説明

針糸通し装置

【課題】糸通しピンが針穴を通過しないときでも糸通しピンの破損を防止することができる針糸通し装置を提供する。
【解決手段】針受部材34には、針挿入穴34cと、該針挿入穴34cに対して角度を持った糸挿入スリット34eとが形成される。糸通し部材42は、針受部材に対して離反した位置と接近した位置との間で揺動可能となっており、離反した位置から接近した位置へと揺動するときに、針挿入穴34cに挿入された針70の針穴70aに、糸挿入スリット34eに挿入された糸を押し出し可能な糸通しピン56bを有する。糸通しピン56bは、糸通し部材42の本体44に対して一定の揺動範囲内で揺動可能となっており、糸通し部材42は、さらに糸通しピン56bを針受部材34に対して接近する方向に揺動するバネ60を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揺動する糸通しピンによって針の針穴に簡単に糸を通すことができる針糸通し装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の針糸通し装置としては、特許文献1〜3に記載されたものが知られている。
【0003】
特許文献1の針糸通し装置では、針が挿入される針挿入穴と、該針挿入穴に交差して糸が通される糸通し穴と、糸通し穴の入口付近に糸載置部(糸挿入スリット)とを設けると共に、押圧部材の押圧力で作動部材を介して作動部材(糸通し部材)に設けた糸係止片(糸通しピン)を糸通し穴に挿脱自在に設けている。針を針挿入穴に挿入して糸を糸載置部にセットして押圧部材を押圧すると、作動部材が揺動するので、作動部材に設けた糸係止片が糸載置部にセットされた糸を糸通し穴に引き込み、針穴に通し、押圧部材の押圧を解除すると、作動部材がバネによって揺動復帰し、元の状態に戻り、糸を針穴に通った状態にすることができるようになっている。
【0004】
特許文献2の針糸通し具では、針が挿入される針支持用穴と、針支持用穴と交差する貫通路と、糸載置部(糸挿入スリット)とを設けており、押しボタンを押すとアーム部(糸通し部材)が揺動して、アーム部に連接した突き出し部材(糸通しピン)が糸載置部にセットされた糸を針穴に通し、押しボタンを解除すると、アーム部がその弾性力で元の状態に戻り、それに応じて突き出し部材が糸をそのまま残して逆方向に戻るようになっている。
【0005】
特許文献3の針糸通し装置においては、針挿入穴と該針挿入穴に対して角度を持った糸挿入スリットとが形成された針受部材と、針受部材に対して離反した位置と接近した位置との間で移動可能となっており、離反した位置から接近した位置へと移動するときに、針挿入穴に挿入された針の針穴に、前記糸挿入スリットに挿入された糸を押し出し可能な糸通しピンを有する糸通し部材と、を備えている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3315364号公報
【特許文献2】特開平11−491号公報
【特許文献3】国際公開第2009/113529号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、かかる従来の装置においては、糸通し部材が揺動してそれに応じて糸通しピンが針に接近したときに、糸通しピンが針穴をうまく通過しない場合がある。このような場合に、糸通し部材を無理に操作すると、糸通しピンが耐えられず、曲がって破損するというおそれがある。
【0008】
本発明はかかる課題に鑑みなされたもので、糸通しピンが針穴を通過しないときでも糸通しピンの破損を防止することができる針糸通し装置を提供することをその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、請求項1記載の本発明は、針挿入穴と、該針挿入穴に対して角度を持った糸挿入スリットとを有する針受部材と、
前記針受部材に対して離反した位置と接近した位置との間で揺動可能となっており、離反した位置から接近した位置へと揺動するときに、前記針挿入穴に挿入された針の針穴に、前記糸挿入スリットに挿入された糸を押し出し可能な糸通しピンを有する、糸通し部材と、
を備えた針糸通し装置において、
前記糸通しピンは、前記糸通し部材の本体に対して一定の揺動範囲内で揺動可能となっており、前記糸通し部材は、さらに前記糸通しピンを前記本体に対して前記針受部材に接近する方向に付勢する付勢部材を備えることを特徴とする。
【0010】
請求項2記載の発明は、前記糸通しピンの揺動中心と、前記糸通し部材の揺動中心とが異なる位置にあることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、糸通し部材が揺動してそれに応じて糸通しピンが針に接近したときに、糸通しピンが針穴を通過することができない場合には、糸通しピンが糸通し部材の本体に対して付勢部材の付勢力に抗して揺動することができるために、糸通しピンに作用する力を緩衝させることができ、糸通しピンの破損を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る針糸通し装置の収納時の全体図である。
【図2】図1の針糸通し装置の収納時の部分縦断面図である。
【図3】図1の針糸通し装置の内部の分解斜視図である。
【図4】図1の針糸通し装置の要部の斜視図である。
【図5】図1の針糸通し装置の収納時の要部縦断面図である。
【図6】図1の針糸通し装置の使用時の要部縦断面図である。
【図7】図1の針糸通し装置の使用時の要部縦断面図である。
【図8】図1の針糸通し装置の使用時の要部縦断面図である。
【図9】図1の針糸通し装置の使用時の要部縦断面図である。
【図10】糸を通した針を表す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を用いて本発明の実施の形態を説明する。
【0014】
図1〜図5に示すように、本発明による針糸通し装置10は、全体的に細長構造をなしており、その一端部側が針糸通し装置10を構成する針糸通しユニット12、他端部側に収納ユニット14が設けられて、両ユニットが軸方向に連結されて一体となっている。
【0015】
針糸通しユニット12は、前記収納ユニット14の本体を兼用する本体30と、本体30の外側にあり本体30に対してその軸方向に所定の範囲で摺動自在となった筒状の切替手段であるカバー32と、を備えている。カバー32には端部から軸方向に延びる長孔32aが形成されている。
【0016】
収納ユニット14は本体30内に形成される収納空間を覆うべく本体30に着脱可能に被着するキャップ16を備えている。
【0017】
尚、以下の説明において便宜上、針糸通しユニット12について、収納ユニット14側を基端側とし、反対側を先端側と称することとする。
【0018】
本体30の先端部側には針受部材34が連結される。針受部材34は、図3に示すように、ほぼ対称的に形成された2つの針受部品36、38から構成され、一方の針受部品36に形成された複数の係合突起36aに他方の針受部品38に形成された複数の係合孔38aが嵌合することで、両者は本体30と一体化される針受部材34を構成する。針受部材34は、本体30に対して圧入、係合、接着等の任意の固定手段によって本体30に固定される。
【0019】
各針受部品36、38の先端部には、鍔部36b、38bが形成されており、これらの鍔部36b、38bがそれぞれ本体30の先端面に当接する。
【0020】
各針受部品36、38には、互いの対向面に、先端部から長溝部36c、38cが形成されており、針受部品36、38が組み合わされて針受部材34を構成したときに、長溝部36c、38cは、針が挿入されるための針挿入穴34c(図2、図5参照)を形成する。
【0021】
各針受部品36、38には、突出部36d、38dが形成されており、針受部品36、38が組み合わされて針受部材34を構成したときに、これらの突出部36d、38dの対向面同士の間にはわずかな隙間が形成されるようになっている。この隙間は、針挿入穴34cに連通するように径方向内側にまで形成される。また、この突出部36d、38dは、カバー32の前記長孔32aから若干突出して、露出する。
【0022】
該突出部36d、38dの露出面には、針挿入穴34cの末端部(即ち、基端部側)に向かって延びるスリット36e、38eが形成される。スリット36e、38eは、露出面から基端側へと斜めに延びた後、長溝部36c、38cで構成される針挿入穴34cに対して直交する方向に延びる。これらのスリット36e、38eによって糸挿入スリット34e(図2、図5参照)が形成される。また、長溝部36c、38cの末端部、即ち、基端部に隣り合うようにして収容溝36f、38fが形成されており、この収容溝36f、38fによってマグネット収容部34f(図2、図5参照)が形成される。マグネット収容部34fには、マグネット40が収容される。
【0023】
また、針受部品36、38の対向面側には、長溝部36c、38cの末端部から該長溝部36c、38cに直交する方向に、且つ、突出部36d、38dと反対の方向に凹部36g、38gが延びている。針受部品36、38が組み合わされて針受部材34を構成したときに、この凹部36g、38gによって抜け孔34g(図2、図5参照)が形成される。さらに、凹部36g、38gの反対側に第2凹部36m、38mを備え、凹部36g、38gと同じ対向面側にカッター64を収容するための第3凹部36n、38nを備える。
【0024】
針受部品36、38の突出部36d、38dよりも基端側には、切欠部36h、38hが形成される。切欠部36h、38hの周囲は、肉薄の板状部36i、38iとなっており、該板状部36i、38iの基端部には、軸受孔36j、38jが穿設されている。また、切欠部36h、38h内には、半円柱状の突起36k、38kが突設されており、この突起36k、38kによってバネ受け突起34k(図2、図5参照)が形成される。
【0025】
この板状部36i、38iを挟むようにして、糸通し部材42が配置される。糸通し部材42は、ほぼ対称的に形成された2つの糸通し本体部品46、48からなる糸通し本体44と、糸通し本体部品46、48に挟まれて、ほぼ対称的に形成されたピンホルダ部品52、54と糸通しピン部品56とからなるピン組立体50と、付勢部材であるバネ58と、付勢部材である補助バネ60と、から構成される。
【0026】
一方のピンホルダ部品52に形成された複数の係合突起52aに、糸通しピン部品56に形成された複数の係合孔56a及び他方のピンホルダ部品54に形成された複数の係合孔54aが嵌合することで、糸通しピン部品56を挟んだ状態で、ピンホルダ部品52、54は糸通しピン部品56と一体化されてピン組立体50となる。ピンホルダ部品52、54の対向面と反対側の面に突軸52b、54bが突設されており、また、基端側には、軸受孔52c、54cが形成され、また、半円柱状の突起52d、54dが形成されている。
【0027】
糸通しピン部品56には、ピンホルダ部品52、54の間から突出する糸通しピン56bが形成される。
【0028】
また、一方の糸通し本体部品46に形成された複数の係合突起46aに他方の糸通し本体部品48に形成された複数の係合孔48aが嵌合することで、両者は糸通し本体44を構成する。さらに、糸通し本体部品46、48には、対向面に枢軸46b、48bが形成されていると共に、枢軸46b、48bから離れた位置に、枢軸46b、48bを曲率中心とする円弧状の長孔46c、48cが形成されている。
【0029】
糸通し本体部品46、48の枢軸46b、48bが、ピンホルダ部品52、54の軸受孔52c、54cに回動可能に嵌合し、且つ糸通し本体部品46、48の長孔46c、48c内にピンホルダ部品52、54の突軸52b、54bが摺動可能に嵌合することで、ピン組立体50は、長孔46c、48cの範囲で、糸通し本体44内において枢軸46b、48bを揺動中心として糸通し本体44に対して揺動可能となっている。また、補助バネ60が、糸通し本体44内において、糸通し本体44の壁面とピンホルダ部品52、54の突起52d、54dによって形成されるバネ受け突起との間に介挿されることで、ピン組立体50は付勢されて、突軸52b、54bは常時、長孔46c、48cの端部に位置し、糸通しピン56bが針受部材34又は針受部材34の針挿入穴34cにより接近する方向に付勢される。
【0030】
一方、糸通し本体部品46には枢軸46dが形成されており、他方の糸通し本体部品48には枢軸46dに対応する部分に切欠48dが形成されており、枢軸46dは、前記針受け部品36、38の軸受孔36j、38jに回動可能に嵌合する。こうして、糸通し本体部品46、48が前記針受部品36、38の板状部36i、38iに隣接し、バネ58が、針受部品36、38の突起36k、38kによって形成されるバネ受け突起34kと、糸通し本体部品46、48に形成されたバネ受け部46e、48eとの間に介挿される。これによって、糸通し部材42は、軸受孔36j、38jを揺動中心として針受部材34に対して揺動可能に、つまり、針受部材34又は針受部材34の針挿入穴34cに対してその先端が離反する位置と接近する位置との間で揺動可能となっており、且つその先端が針受部材34に対してバネ58によって離反する方向に付勢されて取り付けられる。
【0031】
糸通し部材42の針受部材34に対する離反する位置から接近する位置への揺動運動の際に、糸通しピン部品56の糸通しピン56bは、前記針受部品36、38の突出部36d、38dの対向面の間に形成される隙間から、針挿入穴34cを形成する長溝部36c、38cの基端部を通過し、抜け穴34gを構成する凹部36g、38gまでを往復運動することができる。
【0032】
糸通し部材42をバネ58の付勢力に抗して、最大限、針受部材34に接近させたときに、糸通し本体部品46、48の先端部に形成されて径方向及び先端方向に突出する突出部46g、48gが、前記針受部品36、38の突出部36d、38dに接近する。
【0033】
尚、バネ60とバネ58とでは、バネ58のバネ力の方が大きくなるように設定されている。
【0034】
また、糸通し本体部品46、48のそれぞれの対向面には抜け止め突起46f、48fが形成される。
【0035】
さらに、針受部品36、38の第2凹部36m、38mに形成された軸受部に軸受されて、保護カバー66が針受部品36、38に取り付けられる。
【0036】
保護カバー66は、一対の大きくU字状に折曲がった脚部66a、66aと、脚部66aと反対側で小さく折れ曲がった頭部66bとを備え、頭部66bの中心には上下に延びるスリット66cが形成されている。脚部66a、66aは、針受部品36、38の第2凹部36m、38m内に形成された軸受部に軸受されて、針受部品36、38に取り付けられる。保護カバー66は、その弾性により屈曲するように変形可能となっている。頭部66bの折れ曲がった端部には小突起66dが突設されている。
【0037】
保護カバー66が針受部品36、38に取り付けられている状態で、保護カバー66の頭部66bと針受部品36、38との間には糸挿入スリット34eに連続する隙間が形成される。
【0038】
以上のように構成される針糸通しユニット12において、不使用時には、図2及び図5に示すようにカバー32は、針受部材34の大部分を覆った位置(拘束位置)にあり、且つ、糸通し部材42は、糸通し本体部品46、48の突出部46g、48g以外の部分は、カバー32によって覆われている。このため、糸通し部材42は、バネ58の付勢力が封じられており、針受部材34に接近した位置で拘束され、針受部材34と共にカバー32内に収まっている。従って、この状態で針糸通しユニット12をコンパクトに収納することができる。このとき、ピン組立体50の糸通しピン56bは、図5に示すように、保護カバー66のスリット66c内に挿入されて、その先端は抜け穴34gに達している。また、糸通しピン56bの両側面はスリット66cによって挟まれている。
【0039】
使用する際には、カバー32を本体30に対して基端側へと摺動させた位置(許容位置)に移動させる。この摺動により、糸通し部材42は、カバー32から脱するので、揺動運動が許容され、バネ58の付勢力によって外方へと揺動する(図6)。このとき、糸通しピン56bは、保護カバー66のスリット66c内にあって保護されている。また、糸通し本体部品46、48の抜け止め突起46f、48fがそれぞれ針受部品36、38の板状部36i、38iに形成された抜け止め突起36p、38pに当接して、糸通し部材42の抜け止めが図られている。
【0040】
次いで、図6及び図7に示すように、針70をその針穴70aの方から針挿入穴34cに挿入する。針70を針挿入穴34cの奥まで挿入すると、マグネット40の磁力によって針70を吸着するので、針70を確実に定位置に固定することができ、針70の落下を防止することができる。
【0041】
また、糸72を糸挿入スリット34eから挿入する。糸挿入スリット34eの末端部は、針穴70aの位置に対応するように設定される。糸挿入スリット34eの末端部は、針挿入穴34cに対して直交する方向に延びているため、この直交する部分まで糸72が到達すればよい。
【0042】
そして、糸通し部材42を押圧して、その糸通し本体部品46、48の突出部46g、48gの先端が針受部材34に接近するように揺動させると、図7及び図8に示すように、糸通しピン部品56の糸通しピン56bの先端は、糸を押し出しながら、針穴70aを通過して、抜け穴34gに達する。糸通し部材42の押圧を解除すると、糸通しピン56bは針穴70aから脱するが、糸72は、針穴70aを通過した状態を維持する。
【0043】
この糸通し部材42の揺動時に、糸通しピン56bは、保護カバー66のスリット66c内を通過しており、スリット66cによって糸通しピン56bの両側面の変位が制限されるために、細い糸通しピン56bの折れ・曲がりを防止することができる。保護カバー66は、糸通し部材42の突出部46g、48gが接近すると、変形して、糸通し部材42が針受部材34に接近するのを阻害しないようになっているとよく、糸挿入スリット34eを閉じて、挿入した糸が逃げないようにするとよい。また、別の糸を誤って挿入することもできないようになっているとよい。
【0044】
一方、針穴70aが適切な位置にない場合には、糸通しピン56bの先端が針穴70aを通過することができず、針穴70a以外の針の部分に当接する。この場合、無理に糸通し部材42の押圧を続けると、糸通しピン56bがその押圧に耐えられず曲がって破損するおそれがある。しかしながら、本発明によれば、図9に示すように、糸通しピン56bが糸通し部材42の糸押し本体44に対してバネ60のバネ力に抗して揺動するために、糸通しピン56bに作用する力を緩衝させることができ、糸通しピン56bの破損を防ぐことができる。
【0045】
そしてバネ60のバネ力によって設定される適度な力で糸通しピン56bが針70を押圧することにより、針穴70aが正しい向きとなるように針70を回転させて矯正させることができ、糸通しピン56bが針穴70aを通過することができるようになる。
【0046】
その他には次の作用が期待できる。即ち、糸通しピン56bは、糸通し本体44に対してピン組立体50の突軸52b、54bが長孔46c、48cを摺動する軌跡に沿って揺動する。このとき、糸通し部材42の揺動中心とピン組立体50の揺動中心とがずれているために、ピン組立体50の突軸52b、54bの長孔46c、48cに対する位置に応じて、糸通し部材42の揺動中心から糸通しピン56bの先端までの距離が変化し、糸通しピン56bの針70に対する相対位置が変化する。このため、針穴70aの位置が正規の位置からずれていても、糸通しピン56bの位置が変化することで、糸通しピン56bが針穴70aを通過することができる可能性が高まり、いずれかのピン組立体50の揺動位置で、糸通しピン56bが針穴70aを通過することができるようになる。または、糸通しピン56bの針70に対する相対位置が変化することで、糸通しピン56bが針70に対して効果的に力を及ぼして針穴70aが正しい向きになるように針70の位置を矯正させることの可能性を高めることができる。
【0047】
そして、針70を針挿入穴34cから取り出すと、糸72の一部が針穴70aを通過した状態で取り出される。針穴70aを通過した糸は図10に示すように、ループ状になっているので、糸72の端部を針穴70aが通過するまで、そのループを大きくしていくと、ループが解除されて、糸72が針穴70aを通過し、針糸通しが完成する。
【0048】
使用が終了すれば、糸通し部材42を押圧して、その糸通し本体部品46、48の突出部46g、48gの先端を針受部材34に接近させた後、カバー32で覆って拘束位置に移動させることで、再び装置全体を小型にすることができる。
【0049】
以上のように本発明によれば、糸通しピン56bの破損を防ぐことができて、糸通し装置10の耐久性を高めることができる。また、糸通しピン部品56がピン組立体50として一体化されて、糸通し本体44内に収まるので、糸通しピン部品56のより一層の保護を図ることができる。
【0050】
尚、以上の実施形態において複数の部材で構成した部品を単一部材で構成することも可能であり、または単一の部材で構成した部品を複数の部材で構成することも可能である。
【符号の説明】
【0051】
10 針糸通し装置
34 針受部材
34c 針挿入穴
34e 糸挿入スリット
42 糸通し部材
44 糸通し本体
56b 糸通しピン
60 補助バネ(付勢部材)
70 針
70a 針穴
72 糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
針挿入穴と、該針挿入穴に対して角度を持った糸挿入スリットとを有する針受部材と、
前記針受部材に対して離反した位置と接近した位置との間で揺動可能となっており、離反した位置から接近した位置へと揺動するときに、前記針挿入穴に挿入された針の針穴に、前記糸挿入スリットに挿入された糸を押し出し可能な糸通しピンを有する、糸通し部材と、
を備えた針糸通し装置において、
前記糸通しピンは、前記糸通し部材の本体に対して一定の揺動範囲内で揺動可能となっており、前記糸通し部材は、さらに前記糸通しピンを前記本体に対して前記針受部材に接近する方向に付勢する付勢部材を備えることを特徴とする針糸通し装置。
【請求項2】
前記糸通しピンの揺動中心と、前記糸通し部材の揺動中心とが異なる位置にあることを特徴とする請求項1記載の針糸通し装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−254175(P2012−254175A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−128584(P2011−128584)
【出願日】平成23年6月8日(2011.6.8)
【出願人】(000156134)株式会社壽 (69)
【Fターム(参考)】