説明

針一体型採血管ホルダー

【課題】一回の使用で廃棄でき、採取血液の逆流が防止され、採血以外の採取接続部にも容易に接続でき、更に皮膚面との間で小さな角度で操作でき、血管穿刺時に刃面が上面であることをグリップすることにより確認できること。
【解決手段】本発明の針一体型採血管ホルダーは、一端に、血管穿刺針部21と採血管用針部22とからなる中空針2の該採血管用針部が内部にまた血管穿刺針部が外側となるように装着され、他端が開口(10)しており、更に内部に採血管誘導部材7を有してもよい針一体型採血管ホルダーにおいて、前記中空針2が採血管ホルダー本体1と一体成形により装着されており、更に採血管用針部には、ゴム状弾性体3が包着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採血針一体型採血管ホルダーに関し、更に詳しくは、本発明は、採血針一体型採血管ホルダーの構造を簡易に成形することができると共に、刃面の確認が容易かつ穿刺時にグリップし易く、また逆流防止弁を設けて採取した血液の逆流を防止し、感染症等を防止に役立つ針一体型採血管ホルダーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、血液検査などの臨床検査では、血管穿刺針とゴム弾性体で包着された採血管用針とからなる中空針の採血管用針を採血管ホルダー内に装着し、採血管ホルダーの開口部より採血管を挿入して針が採血管のゴム蓋を貫通すると、血液が採血管内へ流入することにより採血される。ついで別の採血管に同様にして血液を採取し、検査の種類に応じた数の採血を行うことが行われている。このように近年では、採血管ホルダーを使用して必要数の採血管に血液を採取するが、使用後には、針を外して採血管ホルダーのみを洗浄消毒し、再使用することが行われている。針の着脱機構に関する技術は、いくつか知られており、具体的には、採血管ホルダーの針装着部に押圧部を有し、該押圧部の押圧により針装着孔が拡張され、ハブの挿入が可能となり、また該押圧部を解放すると、針装着孔が収縮してハブが固定される。また前記押圧部を押圧すると前記の如く針装着孔が拡張し、固定されていたハブが解放されて針の着脱が可能となる(例えば、特許文献1参照)。また針の着脱機構において、採血管ホルダーの針装着部に弾性保持部材の切り込みを挟んで対抗している一方部分にレバーを設け、該レバーを径が大きくなる方向へ押すことによって針装着孔が開き、容易にハブを挿入することができ、また前記レバーから手を離すことにより径が小さくなりハブを固定することができる(例えば、特許文献2参照)。更に、従来、血管穿刺針部分と採血管用針とからなる中空針は、通常、同軸上にある、いわゆる直すぐな管で構成されているものが使用されている。またこのような中空針を使用する際、穿刺時に皮膚面との角度が大きくなり、そのため採血しずらかったり、細い血管等では刃先が誤って血管を突き破って穿刺する恐れがあり、この点を改良し、針管の先端部が偏心した位置に配置した中空針が開示されている(例えば、特許文献3参照)。
【特許文献1】特開平8−126630号公報(請求項3、図2)
【特許文献2】特開平11−169360号公報(請求項2、図11)
【特許文献3】特開2003−153883(請求項2、段落0002、図2、図6)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、前述のような特許文献1及び2に記載されているような針の着脱機構は、採血後の針を手をふれることなく採血管ホルダーから容易に抜去することができる点で好ましいものであるが、製造が複雑かつ煩雑であり、ディスポーザブルとして採血後の採血管ホルダーを廃棄するには製造コストが嵩むという問題がある。また特許文献3に記載の採血器具では、採血して採血管に導入された血液が再び血管穿刺針から血管中へ逆流するという問題が残っている。更に特許文献3に示される如く針管が2つの湾曲形状の屈曲部を有する如く形成することは極めて困難であるという問題がある。
【0004】
そこで、本発明者等は、前述のような問題点について種々検討を重ね、以下の如き知見を得た。即ち、(a)採血後の廃棄の問題を考慮してディスポーザブル方式を採用した。(b)採血に際し、採取した血液の逆流を防止するために逆止弁を採用した。(c)採血に際し、皮膚面との間で小さな角度で操作できる。(d)血管穿刺時においてグリップし易くし、刃面が上を向いているか否かを容易に確認しうるようにする。したがって、本発明が解決しようとする課題は、一回の使用で廃棄し、採取血液の逆流が防止され、更に皮膚面との間で小さな角度で操作でき、極めて使い易い針一体型採血管ホルダーを提供することにある。また本発明が解決しようとする課題は、血管穿刺時に刃面が上面であることをグリップすることにより容易に確認できると共に握り易い針一体型採血管ホルダーを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の上記課題は、以下の各発明によってそれぞれ達成される。
(1)一端に、血管穿刺針部と採血管用針部とからなる中空針の該採血管用針部が内部にまた血管穿刺針部が外側となるように装着され、他端が開口しており、更に内部に採血管誘導部材を有してもよい針一体型採血管ホルダーにおいて、前記中空針が採血管ホルダー本体と一体成形により装着されており、更に採血管用針部には、ゴム状弾性体が包着していることを特徴とするディスポーザブル針一体型採血管ホルダー。
(2)採血管ホルダーの少なくとも一部が網状体又は複数のスリットを有することを特徴とする前記第1項に記載のディスポーザブル針一体型採血管ホルダー。
(3)一端の内部に採血管用針を有し、外側に血管穿刺針を有し、他端が開口しており、更に内部に採血管誘導部材を有してもよい針一体型採血管ホルダーにおいて、該採血管ホルダー本体の一端に、前記採血管用針が一体成形により装着されていると共に、血管穿刺側には、血管穿刺針が逆止弁内蔵部を介して有し、かつこれらの針は逆止弁を介して連通し、更に採血管用針には、ゴム状弾性体が包着していることを特徴とする針一体型採血管ホルダー。
(4)血管穿刺側には、逆止弁内蔵部を有し、該逆止弁内蔵部には血管穿刺針がチューブを介して接続されていることを特徴とする前記第3に記載の針一体型採血管ホルダー。
(5)一端の内部に採血管用針を有し、外側に血管穿刺針を有し、他端が開口しており、更に内部に採血管誘導部材を有してもよい針一体型採血管ホルダーにおいて、採血管用針と血管穿刺針は、対向してハブに設けられていると共に、該採血管用針を軸心とする位置から外周方向に変位した位置に前記血管穿刺針が一体成形により装着されており、これらの針の間は連通し、更に採血管用針には、ゴム状弾性体が包着していることを特徴とする針一体型採血管ホルダー。
(6)一端の内部に採血管用針を有し、外側に血管穿刺針を有し、他端が開口しており、更に内部に採血管誘導部材を有してもよい針一体型採血管ホルダーにおいて、該採血管ホルダー本体の一端に逆止弁内蔵部を有し、かつ該逆止弁内蔵部に前記採血管用針が一体成形により装着されていると共に該逆止弁内蔵部の反対側には、前記採血管ホルダーの中心より外周に変位した位置に前記血管穿刺針が一体成形により装着されており、これらの針は逆止弁を介して連通し、更に採血管用針には、ゴム状弾性体が包着していることを特徴とする針一体型採血管ホルダー。
(7)血管穿刺針の刃面を上面とした位置で、採血管ホルダーの上面部は平面に形成されていることを特徴とする前記第1項乃至第6項のいずれかに記載の針一体型採血管ホルダー。
(8)血管穿刺針の刃面を上面とした位置で、採血管ホルダーの上面部及び下面部が平面に形成されていることを特徴とする前記第1項乃至第6項のいずれかに記載の針一体型採血管ホルダー。
(9)上面部にマーカーを有することを特徴とする前記第7項又は第8項に記載の針一体型採血管ホルダー。
(10)マーカーが着色であることを特徴とする前記第9項に記載の針一体型採血管ホルダー。
(11)マーカーが凹部又は凸部からなることを特徴とする前記第7項又は第8項に記載の針一体型採血管ホルダー。
(12)逆止弁が、弾性部材からなる本体の上流側面と下流側面に環状気密用突部を有し、かつ中央部に貫通孔を有し、該貫通孔は、下流側面には長方形スリットが形成され、上流側面には方形が形成され、かつ長方形スリットの長手方向の端部から上流側面に向かって傾斜していることを特徴とする前記第3項、第4項又は第6項のいずれかに記載の針一体型採血管ホルダー。
(13)逆止弁が、上流側の液体通路部と弁体収納部を有するハウジングからなり、該弁体収納部には、ゴム弾性弁体が前記液体通路部と密着する位置で圧着収納されて上流側液体通路が閉塞され、また前記弁体の周囲には透孔を有し、かつ該弁体は、上流側の液体通路部から下流側に向かう液体の圧力により容易に変形して開口し、また下流側から上流側への逆流に対して閉塞することを特徴とする前記第3項、第4項又は第6項のいずれかに記載の針一体型採血管ホルダー。
【発明の効果】
【0006】
本願の前記第1項に記載の発明によれば、ディスポーザブル針一体型採血管ホルダーは、中空針が採血管ホルダー本体と一体成形により装着されていることにより、製造が容易で、低コストかつ量産が可能であるので、ディスポーザブル方式が採用でき、使用後、直ちに廃棄することができるという優れた効果を奏するものである。本願第2項に記載の発明は、前記第1項に記載の発明において、採血管ホルダーの少なくとも一部が網状体又は複数のスリットを有することにより、いっそうの低コストとすることができる。
本願の前記第3項に記載の発明において、採血管ホルダー本体の一端の内部に、採血管用針が一体成形により装着されていることにより、製造が容易で、低コストかつ量産が可能であるので、ディスポーザブル方式が採用でき、使用後、直ちに廃棄することができるという優れた効果を奏するものである。また血管穿刺側には、血管穿刺針が逆止弁内蔵部を介して有し、かつこれらの針は逆止弁を介して連通していることにより、採血に際し、採血方向に血液は流れるが、採取した血液が逆流することがないので、血液の逆流による感染症等の発病の恐れを防止することができるという優れた効果を奏するものである。
本願の前記第4項に記載の発明は、前記第3項において、血管穿刺側には、逆止弁内蔵部を有し、該逆止弁内蔵部には血管穿刺針がチューブを介して接続されていることにより、血液検査における採血に際し、血管が細く穿刺しずらい患者などに使用するのに適している。
【0007】
本願の前記第5項に記載の発明において、一端の内部に採血管用針を有し、外側に血管穿刺針を有し、他端が開口しており、更に内部に採血管誘導部材を有してもよい針一体型採血管ホルダーにおいて、採血管用針と血管穿刺針は、対向してハブに設けられていると共に、該採血管用針を軸心とする位置から外周方向に変位した位置に前記血管穿刺針が一体成形により装着されており、これらの針の間は連通していることにより、製造が容易で、低コストかつ量産が可能であるので、ディスポーザブル方式が採用でき、使用後、直ちに廃棄することができるという優れた効果を奏するものである。また採血管用針と血管穿刺針とが採血管ホルダーの中心より外周に変位した位置に存在していることにより、血管穿刺針の血管への穿刺に際し、採血管ホルダーが皮膚面に接触する等によるわずらわしさがなく、血管への穿刺が容易に行えるという優れた効果を奏するものである。
本願の前記第6項に記載の発明において、採血管ホルダー本体の一端に逆止弁内蔵部を有し、かつ該逆止弁内蔵部に前記採血管用針が一体成形により装着されていると共に該逆止弁内蔵部の反対側には、前記採血管ホルダーの中心より外周に変位した位置に前記血管穿刺針が一体成形により装着されていることにより、製造が容易で、低コストかつ量産が可能であるので、ディスポーザブル方式が採用でき、使用後、直ちに廃棄することができるという優れた効果を奏するものである。また採血管用針と血管穿刺針とが採血管ホルダーの中心より外周に変位した位置に存在し、これらの針は逆止弁を介して連通していることにより、血管穿刺針の血管への穿刺に際し、採血管ホルダーが皮膚面に接触する等によるわずらわしさがなく、血管への穿刺が容易に行えるという優れた効果を奏するものである。
【0008】
本願の前記第7項に記載の発明において、前記第1項乃至第6項のいずれかにおいて、血管穿刺針の刃面を上面とした位置で、採血管ホルダーの上面部は平面に形成されていることにより、血管穿刺時に刃面が上面を向いていることを確認し易いと共に、穿刺時にグリップしやすいという優れた効果を奏する。
本願の前記第8項に記載の発明において、前記第1項乃至第6項のいずれかにおいて、血管穿刺針の刃面を上面とした位置で、採血管ホルダーの上面部及び下面部が平面に形成されていることにより、置いた時に転がるなどのことがなく安定に置くことができ、また血管穿刺時に刃面が上面を向いていることを確認し易いと共に、穿刺時にグリップしやすいという優れた効果を奏する。
本願の前記第9項に記載の発明において、前記第7項又は第8項において、上面部にマーカーを有するにより、目視又は感触で刃面が上を向いていることを容易に確認することができるという優れた効果を奏する。本願の前記第10項に記載の発明において、前記第9項において、マーカーが着色であるにより、目視で刃面が上を向いていることを容易に確認することができるという優れた効果を奏する。本願の前記第11項に記載の発明において、前記第9項において、マーカーが凹部又は凸部からなることにより、指の感触で刃面が上を向いていることを容易に確認することができるという格別顕著な効果を奏する。
本願の前記第12項に記載の発明は、前記第3項、第4項又は第6項のいずれかに記載の発明において、逆止弁が、弾性部材からなる本体の上流側面と下流側面に環状気密用突部を有し、かつ中央部に貫通孔を有し、該貫通孔は、下流側面には長方形スリットが形成され、上流側面には方形が形成され、かつ長方形スリットの長手方向の端部から上流側面に向かって傾斜していることにより、採血に際し、採取した血液が逆流する恐れがなく、したがって、細菌感染による感染症等の発病の恐れを防止することができるという優れた効果を奏するものである。
【0009】
本願の前記第13項に記載の発明は、前記第3項、第4項又は第6項のいずれかに記載の発明において、逆止弁が、上流側の液体通路部と弁体収納部を有するハウジングからなり、該弁体収納部には、ゴム弾性弁体が前記液体通路部と密着する位置で圧着収納されて上流側液体通路が閉塞され、また前記弁体の周囲には透孔を有し、かつ該弁体は、上流側の液体通路部から下流側に向かう液体の圧力により容易に変形して開口し、また下流側から上流側への逆流に対して閉塞することにより、採血に際し、採取した血液が逆流する恐れがないばかりでなく、その際、圧力調整をする必要がない。したがって、圧力調整という極めてわずらわしい操作をする必要がなく細菌感染による感染症等の発病の恐れを極めて良好に防止することができるという優れた効果を奏するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を図面を用いて具体的に説明するが、本発明は、以下に説明する具体的事例に限定されるものではない。図1は、本発明の針一体型採血管ホルダーを示す断面図である。図1において、針一体型採血管ホルダーIは、該ホルダー本体1の一端に、血管穿刺針部21と採血管用針部22とからなる中空針2が、採血管用針部22が採血管ホルダー本体1の内部に配置されて一体成形されている。この一体成形により中空針2を固定支持するハブ(又は針固定部という。)4も同時に形成される。中空針2は、採血管ホルダー本体1の中心軸部に有することが好ましい。またこの採血管ホルダー本体1の他端は開口されている。更に採血管ホルダー本体1内の採血管用針22には、ゴム状弾性体(又は弾性鞘体ともいう。)3が包着している。包着の仕方は、中空針2を一体成形した後、開口部側からゴム状弾性体3を覆い被せるのが好ましい。成形方法には圧縮成形、トランスファー成形、射出成形等の周知の成形手段から適宜のものを選択して用いることができる。また血管穿刺針21には、キャップ(又はプロテクターともいう。)5が嵌着される。このキャップ5は、嵌着されてもよく、また嵌着していなくてもよいが、好ましくは嵌着しているのがよい。更に採血管ホルダー本体1には、その内部に採血管誘導部材を有しても有しなくてもよいが、好ましくは採血管誘導部材を有するのがよい。この採血管誘導部材7は、周知であり、いくつかのものが知られているが、これらはいずれも本発明で使用することができる。例えば、特開平7−204180号公報に開示された一定径の円筒状体の前端部に周方向に等配された4個の可僥部が一体成形されている採血管誘導部材、特開平8−19527号公報に開示された採血管ホルダーの周壁に当分して4個のスリットを設けた採血管誘導部材、特開平8−19528号公報に開示された可僥性の複数個のフィンをホルダー本体内部から開口部に向かって突設して設けた採血管誘導部材等を使用することができる。図1に示される本発明の採血管ホルダー本体1では、その内周壁に先端方向に等間隔にテーパー状(断面)に肉厚となるフィンを設けることによって採血管誘導部材7を構成している。このように形成された本発明の一体型採血管ホルダーは、一体成形であるので、製造が容易で、低コストかつ量産が可能であり、しかも、ディスポーザブル方式が採用でき、使用後、直ちに廃棄することができるという優れた効果を奏するものである。また図2は、周壁にスリットを有する本発明の採血管ホルダーを示す側面図である。図2において、採血管ホルダーの少なくとも一部が複数のスリット11を有している。これにより、材質を減量することができ、いっそうの低コスト化を図ることができる。
【0011】
図3は、本発明の逆止弁を有する針一体型採血管ホルダーを示す断面図である。本発明の針一体型採血管ホルダーIIは、該ホルダー本体1の一端の内部において、採血管ホルダー本体1の中心軸部に、採血管用針27が針の先端部27aを開口部10の方向に向けて配置されて一体成形されている。またこの採血管ホルダー本体1の他端は開口(10)されている。更に採血管ホルダー本体1内の採血管用針27には、ゴム状弾性体3が包着している。包着の仕方は、中空針2を一体成形した後、開口部側からゴム状弾性体3を覆い被せるのが好ましい。一方、採血管ホルダー本体1の一端の血管穿刺側には、逆止弁内蔵部6を有している。この逆止弁内蔵部6は、室からなり、この中に逆止弁9を配置し、更に血管穿刺針26が固定されたハブ62が結合している。この結合は接着、融着、螺合等により固定される。これらの採血管用針27と血管穿刺針26の間は、逆止弁9を介して連通しており、採取した血液は、血管穿刺針26を通り、逆止弁9を通過して採血管用針27から採血管(図示していない。)へ流入する。血管穿刺針21には、キャップ(又はプロテクターともいう。)5が嵌着される。このキャップ5は、嵌着されてもよく、また嵌着していなくてもよいが、好ましくは嵌着しているのがよい。更に採血管ホルダー本体1には、前記第1項の発明、いわゆる図1で説明したように、その内部に採血管誘導部材を有しても有しなくてもよいが、好ましくは採血管誘導部材を有するのがよい。このように血管穿刺側には、血管穿刺針が逆止弁内蔵部を介して有し、かつこれらの針は逆止弁を介して連通していることにより、採血に際し、採血方向に血液は流れるが、採取した血液が逆流することがないので、血液の逆流による感染症等の発病の恐れを防止することができるという優れた効果を奏するものである。
【0012】
図4は、本発明の針一体型採血管ホルダーの別の実施形態を示す断面図である。図4において、本発明の針一体型採血管ホルダーIIIは、図3に示される採血管ホルダーのハブ62の接続端部63と血管穿刺針24とをチューブ31で接続したものであり、具体的には、逆止弁9を含む採血管ホルダー部1及びゴム弾性体3を含む採血管用針部27は、図1に示される採血管ホルダー部と同じである。該採血管ホルダー本体1の端部の逆止弁装着室61に係合される蓋体62には、チューブ31が嵌入される接続部63を有し、該接続部63にチューブ31の一端が嵌入されている。また該チューブ31の他端43には、血管穿刺針24が設けられており、該針24にはプロテクター5を有している。更に該チューブの端部には、羽根32がある。このように血管穿刺側には、逆止弁内蔵部を有し、該逆止弁内蔵部は血管穿刺針とチューブを介して接続されていることにより、血液検査における採血に際し、血管が細く穿刺しずらい患者などに使用するのに適している。
図5のaは、A−B線による切断部を前方(図面の左側)から見たハブの断面正面図である。図5のbは、本発明に係る採血針を示す断面図である。図5において、採血針IVは、ハブ4の下方に血管穿刺針26を有し、またこのハブ4の反対側の上方には採血管用針27を有している。またハブ4内には、血管穿刺針26と採血管用針27とが連通しており、採血された血液が該連通部46を通って採血管用針27を通過し、更に採血管(図示していない。)へ流入する。更にハブ4の針固定部41の表面にはねじ山を有しており、採血管ホルダーの先端部の嵌合孔の内壁に設けられた雌ねじ山と螺合して固定される。この固定は、螺合の他、接着、融着、一体成形等で固定されてもよい。このように採血管用針と血管穿刺針を対向して配置すると共に、採血管用針を軸心とする位置から外周方向に変位した位置で両側から一体成形することにより、加工し易く、製造が容易で、低コストかつ量産が可能であるので、ディスポーザブル方式が採用でき、使用後、直ちに廃棄することができるという優れた効果を奏するものである。また採血管用針を軸心とする位置から外周方向に変位した位置にあることにより、血管穿刺針の血管への穿刺に際し、採血管ホルダーが皮膚面に接触する等によるわずらわしさがなく、血管への穿刺が容易に行えるという優れた効果を奏するものである。更に図5のcに示されるように、本発明においては、血管穿刺針26が採血管用針27の軸心に対して角度θを有しているのが好ましく、該角度θは、採血管用針27の軸心に対して−10°〜10°であり、下方又は上方に対して角度を有する場合には、好ましくはそれぞれ角度θは、採血管用針27の軸心に対して下方に2°〜5°であり、上方に2°〜5°である。採血管用針27の軸心に対して上方又は下方にそれぞれ角度θが1°より小さいと角度を設けた意味がなく、また角度θが10°を越えると、使用しにくくなる。
【0013】
図6は、本発明の更に別の実施の形態を示す断面図である。図6において、針一体型採血管ホルダーVの採血管ホルダー本体1側は、図3に示された採血管ホルダー本体1と同様の構成からなっている。即ち、採血管ホルダー本体1の一端の内部に採血管用針27を有し、外側には血管穿刺針26を有し、他端が開口部10を有している。更に採血管ホルダー本体1の内部には、前述如き図1に示した如き採血管誘導部材を有してもよい。該採血管ホルダーの血管穿刺針側には、逆止弁内蔵部6を有し、この逆止弁内蔵部6は、逆止弁9を収納し得る室65からなり、この室65に逆止弁9が配置され、蓋体64により封止される。この逆止弁内蔵部6を構成する室65と蓋体64は、接着、融着、一体成形等いずれでもよいが、好ましくは一体成形がよい。更に該逆止弁内蔵部6の蓋体64の針固定部42に前記血管穿刺針26が一体成形により装着されている。この血管穿刺針26は、採血管用針27の軸心に対して外周に変位した位置に血管穿刺針26が一体成形により装着されており、これらの針26、27は逆止弁9を介して連通しており、血管穿刺針26により採血した血液は、該連通部46を通って採血管用針27を通過し、更に採血管(図示していない。)へ流入する。更に採血管用針には、ゴム状弾性体3が包着している。更に血管穿刺針26には、プロテクター5を有していてもよい。本発明の針一体型採血管ホルダーは、図5で示した如く血管穿刺針26に角度θをもたせてもよいことはいうまでもない。更に採血管ホルダーには、図2に示したように、採血管ホルダーの少なくとも一部が複数のスリット11を有していてもよい。これにより、材質を減量することができ、いっそうの低コスト化を図ることができる。
【0014】
図7は、本発明の針一体型採血管ホルダーに付与されたマーカーを示す断面図である。図8は、針一体型採血管ホルダーの断面図である。図8のaは、C−D線の断面図であり、図8のbは、E−F線の断面図であり、更に図8のcは、G−H線の断面図である。図7において、図7のaに示される針一体型採血管ホルダーは、血管穿刺針26の刃面26aを上面にし、その位置で、採血管ホルダーの上面部と下面部が共に平面12a及び12bに形成されていている(断面図は、図8のa参照)。これは、採血管ホルダーを置いたときの安定性を考慮すると、下面部にも平面12bが形成されていることが好ましいからである。しかし、本発明では、採血管ホルダーの上面部のみが平面12に形成されていてもよい。図7のbは、針一体型採血管ホルダーの上面の平面部にマーカー13を設けたものである。マーカー13としては、着色(例えば、黄色、赤、緑など)、凹部又は凸部で形成され、これらの形状としては、円形、楕円形、三角形、方形、多角形、模様(例えば、網目、線、格子、井形、星印など)からなることが好ましいが、本発明においては特にこれらに限定されるものではない。図7のbでは、マーカーとして、円形凹部13が複数個設けられている(図8のb参照)。通常、このようなマーカー13は、1個以上設けられるが、好ましくは5〜6個がよい。またこのようなマーカーは、図7のcの部分平面図に示されるように、その平面12には、複数の円形凹部を設け、更にこれらのうちもっともホルダーを支える頻度の多い箇所に指を当てることができるように、その箇所を識別力のあるマークや形状にすることができる。この識別力のあるマーク13aとしては、着色することが好ましい。また識別力のある形状には、他のマークと区別しうる他の形状がよく、例えば、複数の円形に対して三角系や正方形などである。図7のdには、採血管ホルダー本体1の平面部12に、マーカーとして、長さ方向に沿って3本の凹部からなる線14を有する採血管ホルダーが示されている(図8のc参照)。これらの凹部からなる線に代えて凸部からなる線でもよく、またこのような線は、前記平面部12において採血管ホルダーの円周方向に設けてもよい。
【0015】
本発明では、針一体型採血管ホルダーの血管穿刺針と採血管用針との間に、逆流を防止するために、逆止弁9が設けられているが、この逆止弁について、好ましい例をいくつか挙げる。その一つは、逆止弁が、弾性部材からなる本体の上流側面と下流側面に環状気密用突部を有し、かつ中央部に貫通孔を有し、該貫通孔は、下流側面には長方形スリットが形成され、上流側面には方形が形成され、かつ長方形スリットの長手方向の端部から上流側面に向かって傾斜しているものであって、図9に示されるように、この逆止弁は、環状のハウジングに収納するため、円形状の弾性体からなる逆止弁本体9の開口部923側及びスリット93側の各表面には中心に対して同芯円状に気密用環状突起941、942が形成されている。またスリット93側の表面1bの中心には貫通孔93を有し、この貫通孔93は下流側(又はスリット側)の表面には長方形のスリットが形成されるが、この形状は船先形状であってもよい。また上流側(開口部側)の表面1aには、方形、例えば正方形923であって、該表面からスリット93に向かって傾斜する傾斜部92を有している。この傾斜部921、922はスリットの長手方向の辺に至る。したがって、図9のbのA′−B′断面図でみると、傾斜部921、922は上流側から下流側へ向かってテーパーを形成している。本発明に用いられる逆止弁は9の作用は、上流側から血液が流入した時は、液圧が増すと、スリット93が下流側に歪みが生じてスリット93の孔が開き、血液が流入する。これに対して、下流側から血液が流入しようとすると、スリット93は、上流側に歪みが生じる。しかし、この歪みは逆止弁9の設置に際して、傾斜部を押圧しているので、スリット93は開かない。本発明で用いられる弾性体としては、反撥弾性率が30〜80%の範囲のものが好ましい。使用される反撥弾性率の範囲は、反撥弾性率と圧縮配置するときの圧縮の度合いとによって個々に決められる。この他、逆止弁として、ダックビル型、ボールとゴム板の併用型、アンブレラ型及びフート弁型などを使用することができる。これらの逆止弁の構造及びその作用は、従来より知られており、いずれもこの技術分野において周知のものである。
【0016】
この他、本発明に好ましく用いられる逆止弁としては、上流側の液体通路部と弁体収納部を有するハウジングからなり、該弁体収納部には、ゴム弾性弁体が前記液体通路部と密着する位置で圧着収納されて上流側液体通路が閉塞され、また前記弁体の周囲には透孔を有し、かつ該弁体は、上流側の液体通路部から下流側に向かう液体の圧力により容易に変形して開口し、また下流側から上流側への逆流に対して閉塞することからなるものであって、具体的には、図10には、逆止弁72が示され、図10のaは、その底面図であり、図10のbは、そのA−A線断面図である。図10において、逆止弁72は、周縁に固定部723を有し、中央に接続部722で接続された閉鎖弁721を有する薄い円板状部材からなる。接続部722間には透孔732、732が形成されている。この逆止弁72は、閉鎖弁721が流体通路の先端に設けられた突起部に接触すると、密着して液は流れない。逆に閉鎖弁721が突起部から離れると通路は解放され、液は透孔732、732を通って流れる。
【産業上の利用可能性】
【0017】
本発明の針一体型採血管ホルダーは、血液検査、例えば、血清検査、血球検査などの臨床検査、透析や栄養注入のための回路からバイパスで取り出される採取接続部に接続して使用するなどの補助医療に係る分野に使用されるばかりでなく、広く医療分野において採取用器具として使用される。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の針一体型採血管ホルダーを示す断面図である。
【図2】本発明のスリットを有する針一体型採血管ホルダーを示す側面図である。
【図3】本発明の針一体型採血管ホルダーの別の実施形態を示す断面図である。
【図4】本発明のチューブを取り付けた針一体型採血管ホルダーを示す部分断面図である。
【図5】本発明に用いられる中空針を示す断面図である。図5のaは、A−B断面図である。
【図6】本発明の別の実施形態を示す側面図である。
【図7】本発明に用いられる採血管ホルダーの表面を示す平面図である。
【図8】図7に示す採血管ホルダーの切断断面図である。
【図9】本発明に用いられる逆止弁を示す底面図乃至断面図である。図9のbは、A′−B′線の切断面を示す。
【図10】図10のaは別の逆止弁の底面図であり、図10のbは、A−A線断面図である。
【符号の説明】
【0019】
1 採血管ホルダー
10 開口(部)
11 スリット
12 平面部
12a 上面の平面部
12b 下面の平面部
13、13a マーカー
14 凹部又は凸部
2 中空針
21、24、26 穿刺針部又は血管穿刺針
22、27 採血管用針部又は採血管用針
26a 血管穿刺針先端部
27a 採血管用針先端部
3 ゴム状弾性体又は弾性鞘体
31 チューブ
32 羽根
4、41、42、43 針固定部(ハブ)
44 ネジ
46、66、67 連通部
5 プロテクター
6 逆止弁装着部
61、65 逆止弁装着室
62、63、64 蓋体
7 採血管誘導部材
72 閉鎖弁
722閉鎖弁連結部
723 固定部
732 透孔
9 逆止弁
92 開口部の傾斜
93 密着型スリット
I、II、III、IV、V 針一体型採血管ホルダー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端に、血管穿刺針部と採血管用針部とからなる中空針の該採血管用針部が内部にまた血管穿刺針部が外側となるように装着され、他端が開口しており、更に内部に採血管誘導部材を有してもよい針一体型採血管ホルダーにおいて、前記中空針が採血管ホルダー本体と一体成形により装着されており、更に採血管用針部には、ゴム状弾性体が包着していることを特徴とする針一体型採血管ホルダー。
【請求項2】
採血管ホルダーの少なくとも一部が網状体又は複数のスリットを有することを特徴とする請求項1に記載の針一体型採血管ホルダー。
【請求項3】
一端の内部に採血管用針を有し、外側に血管穿刺針を有し、他端が開口しており、更に内部に採血管誘導部材を有してもよい針一体型採血管ホルダーにおいて、該採血管ホルダー本体の一端に、前記採血管用針が一体成形により装着されていると共に、血管穿刺側には、血管穿刺針が逆止弁内蔵部を介して有し、かつこれらの針は逆止弁を介して連通し、更に採血管用針には、ゴム状弾性体が包着していることを特徴とする針一体型採血管ホルダー。
【請求項4】
血管穿刺側には、逆止弁内蔵部を有し、該逆止弁内蔵部には血管穿刺針がチューブを介して接続されていることを特徴とする請求項3に記載の針一体型採血管ホルダー。
【請求項5】
一端の内部に採血管用針を有し、外側に血管穿刺針を有し、他端が開口しており、更に内部に採血管誘導部材を有してもよい針一体型採血管ホルダーにおいて、採血管用針と血管穿刺針は、対向してハブに設けられていると共に、該採血管用針を軸心とする位置から外周方向に変位した位置に前記血管穿刺針が一体成形により装着されており、これらの針の間は連通し、更に採血管用針には、ゴム状弾性体が包着していることを特徴とする針一体型採血管ホルダー。
【請求項6】
一端の内部に採血管用針を有し、外側に血管穿刺針を有し、他端が開口しており、更に内部に採血管誘導部材を有してもよい針一体型採血管ホルダーにおいて、該採血管ホルダー本体の一端に逆止弁内蔵部を有し、かつ該逆止弁内蔵部に前記採血管用針が一体成形により装着されていると共に該逆止弁内蔵部の反対側には、前記採血管ホルダー本体の中心より外周方向に変位した位置に前記血管穿刺針が一体成形により装着されており、これらの針は逆止弁を介して連通し、更に採血管用針には、ゴム状弾性体が包着していることを特徴とする針一体型採血管ホルダー。
【請求項7】
血管穿刺針の刃面を上面とした位置で、採血管ホルダーの上面部は平面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の針一体型採血管ホルダー。
【請求項8】
血管穿刺針の刃面を上面とした位置で、採血管ホルダーの上面部及び下面部が平面に形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれかに記載の針一体型採血管ホルダー。
【請求項9】
上面部にマーカーを有することを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の針一体型採血管ホルダー。
【請求項10】
マーカーが着色であることを特徴とする請求項9に記載の針一体型採血管ホルダー。
【請求項11】
マーカーが凹部又は凸部からなることを特徴とする請求項7又は請求項8に記載の針一体型採血管ホルダー。
【請求項12】
逆止弁が、弾性部材からなる本体の上流側面と下流側面に環状気密用突部を有し、かつ中央部に貫通孔を有し、該貫通孔は、下流側面には長方形スリットが形成され、上流側面には方形が形成され、かつ長方形スリットの長手方向の端部から上流側面に向かって傾斜していることを特徴とする請求項3、請求項4又は請求項6のいずれかに記載の針一体型採血管ホルダー。
【請求項13】
逆止弁が、上流側の液体通路部と弁体収納部を有するハウジングからなり、該弁体収納部には、ゴム弾性弁体が前記液体通路部と密着する位置で圧着収納されて上流側液体通路が閉塞され、また前記弁体の周囲には透孔を有し、かつ該弁体は、上流側の液体通路部から下流側に向かう液体の圧力により容易に変形して開口し、また下流側から上流側への逆流に対して閉塞することを特徴とする請求項3、請求項4又は請求項6のいずれかに記載の針一体型採血管ホルダー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2006−81844(P2006−81844A)
【公開日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−272301(P2004−272301)
【出願日】平成16年9月17日(2004.9.17)
【出願人】(000111546)ハナコメディカル株式会社 (7)
【Fターム(参考)】