説明

針板

【課題】編針の駆動バットの許される上昇を可能にしかつ針床への駆動バットの予期しない下降も防止できる針板を提供する。
【解決手段】編針10のための針板11において、針板11によって、針床内へ下降せしめられた編針10の駆動バット16が、針床を越えて上昇可能であり、かつ編針10用針床115が形成可能であり、針床内への編針10の駆動バット16の下降が針底により阻止可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、編機の編針のための針板であって、編針が針床の針溝に設けられ、針板により、針床内へ下降せしめられた編針の駆動バットが針床を越えて上昇可能であるものに関する。
【背景技術】
【0002】
編機特に横編機の編針のためのこのような針板は既に公知である。例えばドイツ連邦共和国特許第687608号明細書は選択針板を示しており、針床へ沈下せしめられる編針の駆動バットが、この選択針板により針床を越えて上昇可能であり、それにより編成システムのカム曲線により駆動バットを捕捉することができる。駆動バットが編成カムによりとる行程は、編針がどんな機能を行うか、即ち編針が編目を形成するか、タックループを挿入するか又は不動作位置に留まるか否かを決定する。
【0003】
公知の選択針板は構造に費用がかかる。更に編針が軸線方向に強く荷重を受けると、編針の駆動バットの予期しない下降を防止することができない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の基礎となっている課題は、編針の駆動バットの許される上昇を可能にしかつ針床への駆動バットの予期しない下降も防止できる針板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この課題は、編機の編針のための針板であって、編針が針床の針溝に設けられ、針板により、針床内へ下降せしめられた編針の駆動バットが針床を越えて上昇可能であるものにおいて、針板により編針用針底が形成可能であり、針床内への編針の駆動バットの下降が、針底により阻止可能であることによって、解決される。
【0006】
従って本発明による針板は、針底を形成し、特に編針の戻し運動の際編針が針溝内で針床上を滑ることができ、編針の軸線方向負荷の際針底が針バットの下降を防止する。同時に針板は編針の駆動バットの確実な上昇を行うので、編針が編成システムのカム部分により確実に捕捉され、編目の形成、タックの挿入、不動作位置における停止、目移しのような所望の機能の1つを果たすことができる。その際編針はただ1つの駆動バットを持つことができる。
【0007】
駆動バットが、それに作用するばね力に抗して針板により上昇可能であると、別の利点が生じる。その場合針床へ下降せしめられる位置への駆動バットの戻しは、針板又は他の素子によって行う必要がない。戻しは、なるべく編針自体により発生可能なばね力によりむしろ受動的に行われる。
【0008】
針板の構成のために種々の可能性が考えられる。
【0009】
1つの可能性は、針板を針溝内に直線的に移動可能に設けることである。編針上で針板を移動することにより、編針の方への針板の移動によって、針板部分により駆動バットが上昇可能であり、針床が形成可能である。針板がその前方移動位置に留まる限り、針板が編針の駆動バットの望ましくない下降を防止する針底を形成する。従って針板の単一の運動により、両方の機能即ち駆動バットの上昇及び針底の形成が実現される。その際針板が位置ぎめバットを介してその動作しない初期位置へ戻り運動可能であると、更に有利である。この戻り運動は、対応する編針のカム通過の終わりに行われる。それにより編針の駆動バットを再び針床内へ沈下させることができる。
【0010】
しかし針板が針溝内に揺動可能に設けられ、針板の揺動運動により編針の駆動バットが上昇可能であり、針底が形成可能である。針板がその不動作の初期位置においても既に編針の駆動範囲に係合していると、直線運動は必要でない。その場合駆動バットを上昇させかつ駆動バットの予期しない下降を防止する針底を形成するために、針板を揺動せせれば十分である。
【0011】
この構成では、駆動バット又はそれに作用するカムにより、針板が不動作の初期位置へ戻り運動可能である。その場合駆動バットを上昇させるために、針板を積極的に駆動すればよい。
【0012】
しかしばね力に抗して針板を1つの方向に揺動可能に形成することも可能である。その場合も針板のため1つの揺動方向のみにおける積極的な駆動が必要である。この構成では不動作の初期位置への針板の戻しは、ばね力により従って受動的に行うことができる。
【0013】
針板は針床に設けなくてもよい。針板を別の針板床に支持することも可能で、針板をこの針糸床内で、移動可能又は揺動可能に支持することができる。
【0014】
図面を参照して、本発明による針板の好ましい実施例が以下に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1a】 第1の針板及び第1の編針を持つ針床の針溝の断面図を示す。
【図1b】 別の位置にある第1の針板及び第1の編針を持つ針床の針溝の断面図を示す。
【図1c】 更に別の位置にある第1の針板及び第1の編針を持つ針床の針溝の断面図を示す。
【図1d】 更に他の位置にある第1の針板及び第1の編針を持つ針床の針溝の断面図を示す。
【図2a】 図1の針板及び第2の編針を持つ針床の針溝の図1に対応する断面図を示す。
【図2b】 別の位置にある図1の針板及び第2の編針を持つ針床の針溝の図1に対応する断面図を示す。
【図2c】 更に別の位置にある図1の針板及び第2の編針を持つ針床の針溝の図1に対応する断面図を示す。
【図2d】 更に他の位置にある図1の針板及び第2の編針を持つ針床の針溝の図1に対応する断面図を示す。
【図3a】 第2の針板及び第3の編針を持つ針床の針溝の断面図を示す。
【図3b】 別の位置にある第2の針板及び第3の編針を持つ針床の針溝の断面図を示す。
【図3c】 更に別の位置にある第2の針板及び第3の編針を持つ針床の針溝の断面図を示す。
【図3d】 更に他の位置にある第2の針板及び第3の編針を持つ針床の針溝の断面図を示す。
【図4】 図3の針板及び第4の編針を持つ、図3に対応する断面図を示す。
【図5a】 第3の針板及び図3の編針を持つ、図3に対応する断面図を示す。
【図5b】 別の位置にある第3の針板及び図3の編針を持つ、図3に対応する断面図を示す。
【図6a】 図5の針板及び第5の編針を持つ、図3に対応する断面図を示す。
【図6b】 別の位置にある図5の針板及び第5の編針を持つ、図3に対応する断面図を示す。
【図6c】 さらに別の位置にある図5の針板及び第5の編針を持つ、図3に対応する断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1a〜1は針溝110の範囲における針床100の断面図を示し、針溝110に編針10及び針板11が設けられている。編針10は、その隣接する編針と共に、覆い条片120により、また針板11はその隣接する針板と共に、覆い条片130により、針溝110から外れるのを防止されている。
【0017】
図1aでは、編針10も針板11も動作しない初期位置にある。針板11は、位置ぎめバット12により、位置ぎめバット12が覆い条片130に当たるまで、後方へその初期位置へ移動せしめられている。編針10の針かぎ13は歯口位置にある。編針10はその後部範囲において、針幹15に弾性部分14を持ち、この針幹の後端に編針用駆動バット16が設けられている。弾性部分14は駆動バット16を下方へ押し付けているので、駆動バット16は針床100の針底の凹所19にある斜面17又は面17′に載っている。
【0018】
さて針板11の位置ぎめバット12へ矢印18の方向に力が及ぼされると、図1bに示すように、針板11が編針10の駆動バット16を前方へ移動させる。その際は斜面17上を上方へ滑り、それにより駆動バット16針床100から上昇せしめられる。駆動バット16は今や針床100を越えて動かされて図示しないカム部分により捕捉される。このカム部分により編針10は図1cに示す位置へもたらされる。この針運動中に針板11はその前方駆動位置に留まり、この位置でその部分11aにより針底を形成し、この部分が針底にある凹所19を閉鎖し、針床100の前部範囲にある針底115へ移行する。それにより図1dに示すように針10の戻る際、編針の駆動バット16が、部分11aにより形成される針底を越えて滑ることができ、意に反して再び針床へ沈下することはない。図1aに示す初期位置へ針板11の位置ぎめバット12を戻すことにより初めて、編針10の弾性部分14により駆動バット16が再び針床内へ下降せしめられる。針板11の構成のため、例えば編針10の軸線方向負荷により、駆動バット16が意に反して下降することはない。
【0019】
図2a〜2dは再び針溝の範囲における針床100の断面図を示し、図1の針板11及び第2の形式の編針20が針溝に挿入されている。編針20は2つの部分から構成されている。この編針の駆動バット26は、針幹21に関節結合される揺動素子25に設けられている。針幹21はその後端に弾性部分24を持ち、この弾性部分の自由端が駆動バット26にはまっている。弾性部分24により、編針20の動作しない初期位置で編針20の駆動バット26が針床100内へ沈下せしめられている。この位置で駆動バット26は針床100の斜面17又は面17′上にある。それにより図2bに示すように、矢印方向18における針板11の前方運動により、駆動バット26が再び針床から上昇せしめられる。駆動バット26の上昇後針板11の部分11aが針溝にある凹所19を閉鎖して針底を形成し、編針20が編目形成のため図2cに示すように押出し後、図2dに示すように戻されると、編針20はこの針底を越えて滑ることができる。それにより部分11aは駆動バット26の予期しない下降を防止する。針板11の位置ぎめバット12が再び図2aに示す初期位置へ戻される時に初めて、駆動バット26も弾性部分24の予荷重により初期位置へ戻される。
【0020】
図3a〜3dは針溝の範囲における針床100′の断面図を示し、針溝内に針板30の第2実施例及び1つの部分から成る編針40が設けられている。編針40は再び弾性部分44を持ち、この弾性部分の後端に駆動バット46が設けられている。針板30は軸31の周りに揺動可能に針溝内に支持されている。針板30は更に編針40の駆動バット46の下に作用する昇降揺動腕32を持っている。更に針板30は操作揺動腕33を持ち、この操作揺動腕により針板30が揺動することができる。針板30の動作しない初期位置で、昇降揺動腕が針床100′の凹所19′の底に載っているか、又は操作揺動腕33が覆い条片130に支持されている。同様に動作しない編針40の駆動バット46は、弾性部分44により下方へ押され、従って針床へ沈下している。
【0021】
操作揺動腕33を矢印34の方向へ押すことにより、針板30が図3bに示すように揺動し、その昇降揺動腕32により編針40の駆動バット46を針床から上昇させるので、駆動バットが編成システムのカム部分によって捕捉される。続いて例えば編目形成のため、編針40が図3cに示すように押出される。この前進運動中に、操作揺動腕33に矢印34の方向に力が作用したままなので、昇降揺動腕33が針床100′の凹所19′を閉鎖して、針底115′を形成する。しかし編針40の前進運動中に、昇降揺動腕22による針底の形成は必要でない。なぜならば、編針40の駆動バット46は、針床100′の前部範囲で針底115′に支持され、従って意に反して針床へ沈下することはないからである。従って前進運動中に、操作揺動腕33への力の作用を終了することも可能なので、昇降揺動腕33は図3dに示すように再び下方へ揺動できる。
【0022】
しかし編針の戻り運動中に、図4に示すように昇降揺動腕32が再び上昇せしめられるが、図4は編針の戻り運動を2つの部分から成る編針50により示しており、駆動バット56が揺動素子55に設けられている。揺動素子55は針幹51に関節結合して設けられ、針幹51の弾性部分54により、編針20と同じように、弾性部分50の荷重をかけられない状態で下方へ押される。従って編針50の戻り運動の際、駆動バット56が上昇した状態に留まるようにする時、針板30の昇降揺動腕32が、操作揺動腕33への力の作用により上昇されねばならない。
【0023】
図5a,5bは針板60の別の構成を示し、この針板は再び軸61の周りに揺動可能に針床100′の針溝内に設けられている。針板60はここでは図3の編針40と共同作用する。針板30とは異なり針板60は、昇降揺動腕62及び操作揺動腕63のほかにばね素子64を持ち、このばね素子64が、昇降揺動腕62を図5aに示す下方揺動位置へ強制する。それにより編針40の駆動バット46も針床内へ下降している。駆動バット46を上昇させる場合、図5bに示すように力が、矢印66の方向に操作揺動腕63へ及ぼされる。
【0024】
図6a〜6cは針板60と2部分から成る編針70との共同作用を示し、編針10,20,40,50と異なり編針70は、弾性的に支持されない駆動バット76を持っている。駆動バット76は揺動素子75に設けられ、積極的に力77により針床内に沈下状態に保たれる。針板60は、ばね素子64により生じて昇降揺動腕62が下方へ揺動する初期位置にある。駆動バット76を上昇させるため、矢印77の方向における力の作用が終了せしめられ、その代りに針板60の操作揺動腕63が矢印66の方向の力を受ける。それにより図6bに示すように、昇降揺動腕62従って駆動バット76の上昇が行われる。更にこの位置で昇降揺動腕62が凹所19′を閉鎖し、針床内への駆動バット76の予期しない下降を防止する針底を形成する。
【0025】
図6cに示されている編針70の前進運動中に、針板60の位置は問題でない。従って針板60は、ばね64の作用により再び初期位置へ戻り揺動することができる。針床の前部範囲において、針床により形成される針底115′によって駆動バット76が支持される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
編機の編針(10,20,40,50,70)のための針板であって、編針(10,20,40,50,70)が針床(100,100′)の針溝(110)に設けられ、針板(11,30,60)により、針床(100,100′)内へ下降せしめられた編針(10,20,40,50,70)の駆動バット(16,26,46,56,76)が針床(100,100′)を越えて上昇可能であるものにおいて、針板(11,30,60)により編針(10,20,40,50,70)用針底(115,115′)が形成可能であり、針床(100,100′)内への編針(10,20,40,50,70)の駆動バット(16,26,46)の下降が、針底(115,115′)により阻止可能であることを特徴とする針板。
【請求項2】
駆動バット(16,26,46,56)が、それに作用するばね力に抗して上昇可能であることを特徴とする、請求項1に記載の針板。
【請求項3】
針板が針溝(110)内に直線的に移動可能に設けられていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の針板。
【請求項4】
編針(10,20)の方への針板(11)の移動によって、針板部分(11a)により駆動バット(16,26)が上昇可能であり、針底(115)が形成可能であることを特徴とする、請求項3に記載の針板。
【請求項5】
針板が位置ぎめバット(12)を介してその動作しない初期位置へ戻り運動可能であることを特徴とする、請求項3又は4に記載の針板。
【請求項6】
針板(30,60)が針溝(110)内に揺動可能に設けられ、針板(30,60)の揺動運動により編針の駆動バット(46,56,76)が上昇可能であり、針底(115′)が形成可能であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の針板。
【請求項7】
編針(70)の駆動バット(76)により針板がその不動作初期位置へ戻り運動可能であることを特徴とする、請求項6に記載の針板。
【請求項8】
板がばね力とは逆の方向に揺動可能であることを特徴とする、請求項6又は7に記載の針板。
【請求項9】
ばね力により板がその不動作初期位置へ戻り揺動可能であることを特徴とする、請求項8に記載の針板。
【請求項10】
針板が別の板床内に支持されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の針板。

【図1a】
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【図1b】
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【図1c】
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【図1d】
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【図2a】
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【図2b】
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【図2c】
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【図2d】
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【図3a】
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【図3b】
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【図3c】
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【図3d】
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【図4】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6a】
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【図6b】
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【図6c】
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