説明

釣り用リールのハンドル把手

【課題】釣り用リールのハンドル把手において、筒状部、第1把手本体及び第2把手本体の3つの部材が即座に分解するのを防止する。
【解決手段】ハンドル把手23は、把手軸の外周側に回転自在に装着された筒状部31と、筒状部31の外周部に装着固定された把手部32とを有している。筒状部31は、外周部に形成された第1被係合部31c及び第2被係合部31dを有している。把手部32は、第1把手本体33及び第2把手本体34の内周部に形成され、第1把手本体33及び第2把手本体34を筒状部31の外周部に装着固定したときに第1被係合部31c及び第2被係合部31dに係合可能な第1係合部33f及び第2係合部34fを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドル把手、特に、釣り用リールのハンドルアームの先端に固定された把手軸に回転自在に装着されるハンドル把手に関する。
【背景技術】
【0002】
スピニングリールや、両軸受リール等の釣り用リールのハンドル軸の先端には、ハンドル組立体が固定されている。ハンドル組立体は、ハンドル軸の先端に回転不能に装着されたハンドルアームと、ハンドルアームの先端に回転不能に固定された把手軸と、把手軸に回転自在に装着されたハンドル把手とを有している。このようなハンドル把手は、把手軸に回転自在に支持された筒状部と、筒状部の外周を覆うように設けられた略柱状の把手部とを有している。
【0003】
このようなハンドル把手では、ハンドル把手を軽量化するために、把手部をたとえばエラストマー等の合成樹脂やコルク等を加工し、筒状部の外周部全体にわたって接着固定したものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−98991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来のハンドル把手は、把手部は合成樹脂やコルク等によって形成されているので、ハンドル把手を軽量化することができるが、把手部は筒状部の外周部全体にわたって設けられているので、把手部の内周部の厚みだけ重量がかかってしまう。
【0006】
そこで、ハンドル把手をさらに軽量化するために、たとえば、2つの合成樹脂製の半割り形状の第1把手本体及び第2把手本体を設け、2つの第1把手本体及び第2把手本体を筒状部の外周部に装着したときに、第1把手本体及び第2把手本体の側部が互いに接合して接着固定するように3つの部材で構成することが考えられる。ここでは、2つの合成樹脂製の半割り形状の第1把手本体及び第2把手本体を設けることによって、ハンドル把手をさらに軽量化することができる。
【0007】
しかし、2つの第1把手本体及び第2把手本体を筒状部の外周部に装着するハンドル把手では、第1把手本体及び第2把手本体は、第1把手本体及び第2把手本体の側部が互いに接合して接着固定されているだけであるので、接合面の接着剤が剥離すると、筒状部、第1把手本体及び第2把手本体の3つの部材が即座に分解してしまうおそれが生じる。
【0008】
本発明の課題は、釣り用リールのハンドル把手において、筒状部、第1把手本体及び第2把手本体の3つの部材が即座に分解するのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明1に係る釣り用リールのハンドル把手は、釣り用リールのハンドルアームの先端に固定された把手軸に回転自在に装着されるハンドル把手であって、筒状部と、把手部とを備えている。筒状部は、把手軸の外周側に回転自在に装着された筒状の部材であり、外周部に形成された第1被係合部及び第2被係合部を有している。把手部は、筒状部の外周部に装着固定され、第1把手本体及び第2把手本体と、第1係合部と、第2係合部とを有している。第1把手本体及び第2把手本体は、筒状部の外周部に装着固定したとき互いに接合可能に設けられている。第1係合部は、第1把手本体の内周部に形成され第1把手本体を筒状部の外周部に装着固定したときに第1被係合部に係合可能である。第2係合部は、第2把手本体の内周部に形成され第2把手本体を筒状部の外周部に装着固定したときに第2被係合部に係合可能である。
【0010】
このハンドル把手は、筒状部、2つの第1把手本体及び第2把手本体からなる3つの部材によって構成されている。このハンドル把手は、筒状部の外周部には、第1被係合部及び第2被係合部が形成され、第1把手本体及び第2把手本体の内周部には、第1把手本体及び第2把手本体を筒状部の外周部に装着固定したときに第1被係合部及び第2被係合部に係合可能な第1係合部及び第2係合部が形成されている。ここでは、筒状部の第1被係合部及び第2被係合部に第1把手本体及び第2把手本体の第1係合部及び第2係合部が係合しているので、第1把手本体及び第2把手本体の接合面の接着剤が剥離したとしても、筒状部、2つの第1把手本体及び第2把手本体からなる3つの部材が即座に分解するのを防止することができる。
【0011】
発明2に係るハンドル把手は、発明1のハンドル把手において、第1把手本体及び第2把手本体は、筒状部の外周部の先端部から基端部に向かう方向に沿って接合するように形成されている。第1被係合部及び第2被係合部は、筒状部の外周部の先端部から基端部に向かう方向に沿って突出して形成されている。第1係合部及び2係合部は、第1把手本体及び第2把手本体の内周部が第1被係合部及び第2被係合部に係合可能に溝状に凹んで形成されている。この場合、第1被係合部及び第2被係合部は、筒状部の外周部の先端部から基端部に向かう方向、すなわち、第1把手本体及び第2把手本体の接合方向(分解方向)と交差する方向に沿って形成されているので、筒状部、第1把手本体及び第2把手本体の3つの部材が即座に分解するのをさらに防止することができる。
【0012】
発明3に係るハンドル把手は、発明1又は2のハンドル把手において、第1被係合部及び第2被係合部は、筒状部の複数箇所に形成されている。第1係合部及び2係合部は、複数の第1被係合部及び第2被係合部に係合可能に第1把手本体及び第2把手本体の複数箇所に形成されている。この場合、筒状部の第1被係合部及び第2被係合部と、第1把手本体及び第2把手本体の第1係合部及び第2係合部との係合が強固になる。
【0013】
発明4に係るハンドル把手は、発明1から3のいずれかのハンドル把手において、筒状部、第1把手本体及び第2把手本体は、合成樹脂製である。この場合、第1把手本体及び第2把手本体を軽量化できる。
【0014】
発明5に係るハンドル把手は、発明1から4のいずれかのハンドル把手において、第1把手本体及び第2把手本体は、接着剤により筒状部に接着固定されている。この場合、第1把手本体及び第2把手本体と、筒状部との固定が容易になる
発明6に係るハンドル把手は、発明1から5のいずれかのハンドル把手において、釣り用リールは、スピニングリールである。この場合、スピニングリールのハンドル把手において、筒状部、2つの第1把手本体及び第2把手本体からなる3つの部材が即座に分解するのを防止することができる。
【0015】
発明7に係るハンドル把手は、発明1から5のいずれかのハンドル把手において、釣り用リールは、両軸受リールである。この場合、両軸受リールのハンドル把手において、筒状部、2つの第1把手本体及び第2把手本体からなる3つの部材が即座に分解するのを防止することができる。
【0016】
発明8に係るハンドル把手は、発明1から5のいずれかのハンドル把手において、釣り用リールは、片軸受リールである。この場合、片軸受リールのハンドル把手において、筒状部、2つの第1把手本体及び第2把手本体からなる3つの部材が即座に分解するのを防止することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、釣り用リールのハンドル把手において、筒状部の外周部には、第1被係合部及び第2被係合部が形成され、第1把手本体及び第2把手本体の内周部には、第1把手本体及び第2把手本体を筒状部の外周部に装着固定したときに第1被係合部及び第2被係合部に係合可能な第1係合部及び第2係合部が形成されているので、第1把手本体及び第2把手本体の接合面の接着剤が剥離したとしても、筒状部、2つの第1把手本体及び第2把手本体からなる3つの部材が即座に分解するのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態を採用した両軸受リールの斜視図。
【図2】前記両軸受リールの平面一部破断図。
【図3】前記両軸受リールのハンドル把手の第1把手本体の横断面拡大図。
【図4】前記第1把手本体の斜視図。
【図5】前記ハンドル把手の斜視図。
【図6】前記ハンドル把手の軸方向の断面図。
【図7】他の実施形態の図6に相当する図。
【図8】他の実施形態の図6に相当する図。
【図9】本発明の他の実施形態を採用したスピニングリールの断面図。
【図10】本発明の他の実施形態を採用した片軸受リールの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の一実施形態を採用した両軸受リールは、図1及び図2に示すように、ベイトキャスト用のロープロフィール型のリールである。この両軸受リールは、リール本体1と、リール本体1の側方に配置されたスプール回転用のハンドル組立体2と、リール本体1の内部に回転自在かつ着脱自在に装着された糸巻き用のスプール12とを備えている。ハンドル組立体2のリール本体1側には、ドラグ調整用のスタードラグ3が設けられている。
【0020】
リール本体1は、フレーム5と、フレーム5の両側方に装着された第1側カバー6a及び第2側カバー6bとを有している。また、リール本体1は、フレーム5の前方を覆う前カバー7と、上部を覆うサムレスト8とを有している。フレーム5は、左右に所定の間隔をあけて互いに対向するように配置された1対の第1側板5a及び第2側板5bと、これらの第1側板5a及び第2側板5bを連結する図示しない複数の連結部とを有している。フレーム5は、下側の連結部に設けられた図示しない竿装着部により釣竿に装着可能である。
【0021】
リール本体1の内部には、釣竿と交差する方向に配置されたスプール12と、スプール12に釣り糸を均一に巻き取るための図示しないレベルワインド機構と、ハンドル組立体2の回転をスプールに伝達する図示しない回転伝達機構とが配置されている。回転伝達機構には、ハンドル組立体2が先端に装着されたハンドル軸20と、ハンドル組立体2の回転をスプール12に伝達、遮断(オン、オフ)する図示しないクラッチ機構と、図示しないドラグ機構とが設けられている。ハンドル軸20は、リール本体1にハンドル軸20の回転軸回りに回転自在に支持されている。フレーム5の後部には、クラッチ機構をオン、オフ操作するとともに、サミングの当てとなるクラッチレバー17が揺動自在に装着されている。
【0022】
ハンドル組立体2は、図2に示すように、ハンドル軸20の先端に回転不能に装着されたハンドルアーム21と、ハンドルアーム21の両端に固定された把手軸22と、把手軸22に回転自在かつ軸方向移動不能に装着されたハンドル把手23とを有している。ハンドルアーム21は、ハンドル軸20の先端に回転不能に装着された座金24と、座金24に2本のビス25によりねじ止めされハンドル軸20の径方向両外方に延びる板状のアーム部26とを有している。
【0023】
座金24は、両端が円形の変形菱形形状、たとえばステンレス合金等の金属製の板状部材である。座金24は、ハンドル軸20の先端部周面に平行に形成された面取り部20aに係合する小判孔24aを中心部に有しており、これによりハンドル軸20に回転不能に係止される。座金24は、ハンドル軸20の先端に装着されたナット部材27によりハンドル軸20に固定されている。座金24の両端は、アーム部26側に折れ曲がっている。この折れ曲がった両端にビス25が装着されアーム部26を取り付けている。このように両端を折り曲げることでビス25の頭部が外方に向くため、アーム部26を着脱する際にビス25を回しやすくなる。
【0024】
アーム部26は、リール本体1側の内側面とリール本体1と逆側の外側面とが滑らかな曲線で構成された、たとえばアルミニウム合金等の金属製の板状の部材であり、中心部が両端部より肉厚が厚く膨らんでいる。内側面の中心部には、ナット部材27を回転不能に係止するための回り止め穴26aが形成されている。回り止め穴26aの周囲及び長手方向両側には、座金24を内側面と面一に収納するための収納凹部26bが形成されている。この収納凹部26bの輪郭は、座金24の外形と略同一である。アーム部26の外側面両端には、図3に示すように、リール本体1から離れる方向に突出する円筒状のボス部26cが形成されている。ボス部26cの中心部には、把手軸22をねじにより固定するための第1ねじ穴26dが形成されている。第1ねじ穴26dは、ハンドル軸20の回転軸と実質的に平行な回転軸に沿って形成されかつボス部26cの軸方向外方側にのみ開口するねじ穴であり、そこにはハンドル組立体2の巻き取り方向の回転と同じ右ねじが形成されている。このため、ボス部26cは袋ナット状に構成され、アーム部26の内側面には貫通孔や突出部等が形成されない。しかも、ハンドル組立体2を巻き取り方向に回転させても把手軸22が緩みにくい。
【0025】
把手軸22は、図3に示すように、ハンドル軸20の回転軸と実質的に平行な回転軸に沿って配置された、たとえばステンレス合金等の金属製の軸であり、基端に他の部分より小径の雄ねじ部22aが形成され、他端面に第2ねじ穴22bが形成されている。また、雄ねじ部22aに隣接して他の部分より大径の工具係止部22cが形成されている。雄ねじ部22aは、第1ねじ穴26dに螺合しており、この螺合により把手軸22がアーム部26に固定される。工具係止部22cの外周面には、スパナ等の工具を係止可能な平行な面取り部22dが形成されている。把手軸22の工具係止部22cに隣接した外周部と先端外周部とには、軸受30a、軸受30bが配置されている。この軸受30a、軸受30bによりハンドル把手23が把手軸22に回転自在に支持される。軸受30bは、第2ねじ穴22bに装着されたボルト部材28により軸方向移動不能に装着されている。このボルト部材28は、軸受30bを介してハンドル把手23を把手軸22に対して抜け止めしている。
【0026】
ハンドル把手23は、図3から図6に示すように、把手軸22の外周側に回転自在に装着された筒状の筒状部31と、筒状部31の外周部に装着固定された把手部32とを有している。
【0027】
筒状部31は、図3及び図6に示すように、把手軸22の外周側に配置され内部を把手軸22が貫通する筒状の本体部31aと、本体部31aの先端部の開口に形成された係止孔31bと、本体部31aの外周部に形成された第1被係合部31c及び第2被係合部31dとを有している。筒状部31は、ポリアセタールやポリアミド樹脂等の硬質樹脂製である。本体部31aの内周には、図3に示すように、軸受30a、軸受30bが装着されており、この軸受30a、軸受30bによって把手軸22に対して筒状部31が回転自在となっている。
【0028】
本体部31aの先端部の開口は、図3に示すように、有底筒状かつ硬質樹脂製の蓋部材35により閉塞されている。蓋部材35は、筒状部31の本体部31a後端の内周部に装着される筒状の筒状部35aを有している。筒状部35aは、前端部外周に径方向外方に突出する環状の係止部35bが形成されており、筒状部31の本体部31aの先端内周部に凹んで形成された係止孔31bに係止部35bを係止することによって、蓋部材35の筒状部35aを筒状部31の本体部31aに固定している。なお、蓋部材35の筒状部35aの外径は、筒状部31の本体部31aの内径と略同一となるように形成されており、蓋部材35の筒状部35aの前端部側外周に周方向に沿って形成された図示しない複数のスリットによって蓋部材35の筒状部35aが内周部側に伸縮することによって、蓋部材35の筒状部35aを筒状部31の本体部31aに装着することが可能である。蓋部材35は、ハンドル把手23を把手軸22にボルト部材28により装着した後、筒状部31の本体部31aの先端に装着固定される。
【0029】
第1被係合部31cは、図3及び図6に示すように、後述する把手部32の第1把手本体33に形成された第1係合部33fが係合する突出部分である。第1被係合部31cは、筒状部31の外周部の先端部から基端部に向かう方向に沿って突出して形成されている。第1被係合部31cは、図6に示すように、筒状部31の上下2箇所に対称となる位置に形成されている。
【0030】
第2被係合部31dは、図6に示すように、後述する把手部32の第2把手本体34に形成された第2係合部34fが係合する突出部分である。第2被係合部31dは、筒状部31の外周部の先端部から基端部に向かう方向に沿って突出して形成されている。第2被係合部31dは、図6に示すように、筒状部31の上下2箇所に対称となる位置に形成されている。上下の第2被係合部31dは、それぞれ上下の第1被係合部31cと対称となる位置に形成されている。
【0031】
把手部32は、図3及び図4に示すように、把手軸22の回転軸に沿った方向の長さが把手軸22の回転軸の径方向に沿った長さより長い扁平棒状の部材である。把手部32は、軟質塩化ビニル(PVC)等の軽量樹脂製である。把手部32は、図1及び図2に示すように、把手軸22の回転軸方向の中心部分が狭まった形状であり、その対向する主面に把手軸22の回転軸方向に沿って滑らかに内側に湾曲したつまみ面が形成されている。つまみ面は、つまんだときに右手の手の指先にフィットするように変形矩形状に形成されている。
【0032】
把手部32は、図3から図6に示すように、把手軸22を挟んで両側に対称となるように別体で設けられた2つの半割り形状の第1把手本体33及び第2把手本体34と、第1把手本体33に形成された第1係合部33fと、第2把手本体34に形成された第2係合部34fとを有している。
【0033】
第1把手本体33及び第2把手本体34は、図5及び図6に示すように、筒状部31の外周部に装着固定したとき互いに接合可能に設けられている。第1把手本体33及び第2把手本体34は、筒状部31の外周部の先端部から基端部に向かう方向に沿って接合するように形成されている。第1把手本体33及び第2把手本体34は、接着剤により筒状部31に接着固定されている。
【0034】
第1把手本体33は、図3から図6に示すように、内部に空洞部を有する本体部33aと、本体部33aの基端側(図3、図4左側)が略半円形状に開口する基端開口部33bと、本体部33aの先端側(図3、図4右側)が略半円形状に開口する先端開口部33cと、基端開口部33bと先端開口部33cと間にほぼ等間隔に4箇所形成された板状部33dとを有している。基端開口部33b及び4箇所の板状部33dは、図4及び図5に示すように、筒状部31が装着される略半円形状の切り欠きからなる装着部33eと、装着部33eの上下2箇所に形成され筒状部31の上下2箇所に形成された第1被係合部31cに係合する上下2箇所の合計10箇所の第1係合部33fとが形成されている。
【0035】
第1係合部33fは、図3から図6に示すように、第1把手本体33の内周部に形成され、第1把手本体33を筒状部31の外周部に装着固定したときに第1被係合部31cに係合可能である。第1係合部33fは、第1把手本体33の内周部が第1被係合部31cに係合可能に溝状に凹んで形成されている。第1被係合部31cは、筒状部31の外周部の先端部から基端部に向かう方向、すなわち、第1把手本体33及び第2把手本体34の接合方向(分解方向)と交差する方向に沿って形成されている。
【0036】
第2把手本体34は、図5及び図6に示すように、内部に空洞部を有する本体部34aと、本体部34aの基端側が略半円形状に開口する基端開口部34bと、本体部34aの先端側が略半円形状に開口する先端開口部34cと、基端開口部34bと先端開口部34cと間にほぼ等間隔に4箇所形成された板状部34dとを有している。基端開口部34b及び4箇所の板状部34dは、図5に示すように、筒状部31が装着される略半円形状の切り欠きからなる装着部34eと、装着部34eの上下2箇所に形成され筒状部31の上下2箇所に形成された第2被係合部31dに係合する上下2箇所の合計10箇所の第2係合部34fとが形成されている。第2把手本体34は、第1係合部33fとの接合面に対して対称となる形状になるように形成されている。
【0037】
第2係合部34fは、図5及び図6に示すように、第2把手本体34の内周部に形成され、第2把手本体34を筒状部31の外周部に装着固定したときに第2被係合部31dに係合可能である。第2係合部34fは、第2把手本体34の内周部が第2被係合部31dに係合可能に溝状に凹んで形成されている。第2被係合部31dは、筒状部31の外周部の先端部から基端部に向かう方向、すなわち、第1把手本体33及び第2把手本体34の接合方向(分解方向)と交差する方向に沿って形成されている。
【0038】
また、第1把手本体33の外周面には、図5及び図6に示すように、第1把手本体33と第2把手本体34との接合面が、第1把手本体33及び第2把手本体34の面一な外周面より1段凹んで形成された上下2箇所の溝部33gが形成されている。溝部33gは、第1把手本体33と第2把手本体34との接合面に沿って形成された溝であって、第1把手本体33と第2把手本体34の外周面にソフトタッチ塗料を塗布した場合でも、第1把手本体33と第2把手本体34との接合面に溝部33gを設けることによって塗料のひびや第1把手本体33と第2把手本体34との接合面の段差が目立ちにくくなる。
【0039】
このようなハンドル把手23を組み立てるには、筒状部31の外周面、第1把手本体33の装着部33e、第2把手本体34の装着部34e、第1把手本体33と第2把手本体34との接合面に接着剤を塗布した状態で、筒状部31の第1被係合部31cの突出部に第1係合部33fの溝部を係合するように第1把手本体33を筒状部31に装着し、同時に、筒状部31の第2被係合部31dの突出部に第2係合部34fの溝部を係合するように第2把手本体34を筒状部31に装着し、第1把手本体33と第2把手本体34との接合面を合わせることによって、筒状部31に第1把手本体33及び第2把手本体34を接着固定する。
【0040】
このように構成されたハンドル組立体2では、ハンドルアーム21のアーム部26の両端に軸方向外方にのみ開口する第1ねじ穴26dを形成し、第1ねじ穴26dに把手軸22を螺合させて固定しているので、アーム部26の内側面に突出部がなくなり、この内側面に釣り糸が引っかかりにくくなり絡みにくくなる。また、座金24をハンドル軸20に固定し、その座金24にアーム部26を固定してハンドルアーム21を構成しているので、アーム部26の外側面も滑らかな形状にすることができ、外側面でも釣り糸が絡みにくくなる。しかも、座金24をアーム部26の収納凹部26bに収納して内側面から突出しないようにしているので、アーム部26の内側面の中心部での引っかかりも少なくなる。
【0041】
次にリールの動作について説明する。
【0042】
キャスティング時には、クラッチレバー17によりクラッチ機構を離脱状態にしてスプール12を自由回転状態にする。この状態で釣竿をキャスティングすると、ルアーの自重によりルアーが前方に飛行しスプール12から釣り糸が繰り出される。このとき、バックラッシュ現象が発生すると糸ふけが生じ、釣り糸がリール本体1の後部から飛び出しハンドル組立体2に引っかかろうとする。しかし、前述したように、アーム部26の内側面に突出部がないので釣り糸が引っかかりにくくなりアーム部26に絡みにくくなる。
【0043】
ルアーが着水すると、所定のタイミングでハンドル組立体2を僅かに巻き取り方向に回転させ、クラッチ機構を係合状態にする。するとスプール12が繰り出し方向への回転が停止する。この状態でハンドル組立体2を回したり釣竿を上下動させてルアーを泳がせて当たりを待つ。魚がルアーに掛かるとハンドル組立体2を巻き取り方向に回転させて魚を取り込む。このようにハンドル組立体2を巻き取り方向に回転させても、把手軸22が巻き取り方向と同方向のねじにより固定されているので、把手軸22が緩みにくい。
【0044】
このようなハンドル把手23では、筒状部31の外周部には、第1被係合部31c及び第2被係合部31dが形成され、第1把手本体33及び第2把手本体34の内周部には、第1把手本体33及び第2把手本体34を筒状部31の外周部に装着固定したときに第1被係合部31c及び第2被係合部31dに係合可能な第1係合部33f及び第2係合部34fが形成されている。ここでは、筒状部31の第1被係合部31c及び第2被係合部31dに第1把手本体33及び第2把手本体34の第1係合部33f及び第2係合部34fが係合しているので、第1把手本体33及び第2把手本体34の接合面の接着剤が剥離したとしても、筒状部31、2つの第1把手本体33及び第2把手本体34からなる3つの部材が即座に分解するのを防止できる。
【0045】
〔他の実施形態〕
(a) 前記実施形態では、両軸受リールを例にあげて説明したが、図9に示すスピニングリールや、図10に示す片軸受リール等の他形式の釣り用リールのハンドルつまみにも本発明を適用できる。また、ハンドルつまみは、ダブルハンドルのものに限定されず、シングルハンドルのものにも本発明を適用できる。
【0046】
本発明の他の実施形態を採用したスピニングリールは、図9に示すように、ハンドル組立体101と、ハンドル組立体101を回転自在に支持するリール本体102と、ロータ103と、図示しないスプールとを備えている。ハンドル組立体101は、リール本体102の両側部の一方側に交換可能に装着されている。ロータ103は、リール本体102の前部に回転自在に支持されている。スプールは、釣り糸を外周面に巻き取るものであり、ロータ103の前部に前後移動自在に配置されている。
【0047】
ハンドル組立体101は、ハンドル軸110の先端に装着されるハンドルアーム121と、ハンドルアーム121の先端に装着されたハンドル把手123とを備えている。ハンドル把手123は、ハンドルアーム121の先端にかしめ固定された把手軸122に回転自在に装着されている。ハンドル把手123は、把手軸122に回転自在かつ軸方向移動不能に装着される筒状部131と、筒状部131の外周に回転不能に装着固定された把手部132とを有している。
【0048】
なお、ハンドル把手123の構成は、前記実施形態の図番に100を加えたものと同様であるので、詳細な説明は省略する。ここでは、スピニングリールのハンドル把手123においても、前記実施形態と同様に、筒状部131の第1被係合部131c及び第2被係合部131dに第1把手本体133及び第2把手本体134の第1係合部133f及び第2係合部134fが係合しているので、第1把手本体133及び第2把手本体134の接合面の接着剤が剥離したとしても、筒状部131、2つの第1把手本体133及び第2把手本体134からなる3つの部材が即座に分解するのを防止できる。
【0049】
本発明の他の実施形態を採用した片軸受リールは、図10に示すように、リール本体201と、リール本体201に片持ち支持されたスプール軸202と、スプール軸202に対して相対回転自在に配置され外周に釣り糸が巻かれるスプール203とを備えている。スプール203は、筒状の糸巻胴部215と、糸巻胴部215の一端部に糸巻胴部215と一体で形成された円板状の内フランジ216と、糸巻胴部215の他端部にリール本体201の開放部を覆うように装着された外フランジ217とを有している。外フランジ217の外面で外周近くにはハンドル把手223が取り付けられている。ハンドル把手223は、外フランジ217に立設された把手軸222に回転自在に装着されている。ハンドル把手223は、把手軸222に回転自在かつ軸方向移動不能に装着される筒状部231と、筒状部231の外周に回転不能に装着固定された把手部232とを有している。
【0050】
なお、ハンドル把手223の構成は、前記実施形態の図番に200を加えたものと同様であるので、詳細な説明は省略する。ここでは、片軸受リールのハンドル把手223においても、前記実施形態と同様に、筒状部231の第1被係合部231c及び第2被係合部231dに第1把手本体233及び第2把手本体234の第1係合部233f及び第2係合部234fが係合しているので、第1把手本体233及び第2把手本体234の接合面の接着剤が剥離したとしても、筒状部231、2つの第1把手本体233及び第2把手本体234からなる3つの部材が即座に分解するのを防止できる。
【0051】
(b) 前記実施形態では、第1把手本体33の外周面には、第1把手本体33と第2把手本体34との接合面が、第1把手本体33及び第2把手本体34の面一な外周面より1段凹んで形成された上下2箇所の溝部33gが形成されていたが、図7に示すように、第2把手本体34の外周面に、第1把手本体33と第2把手本体34との接合面が、第1把手本体33及び第2把手本体34の面一な外周面より1段凹んで形成された上下2箇所の溝部34gを形成してもよい。また、図8に示すように、第1把手本体33及び第2把手本体34の外周面に、第1把手本体33と第2把手本体34との接合面が、第1把手本体33及び第2把手本体34の面一な外周面より1段凹んで形成された上下2箇所の合計4箇所の溝部33g及び溝部34gを形成してもよい。なお、溝部33g及び溝部34gは第1把手本体33と第2把手本体34との接合面に対して対称となるように形成されている。ここでは、前記実施形態と同様に、第1把手本体33と第2把手本体34との接合面に溝部34gや溝部33g及び溝部34gを設けることによって塗料のひびや第1把手本体33と第2把手本体34との接合面の段差が目立ちにくくなる。
【符号の説明】
【0052】
1 リール本体
2 ハンドル組立体
3 スタードラグ
5 フレーム
5a 第1側板
5b 第2側板
6a 第1側カバー
6b 第2側カバー
7 前カバー
8 サムレスト
12 スプール
17 クラッチレバー
20 ハンドル軸
20a 面取り部
21 ハンドルアーム
22 把手軸
22a 雄ねじ部
22b 第2ねじ穴
22c 工具係止部
22d 面取り部
23 ハンドル把手
24 座金
24a 小判孔
25 ビス
26 アーム部
26a 回り止め穴
26b 収納凹部
26c ボス部
26d 第1ねじ穴
27 ナット部材
28 ボルト部材
30a 軸受
30b 軸受
31 筒状部
31a 本体部
31b 係止孔
31c 第1被係合部
31d 第2被係合部
32 把手部
33 第1把手本体
33a 本体部
33b 基端開口部
33c 先端開口部
33d 板状部
33e 装着部
33f 第1係合部
33g 溝部
34 第2把手本体
34a 本体部
34b 基端開口部
34c 先端開口部
34d 板状部
34e 装着部
34f 第2係合部
34g 溝部
35 蓋部材
35a 筒状部
35b 係止部
101 ハンドル組立体
102 リール本体
103 ロータ
110 ハンドル軸
121 ハンドルアーム
122 把手軸
123 ハンドル把手
131 筒状部
131c 第1被係合部
131d 第2被係合部
132 把手部
133 第1把手本体
133f 第1係合部
134 第2把手本体
134f 第2係合部
201 リール本体
202 スプール軸
203 スプール
215 糸巻胴部
216 内フランジ
217 外フランジ
222 把手軸
223 ハンドル把手
231 筒状部
231c 第1被係合部
231d 第2被係合部
232 把手部
233 第1把手本体
233f 第1係合部
234 第2把手本体
234f 第2係合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り用リールのハンドルアームの先端に固定された把手軸に回転自在に装着されるハンドル把手であって、
前記把手軸の外周側に回転自在に装着された筒状の筒状部と、
前記筒状部の外周部に装着固定され、前記筒状部の外周部に装着固定したとき互いに接合可能に設けられた第1把手本体及び第2把手本体を有する把手部とを備え、
前記筒状部は、外周部に形成された第1被係合部及び第2被係合部を有しており、
前記把手部は、前記第1把手本体の内周部に形成され前記第1把手本体を前記筒状部の外周部に装着固定したときに前記第1被係合部に係合可能な第1係合部と、前記第2把手本体の内周部に形成され前記第2把手本体を前記筒状部の外周部に装着固定したときに前記第2被係合部に係合可能な第2係合部とをさらに有している、釣り用リールのハンドル把手。
【請求項2】
前記第1被係合部及び前記第2被係合部は、前記筒状部の外周部の先端部から基端部に向かう方向に沿って突出して形成されており、
前記第1係合部及び前記2係合部は、前記第1把手本体及び前記第2把手本体の内周部が前記第1被係合部及び前記第2被係合部に係合可能に溝状に凹んで形成されている、請求項1に記載の釣り用リールのハンドル把手。
【請求項3】
前記第1被係合部及び前記第2被係合部は、前記筒状部の複数箇所に形成されており、
前記第1係合部及び前記2係合部は、複数の前記第1被係合部及び前記第2被係合部に係合可能に前記第1把手本体及び前記第2把手本体の複数箇所に形成されている、請求項1又は2に記載の釣り用リールのハンドル把手。
【請求項4】
前記筒状部、前記第1把手本体及び前記第2把手本体は、合成樹脂製である、請求項1から3のいずれか1項に記載の釣り用リールのハンドル把手。
【請求項5】
前記第1把手本体及び前記第2把手本体は、接着剤により前記筒状部に接着固定されている、請求項1から4のいずれか1項に記載の釣り用リールのハンドル把手。
【請求項6】
前記釣り用リールは、スピニングリールである、請求項1から5のいずれか1項に記載の釣り用リールのハンドル把手。
【請求項7】
前記釣り用リールは、両軸受リールである、請求項1から5のいずれか1項に記載の釣り用リールのハンドル把手。
【請求項8】
前記釣り用リールは、片軸受リールである、請求項1から5のいずれか1項に記載の釣り用リールのハンドル把手。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2013−9599(P2013−9599A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142495(P2011−142495)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】