましい。
【0091】
それぞれDIN 53 019に従って測定されるアルキド−メラミンワニス系における80mPa・s未満又は水性コーティング系における50mPa・s未満又は水性バインダ系における300mPa・s未満の粘度を有する顔料配合物が同様に好ましい。
【0092】
金属化合物の包接化合物、挿入化合物及び固溶体はそれ自体文献において既知である。それら及びそれらの製造は、例えば、EP 0 074 515及びEP 0 073 463に記載されている。しかしながら、そこに記載されている製造法により得られる生成物はきめが粗く、分散が困難な形態であり、顔料としてのその利用を非常に難しくしている。
【0093】
例えばEP 0 073 464に記載されているようなこれらの化合物の製造は、アゾ化合物を合成し、続いて金属塩と錯体化させ、その後金属錯体を中間的に単離してかあるいはせずに、挿入されるべき化合物と反応させる形態をとっている。工業的に有用な金属錯体、2−及び3価金属の挿入化合物、特に技術的及び経済的に重要なアゾバルビツル酸−ニッケル錯体の挿入化合物の場合、錯体化及び挿入ならびに又続く単離は酸性pH範囲で行われる。
【0094】
しかしながら、かくして製造される生成物の乾燥は通常そして乾燥条件にかかわらず、非常にきめが粗くて分散の困難な顔料を生じ、それは多くの場合に所望の色濃度も有していない。粗いきめ及び分散性の問題は特に、工業的に有用なアゾバルビツル酸−ニッケル錯体の挿入化合物の場合にもそして本明細書において特別に、技術的及び経済的の両方で評価できる重要性を有するメラミンとの挿入化合物の場合にも起こる。
【0095】
種々の方法により顔料の粗いきめ、分散性及び色濃度を改善することが既知である。そのような方法は、例えば、DE−A−2 214 700、DE−A−2 064 093及びDE−A−2 753 357から既知である。
【0096】
しかしこれらの方法はすべて非常に複雑であり、もっと悪いことに多くの場合に空−時収率の損失に導く。
【0097】
今回、全く驚くべきことに、本発明の顔料配合物が評価し得る程にきめが柔らかく、分散性が非常に良いことが見いだされた。さらに、それを用いて顔料着色される基質は比較的高い色濃度及び又より高い明度を有する。
【0098】
なおまた(likewise)、好ましい顔料配合物は、DIN 53 238 Part 31に従うアルキド/メラミン樹脂系においてわずか2時間の分散時間の後に、その分散硬度が2時間の適した分散時間の後に>250である顔料の色濃度より3%以上高い、好ましくは10%より大きく高い、特に20%より大きく高い色濃度を有するものである。
【0099】
固体顔料配合物はすべての顔料用途に非常に有用である。
【0100】
それは例えば印刷カラー、ジステンパカラー又はバインダカラーの製造のためのすべての種類のワニスの顔料着色のため、合成、半合成もしくは天然巨大分子状物質、特にポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエチレン又はポリプロピレンの原料着色(mass coloration)のため、ならびに天然、再生又は人工繊維、例えばセルロース、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリルもしくはポリアミド繊維の紡糸着色のため、ならびにまた編織布及び紙の印刷のために有用である。これらの顔料は非−イオン性、アニオン性又はカチオン性界面活性剤の存在下で摩砕又は混練することにより、紙の着色、編織布の顔料印刷のため、積層のため及び又ビスコースの紡糸着色のために有用な乳液及びペイントカラーの微粉砕された安定な水性顔料着色を与える。
【実施例】
【0101】
実施例1
40%の固体含有率を有するアゾバルビツル酸ナトリウム塩の乾燥状態で170gに相当する、425gの水で湿らされたペーストを、実験室用撹拌機を用いて5000mlの蒸留水中に均一に懸濁させる。その後、122.4gのNiCl2・6H2O及び126.1gのメラミンを加え、続いて懸濁液を95℃に加熱し、95℃で2時間撹拌する。次いで酢酸ナトリウムを用いて懸濁液をpH5.0に調節する。これに続き、吸引フィルター上で単離し、電解質を含まなくなるまで洗浄し、真空乾燥キャビネットにおいて80℃で乾燥し、通常の実験室用ミルにおいて約2分間摩砕する。
【0102】
かくして得られる顔料粉末は160m2/gの表面積を有する。
【0103】
分散硬度:250より高い。
【0104】
実施例2
実施例1に従って製造される45%の固体含有率を有するアゾバルビツル酸−ニッケル錯体のメラミン挿入化合物の乾燥状態で295.6gに相当する657gの水で湿らされたペーストを5000mlの蒸留水の初期装填物に加え、実験室用撹拌機を用いて均一に撹拌し、かくして調製される懸濁液を塩酸を用いて酸性pHに調節し、次いでオートクレーブ中である温度に加熱し、その温度及びそのpHで2時間熱処理する(表を参照されたい)。これに続いて95℃に冷却し、生成物を単離するために水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを5.0に設定する。
【0105】
次いで吸引フィルター上で生成物を単離し、電解質を含まなくなるまで洗浄し、真空乾燥キャビネット中で80℃において乾燥し、通常の実験室用ミルにおいて2分間粉砕する。
【0106】
実施例2を他の熱処理条件を用いて繰り返すと、類似の性質が得られる(表2を参照されたい)。
【0107】
【表1】

1)中間で単離せずに熱処理;pH5における顔料懸濁液を単離せず、pH2に再調節し(塩酸を用いて)、95℃で2時間乾燥する。次いでそれをpH5に調節し、単離し、実施例2に記載する通りに仕上げる。
2)DIN 53 775 Part7に従って測定。
3)RV20 Haake回転粘度計を用いて測定。
4)水性バインダ中に導入の後。
5)水性コーティング系中に導入の後。
6)溶媒−含有コーティング系(DIN 53 019に従うアルキド−メラミン)中に導入の後。
【0108】
実施例14
a)40%の固体含有率を有するアゾバルビツル酸ナトリウム塩の乾燥状態で170gに相当する425gの水で湿らされたペーストを実験室用撹拌機を用いて5000mlの蒸留水中に均一に懸濁させる。その後、122.4gのNiCl2・6H2O及び126.1gのメラミンを加え、続いて懸濁液を95℃に加熱し、95℃で2時間撹拌する。次いで酢酸ナトリウムを用いて懸濁液をpH5.0に調節する。これに続き、吸引フィルター上で単離し、電解質を含まなくなるまで洗浄する。
b)ペーストの半分を次いで2500mlの蒸留水中に懸濁させる。これに続いて塩酸を用いてpH2.0に調節し、97℃に加熱し、続いてその温度で5時間撹拌する。次いで生成物を吸引フィルター上で単離し、電解質を含まなくなるまで洗浄する。
【0109】
次いで45%の固体含有率を有する乾燥状態で147.8gに相当する3287.4gの実施例14aの水で湿らされたペーストを、29.6gの25重量%濃度アンモニア溶液、363gの脱イオン水、2.4gのジエタノールアミン及び2.3gのε−カプロラクタムの初期装填物に加える。次いで実験室用撹拌機を用いて混合物を均一に撹拌し、得られる懸濁液は20.9%の固体含有率を有する。
【0110】
実施例14bに従って製造されるアゾバルビツル酸−ニッケル錯体のメラミン挿入化合物を29.6gの25重量%濃度アンモニア溶液、130gの脱イオン水、2.4gのジエタノールアミン及び2.3gのε−カプロラクタムに加える。これに続いて実験室用撹拌機で均一に撹拌する。実施例14aの懸濁液と対照的に、固体含有率は30.9%であった。
【0111】
これらの懸濁液を噴霧乾燥に用いた。
分散硬度:<250
さらさらした粉立ちの少ない顆粒状生成物が得られる。
本発明の主たる特徴及び態様は以下の通りである。
【0112】
1.その互変異性構造の形態で式(I)
【0113】
【化12】

[式中、環X及びYはそれぞれ独立して=O、=S、=NR7、−NR67、−OR6、−SR6、−COOR6、−CN、−CONR67、−SO28
【0114】
【化13】

アルキル、シクロアルキル、アリール及びアラルキルから成る群より選ばれる1つもしくは2つの置換基を有していることができ、環X及びYのそれぞれについて環内及び環外二重結合の合計は3つであり、R6は水素、アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、R7は水素、シアノ、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル又はアシルであり、R8はアルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、さらに式(I)において破線で示す通り、5−もしくは6−員環を形成していることができ、それにさらに環が縮合していることができ、R5は−OH、−NR67、アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、R1〜R8に関して挙げたCH結合を含有している置換基はさらに置換されていることができ、m、n、o及びpはそれぞれ1であるか、あるいは式(I)において点線により示す通り、環窒素原子が二重結合のための出発点である場合、ゼロであることもできる]に従うアゾ化合物の金属錯体であって、その金属錯体はゲスト化合物として少なくとも1つの化合物を受け入れ、それらが250未満の分散硬度を有することを特徴とする金属錯体。
【0115】
2.式(I)の化合物において、X環が式
【0116】
【化14】

[式中、L及びMはそれぞれ独立して=O、=S又は=NR6であり、L1は水素、−OR6、−SR6、−NR67、−COOR6、−CONR67、−CN、アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、M1は−OR6、−SR6、−NR67、−COOR6、−CONR67、−CN、−SO28
【0117】
【化15】

アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、置換基M1とR1又はM1とR2は5−もしくは6−員環を形成していることができ、R1、R2及びR5はそれぞれ上記で定義した通りである]の環を示すことを特徴とする上記1項に記載の金属錯体。
【0118】
3.式(I)のアゾ化合物がその遊離の酸の形態で式(II)又は(III)あるいはその互変異性式の1つ
【0119】
【化16】

[式中、R'5は−OH又は−NH2であり、R'1、R"1、R'2及びR"2はそれぞれ水素であり、M'1及びM"1はそれぞれ独立して水素、−OH、−NH2、−NHCN、アリールアミノ又はアシルアミノである]に従うことを特徴とする上記1項に記載の金属錯体。
【0120】
4.式(I)のアゾ化合物が式(V)又はその互変異性体
【0121】
【化17】

に従うことを特徴とする上記1項に記載の金属錯体。
【0122】
5.用いられる式(I)のアゾ化合物の金属化合物が、金属Li、Cs、Mg、Cd、Co、Al、Cr、Sn、Pb、好ましくはNa、K、Ca、Sr、Ba、Zn、Fe、Ni、Cu及びMnとのモノ−、ジ−、トリ−及びテトラアニオンの塩及び錯体であること特徴とする上記1項に記載の金属錯体。
【0123】
6.用いられる金属化合物が式(I)のアゾ化合物のNi塩もしくは錯体であることを特徴とする上記1項に記載の金属錯体。
【0124】
7.環式もしくは非環式有機化合物、特にメラミンをゲスト化合物として受け入れることを特徴とする上記1項に記載の金属錯体。
【0125】
8.150m2/g未満のBET比表面積を有することを特徴とする上記1項に記載の金属錯体。
【0126】
9.ゲスト化合物としてある化合物を包含し且つ250より大きい分散硬度を有する式(I)のアゾ化合物の金属錯体を水及び場合により有機溶媒の存在下に、1〜4、好ましくは1〜3、特に1.5〜2.5のpHあるいは9〜13、好ましくは10〜11のpHのいずれかならびに80〜180℃、好ましくは90〜140℃、特に95〜100℃の温度において熱処理することを特徴とする上記1項の金属錯体の製造法。
【0127】
10.上記1項に記載の少なくとも1種の金属錯体及び分散剤を含んでなる顔料配合物。
【0128】
11.印刷カラー、ディステンパカラー又はバインダカラーの製造のため、合成、半合成もしくは天然巨大分子状物質、特にポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエチレン又はポリプロピレンの原料着色のため、ならびに天然、再生又は人工繊維、例えばセルロース、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリルもしくはポリアミド繊維の紡糸着色のため、ならびにまた編織布及び紙の印刷のための上記1項の金属錯体の使用。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
その互変異性構造の形態で式(I)
【化1】

[式中、環X及びYはそれぞれ独立して=O、=S、=NR7、−NR67、−OR6、−SR6、−COOR6、−CN、−CONR67、−SO28
【化2】

アルキル、シクロアルキル、アリール及びアラルキルから成る群より選ばれる1つもしくは2つの置換基を有していることができ、環X及びYのそれぞれについて環内及び環外二重結合の合計は3つであり、R6は水素、アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、R7は水素、シアノ、アルキル、シクロアルキル、アリール、アラルキル又はアシルであり、R8はアルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、R1、R2、R3及びR4はそれぞれ独立して水素、アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、さらに式(I)において破線で示す通り、5−もしくは6−員環を形成していることができ、それにさらに環が縮合していることができ、R5は−OH、−NR67、アルキル、シクロアルキル、アリール又はアラルキルであり、R1〜R8に関して挙げたCH結合を含有する置換基はさらに置換されていることができ、m、n、o及びpはそれぞれ1であるか、あるいは式(I)において点線により示す通り、環窒素原子が二重結合のための出発点である場合、ゼロであることもできる]に従うアゾ化合物の金属錯体であって、その金属錯体はゲスト化合物として少なくとも1つの化合物を受け入れ、それらが250未満の分散硬度を有することを特徴とする金属錯体。
【請求項2】
請求項1に記載の少なくとも1種の金属錯体及び分散剤を含んでなる顔料配合物。
【請求項3】
印刷カラー、ディステンパカラー又はバインダカラーの製造のため、合成、半合成もしくは天然巨大分子状物質、特にポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリアミド、ポリエチレン又はポリプロピレンの原料着色のため、ならびに天然、再生又は人工繊維、例えばセルロース、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリロニトリルもしくはポリアミド繊維紡糸着色のため、ならびにまた編織布及び紙の印刷のための請求項1の金属錯体の使用。

【公開番号】特開2011−32485(P2011−32485A)
【公開日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232498(P2010−232498)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【分割の表示】特願平11−292434の分割
【原出願日】平成11年10月14日(1999.10.14)
【出願人】(505422707)ランクセス・ドイチュランド・ゲーエムベーハー (220)
【Fターム(参考)】