説明

釣り用リール

【課題】釣り用リールにおいて、スプールの滑らかな回転を維持できるようにする。
【解決手段】スプール2は、糸巻胴部2aと、第1フランジ部2bと、第2フランジ部2cと、糸巻胴部2aの内周部を貫通する貫通孔2eと、第1フランジ部2bの径方向に沿って外周部と貫通孔2eとを連通するように形成され釣糸係止部20が装着される装着溝2dとを有している。貫通孔2eは、第1フランジ部2b側に開口し第1フランジ部2b側の開口から装着された筒状部材27が圧入固定される第1凹部2fと、第2フランジ部2c側に開口し第2フランジ部2c側の開口から装着された第2軸受部材22が圧入固定される第2凹部2gとを有している。第1軸受部材21は、スプール軸11と筒状部材27との間に配置され、第2軸受部材22は、スプール軸11と第2凹部2gとの間に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り用リール、特に、釣り糸を巻き取る釣り用リールに関する。
【背景技術】
【0002】
釣り用リールは、たとえば、氷結した湖上やドーム船上からワカサギ等の小魚を釣るときに使用される小型の電動リールが知られている。この種の電動リールは、ティップと呼ばれる比較的短く弾力性のある釣竿が装着されるリール本体と、リール本体に配置され釣り糸を巻き取るスプールと、スプールを回転させるモータと、リール本体の側部に配置されモータの駆動をオン、オフするスイッチ操作部とを備えている。このような電動リールでは、操作スイッチをオン操作することによりモータを駆動してスプールを回転させることによって釣り糸を巻き取る。
【0003】
このような電動リールでは、現在の棚位置を記憶するために、釣り糸をスプールの外周部に装着されたラインストッパー(釣糸係止部)に係止することがある(たとえば、非特許文献1参照)。ここでは、釣糸係止部に釣り糸を係止しておくことによって、次回仕掛けを投入するときに、前回の棚位置まで釣り糸を繰り出すことができる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】インターネット<URL:http://www.yety.jp/index.html>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記従来の釣糸係止部は、基端部がスプールの内周部にねじ部材によって装着固定されているので、特に小型のスプールの場合には、ねじ止めのスペースを確保したり、小さい釣糸係止部を組み付けた状態で小さいねじ部材を取り付けるのは非常に困難である。
【0006】
そこで、このような問題を解決するために、釣糸係止部の基端部をスプールの貫通孔に係止し、軸受部材をスプールの貫通孔に圧入固定することによって、釣糸係止部をスプールに装着固定することが考えられる。ここでは、従来のように釣糸係止部をスプールに装着固定するためにねじ部材を取り付ける必要がなくなる。
【0007】
しかし、釣糸係止部の基端部をスプールの貫通孔に係止し、軸受部材をスプールの貫通孔に圧入固定すると、釣糸係止部の基端部が軸受部材の外周部と直接接触することになるので、釣糸係止部の基端部が軸受部材の外周部を押圧する付勢力が作用する。このように、釣糸係止部の基端部が軸受部材の外周部を押圧する付勢力が作用すると、特に、軸受部材の一部分に付勢力が作用すると、軸受部材が傾いて、スプールの滑らかな回転を阻害するおそれが生じる。
【0008】
本発明の課題は、釣り用リールにおいて、スプールの滑らかな回転を維持できるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明1に係る釣り用リールは、釣り糸を巻き取る釣り用リールであって、リール本体と、スプール軸と、スプールと、釣糸係止部と、筒状部材と、軸受部材とを備えている。スプール軸は、記リール本体に装着されている。スプールは、スプール軸に回転可能に支持され、スプール軸が挿通される貫通孔を有する糸巻き用の部材である。釣糸係止部は、基端部が貫通孔に係止され、先端部がスプールの外周部に露出して配置され、先端部とスプールの外周部との間で釣り糸を挟持可能な部材である。筒状部材は、スプールの貫通孔に圧入固定される筒状の部材である。軸受部材は、スプール軸と筒状部材との間に配置されている。
【0010】
この釣り用リールでは、釣糸係止部は、基端部がスプールの貫通孔に係止され、筒状部材は、スプールの貫通孔に圧入固定され、軸受部材は、スプール軸と筒状部材との間に配置されている。ここでは、釣糸係止部の基端部がスプールの貫通孔に係止され、軸受部材の外周部に配置された筒状部材がスプールの貫通孔に圧入固定されているので、釣糸係止部の基端部が軸受部材の外周部と直接接触することがなくなる。ここでは、釣糸係止部の基端部が軸受部材の外周部と直接接触していないので、釣糸係止部の基端部が筒状部材の一部分に付勢力が作用したとしても、軸受部材の一部分に付勢力が作用しにくくなる。したがって、軸受部材の一部分に付勢力が作用しにくくなることで、軸受部材が傾きにくくなるので、スプールの滑らかな回転を維持することができる。
【0011】
発明2に係る釣り用リールは、発明1の釣り用リールにおいて、筒状部材は、内周部に軸受部材が配置される本体筒部と、本体筒部の一端に設けられ軸受部材の一端が接触可能な抜け止め部とを有している。この場合、軸受部材を筒状部材に対して軸方向に抜け止めできるので、軸受部材を装着した状態で筒状部材をスプールの貫通孔に着脱することで、組立性を向上できる。
【0012】
発明3に係る釣り用リールは、発明2の釣り用リールにおいて、抜け止め部は、本体筒部の一端内周部に突出して一体成形された環状部である。この場合、筒状部材の径方向の強度を向上できる。
【0013】
発明4に係る釣り用リールは、発明1から3のいずれかの釣り用リールにおいて、スプールは、外周に前記釣り糸が巻き付けられ内周に貫通孔を有する筒状の糸巻胴部と、糸巻胴部の一端に径方向外方に突出して設けられ径方向に沿って釣糸係止部が装着される第1フランジ部と、糸巻胴部の他端に径方向外方に突出して設けられた第2フランジ部とを有している。貫通孔は、第1フランジ部側に開口し、第1フランジ部側の開口から装着された筒状部材が圧入固定される第1凹部を有している。この場合、釣糸係止部は、基端部がスプールの第1凹部に係止され、筒状部材は、スプールの第1凹部に圧入固定されるので、スプールの滑らかな回転を維持できる。
【0014】
発明5に係る釣り用リールは、発明4の釣り用リールにおいて、貫通孔は、第2フランジ部側に開口する第2凹部をさらに有している。第1凹部は、第2凹部より大径になるように形成されている。この場合、筒状部材の内周部に装着される軸受部材と外径が同一の軸受部材を第2凹部の内周部に装着しても、第1凹部に筒状部材を装着できる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、釣り用リールにおいて、釣糸係止部は、基端部がスプールの貫通孔に係止され、筒状部材は、スプールの貫通孔に圧入固定され、軸受部材は、スプール軸と筒状部材との間に配置されているので、スプールの滑らかな回転を維持できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態を採用した電動リールの平面図。
【図2】前記電動リールの右側面図。
【図3】前記電動リールを前方から見たときの斜視図。
【図4】前記電動リールの制御ブロック図。
【図5】前記スプールの分解斜視図。
【図6】釣糸係止部装着部を装着したときの前記スプールの拡大断面図。
【図7】前記釣糸係止部装着部、第1軸受部材、カラー部材、筒状部材、第2軸受部材及びスプール軸を装着したときの前記スプールの拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一実施形態が採用された電動リールは、図1から図3に示すように、たとえば、氷結した湖上やドーム船上からワカサギ等の小魚を釣るときに使用される小型の電動リールである。この電動リールは、ティップと呼ばれる比較的短く弾力性のある釣竿Rが前部に装着されるリール本体1と、リール本体1の右上前部に配置され釣り糸を巻き取るスプール2と、リール本体1の内部に配置されスプール2を回転させるモータ3(図4参照)と、リール本体1の右側部及び左側部に配置されモータ3の駆動をオン、オフする第1スイッチ操作部4及び第2スイッチ操作部5と、リール本体1の上面に配置され各種の情報を表示する表示部6と、リール本体1の上面の表示部6の後部に配置されスイッチモード等の切り換え設定を行う第3スイッチ操作部7及び第4スイッチ操作部8と、リール本体1の上面の表示部6の前部に配置されモータ3のスプール2への回転伝達をオン、オフするクラッチ操作部9とを備えている。また、リール本体1の前部には、釣竿Rが装着される筒状に突出した釣竿装着部1aが形成されており、釣竿装着部1a及び釣竿Rの基端部外周には、釣り糸に設けられたストッパが接触して釣り糸の巻き取りを停止させるストッパガイド10が着脱自在に装着されている。このような電動リールでは、第1スイッチ操作部4及び第2スイッチ操作部5をオン操作することによりモータ3を駆動してスプール2を回転させることによって釣り糸を巻き取る。なお、この電動リールでは、釣り糸の巻き取りはモータ3の駆動のみによってスプール2を回転させることによって行われ、スプール2を手動で回転させるハンドル等を備えていない。
【0018】
リール本体1は、図1から図3に示すように、全体を片手で把持可能な大きさとなるように形成され、合成樹脂製の複数のケース部材を組み立てることによって形成された内部に収納空間を有する前後に長い筐状部材である。リール本体1は、図1から図3に示すように、右下前部から前方に突出し釣竿Rが装着される円筒状の釣竿装着部1aと、右上前部が他の部分より凹んで形成されスプール2が配置されるスプール収納凹部1bとを有している。
【0019】
スプール2は、図1から図3に示すように、リール本体1の右上前部が他の部分より凹んで形成されたスプール収納凹部1bの側部に装着されたスプール軸11(図7参照)に回転可能に支持され、全体がスプール収納凹部1b内に配置されている。
【0020】
スプール2は、図5及び図6に示すように、外周に釣り糸が巻き付けられる筒状の糸巻胴部2aと、糸巻胴部2aの一端に径方向外方に突出して設けられた第1フランジ部2bと、糸巻胴部2aの他端に径方向外方に突出して設けられた第2フランジ部2cと、糸巻胴部2aの内周部を貫通しスプール軸11(図7参照)が挿通される貫通孔2eと、第1フランジ部2bの径方向に沿って外周部と貫通孔2eとを連通するように形成され釣糸係止部20が装着される装着溝2dとを有している。
【0021】
糸巻胴部2aは、図5から図7に示すように、スプール軸11よりやや大径の筒状部材である。第1フランジ部2bのスプール収納凹部1bの側部対向面には、図5に示すように、2つのマグネット26が接着固定されている。2つのマグネット26は、リール本体1の内部に装着された図示しないリードスイッチと対向する位置に配置され、スプール2の回転数を検出するためのものである。
【0022】
貫通孔2eは、図6及び図7に示すように、第1フランジ部2b側に開口し第1フランジ部2b側の開口から装着された筒状部材27が圧入固定される第1凹部2fと、第2フランジ部2c側に開口し第2フランジ部2c側の開口から装着された第2軸受部材22が圧入固定される第2凹部2gとを有している。第1凹部2f及び第2凹部2gは、貫通孔2eの中央部分より大径になるように形成された環状凹部であって、第1凹部2fは、第2凹部2gより大径になるように形成されている。第1凹部2fは、図6に示すように、釣糸係止部20の基端部20bを第1凹部2fに係止した後に、第1フランジ部2b側の開口から内周部に第1軸受部材21が装着された状態の筒状部材27が圧入固定されている。第2凹部2gは、図6に示すように、第2フランジ部2c側の開口からカラー部材23が装着された後に、第2フランジ部2c側の開口から第2軸受部材22が圧入固定されている。
【0023】
第1軸受部材21は、図5及び図7に示すように、内周部がスプール軸11を支持する内輪21aと、外周部が筒状部材27の内周部に装着される外輪21bと、内輪21aと外輪21bとの間に配置された転動体21cとを有する玉軸受である。第2軸受部材22は、図5及び図7に示すように、内周部がスプール軸11を支持する内輪22aと、外周部が第2凹部2gの内周部に装着される外輪22bと、内輪22aと外輪22bとの間に配置された転動体22cとを有する玉軸受である。第1軸受部材21及び第2軸受部材22は、外径及び内径が同一の玉軸受である。第1軸受部材21は、スプール軸11と筒状部材27との間に配置され、第2軸受部材22は、スプール軸11と第2凹部2gとの間に配置されている。
【0024】
筒状部材27は、図5及び図7に示すように、第1凹部2fに圧入固定される筒状の部材であって、内周部に第1軸受部材21が装着される本体筒部27aと、本体筒部27aの一端(図7左側端部)に設けられ第1軸受部材21の一端(図7左側端部)が接触可能な抜け止め部27bとを有している。抜け止め部27bは、本体筒部27aの一端内周部に突出して一体成形された環状部である。抜け止め部27bは、第1軸受部材21を筒状部材27に対して軸方向に抜け止めするためのものであって、第1軸受部材21を筒状部材27に装着した状態で、筒状部材27を第1凹部2fに着脱可能である。
【0025】
カラー部材23は、図7に示すように、第1軸受部材21と第2軸受部材22との間に配置されるスペーサであって、内周部にスプール軸11が挿通される筒状部材である。スプール軸11の先端部には、図5に示すように、ナット部材24がねじ込まれ、Oリング25によって緩み止めされている。
【0026】
釣糸係止部20は、図1から図3、図5から図7に示すように、基端部20bがスプール2の第1凹部2fに係止され、先端部20cがスプール2の第1フランジ部2bの外周部に露出して配置され、先端部20cとスプール2の第1フランジ部2bの外周部との間で釣り糸を挟持可能な金属製の線材部材である。釣糸係止部20は、図2、図3及び図5に示すように、1本の線材部材を折り曲げて2本の線材形状となるように形成されており、同一形状のものを3つ備えており、3つの釣糸係止部20が等間隔に配置された3箇所の装着溝2dに装着されている。釣糸係止部20は、図6に示すように、装着溝2dに装着される本体部20aと、本体部20aの基端側に一体成形された基端部20bと、本体部20aの先端側に一体成形された先端部20cとを有している。本体部20aは、装着溝2dに装着される直線状の部分であって、装着溝2dに接着固定される。基端部20bは、第1フランジ部2bの装着溝2dから第1凹部2fの一部が釣糸係止部20の厚み程度凹んで形成された凹み部2hに沿って折り曲げられており、これによって、釣糸係止部20の基端部20bは、第1凹部2fに係止される。先端部20cは、第1フランジ部2bの装着溝2dから第1フランジ部2bの外縁部に沿って折れ曲がるように形成されている。先端部20cと第1フランジ部2bの外周部との間には僅かな隙間が生成されており、この隙間に釣り糸を挟持可能である。
【0027】
このようなスプール2及び釣糸係止部20を組み立てるには、まず、1本の線材部材を折り曲げて2本の線材形状となるように形成し、先端部20cを第1フランジ部2bの装着溝2dから第1フランジ部2bの外縁部に沿う形状になるように折り曲げ、基端部20bを第1フランジ部2bの装着溝2dから第1凹部2fの凹み部2hに沿う形状になるように予め折り曲げた釣糸係止部20を用意する。この状態で、図6に示すように、釣糸係止部20の基端部20b及び本体部20aを第1フランジ部2bの装着溝2dに装着し、釣糸係止部20の基端部20bを第1凹部2fに係止する。次に、第1フランジ部2bの装着溝2dに装着された釣糸係止部20の本体部20aを接着剤により固定する。そして、第1フランジ部2b側の開口から内周部に第1軸受部材21を筒状部材27に装着した状態で、筒状部材27を第1凹部2fに圧入固定し、第2フランジ部2c側の開口からカラー部材23を装着した後に、第2フランジ部2c側の開口から第2軸受部材22を第2凹部2gに圧入固定する。次に、スプール軸11を第2軸受部材22、カラー部材23、第1軸受部材21の順に挿通させ、スプール軸11の先端部のねじ部にナット部材24のねじ孔を螺合することによって、スプール2はスプール軸11に回転可能に支持される。
【0028】
モータ3(図4参照)は、リール本体1の内部に配置され、モータ3の回転をスプール軸11に伝達することによって、スプール2を回転させる。この回転伝達機構内には、図示しないクラッチ機構を有しており、クラッチ操作部9(図1参照)のオン、オフ操作によって、回転伝達がオン、オフされる。
【0029】
第1スイッチ操作部4は、図1から図3に示すように、リール本体1の右側部に配置され、モータ3の駆動をオン、オフするスイッチである。第2スイッチ操作部5は、図1に示すように、リール本体1の左側部に配置されモータ3の駆動をオン、オフするスイッチである。第1スイッチ操作部4及び第2スイッチ操作部5は、図1に示すように、それぞれリール本体1の左右側部の対称となる位置に配置されている。リール本体1は、全体を片手で把持可能な大きさとなるように形成されている。第1スイッチ操作部4及び第2スイッチ操作部5は、それぞれ親指又は人差し指で操作可能なリール本体の左右側部に配置されている。具体的には、左手で操作する場合には、第1スイッチ操作部4を親指で操作可能であり、第2スイッチ操作部5を人差し指で操作可能である。また、右手で操作する場合には、第1スイッチ操作部4を人差し指で操作可能であり、第2スイッチ操作部5を親指で操作可能である。このような第1スイッチ操作部4及び第2スイッチ操作部5には、モータ3の駆動をさせるスイッチモードとして、寸動スイッチモードと連続スイッチモードとの2つのスイッチモードが割り当てられている。具体的には、寸動スイッチモードは、第1スイッチ操作部4又は第2スイッチ操作部5がオン操作されているときのみモータ3を回転させ、第1スイッチ操作部4又は第2スイッチ操作部5がオン操作されていないときモータ3を停止させるスイッチモードである。また、連続スイッチモードは、第1スイッチ操作部4又は第2スイッチ操作部5が1回オン操作されたときにモータ3を回転させ、第1スイッチ操作部4又は第2スイッチ操作部5が再度1回オン操作されたときにモータ3を停止させるスイッチモードである。そして、第3スイッチ操作部7及び第4スイッチ操作部8を同時押しすることによって、リール本体1右側部に配置された第1スイッチ操作部4及びリール本体1左側部に配置された第2スイッチ操作部5に割り振られた寸動スイッチモード及び連続スイッチモードを逆に切り換えるようになっている。このようなスイッチモードの切り換えは、後述するリール制御部30(図4参照)が第3スイッチ操作部7及び第4スイッチ操作部8を同時押しを検出すると、リール制御部30が第1スイッチ操作部4及び第2スイッチ操作部5に寸動スイッチモード又は連続スイッチモードの機能を割り当てる制御を行うことによって、スイッチモードを切り換えている。
【0030】
表示部6は、図1に示すように、リール本体1の上面に配置され、各種の情報を表示するセグメント方式の液晶ディスプレイであって、クラッチ操作部9と第3スイッチ操作部7及び第4スイッチ操作部8との間に配置されている。
【0031】
第3スイッチ操作部7及び第4スイッチ操作部8は、図1に示すように、リール本体1の上面に配置されスイッチモード等の切り換え設定を行うスイッチである。第3スイッチ操作部7及び第4スイッチ操作部8は、表示部の後部に配置され、右側に第3スイッチ操作部7が位置し、左側に第4スイッチ操作部8が位置するように並べて配置されている。ここでは、第3スイッチ操作部7及び第4スイッチ操作部8を同時押しすることによって、リール本体1右側部に配置された第1スイッチ操作部4及びリール本体1左側部に配置された第2スイッチ操作部5に割り振られた寸動スイッチモード及び連続スイッチモードを逆に切り換える。
【0032】
リール本体1の内部には、CPU、RAM、ROM、I/Oインターフェイス等を含むマイクロコンピュータを含むリール制御部30(図4参照)が配置されている。リール制御部30は、図4に示すように、第1スイッチ操作部4、第2スイッチ操作部5、第3スイッチ操作部7及び第4スイッチ操作部8の各種のスイッチ操作部と、スプール2の回転方向及び回転数(回転位置データ)を検出するためのスプールセンサ41及びスプールカウンタ42と、モータ3に流れる電流値を検出する電流値検出部44と、制御プログラムに従ってモータ3の駆動制御を行うモータ制御部31と、表示部6の表示制御を行う表示制御部32と、各種のデータを記憶する記憶部43と、他の入出力部とが接続されている。スプールセンサ41は、前後に並べて配置された2つのリードスイッチから構成されている。リードスイッチは、スプール2に装着された2個のマグネット26を検出する。この検出パルスをスプールカウンタ42で計数することでスプール2の回転数を検出できる。また、いずれのリードスイッチが先に検出パルスを発したかによりスプール2の回転方向を検出できる。スプールカウンタ42は、スプールセンサ41のオンオフ回数を計数するカウンタであり、この計数値によりスプール回転数に関する回転位置データが得られる。スプールカウンタ42は、スプール2が正転(糸繰り出し方向の回転)すると計数値が減少し、逆転すると増加する。記憶部43はたとえばEEPROM等の不揮発メモリからなり、学習結果のデータや糸長算出時に使用する各種のデータ等が記憶されている。電流値検出部44は、モータ3に流れる電流値を検出する電流計測センサである。モータ制御部31は、スプール2の回転数に応じた所定の位置(たとえば仕掛けHが釣竿Rの先端部位置、すなわち船縁位置)自動的にモータ3の駆動を停止して釣り糸の巻き取りを停止させる船縁停止機能を実現させている。具体的には、モータ制御部31は、スプールカウンタ42により検出されたスプール2の回転数が予め設定されたモータ3の駆動を停止させるスプール2の回転数から所定の範囲(たとえば船縁停止位置から所定の距離)内にあるとき、電流値検出部44により検出されたモータ3に流れる電流に応じて、モータ3の駆動を停止する制御を行う。
【0033】
この電動リールでは、釣糸係止部20は、基端部20bがスプール2の第1凹部2fに係止され、筒状部材27は、スプール2の第1凹部2fに圧入固定され、第1軸受部材21は、スプール軸11と筒状部材27との間に配置されている。ここでは、釣糸係止部20の基端部20bがスプール2の第1凹部2fに係止され、第1軸受部材21の外周部に配置された筒状部材27がスプール2の第1凹部2fに圧入固定されているので、釣糸係止部20の基端部20bが第1軸受部材21の外周部と直接接触することがなくなる。ここでは、釣糸係止部20の基端部20bが第1軸受部材21の外周部と直接接触していないので、釣糸係止部20の基端部20bが筒状部材27の一部分に付勢力が作用したとしても、第1軸受部材21の一部分に付勢力が作用しにくくなる。したがって、第1軸受部材21の一部分に付勢力が作用しにくくなることで、第1軸受部材21が傾きにくくなるので、スプール2の滑らかな回転を維持することができる。
【0034】
〔他の実施形態〕
(a) 前記実施形態では、ワカサギ等の小魚を釣るときに使用される小型の電動リールを例にあげたが、電動リールの大きさや形状はこれに限定されるものではない。また、釣竿Rは、比較的短い長さの弾力性のあるティップであったが、釣竿Rの長さや形状はこれに限定されるものではない。
【0035】
(b) 前記実施形態では、電動リールのスプール2を例にあげたが、手巻きの両軸受リールのスプールのスプールにも本発明を適用できる。
【0036】
(c) 前記実施形態では、3つの釣糸係止部20は、等間隔に配置された3箇所の装着溝2dに装着されていたが、釣糸係止部20及び装着溝2dの数や配置はこれに限定されるものではない。
【0037】
(d) 前記実施形態では、筒状部材27は、本体筒部27aと抜け止め部27bとを有していたが、抜け止め部27bを設けないで本体筒部27aのみで構成してもよい。
【符号の説明】
【0038】
1 リール本体
1a 釣竿装着部
1b スプール収納凹部
2 スプール
2a 糸巻胴部
2b 第1フランジ部
2c 第2フランジ部
2d 装着溝
2e 貫通孔
2f 第1凹部
2g 第2凹部
2h 凹み部
3 モータ
4 第1スイッチ操作部
5 第2スイッチ操作部
6 表示部
7 第3スイッチ操作部
8 第4スイッチ操作部
9 クラッチ操作部
10 ストッパガイド
11 スプール軸
20 釣糸係止部
20a 本体部
20b 基端部
20c 先端部
21 第1軸受部材
21a 内輪
21b 外輪
21c 転動体
22 第2軸受部材
22a 内輪
22b 外輪
22c 転動体
23 カラー部材
24 ナット部材
25 Oリング
26 マグネット
27 筒状部材
27a 本体筒部
27b 抜け止め部
30 リール制御部
31 モータ制御部
32 表示制御部
41 スプールセンサ
42 スプールカウンタ
43 記憶部
44 電流値検出部
R 釣竿

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り糸を巻き取る釣り用リールであって、
リール本体と、
前記リール本体に装着されるスプール軸と、
前記スプール軸に回転可能に支持され、前記スプール軸が挿通される貫通孔を有する糸巻き用のスプールと、
基端部が前記貫通孔に係止され、先端部が前記スプールの外周部に露出して配置され、前記先端部と前記スプールの外周部との間で前記釣り糸を挟持可能な釣糸係止部と、
前記スプールの前記貫通孔に圧入固定される筒状の筒状部材と、
前記スプール軸と前記筒状部材との間に配置される軸受部材と、
を備えた釣り用リール。
【請求項2】
前記筒状部材は、内周部に前記軸受部材が配置される本体筒部と、前記本体筒部の一端に設けられ前記軸受部材の一端が接触可能な抜け止め部とを有している、請求項1に記載の釣り用リール。
【請求項3】
前記抜け止め部は、前記本体筒部の一端内周部に突出して一体成形された環状部である、請求項2に記載の釣り用リール。
【請求項4】
前記スプールは、外周に前記釣り糸が巻き付けられ内周に前記貫通孔を有する筒状の糸巻胴部と、前記糸巻胴部の一端に径方向外方に突出して設けられ径方向に沿って前記釣糸係止部が装着される第1フランジ部と、前記糸巻胴部の他端に径方向外方に突出して設けられた第2フランジ部とを有しており、
前記貫通孔は、前記第1フランジ部側に開口し、前記第1フランジ部側の開口から装着された前記筒状部材が圧入固定される第1凹部を有している、請求項1から3のいずれか1項に記載の釣り用リール。
【請求項5】
前記貫通孔は、前記第2フランジ部側に開口する第2凹部をさらに有し、
前記第1凹部は、前記第2凹部より大径になるように形成されている、請求項4に記載の釣り用リール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−22007(P2013−22007A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−163077(P2011−163077)
【出願日】平成23年7月26日(2011.7.26)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】