説明

釣り用リールのハンドル把手

【課題】釣り用リールのハンドル把手において、把手部の内周部に空洞部が形成された合成樹脂製部材の外周部にカバー部材をインサート成形できるようにする。
【解決手段】インサート部材34は、筒状部31と、筒状部31の先端側が開口する空洞部33と、空洞部33の外周側に形成された把手部32とを有し、カバー部材35は、開口から空洞部33に金型を装着した状態で把手部32の外周部にインサート成形されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドル把手、特に、釣り用リールのハンドルアームの先端に固定された把手軸に回転自在に装着されるハンドル把手に関する。
【背景技術】
【0002】
スピニングリールや、両軸受リール等の釣り用リールのハンドル軸の先端には、ハンドル組立体が固定されている。ハンドル組立体は、ハンドル軸の先端に回転不能に装着されたハンドルアームと、ハンドルアームの先端に回転不能に固定された把手軸と、把手軸に回転自在に装着されたハンドル把手とを有している。このようなハンドル把手は、把手軸に回転自在に支持された筒状部と、筒状部の外周を覆うように設けられた略柱状の把手部とを有している。
【0003】
このようなハンドル把手では、ハンドル把手を軽量化するために、把手部をたとえばエラストマー等の合成樹脂やコルク等を加工し、筒状部の外周部全体にわたって接着固定したものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−98991号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来のハンドル把手は、把手部は合成樹脂やコルク等によって形成されているので、ハンドル把手を軽量化することができるが、把手部は筒状部の外周部全体にわたって設けられているので、把手部の内周部の厚みだけ重量がかかってしまう。
【0006】
そこで、ハンドル把手をさらに軽量化するために、たとえば、筒状部と把手部とが一体成形された合成樹脂製部材に空洞部を成形加工することが考えられる。ここでは、把手部の内周部に空洞部を形成することによって、ハンドル把手をさらに軽量化することができる。
【0007】
しかし、把手部の内周部に空洞部が形成された合成樹脂製部材の外周部にインサート成形によって合成樹脂製のカバー部材を形成しようとすると、インサート成形の成形圧によって空洞部が潰れ、把手部が破損してしまうおそれが生じる。
【0008】
本発明の課題は、釣り用リールのハンドル把手において、把手部の内周部に空洞部が形成された合成樹脂製部材の外周部にカバー部材をインサート成形できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明1に係る釣り用リールのハンドル把手は、釣り用リールのハンドルアームの先端に固定された把手軸に回転自在に装着されるハンドル把手であって、インサート部材を備えている。インサート部材は、筒状部と、空洞部と、把手部とを有している。筒状部は、把手軸の外周側に回転自在に装着される筒状の部材である。空洞部は、筒状部の外周側に形成され、筒状部の先端側が開口している。把手部は、筒状部の基端部と一体成形され、空洞部の外周側に形成されている。
【0010】
このハンドル把手は、インサート部材を有している。インサート部材は、筒状部と、筒状部の先端側が開口する空洞部と、空洞部の外周側に形成された把手部とを有している。ここでは、インサート部材の外周部にカバー部材をインサート成形するとき、開口から空洞部に金型を装着した状態で把手部の外周部にインサート成形することができるので、インサート成形の成形圧によって空洞部が潰れることがなくなり、把手部が破損することもなくなる。したがって、把手部の内周部に空洞部が形成されたインサート部材の外周部にカバー部材をインサート成形することができる。
【0011】
発明2に係るハンドル把手は、発明1のハンドル把手において、インサート部材は、成型加工により形成された合成樹脂製の部材である。この場合、金属製のインサート成形に比して、ハンドル把手をさらに軽量化できる。
【0012】
発明3に係るハンドル把手は、発明1又は2のハンドル把手において、把手部の外周部にインサート成形により形成された合成ゴム製のカバー部材をさらに備えている。この場合、合成ゴムによってカバー部材を薄く形成できるので、ハンドル把手をさらに軽量化できる。
【0013】
発明4に係るハンドル把手は、発明3のハンドル把手において、空洞部は、複数の金型を装着可能な複数の開口を有している。この場合、空洞部の容量を大きくできるので、ハンドル把手をさらに軽量化できる。
【0014】
発明5に係るハンドル把手は、発明3又は4のハンドル把手において、把手部は、外周部から空洞部に連通する複数の溝部を有している。カバー部材は、把手部の外周部及び複数の溝部の内部にインサート成形される。この場合、把手部に複数の溝部を設けることによって、ハンドル把手をさらに軽量化できる。
【0015】
発明6に係るハンドル把手は、発明1から5のいずれかのハンドル把手において、釣り用リールは、スピニングリールである。この場合、スピニングリールのハンドル把手において、把手部の内周部に空洞部が形成されたインサート部材の外周部にカバー部材をインサート成形することができる。
【0016】
発明7に係るハンドル把手は、発明1から5のいずれかのハンドル把手において、釣り用リールは、両軸受リールである。この場合、ス両軸受リールのハンドル把手において、把手部の内周部に空洞部が形成されたインサート部材の外周部にカバー部材をインサート成形することができる。
【0017】
発明8に係るハンドル把手は、発明1から5のいずれかのハンドル把手において、釣り用リールは、片軸受リールである。この場合、片軸受リールのハンドル把手において、把手部の内周部に空洞部が形成されたインサート部材の外周部にカバー部材をインサート成形することができる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、釣り用リールのハンドル把手において、インサート成形は、筒状部と、筒状部の先端側が開口する空洞部と、空洞部の外周側に形成された把手部とを有し、カバー部材は、開口から空洞部に金型を装着した状態で把手部の外周部にインサート成形されているので、把手部の内周部に空洞部が形成されたインサート部材の外周部にカバー部材をインサート成形することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の一実施形態を採用した両軸受リールの斜視図。
【図2】前記両軸受リールの平面一部破断図。
【図3】前記両軸受リールのハンドル把手の横断面拡大図。
【図4】前記ハンドル把手のインサート部材の斜視図。
【図5】前記ハンドル把手の縦断面拡大図。
【図6】前記ハンドル把手を形成する工程を示すフローチャート。
【図7】本発明の他の実施形態を採用したスピニングリールの断面図。
【図8】本発明の他の実施形態を採用した片軸受リールの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態を採用した両軸受リールは、図1及び図2に示すように、ベイトキャスト用のロープロフィール型のリールである。この両軸受リールは、リール本体1と、リール本体1の側方に配置されたスプール回転用のハンドル組立体2と、リール本体1の内部に回転自在かつ着脱自在に装着された糸巻き用のスプール12とを備えている。ハンドル組立体2のリール本体1側には、ドラグ調整用のスタードラグ3が設けられている。
【0021】
リール本体1は、フレーム5と、フレーム5の両側方に装着された第1側カバー6a及び第2側カバー6bとを有している。また、リール本体1は、フレーム5の前方を覆う前カバー7と、上部を覆うサムレスト8とを有している。フレーム5は、左右に所定の間隔をあけて互いに対向するように配置された1対の第1側板5a及び第2側板5bと、これらの第1側板5a及び第2側板5bを連結する図示しない複数の連結部とを有している。フレーム5は、下側の連結部に設けられた図示しない竿装着部により釣竿に装着可能である。
【0022】
リール本体1の内部には、釣竿と交差する方向に配置されたスプール12と、スプール12に釣り糸を均一に巻き取るための図示しないレベルワインド機構と、ハンドル組立体2の回転をスプールに伝達する図示しない回転伝達機構とが配置されている。回転伝達機構には、ハンドル組立体2が先端に装着されたハンドル軸20と、ハンドル組立体2の回転をスプール12に伝達、遮断(オン、オフ)する図示しないクラッチ機構と、図示しないドラグ機構とが設けられている。ハンドル軸20は、リール本体1にハンドル軸20の回転軸回りに回転自在に支持されている。フレーム5の後部には、クラッチ機構をオン、オフ操作するとともに、サミングの当てとなるクラッチレバー17が揺動自在に装着されている。
【0023】
ハンドル組立体2は、図2に示すように、ハンドル軸20の先端に回転不能に装着されたハンドルアーム21と、ハンドルアーム21の両端に固定された把手軸22と、把手軸22に回転自在かつ軸方向移動不能に装着されたハンドル把手23とを有している。ハンドルアーム21は、ハンドル軸20の先端に回転不能に装着された座金24と、座金24に2本のビス25によりねじ止めされハンドル軸20の径方向両外方に延びる板状のアーム部26とを有している。
【0024】
座金24は、両端が円形の変形菱形形状、たとえばステンレス合金等の金属製の板状部材である。座金24は、ハンドル軸20の先端部周面に平行に形成された面取り部20aに係合する小判孔24aを中心部に有しており、これによりハンドル軸20に回転不能に係止される。座金24は、ハンドル軸20の先端に装着されたナット部材27によりハンドル軸20に固定されている。座金24の両端は、アーム部26側に折れ曲がっている。この折れ曲がった両端にビス25が装着されアーム部26を取り付けている。このように両端を折り曲げることでビス25の頭部が外方に向くため、アーム部26を着脱する際にビス25を回しやすくなる。
【0025】
アーム部26は、リール本体1側の内側面とリール本体1と逆側の外側面とが滑らかな曲線で構成された、たとえばアルミニウム合金等の金属製の板状の部材であり、中心部が両端部より肉厚が厚く膨らんでいる。内側面の中心部には、ナット部材27を回転不能に係止するための回り止め穴26aが形成されている。回り止め穴26aの周囲及び長手方向両側には、座金24を内側面と面一に収納するための収納凹部26bが形成されている。この収納凹部26bの輪郭は、座金24の外形と略同一である。アーム部26の外側面両端には、図3に示すように、リール本体1から離れる方向に突出する円筒状のボス部26cが形成されている。ボス部26cの中心部には、把手軸22をねじにより固定するための第1ねじ穴26dが形成されている。第1ねじ穴26dは、ハンドル軸20の回転軸と実質的に平行な回転軸に沿って形成されかつボス部26cの軸方向外方側にのみ開口するねじ穴であり、そこにはハンドル組立体2の巻き取り方向の回転と同じ右ねじが形成されている。このため、ボス部26cは袋ナット状に構成され、アーム部26の内側面には貫通孔や突出部等が形成されない。しかも、ハンドル組立体2を巻き取り方向に回転させても把手軸22が緩みにくい。
【0026】
把手軸22は、図3に示すように、ハンドル軸20の回転軸と実質的に平行な回転軸に沿って配置された、たとえばステンレス合金等の金属製の軸であり、基端に他の部分より小径の雄ねじ部22aが形成され、他端面に第2ねじ穴22bが形成されている。また、雄ねじ部22aに隣接して他の部分より大径の工具係止部22cが形成されている。雄ねじ部22aは、第1ねじ穴26dに螺合しており、この螺合により把手軸22がアーム部26に固定される。工具係止部22cの外周面には、スパナ等の工具を係止可能な平行な面取り部22dが形成されている。把手軸22の工具係止部22cに隣接した外周部と先端外周部とには、軸受30a、軸受30bが配置されている。この軸受30a、軸受30bによりハンドル把手23が把手軸22に回転自在に支持される。軸受30bは、第2ねじ穴22bに装着されたボルト部材28により軸方向移動不能に装着されている。このボルト部材28は、軸受30bを介してハンドル把手23を把手軸22に対して抜け止めしている。
【0027】
ハンドル把手23は、図3から図5に示すように、把手軸22の外周側に回転自在に装着された筒状の筒状部31と、筒状部31の外周側に形成され筒状部31の先端側が開口する空洞部33と、筒状部31の基端部と一体成形され空洞部33の外周側に形成された把手部32とを有するインサート部材34と、開口から空洞部33に金型を装着した状態で把手部32の外周部にインサート成形により形成された合成樹脂製のカバー部材35とを有している。
【0028】
インサート部材34は、図3から図5に示すように、成型加工により筒状部31と把手部32とが一体成形されたポリアセタールやポリアミド樹脂等の硬質樹脂製の部材である。インサート部材34は、把手軸22の外周側に回転自在に装着された筒状の筒状部31と、筒状部31の外周側に形成され筒状部31の先端側が開口する空洞部33と、筒状部31の基端部と一体成形され空洞部33の外周側に形成された把手部32とを有している。
【0029】
筒状部31は、図3から図5に示すように、把手軸22の外周側に配置され内部を把手軸22が貫通する筒状の部材である。筒状部31の内周には、図3に示すように、軸受30a、軸受30bが装着されており、この軸受30a、軸受30bによって把手軸22に対して筒状部31が回転自在となっている。
【0030】
把手部32は、図3から図5に示すように、把手軸22の回転軸に沿った方向の長さが把手軸22の回転軸の径方向に沿った長さより長い扁平棒状の部材である。把手部32は、成型加工により筒状部31と一体成形されている。把手部32は、図1から図5に示すように、把手軸22の回転軸方向の中心部分が狭まった形状であり、その対向する主面に把手軸22の回転軸方向に沿って滑らかに内側に湾曲したつまみ面が形成されている。つまみ面は、つまんだときに右手の手の指先にフィットするように変形矩形状に形成されている。
【0031】
把手部32は、図3から図5に示すように、筒状部31の基端部と一体成形され、空洞部33の外周側に形成されている。把手部32は、空洞部33の外周側に形成された把手本体32aと、把手本体32aの先端側内周部の後述する空洞部33の第1空洞部33a及び第2空洞部33bのそれぞれ2箇所に形成された第1係止孔32b及び第2係止孔32cと、把手本体32aの外周部に形成され把手本体32aの外周部から空洞部33に連通する上下2箇所にそれぞれ軸方向に間隔をあけて5箇所並べて配置された合計10箇所の溝部32dとを有している。
【0032】
把手部32の先端部の第1開口部33c及び第2開口部33dは、図3及び図5に示すように、有底筒状かつ硬質樹脂製の蓋部材36により閉塞されている。蓋部材36は、図5に示すように、空洞部33の第1空洞部33a及び第2空洞部33bのそれぞれ2箇所に形成された第1係止孔32b及び第2係止孔32cに装着される円弧板状の第1係止部36a及び第2係止部36bを有している。ここでは、把手部32の第1係止孔32b及び第2係止孔32cに蓋部材36の第1係止部36a及び第2係止部36bを係止することによって、蓋部材36を把手部32に固定している。蓋部材36は、ハンドル把手23を把手軸22にボルト部材28により装着した後、把手部32の先端部に装着固定される。
【0033】
空洞部33は、図4及び図5に示すように、筒状部31の外周側に形成され、筒状部31の基端側が底部となり、筒状部31の先端側が開口している。空洞部33は、筒状部31の上下2箇所に形成された断面略三日月形状の凹部からなる第1空洞部33a及び第2空洞部33bを有している。第1空洞部33a及び第2空洞部33bは、把手軸22を挟んで対称となる形状に形成されている。第1空洞部33a及び第2空洞部33bの先端部には、図4に示すように、それぞれ第1開口部33c及び第2開口部33dが形成されており、第1開口部33cと第2開口部33dとの間の2箇所には筒状部31と把手部32とを連結する第1連結部33e及び第2連結部33fが一体成形されている。ここでは、筒状部31、把手部32及び空洞部33は、ポリアセタールやポリアミド樹脂等の硬質樹脂製の部材の成型加工によって一体成形されており、1つのインサート部材34が形成される。
【0034】
カバー部材35は、図3及び図5に示すように、カバー部材35は、第1開口部33c及び第2開口部33dから第1空洞部33a及び第2空洞部33bに2つの金型を装着した状態で把手部32の外周部にインサート成形により形成された合成樹脂製の部材である。カバー部材35は、インサート成形により形成された合成ゴム製の部材であって、セプトン(登録商標)等の熱可塑性エラストマーやウレタンゴムや軟質塩化ビニル(PVC)等の合成ゴム製の部材である。カバー部材35は、図5に示すように、インサート成形するときに、第1空洞部33a及び第2空洞部33bに装着された2つの金型の外周部において、把手本体32aの外周部から空洞部33に連通する上下2箇所にそれぞれ軸方向に間隔をあけて5箇所並べて配置された合計10箇所の溝部32dの内部にも合成ゴム製の部材がインサート成形される。
【0035】
このようなハンドル把手23を形成する工程を図6に示す。
【0036】
まず、ステップS1において、筒状部31、把手部32及び空洞部33の形状の金型を用いて、ポリアセタールやポリアミド樹脂等の硬質樹脂製の部材の成型加工によってインサート部材34が形成される。次に、ステップS2において、第1開口部33c及び第2開口部33dから第1空洞部33a及び第2空洞部33bに2つの金型を装着する。次に、ステップS3において、第1空洞部33a及び第2空洞部33bに2つの金型を装着した状態で把手部32の外周部にカバー部材35をインサート成形する。そして、ステップS4において、第1空洞部33a及び第2空洞部33bから2つの金型を取り外す。
【0037】
このように構成されたハンドル組立体2では、ハンドルアーム21のアーム部26の両端に軸方向外方にのみ開口する第1ねじ穴26dを形成し、第1ねじ穴26dに把手軸22を螺合させて固定しているので、アーム部26の内側面に突出部がなくなり、この内側面に釣り糸が引っかかりにくくなり絡みにくくなる。また、座金24をハンドル軸20に固定し、その座金24にアーム部26を固定してハンドルアーム21を構成しているので、アーム部26の外側面も滑らかな形状にすることができ、外側面でも釣り糸が絡みにくくなる。しかも、座金24をアーム部26の収納凹部26bに収納して内側面から突出しないようにしているので、アーム部26の内側面の中心部での引っかかりも少なくなる。
【0038】
次にリールの動作について説明する。
【0039】
キャスティング時には、クラッチレバー17によりクラッチ機構を離脱状態にしてスプール12を自由回転状態にする。この状態で釣竿をキャスティングすると、ルアーの自重によりルアーが前方に飛行しスプール12から釣り糸が繰り出される。このとき、バックラッシュ現象が発生すると糸ふけが生じ、釣り糸がリール本体1の後部から飛び出しハンドル組立体2に引っかかろうとする。しかし、前述したように、アーム部26の内側面に突出部がないので釣り糸が引っかかりにくくなりアーム部26に絡みにくくなる。
【0040】
ルアーが着水すると、所定のタイミングでハンドル組立体2を僅かに巻き取り方向に回転させ、クラッチ機構を係合状態にする。するとスプール12が繰り出し方向への回転が停止する。この状態でハンドル組立体2を回したり釣竿を上下動させてルアーを泳がせて当たりを待つ。魚がルアーに掛かるとハンドル組立体2を巻き取り方向に回転させて魚を取り込む。このようにハンドル組立体2を巻き取り方向に回転させても、把手軸22が巻き取り方向と同方向のねじにより固定されているので、把手軸22が緩みにくい。
【0041】
このようなハンドル把手23では、インサート部材34は、筒状部31と、筒状部31の先端側が開口する空洞部33と、空洞部33の外周側に形成された把手部32とを有し、カバー部材35は、開口から空洞部33に金型を装着した状態で把手部32の外周部にインサート成形されている。ここでは、カバー部材35は、開口から空洞部33に金型を装着した状態で把手部32の外周部にインサート成形されているので、インサート成形の成形圧によって空洞部33が潰れることがなくなり、把手部32が破損することもなくなる。したがって、把手部32の内周部に空洞部33が形成されたインサート部材34の外周部にカバー部材35をインサート成形することができる。
【0042】
〔他の実施形態〕
(a) 前記実施形態では、両軸受リールを例にあげて説明したが、図7に示すスピニングリールや、図8に示す片軸受リール等の他形式の釣り用リールのハンドルつまみにも本発明を適用できる。また、ハンドルつまみは、ダブルハンドルのものに限定されず、シングルハンドルのものにも本発明を適用できる。
【0043】
本発明の他の実施形態を採用したスピニングリールは、図7に示すように、ハンドル組立体101と、ハンドル組立体101を回転自在に支持するリール本体102と、ロータ103と、図示しないスプールとを備えている。ハンドル組立体101は、リール本体102の両側部の一方側に交換可能に装着されている。ロータ103は、リール本体102の前部に回転自在に支持されている。スプールは、釣り糸を外周面に巻き取るものであり、ロータ103の前部に前後移動自在に配置されている。
【0044】
ハンドル組立体101は、ハンドル軸110の先端に装着されるハンドルアーム121と、ハンドルアーム121の先端に装着されたハンドル把手123とを備えている。ハンドル把手123は、ハンドルアーム121の先端にかしめ固定された把手軸122に回転自在に装着されている。ハンドル把手123は、把手軸122に回転自在かつ軸方向移動不能に装着される筒状部131と、筒状部131の外周に回転不能に装着固定された把手部132とを有している。
【0045】
なお、ハンドル把手123の構成は、前記実施形態の図番に100を加えたものと同様であるので、詳細な説明は省略する。ここでは、スピニングリールのハンドル把手123においても、前記実施形態と同様に、カバー部材135は、開口から空洞部133に金型を装着した状態で把手部132の外周部にインサート成形されているので、インサート成形の成形圧によって空洞部133が潰れることがなくなり、把手部132が破損することもなくなる。したがって、把手部132の内周部に空洞部133が形成されたインサート部材134の外周部にカバー部材135をインサート成形することができる。
【0046】
本発明の他の実施形態を採用した片軸受リールは、図8に示すように、リール本体201と、リール本体201に片持ち支持されたスプール軸202と、スプール軸202に対して相対回転自在に配置され外周に釣り糸が巻かれるスプール203とを備えている。スプール203は、筒状の糸巻胴部215と、糸巻胴部215の一端部に糸巻胴部215と一体で形成された円板状の内フランジ216と、糸巻胴部215の他端部にリール本体201の開放部を覆うように装着された外フランジ217とを有している。外フランジ217の外面で外周近くにはハンドル把手223が取り付けられている。ハンドル把手223は、外フランジ217に立設された把手軸222に回転自在に装着されている。ハンドル把手223は、把手軸222に回転自在かつ軸方向移動不能に装着される筒状部231と、筒状部231の外周に回転不能に装着固定された把手部232とを有している。
【0047】
なお、ハンドル把手223の構成は、前記実施形態の図番に200を加えたものと同様であるので、詳細な説明は省略する。ここでは、片軸受リールのハンドル把手223においても、前記実施形態と同様に、カバー部材235は、開口から空洞部233に金型を装着した状態で把手部232の外周部にインサート成形されているので、インサート成形の成形圧によって空洞部233が潰れることがなくなり、把手部232が破損することもなくなる。したがって、把手部232の内周部に空洞部233が形成されたインサート部材234の外周部にカバー部材235をインサート成形することができる。
【0048】
(b) 前記実施形態では、空洞部33は、2箇所の第1空洞部33a及び第2空洞部33bを設けていたが、開口から空洞部33に金型を装着可能であれば、空洞部33の形状、位置、個数等はこれに限定されるものではない。
【0049】
(c) 前記実施形態では、インサート部材34は、ポリアセタールやポリアミド樹脂等の硬質樹脂製の部材によって形成され、また、カバー部材35は、セプトン(登録商標)等の熱可塑性エラストマーやウレタンゴムや軟質塩化ビニル(PVC)等の合成ゴム製の部材であったが、インサート部材34やカバー部材35の材質はこれらに限定されるものではない。
【符号の説明】
【0050】
1 リール本体
2 ハンドル組立体
3 スタードラグ
5 フレーム
5a 第1側板
5b 第2側板
6a 第1側カバー
6b 第2側カバー
7 前カバー
8 サムレスト
12 スプール
17 クラッチレバー
20 ハンドル軸
20a 面取り部
21 ハンドルアーム
22 把手軸
22a 雄ねじ部
22b 第2ねじ穴
22c 工具係止部
22d 面取り部
23 ハンドル把手
24 座金
24a 小判孔
25 ビス
26 アーム部
26a 回り止め穴
26b 収納凹部
26c ボス部
26d 第1ねじ穴
27 ナット部材
28 ボルト部材
30a 軸受
30b 軸受
31 筒状部
32 把手部
32a 把手本体
32b 第1係止孔
32c 第2係止孔
32d 溝部
33 空洞部
33a 第1空洞部
33b 第2空洞部
33c 第1開口部
33d 第2開口部
33e 第1連結部
33f 第2連結部
34 インサート部材
35 カバー部材
36 蓋部材
36a 第1係止部
36b 第2係止部
101 ハンドル組立体
102 リール本体
103 ロータ
110 ハンドル軸
121 ハンドルアーム
122 把手軸
123 ハンドル把手
131 筒状部
132 把手部
133 空洞部
134 インサート部材
135 カバー部材
201 リール本体
202 スプール軸
203 スプール
215 糸巻胴部
216 内フランジ
217 外フランジ
222 把手軸
223 ハンドル把手
231 筒状部
232 把手部
233 空洞部
234 インサート部材
235 カバー部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り用リールのハンドルアームの先端に固定された把手軸に回転自在に装着されるハンドル把手であって、
前記把手軸の外周側に回転自在に装着される筒状の筒状部と、前記筒状部の外周側に形成され前記筒状部の先端側が開口する空洞部と、前記筒状部の基端部と一体成形され前記空洞部の外周側に形成された把手部とを有するインサート部材を備えた釣り用リールのハンドル把手。
【請求項2】
前記インサート部材は、成型加工により形成された合成樹脂製の部材である、請求項1に記載の釣り用リールのハンドル把手。
【請求項3】
前記把手部の外周部にインサート成形により形成された合成ゴム製のカバー部材をさらに備える、請求項1又は2に記載の釣り用リールのハンドル把手。
【請求項4】
前記空洞部は、複数の金型を装着可能な複数の開口を有している、請求項3に記載の釣り用リールのハンドル把手。
【請求項5】
前記把手部は、外周部から前記空洞部に連通する複数の溝部を有しており、
前記カバー部材は、前記把手部の外周部及び前記複数の溝部の内部にインサート成形される、請求項3又は4に記載の釣り用リールのハンドル把手。
【請求項6】
前記釣り用リールは、スピニングリールである、請求項1から5のいずれか1項に記載の釣り用リールのハンドル把手。
【請求項7】
前記釣り用リールは、両軸受リールである、請求項1から5のいずれか1項に記載の釣り用リールのハンドル把手。
【請求項8】
前記釣り用リールは、片軸受リールである、請求項1から5のいずれか1項に記載の釣り用リールのハンドル把手。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−9603(P2013−9603A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142684(P2011−142684)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】