説明

釣り用リールのハンドル組立体

【課題】釣り用リールのハンドル組立体において、ハンドルアームの軽量化を図りながら、ハンドル軸方向の強度を高く維持する。
【解決手段】ハンドルアーム21は、ハンドル軸20と交差する方向に延び複数のカーボンプリプレグ30(プリプレグの一例)を積層することによって形成された本体部21aと、ハンドル把手23が装着される本体部21aの表面(外側面)に凸形になるように形成された凸部21bと、ハンドル把手23が装着される側と逆側の本体部21aの裏面(内側面)に凹形になるように形成された凹部21cとを有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハンドル組立体、特に、釣り用リールのハンドル軸の先端に回転不能に装着される釣り用リールのハンドル組立体に関する。
【背景技術】
【0002】
スピニングリールや、両軸受リール等の釣り用リールのハンドル軸の先端には、ハンドル組立体が固定されている。ハンドル組立体は、ハンドル軸の先端に回転不能に装着されたハンドルアームと、ハンドルアームの先端に固定された把手軸と、把手軸に回転自在に装着されたハンドル把手とを有している。
【0003】
このようなハンドルアームは、たとえば合成樹脂等の軽量素材により形成され、かつ剛性の高い金属板より形成された箱形体が埋設されたものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。ここでは、ハンドルアームを合成樹脂により形成することによって軽量化が図れるとともに、ハンドルアームと別体の金属板製の箱形体を埋設することによってハンドルアームの強度を高く維持できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開昭51−64790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来のハンドルアームは、軽量な合成樹脂により形成されていたが、さらに軽量化を図るために繊維強化樹脂を使用することが考えられる。しかし、ハンドルアームを繊維強化樹脂により形成すると、特に、繊維強化樹脂を積層する方向(ハンドル軸方向)に十分な強度が得られないことがあり、ハンドル軸方向に大きな力が作用すると、ハンドルアームが破損してしまうおそれが生じる。そこで、従来のハンドルアームのようにハンドルアームと別体の金属板製の箱形体を埋設することが考えられるが、この場合には、箱形体を埋設するための工程が必要になるとともに、一般的に、繊維強化樹脂に金属製部材を埋設することは技術的に非常に困難である。
【0006】
本発明の課題は、釣り用リールのハンドル組立体において、ハンドルアームの軽量化を図りながら、ハンドル軸方向の強度を高く維持することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明1に係る釣り用リールのハンドル組立体は、釣り用リールのハンドル軸の先端に回転不能に装着されるハンドル組立体であって、ハンドルアームと、把手軸と、ハンドル把手とを有している。ハンドルアームは、ハンドル軸の先端に回転不能に装着され、ハンドル軸と交差する方向に延び複数のプリプレグを積層することによって形成された本体部と、ハンドル把手が装着される本体部の表面とその逆側の裏面との少なくともいずれかに凸形または凹形になるように形成された凹凸部とを有する。把手軸は、ハンドルアームの先端に固定され、ハンドル軸に沿って配置される。ハンドル把手は、把手軸に回転自在に支持される。
【0008】
このハンドル組立体では、ハンドルアームは、ハンドル軸と交差する方向に延び複数のプリプレグを積層することによって形成された本体部と、本体部の表面及びその逆側の裏面の少なくともいずれかに凸形または凹形になるように形成された凹凸部とを有している。ここでは、ハンドルアームの本体部が複数のプリプレグを積層することによって形成されているので、ハンドルアームの軽量化を図ることができ、さらに、ハンドルアームの本体部の表面又はその逆側の裏面に凹凸部が形成されているので、ハンドルアームの長手方向の断面係数を増すことができ、ハンドル軸方向の強度を高く維持できる。したがって、ハンドルアームにハンドル軸方向に大きな力が作用したとしても、ハンドルアームが破損してしまうのを防止できる。さらに、従来のようにハンドルアームに金属製部材を埋設する必要がなくなる。
【0009】
発明2に係るハンドル組立体は、発明1のハンドル組立体において、本体部は、複数のプリプレグのうち少なくとも1つのプリプレグの繊維方向が複数のプリプレグのうち1つのプリプレグ以外の他のプリプレグの繊維方向と異なるように積層することによって形成される。この場合、少なくとも1つのプリプレグの繊維方向が他のプリプレグの繊維方向と異なるように積層されているので、全てのプリプレグの繊維方向が同じ向きである場合に比して、他のプリプレグの繊維方向に平行な方向の荷重に対する本体部の強度をより高くすることができる。
【0010】
発明3に係るハンドル組立体は、発明1又は2のハンドル組立体において、本体部は、複数のプリプレグのうち少なくとも1つのプリプレグの繊維方向が長手方向と直交しないように交差する方向に向くように積層することによって形成される。この場合、プリプレグの繊維方向が本体部の長手方向と交差するX方向に向くように積層されるので、ハンドルを回転させることによってハンドルアームに作用する力(ねじり荷重)に対する強度を高くすることができる。
【0011】
発明4に係るハンドル組立体は、発明2又は3のハンドル組立体において、複数のプリプレグのうち少なくとも1つのプリプレグは、繊維方向が単一の向きとなるUDシートである。この場合、比較的強度が低いUDシートを使用する場合でも、少なくとも1つのUDシートの繊維方向が他のUDシートの繊維方向と異なるように積層したり、UDシートの繊維方向が本体部の長手方向と交差するX方向に向くように積層したりすることによって、本体部の強度を高く維持できる。
【0012】
発明5に係るハンドル組立体は、発明1から4のいずれかのハンドル組立体において、複数のプリプレグのうち少なくとも1つのプリプレグは、繊維方向が直交する向きとなるクロスプリプレグである。本体部は、長手方向にクロスプリプレグの1つの繊維方向が向くように積層することによって形成される。この場合、1つの繊維方向が本体部の長手方向となるようにクロスプリプレグを積層することによって、ハンドル軸方向の強度をさらに高く維持できる。
【0013】
発明6に係るハンドル組立体は、発明1から5のいずれかのハンドル組立体において、複数のプリプレグのうち少なくとも1つのプリプレグは、繊維方向が直交する向きとなるクロスプリプレグである。本体部は、クロスプリプレグが最外表面に位置するように積層することによって形成される。この場合、繊維方向が直交する向きとなるクロスプリプレグを最外表面に位置するように積層させることによって、衝突や落下時にクラックが繊維方向に広がることを抑えることができる。
【0014】
発明7係るハンドル組立体は、発明1から6のいずれかのハンドル組立体において、凹凸部は、本体部の表面に突出して形成された凸部である。この場合、凹凸部は、本体部の表面(本体部の外側の面)に形成された凸部であるので、ハンドルアームに釣り糸が絡みつきにくくなるとともに、埃や砂や塩等の異物がハンドルアームの表面に溜まりにくくなる。
【0015】
発明8係るハンドル組立体は、発明1から7のいずれかのハンドル組立体において、凹凸部は、本体部の裏面に凹んで形成された凹部である。この場合、凹凸部は、本体部の裏面(本体部の内側の面)に形成された凹部であるので、凹部が外側に露出しないことで釣り糸が凹凸部に絡みつきにくくなる。
【0016】
発明9に係るハンドル組立体は、発明1から8のいずれかのハンドル組立体において、凹凸部は、本体部の外形形状と略相似形状となるように形成される。この場合、凹凸部は、本体部の外形形状と略相似形状となるように形成されているので、たとえば、平板状のハンドルアームをホットプレス加工することによって、本体部の外形形状と略相似形状となる凹凸部を容易に形成できる。
【0017】
発明10に係るハンドル組立体は、発明9のハンドル組立体において、凹凸部は、ホットプレス加工によって形成される。この場合、凹凸部の形成が容易になる。
【0018】
発明11に係るハンドル組立体は、発明1から10のいずれかのハンドル組立体において、プリプレグは、カーボンプリプレグである。この場合、ハンドルアームの軽量化を図ることができるとともに、カーボンによる高級感のある外観意匠が得られる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、釣り用リールのハンドル組立体において、ハンドルアームは、ハンドル軸と交差する方向に延び複数のプリプレグを積層することによって形成された本体部と、本体部の表面及びその逆側の裏面の少なくともいずれかに凸形または凹形になるように形成された凹凸部とを有しているので、ハンドルアームの軽量化を図りながら、ハンドル軸方向の強度を高く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施形態が採用された両軸受リールの斜視図。
【図2】前記両軸受リールの平面図。
【図3】前記両軸受リールのハンドル組立体の分解斜視図。
【図4】前記ハンドル組立体のハンドルアームの外側(ハンドル把手が装着される側)から見た斜視図。
【図5】前記ハンドルアームの内側(ハンドル把手が装着される側と逆側)から見た斜視図。
【図6】前記ハンドルアームの内側面(ハンドル把手が装着される側と逆側の面)の平面図。
【図7】前記ハンドルアームの側面断面図。
【図8】前記ハンドルアームを製造する工程を示すフローチャート。
【図9】前記ハンドルアームに積層されるカーボンプリプレグの繊維方向を示す模式図。
【図10】前記ハンドルアームを塗装するときに前記ハンドルアームをマスキング治具に装着したときの図7に相当する図。
【図11】前記ハンドル軸にナット部材を装着したときの図7に相当する図。
【図12】他の実施形態の図3に相当する図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の一実施形態を採用した両軸受リールは、図1及び図2に示すように、ベイトキャスト用のベイトリールである。この両軸受リールは、リール本体1と、リール本体1の側方に配置されたスプール回転用のハンドル組立体2と、リール本体1の内部に回転自在かつ着脱自在に装着された糸巻き用のスプール4とを備えている。ハンドル組立体2のリール本体1側には、ドラグ調整用のスタードラグ3が設けられている。
【0022】
リール本体1は、フレーム5と、フレーム5の両側方に装着された第1側カバー6a及び第2側カバー6bとを有している。また、リール本体1は、フレーム5の前方を覆う前カバー7と、上部を覆うサムレスト8とを有している。フレーム5は、左右に所定の間隔をあけて互いに対向するように配置された1対の第1側板5a及び第2側板5bと、これらの第1側板5a及び第2側板5bを連結する図示しない複数の連結部とを有している。フレーム5は、下側の連結部に設けられた図示しない竿装着部により釣竿に装着可能である。
【0023】
リール本体1の内部には、釣竿と交差する方向に配置されたスプール4と、スプール4に釣り糸を均一に巻き取るための図示しないレベルワインド機構と、ハンドル組立体2の回転をスプールに伝達する図示しない回転伝達機構とが配置されている。回転伝達機構には、ハンドル組立体2が先端に装着されたハンドル軸20と、ハンドル組立体2の回転をスプール4に伝達、遮断(オン、オフ)する図示しないクラッチ機構と、図示しないドラグ機構とが設けられている。ハンドル軸20は、リール本体1に回転自在に支持されている。フレーム5の後部には、クラッチ機構をオン、オフ操作するとともに、サミングの当てとなるクラッチレバー17が揺動自在に装着されている。
【0024】
ハンドル組立体2は、図3から図7に示すように、ハンドル軸20の先端に回転不能に装着されたハンドルアーム21と、ハンドルアーム21の両端に固定された把手軸22と、把手軸22に回転自在かつ軸方向移動不能に装着されたハンドル把手23とを有している。把手軸22は、ハンドルアーム21の先端に固定され、ハンドル軸20に沿って配置される。ハンドル把手23は、把手軸22に回転自在に支持される。
【0025】
把手軸22は、図3に示すように、ハンドルアーム21の両端部に形成された貫通孔21dに挿通され、先端部にステンレス合金製の歯付き座金28及びステンレス合金製のワッシャ29を装着した状態でかしめ固定されている。ここでは、歯付き座金28の内径は、把手軸22の先端部の外径と略同一又はやや小径となるように形成されている。このため、歯付き座金28を把手軸22の先端部に噛み込むように装着されるので、把手軸22のかしめ固定が強固になる。
【0026】
ハンドルアーム21は、図3から図7に示すように、中央部分にハンドル軸20の面取り部20aが係合するように内形が略矩形となるように貫通して形成された非円形孔21eを有している。ハンドル軸20の面取り部20aの外周部には、雄ねじ部20bが形成されており、非円形孔21eを挿通しハンドルアーム21の外側に露出した雄ねじ部20bは、ナット部材24の雌ねじ部24aが螺合することによって締結されている。ナット部材24は、外形が六角形の六角ナットであり、ナット部材24の外周部には、ナット部材24を回り止めするリテーナ25が装着されている。リテーナ25は、外形が六角形のナット部材24が任意の位置で相対回転不能に係合するための複数の角部を有する係合孔25aと、係合孔25aの近傍に配置されハンドルアーム21の内側に装着されるリテーナ固定部材26にねじ止めするためのボルト27が装着される貫通孔25bとを有している。ハンドルアーム21には、非円形孔21eの近傍に配置され、リテーナ25の貫通孔25bと連通する貫通孔21fが形成されている。リテーナ固定部材26は、ハンドルアーム21の非円形孔21eと連通する非円形孔21eと同形状の非円形孔26aと、非円形孔21eの近傍の2箇所に配置され一方がハンドルアーム21の貫通孔21fと連通しボルト27が螺合するねじ孔26bとを有している。また、2つのねじ孔26bは、非円形孔26aに対して対称となる位置に設けられている。このため、リテーナ固定部材26の向きを左右入れ替えたり、あるいはリテーナ固定部材26を裏返した場合においても、リテーナ固定部材26の2つのねじ孔26bのうちどちらのねじ孔26bにもボルト27を螺合させることができる。ここでは、リテーナ固定部材26にボルト27を螺合させることによってリテーナ25を固定しているので、リテーナ25をハンドルアーム21に直接固定する場合に比して、固定時の負荷を分散できる。
【0027】
ハンドルアーム21は、図3から図7に示すように、ハンドル軸20の先端に回転不能に装着され、ハンドル軸20と交差する方向に延び複数のカーボンプリプレグ30(プリプレグの一例、図9参照)を積層することによって形成された本体部21aと、ハンドル把手23が装着される本体部21aの表面(外側面)に凸形になるように形成された凸部21b(凹凸部の一例)と、ハンドル把手23が装着される側と逆側の本体部21aの裏面(内側面)に凹形になるように形成された凹部21c(凹凸部の一例)とを有している。凸部21b及び凹部21cは、ホットプレス加工によって形成される。凸部21b及び凹部21cは、本体部21aの外形形状と略相似形状となるように形成された凸部及び凹部である。
【0028】
本体部21aは、複数のカーボンプリプレグ30(図9参照)のうち少なくとも1つのカーボンプリプレグ30の繊維方向が複数のカーボンプリプレグ30のうち1つのカーボンプリプレグ30以外の他のカーボンプリプレグ30の繊維方向と異なるように積層することによって形成される。本体部21aは、複数のカーボンプリプレグ30のうち少なくとも1つのカーボンプリプレグ30の繊維方向が長手方向と直交しないように交差する方向に向くように積層することによって形成される。本体部21aは、カーボンプリプレグ30の繊維方向が本体部の長手方向と交差するX方向に向くように積層される。複数のカーボンプリプレグ30のうち少なくとも1つのカーボンプリプレグ30は、繊維方向が単一の向きとなるUDシート31である。複数のカーボンプリプレグ30のうち少なくとも1つのカーボンプリプレグ30は、繊維方向が直交する向きとなるカーボンクロス32(クロスプリプレグの一例)である。本体部21aは、カーボンクロス32が最外表面に位置するように積層することによって形成される。本体部21aは、長手方向と直交する方向にカーボンクロス32の繊維方向が向くように積層することによって形成される。本体部21aは、1つの繊維方向が本体部21aの長手方向に向くようにカーボンクロス32が積層される。
【0029】
具体的には、図9に示すように、カーボンプリプレグ30は、11枚の繊維方向が単一の向きとなるUDシート31と、UDシート31の外側及び内側に積層される2枚の繊維方向が直交する向きとなるカーボンクロス32とにより構成される。UDシート31は、図9に示すように、繊維方向がハンドルアーム21の長手方向と平行となる向き(直線方向)に配置される第1UDシート31aと、第1UDシート31aの外側面及び内側面に繊維方向がハンドルアーム21の長手方向に対して45度の方向(X方向)となるように積層される第2UDシート31b及び第3UDシート31cと、第2UDシート31bの外側面及び第3UDシート31cの内側面に繊維方向がハンドルアーム21の長手方向に対して−45度の方向(X方向)となるように積層される第4UDシート31d及び第5UDシート31eと、第4UDシート31dの外側面及び第5UDシート31eの内側面に繊維方向がハンドルアーム21の長手方向と平行となる向き(直線方向)に積層される第6UDシート31f及び第7UDシート31gと、第6UDシート31fの外側面及び第7UDシート31gの内側面に繊維方向がハンドルアーム21の長手方向に対して45度の方向(X方向)となるように積層される第8UDシート31h及び第9UDシート31iと、第8UDシート31hの外側面及び第9UDシート31iの内側面に繊維方向がハンドルアーム21の長手方向に対して−45度の方向(X方向)となるように積層される第10UDシート31j及び第11UDシート31kとを有している。カーボンクロス32は、たとえば3Kクロスであって、図9に示すように、第10UDシート31jの外側面及び第11UDシート31kの内側面に繊維方向がハンドルアーム21の長手方向と直交する方向(十字方向)となるように積層される第1カーボンクロス32a及び第2カーボンクロス32bとを有している。
【0030】
次に、ハンドルアーム21を製造する工程について、図8のフローチャートを用いて説明する。
【0031】
まず、ステップS1において、複数のハンドルアーム21を製造可能な母材となる大きなカーボンプリプレグ30を準備する。次に、ステップS2において、繊維方向が図9に示す向きとなるように11枚のUDシート31及び2枚のカーボンクロス32を積層する。次に、ステップS3において、ホットプレス加工を行うことによって、複数のカーボンプリプレグ30を一体化するとともに、ハンドルアーム21の中央部に凸部21b及び凹部21cを形成する。次に、ステップS4において、切削加工により、2つの貫通孔21d、非円形孔21e及び貫通孔21fを形成し、複数のハンドルアーム21の外形を切り抜く。次に、ステップS5において、バフ研磨、バレル研磨等の研磨作業を行う。次に、ステップS6において、光沢のある透明塗料を塗布する塗装作業を行う。このとき、ハンドルアーム21の非円形孔21eをマスキングするために、図10に示すマスキング治具40にハンドルアーム21を取り付けた状態で塗装作業を行う。マスキング治具40は、図10に示すように、ハンドルアーム21の内側面が取り付けられる板状の台座部41と、台座部41に立設されハンドルアーム21の非円形孔21eに挿通されハンドルアーム21の外側に露出した先端部に雄ねじ部42aが形成された突出部42と、内周部に突出部42の雄ねじ部42aが螺合する雌ねじ部43aが形成され非円形孔21eの周囲を覆うように装着されるカバー部43とを有している。カバー部43を突出部42に取り付けたときにハンドルアーム21に接触するカバー部43の接触部43bの外径Aは、非円形孔21eの最大内径より大きくなるように形成され、さらに、図11に示すように、ナット部材24をハンドル軸20の雄ねじ部20bに取り付けたときにハンドルアーム21に接触するナット部材24の接触部24bの外径Bより大きくなるように形成されている。ここでは、カバー部43の接触部43bの外径Aがナット部材24の接触部24bの外径Bより大きくなるように形成されているので、ナット部材24の接触部24bが接触するハンドルアーム21の外側面が確実にマスキングされ、この部分に塗料が塗布されなくなる。したがって、ナット部材24を強く締め付け、塗装されたカーボン製のハンドルアーム21にナット部材24を強く圧接したとしても、ナット部材24の接触部24bが接触するハンドルアーム21の外側面に塗料が塗布されていないことによって、この部分から塗料が剥離するのを防止できる。そして、ステップS7において、リールの型番や製造者名称等の文字を印刷する印刷作業を行う。
【0032】
このようなハンドル組立体2は、ハンドルアーム21は、ハンドル軸20と交差する方向に延び複数のカーボンプリプレグ30を積層することによって形成された本体部21aと、ハンドル把手23が装着される本体部21aの表面(外側面)に凸形になるように形成された凸部21bと、ハンドル把手23が装着される側と逆側の本体部21aの裏面(内側面)に凹形になるように形成された凹部21cとを有している。ここでは、ハンドルアーム21の本体部21aが複数のカーボンプリプレグ30を積層することによって形成されているので、ハンドルアーム21の軽量化を図ることができ、さらに、ハンドルアーム21の本体部21aの表面(外側面)及び本体部21aの裏面(内側面)に凸部21b及び凹部21cが形成されているので、ハンドルアーム21の長手方向の断面係数を増すことができ、ハンドル軸20方向(ハンドルアーム21直交方向)の強度を高く維持できる。したがって、ハンドルアーム21にハンドル軸20方向に大きな力が作用したとしても、ハンドルアーム21が破損してしまうのを防止できる。さらに、従来のようにハンドルアーム21に金属製部材を埋設する必要がなくなり、このため、カーボンによる高級感のある外観意匠が得られる。
【0033】
〔他の実施形態〕
(a) 前記実施形態では、両軸受リールのハンドル組立体2を例にあげて説明したが、これに限られるものではなく、スピニングリールのハンドル組立体2にも本発明を適用できる。また、前記実施形態では、2つのハンドル把手23を有するダブルハンドル型のハンドル組立体2を例にあげて説明したが、1つのハンドル把手23のみを有するシングルハンドル型のハンドル組立体2であってもよい。
【0034】
(b) 前記実施形態では、凹凸部として、凸部21b及び凹部21cはハンドルアーム21の両側に設けられていたが、ハンドルアーム21の一方側のみに凸部21b又は凹部21cを設けてもよい。また、前記実施形態では、ハンドルアーム21の外側に凸部21bが形成され、ハンドルアーム21の内側に凹部21cが形成されていたが、ハンドルアーム21の外側に凹部21cを形成し、ハンドルアーム21の内側に凸部21bを形成してもよい。
【0035】
(c) 前記実施形態では、カーボンプリプレグ30をホットプレスにより積層していたが、積層方法はこれに限定されるものではない。また、カーボンプリプレグ30の種類、カーボンプリプレグ30の積層枚数、カーボンプリプレグ30の繊維方向の向き等は前記実施形態に限定されるものではない。
【0036】
(d) 前記実施形態では、ハンドル軸20の面取り部20aは、ハンドルアーム21の非円形孔21e及びリテーナ固定部材26の非円形孔26aに係合していたが、図12に示すように、ハンドル軸20の面取り部20aをリテーナ固定部材26の非円形孔26aのみに係合する構成にしてもよい。ここでは、ハンドルアーム21の中央部には、前記実施形態の非円形孔21eにかえて、ハンドル軸20の面取り部20aの外径より大径となる円形孔21gが形成されている。また、ハンドルアーム21は、リテーナ25及びリテーナ固定部材26に挟持された状態でリテーナ25を4つのボルト27によってリテーナ固定部材26にねじ止めすることによって固定されている。この場合、ハンドル軸20の面取り部20aがリテーナ固定部材26の非円形孔26aのみに係合しているので、ハンドルアーム21の円形孔21gの径を従来の非円形孔21eの径より大きく形成することにより、従来の非円形孔21eを有するハンドルアーム21から従来のリールを設計変更することなくそのまま本件のハンドルアーム21に交換することができる。
【0037】
(e) 前記実施形態では、プリプレグとしてカーボンプリプレグ30を使用したが、プリプレグはこれに限定されるものではなく、たとえば、プリプレグとしてガラスプリプレグやアラミド繊維プリプレグを使用してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 リール本体
2 ハンドル組立体
3 スタードラグ
4 スプール
5 フレーム
5a 第1側板
5b 第2側板
6a 第1側カバー
6b 第2側カバー
7 前カバー
8 サムレスト
17 クラッチレバー
20 ハンドル軸
20a 面取り部
20b 雄ねじ部
21 ハンドルアーム
21a 本体部
21b 凸部
21c 凹部
21d 貫通孔
21e 非円形孔
21f 貫通孔
21g 円形孔
22 把手軸
23 ハンドル把手
24 ナット部材
24a 雌ねじ部
24b 接触部
25 リテーナ
25a 係合孔
25b 貫通孔
26 リテーナ固定部材
26a 非円形孔
26b ねじ孔
27 ボルト
28 歯付き座金
29 ワッシャ
30 カーボンプリプレグ
31 UDシート
31a 第1UDシート
31b 第2UDシート
31c 第3UDシート
31d 第4UDシート
31e 第5UDシート
31f 第6UDシート
31g 第7UDシート
31h 第8UDシート
31i 第9UDシート
31j 第10UDシート
31k 第11UDシート
32 カーボンクロス
32a 第1カーボンクロス
32b 第2カーボンクロス
40 マスキング治具
41 台座部
42 突出部
42a 雄ねじ部
43 カバー部
43a 雌ねじ部
43b 接触部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り用リールのハンドル軸の先端に回転不能に装着されるハンドル組立体であって、
前記ハンドル軸の先端に回転不能に装着されるハンドルアームと、
前記ハンドルアームの先端に固定され、前記ハンドル軸に沿って配置される把手軸と、
前記把手軸に回転自在に支持されるハンドル把手とを備え、
前記ハンドルアームは、前記ハンドル軸と交差する方向に延び複数のプリプレグを積層することによって形成された本体部と、前記ハンドル把手が装着される前記本体部の表面とその逆側の裏面との少なくともいずれかに凸形または凹形になるように形成された凹凸部とを有する、釣り用リールのハンドル組立体。
【請求項2】
前記本体部は、前記複数のプリプレグのうち少なくとも1つのプリプレグの繊維方向が前記複数のプリプレグのうち前記1つのプリプレグ以外の他のプリプレグの繊維方向と異なるように積層することによって形成される、請求項1に記載の釣り用リールのハンドル組立体。
【請求項3】
前記本体部は、前記複数のプリプレグのうち少なくとも1つのプリプレグの繊維方向が長手方向と直交しないように交差する方向に向くように積層することによって形成される、請求項1又は2に記載の釣り用リールのハンドル組立体。
【請求項4】
前記複数のプリプレグのうち少なくとも1つのプリプレグは、繊維方向が単一の向きとなるUDシートである、請求項2又は3に記載の釣り用リールのハンドル組立体。
【請求項5】
前記複数のプリプレグのうち少なくとも1つのプリプレグは、繊維方向が直交する向きとなるクロスプリプレグであり、
前記本体部は、長手方向に前記クロスプリプレグの1つの繊維方向が向くように積層することによって形成される、請求項1から4のいずれか1項に記載の釣り用リールのハンドル組立体。
【請求項6】
前記複数のプリプレグのうち少なくとも1つのプリプレグは、繊維方向が直交する向きとなるクロスプリプレグであり、
前記本体部は、前記クロスプリプレグが最外表面に位置するように積層することによって形成される、請求項1から5のいずれか1項に記載の釣り用リールのハンドル組立体。
【請求項7】
前記凹凸部は、前記本体部の表面に突出して形成された凸部である、請求項1から6のいずれか1項に記載の釣り用リールのハンドル組立体。
【請求項8】
前記凹凸部は、前記本体部の裏面に凹んで形成された凹部である、請求項1から7のいずれか1項に記載の釣り用リールのハンドル組立体。
【請求項9】
前記凹凸部は、前記本体部の外形形状と略相似形状となるように形成される、請求項1から8のいずれか1項に記載の釣り用リールのハンドル組立体。
【請求項10】
前記凹凸部は、ホットプレス加工によって形成される、請求項9に記載の釣り用リールのハンドル組立体。
【請求項11】
前記プリプレグは、カーボンプリプレグである、請求項1から10のいずれか1項に記載の釣り用リールのハンドル組立体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−72240(P2011−72240A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226044(P2009−226044)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】