説明

金融商品管理システム、金融商品管理方法及び金融商品管理プログラム

【課題】金融商品についての円滑な取引を実現するワークフローを効率的に作成するための金融商品管理システム、金融商品管理方法及び金融商品管理プログラムを提供する。
【解決手段】取引管理サーバ20の商品設計制御部22は、「レイヤ1」〜「レイヤ3」を用いて商品を構成する。まず、「レイヤ3」のオブジェクトの組み合わせ、既に商品として登録済みかどうかについて判定する。まだ商品として登録されていない場合、商品設計制御部22は、各オブジェクトの属性情報に基づいて、組み合わせの可否を判定する。組み合わせ可能な場合、シミュレーションを行ない、収益性及びリスクを評価する。収益性がある場合、商品設計制御部22は、リスク評価結果に基づいて自動値決め商品候補又は個別値決め商品候補として決定し、値決め方法に応じた「レイヤ1」、「レイヤ2」のオブジェクトを付加したワークフローを登録する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、金融商品についての円滑な取引を実現するワークフローを効率的に作成するための金融商品管理システム、方法及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
今日、金融機関において、多様な金融商品が販売されている。このような金融商品の中には、デリバティブのように、金融市場で決定される金利、ボラティリティ、為替レート等価格決定の要素となる基準価格(マーケットレート)に基づき、取引価格を決めるものも含まれる。このため、マーケットレートを考慮した取引価格の設定(値決め)を行なう必要がある。そこで、デリバティブ取引の業務負担の増大に対処するためのデリバティブ商品販売管理方法が検討されている(例えば、特許文献1を参照。)。この文献に記載された技術では、発注者とトレーダーがアプリケーション及びデータベースを共有することによって、発注者が値決めと約定を実行できると共に、必要に応じてトレーダーによる値決めを介在できるようにしている。トレーダーが、プライシングに必要なマーケットデータを常時更新し、発注者が、取引条件をウエブブラウザ画面から送信してトレーダー用のアプリケーションを直接、操作する。そして、発注者が、送信した取引条件に応じて送信時点におけるマーケットデータから計算されたプライスを確認して、必要に応じて取引条件を修正する。更に、必要に応じてトレーダーによる値決めを介在できるようにする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−56185号公報(第1頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された技術のように、金融商品において値決めを行なう場合、アプリケーションにより機械的に値決めを行なう場合もあれば、トレーダーの総合的な判断により値決めを行なう場合もある。いずれの場合にも、大量の取引に対応するためには、値決めを含む一連のワークフローを効率的に実行できることが望まれる。
【0005】
このような金融商品の取引対象は多様であり、これらの取引対象を組み合わせて新たな金融商品を生成する場合もある。このように、新たに生成された金融商品についての値決めにおいて、トレーダーを介在させる場合、大量の取引に対して迅速に対応するためには多くのトレーダーを確保しておく必要がある。
【0006】
また、新たに生成された金融商品であっても、金融商品の性格によっては、トレーダーによる値決めの必要がなく、機械的な計算により値決めを行なうことも可能である。特に、リスクの低い商品については、自動計算による値決めを行なっても問題がない。
【0007】
本発明は、上記問題点を解決するためになされたものであり、金融商品についての円滑な取引を実現するワークフローを効率的に作成するための金融商品管理システム、金融商品管理方法及び金融商品管理プログラムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記問題点を解決するために、請求項1に記載の発明は、取引情報の入力制御を行なう第1レイヤのオブジェクトと、自動値決めと個別値決めとを切り分ける第2レイヤのオブジェクトと、取引を行なうための取引モデル毎に設定された第3レイヤのオブジェクトと
を登録したオブジェクトデータベースと、取引モデルを組み合わせて設計された商品の管理を行なう制御手段とを備えた金融商品管理システムであって、前記制御手段が、前記オブジェクトデータベースから第3レイヤの複数のオブジェクトの組み合わせを抽出する抽出手段と、前記オブジェクトの組み合わせに取引パラメータを適用してシミュレーションによりリスク評価値を算出するシミュレーション手段と、前記リスク評価値に応じて、第2レイヤにおける自動値決め又は個別値決めの値決め方法を決定する判定手段と、前記第1レイヤのオブジェクト、前記決定された値決め方法に対応する第2レイヤのオブジェクト及び前記第3レイヤのオブジェクトの組み合わせを結合して設計された商品候補を出力する登録手段とを備えたことを要旨とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の金融商品管理システムにおいて、前記判定手段において、前記シミュレーションにより、リスクが小さいことを示す評価値の場合には、第2レイヤにおいて自動値決めを選択し、リスクが大きいことを示す評価値の場合には、第2レイヤにおいて個別値決めを選択することを要旨とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の金融商品管理システムにおいて、前記シミュレーションにおいて、取引パラメータを適用して損益を算出し、収益を出せる場合にリスク評価値を算出することを要旨とする。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項1〜3のいずれか一つに記載の金融商品管理システムにおいて、前記オブジェクトデータベースに登録された第3レイヤの各オブジェクトに対して、他のオブジェクトとの組み合わせの可否を判定するための属性情報を登録した属性情報記憶手段を更に備え、前記制御手段が、前記属性情報記憶手段に記憶された属性情報に基いて、各組み合わせに含まれる前記第3レイヤのオブジェクトの属性情報を取得し、前記属性情報に基いて組み合わせ可能と判定した場合に商品候補として出力することを要旨とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一つに記載の金融商品管理システムにおいて、第1レイヤのオブジェクト、第2レイヤのオブジェクト及び第3レイヤのオブジェクトの組み合わせを結合して設計された商品を構成するオブジェクトのオブジェクト識別子が登録された商品情報記憶手段を更に備え、前記抽出手段において、前記商品情報記憶手段に登録された既存の商品の中から複数の商品を特定し、前記商品を構成する第3レイヤのオブジェクトのオブジェクト識別子を取得し、重複したオブジェクト識別子をまとめた組み合わせを生成することを要旨とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、取引情報の入力制御を行なう第1レイヤのオブジェクトと、自動値決めと個別値決めとを切り分ける第2レイヤのオブジェクトと、取引を行なうための取引モデル毎に設定された第3レイヤのオブジェクトとを登録したオブジェクトデータベースと、取引モデルを組み合わせて設計された商品の管理を行なう制御手段とを備えた金融商品管理システムを用いて、金融商品を管理するための処理方法であって、前記制御手段が、前記オブジェクトデータベースから第3レイヤの複数のオブジェクトの組み合わせを抽出する抽出段階と、前記オブジェクトの組み合わせに取引パラメータを適用してシミュレーションによりリスク評価値を算出するシミュレーション手段と、前記リスク評価値に応じて、第2レイヤにおける自動値決め又は個別値決めの値決め方法を決定する判定段階と、前記第1レイヤのオブジェクト、前記決定された値決め方法に対応する第2レイヤのオブジェクト及び前記第3レイヤのオブジェクトの組み合わせを結合して設計された商品候補を出力する登録段階とを実行することを要旨とする。
【0014】
請求項7に記載の発明は、取引情報の入力制御を行なう第1レイヤのオブジェクトと、自動値決めと個別値決めとを切り分ける第2レイヤのオブジェクトと、取引を行なうため
の取引モデル毎に設定された第3レイヤのオブジェクトとを登録したオブジェクトデータベースと、取引モデルを組み合わせて設計された商品の管理を行なう制御手段とを備えた金融商品管理システムを用いて、金融商品を管理するためのプログラムであって、前記制御手段を、前記オブジェクトデータベースから第3レイヤの複数のオブジェクトの組み合わせを抽出する抽出手段と、前記オブジェクトの組み合わせに取引パラメータを適用してシミュレーションによりリスク評価値を算出するシミュレーション手段と、前記リスク評価値に応じて、第2レイヤにおける自動値決め又は個別値決めの値決め方法を決定する判定手段と、前記第1レイヤのオブジェクト、前記決定された値決め方法に対応する第2レイヤのオブジェクト及び前記第3レイヤのオブジェクトの組み合わせを結合して設計された商品候補を出力する登録手段として機能させることを要旨とする。
【0015】
(作用)
請求項1、6、7に記載の発明によれば、制御手段が、オブジェクトデータベースから第3レイヤの複数のオブジェクトの組み合わせを抽出する。次に、オブジェクトの組み合わせに取引パラメータを適用してシミュレーションによりリスク評価値を算出する。そして、リスク評価値に応じて、第2レイヤにおける自動値決め又は個別値決めの値決め方法を決定する。更に、第1レイヤのオブジェクト、決定された値決め方法に対応する第2レイヤのオブジェクト及び第3レイヤのオブジェクトの組み合わせを結合して設計された商品候補を出力する。これにより、自動値決め又は個別値決めを含めた金融商品の取引を支援するワークフローを効率的に設計することができる。
【0016】
請求項2に記載の発明によれば、シミュレーションにより、リスクが小さいことを示す評価値の場合には、第2レイヤにおいて自動値決めを選択し、リスクが大きいことを示す評価値の場合には、第2レイヤにおいて個別値決めを選択する。これにより、リスクが大きい場合には、慎重な値決めを行なうワークフローを設計することができる。
【0017】
請求項3に記載の発明によれば、シミュレーションにおいて、取引パラメータを適用して損益を算出し、収益を出せる場合にリスク評価値を算出する。これにより、収益性がない商品候補を排除することができる。
【0018】
請求項4に記載の発明によれば、制御手段が、属性情報記憶手段に記憶された属性情報に基いて、各組み合わせに含まれる第3レイヤのオブジェクトの属性情報を取得し、属性情報に基いて組み合わせ可能と判定した場合に商品候補として出力する。これにより、オブジェクトを組み合わせることができず、商品として成立し得ない商品候補を排除することができる。
【0019】
請求項5に記載の発明によれば、商品情報記憶手段に登録された既存の商品の中から複数の商品を特定し、商品を構成する第3レイヤのオブジェクトのオブジェクト識別子を取得し、重複したオブジェクト識別子をまとめた組み合わせを生成する。これにより、既存商品のオブジェクトを利用して、新たな商品を設計することができる。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、金融商品についての円滑な取引を実現するワークフローを効率的に作成するための金融商品管理システム、金融商品管理方法及び金融商品管理プログラムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態のシステム概略図。
【図2】自動値決め及び個別値決めのワークフローの説明図。
【図3】レイヤ構成と各レイヤにおいて用いられるオブジェクトの関係の説明図。
【図4】各データ記憶部に記録されたデータの説明図であって、(a)はオブジェクト管理データ記憶部、(b)は商品管理データ記憶部、(c)は商品候補データ記憶部に記録されたデータの説明図。
【図5】「レイヤ1」、「レイヤ2」において用いられるオブジェクトの説明図。
【図6】本発明の本実施形態の処理手順の説明図。
【図7】本発明の本実施形態の処理手順の説明図。
【図8】本発明の他の実施形態の処理手順の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を具体化した実施形態を図1〜図7に従って説明する。本実施形態では、複数の取引モデルを組み合わせて新しい金融商品を生成する場合に用いる金融商品管理システム、金融商品管理方法及び金融商品管理プログラムとして説明する。本実施形態では、図1に示すように、金融商品管理システムとしての取引管理サーバ20が金融商品管理処理を実行する。
【0023】
本実施形態においては、営業担当者が金融商品についての取引を行なう場合、個々の取引において市場価格や市場動向等に基づいて取引価格の算出(値決め)が行なわれる。この値決めには、アプリケーションによって機械的に価格を算出する「自動値決め」と、トレーダーによる総合的判断に基づいて価格を算出する「個別値決め」とがある。
【0024】
自動値決めのワークフローにより取引を行なう場合には、「取引入力」、「プライシング」、「内容確認」、「内容照査」、「成約」の順番で各処理が行なわれる。図2においては、商品を構成する取引モデル(オブジェクトd)を用いる商品Aが自動値決めの商品である。このような取引モデルを実現するためのオブジェクトは、予めデータベースに準備しておく。
【0025】
ここで、「取引入力」においては、取引入力画面において取引条件を設定する処理を行なう。
「プライシング」においては、公知のロジックにより、マーケットレートに基づいて取引価格を算出する処理を行なう。
【0026】
「内容確認」においては、入力された取引条件やプライシングにより算出された価格を確認する処理を行なう。
「内容照査」においては、照査権限者が内容を確認する処理を行なう。
「成約」においては、取引を成立させるための処理を行なう。
【0027】
一方、個別値決めのワークフローより取引を行なう場合には、図2に示す商品Bのように、「取引入力」、「内容確認」、「値決め依頼」、「内容照査」、「本部内容確認」、「取引転送」、「成約」の順番で各処理が行なわれる。図2においては、商品を構成する取引モデル(オブジェクトa、c、d、e)を用いる商品Bが個別値決めの商品である。
【0028】
ここで、「取引入力」においては、取引入力画面において取引条件を設定する処理を行なう。
「内容確認」においては、入力された取引条件を確認する処理を行なう。
【0029】
「値決め依頼」においては、取引条件に基づいて、トレーダーに値決めを依頼するための処理を行なう。
「内容照査」においては、照査権限者が内容を確認する処理を行なう。
【0030】
「本部内容確認」においては、本部担当者が営業担当者の約定を確認する処理を行なう

「取引転送」においては、プライシングされた約定を営業担当者に転送する処理を行なう。
「成約」においては、取引を成立させるための処理を行なう。
【0031】
本実施形態では、図3に示すように、各商品について、3層(「レイヤ1」〜「レイヤ3」)のレイヤ・アーキテクチャを用いて取引管理が行われる。
【0032】
「レイヤ1」においては、「商品性」、「自動値決め」、「個別値決め」に関わらず共通的に使用することができるオブジェクトを管理して、取引のシナリオ制御を行なう。そして、「レイヤ1」のオブジェクトは、「レイヤ2」、「レイヤ3」において必要なリクエストパラメータを取得する。
【0033】
「レイヤ2」においては、「商品性」に関わらず、「自動値決め」、「個別値決め」それぞれで共通的に使用できるオブジェクトを管理する。
「レイヤ3」においては、商品毎の固有のビジネスロジックの管理を行なう。
【0034】
例えば、個別の商品Aについては、自動・個別値決め共通の「レイヤ1」において実行される複数のオブジェクトが登録されている。また、自動・個別値決めの共通処理である「レイヤ2」においては、「レイヤ1」で決定された自動値決め又は個別値決めに対応するオブジェクトが登録されている。更に、「レイヤ3」においては、商品に固有の処理を行なうオブジェクトが登録されている。このような3層のオブジェクトを利用することにより、この商品についての取引支援を行なう。
【0035】
取引管理サーバ20には、図1に示すように、ネットワークを介してクライアント端末(10,15)が接続されている。
クライアント端末10は、営業店において、取引を行なう営業担当者が使用するコンピュータ端末である。一方、クライアント端末15は、金融機関が提供する金融商品を生成する本部担当者が用いるコンピュータ端末である。
【0036】
このクライアント端末(10,15)は、各担当者が取引管理サーバ20にアクセスする場合に用いられる。クライアント端末(10,15)は、ネットワークを介してデータを送信する機能や、受信したデータを表示する機能等を有する。このため、このクライアント端末(10,15)は、図示しないCPU、RAM、ROMの他、キーボード、マウス等の入力手段、ディスプレイ等の出力手段、通信手段等を有する。
【0037】
取引管理サーバ20は、クライアント端末10から受信したデータに基づいて、金融取引の管理処理を実行するコンピュータシステムである。取引管理サーバ20は、図1に示すように、取引支援制御部21、商品設計制御部22、属性情報記憶手段としてのオブジェクト管理データ記憶部25、商品情報記憶手段としての商品管理データ記憶部26、商品候補データ記憶部27、オブジェクトデータベース28を備える。
【0038】
オブジェクト管理データ記憶部25には、図4(a)に示すように、各レイヤにおいて用いるオブジェクトについてのオブジェクト管理レコード250が記録される。このオブジェクト管理レコード250は、各レイヤにおいて用いるオブジェクトを登録した場合に記録される。オブジェクト管理レコード250は、オブジェクト識別子、レイヤ識別子、属性に関するデータを含んで構成される。
【0039】
オブジェクト識別子データ領域には、各オブジェクトを特定する識別子(オブジェクト識別子)に関するデータが記録される。
レイヤ識別子データ領域には、このオブジェクトが用いられるレイヤを特定する識別子に関するデータが記録される。
【0040】
属性データ領域には、このオブジェクトが属するグループを特定する識別子に関するデータが記録される。この属性を用いることにより、他のオブジェクトとの組み合わせの可能性について判断することができる。例えば、レイヤ2のオブジェクトにおいては、自動値決め、個別値決めを識別するためのフラグが記録される。レイヤ3のオブジェクトについては、他の取引モデルとの組み合わせの可否を特定するための情報が記録される。ここでは、このオブジェクトと組み合わせることができない他のオブジェクトのオブジェクト識別子を登録しておく。
【0041】
商品管理データ記憶部26には、図4(b)に示すように、金融機関が提供する金融商品についての商品管理レコード260が記録されている。この商品管理レコード260は、金融商品が登録された場合に記録される。商品管理レコード260は、商品識別子に対してオブジェクト識別子に関するデータを含んで構成される。
【0042】
商品識別子データ領域には、金融機関において販売する金融商品を特定する商品識別子に関するデータが記録される。
オブジェクト識別子データ領域には、この商品について、レイヤ1〜3において用いられるオブジェクトを特定するための識別子に関するデータが記録される。
【0043】
商品候補データ記憶部27には、図4(c)に示すように、新たに生成した金融商品の候補についての商品候補レコード270が記録されている。この商品候補レコード270は、新たな金融商品を生成した場合に記録される。商品候補レコード270は、候補識別子に対してオブジェクト識別子、収益性評価結果、リスク評価結果、総合判定結果に関するデータを含んで構成される。
【0044】
候補識別子データ領域には、生成した金融商品の候補を特定する商品識別子に関するデータが記録される。
オブジェクト識別子データ領域には、この商品候補について、レイヤ3において用いられるオブジェクトを特定するための識別子に関するデータが記録される。
【0045】
収益性評価結果データ領域には、収益性評価を行なった結果(本実施形態では、収益期待値)に関するデータが記録される。
リスク評価結果データ領域には、リスク評価を行なった結果(本実施形態では、損失発生確率)に関するデータが記録される。
総合判定結果データ領域には、総合判定を行なった結果に関するデータが記録される。本実施形態では、商品候補として利用できない場合には、「不可」フラグが記録される。
【0046】
オブジェクトデータベース28には、各レイヤにおいて用いられるオブジェクトが記録される。各オブジェクトにはオブジェクト識別子が付与されている。そして、各オブジェクトは、このオブジェクト識別子を用いて他のオブジェクトを呼び出して、リクエストを供給する。リクエストを受けたオブジェクトは、このリクエストに対応するレスポンスを返す。
【0047】
更に、取引管理サーバ20はシミュレーション情報記憶部(図示せず)を備えている。このシミュレーション情報記憶部には、シミュレーションに用いるパラメータ値(取引パラメータ)が記録される。具体的には、直近所定期間の各種マーケットレート履歴情報、シミュレーションの対象期間、インデックス、オプションの種類や各オプションの設定値等に関するデータが記録される。このマーケットレートは、「レイヤ3」の各オブジェク
トのパラメータ値として用いられる。
【0048】
更に、シミュレーション情報記憶部には、「レイヤ3」の各オブジェクトにおいて用いるパラメータについて、多様な状態を想定してパラメータ値が設定された各種想定パターンに関するデータが記録される。
【0049】
取引支援制御部21は、クライアント端末10と通信を行ないながら、営業担当者が入力した取引条件に基づいて、取引を支援するための各種データ処理を行なう制御手段として機能する。この取引支援制御部21は、図示しないCPU、RAM、ROM等を有し、後述する処理(レイヤ1〜3の各処理段階の各処理等)を行なう。そのための取引支援プログラムを実行することにより、取引支援制御部21は、図1に示すように「レイヤ1」〜「レイヤ3」の各オブジェクトを実行する。
【0050】
「レイヤ1」においては、図5に示すように、取引入力管理オブジェクト、プライシング管理オブジェクト、内容確認管理オブジェクト、内容照査表示管理オブジェクト、内容照査管理オブジェクト、本部内容確認管理オブジェクト、取引転送管理オブジェクト、成約管理オブジェクトが利用される。
【0051】
取引入力管理オブジェクトは、クライアント端末10において入力された取引条件情報を取得する。そして、取得した取引条件に基づいて、自動値決め或いは個別値決めを振り分ける。そして、「レイヤ2」における自動値決め取引入力オブジェクト、個別値決め取引入力オブジェクトに引き継ぐ。更に、自動値決めの対象商品の場合、プライシング管理オブジェクトに引き継ぐ。
【0052】
プライシング管理オブジェクトは、「レイヤ2」におけるプライシングオブジェクトに、取引情報を引き継ぐ。プライシングオブジェクトは、「レイヤ3」の取引モデルを用いて、取引価格を決定し、プライシング管理オブジェクトに供給する。そして、プライシング管理オブジェクトは、クライアント端末10に、取得した商品価格を出力する。
【0053】
内容確認管理オブジェクトは、クライアント端末10において入力された内容確認要求に基づいて、自動値決め或いは個別値決めを振り分ける。そして、「レイヤ2」における自動値決め内容確認オブジェクト、個別値決め内容確認オブジェクトに引き継ぐ。
【0054】
内容照査表示管理オブジェクトは、クライアント端末10に内容照査画面を出力する。
内容照査管理オブジェクトは、クライアント端末10において入力された内容照査実行要求に基づいて、自動値決め或いは個別値決めを振り分ける。そして、「レイヤ2」における自動値決め内容照査オブジェクト、個別値決め内容照査オブジェクトに引き継ぐ。
【0055】
また、個別値決めのワークフローにおいては、本部内容確認管理オブジェクト、取引転送管理オブジェクトを用いる。本部内容確認管理オブジェクト、取引転送管理オブジェクトは、それぞれ「レイヤ2」における本部内容確認オブジェクト、取引転送オブジェクトにクライアント端末10からの要求を引き継ぐ。
【0056】
成約管理オブジェクトは、クライアント端末10において入力された成約要求に基づいて、自動値決め或いは個別値決めを振り分ける。そして、「レイヤ2」における自動値決め成約オブジェクト、個別値決め成約オブジェクトに引き継ぐ。
【0057】
商品設計制御部22は、既存のオブジェクトを利用して、新たな商品の候補を生成するための各種データ処理等を行なう制御手段として機能する。この商品設計制御部22は、図示しないCPU、RAM、ROM等を有し、後述する処理(抽出段階、判定段階、シミ
ュレーション段階、登録段階等の各処理等)を行なう。そのための商品候補生成プログラムを実行することにより、商品設計制御部22は、図1に示すように、商品候補生成手段221、候補判定手段222、シミュレーション手段223、候補登録手段224として機能する。
【0058】
商品候補生成手段221は、オブジェクトの組み合わせを抽出する抽出手段として機能する。具体的には、オブジェクト管理データ記憶部25に登録された「レイヤ3」のオブジェクトを組み合わせて、商品候補を生成する処理を実行する。
【0059】
候補判定手段222は、値決め方法を決定する判定手段として機能する。具体的には、生成した商品候補の収益性やリスクを用いて、商品性を総合的に判定する処理を実行する。
【0060】
シミュレーション手段223は、リスク評価値を算出するシミュレーション手段として機能する。具体的には、生成した商品候補についてシミュレーションを行ない、リスクや収益性についての評価結果を算出する処理を実行する。具体的には、シミュレーション手段223は、商品候補を構成する取引モデルにおいて用いられるパラメータに、シミュレーション情報記憶部に記録されたマーケットレート履歴情報を代入し、この期間の損益のシミュレーションを行なう。また、シミュレーション手段223は、この取引モデルにおいて用いられるパラメータにシミュレーション情報記憶部に記録された各種想定パターンを代入することによりシミュレーションを行ない、損失が生じる確率を算出する。
【0061】
候補登録手段224は、商品候補を出力する登録手段として機能する。具体的には、シミュレーション結果に基づいて、自動値決め或いは個別値決めが振り分けられた商品候補として登録する処理を実行する。
【0062】
次に、新たな商品候補を生成する場合の処理を、図6を用いて説明する。
まず、取引管理サーバ20の商品設計制御部22は、「レイヤ3」のオブジェクトの組み合わせの生成処理を実行する(ステップS1−1)。具体的には、商品設計制御部22の商品候補生成手段221は、オブジェクト管理データ記憶部25に記録されたレイヤ3のオブジェクトを用いて組み合わせを生成する。そして、商品候補生成手段221は、生成した組み合わせに対して候補識別子を付与する。更に、商品候補生成手段221は、候補識別子、組み合わせを構成するオブジェクト識別子を含めた商品候補レコード270を生成し、商品候補データ記憶部27に登録する。
【0063】
次に、取引管理サーバ20の商品設計制御部22は、商品候補データ記憶部27に登録された組み合わせを、順次、判定対象として特定し、組み合わせ判定処理を実行する(ステップS1−2)。具体的には、商品設計制御部22の候補判定手段222が、後述する組み合わせ判定処理を実行する。
【0064】
そして、取引管理サーバ20の商品設計制御部22は、商品候補の出力処理を実行する(ステップS1−3)。具体的には、商品設計制御部22の候補判定手段222が、総合判定結果において「不可」フラグが記録されていない組み合わせを商品候補情報としてクライアント端末15に出力する。この商品候補情報には、商品を構成するオブジェクト識別子、収益性評価結果、リスク評価結果、総合判定結果を含める。これにより、本部担当者は、この商品候補を商品として販売するかどうかについての判定を行なう。
【0065】
(組み合わせ判定処理)
次に、組み合わせ判定処理(ステップS1−2)を、図7を用いて説明する。
取引管理サーバ20の商品設計制御部22は、既に商品として登録済みかどうかについ
ての判定処理を実行する(ステップS2−1)。具体的には、商品設計制御部22の候補判定手段222は、商品管理データ記憶部26において、判定対象の組み合わせと同じオブジェクト識別子が登録された商品管理レコード260の有無を判定する。
【0066】
同じオブジェクト識別子が登録された商品管理レコード260が記録されており、既に商品として登録済みの場合(ステップS2−1において「YES」の場合)、取引管理サーバ20の商品設計制御部22は、判定対象の組み合わせについての処理を終了する。この場合、候補判定手段222は、商品候補レコード270の総合判定結果として「不可」フラグを記録する。
【0067】
一方、同じオブジェクト識別子が登録された商品管理レコード260が記録されておらず、まだ商品として登録されていない場合(ステップS2−1において「NO」の場合)、取引管理サーバ20の商品設計制御部22は、各オブジェクトの属性情報の取得処理を実行する(ステップS2−2)。具体的には、商品設計制御部22の候補判定手段222は、オブジェクト管理データ記憶部25から、商品候補を構成する各オブジェクトの属性情報を取得する。
【0068】
次に、取引管理サーバ20の商品設計制御部22は、組み合わせ可能かどうかについての判定処理を実行する(ステップS2−3)。具体的には、商品設計制御部22の候補判定手段222は、オブジェクト管理データ記憶部25から取得した属性情報において、組み合わせることができないオブジェクト識別子が含まれているかどうかについて判定する。
【0069】
組み合わせることができないオブジェクト識別子が含まれているため、組み合わせ不可と判定した場合(ステップS2−3において「NO」の場合)、取引管理サーバ20の商品設計制御部22は、判定対象の組み合わせについての処理を終了する。この場合も、候補判定手段222は、商品候補レコード270の総合判定結果として「不可」フラグを記録する。
【0070】
一方、組み合わせることができないオブジェクト識別子が含まれておらず、組み合わせ可能と判定した場合(ステップS2−3において「YES」の場合)、取引管理サーバ20の商品設計制御部22は、シミュレーション処理を実行する(ステップS2−4)。具体的には、商品設計制御部22の候補判定手段222は、シミュレーション手段223に対して、シミュレーション指示を供給する。このシミュレーション指示には、判定対象の商品候補を構成するオブジェクトのオブジェクト識別子を含める。
【0071】
この場合、シミュレーション手段223は、収益性評価を行なう。本実施形態では、シミュレーション手段223は、指定された各オブジェクトにおいて用いられるパラメータを特定し、シミュレーション情報記憶部からパラメータ値(直近所定期間の各種マーケットレート履歴情報)を取得する。そして、シミュレーション手段223は、取得したパラメータ値を各オブジェクトに代入して、シミュレーション対象期間における利益期待値についての損益計算を行なう。
【0072】
更に、シミュレーション手段223は、リスク評価を行なう。本実施形態では、シミュレーション手段223は、シミュレーション情報記憶部に記録された各種想定パターンを代入し、複数の各種想定パターンの中で損失が生じる各種想定パターンの割合(損失発生確率)についてのリスク計算を行なう。
【0073】
そして、シミュレーション手段223は、収益性及びリスクについての評価結果を候補判定手段222に戻す。この場合、候補判定手段222は、収益性評価結果及びリスク評
価結果を商品候補データ記憶部27の商品候補レコード270に記録する。
【0074】
次に、取引管理サーバ20の商品設計制御部22は、収益性があるかどうかについての判定処理を実行する(ステップS2−5)。具体的には、商品設計制御部22の候補判定手段222は、シミュレーション手段223の損益計算において算出した利益期待値が基準値以上かどうかについて判定する。
【0075】
利益期待値が基準値以下であり、収益性がないと判定した場合(ステップS2−5において「NO」の場合)、取引管理サーバ20の商品設計制御部22は、判定対象の組み合わせについての処理を終了する。この場合も、候補判定手段222は、商品候補レコード270の総合判定結果として「不可」フラグを記録する。
【0076】
一方、利益期待値が基準値を超えており、収益性があると判定した場合(ステップS2−5において「YES」の場合)、取引管理サーバ20の商品設計制御部22は、リスクが小さいかどうかについての判定処理を実行する(ステップS2−6)。具体的には、商品設計制御部22の候補判定手段222は、シミュレーション手段223のリスク計算において算出した損失発生確率が基準値以下かどうかについて判定する。
【0077】
損失発生確率が基準値以下であり、リスクが小さいと判定した場合(ステップS2−6において「YES」の場合)、取引管理サーバ20の商品設計制御部22は、自動値決め商品候補としての登録処理を実行する(ステップS2−7)。具体的には、商品設計制御部22の候補登録手段224は、オブジェクト管理データ記憶部25に記録されたオブジェクト管理レコード250の属性情報を用いて、レイヤ1及びレイヤ2において自動値決めについてのオブジェクトを特定し、このオブジェクト識別子を商品候補レコード270に登録する。
【0078】
一方、損失発生確率が基準値を超えており、リスクが大きいと判定した場合(ステップS2−6において「NO」の場合)、取引管理サーバ20の商品設計制御部22は、個別値決め商品候補としての登録処理を実行する(ステップS2−8)。具体的には、商品設計制御部22の候補登録手段224は、オブジェクト管理データ記憶部25に記録されたオブジェクト管理レコード250の属性情報を用いて、レイヤ1及びレイヤ2において個別値決めについてのオブジェクトを特定し、このオブジェクト識別子を商品候補レコード270に登録する。
【0079】
以上、本実施形態によれば、以下に示す効果を得ることができる。
・ 上記実施形態では、取引管理サーバ20の取引支援制御部21は、「レイヤ1」〜「レイヤ3」の各オブジェクトを実行する。この「レイヤ1」においては、「商品性」、「自動値決め」、「個別値決め」に関わらず共通的に使用することができるオブジェクトを管理する。そして、「レイヤ1」のオブジェクトは、「レイヤ2」、「レイヤ3」において必要なリクエストパラメータを取得する。「レイヤ2」においては、「商品性」に関わらず、「自動値決め」、「個別値決め」それぞれで共通的に使用できるオブジェクトを管理する。「レイヤ3」においては、商品毎の固有のビジネスロジックを管理する。これにより、図2に示す商品Cのように、「レイヤ1」、「レイヤ2」の既存オブジェクトを活用しながら、取引モデルを構成する「レイヤ3」のオブジェクトを結合することにより、新しい商品のワークフローを設計することができる。
【0080】
・ 上記実施形態では、リスクが小さいと判定した場合(ステップS2−6において「YES」の場合)、取引管理サーバ20の商品設計制御部22は、自動値決め商品候補としての登録処理を実行する(ステップS2−7)。一方、リスクが大きいと判定した場合(ステップS2−6において「NO」の場合)、取引管理サーバ20の商品設計制御部2
2は、個別値決め商品候補としての登録処理を実行する(ステップS2−8)。これにより、リスクが小さい商品については、機械的なロジックを用いて値決めを行なうことにより、大量の取引に対して効率的に対応するためのワークフローの設計を行なうことができる。一方、リスクが大きい商品については、トレーダーの判断に基づいて慎重な取引を行なうためのワークフローの設計を行なうことができる。
【0081】
そして、このような商品設計において、上述のようにシナリオ制御を行なう「レイヤ1」のオブジェクトは「商品性」、「自動値決め」、「個別値決め」に依存せず、また「レイヤ2」のオブジェクトは「商品性」に依存しない。このため、取引モデルを構成して、「自動値決め」、「個別値決め」のいずれかの値決め方法を決定して「レイヤ2」のオブジェクト、「レイヤ1」のオブジェクトを結合することができる。従って、効率的に取引を支援するワークフローの設計を行なうことができる。
【0082】
・ 上記実施形態では、取引管理サーバ20の商品設計制御部22は、レイヤ3のオブジェクトの組み合わせの生成処理を実行する(ステップS1−1)。これにより、既存のオブジェクトの組み合わせに限定されず、新しい商品を生成することができる。
【0083】
・ 上記実施形態では、組み合わせ不可と判定した場合(ステップS2−3において「NO」の場合)や、収益性がないと判定した場合(ステップS2−5において「NO」の場合)、取引管理サーバ20の商品設計制御部22は、判定対象の組み合わせについての処理を終了する。これにより、商品として成立しない商品候補や、収益を期待できない商品候補を除くことができる。
【0084】
なお、上記実施形態は、以下の態様に変更してもよい。
○ 上記実施形態では、取引管理サーバ20の商品設計制御部22は、レイヤ3のオブジェクトの組み合わせの生成処理を実行する(ステップS1−1)。これに代えて、既存の商品を組み合わせて新たな商品を生成するようにしてもよい。この場合の処理を、図8を用いて説明する。
【0085】
ここでは、取引管理サーバ20の商品設計制御部22は、組み合わせ対象商品の特定処理を実行する(ステップS3−1)。具体的には、商品設計制御部22の商品候補生成手段221が、商品管理データ記憶部26に登録されている複数の商品を特定して組み合わせを生成する。
【0086】
次に、取引管理サーバ20の商品設計制御部22は、「レイヤ1」〜「レイヤ3」のオブジェクトへの展開処理を実行する(ステップS3−2)。具体的には、商品設計制御部22の商品候補生成手段221が、生成した組み合わせについて、商品管理データ記憶部26から、この組み合わせにおいて用いられる「レイヤ1」〜「レイヤ3」のオブジェクト識別子を取得する。この場合、重複しているオブジェクト識別子は、一つにまとめられる。
【0087】
次に、取引管理サーバ20の商品設計制御部22は、オブジェクトの組み合わせの生成処理を実行する(ステップS3−3)。具体的には、商品設計制御部22の商品候補生成手段221が、取得したオブジェクト識別子を用いて、組み合わせを生成する。そして、商品候補生成手段221は、生成した組み合わせに対して候補識別子を付与する。更に、商品候補生成手段221は、候補識別子、組み合わせを構成するオブジェクト識別子を含めた商品候補レコード270を生成し、商品候補データ記憶部27に登録する。
【0088】
そして、ステップS1−2、S1−3と同様に、取引管理サーバ20の商品設計制御部22は、組み合わせ判定処理(ステップS3−4)、商品候補の出力処理(ステップS3
−5)を実行する。
これにより、既存の商品を構成するオブジェクトを利用して新たな商品を生成することができる。
【0089】
○ 上記実施形態では、新たに生成した商品候補についてシミュレーションを行ない、収益性評価やリスク評価を行なう。そして、リスク評価結果に基づいて、自動値決め、個別値決めのいずれかの値決め方法を決定する。これに加えて、既存商品の値決め方法を再検討するようにしてもよい。具体的には、既存商品の取引履歴情報に基づいて、リスク評価を行なう。そして、リスク評価結果に基づいて値決め方法を決定する。これにより、商品の外部環境等に応じたリスク評価に対応させて値決め方法を変更することができる。例えば、リスクが小さい商品については、効率的な取引を実現するためのワークフローに変更することができる。
【0090】
○ 上記実施形態では、取引管理サーバ20の商品設計制御部22は、シミュレーション処理を実行する(ステップS2−4)。このシミュレーションにおいては、シミュレーション対象期間の利益期待値を用いた収益性評価や、多様な状態を想定してパラメータ値が設定された各種想定パターンの中で損失が生じる確率を用いたリスク評価を行なう。収益性やリスクの評価方法はこれに限定されるものではなく、他の公知の手法による評価値を用いて行なうようにしてもよい。
【0091】
○ 上記実施形態では、リスク評価結果に基づいて、値決め方法を決定したが、他の評価結果に基づいて、値決め方法を決定するようにしてもよい。たとえば、収益性評価結果とリスク評価結果と変数とする関数を用いて値決め方法を決定するようにしてもよい。例えばハイリスクハイリターンの場合に個別値決めに決定する。
【符号の説明】
【0092】
10,15…クライアント端末、20…取引管理サーバ、21…取引支援制御部、22…商品設計制御部、25…オブジェクト管理データ記憶部、26…商品管理データ記憶部、27…商品候補データ記憶部、28…オブジェクトデータベース、221…商品候補生成手段、222…候補判定手段、223…シミュレーション手段、224…候補登録手段。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取引情報の入力制御を行なう第1レイヤのオブジェクトと、
自動値決めと個別値決めとを切り分ける第2レイヤのオブジェクトと、
取引を行なうための取引モデル毎に設定された第3レイヤのオブジェクトとを登録したオブジェクトデータベースと、
取引モデルを組み合わせて設計された商品の管理を行なう制御手段とを備えた金融商品管理システムであって、
前記制御手段が、
前記オブジェクトデータベースから第3レイヤの複数のオブジェクトの組み合わせを抽出する抽出手段と、
前記オブジェクトの組み合わせに取引パラメータを適用してシミュレーションによりリスク評価値を算出するシミュレーション手段と、
前記リスク評価値に応じて、第2レイヤにおける自動値決め又は個別値決めの値決め方法を決定する判定手段と、
前記第1レイヤのオブジェクト、前記決定された値決め方法に対応する第2レイヤのオブジェクト及び前記第3レイヤのオブジェクトの組み合わせを結合して設計された商品候補を出力する登録手段と
を備えたことを特徴とする金融商品管理システム。
【請求項2】
前記判定手段において、前記シミュレーションにより、リスクが小さいことを示す評価値の場合には、第2レイヤにおいて自動値決めを選択し、リスクが大きいことを示す評価値の場合には、第2レイヤにおいて個別値決めを選択することを特徴とする請求項1に記載の金融商品管理システム。
【請求項3】
前記シミュレーションにおいて、取引パラメータを適用して損益を算出し、
収益を出せる場合にリスク評価値を算出することを特徴とする請求項1又は2に記載の金融商品管理システム。
【請求項4】
前記オブジェクトデータベースに登録された第3レイヤの各オブジェクトに対して、他のオブジェクトとの組み合わせの可否を判定するための属性情報を登録した属性情報記憶手段を更に備え、
前記制御手段が、前記属性情報記憶手段に記憶された属性情報に基いて、各組み合わせに含まれる前記第3レイヤのオブジェクトの属性情報を取得し、前記属性情報に基いて組み合わせ可能と判定した場合に商品候補として出力することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一つに記載の金融商品管理システム。
【請求項5】
第1レイヤのオブジェクト、第2レイヤのオブジェクト及び第3レイヤのオブジェクトの組み合わせを結合して設計された商品を構成するオブジェクトのオブジェクト識別子が登録された商品情報記憶手段を更に備え、
前記抽出手段において、前記商品情報記憶手段に登録された既存の商品の中から複数の商品を特定し、
前記商品を構成する第3レイヤのオブジェクトのオブジェクト識別子を取得し、重複したオブジェクト識別子をまとめた組み合わせを生成することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一つに記載の金融商品管理システム。
【請求項6】
取引情報の入力制御を行なう第1レイヤのオブジェクトと、
自動値決めと個別値決めとを切り分ける第2レイヤのオブジェクトと、
取引を行なうための取引モデル毎に設定された第3レイヤのオブジェクトとを登録したオブジェクトデータベースと、
取引モデルを組み合わせて設計された商品の管理を行なう制御手段とを備えた金融商品管理システムを用いて、金融商品を管理するための処理方法であって、
前記制御手段が、
前記オブジェクトデータベースから第3レイヤの複数のオブジェクトの組み合わせを抽出する抽出段階と、
前記オブジェクトの組み合わせに取引パラメータを適用してシミュレーションによりリスク評価値を算出するシミュレーション手段と、
前記リスク評価値に応じて、第2レイヤにおける自動値決め又は個別値決めの値決め方法を決定する判定段階と、
前記第1レイヤのオブジェクト、前記決定された値決め方法に対応する第2レイヤのオブジェクト及び前記第3レイヤのオブジェクトの組み合わせを結合して設計された商品候補を出力する登録段階と
を実行することを特徴とする金融商品管理方法。
【請求項7】
取引情報の入力制御を行なう第1レイヤのオブジェクトと、
自動値決めと個別値決めとを切り分ける第2レイヤのオブジェクトと、
取引を行なうための取引モデル毎に設定された第3レイヤのオブジェクトとを登録したオブジェクトデータベースと、
取引モデルを組み合わせて設計された商品の管理を行なう制御手段とを備えた金融商品管理システムを用いて、金融商品を管理するためのプログラムであって、
前記制御手段を、
前記オブジェクトデータベースから第3レイヤの複数のオブジェクトの組み合わせを抽出する抽出手段、
前記オブジェクトの組み合わせに取引パラメータを適用してシミュレーションによりリスク評価値を算出するシミュレーション手段、
前記リスク評価値に応じて、第2レイヤにおける自動値決め又は個別値決めの値決め方法を決定する判定手段、
前記第1レイヤのオブジェクト、前記決定された値決め方法に対応する第2レイヤのオブジェクト及び前記第3レイヤのオブジェクトの組み合わせを結合して設計された商品候補を出力する登録手段
として機能させることを特徴とする金融商品管理プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−237847(P2010−237847A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−83247(P2009−83247)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(592131906)みずほ情報総研株式会社 (187)