説明

針貫通可能かつレーザ再密閉可能な凍結乾燥装置およびこれに関連する方法

装置内で物質を凍結乾燥させ、その中に凍結乾燥された物質を保管するための装置とこれに関連する方法が提案される。この装置は、凍結乾燥対象物質を装置に充填するために針で貫通でき、装置内に形成される針穴が、そこにレーザ源からのレーザ光線を照射することによって、レーザで再密閉できる。この装置は、凍結乾燥対象物質を受けるためのチャンバを有する。装置の針貫通可能、レーザ再密閉可能な部分は、針で貫通でき、これを貫通する針穴が形成され、針からチャンバに凍結乾燥対象物質を充填し、レーザ照射により、針穴を気密状態にするようレーザで再密閉できる。チャンバの内側と外側の間に流体連通するようにフィルタを接続することができ、これを通ってチャンバの内側から外側の方向に流体が流れるようにし、これを通って汚染物質がチャンバの外側から内側の方向に流れるのを実質的に防止する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概略的には物質の密封と分注に関し、より詳しくは、物質の針による充填、レーザによる密閉、凍結乾燥、還元(reconstituting)、分注に関する。
【背景技術】
【0002】
本願は、2006年4月24日に出願された米国特許仮出願第60/794,642号の優先権を主張し、参照によって同出願の内容のすべてを本願に援用する。
【0003】
現在の技術において、乾燥凍結は、食品および医薬品業界のさまざまな問題を解決してきた。たとえば、凍結乾燥された物質は現在、ヒト成長ホルモン(HGH)、生物由来物質、ワクチン、免疫刺激剤、薬剤その他といった注入可能な化合物の基剤として有効に利用されている。凍結乾燥では、非常に低温で物質を急速冷凍し、その後高真空下での昇華によって急速脱水を行う。凍結乾燥工程は、困難な保管および取扱装置の必要性を低減または排除し、好ましい保管寿命を有する製品を実現する道を開く。凍結乾燥は、特定の注入可能な薬剤を実現可能にする中での役割に加え、好ましくない加工特性または製品特性を有する各種の乾燥粉末充填製品に代わるものを見出すために用いられている。これらの粉末充填製品は、製造コストが低いが、その製造には加工の安全性(粉末管理)、均一性(混合)、外観の美しさ、検査容易性、安定性(残留水分と溶媒の管理)、粒子制御の課題がある。規制や業界の専門家は、このような製品の凍結乾燥物を開発することによって、上記の特性をよりよく制御し、あるいは克服できると認識している。
【0004】
先行技術による凍結乾燥工程は、少なくとも1つの化学変化を起こさないコンテナ(ガラスバイアル等)を収容するのに適した棚段を有する凍結乾燥チャンバを利用し、基本的に、充填ステージ、凍結ステージ、一次乾燥ステージ、二次乾燥ステージで構成される。充填ステージでは、所定の量の液体物質または調合物がコンテナに供給される。凍結ステージでは、調合物が冷却される。液体物質から純粋な結晶氷が形成され、これによって、液体残留物の凍結濃縮液が、それ以上は結晶化できない、より粘性の高い状態となる。最終的に、このような高濃度に濃縮された粘性のある溶液は凝固し、非晶質、結晶質または非晶質−結晶質複合相が得られる。一次乾燥ステージでは、前の凍結ステージで形成された氷が、真空下における周囲温度以下の温度での昇華によって除去される。このステージは従来、室圧40−400トール、棚段温度約−30℃から約+10℃の範囲で行われている。このステージ全体にわたり、物質は、凍結ステージ中に確立された構造を保持しながら物質を乾燥させるために、その物質の崩壊温度より低温で固相の状態に保持される。崩壊温度は、たとえば、非晶質物質ではガラス転移温度(Tg)、結晶質物質では共融温度(Te)である。二次乾燥ステージにおいて、マトリクス内に残る比較的少量の結合水が脱離によって除去される。このステージでは、棚段と物質の温度が上昇されることで、十分な脱着レートが得られ、所望の残留水分が実現される。
【0005】
一般的な凍結乾燥工程には、先端的なデータ取得管理システムを備えた高度な機械設備が必要となる。たとえば、従来の凍結乾燥コンテナに凍結乾燥対象となる殺菌済み物質または化合物を充填するには、通常、凍結乾燥コンテナの組立前のコンポーネントを、たとえばコンポーネントの加圧滅菌処理またはコンポーネントへのガンマ放射線照射によって殺菌する必要がある。その後、殺菌されたコンポーネントが殺菌済み充填機(filling machine)の無菌アイソレータで充填され、組み立てられる。場合により、殺菌済みコンポーネントは、複数の密封された袋またはその他の殺菌済みエンクロージャの中に封入されて、殺菌済み充填機に運ばれることもある。また、殺菌装置が殺菌済み充填機の入口に設置される場合もある。
【0006】
先行技術による凍結乾燥キャップ/コンテナアセンブリおよび凍結乾燥のための工程と機器に伴う1つの欠点は、充填工程を凍結乾燥工程と一緒に行うのは時間がかかり、このような工程と機器はコスト高となりうる点である。さらに、充填/凍結乾燥工程と機器が比較的複雑な性格を有することから、希望するものよりコンテナの充填が不完全となる。たとえば、一般的に、少なくともコンポーネントの数だけ不良の原因がある。多くの場合、充填機の中の殺菌状態に保たなければならない無菌領域内に、凍結乾燥コンテナを組み立てるための複雑な組立機械が設置される。この種の機械は、不要な粒子や汚染物質の重大な発生源となりうる。さらに、バリアエンクロージャ内の殺菌状態の空気を維持するために、アイソレータが必要となる。閉鎖されたバリアシステムの中では、滞留が不可避であり、したがって層流、あるいは実質的な層流が実現されない。アイソレータの動作が停止されたときには、培地充填試験を実施しなければならないかもしれず、この試験にはそう多くの日数ではないとしても、数日かかり、その結果、その機器を使用する医薬品その他の製品の製造者にとって、作業の度重なる中断と生産量の大幅な減少につながりうる。このような製造上の問題に対処するために、政府により規制がますます厳しくなり、すでに高額なアイソレータや同様の充填機器のコストが一層高まっている。その一方で、注射剤に対する政府の価格規制が、こうした多額の資本投資を躊躇させる。そのため、このように増大する殺菌済み充填機への投資を行う余裕のある企業が減り、さらに市場の競争を減衰させているという問題がある。
【0007】
既知の凍結乾燥コンテナならびに凍結乾燥のための工程と機器に関わる別の欠点は、凍結乾燥工程中に、コンテナの内容物と周辺雰囲気との間の連通を許す必要があり、これは、事実上、コンテナ内容物が劣化する脆弱性を増大させる。このような脆弱性の増大にかかわらず、大気連通は、水分を凍結乾燥工程中の必要に応じて適正に排出させるために不可欠である。従来、この水分排出(venting)の必要性に対処するためには、1つまたは複数の水分排出用開口部のある、延長した下方部分を有するストッパを利用し、充填ステージの後でこのストッパをコンテナに部分的にのみ取り付けて、下方部分の水分排出用開口部がコンテナの内容物を周辺雰囲気に露出させるようにする。こうして、凍結乾燥中にコンテナの内容物から除去された水分は、この水分排出用開口部から外に出ることができる。コンテナを閉じる一般的な方法として、凍結乾燥チャンバの棚段が一緒に垂直に移動して、ストッパをコンテナ内に押し下げ、その下方部分の水分排出用開口部が十分にコンテナ内に入るようにし、それによってそれ以降の水分または空気の侵入、放出が防止される。金属シールやクリンプを使って、コンテナにゴムのストッパをしっかりと固定し、不用意にストッパがコンテナから外れるのを防止することもできる。したがって、従来の凍結乾燥コンテナとストッパのアセンブリおよび関連する水分排出技術は、必要な水分排出を行うには適当であるものの、凍結乾燥コンテナ内の内容物の完全性を確保する好ましい状況に対応していない。
【0008】
上記の凍結乾燥工程とコンテナに関わるその他の欠点は、コンテナストッパが凍結乾燥チャンバの棚段に付着する可能性がある点である。これは一般に、72時間も要する凍結乾燥工程の終了時に、棚段が下降してストッパをコンテナ内に着座させた後に発生する。その後、棚段が引き戻されると、いくつかのストッパが棚段に付着し、そのバッチの少なくとも少量の部分が失われる。極端な場合には、バッチ全体が台無しになり、コスト高と非効率性の原因となる。
【0009】
既知の凍結乾燥コンテナと工程に関わるさらに別の欠点は、再溶解(還元)工程にある。上記の説明から明らかなように、凍結乾燥された物質または化合物は、これを投与する前に、適当な希釈剤によって再溶解する必要がある。再溶解は通常、凍結乾燥された物質の入っているコンテナに希釈剤を(たとえば、注射器で)注入することによって行われる。再溶解中、希釈剤はしばしば凍結乾燥された物質と相互作用し、凍結乾燥された物質が発泡する原因となる。この発泡効果は、コンテナ内に不要なヘッドスペース(上部空間)を発生させ、適当な量の希釈剤が物質と混合されず、希釈剤と化合物の比率が不適正となる。このような不利な発泡効果により、再溶解された物質の投与に進む前に、泡が消失するまでしばらく待たなければならない。したがって、先行技術による凍結乾燥コンテナと比較して、このような不利な発泡効果を最小限にするか、あるいはその他減少させる凍結乾燥コンテナを提供することが有利であろう。
【0010】
凍結乾燥された物質は、たとえば次のような特性を有することが好ましい。すなわち、(1)長期にわたる安定性、(2)短時間での再溶解、(3)塊(cake)の外観がエレガントであること、(4)再溶解時にも溶液の特性、タンパク質の構造または配座またはその両方、および懸濁液の粒径分布を含めた当初の投薬特性を維持できること、(5)再溶解時の等張性である。ただしこれらに限定されるものではない。管理と監視の精度、正確さ、再現可能性ならびに製品の美しさ、安定性および再溶解特性は、凍結乾燥を革新する上で対処すべき要素である。さらに、抗生物質や薬剤、免疫学的製品、遺伝子工学から得られる物質、高分子量タンパク質、精巧なペプチド(sophisticated peptide)等、凍結乾燥される多くの物質は非常にもろく、凍結しにくく、残留水分による影響を非常に受けやすい。したがって、凍結乾燥された物質を再現可能で信頼性の高い方法で、大量に、また少量だけ生産するための、改善された凍結乾燥用コンテナ、工程、機器または技術に対する需要が必然的に増大するであろう。
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2005/0178462A1号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2004/0256026A1号明細書
【特許文献3】米国特許第6984395B2号明細書
【特許文献4】米国特許第6564471B1号明細書
【0012】
そこで、本発明の目的は、先行技術による上記のような欠点と不利点の1つまたはいくつかを克服し、改善された凍結乾燥装置、工程、機器または技術に対するニーズに対応することである。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0013】
第一の態様によれば、本発明は物質を凍結乾燥し、凍結乾燥された物質をその中に保管するのに用いられる装置に関する。この装置は、針で貫通して装置に凍結乾燥対象物質を充填し、その結果として装置にできる針穴は、そこにレーザ源からレーザ光線を伝送することによってレーザ再密閉可能である。この装置は、その中に凍結乾燥対象物質を受けるためのチャンバを有する本体を備える。装置の中の、針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分は、針を穿刺してこれを貫通する針穴を形成することでチャンバに針で凍結乾燥対象物質を充填することができ、そこにレーザ光線を当てることによってレーザで再密閉し、気密状態にすることができる。本発明のある実施例において、フィルタがチャンバの内側と外側の間で流体連通するように接続され、流体がフィルタを通じてチャンバの内側から外側の方向に流れるのを可能にし、汚染物質がフィルタを通じてチャンバの外側から内側の方向に流れるのを実質的に防止する。
【0014】
本発明のある実施例において、装置はさらに、針貫通可能、レーザ再密閉可能な部分をそこに固定するための、本体に連結された固定部材を備える。このような実施例のいくつかにおいて、針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分は少なくとも1つの第一の水分排出用開口部を有し、固定部材は少なくとも1つの第一の水分排出用開口部と流体連通する少なくとも1つの第二の水分排出用開口部を有し、フィルタがその間に設置される。このような実施例のいくつかにおいて、針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分は、相互に対して角度方向に離間された複数の第一の水分排出用開口部を有し、固定部材は相互に対して角度方向に離間された複数の第二の水分排出用開口部を有し、少なくとも複数の第二の水分排出用開口部は、それぞれの第一の水分排出用開口部と流体連通している。このような実施例において、第一の水分排出用開口部は、流体がその中を流れるようにする第一の通水断面積(cross-sectional flow area)を有し、第二の水分排出用開口部は、流体がその中を流れるようにする第二の通水断面積を有し、第二の通水断面積は第一の通水断面積より大きい。このような実施例において、第一の水分排出用開口部は水分排出用開口部の第一の環状アレイを有し、第二の水分排出用開口部は水分排出用開口部の第二の環状アレイを有する。好ましくは、第一の環状アレイは第一の内径と第一の外径を有し、第二の環状アレイは第二の内径と第二の外径を有し、第二の外径は第一の外径と略同じまたはそれより大きく、第二の内径は第一の内径と略同じまたはそれより小さい。また、本発明の現時点で好ましい実施例において、少なくとも複数の第一の水分排出用開口部は、針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分の中の固定部材に関して角度方向のほぼすべての位置において、あるいは固定部材の中の針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分に関して角度方向のほぼすべての位置において、各々の第二の水分排出用開口部と流体連通している。
【0015】
装置は、さまざまな凍結乾燥物質のいずれかを凍結乾燥し、その中に保管するための多種多様な形態の中のどれでもよい。本発明のある実施例において、本体は、バイアル、コンテナまたはシリンジのいずれかの形態をとり、針貫通可能、レーザ再密閉可能な部分は、ストッパにより画定される。
【0016】
本発明のある実施例において、針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分と固定部材との間にフィルタが設置される。このような実施例のいくつかにおいて、フィルタは、(i)針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分にしっかりと固定されるか、(ii)針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分と固定部材との間に機械的に接続されるか、または(iii)針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分と一緒に挿入成形される。本発明のある実施例において、フィルタは、約0.05ミクロンから約5ミクロンの範囲内の孔径分布を有する多孔質材料で構成される。このような実施例のいくつかにおいて、フィルタ材料は疎水性である。
【0017】
装置は、好ましくは、固定部材、本体、または針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分に連結され、針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分の露出部分を覆うカバーをさらに備える。本発明のある実施例において、カバーは、針貫通可能、レーザ密閉可能な部分と周辺雰囲気の間に実質的に液密シール(fluid-tight seal)を形成し、これを通じた水分と蒸気の透過に対するバリア(障壁)を形成する。本発明のある実施例において、カバーはフランジブル部(frangible portion:壊れやすい部分)を有し、これはカバーに接続されて針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分を周辺雰囲気から実質的に密閉する閉鎖位置と、カバーから外されて針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分の少なくとも一部を露出させる開放位置の間で移動する。本発明のある実施例はさらに、フィルタの上に重なり、フィルタを周辺雰囲気から密閉する密閉部材を備える。このような実施例のいくつかにおいて、密閉部材はカバーの一部として形成され、あるいはカバーの下側にしっかりと固定される。
【0018】
現時点で好ましい本発明の実施例において、針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分は、軸方向に所定の壁厚を有し、そこに所定の波長と強度のレーザ光線を照射することによって針の穴を気密状態に密閉するようレーザ再密閉可能であり、針の穿刺と抜去中に、針貫通可能、レーザ再密閉可能な部分からチャンバ内に放出される粒子の形成を実質的に防止する熱可塑性材料を含む。熱可塑性材料は、熱可塑性材料が所定の波長のレーザ光線を実質的に吸収し、光線がその所定の壁厚を通過するのを実質的に防止し、所定の時間内に針貫通領域に形成された針穴を気密状態に密閉することを可能にする、所定の量の顔料を含む。本発明のある実施例において、熱可塑性材料は、オレフィンを約3重量%から約20重量%とスチレンブロック共重合体を約80重量%から約97重量%と潤滑油を含む。本発明のある実施例において、熱可塑性材料は、(i)約80重量%から約97重量%の範囲の量の、第一の伸びを示す第一のポリマ材料、(ii)約3重量%から約20重量%の範囲の量の、第一の材料の第一の伸びより小さい第二の伸びを示す第二のポリマ材料と、(iii)針と本体の界面における摩擦力を低減させる量の潤滑油を含む。このような実施例のいくつかにおいて、第一の材料はスチレンブロック共重合体であり、第二の材料はオレフィンである。本発明のある実施例において、顔料の所定の量とは約0.3重量%から約0.6重量%の範囲内である。
【0019】
別の側面では、本発明は、物質を凍結乾燥し、凍結乾燥物質をその中に保管するのに用いられる装置に関する。この装置は、針で貫通して装置に凍結乾燥対象物質を充填することができ、その結果として装置に形成される針の穴は、そこにレーザ源からレーザ光線を伝送することにより、レーザ再密閉できる。この装置は、その中に凍結乾燥対象物質を受けるための無菌室を形成する第一の手段と、針を穿刺し、これを貫通する針穴を形成し、針から凍結乾燥対象物質を無菌室に充填し、針穴にレーザ光線を照射してこれを気密状態に密閉するレーザ再密閉のための第二の手段を備える。本発明のある実施例において、装置はさらに、無菌室の内側と外側の間で流体連通状態に接続可能で、これを通じて無菌室の内側から外側に流体が流れるようにし、これを通じて無菌室の外側から内側に流れる汚染物質をろ過し、実質的にその流れを防止するための第三の手段を備える。
【0020】
本発明のある実施例において、第一の手段はその中にチャンバを有する装置の本体であり、第二の手段は針で穿刺し、これを貫通する針穴を形成し、針からチャンバに凍結乾燥対象物質を充填でき、針穴にレーザ光線を照射することによって気密状態に密閉するようにレーザ再密閉可能な針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分であり、第三の手段はチャンバの内側と外側の間に流体連通状態で接続され、これを通じて流体がチャンバの内側から外側の方向に流れるのを可能にし、これを通じてチャンバの外側から内側の方向に汚染物質が流れるのを実質的に防止するフィルタである。
【0021】
他の態様によれば、本発明は、凍結乾燥対象物質を装置に充填し、装置内の物質を凍結乾燥し、凍結乾燥物質を装置内に保管する方法に関する。この方法は次のステップを含む。(i)チャンバを有する本体と、チャンバと流体連通する針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分を有する装置を設置するステップと、(ii)針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分を針先で穿刺し、針のフローアパーチャ(flow aperture)が装置のチャンバと流体連通するようにするステップと、(iii)針から装置のチャンバ内に凍結乾燥対象物質を注入するステップと、(iv)針を針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分から引き抜くステップと、(v)チャンバ内で物質を凍結乾燥し、凍結乾燥中に流体がチャンバから流出するようにし、凍結乾燥中に汚染物質がチャンバ内に流入するのを防止するステップと、(vi)レーザ光線をレーザ源から針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分の針で貫通された領域に伝送し、針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分に形成された針穴を気密状態に密閉するステップ。
【0022】
本発明のある実施例において、装置を設置するステップはさらに、チャンバの内側と外側の間に流体連通するフィルタを備える装置を設置するステップを含み、凍結乾燥するステップは、チャンバ内の物質を凍結乾燥するステップと、凍結乾燥中に流体がフィルタを通じてチャンバから流出するようにするステップと、凍結乾燥中に汚染物質がフィルタを通じてチャンバ内に流入するのを防止するステップを含む。本発明のある実施例において、凍結乾燥はレーザ光線を伝送するステップ前に行われ、本発明の別の実施例においては、凍結乾燥は光線伝送ステップの後に行われる。本発明のある実施例において、凍結乾燥は、チャンバ内の物質を凍結するステップと、装置を真空下に置き、フィルタを通じた昇華によってチャンバ内の氷を除去するステップと、その後、チャンバ内の温度を上昇させ、チャンバ内の物質からフィルタを通じて残留水分を脱離させるステップを含む。
【0023】
本発明のある実施例において、この方法はさらに、チャンバ内の物質を凍結乾燥するステップの後に、周辺雰囲気に関してフィルタとチャンバを密閉するステップを含む。
【0024】
この方法はまた、好ましくは、チャンバを殺菌するステップをさらに含む。本発明のある実施例において、殺菌するステップは、凍結乾燥対象物質を針でチャンバ内に注入する前に行われる。本発明のある実施例において、殺菌するステップは、チャンバに(i)ガンマ光線を照射するステップ、(ii)eビーム光線を照射するステップ、(iii)レーザ光線を照射するステップの中から選択される。
【0025】
本発明のある実施例において、この方法はさらに、針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分と針とのいずれか一方を、針の穿刺と抜去中にチャンバ内に放出される粒子の形成を実質的に防止するように構成するステップを含む。このような実施例のいくつかにおいて、上記の構成するステップは、スチレンブロック共重合体とオレフィンを含む熱可塑性材料による針貫通可能、レーザ再密閉可能な部分を設けるステップと、針と針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分の界面に潤滑油を供給するステップを含む。このような実施例のいくつかにおいて、上記の構成するステップは、(i)約80重量%から約97重量%の範囲の量の、第一の伸びを示す第一のポリマ材料と、(ii)約3重量%から約20重量%の範囲の量の、第一の材料の第一の伸びより小さい第二の伸びを示す第二のポリマ材料と、(iii)針と針貫通可能、レーザ再密閉可能な部分との界面の摩擦力を軽減する量の潤滑油を含む熱可塑性の針貫通可能、レーザ再密閉可能な部分を設けるステップを含む。
【0026】
本発明の1つの利点は、装置が充填前に密閉された空のチャンバを形成するように組み立てられ、したがって、充填工程中に殺菌状態を保持する能力を高められる点である。その結果、本発明は、先行技術におけるストッパ/コンテナおよび関連する充填システムと比較して、加工時間とコストを大幅に削減でき、さらに、組立および充填工程中ずっと殺菌状態の確実性を大幅に増大させることができる。
【0027】
本発明および開示されたその実施例の他の利点は、現時点で好ましい実施例に関する以下の詳細な説明と添付の図面から容易に明らかとなるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明が関係する分野の当業者がその作製および使用方法をより容易に理解できるようにするには、下に列挙する図面を参照する必要があるであろう。
【0029】
ここで、本願の開示の好ましい面を詳細に説明するために、添付の図面を参照する。図面とこれに伴う詳細な説明は、開示されている主旨の例として提供され、その範囲を限定するものではない。
【0030】
図1を参照すると、本発明による凍結乾燥装置の実施例が全体して参照番号10で示されている。装置10は、その中に凍結乾燥対象物質を受けるためのチャンバを有する本体12と、本体12の開放端の中に受けられる針貫通可能、レーザ再密閉可能な部分、つまりストッパ14と、ストッパを本体にしっかりと固定するためのロッキング部材、つまり固定リング16と、その中に充填される物質の凍結乾燥中にチャンバから流体を流出させ、汚染物質が装置外部からチャンバ内に侵入するのを実質的に防止するための殺菌フィルタ18を備える。後述するように、装置10はさらに、固定リング16の上に重なり、フィルタ18を周辺雰囲気から密閉する水分排出口シール20(図4a)と、ストッパを周辺雰囲気から密閉し、また不正開封防止用(tamper evident)カバーを提供するための保護カバー22を備える。
【0031】
図2a−2cを参照すると、ストッパ14は、本体の出入口26と係合するように調整、構成された外周面24と、針貫通可能、レーザ再密閉可能な部分30と外側上面28と、フィルタ陥凹部またはくぼみ32と、ストッパを貫通して延びる1つまたは複数のストッパ水分排出口34と、ストッパを通じた針による装置への充填と凍結乾燥中のストッパ水分排出口34からの水分排出を容易にする形状の内側下面36を有する。図からわかるように、下面36は、針貫通可能、レーザ再密閉可能な部分30の基底部にある上方領域と、チャンバの開口部26へと下側に伸び、本体12の側壁に向かって放射状に外側に細くなる環状領域37を有する。針による充填中、針穴(図示せず)は、下方壁36の環状領域37の中に配置され、流体物質の針からチャンバへの流れが、本体の環状領域または側壁へと横方向に向くようにする。環状領域37は好ましくは、流体を横方向とチャンバへと下方に向かわせるように、実質的に円滑な半径を有する。分注される流体に応じて、この構成は、乱流の軽減を容易にし、したがって、気泡の形成を低減または防止することができる。
【0032】
図1に示されるように、ストッパ14の外周面24は、本体とストッパの間の第一のシール38となり、本体12の中に保持される物質の完全性を維持する。必要に応じて、本体12は、ストッパ14により画定される相補的な陥凹部または突起42とそれぞれ協働するための突起または陥凹部40のいずれかを有し、ストッパと本体の間の密閉性を実現する。しかしながら、当業者であれば本願の教示からわかるように、ストッパと本体は、その間の液密シールを実現するために現在知られている、あるいは今後知られる、多種多様な構成のいずれでもよい。図のように、再密閉可能な部分30は、好ましくは、ストッパ14の外側上面28に関して、少なくとも若干上昇される。このように上昇させたことにより、ストッパが装置の他のコンポーネントと動作的に関連付けられ、本体に接続されたときに、再密閉可能な部分30へのアクセスが容易となる点で有利である。フィルタのくぼみ32は、再密閉可能な部分30とは異なり、その中にフィルタ18を受けるために、外側上面28に関して少なくとも若干くぼんでいることが好ましい。図からわかるように、ストッパ14は固定リング16と協働し、ストッパと固定リングの間に第二のシール44(図1に最もよく示される)を提供し、これによって本体12の中に保持される物質の完全性を維持する。固定リング16の下面またはストッパ14の外側上面28は、これらが組み立てられたときに、フィルタ18がストッパ14と固定リング16の間でその内側および外側円周の両方で有効に挟まれ、それによって液密シールが実現されるように構成される。これに加え、あるいはその代わりに、フィルタ18はストッパ14または固定リング16に、超音波接合、挿入成形またはその他の方法でしっかりと固定され、液密シールを実現する。
【0033】
ストッパ水分排出口34の形状、大きさ、構成は、異なる水分排出効果を実現するのに適正となるように変更できる。図4aに示すように、固定リング16は複数のリング状排出口46を有し、それら排出口46はお互いに対して角度方向に(円周に沿って)離間され、凍結乾燥中にストッパ水分排出口34と協働し、そこから必要な水分排出が行われるようにする。有効に水分排出を行うために、ストッパ水分排出口34は凍結乾燥中に固定リング16のリング状排出口46と常に流体連通していることが必要である。さらに、後述のように、一貫した水分排出が行われるために、ストッパ水分排出口34とリング状排出口46が協働し、ストッパ14に関する固定リング16の位置または向き、あるいはその逆の位置または向きに関係なく、同じ全体的な水分排出効果または有効な水分排出が実現されることが有利である。
【0034】
当業者であれば本願の教示からわかるように、本発明のストッパ14の具体的な形状または構成およびストッパに関わる特徴は、希望に応じて、あるいは所望の効果を得る上での必要性に応じて変更可能である。たとえば、ストッパの下側内面36,37またはストッパ水分排出口34の具体的な構成または配置は、装置の中に保持される凍結乾燥物質の再溶解中に装置が揺すられた場合に、微粒子が捕捉されず、微粒子の溶解が妨げられるというようなものであってもよい。
【0035】
図3a,3bを参照すると、図のフィルタ18は、図に示されているように、単独材料の層48である。本発明の他の態様において、フィルタ18は、異なる材料特性の2つまたはそれ以上の材料の層の複合物であってもよい。フィルタが複合材料によるものか否かにかかわらず、フィルタの材料は、本発明の好ましい態様によれば、疎水性または液不透過性(不浸透性)であり、製造中に容易に取り扱われ、好ましくは、さまざまな形状のいずれにも適合するように切断または形付けることができる。フィルタの材料は、好ましくは幅広い温度範囲にわたって利用可能である。本発明の1つの態様において、フィルタの材料は、低密度の、押出成形された、未焼結の多孔質材料、たとえば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、延伸PTFE(ePTFE)または当業界で周知のそのバリエーション等から形成できる。フィルタ材料は、異なる利用上の要求事項に対応できるように設計または調整することができる。フィルタ材料は、本発明の1つの態様によれば、たとえば、約0.05ミクロンから約5ミクロンの範囲の孔径分布を有する多孔質とすることができる。本発明の特定の態様において、フィルタ材料は、好ましい疎水性形態から親水性形態に変更できる。PTFEまたはePTFEは比較的柔らかく、あるいは圧縮可能であるため、上述のように、また図1に示されているように、ストッパの上面と固定リング16の下面のように、これらが押し付けられる面に対して液密シールを形成するのに非常に適している。上記の材料に加え、他のフィルタ材料も有効に利用できる。たとえば、フッ化ポリビニリデン(KynarTMとしてよく知られているPVDF)であり、これは非汚染用途によく適した、きわめて純粋な不透明の白い樹脂である。PVDFは比較的高い機械的強度と耐摩耗性を有し、ガンマおよびUV光線に耐えるのに非常に適しており、これは殺菌目的にとって有利である。
【0036】
本発明の1つの態様によれば、フィルタ材料は、約30%から約50%の範囲の空隙容量を有するオープンセル(蛇行経路)構造を有していてもよい。フィルタ材料は、たとえば、ポリプロピレン材料、ポリエチレン材料、ポリエステル材料、Kevlar(登録商標)、ガラスファイバーおよびその他のさまざまな材料を含め、ほとんどどの材料にも付着できる。フィルタ材料の多孔性は、各種の利用上の要求事項に対応する上での希望に応じて調整してもよい。フィルタ材料の多孔性は、3つの軸すべてにおいて均一であってもよく、これによってフィルタ処理または分離の用途において一定の液流を実現できる。好ましくは、フィルタ材料の孔径分布は一定しており、公称値は約0.05μmから約5μmの範囲である。
【0037】
装置10の1つの実施例において、フィルタ18は約0.2μmの殺菌用フィルタである。好ましくは、フィルタの材料は疎水性で、フリーズドライ、つまり凍結乾燥工程中に水蒸気で詰まることがない。このようなフィルタ材料の1つは、マサチューセッツ州ベッドフォードのミリポア社(Millipore Corporation)によりSureventTM PVDFメンブレンとして販売されている。別の例によるフィルタ材料は、不織ポリプロピレンの裏打ちに付着されたPTFE膜を含む約0.2μmの殺菌用フィルタである。このような材料の1つは、ミリポア社によってSureventTM PTFEメンブレンとして販売される。
【0038】
当業者であれば本願の教示からわかるように、本発明の装置において使用される具体的なフィルタ材料は、所望の物理的またはその他の特性を実現する上での希望に応じて変更できる。たとえば、フィルタの厚さは、異なる水分排出効果を提供するために変更できる。あるいは、またはこのような手段と一緒に、フィルタ材料の混合は、装置内に含まれる特定の製品との所望の収着レベルに適合するように、または所望のMVT特性を実現するように、希望に応じて変更できる。またさらに、フィルタは可溶性または不溶性材料の複数の層を利用でき、異なるそれら材料の相対的厚さは、フィルタの水分排出特性を変更するように調整できる。当業者であれば本願の教示からわかるように、上記の材料は例にすぎず、希望に応じて、あるいは特定のシステムにおける必要性に応じて変更できる。
【0039】
図4a−4cを参照すると、図に示されているように、固定リング16は本体12とストッパ14に有効に接続され、本体とストッパとの間の液不透過性シール(つまり、図1の第一のシール38)の完全性が有効に保持されるように構成される。固定リング16は、現在知られている、あるいは今後知られる多種多様な熱可塑性材料のいずれか等、各種の材料のいずれによっても作製できる。固定リング16は、本発明の他の態様において、再密閉可能な部分30において使用されるものと同様の、弾性ポリマ材料および低濃度ポリエチレンからも形成できる。輸送、保管、構成工程中に装置のコンポーネントの殺菌性を保持することがしばしば困難であるため、固定リング16に非金属材料を使用することにより、装置は、本体に凍結乾燥対象物質を充填する前に、組み立てて、その後たとえばガンマ殺菌法、eビーム殺菌法あるいはその他の照射または殺菌工程により、一体として殺菌できる。
【0040】
固定リング16は、本体12とストッパ14に機能的に接続または係合するための内側部分50を有する。内側部分50は、上述のようにストッパ14とフィルタ18の間の界面を密閉するための第二のシール44(図1)を実現するように構成される。固定リング16は、ストッパの再密閉可能な部分30の少なくとも一部を露出するのに適した出入口52を有し、針またはその他の充填部材がストッパを貫通し、それによって所定の物質または化合物を本体に送り、その中に保持することを可能にする。前述のように、固定リング16は、ストッパ水分排出口34と協働し、凍結乾燥工程中に有効な水分排出を実現し、または本体の内部と周辺雰囲気の間の有効な平衡を保つような大きさ、形状または構成のリング水分排出口46を有する。
【0041】
当業者であれば本願の教示からわかるように、固定リング16は本体12またはストッパ14に取り付けることができ、その方法はさまざまで、たとえば、固定リングを本体またはストッパにオーバーモールド(over-molding:外側被覆)する方法、固定リングと本体とを機械的にスナップ止め(snap-fit)その他のインターロッキング(連結)係合させる方法、固定リングを本体またはストッパに接着により接合する方法、または超音波接合による方法等がある。本発明の特定の好ましい実施例では不要であるが、リング水分排出口46のストッパ水分排出口34への一貫した整合を実現するために、固定リング16が本体またはストッパに嵌合され(keyed)るようにして、適正な水分排出口の位置合わせを実現し、これによって適正な水部排出効果が得られるようにしてもよい。希望に応じて、固定リング16は、ストッパ14の上に完全に重なるように形成できる。動作において、ストッパ14は、凍結乾燥する物質を装置10の中に注入するための針等の充填部材によって固定リング16の開口部52から貫通することが可能である。充填針を引き抜く際に、所定の波長と強度のレーザ源から伝送される光線等の熱エネルギーがストッパの貫通領域に当てられ、充填針によって作られた孔が密閉される。
【0042】
図5を参照すると、本発明の説明のための例に係る水分排出口パターンの概略が示されており、リング水分排出口46のパターンがストッパ水分排出口34のパターンの上に重ねられている。凍結乾燥工程中において、充填され、密閉され、殺菌された装置10を通じた実質的に一貫した水分排出を実現するために、ストッパ14と固定リング16の両方の水分排出口は好ましくは、相補的な所定のパターンに配置される。固定リング16は、所定のパターンで相互に対して角度方向に離間されたリング水分排出口46を所定の数だけ有する。たとえば、図のように、固定リングは、第一の円形アレイ54の中で相互に対して略同等に離間された8個のリング水分排出口46を有し、第一の円形アレイ54は所定の第一の外径D1(たとえば、約13mm)と、所定の第一の内径D2(たとえば、9.5mm)を有する。それらリング水分排出口46は、お互いに対し所定の第一の角度A1(たとえば、約45度)の方向を向き(つまり、隣接するリング水分排出口46の半径方向の中心線同士がお互いに対し鋭角A1の方向)、各リング水分排出口46は、所定の角度幅(angular width)すなわち厚さT1(たとえば、約1.8mm)を有する個々のリングリブ56の分だけ、隣のリング水分排出口から離れている。ストッパ14は、角度方向(円周上で)に互いに離間した(angularly spaced relative to each other)ストッパ水分排出口34を所定の数だけ有しており、これら排出口のアレイ(配列)は、固定リング16のリング水分排出口46のアレイに対して相補的なものとなっている。固定リング16が前述のように8個のリング水分排出口46を有する実施例において、ストッパ14には、第二の円形アレイ58の中に配置された12個のストッパ水分排出口34が設けられる。第二の円形アレイ58は、好ましくはリング水分排出口46のアレイの第一の外径D1と略同じまたはこれより小さい所定の第二の外径D3と、好ましくはリング水分排出口46のアレイの第一の内径D2と略同じまたはこれより大きい所定の第二の内径D4を有する。ストッパ水分排出口34は、お互いに対して所定の第二の角度A2(たとえば、約30度)の方向を向き(つまり、隣接するストッパ水分排出口34の半径方向の中心線同士が、相互に対して鋭角A2の方向を向く)、各ストッパ水分排出口34は、所定の角度幅すなわち厚さT2(たとえば、約1.3mm)を有する個々のストッパリブ60の分だけ、隣のストッパ水分排出口から離れている。各リングリブ56とストッパリブ60は、均一な円弧方向の厚さ、つまり幅T1またはT2を有していてもよいし、あるいはそれら各リブの対向する辺が半径方向に各アレイの内径から外径に向かって放射状に延びるように漸増する幅を有していてもよい(図2b,2c,4b,4c参照)。当業者であれば本願の教示からわかるように、本願で開示される水分排出口と水分排出口パターンは、多くの各種の形状と構成のいずれでもよく、ストッパまたは固定リングは、多数の各種のサイズのこのような水分排出口を多数の各種の数だけ有していてもよい。さらに、本願で開示される具体的な寸法と角度は例にすぎず、その他数多くの寸法または角度のいずれでも使用できる。
【0043】
第一の水分排出口アレイ54は、好ましくは第二の水分排出口アレイ58とフィルタ18と協働し、凍結乾燥工程中にフィルタ18を通じて装置10から殺菌または無菌状態で水分排出するための手段を提供する。ストッパ14と固定リング16が本体12に組み付けられるとき、第一の、つまりリング水分排出口アレイ54は、第二の、つまりストッパ水分排出口アレイ58の上に、ランダムに配置される。図5からわかるように、図に示す本発明の実施例では、第一の水分排出口アレイ54は第二の水分排出口アレイ58より大きな水分排出断面積を有するため、ストッパ水分排出口34はフィルタ18とリング水分排出口46を通じて周辺雰囲気に十分に露出され、チャンバ内の物質が凍結乾燥される。第一の水分排出口アレイ54によって実現する水分排出面積が第二の水分排出口アレイ58のそれより大きいため、全体的な水分排出効果は、第二の水分排出口アレイ58とフィルタ18に関連付けられる水分排出パラメータによって左右される。動作において、昇華中に本体12の中に保持される活性物質から発散される水蒸気は、ストッパ水分排出口34を通ってストッパ14を横切り、その多孔質材料の特性によってフィルタ18を通過し、リング水分排出口46を通じて装置から周辺雰囲気内に出る。必要ならば、本発明の別の態様によれば、フィルタ18は周辺空気またはその他のガスが逆のプロセスによって本体12に侵入できるようにし、それよって不要な水分が本体に侵入するのを防止しながら、本体またはその中のチャンバの内圧と外圧の平衡が略保たれるように、当業者の間で周知の方法で構成されてもよい。フィルタ18は好ましくは、殺菌状態を保持するほか、水分または蒸気、あるいはその好ましくない量の水分または蒸気が本体のチャンバ内に進入し、その中の凍結乾燥された物質を劣化させるのを防止するためのMVTバリアを提供する。上述の水分排出口の配置ならびに、当業者であれば本願の教示から容易にわかるであろうその他の同等の配置を、本発明の装置において、ストッパ14に関する固定リング16の特定の向きに関係なく、ほぼ同じ排出効果を提供するのを容易にする上で利用してもよい。
【0044】
前述のように、装置10は、水分排出口シール20(図4aに示す)を備えていてもよく、このシール20は固定リング16とカバー22の間に据え付けられ、あるいはカバーがない場合は固定リング16に固定される。これにより、シール20はそれぞれ第一と第二の水分排出口アレイ56,58に重なり、水分排出口アレイと周辺雰囲気の間の液密シールを実現する。水分排出口シール20により、凍結乾燥工程中のいつでも、または好ましくは凍結乾燥工程が完了した後に、水分排出口34,46が密閉される。図のように、水分排出口シール20は、その中にストッパ14の再密閉可能な部分30にアクセスできるようにする開口部21を有していてもよい。水分排出口シール20は、本体12または固定リング16の形成に使用される材料を含め、液密シールを実現するための各種の材料のいずれでも作製できる。
【0045】
前述のように、装置10は図1に典型的に示されるカバー22を備えていてもよい。図のように、カバー22は固定リング16の外周と係合し、その出入口52と重なり、これによってストッパ14の露出した再密閉可能部分30を保護するように構成された、ぱちんと外れる、不正開封防止カバーである。カバー22は、圧入式接続によって固定リング16と係合し、カバーの基底部分が固定リング16の環状陥凹部23の中に圧入され、しっかりとこれに固定されるようにすることができる。カバーと固定リングは、一度所定の場所に圧入されたカバーが外れるのを防止するための係合可能なロッキング部材(図示せず)を備えていてもよい。しかしながら、当業者であれば本願の教示からわかるように、現在知られている、あるいは今後知られる数々の異なる接続機構のいずれでも同等に使用でき、これにはたとえば、超音波接合、接着剤、あるいはその他のタイプの機械的接続がある。カバー22はフランジブル部(frangible portion:壊れやすい部分)64を有し、これはカバーに接続され、針貫通可能・レーザ再密閉可能な部分を周辺雰囲気から実質的に密閉する閉鎖位置(図1に示す)と、カバーから外れ、ストッパ14の針貫通可能・レーザ再密閉可能な部分30を露出させる開放位置(図示せず)と、の間で移動できる。カバー22のフランジブル部64は、その下側に環状突起66を有し、これは隣接するストッパ材料30と係合するように圧入され、これによって再密閉可能なストッパの露出部分を密閉するための第三の液密シール62が実現し、その結果これを周辺雰囲気から保護し、有効なMVTバリアを提供する。図の実施例において、カバー22は、カバー22またはそのフランジブル部64のいずれかを壊さなければ装置または本体から外すことができないようにし、これによって不正開封防止機能が提供される。あるいは、カバー22は、超音波接合、接着剤その他、カバーを固定リング16に係合させるのに適当な接続技術によって固定リング16に接続され、一度外されると、カバー22を固定リング15と再係合できないようにしてもよい。
【0046】
したがって、好ましくは、装置10は凍結乾燥対象物質を本体のチャンバ内に注入する前に、前述のように(つまり、シール20または不正開封防止カバー22を用いずに)構成される。次に、このような空の装置10の1つまたは複数が図1に示すように組み立てられ、殺菌され、必要ならば、本願の発明者が共通に所有する、”Method Of Transferring Article, Transfer Pocket And Enclosure”と題する米国特許第5,186,772号または2002年9月10日に出願された、”Transfer Port And Method For Transferring Sterile Items”と題する米国特許出願第10/241,249号による技術に従って運搬されるようにしてもよい。これらの特許および特許出願の各々は、参照によって本願の開示の一部として明確に援用される。
【0047】
密閉された空の殺菌された装置10には、参照によって援用される以下の同時係属中の特許出願と特許において開示された充填機のいずれかによって充填される。たとえば、必要ならば、密閉された空の装置10は、ガンマまたはeビーム光線を利用して装置の殺菌を行い、または事前に殺菌された装置の選択された表面を殺菌してから、針で充填し、レーザで再密閉する充填機内で殺菌できる。密閉され、殺菌された装置10は次に、充填ステーションにおいて針で充填される(充填ステーションは好ましくは、無菌の空気または無菌状態を維持するためのその他のガスの実質的な層流を含む)。必要性または希望に応じて、eビームまたはその他の光線源を使って、ストッパの針貫通可能な領域を充填針またはその他の充填部材と係合させる前にさらに確実に殺菌するために、ストッパの露出された再密閉可能な部分、装置のその他の外表面または充填針を殺菌することができる。たとえば、充填ステーションは、参照によって本願の開示の一部に明確に援用される、本願と同じ譲受人に譲渡された米国特許出願第10/600,525号の中で開示されているものと同じまたは同様のeビームチャンバ内に配置されてもよい。レーザまたはその他の光線源は、希望に応じて、充填前または充填中にストッパまたは針の露出面をスキャンし、あるいはこれに照射するために使用し、さらにこれらの表面の殺菌状態を確実に保つことができる。その結果、充填された装置10にできた針穴は、下記の、本願と同じ譲受人に譲渡された同時係属中の特許出願または特許の中に記載されているものと同じ方法で、またはこれと類似する方法で再密閉でき、下記の特許出願または特許の各々を、参照によって本願の一部に明確に援用する。2004年1月28日出願の、”Medicament Vial Having A Heat-Sealable Cap, And Apparatus and Method For Filling The Vial”と題する米国特許出願第10/766,172号。これは2003年10月27日に出願の同様の題名の米国特許出願第10/694,364号の一部継続出願であり、これは、2003年3月21日出願の同様の題名の同時係属中の米国特許出願第10/393,966号の継続出願であり、これは2001年2月12日出願の同じ題名の米国特許出願第09/781,846号で、現在は2003年8月12に発行された米国特許第6,604,561号として登録されているものの分割出願であり、この特許は2000年2月11日出願の同様の題名の米国特許仮出願第60/182,139号、2003年1月28日出願の同様の題名の米国特許仮出願第60/443,526号、2003年6月30日出願の同様の題名の米国特許仮出願第60/484,204号、2003年9月3日出願の、”Sealed Containers And Methods Of Making And Filling Same”と題する米国特許出願第10/655,455号、2003年11月10日出願の、”Needle Filling An Laser Sealing Station”と題する米国特許仮出願第60/518,685号、2004年3月5日出願の、”Apparatus For Needle Filling And Laser Resealing”と題する米国特許仮出願第60/550,805号、2004年3月8日出願の、”Apparatus And Method For Molding And Assembling Containers With Stoppers And Filling Same”と題する米国特許仮出願第60/551,565号の利益を主張する。
【0048】
充填された装置10の各々は、所定の量の凍結乾燥対象物質を含み、物質と装置の内部の双方が無菌または殺菌状態である。フィルタ18と第一および第二の水分排出口アレイ56,58により、凍結乾燥中にそこから本体12の内側チャンバの水分排出を行い、その一方で、装置10の内部の殺菌または無菌状態を保持することができる。
【0049】
所定の量の凍結乾燥対象物質を含む充填された装置10は次に、当業者にとって周知の一般的な種類の凍結乾燥ステーション(図示せず)の中に設置される。希望に応じて、凍結乾燥ステーションを充填機に動作的に関連付け、装置の殺菌状態を効率的かつ有効に保持してもよい。たとえば、凍結乾燥チャンバ(複数の場合もある)は、針充填およびレーザ再密閉ステーション(複数の場合もある)に沿って配置され、凍結乾燥の直前に、装置に凍結乾燥対象物質を針で充填し、レーザで再密閉されるようにすることができる。希望に応じて、当業者にとって周知の種類の一般的なコンベヤ、たとえば、エンドレススクリュータイプコンベヤ、スターホイールコンベヤ、振動給進コンベヤまたはその他多数のコンベヤのいずれかを使用して、充填された装置を針充填およびレーザ再密閉ステーションから凍結乾燥ステーションに運搬することができる。一度凍結乾燥ステーションに設置されると、装置内に保持される物質に対して凍結乾燥工程が実施される。一般に、凍結乾燥工程の第一のステップは、製品または物質を凍結し、その水分子のすべてを固化することである。凍結後、装置に対して一次および二次乾燥ステージが実行される。一次乾燥ステージにおいて、物質は真空下に置かれ、昇華される(つまり、氷を、まず液相を通過するのではなく、直接水蒸気に変換する)。昇華中に物質から放出される水蒸気は、本発明によれば、水分排出口アレイ56,58およびフィルタ18を通じて装置10から排出され、凍結乾燥真空チャンバ内の回収トラップ(たとえば、復水器(図示せず))上に氷として凝結する。希望に応じて、装置10には、同じチャンバまたは別のチャンバ内で、凍結および乾燥ステージを実行することもできる。
【0050】
多くの場合、物質が安定していると考えられるには、凍結乾燥された物質は、その当初の水分含有量の約3%またはそれ以下を含み、適正に密閉されるべきである。凍結乾燥された物質が約3%より高い水分レベルにさらされるとすぐに、その安定性が損なわれる。多くの場合、適正に凍結乾燥された物質は、その装置またはコンテナを周辺空気に露出させる前に、装置またはコンテナ内に入れて密閉しなければならない。約3%の残留水分またはその他の残留水分レベル未満まで乾燥された凍結乾燥物質は、それ自身の水分レベルより多くを含む環境にさらされると、それが可能なかぎりの水分を吸収し、物質が劣化し、長い保管可能期間、化学的性能の改善、短時間での再溶解等、凍結乾燥物質の好ましい特性のすべてが損なわれる可能性がある。
【0051】
したがって、装置10は好ましくは、液不透過性シールを実現し、本体チャンバの内側と装置の外側の間に適正なMVTバリアを提供する。本発明の1つの実施例において、フィルタ18は、内側チャンバと凍結乾燥物質の殺菌状態を保持する十分なMVTバリアを提供する。別の実施例において、カバー22が固定リング16にしっかりと接続され、あるいはシール20付のカバー22が固定リング16に接続されて、フィルタ18を周囲雰囲気に関して密閉してから、装置が凍結乾燥チャンバまたは、凍結乾燥または充填および凍結乾燥機のその他の殺菌または無菌チャンバの外の雰囲気にさらされるようにする。
【0052】
装置10の1つの利点は、再加圧の前に凍結乾燥機の中に装置を入れて密閉する必要がなくなり、したがって、従来の密閉工程中、ならびにその後の包装、輸送、保管中に遭遇する容認できないほど高く、変化する水分レベルにさらされることによって凍結乾燥物質の安定化された化学的性質を損なうリスクを実質的に低減させ、その結果、再溶解時に高品質の製品が提供される。
【0053】
本発明の装置の別の利点は、凍結乾燥工程中に物質から除去されたガス状水分が、密閉され殺菌された装置から有効に排出される点である。本発明の装置はまた、凍結乾燥中にストッパを本体に部分的に取り付け、その後ストッパおよび場合によっては圧着要素によって本体を閉鎖または密閉するという先行技術で行われる余分な処理ステップが不要となる利点を有する。これにより、凍結乾燥工程中に使用される機械的装置が簡素化され(たとえば、棚段の移動が不要となる)、前述のようにコンテナまたはコンテナストッパと相互作用する棚段に関わる不利な効果を軽減または排除できる点で有利である。さらにまた、本発明により水分排出される装置は、再溶解工程中に内側の装置と周辺雰囲気の間の圧力の平衡を保持しやすくなり、その結果、再溶解工程中にしばしば発生する不要なヘッドスペースに有利な影響を与える(たとえば、最小限にする)ことができる。これで、再溶解された物質を投与するまでに必要な時間が短縮できる。
【0054】
本発明の装置10のもう1つの利点は、殺菌フィルタ18により、カバー22または密閉部材20が外されても、本体の内側チャンバと、したがってその中に含まれる物質が殺菌状態に保たれることである。その結果、装置内の物質が、ストッパ14の針貫通可能な部分30に針を挿入し、希釈剤またはその他の流体をチャンバ内に注入することによって再溶解されると、殺菌フィルタ18は空気等の無菌のガスを装置の内側チャンバに侵入させ、凍結乾燥された物質と希釈剤またはその他の流体を混合しやすくすることができる。図に示す装置10の実施例のまた別の利点は、ストッパ表面36,37によって画定される、円滑な湾曲した内側形状により、凍結乾燥物質のすべてがストッパまたは本体の隅またはその他の領域に堆積せずに、再溶解されやすくなることである。装置10の他の利点は、装置が再溶解物質を複数回分保持し、1回分を(ストッパの貫通可能な領域30から針を挿入し、針から1回分を引き出す等によって)放出した後に装置内に残っている再溶解済みの物質は、殺菌状態に保持される点である。これは、フィルタ18が内側チャンバに流入する空気その他のガスを殺菌し、汚染物質がこれを通って内側チャンバに入るのを防止し、装置がその他の方法で周辺雰囲気に関して密閉され、汚染物質の内側チャンバへの流入が防止されるためである。
【0055】
装置10の本体12は、現在知られている、あるいは今後知られる多くの異なる構成のいずれの形態でもよく、たとえば、バイアル、シリンジ、その他のコンテナまたは供給装置、あるいは本願と共通の譲受人に譲渡された米国特許出願第10/766,1772号、第10/655,455号、第10/600,525号において開示されているコンテナのいずれかとすることができ、これらの特許出願は、参照によって本願の開示の一部に明確に援用される。さらに、本体12は、多数の異なるガラスまたはプラスチック、あるいは薬剤またはその他の凍結乾燥対象物質を保管するのに適した、現在知られている、または今後知られるコンテナの作製に関連して使用される材料のいずれでも作製できる。たとえば、本発明のある実施例では、本体はガラスで作製される。本発明の他の実施例では、本体は、ニュージャージー州サミット(Summit)のティコナ社(Ticona Corp.)によりTOPASの商標で販売されている熱可塑性材料等の熱可塑性材料で作製される。本発明のある実施例においては、そのTOPAS材料は、製品コード、5013,5513,6013,6015,8007のいずれかで販売され、環状オレフィン共重合体または環状ポリオレフィンである。
【0056】
図に示された本発明の実施例において、ストッパ14は、針で穿刺して、これを貫通する針穴を形成できる針貫通領域30を有する熱可塑性材料で形成され、所定の波長または強度のエネルギー(たとえば、レーザ光線)をこれに照射することによって針穴を密閉するように加熱再密閉可能である。ストッパ14は、上方部分と下方部分を有する熱可塑性本体を備える。本体は、(i)その軸方向についての所定の壁厚と、(ii)所定の波長のレーザ光線を実質的に吸収し、その所定の壁厚を光線が通過するのを実質的に防止する所定の色および不透明度と、(iii)所定の波長と強度のレーザ光線が所定の時間内に、実質的に針貫通領域を燃焼させることなく(つまり、材料の分子構造または化学的特性の不可逆的変化を発生させずに)、その針貫通領域に形成された針穴を密閉できるようにするための所定の色と不透明度を画定する。本発明のある実施例において、所定の時間は約2秒以下であり、好ましくは約1.5秒以下であり、最も好ましくは約1秒以下である。これらの実施例のいくつかにおいて、適用されるエネルギーの所定の波長は約980nmであり、各エネルギー源の所定の強度は約30ワット未満、好ましくは約10ワット以下であり、あるいは約8から約10ワットの範囲内である。またこれらの実施例のいくつかにおいて、材料の所定の色はグレーであり、所定の不透明度は、約0.3重量%から約0.6重量%の範囲内の量でストッパの材料に添加されるダークグレーの着色剤(または顔料)によって規定される。
【0057】
上記の熱可塑性材料に加え、熱可塑性材料は、好ましくは、DYNAFLEX G2706−10000−00またはGLS 230−174(Shore A=30)等のKRATONまたはDYNAFLEXの商標のいずれかで販売される材料のようなスチレンブロック共重合体である第一の材料と、好ましくはEXACT 8203またはGLS 230−176(Shore A=42)等のENGAGEまたはEXACTの商標のいずれかで販売される材料のようなオレフィンである第二の材料の混合物でもよい。本発明のある態様において、第一と第二の材料は、重量比約50:50から好ましくは重量比約90:10まで、最も好ましくは重量比約90:5(つまり、第一の材料:第二の材料)までの範囲内で混合される。第一の材料のみの場合に対する好ましい混合物の利点は、水または蒸気のバリア特性の改善と、したがって製品の保管寿命の改善、加熱密閉性の改善、摩擦係数の低減、成形性または型流れ速度(mold flow rate)の改善、ヒステリシス損失の低減である。
【0058】
ストッパ14の重要な特徴は、これが針、シリンジ等の注入部材を挿入した後に貫通領域の液密シールを形成するように再密閉可能であることである。好ましくは、再密閉可能な部分は、後述のように針で穿刺された領域を加熱することによって密閉できる。前述の混合重合体の1つの利点は、KRATON(登録商標)またはDYNAFLEX(登録商標)のいずれかのみの場合と比較して、凍結乾燥対象となる薬剤その他の物質が重合体の中に吸収される程度を低くすることが知られている点である。
【0059】
あるいは、本発明のストッパの熱可塑性材料は、イリノイ州マッケンリー(McHenry)のGLS社によりLC 254−071の名称で販売されるスチレンブロック共重合体の形態をとることができる。この種のスチレンブロック共重合体化合物は、だいたい以下のような物性を有する。(i)Shore(ショア) A硬度:約28−29、(ii)比重:約0.89g/cm、(iii)色:ほぼグレーないしダークグレー、(iv)流れの方向についての300%モジュラス(300% Modulus):約181−211psi、(v)流れの方向についての引張破断強度:約429−498psi、(vi)流れ方向についての引張破断伸び:約675%−708%、(vii)流れ方向についての引裂強度:約78−81 lbf/in。
【0060】
上記の実施例の各々において、熱可塑性物質の所定の色と不透明度は、約3%のカラー濃縮物(color concentrate)(つまり、濃縮物対天然樹脂またはTPEの比が約33:1)で提供されるグレー着色剤によって規定される。カラー濃縮物は、約88.83%のキャリアまたは基礎樹脂(base resin)を含み、残りは顔料で、顔料はグレーカーボンブラックである。したがって、顔料は最終的な熱可塑性物質の約0.34重量%である。
【0061】
さらに、希望に応じて、当業者にとって周知の種類の潤滑油を上記の熱可塑性化合物の各々に添加し、または含めることで、針またはその他の充填部材による熱可塑性部分の針貫通領域の穿刺および抜去中の粒子形成を防止または削減するようにしてもよい。ある実施例において、潤滑油は鉱油であり、スチレンブロック共重合体またはその他の熱可塑性化合物に、これを針またはその他の充填部材で貫通したときの粒子形成を防止する、あるいは実質的に防止するのに十分な量だけ添加される。別の実施例では、潤滑油はダウ・コーニング社により“360 Medical Fluid,350 CST”として販売される液体シリコン等のシリコン、あるいはシリコンオイルであり、スチレンブロック共重合体またはその他の熱可塑性化合物に、針またはその他の充填部材の穿刺および抜去中の粒子形成を防止する、または実質的に防止するのに十分な量で添加される。このような実施例の1つにおいて、シリコンオイルは、約0.4重量%から約1重量%の範囲、好ましくは約0.4から約0.6重量%の範囲、最も好ましくは約0.51または約0.5重量%の範囲の量で含められる。
【0062】
他の実施例によれば、針貫通可能、レーザ再密閉可能なストッパは、(i)約80重量%から約97重量%の範囲内(たとえば、上述のように約95%)の上記のスチレンブロック共重合体のようなスチレンブロック共重合体と、(ii)約3重量%から約20重量%の範囲(たとえば、上述のように約5%)のエチレンアルファオレフィン、ポリオレフィンまたは上述のオレフィン等のオレフィンと、(iii)好ましくは約2秒未満、更に好ましくは約1.5秒未満、最も好ましくは約1秒未満の時間内に針穴の深さの少なくとも約1/3から約1/2に相当する深さまでレーザエネルギーを吸収し、光線を熱に変換し、ストッパ材料を溶融するのに十分な量で添加される顔料または着色剤と、(iv)ストッパへの針穿刺中に針とストッパの界面での摩擦力を実質的に低減させ、それによって粒子形成を実質的に防止するのに十分な量で添加される前述のような鉱油、液体シリコン、またはシリコンオイル等の潤滑油を含有する。
【0063】
好ましくは、粒子形成を削減または排除するように上記のパラメータの1つまたは複数を管理することに加え(つまり、熱可塑性化合物にシリコンオイルまたはその他の潤滑油を含有させ、あるいは針の形状、針とストッパの界面の摩擦の程度、またはストッパを通じた針のストローク(stroke)を制御する)、ストッパの熱可塑性コンポーネントの異なる伸びが、粒子形成を減少させ、または排除するように選択される。
【0064】
以上のように、針貫通可能、レーザ再密閉可能なストッパは、(i)約80重量%から約97重量%の範囲内の、第一の伸びを示す第一の熱可塑性材料と、(ii)約3重量%から約20重量%の範囲内の、第一の材料の伸びより小さい第二の伸びを示す第二の熱可塑性材料と、(iii)約2秒未満、好ましくは約1.5秒未満、最も好ましくは約1秒未満の時間内に、針穴の深さの少なくとも約1/3から約1/2に相当する深さまでレーザエネルギーを吸収し、光線を熱に変換し、ストッパ材料を溶解するのに十分な量で添加される顔料または着色剤と、(iv)ストッパへの針穿刺中に針とストッパの界面における摩擦力を実質的に低減させ、したがって実質的に粒子形成を防止するのに十分な量で添加される前述のような鉱油、液体シリコンまたはシリコンオイル等の潤滑油を含有する。
【0065】
この装置の1つの実施例において、第一の材料は、第二の材料より低い融点(またはビカット軟化温度)を有する。このような実施例の1つにおいて、第一の材料は上記のスチレンブロック共重合体のいずれかのようなスチレンブロック共重合体であり、第二の材料はエチレンアルファオレフィン、ポリオレフィンまたは上記のオレフィン等のオレフィンである。また、このような実施例の1つにおいて、第一の材料は10 lbs(ポンド)の力で少なくとも約75%の伸び(つまり、10 lbsの力がかけられたときに長さが約75%伸びる)、好ましくは少なくとも約85%、最も好ましくは少なくとも約90%の伸びを実現し、第二の材料は、10 lbsの力で少なくとも約5%、好ましくは少なくとも約10%、最も好ましくは少なくとも約15%または約15%から約25%の範囲内の伸びを実現する。上記の材料に関して、10 lbsの力でのそれぞれの伸びはほぼ次のようになる。(1)GLS 230−176(Shore A=42)−14.35%から16.42%、(2)Exact 8203(Shore A=40)−17.87%から19.43%、(3)GLS 230−174(Shore A=30)−81.67%から83%(約9から9.5lbsの力)、(4)Dynaflex G2706(Shore A=30)−76.85%から104.95%。さらに、Engage 8400のビカット軟化点または温度は約41℃、Exact 8203は約51℃である。
【0066】
本発明のストッパを貫通するのに用いられる針は、好ましくは円錐状に尖ったノンコアリング (non-coring)チップ(先端)を有し(つまり、「鉛筆の先端」状の頂点)を有し、頂点の断面の挟角は約15°から約25°、好ましくは約18°から約22°、最も好ましくは約20°である。滑らかで、先端が鋭く、漸増する角度を有する針先により、ストッパ貫通時に針穴を比較的円滑に、徐々に広げることができる。さらに、好ましい熱可塑性材料の混合物の復元力により、そこから針を引き抜くときに、針穴は自力でだいたい閉じ、密閉のためのレーザビームの衝突に必要な面積が削減され、サイクルタイムが短縮される。その上、これはさらに、針による充填とレーザ再密閉の間に本体の内部が汚染される可能性が低減する。希望に応じて、ストッパの表面をTeflonTMで被覆するか、あるいは低摩擦材料で被覆し、針とストッパの界面における摩擦、ひいては粒子形成をさらに削減することができる。針先はさらに、針の両側に相互に関して軸方向に長く延びる形のフローアパーチャ(開口)を有する。ある実施例において、針は約15ゲージ(つまり、直径約0.072インチ)である。
【0067】
希望に応じて、針とストッパの界面は、その間の摩擦の程度を低下するように処理され、針のストローク(刺す動作、給進)中の粒子形成をさらに低減することができる。ある実施例において、針はタングステンカーバイドカーボンで被覆される。別の実施例において、針は電解研磨ステンレススチールである。他の実施例では、針はTeflonTMで被覆される(ただし、この実施例では、タングステンカーバイドカーボンで被覆する実施例より、針とストッパの界面での摩擦力が大きくなる可能性がある)。また別の実施例において、針はチタンで被覆され、針とストッパの界面での摩擦が軽減される。さらに、ある実施例において、針の給進深度は粒子形成をさらに減少させるように設定される。このような実施例の1つにおいて、針のストロークの最下位置においては、針のフローアパーチャは、ストッパの底面壁から下に間隔をあけて配置されており、底面壁に隣接あるいは接触している(つまり、各穴の上流側の端は、ストッパの底面の壁の内側面に隣接する)。このような実施例の1つにおいて、針先はストッパの底面壁の内側面を越えて、約1から約5cmの範囲内、好ましくは約1から約3cmの範囲、最も好ましくは約1.5センチメートルの深度まで貫通する。
【0068】
当業者であれば本願の教示からわかるように、ストッパまたは装置の本体もしくはその他のコンポーネントを構成するのに用いられるポリマ化合物の具体的な調合は、収着(吸収と吸着の両方)および気化水分透過率(MVT)等の所望の物性を得るために、希望に応じて変更できる。たとえば、ストッパの壁厚は、改良またはその他調整されたMVTバリア(障壁)を提供するために、増大その他の調整が施される。この代わりに、またはこのような対策とともに、熱可塑性化合物を構成するための成分の混合は、装置内に収容される予定の特定の製品との所望の吸着レベルを満たし、または所望のMVT特性を実現するために希望に応じて変更してもよい。またさらに、可溶性または不溶解性材料の複数の層を利用する装置のある実施例において、異なる材料の相対的な厚さを調整することで、ストッパのMVT特性を調整できる。さらに、または上記の対策のいずれかとともに、カバーは固定リング16と協働し、周辺雰囲気に関してストッパを密閉し、これによって装置のMVT特性を改善することができる。当業者であれば本願の教示からわかるように、上記の数と材料は例にすぎず、特定のシステムにおける希望またはその他の必要性に応じて変更できる。
【0069】
本発明の好ましい実施例の1つの利点は、ストッパの再密閉可能な部分が物質を装置内に入れてから再密閉できる点である。したがって、本発明の利点は、装置の全ての構成要素を熱可塑性材料またはその他のプラスチック材料で成形でき、その結果、先行技術と比較して格段に安全で、殺菌された、パイロジェン(発熱物質)を含まない装置またはコンテナの製造が容易となる点である。たとえば、ストッパと本体は、横並びに(あるいは相互に近接させて)設置された機械の中で成形でき、この場合、各成形機械は層流フードの下に設置される(あるいは両方の機械を同じ層流フードの下に設置される)。その後、たとえば、複数のストッパが複数のコンテナ本体と(またはその逆に)係合状態とされる適当な組立装置あるいはピック・アンド・プレース(pick-and-place:対象物をつまみ上げてどこかに置く)ロボットによって層流フードの下で成形された直後に(また、まだ高温であるうちに、または殺菌温度で)、ストッパがそれぞれの本体に組み付けられ、密閉される。その結果、密閉された装置の内部は、成形直後に、実質的に汚染の危険性を伴わずに殺菌され、パイロジェンを含まない状態となる。
【0070】
図6では、本発明の別の凍結乾燥装置の実施例の全体が参照番号110で示されている。装置110は、図1から5に関して先に説明した装置と略同じであるため、先頭に数字“1”をつけた類似の参照番号は同様の要素を示すのに用いられている。前述のように装置110との比較した場合の装置10の主な相違点は、本体112が、その中に凍結乾燥物質を受けるための比較的狭い基底部分113と、凍結乾燥物質を再溶解するための希釈剤またはその他の液体を受けるための拡大された上方部分115を有する。図の実施例において、本体112は円柱形であるため、基底部分113の直径は上方部分115より小さい。しかしながら、当業者であれば本願の開示からわかるように、本体は正方形または長方形のように、さまざまな他の断面形状のいずれを有していてもよい。この実施例の1つの利点は、装置が先行技術の凍結乾燥バイアル内で形成されるものと同じまたは類似の凍結乾燥物質の「塊」を受け、これを形成することができ、その一方で希釈剤を受け、装置10のフィルタと水分排出口アレイを収容することが可能な拡大された上方領域を有する点である。希望に応じて、本体12の基底部分は、117の破線によって示されるような円滑な底部を有するようにし、凍結乾燥チャンバの中に入れた場合に、装置の下にエアポケットが形成されるのを防止できる。
【0071】
これまで、各種の実施例を参照しながら本発明を説明したが、ここに定義する本発明の精神から逸脱することなく、さまざまな変更や改変を加えることができることは自明である。さらに、本発明は、さまざまな用途において、さまざまな方法で活用できるものである。たとえば、装置は、現在知られている、あるいは今後知られる、凍結乾燥された物質を受け、または分注するための、たとえばバイアル、シリンジおよびその他の供給装置またはコンテナの多種多様な形状、構成または種類とすることができる。さらに、ストッパまたはその他の針貫通可能、レーザ再密閉可能な部分は、多数の異なる材料または材料の組み合わせで作製でき、各種の形状または構成のいずれとしてもよく、現在知られている、あるいは今後知られる個々の装置の特徴の多数の異なる部分のいずれを形成してもよい。またさらに、装置で用いられるフィルタ(複数の場合もある)は、数々の異なる形状または構成のいずれでもよく、また現在知られている、あるいは今後知られる各種の材料のいずれでも形成できる。上記に加え、本発明の装置において物質を凍結乾燥するために使用される凍結乾燥工程または機器は、現在知られている、あるいは今後知られる多数の異なる凍結乾燥工程または機器のいずれの形態をとってもよい。同様に、凍結乾燥対象物質も、たとえば、各種の医薬用製品、ワクチン、生物由来物質、食料品、飲料、栄養補助食品、化粧品等を含め、現在凍結乾燥されている、あるいは今後凍結乾燥される多数の異なる物質のいずれの形態をとってもよい。したがって、本発明の現時点で好ましい実施例についてのこの詳細な説明は、限定的な意味ではなく、例として解釈されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】装置内に針で凍結乾燥対象物質を充填するための針貫通可能、レーザ再密閉可能なストッパと、充填された物質の凍結乾燥中に装置から流体を流出させるためのフィルタを備える、本発明による凍結乾燥装置の実施例の断面図である。
【図2A】図1の装置の針貫通可能、レーザ再密閉可能なストッパの断面図である。
【図2B】図2Aのストッパの底面平面図である。
【図2C】図2Aのストッパの上面平面図である。
【図3A】図1の装置のフィルタの平面図である。
【図3B】図3Aのフィルタの断面図である。
【図4A】図1の装置の固定リングと、固定リングとカバーとの間に設置され、フィルタと内側チャンバを周辺雰囲気に関して密閉する任意の密閉部材の断面図である。
【図4B】図4Aの固定リングの底面平面図である。
【図4C】図4Aの固定リングの上面平面図である。
【図5】図1の装置の水分排出口パターンの例の概略図であって、ストッパ水分排出口パターンに重ねられる固定リング水分排出口パターンを示す図である。
【図6】凍結乾燥物質をその中に受ける比較的狭い基底部分と、凍結乾燥物質を再溶解するための希釈剤またはその他の流体を受けるための拡張された上方部分を有する本体を含む、本発明による凍結乾燥装置の別の実施例の断面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
物質を凍結乾燥し、凍結乾燥された物質をその中に保管するために用いられる装置であって、装置は凍結乾燥対象物質を注入するために針によって貫通され、その結果として装置にできた針穴はレーザ源からそこにレーザ光線を伝送することによってレーザにより再密閉可能であり、この装置は、
その中に凍結乾燥対象物質を受けるためのチャンバを有する本体と、
針から凍結乾燥対象物質をチャンバに充填するための針穴を形成するように針で穿刺可能であり、またそこにレーザ光線を照射することによって針穴を気密状態に密閉するようにレーザ再密閉可能である針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分と、
チャンバの内側と外側の間に流体連通状態で接続できるフィルタであって、当該フィルタを通ってチャンバの内側から外側の方向に流体が流れるようにし、当該フィルタを通ってチャンバの外側から内側の方向に汚染物質が流れるのを実質的に防止するフィルタと、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項2】
請求項1に記載の装置であって、
さらに、本体に連結され、針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分をそこに固定するための固定部材を備えることを特徴とする装置。
【請求項3】
請求項2に記載の装置であって、
針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分は、少なくとも1つの第一の水分排出用開口部を有し、固定部材は少なくとも1つの第一の水分排出用開口部と流体連通する少なくとも1つの第二の水分排出用開口部を有し、フィルタがその間に設置されることを特徴とする装置。
【請求項4】
請求項3に記載の装置であって、
針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分は相互に角度方向に離間された複数の第一の水分排出用開口部を有し、固定部材は相互に角度方向に離間された複数の第二の水分排出用開口部を有し、少なくとも複数の第二の水分排出用開口部は第一の水分排出用開口部の各々と流体連通することを特徴とする装置。
【請求項5】
請求項4に記載の装置であって、
第一の水分排出用開口部はこれを通って流体を流すための第一の通水断面積を有し、第二の水分排出用開口部はこれを通って流体を流すための第二の通水断面積を有し、第二の通水断面積は第一の通水断面積より大きいことを特徴とする装置。
【請求項6】
請求項4に記載の装置であって、
第一の水分排出用開口部は水分排出用開口部の第一の環状アレイを有し、第二の水分排出用開口部は水分排出用開口部の第二の環状アレイを有することを特徴とする装置。
【請求項7】
請求項6に記載の装置であって、
第一の環状アレイは第一の内径と第一の外径を有し、第二の環状アレイは第二の内径と第二の外径を有し、第二の外径は第一の外径と略等しいか、これより大きく、第二の内径は第一の内径と略等しいか、これより小さいことを特徴とする装置。
【請求項8】
請求項4に記載の装置であって、
少なくとも複数の第一の水分排出用開口部は、針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分の中の固定部材に関して実質的にどのような角度方向位置においても、あるいは固定部材の中の針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分に関して実質的にどのような角度方向位置においても、第二の水分排出用開口部の各々と流体連通していることを特徴とする装置。
【請求項9】
請求項1に記載の装置であって、
本体は、バイアル、コンテナ、シリンジのうちの少なくとも1つの形態であり、針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分はストッパによって画定されることを特徴とする装置。
【請求項10】
請求項2に記載の装置であって、
フィルタは針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分と固定部材の間に設置されることを特徴とする装置。
【請求項11】
請求項10に記載の装置であって、
フィルタは、(i)針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分にしっかりと固定されるか、(ii)針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分と固定部材の間に機械的に接続されるかの少なくとも一方であることを特徴とする装置。
【請求項12】
請求項11に記載の装置であって、
フィルタは、約0.05ミクロンから約5ミクロンの範囲内の孔径分布を有する多孔質材料を含むことを特徴とする装置。
【請求項13】
請求項12に記載の装置であって、
フィルタの材料は疎水性であることを特徴とする装置。
【請求項14】
請求項2に記載の装置であって、
さらに、固定部材、本体、針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分のうちの少なくとも1つに接続され、針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分の露出部分を覆うカバーを備えることを特徴とする装置。
【請求項15】
請求項14に記載の装置であって、
カバーは針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分と周辺雰囲気との間の実質的に液密シールを形成し、これを通じた水分と蒸気の透過に対するバリアを形成することを特徴とする装置。
【請求項16】
請求項15に記載の装置であって、
カバーは、カバーに接続され、針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分を周辺雰囲気から実質的に密閉する閉鎖位置と、カバーから外れ、針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分の少なくとも一部を露出させる開放位置との間で移動可能なフランジブル部を備えることを特徴とする装置。
【請求項17】
請求項1に記載の装置であって、
さらに、フィルタの上に重なり、フィルタを周辺雰囲気から密閉する密閉部材を備えることを特徴とする装置。
【請求項18】
請求項17に記載の装置であって、
さらに、固定部材、本体、針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分のうちの少なくとも1つに接続されるカバーを備え、それらの間に密閉部材が設置されていることを特徴とする装置。
【請求項19】
請求項18に記載の装置であって、
密閉部材はカバーの下側に固定されることを特徴とする装置。
【請求項20】
請求項1に記載の装置であって、
針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分は、その軸方向についての所定の壁厚を有し、針穴を、そこに所定の波長と強度のレーザ光線を照射することによって気密状態に密閉するようレーザ再密閉可能であり、針の穿刺および抜去中に針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分からチャンバ内に放出される粒子形成を実質的に防止する熱可塑性材料を含み、熱可塑性材料は、この熱可塑性材料が所定の波長のレーザ光線を実質的に吸収し、光線がその所定の壁厚を通過するのを実質的に防止し、所定の時間内にその針貫通領域に形成された針穴を気密状態に密閉することを可能にする所定の量の顔料を含むことを特徴とする装置。
【請求項21】
請求項20に記載の装置であって、
熱可塑性材料は、約3重量%から20重量%の範囲内のオレフィンと約80重量%から約97重量%の範囲内のスチレンブロック共重合体と潤滑油を含有することを特徴とする装置。
【請求項22】
請求項20に記載の装置であって、
熱可塑性材料は、(i)約80重量%から約97重量%の範囲内の量の、第一の伸びを規定する第一のポリマ材料と、(ii)約3重量%から約20重量%の範囲内の量の、第一の材料の第一の伸びより小さい第二の伸びを規定する第二のポリマ材料と、(iii)針と本体の界面における摩擦力を低減させる量の潤滑油を含有することを特徴とする装置。
【請求項23】
請求項22に記載の装置であって、
第一の材料はスチレンブロック共重合体であり、第二の材料はオレフィンであることを特徴とする装置。
【請求項24】
請求項20に記載の装置であって、
所定の量の顔料は、約0.3重量%から約0.6重量%の範囲内であることを特徴とする装置。
【請求項25】
請求項1に記載の装置であって、
針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分は、所定の物質と化学的互換性を有する材料で形成された基礎部分であって装置内の所定の物質にさらされる物質露出表面を有する基礎部分と、基礎部分の上に重なり、所定の物質をそこから装置内に注入するために針で貫通可能な再密閉可能な部分と、を含むことを特徴とする装置。
【請求項26】
請求項25に記載の装置であって、
基礎部分の貫通可能領域は、レーザ源からの光線の照射に反応して実質的に不溶解性であり、再密閉可能な部分の貫通可能領域は、レーザ源からの光線の照射に反応して可溶性であることを特徴とする装置。
【請求項27】
物質を凍結乾燥し、その中に凍結乾燥された物質を保管するために用いられる装置であって、装置は凍結乾燥対象物質を装置に充填するために針で貫通可能であり、その結果として装置にできた針穴はレーザ源からレーザ光線をそこに照射することによってレーザ再密閉可能であり、装置は、
その中に凍結乾燥対象物質を受けるための無菌室を形成するための第一の手段と、
それを貫通する針穴を形成し、針から無菌室に凍結乾燥対象物質を充填するために針を穿刺し、針穴をそこにレーザ光線を照射することによって気密状態に密閉するようにレーザ再密閉するための第二の手段と、
無菌室の内側と外側の間に流体連通状態に接続可能で、そこを通って無菌室の内側から外側に流体が流れるようにし、そこを通って無菌室の外側から内側に流れる汚染物質を除去し、これを実質的に防止するための第三の手段と、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項28】
請求項27に記載の装置であって、
第一の手段はその中にチャンバを有する装置の本体であり、第二の手段は、針で穿刺し、針から凍結乾燥対象物質をチャンバに充填する針穴を形成するために針で貫通可能で、針穴をそこにレーザ光線を照射することによって気密状態に密閉するようにレーザ再密閉可能な針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分であり、第三の手段は、チャンバの内側と外側の間に流体連通状態に接続され、これを通じてチャンバの内側から外側の方向に流体が流れるようにし、これを通じてチャンバの外側から内側の方向に汚染物質が流れるのを実質的に防止するフィルタであることを特徴とする装置。
【請求項29】
請求項27に記載の装置であって、
さらに、第二の手段を第一の手段にしっかりと固定するための第三の手段と、
第二の手段と第三の手段のうちの少なくとも1つを覆うための第四の手段と、
を備えることを特徴とする装置。
【請求項30】
請求項29に記載の装置であって、
第三の手段は第一の手段に連結され、第二の手段をこれに固定するための固定部材であり、第四の手段は第一の手段、第二の手段、第三の手段のうちの少なくとも1つに接続され、第二の手段の露出部分を覆うカバーであることを特徴とする装置。
【請求項31】
装置に凍結乾燥対象物質を充填し、装置内で物質を凍結乾燥し、凍結乾燥された物質を装置内に保管する方法であって、
チャンバと、チャンバと流体連通する針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分を有する装置を設けるステップと、
針先で針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分を穿刺し、針のフローアパーチャを装置のチャンバと流体連通させるようにするステップと、
針から装置のチャンバ内へと凍結乾燥対象物質を注入するステップと、
針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分から針を引き抜くステップと、
チャンバ内で物質を凍結乾燥し、凍結乾燥中にチャンバから流体を流出させ、凍結乾燥中にチャンバへの汚染物質の流入を防止するステップと、
針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分の針貫通領域にレーザ源からレーザ光線を伝送し、針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分に形成された針穴を気密状態に密閉するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項32】
請求項31に記載の方法であって、
装置を設けるステップはさらに、チャンバの内側と外側の間で流体連通するフィルタを備える装置を設けるステップを含み、凍結乾燥するステップは、チャンバ内で物質を凍結乾燥するステップと、凍結乾燥中にフィルタを通じてチャンバから流体を流出させるステップと、凍結乾燥中にフィルタを通じてチャンバの中に汚染物質が流入するのを防止するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項33】
請求項31に記載の方法であって、
光線を伝送するステップは、凍結乾燥するステップの前に行われることを特徴とする方法。
【請求項34】
請求項31に記載の方法であって、
凍結乾燥は、チャンバ内で物質を凍結させるステップと、装置を真空下に置き、昇華によってチャンバから氷を除去するステップと、その後チャンバ内の温度を上昇させ、チャンバ内の物質から残留水分を脱離させるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項35】
請求項32に記載の方法であって、
さらに、チャンバ内で物質を凍結乾燥するステップの後に、フィルタとチャンバを周辺雰囲気に関して密閉するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項36】
請求項31に記載の方法であって、
さらに、チャンバを殺菌するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項37】
請求項36に記載の方法であって、
殺菌するステップは、針からチャンバに凍結乾燥対象物質を注入する前に行われることを特徴とする方法。
【請求項38】
請求項36に記載の方法であって、
殺菌するステップは、チャンバに(i)ガンマ光線を照射するステップと、(ii)eビーム光線を照射するステップと、(iii)レーザ光線を照射するステップの中から選択されることを特徴とする方法。
【請求項39】
請求項31に記載の方法であって、
さらに、針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分と針のうちの少なくとも1つを、針の穿刺および抜去中にチャンバ内に放出される粒子形成を実質的に防止するように構成するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項40】
請求項39に記載の方法であって、
構成するステップは、スチレンブロック共重合体とオレフィンを含む熱可塑性材料による針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分を設けるステップと、針と針貫通可能かつレーザ再密閉可能な部分の界面に潤滑油を供給するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項41】
請求項39に記載の方法であって、
構成するステップは、(i)約80重量%から約97重量%の範囲内の量の、第一の伸びを示す第一のポリマ材料と、(ii)約3重量%から約20重量%の範囲内の量の、第一の材料の第一の伸びより小さい第二の伸びを示す第二のポリマ材料と、(iii)針と針貫通可能、レーザ再密閉可能な部分との界面における摩擦力を低減させる量の潤滑油を含む熱可塑性材料の針貫通可能、レーザ再密閉可能な部分を提供するステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項42】
請求項5に記載の装置であって、
少なくとも複数の第一の水分排出用開口部は第一の鋭角で相互に対して角度方向に離間され、少なくとも複数の第二の水分排出用開口部は第一の鋭角より大きい第二の鋭角で相互に対して角度方向に離間されていることを特徴とする装置。

【図1】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2009−534689(P2009−534689A)
【公表日】平成21年9月24日(2009.9.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−507794(P2009−507794)
【出願日】平成19年4月24日(2007.4.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/010100
【国際公開番号】WO2007/127286
【国際公開日】平成19年11月8日(2007.11.8)
【出願人】(503129855)メディカル・インスティル・テクノロジーズ・インコーポレイテッド (15)
【Fターム(参考)】