説明

針キャップ

【課題】安全に注射針の針部を収納でき、収納後の予期しない針部の飛び出しを防ぐ針キャップを提供する。
【解決手段】本発明の針キャップは、針先と針基を有する医療用針を側方より嵌着する。針キャップは内筒と外筒を備え、内筒および外筒には、針先および針基の少なくとも一部を収容するための開口部が形成されている。これにより、注射針組立体をキャップに挿入後キャップ外筒を可動させることにより、内筒の開口部が閉鎖され、注射針組立体が収納された状態となる。この状態では予期しない押圧がかかったとしても、キャップもしくは留置針が破壊されない程度の押圧であれば針部が飛び出すことはない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、針キャップに関する。
【背景技術】
【0002】
医療用に用いられる注射針には、主に医療従事者が注射針取扱時に誤って自らの手指などに穿刺してしまうことを防ぐため、注射針使用前には針部に針キャップが装着されている。また使用後も針部に針キャップを装着させるのが一般的である。
【0003】
針キャップとしては、一般に、円筒状で基端側から針部を装着するものが用いられる。しかし、このような針キャップでは針部への装着時に針キャップを持つ手指が針部へ向かっていく動きとなってしまうため、手指への誤穿刺を招きやすい。そこで、針部を側方から針キャップに装着し、誤穿刺を防止する針キャップが考案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の針キャップでは、押圧によって針キャップから針部が出入りするため、予期しない押圧によって針部が飛び出してしまう恐れがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−284948号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題に鑑みてなされたものであり、安全に注射針の針部を収納でき、収納後の予期しない針部の飛び出しを防ぐ針キャップを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
このような目的は、下記(1)〜(4)に記載の本発明により達成される。
(1)針先と針基を有する医療用針を側方より嵌着する針キャップであって、前記針キャップは内筒と外筒を備え、前記内筒および前記外筒には、前記針先および前記針基の少なくとも一部を収容するための開口部が形成されていることを特徴とする針キャップ。
(2)前記開口部は、前記内筒に形成された第1開口部と、前記外筒に形成された第2開口部を有し、前記内筒と前記外筒を相対移動させることで、前記第1開口部と前記第2開口部が連通した状態と、前記第1開口部と前記第2開口部が連通していない状態を切り替えることができる(1)に記載の針キャップ。
(3)前記内筒および前記外筒には、前記第1開口部と前記第2開口部が連通していない状態において、前記内筒と前記外筒の相対移動を規制するロック機構が設けられている(2)に記載の針キャップ。
(4)前記ロック機構は、前記内筒および前記外筒の一方に付設された突起部と、前記内筒および前記外筒の他方に付設された係合部を有する(3)に記載の針キャップ。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、注射針組立体をキャップに挿入後キャップ外筒を可動させることにより、内筒の開口部が閉鎖され、注射針組立体が収納された状態となる。この状態では予期しない押圧がかかったとしても、キャップもしくは留置針が破壊されない程度の押圧であれば針部が飛び出すことはない。また、針先に付着した感染性の物質が飛散することがないために操作者や操作者付近の人が二次感染する恐れがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】第1の実施形態に係る針キャップの内筒の側面図(a)および正面図(b)である。
【図2】第1の実施形態に係る針キャップの外筒の側面図(a)、正面図(b)および断面図(c)である。
【図3】第1の実施形態に係る針キャップの内筒と外筒を組み合わせた時の側面図(a)および正面図(b)である。
【図4】第2の実施形態に係る針キャップの内筒の側面図(a)および正面図(b)である。
【図5】第2の実施形態に係る針キャップの外筒の側面図(a)、正面図(b)および断面図(c)である。
【図6】第2の実施形態に係る針キャップの内筒と外筒を組み合わせた時の側面図(a)および正面図(b)である。
【図7】第3の実施形態に係る針キャップの内筒の側面図(a)および正面図(b)である。
【図8】第3の実施形態に係る針キャップの外筒の側面図(a)、正面図(b)および断面図(c)である。
【図9】第3の実施形態に係る針キャップの内筒と外筒を組み合わせた時の側面図(a)および正面図(b)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、全ての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
【0011】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る針キャップの内筒の側面図(a)および正面図(b)である。図2は、第1の実施形態に係る針キャップの外筒の側面図(a)、正面図(b)および断面図(c)である。なお、図2(c)は図2(b)におけるA−A’線において白抜き矢印で示す方向から見た断面図である。図3は、第1の実施形態に係る針キャップの内筒と外筒及び湾曲針を組み合わせた時の側面図(a)および正面図(b)である。
【0012】
図1に示すように、本実施形態の針キャップ100の内筒200は、円筒形状であり、側面に開口部(第1開口部)を有する。第1開口部は、内筒孔正面部220と内筒スリット230からなる。また、内筒200の基端側側面および先端側側面には内筒突起240を有している。
【0013】
内筒200の材料としては、例えば、ポリエチレン樹脂やポリプロピレン樹脂のようなポリオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエステル系樹脂、ポリカーボネート、ポリウレタン、フッ素系樹脂などが挙げられるが、これに限定されるものではなく、いかなる材料を用いることもできる。
【0014】
なお、内筒200は、例えば可視光透過性を有していてもよい。これにより誤穿刺防止キャップを湾曲針ハブ400に装着した時に、針部410をキャップ外部から確認することができる。
【0015】
内筒200の大きさは、嵌着する医療用針の大きさに応じて適宜設定されるが、例えば長さが30mm〜50mm程度、外径が3〜6mm程度であればよい。
【0016】
図1に示すように、内筒200の側面には第1開口部が形成されている。第1開口部は後に説明する第2開口部と連通しており、第1開口部と第2開口部を通って医療用針が針キャップ100内部に収容される。第1開口部は、内筒孔正面部220と内筒スリット230からなる。
【0017】
内筒孔正面部220は、第1開口部の基端側部分である。内筒孔正面部220は主に医療用針の湾曲針ハブ400(図3参照)を通過させるために設けられる。したがって、その大きさは医療用針の湾曲針ハブ400の大きさに応じて適宜調整される。
【0018】
内筒スリット230は、第1開口部の先端側部分である。内筒スリット230は主に医療用針の針部410(図3参照)を通過させるために設けられる。したがって、その大きさは医療用針の針部410の大きさに応じて適宜調整される。特に内筒スリット230の幅は針部410の太さの1〜2倍程度であることが好ましい。これによりロックをかける時の内筒と外筒の相対回転角度の冗長度をあげることができる。なお、内筒孔正面部220の幅と内筒スリット230の幅は上記のように湾曲針ハブ400および針部410の大きさに応じて調整すればよいが、これらが同じ大きさとなることを妨げない。
【0019】
内筒200は、基端側側面および先端側側面に内筒突起240を有している。内筒突起240は後に説明する外筒第2孔部350と係合し、内筒200と外筒300の相対移動を規制する。内筒突起240の大きさは、外筒第2孔部350と係合可能であればどのような大きさでもよい。
【0020】
図2に示すように、本実施形態の針キャップ100の外筒300は、円筒形状であり、側面に開口部(第2開口部)を有する。第2開口部は、外筒第1孔正面部320と外筒第1孔正面拡張部325、外筒スリット330からなる。また、外筒300の基端側側面および先端側側面には外筒第2孔部350を有している。
【0021】
外筒300の材料としては、上で挙げた内筒200と同様の材料を用いることができる。外筒300の材料と内筒200の材料は同じものであってもよいし、異なるものであってもよい。
【0022】
なお、外筒300は、例えば可視光透過性を有していてもよい。これにより誤穿刺防止キャップを湾曲針ハブ400に装着した時に、針部410をキャップ外部から確認することができる。
【0023】
外筒300の大きさは、嵌着する医療用針および外筒300の大きさに応じて適宜設定されるが、例えば長さが35mm〜60mm程度、外径が6〜10mm程度であればよい。
【0024】
図2に示すように、外筒300の側面には第2開口部が形成されている。第2開口部は、外筒第1孔正面部320と外筒第1孔正面拡張部325、外筒スリット330からなる。
【0025】
外筒第1孔正面部320は、第2開口部の基端側部分である。外筒第1孔正面部320は主に医療用針の湾曲針ハブ400を通過させるために設けられる。したがって、その大きさは医療用針の湾曲針ハブ400の大きさに応じて適宜調整される。
【0026】
外筒第1孔正面拡張部325は、外筒第1孔正面部320から外筒300の周方向に延設される。外筒第1孔正面拡張部325は、内筒200と外筒300を相対移動させたときに、医療用針の湾曲針ハブ400が収容される部分となる。したがって、その大きさは医療用針の湾曲針ハブ400が収容可能であればよい。特に、その周方向の長さが針部410の太さより長いことが好ましい。これによりロックをかけた際の内筒スリット230と外筒スリット330は位置がずれるので、針部410が露出することを防ぐことができる。
【0027】
外筒スリット330は、第2開口部の先端側部分である。外筒スリット330は主に医療用針の針部410を通過させるために設けられる。したがって、その大きさは医療用針の針部410の大きさに応じて適宜調整される。特に外筒スリット330の幅は針部410の太さの1〜2倍程度であることが好ましい。これによりロックをかける時の内筒と外筒の相対回転角度の冗長度をあげることができる。なお、外筒第1孔正面部320の幅と外筒スリット330の幅は上記のように湾曲針ハブ400および針部410の大きさに応じて調整すればよいが、これらが同じ大きさとなることを妨げない。
【0028】
外筒300は、基端側側面および先端側側面に外筒第2孔部350を有している。外筒第2孔部350は内筒突起240と係合し、内筒200と外筒300の相対移動を規制する。外筒第2孔部350の大きさは、内筒突起240と係合可能であればどのような大きさでもよい。特に外筒第2孔部350の周方向の長さが、外筒第1孔正面拡張部325の周方向の長さと同等の長さであることが好ましい。これにより内筒突起240の突起の移動距離と湾曲針ハブ400の移動距離が等しくなり、より安定なロックとなる。
【0029】
次に本発明の針キャップ100への医療用針の収容について説明する。
内筒200と外筒300は、内筒突起240と外筒第2孔部350を係合させることで相対移動可能に固定される。
【0030】
外筒第2孔部350は、外筒第2孔テーパー部360と外筒第2孔嵌合部370を有する。内筒突起240が外筒第2孔テーパー部360と係合している状態を第1状態、内筒突起240が外筒第2孔嵌合部と係合している状態を第2状態とする。第1状態においては第1開口部と第2開口部が連通した状態となっている。したがって、医療用針を針キャップ100の側面から嵌着させることができる。
【0031】
次いで内筒200に対して外筒300を回転(相対移動)させ第2状態とする。外筒第2孔テーパー部360は、外筒第1孔拡張部325の延設方向に向かって幅が漸減している。そして、外筒第2孔テーパー部360の幅は、外筒第2孔嵌合部370との境界部分において、内筒突起240の大きさより小さいが、回転により内筒突起240が外筒第2孔テーパー部360から外筒第2孔嵌合部370へ移動可能な程度の大きさとなっている。これにより、内筒突起240を係合した外筒第2孔部350は、外筒第2孔テーパー部360により内筒を回転方向へ、外筒を逆方向へ動かすという内筒と外筒の相対回転はさせやすいが、内筒突起240が外筒第2孔テーパー部360を超え外筒第2孔嵌合部370へ嵌合すると、逆の相対回転は困難となる。これによりロックをかけることができる。
【0032】
また、内筒200の内筒孔正面部220と軸方向に対象の位置には内筒孔背面部210が、外筒300の外筒第1孔正面部320と軸方向に対象の位置には外筒第1孔背面部310が形成されている。内筒孔背面部210および外筒孔背面部310を形成することにより、湾曲針ハブ400をより安定して保持することができる。この場合、外筒第1孔正面拡張部325に対応するように外筒第1孔背面拡張部315が外筒第1孔背面部から延設されている。
【0033】
また、内筒200及び外筒300の双方の両端、もしくはそのいずれか一方の両端は閉塞していることが好ましい。閉塞させることで、ロックをかけた時に針部410が露出しなくなり、針部410に付着した感染性物質の飛散を防止できる。
【0034】
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。
以下では、第2の実施形態について説明するが、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0035】
図4は、第2の実施形態に係る針キャップの内筒の側面図(a)および正面図(b)である。図5は、第2の実施形態に係る針キャップの外筒の側面図(a)、正面図(b)および断面図(c)である。なお、図5(c)は図5(b)におけるB−B’線において白抜き矢印で示す方向から見た断面図である。図6は、第2の実施形態に係る針キャップの内筒と外筒及び湾曲針を組み合わせた時の側面図(a)および正面図(b)である。
【0036】
第2の実施形態においては、図5に示すように、外筒300の外筒第1孔背面部310と外筒第1孔背面拡張部315の間および外筒第1孔正面部320と外筒第1孔正面拡張部325の間に、それぞれ外筒第1爪部380を備えている。
【0037】
外筒第1爪部380により、湾曲針ハブ400が嵌合した内筒を回転方向へ、外筒を逆方向へ動かすという内筒と外筒の相対回転はさせやすいが、湾曲針ハブ400が外筒第1爪部380を超え外筒第1孔背面拡張部315及び外筒第1孔正面拡張部325に嵌合すると、逆の相対回転は困難となる。これによりロックをかけることができる。
【0038】
(第3の実施形態)
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。
以下では、第3の実施形態について説明するが、第1の実施形態との相違点を中心に説明し、同様の事項についてはその説明を省略する。
【0039】
図7は、第3の実施形態に係る針キャップの内筒の側面図(a)および正面図(b)である。図8は、第3の実施形態に係る針キャップの外筒の側面図(a)、正面図(b)および断面図(c)である。なお、図8(c)は図8(b)におけるC−C’線において白抜き矢印で示す方向から見た断面図である。図9は、第3の実施形態に係る針キャップの内筒と外筒及び湾曲針を組み合わせた時の側面図(a)および正面図(b)である。
【0040】
第3の実施形態においては、図8に示すように、内筒200の側面に内筒爪穴260を有している。また、外筒内側面に外筒第2爪部390を有している。
【0041】
外筒第2爪部390により、内筒200を外筒300に対して相対移動させることでロックがかかる。このとき、外筒第2爪部390を湾曲針ハブ400が内筒端部でロックがかかる。このとき外筒第2爪部390を、針部410が外筒第1孔背面部310及び外筒第1孔正面部320の下端まで移動したときの内筒端部位置に設けることにより、針部410を露出させることなくロックをかけることができる。
【0042】
外筒第2爪部390はロックしたときに内筒端部に係合する位置に備えてあるが、必ずしもその位置に設ける必要はない。内筒に別途、外筒第2爪部390が嵌合する穴を設け、それに対応する外筒内側位置に外筒第2爪部390を設けることでロックをさせても良い。
【0043】
また、内筒爪穴260は内筒の外周を、外筒第2爪部390は外筒の内周を一周する円形状でもよい。円状であれば、ロックをした時の内筒端部と外筒第2爪部390の接する面積が増え、ロックはより安定なものとなる。
【0044】
以上、図面を参照して本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することもできる。
【符号の説明】
【0045】
100 針キャップ
200 内筒
210 内筒孔背面部
220 内筒孔正面部
230 内筒スリット
240 内筒突起
250 内筒孔側面部
260 内筒爪穴
300 外筒
310 外筒第1孔背面部
315 外筒第1孔背面拡張部
320 外筒第1孔正面部
325 外筒第1孔正面拡張部
330 外筒スリット
340 外筒第1孔側面部
350 外筒第2孔部
360 外筒第2孔テーパー部
370 外筒第2孔嵌合部
380 外筒第1爪部
390 外筒第2爪部
400 湾曲針ハブ
410 針部
420 チューブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
針先と針基を有する医療用針を側方より嵌着する針キャップであって、
前記針キャップは内筒と外筒を備え、
前記内筒および前記外筒には、前記針先および前記針基の少なくとも一部を収容するための開口部が形成されていることを特徴とする針キャップ。
【請求項2】
前記開口部は、前記内筒に形成された第1開口部と、前記外筒に形成された第2開口部を有し、前記内筒と前記外筒を相対移動させることで、前記第1開口部と前記第2開口部が連通した状態と、前記第1開口部と前記第2開口部が連通していない状態を切り替えることができる請求項1に記載の針キャップ。
【請求項3】
前記内筒および前記外筒には、前記第1開口部と前記第2開口部が連通していない状態において、前記内筒と前記外筒の相対移動を規制するロック機構が設けられている請求項2に記載の針キャップ。
【請求項4】
前記ロック機構は、前記内筒および前記外筒の一方に付設された突起部と、前記内筒および前記外筒の他方に付設された係合部を有する請求項3に記載の針キャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−205636(P2012−205636A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−71653(P2011−71653)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000002141)住友ベークライト株式会社 (2,927)
【Fターム(参考)】