説明

釣り用リール

【課題】釣り用リールにおいて、スプールの滑らかな回転を阻害することなく、安価な構成で組み立て容易な釣糸係止部を提供する。
【解決手段】釣糸係止部20の基端部20b及び本体部20aを第1フランジ部2bの装着溝2dに装着する。釣糸係止部20の基端部20bを第1フランジ部2bの装着溝2dから貫通孔2eの凹み部2fに沿って折り曲げ、釣糸係止部20の基端部20bを貫通孔2eに係止する。第1フランジ部2bの装着溝2dに装着された釣糸係止部20の本体部20aを接着剤により固定する。第1フランジ部2b側の開口から第1軸受部材21を貫通孔2eに圧入固定し、第2フランジ部2c側の開口からカラー部材23を装着した後に、第2フランジ部2c側の開口から第2軸受部材22を貫通孔2に圧入固定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り用リール、特に、釣り糸を巻き取る釣り用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
釣り用リールは、たとえば、氷結した湖上やドーム船上からワカサギ等の小魚を釣るときに使用される小型の電動リールが知られている。この種の電動リールは、ティップと呼ばれる比較的短く弾力性のある釣竿が装着されるリール本体と、リール本体に配置され釣り糸を巻き取るスプールと、スプールを回転させるモータと、リール本体の側部に配置されモータの駆動をオン、オフするスイッチ操作部とを備えている。このような電動リールでは、操作スイッチをオン操作することによりモータを駆動してスプールを回転させることによって釣り糸を巻き取る。
【0003】
このような電動リールでは、現在の棚位置を記憶するために、釣り糸をスプールの外周部に装着されたラインストッパー(釣糸係止部)に係止することがある(たとえば、非特許文献1参照)。ここでは、釣糸係止部に釣り糸を係止しておくことによって、次回仕掛けを投入するときに、前回の棚位置まで釣り糸を繰り出すことができる。
【0004】
このような釣糸係止部は、小型の電動リールだけでなく、たとえば、釣り糸の先端部を係止するために、両軸受リールのスプールに装着されたものが知られている(たとえば、特許文献1参照)。この種の釣糸係止部は、先端部とスプールの外周部とで釣り糸を挟持するようになっており、基端部がスプールの内周部にねじ部材によって装着固定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−6710号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】インターネット<URL:http://www.yety.jp/index.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記従来の釣糸係止部は、基端部がスプールの内周部にねじ部材によって装着固定されているので、特に小型のスプールの場合には、ねじ止めのスペースを確保したり、小さい釣糸係止部を組み付けた状態で小さいねじ部材を取り付けるのは非常に困難である。また、ねじ部材を取り付けることにより、部品点数及び組立工程が増加するので、製造コストが増加するおそれがある。さらに、ねじ部材を取り付けた分だけスプール全体の重量が増加するので、スプールの慣性力が増大し、スプールの滑らかな回転を阻害するおそれが生じる。
【0008】
本発明の課題は、釣り用リールにおいて、スプールの滑らかな回転を阻害することなく、安価な構成で組み立て容易な釣糸係止部を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明1に係る釣り用リールは、釣り糸を巻き取る釣り用リールであって、リール本体と、スプール軸と、スプールと、釣糸係止部と、軸受部材とを備えている。スプール軸は、リール本体に装着される。スプールは、スプール軸に回転可能に支持され、スプール軸が挿通される貫通孔を有する糸巻き用の部材である。釣糸係止部は、基端部が貫通孔に係止され、先端部がスプールの外周部に露出して配置され、先端部とスプールの外周部との間で釣り糸を挟持可能である。軸受部材は、スプール軸とスプールとの間に配置され、スプールの貫通孔に圧入固定される。
【0010】
この釣り用リールでは、釣糸係止部は、基端部がスプールの貫通孔に係止され、軸受部材は、スプールの貫通孔に圧入固定されている。ここでは、従来のように釣糸係止部をスプールに装着固定するためにねじ部材を取り付ける必要がなくなるので、スプール全体の重量が減少し、スプールの慣性力が低減することによって、スプールの滑らかな回転を阻害することがなくなる。さらに、ここでは、ねじ部材を取り付けることで部品点数及び組立工程が増加することがなくなるので、製造コストを抑えることができる。したがって、スプールの滑らかな回転を阻害することなく、安価な構成で組み立て容易な釣糸係止部を提供することができる。
【0011】
発明2に係る釣り用リールは、発明1の釣り用リールにおいて、スプールは、外周部と貫通孔とを連通し、釣糸係止部が装着される装着溝を有している。この場合、釣糸係止部の装着が容易になる。
【0012】
発明3に係る釣り用リールは、発明2の釣り用リールにおいて、装着溝は、複数箇所に設けられている。複数の釣糸係止部は、それぞれ複数の装着溝に装着されている。この場合、複数の装着溝に複数の釣糸係止部が装着されているので、複数の釣糸係止部のうち最も釣り糸を係止しやすい1つの釣糸係止部を選択して係止できる。
【0013】
発明4に係る釣り用リールは、発明2又は3の釣り用リールにおいて、スプールは、糸巻胴部と、第1フランジ部と、第2フランジ部とを有している。糸巻胴部は、外周に釣り糸が巻き付けられ内周に貫通孔を有する筒状の部材である。第1フランジ部は、糸巻胴部の一端に径方向外方に突出して設けられ径方向に沿って装着溝を有する。第2フランジ部は、糸巻胴部の他端に径方向外方に突出して設けられている。この場合、たとえば外周部が外方に露出する側の第1フランジ部に釣糸係止部を装着できる。
【0014】
発明5に係る釣り用リールは、発明4の釣り用リールにおいて、釣糸係止部は、基端部が第1フランジ部の装着溝から糸巻胴部の貫通孔に沿って折れ曲がるように形成されている。この場合、釣糸係止部の基端部が糸巻胴部の貫通孔に沿って配置されるので、軸受部材を圧入しやすくなる。
【0015】
発明6に係る釣り用リールは、発明4又は5の釣り用リールにおいて、釣糸係止部は、先端部が第1フランジ部の装着溝から第1フランジ部の外縁部に沿って折れ曲がるように形成されている。この場合、釣り糸係止部の先端部が他の部材に干渉しにくくなるとともに、釣り糸の係止が容易になる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、釣り用リールにおいて、釣糸係止部は、基端部がスプールの貫通孔に係止され、軸受部材は、スプールの貫通孔に圧入固定されているので、スプールの滑らかな回転を阻害することなく、安価な構成で組み立て容易な釣糸係止部を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の一実施形態を採用した電動リールの平面図。
【図2】前記電動リールの右側面図。
【図3】前記電動リールを前方から見たときの斜視図。
【図4】リール本体にストッパガイドを装着したときの拡大斜視図。
【図5】前記ストッパガイドの拡大斜視図。
【図6】前記リール本体の前記ストッパガイド装着部の拡大斜視図。
【図7】前記リール本体のスプールを取り外したときの拡大斜視図。
【図8】第1スイッチ操作部が寸動スイッチモードであるときの表示部の拡大平面図。
【図9】第2スイッチ操作部が寸動スイッチモードであるときの前記表示部の拡大平面図。
【図10】前記電動リールの制御ブロック図。
【図11】前記スプールの分解斜視図。
【図12】前記スプールの釣糸係止部装着部の拡大断面図。
【図13】前記スプールのつまみ部材の拡大断面図。
【図14】モータ及びモータケースの拡大斜視図。
【図15】前記モータ及び前記モータケース取付部分の拡大斜視図。
【図16】仕掛けを降ろしているときの前記電動リールに釣竿を装着したときの右側面図。
【図17】前記仕掛けを巻き上げたときの前記電動リールに前記釣竿を装着したときの右側面図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の一実施形態が採用された電動リールは、図1から図3に示すように、たとえば、氷結した湖上やドーム船上からワカサギ等の小魚を釣るときに使用される小型の電動リールである。この電動リールは、ティップと呼ばれる比較的短く弾力性のある釣竿Rが前部に装着されるリール本体1と、リール本体1の右上前部に配置され釣り糸Lを巻き取るスプール2と、リール本体1の内部に配置されスプール2を回転させるモータ3(図10及び図14参照)と、リール本体1の右側部及び左側部に配置されモータ3の駆動をオン、オフする第1スイッチ操作部4及び第2スイッチ操作部5と、リール本体1の上面に配置され各種の情報を表示する表示部6と、リール本体1の上面の表示部6の後部に配置されスイッチモード等の切り換え設定を行う第3スイッチ操作部7及び第4スイッチ操作部8と、リール本体1の上面の表示部6の前部に配置されモータ3のスプール2への回転伝達をオン、オフするクラッチ操作部9とを備えている。また、リール本体1の前部には、釣竿Rが装着される筒状に突出した釣竿装着部1aが形成されており、釣竿装着部1a及び釣竿Rの基端部外周には、釣り糸Lに設けられたストッパS(図17参照)が接触して釣り糸Lの巻き取りを停止させるストッパガイド10が着脱自在に装着されている。このような電動リールでは、第1スイッチ操作部4及び第2スイッチ操作部5をオン操作することによりモータ3を駆動してスプール2を回転させることによって釣り糸Lを巻き取る。なお、この電動リールでは、釣り糸Lの巻き取りはモータ3の駆動のみによってスプール2を回転させることによって行われ、スプール2を手動で回転させるハンドル等を備えていない。
【0019】
リール本体1は、図1から図3に示すように、全体を片手で把持可能な大きさとなるように形成され、合成樹脂製の複数のケース部材を組み立てることによって形成された内部に収納空間を有する前後に長い筐状部材である。リール本体1は、図1から図3に示すように、右下前部から前方に突出し釣竿Rが装着される円筒状の釣竿装着部1aと、右上前部が他の部分より凹んで形成されスプール2が配置されるスプール収納凹部1bとを有している。釣竿装着部1aは、図4及び図6に拡大して示すように、リール本体1のスプール収納凹部1bの下部から前方に突出する円筒状の部分であって、内周部に釣竿Rが装着固定され、外周部に釣り糸Lを巻き取っているときに釣り糸Lに設けられたストッパS(図17参照)が接触して釣り糸Lの巻き取りを停止させるストッパガイド10が着脱自在に装着されている。
【0020】
ストッパガイド10は、図4及び図5に示すように、金属製の線材部材を折り曲げて形成された部材である。ストッパガイド10は、図5に示すように、釣り糸Lが横方向に移動しながら通過可能かつストッパSが接触して通過不能に横長に形成された接触孔部10aと、接触孔部10aの下部中央から下方に延びる第1連結部10bと、接触孔部10aの下部中央から斜め前下方に延びる第2連結部10cと、第1連結部10bの下部に円環状に形成され釣竿装着部1aの外周部に着脱自在に装着される第1装着部10dと、第2連結部10cの下部に円環状に形成され釣竿Rの基端側外周部に着脱自在に装着される第2装着部10eとを有している。接触孔部10a、第1連結部10b、第2連結部10c、第1装着部10d及び第2装着部10eは、1本の金属製の線材部材を折り曲げて一体成形されている。接触孔部10aは、図4に示すように、スプール2の糸巻き部分と同程度の横幅となるように横長に形成された楕円形の孔部であって、釣り糸Lが横方向に移動しながら通過可能である。また、接触孔部10aは、図17に示すように、上下幅がストッパSの直径より小さくなるように形成されており、このため、ストッパSが接触孔部10aに接触して接触孔部10aを通過することがない。また、第1装着部10dは、図2から図4に示すように、大径の釣竿装着部1aの外周部に装着され、第2装着部10eは、小径の釣竿Rの基端部外周に装着されており、第1装着部10dの直径は、第2装着部10eの直径より大きくなるように形成されている。また、釣竿装着部1aの下部には、図6に示すように、下方に膨出し膨出部1cが形成されており、膨出部1cの外周部には、釣竿装着部1aの外周部に沿った円弧状の第1溝部1dが形成されている。この第1溝部1dには、ストッパガイド10の第1装着部10dの下部が装着されており、これにより、ストッパガイド10が前後方向に移動するのが規制され、ストッパガイド10が抜け止めされる。さらに、釣竿装着部1aの上方には、図6に示すように、リール本体1の前部から前方に突出した第1突出部1e及び第2突出部1fが形成されており、第1突出部1eと第2突出部1fとの間には、ストッパガイド10の第1連結部10bの下部が挿通可能な第2溝部1gが形成されている。ここでは、図4に示すように、第2溝部1gにストッパガイド10の第1連結部10bが挿通されているので、ストッパガイド10が左右方向に移動するのが規制され、ストッパガイド10が所定の位置に回り止めされる。
【0021】
このようなストッパガイド10を電動リール及び釣竿Rを取り付けるには、まず、図6に示すように、釣竿装着部1aから釣竿Rを取り外した状態で、釣竿装着部1aの外周部にストッパガイド10の第1装着部10dを装着する。このとき、図4に示すように、ストッパガイド10の第1連結部10bが第1突出部1eと第2突出部1fとの間の第2溝部1gに挿通されるように位置決めして、ストッパガイド10の第1装着部10dを膨出部1cの第1溝部1dに押し込んで装着する。そして、第1溝部1dに第1装着部10dが装着された状態で、釣竿Rの基端部をストッパガイド10の第2装着部10eを挿通させてから釣竿装着部1aに釣竿Rを挿入固定する。ストッパガイド10を電動リール及び釣竿Rから取り外すには、取付作業と逆の手順を行えばよい。
【0022】
次に、図16に示すように、電動リール及び釣竿Rにストッパガイド10を取り付けた状態で、スプール2に巻き付けられた釣り糸Lをストッパガイド10の接触孔部10aを後ろから前方に挿通した後、釣り糸Lの先端側からストッパSを挿通する。ストッパSは、中央部に釣り糸Lの直径よりやや大径の釣糸挿通孔が形成された略球状のビーズであって、ストッパガイド10の接触孔部10aの孔部より大径の部材である。このため、ストッパSが接触孔部10aに接触して接触孔部10aを通過することがない。また、ストッパSは、釣竿Rの外周部に取り付けられた最も後側のガイドリングGの孔部より大径の部材である。このためストッパSが最も後側のガイドリングGに接触して最も後側のガイドリングGを通過することがない。したがって、ストッパSは、ストッパガイド10と最も後側のガイドリングGとの間を前後に移動可能である。そして、釣り糸Lの先端を釣竿Rの外周部に取り付けられた複数のガイドリングGを挿通し、釣り糸Lの先端に仕掛けHが取り付けられた道糸Mを取り付ける。釣り糸Lと道糸Mとの間には、結び目Kが形成されており、結び目KはストッパSの釣糸挿通孔を挿通不能であるが、結び目Kは複数のガイドリングGを挿通可能である。
【0023】
この状態で釣り糸を巻き上げていくと、結び目Kが最も後側のガイドリングGを挿通し、結び目KがストッパSに接触する。さらに、釣り糸を巻き上げていくと、結び目KがストッパSをストッパガイド10の接触孔部10aに向かって押して、図17に示すように、ストッパSがストッパガイド10の接触孔部10aに接触することによって釣り糸Lの巻き取りが停止される。このとき、仕掛けHは釣竿Rの先端の手前で停止するので、仕掛けHが最も前側のガイドリングGに巻き込まれることがなくなる。したがって、このようなストッパガイド10を設けることによって、仕掛けHをスプール2に巻き込んでしまうことを防止できる。
【0024】
スプール2は、図1から図3に示すように、リール本体1の右上前部が他の部分より凹んで形成されたスプール収納凹部1bの側部に装着されたスプール軸11(図7参照)に回転可能に支持され、全体がスプール収納凹部1b内に配置されている。また、スプール収納凹部1bのスプール2の下部には、図3、図4及び図7に示すように、スプール2からスプール収納凹部1bの側部側に釣り糸Lが糸落ちし釣り糸Lがスプール軸11に絡みつくのを防止するために、スプール2の外形と対向するように立設された複数の柱状のリブからなる壁部1hが形成されている。壁部1hは、スプール収納凹部1bの側部側底部に立設された複数の柱状のリブを連続的に配置して階段状に形成したものであって、スプール2の下部外周全体を覆うように配置されているので、スプール2に巻かれた釣り糸Lが壁部1hによってスプール収納凹部1bの側部側に糸落ちするのを防止できる。さらに、ここでは、複数の柱状のリブで壁部1hを構成しているので、壁部1hの肉厚が厚肉化し樹脂成型時のヒケ等による壁部1hの変形によって、壁部1hとスプール2との位置寸法が不安定になるのを防止できる。
【0025】
スプール2は、図11及び図12に示すように、外周に釣り糸Lが巻き付けられる筒状の糸巻胴部2aと、糸巻胴部2aの一端に径方向外方に突出して設けられた第1フランジ部2bと、糸巻胴部2aの他端に径方向外方に突出して設けられた第2フランジ部2cと、糸巻胴部2aの内周部を貫通しスプール軸11が挿通される貫通孔2eと、第1フランジ部2bの径方向に沿って外周部と貫通孔2eとを連通するように形成され釣糸係止部20が装着される装着溝2dとを有している。糸巻胴部2aは、スプール軸11よりやや大径の筒状部材である。第1フランジ部2bのスプール収納凹部1bの側部対向面には、図11に示すように、2つのマグネット26が接着固定されている。2つのマグネット26は、リール本体1の内部に装着された図示しないリードスイッチと対向する位置に配置され、スプール2の回転数を検出するためのものである。貫通孔2eには、図11及び図12に示すように、釣糸係止部20の基端部20bを貫通孔2eに係止した後に、第1フランジ部2b側の開口から第1軸受部材21が圧入固定され、第2フランジ部2c側の開口からカラー部材23が装着された後に、第2フランジ部2c側の開口から第2軸受部材22が圧入固定されている。第1軸受部材21及び第2軸受部材22は、玉軸受であって、外周部が貫通孔2eに圧入固定され、内周部がスプール軸11に固定されている。カラー部材23は、第1軸受部材21と第2軸受部材22との間に配置されるスペーサであって、内周部にスプール軸11が挿通される筒状部材である。スプール軸11の先端部には、ナット部材24がねじ込まれ、Oリング25によって緩み止めされている。ナット部材24は、図13に拡大して示すように、スプール軸11の先端部外周に形成されたねじ部11aが螺合するねじ孔24aと、ねじ孔24aの開口側にねじ孔24aより大径に形成され内周部にOリング25が圧縮された状態で装着される貫通孔24bと、貫通孔24bの開口側内周部が内側にやや突出した内フランジ部24cとを有している。内フランジ部24cとスプール軸11との間の隙間は、Oリング25の直径よりやや小さくなるように形成されており、このため、Oリング25を貫通孔24bの内周部に係止した状態でスプール軸11が挿通される。
【0026】
釣糸係止部20は、図1から図3、図11及び図12に示すように、基端部20bがスプール2の貫通孔2eに係止され、先端部20cがスプール2の第1フランジ部2bの外周部に露出して配置され、先端部20cとスプール2の第1フランジ部2bの外周部との間で釣り糸Lを挟持可能な金属製の線材部材である。釣糸係止部20は、図2、図3及び図11に示すように、1本の線材部材を折り曲げて2本の線材形状となるように形成されており、同一形状のものを3つ備えており、3つの釣糸係止部20が等間隔に配置された3箇所の装着溝2dに装着されている。釣糸係止部20は、図12に示すように、装着溝2dに装着される本体部20aと、本体部20aの基端側に一体成形された基端部20bと、本体部20aの先端側に一体成形された先端部20cとを有している。本体部20aは、装着溝2dに装着される直線状の部分であって、装着溝2dに接着固定される。基端部20bは、第1フランジ部2bの装着溝2dから貫通孔2eの一部が釣糸係止部20の厚み程度凹んで形成された凹み部2fに沿って折り曲げられており、これによって、釣糸係止部20の基端部20bは、貫通孔2eに係止される。先端部20cは、第1フランジ部2bの装着溝2dから第1フランジ部2bの外縁部に沿って折れ曲がるように形成されている。先端部20cと第1フランジ部2bの外周部との間には僅かな隙間が生成されており、この隙間に釣り糸Lを挟持可能である。
【0027】
このようなスプール2及び釣糸係止部20を組み立てるには、まず、1本の線材部材を折り曲げて2本の線材形状となるように形成し、先端部20cを第1フランジ部2bの装着溝2dから第1フランジ部2bの外縁部に沿う形状になるように折り曲げ、基端部20bを第1フランジ部2bの装着溝2dから貫通孔2eの凹み部2fに沿う形状になるように予め折り曲げた釣糸係止部20を用意する。この状態で、図12に示すように、釣糸係止部20の基端部20b及び本体部20aを第1フランジ部2bの装着溝2dに装着し、釣糸係止部20の基端部20bを貫通孔2eに係止する。次に、第1フランジ部2bの装着溝2dに装着された釣糸係止部20の本体部20aを接着剤により固定する。そして、第1フランジ部2b側の開口から第1軸受部材21を貫通孔2eに圧入固定し、第2フランジ部2c側の開口からカラー部材23を装着した後に、第2フランジ部2c側の開口から第2軸受部材22を貫通孔2eに圧入固定する。次に、スプール軸11を第2軸受部材22、カラー部材23、第1軸受部材21の順に挿通させ、スプール軸11の先端部のねじ部11aにOリング25を貫通孔24bの内周部に係止した状態のナット部材24のねじ孔24aを螺合することによって、スプール2はスプール軸11に回転可能に支持される。
【0028】
モータ3は、リール本体1の内部に配置され、モータ3の回転をスプール軸11に伝達することによって、スプール2を回転させる。この回転伝達機構内には、図示しないクラッチ機構を有しており、クラッチ操作部9(図1参照)のオン、オフ操作によって、回転伝達がオン、オフされる。モータ3は、図14に示すように、鋼板により形成されたモータホルダ40に装着されており、モータホルダ40に装着されたモータ3をモータホルダ40ごとスプール軸11に接触、離反させることによって、クラッチのオン、オフを行っている。このようなモータホルダ40にモータ3を取り付けるには、図15に拡大して示すように、モータ3に予め形成されている係合溝3aにモータホルダ40の係合突起40aを折り曲げて係合させることによって固定している。ここでは、モータ3に予め形成されている係合溝3aを用いることにより、モータホルダ40にモータ3を取り付けるためにモータ3を加工する必要がなくなる。また、モータ3に予め形成されている凹部や溝部は、モータホルダ40にモータ3を取り付ける前に、シリコンボンドが塗布したり、あるいは、テープを貼付することによって塞がれており、これにより、モータ3を防水することができる。
【0029】
第1スイッチ操作部4は、図1から図3に示すように、リール本体1の右側部に配置され、モータ3の駆動をオン、オフするスイッチである。第2スイッチ操作部5は、図1に示すように、リール本体1の左側部に配置されモータ3の駆動をオン、オフするスイッチである。第1スイッチ操作部4及び第2スイッチ操作部5は、図1に示すように、それぞれリール本体1の左右側部の対称となる位置に配置されている。リール本体1は、全体を片手で把持可能な大きさとなるように形成されている。第1スイッチ操作部4及び第2スイッチ操作部5は、それぞれ親指または人差し指で操作可能なリール本体の左右側部に配置されている。具体的には、左手で操作する場合には、第1スイッチ操作部4を親指で操作可能であり、第2スイッチ操作部5を人差し指で操作可能である。また、右手で操作する場合には、第1スイッチ操作部4を人差し指で操作可能であり、第2スイッチ操作部5を親指で操作可能である。このような第1スイッチ操作部4及び第2スイッチ操作部5には、モータ3の駆動をさせるスイッチモードとして、寸動スイッチモードと連続スイッチモードとの2つのスイッチモードが割り当てられている。具体的には、寸動スイッチモードは、第1スイッチ操作部4又は第2スイッチ操作部5がオン操作されているときのみモータ3を回転させ、第1スイッチ操作部4又は第2スイッチ操作部5がオン操作されていないときモータ3を停止させるスイッチモードである。また、連続スイッチモードは、第1スイッチ操作部4又は第2スイッチ操作部5が1回オン操作されたときにモータ3を回転させ、第1スイッチ操作部4又は第2スイッチ操作部5が再度1回オン操作されたときにモータ3を停止させるスイッチモードである。そして、第3スイッチ操作部7及び第4スイッチ操作部8を同時押しすることによって、リール本体1右側部に配置された第1スイッチ操作部4及びリール本体1左側部に配置された第2スイッチ操作部5に割り振られた寸動スイッチモード及び連続スイッチモードを逆に切り換えるようになっている。このようなスイッチモードの切り換えは、後述するリール制御部30(図10参照)が第3スイッチ操作部7及び第4スイッチ操作部8を同時押しを検出すると、リール制御部30が第1スイッチ操作部4及び第2スイッチ操作部5に寸動スイッチモード又は連続スイッチモードの機能を割り当てる制御を行うことによって、スイッチモードを切り換えている。
【0030】
表示部6は、図1に示すように、リール本体1の上面に配置され、各種の情報を表示するセグメント方式の液晶ディスプレイであって、クラッチ操作部9と第3スイッチ操作部7及び第4スイッチ操作部8との間に配置されている。表示部6は、図8及び図9に拡大して示すように、上部に配置され仕掛けの水深を表示する水深表示部6aと、水深表示部6aの下部左側に配置されバッテリの残量を表示するバッテリ残量表示部6bと、水深表示部6aの下部中央に配置され第1スイッチ操作部4が寸動スイッチモードであるときRの図形(図8参照)を表示し、第2スイッチ操作部5が寸動スイッチモードであるときLの図形(図9参照)を表示して第1スイッチ操作部4及び第2スイッチ操作部5の状態を表示するスイッチ操作部状態表示部6cと、水深表示部6aの下部右側に配置されスプール2の回転速度を表示する速度表示部6dとを有している。ここでは、図8に示すように、スイッチ操作部状態表示部6cにRの図形が表示されているときは、第1スイッチ操作部4が寸動スイッチモードであり、第2スイッチ操作部5が連続スイッチモードであることを示している。また、図9に示すように、スイッチ操作部状態表示部6cにLの図形が表示されているときは、第2スイッチ操作部5が寸動スイッチモードであり、第1スイッチ操作部4が連続スイッチモードであることを示している。
【0031】
第3スイッチ操作部7及び第4スイッチ操作部8は、図1に示すように、リール本体1の上面に配置されスイッチモード等の切り換え設定を行うスイッチである。第3スイッチ操作部7及び第4スイッチ操作部8は、表示部の後部に配置され、右側に第3スイッチ操作部7が位置し、左側に第4スイッチ操作部8が位置するように並べて配置されている。ここでは、第3スイッチ操作部7及び第4スイッチ操作部8を同時押しすることによって、リール本体1右側部に配置された第1スイッチ操作部4及びリール本体1左側部に配置された第2スイッチ操作部5に割り振られた寸動スイッチモード及び連続スイッチモードを逆に切り換える。
【0032】
リール本体1の内部には、CPU、RAM、ROM、I/Oインターフェイス等を含むマイクロコンピュータを含むリール制御部30(図10参照)が配置されている。リール制御部30は、図10に示すように、第1スイッチ操作部4、第2スイッチ操作部5、第3スイッチ操作部7及び第4スイッチ操作部8の各種のスイッチ操作部と、スプール2の回転方向及び回転数(回転位置データ)を検出するためのスプールセンサ41及びスプールカウンタ42と、モータ3に流れる電流値を検出する電流値検出部44と、制御プログラムに従ってモータ3の駆動制御を行うモータ制御部31と、表示部6の表示制御を行う表示制御部32と、各種のデータを記憶する記憶部43と、他の入出力部とが接続されている。スプールセンサ41は、前後に並べて配置された2つのリードスイッチから構成されている。リードスイッチは、スプール2に装着された2個のマグネット26を検出する。この検出パルスをスプールカウンタ42で計数することでスプール2の回転数を検出できる。また、いずれのリードスイッチが先に検出パルスを発したかによりスプール2の回転方向を検出できる。スプールカウンタ42は、スプールセンサ41のオンオフ回数を計数するカウンタであり、この計数値によりスプール回転数に関する回転位置データが得られる。スプールカウンタ42は、スプール2が正転(糸繰り出し方向の回転)すると計数値が減少し、逆転すると増加する。記憶部43はたとえばEEPROM等の不揮発メモリからなり、学習結果のデータや糸長算出時に使用する各種のデータ等が記憶されている。電流値検出部44は、モータ3に流れる電流値を検出する電流計測センサである。モータ制御部31は、スプール2の回転数に応じた所定の位置(たとえば仕掛けHが釣竿Rの先端部位置、すなわち船縁位置)自動的にモータ3の駆動を停止して釣り糸Lの巻き取りを停止させる船縁停止機能を実現させている。具体的には、モータ制御部31は、スプールカウンタ42により検出されたスプール2の回転数が予め設定されたモータ3の駆動を停止させるスプール2の回転数から所定の範囲(たとえば船縁停止位置から所定の距離)内にあるとき、電流値検出部44により検出されたモータ3に流れる電流に応じて、モータ3の駆動を停止する制御を行う。ここでは、予め設定された船縁停止位置の所定の範囲内にあるとき、たとえばモータ3に大きな電流が流れたとき、すなわち、モータ3に大きな負荷が生じたときにモータ3の駆動を停止させることができるので、ストッパSがストッパガイド10に強く引き込まれてストッパS及びストッパガイド10が破損するのを防止できる。
【0033】
この電動リールでは、釣糸係止部20は、基端部20bがスプール2の貫通孔2eに係止され、第1軸受部材21は、スプール2の貫通孔2eに圧入固定されている。ここでは、従来のように釣糸係止部20をスプール2に装着固定するためにねじ部材を取り付ける必要がなくなるので、スプール2全体の重量が減少し、スプール2の慣性力が低減することによって、スプール2の滑らかな回転を阻害することがなくなる。さらに、ここでは、ねじ部材を取り付けることで部品点数及び組立工程が増加することがなくなるので、製造コストを抑えることができる。したがって、スプール2の滑らかな回転を阻害することなく、安価な構成で組み立て容易な釣糸係止部20を提供できる。
【0034】
〔他の実施形態〕
(a) 前記実施形態では、ワカサギ等の小魚を釣るときに使用される小型の電動リールを例にあげたが、電動リールの大きさや形状はこれに限定されるものではない。また、釣竿Rは、比較的短い長さの弾力性のあるティップであったが、釣竿Rの長さや形状はこれに限定されるものではない。
【0035】
(b) 前記実施形態では、電動リールのスプール2を例にあげたが、両軸受リールのスプールや、片軸受リールのスプールや、スピニングリールのスプールにも本発明を適用できる。
【0036】
(c) 前記実施形態では、3つの釣糸係止部20は、等間隔に配置された3箇所の装着溝2dに装着されていたが、釣糸係止部20及び装着溝2dの数や配置はこれに限定されるものではない。
【0037】
(d) 前記実施形態では、釣糸係止部20は、装着溝2dに接着固定されていたが、釣糸係止部20の固定方法はこれに限定されるものではなく、たとえば第1軸受部材21をスプール2の貫通孔2eに釣糸係止部20の基端部20bとともに圧入固定する構成にしてもよい。ここでは、第1軸受部材21を圧入するだけで釣糸係止部20を固定できるので、釣糸係止部20の組み立てが容易になる。さらに、ここでは、第1軸受部材21をスプール2の貫通孔2eに釣糸係止部20の基端部20bとともに圧入したとき、圧入された釣糸係止部20の基端部20bが第1軸受部材21の外周部に食い込む外圧が作用するので、第1軸受部材21がスプール2の貫通孔2eから抜けにくくなる。
【符号の説明】
【0038】
1 リール本体
1a 釣竿装着部
1b スプール収納凹部
1c 膨出部
1d 第1溝部
1e 第1突出部
1f 第2突出部
1g 第2溝部
1h 壁部
2 スプール
2a 糸巻胴部
2b 第1フランジ部
2c 第2フランジ部
2d 装着溝
2e 貫通孔
2f 凹み部
3 モータ
3a 係合溝
4 第1スイッチ操作部
5 第2スイッチ操作部
6 表示部
6a 水深表示部
6b バッテリ残量表示部
6c スイッチ操作部状態表示部
6d 速度表示部
7 第3スイッチ操作部
8 第4スイッチ操作部
9 クラッチ操作部
10 ストッパガイド
10a 接触孔部
10b 第1連結部
10c 第2連結部
10d 第1装着部
10e 第2装着部
11 スプール軸
11a ねじ部
20 釣糸係止部
20a 本体部
20b 基端部
20c 先端部
21 第1軸受部材
22 第2軸受部材
23 カラー部材
24 ナット部材
24a ねじ孔
24b 貫通孔
24c 内フランジ部
25 Oリング
26 マグネット
30 リール制御部
31 モータ制御部
32 表示制御部
40 モータホルダ
40a 係合突起
41 スプールセンサ
42 スプールカウンタ
43 記憶部
44 電流値検出部
G ガイドリング
H 仕掛け
K 結び目
L 釣り糸
M 道糸
R 釣竿
S ストッパ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り糸を巻き取る釣り用リールであって、
リール本体と、
前記リール本体に装着されるスプール軸と、
前記スプール軸に回転可能に支持され、前記スプール軸が挿通される貫通孔を有する糸巻き用のスプールと、
基端部が前記貫通孔に係止され、先端部が前記スプールの外周部に露出して配置され、前記先端部と前記スプールの外周部との間で前記釣り糸を挟持可能な釣糸係止部と、
前記スプール軸と前記スプールとの間に配置され、前記スプールの前記貫通孔に圧入固定される軸受部材と、
を備えた釣り用リール。
【請求項2】
前記スプールは、前記外周部と前記貫通孔とを連通し、前記釣糸係止部が装着される装着溝を有している、請求項1に記載の釣り用リール。
【請求項3】
前記装着溝は、複数箇所に設けられ、
複数の前記釣糸係止部は、それぞれ複数の前記装着溝に装着されている、請求項2に記載の釣り用リール。
【請求項4】
前記スプールは、外周に前記釣り糸が巻き付けられ内周に前記貫通孔を有する筒状の糸巻胴部と、前記糸巻胴部の一端に径方向外方に突出して設けられ径方向に沿って前記装着溝を有する第1フランジ部と、前記糸巻胴部の他端に径方向外方に突出して設けられた第2フランジ部とを有している、請求項2又は3に記載の釣り用リール。
【請求項5】
前記釣糸係止部は、前記基端部が前記第1フランジ部の前記装着溝から前記糸巻胴部の前記貫通孔に沿って折れ曲がるように形成されている、請求項4に記載の釣り用リール。
【請求項6】
前記釣糸係止部は、前記先端部が前記第1フランジ部の前記装着溝から前記第1フランジ部の外縁部に沿って折れ曲がるように形成されている、請求項4又は5に記載の釣り用リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2012−60962(P2012−60962A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209843(P2010−209843)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】