説明

釣り用ルアーおよびその製造方法

【課題】
木製ルアーはプラスチック製ルアーに比べ生分解されやすいという特徴を有する。しかし、木製ルアーはルアーごとに重心位置が異なり、設計通りの動きをしない場合がある。また、木製ルアーの表面加工には手間がかかっていた。
【解決手段】
胴体部と、釣り糸締結部と、釣り針結合部とを備える釣り用ルアーの該胴体部の主材料を木粉とする。これにより、胴体部全体の比重が均一で、かつ、複雑な成形が容易にできる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は釣り用ルアーおよびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
現在流通している釣り用ルアーは、胴体部の主材料としてプラスチックが採用されているものと木材が採用されているものに分けることができる。プラスチックは加工が容易で成形しやすいため、プラスチック製の胴体部は多くのルアーで採用されている。ところが、プラスチックは生分解されないため、釣り場でプラスチック製のルアーをロストしてしまうと湖や海を汚す原因となってしまう。これに対して、木製のルアーは生分解されやすいため、釣り場でロストしても湖や海を汚す原因とはなりにくい。また、木製ルアーはプラスチック製ルアーに比べ軽い等の理由により、水中で操りやすいという特徴を有している。このように、環境保護の観点から、また、木製ルアーならではの動きの良さから、木製ルアーを好む人が多く、未だ多くの需要がある。
【0003】
図3(a)〜(c)は、従来の木製ルアーの製造工程及び構造を表した図である。従来、木製ルアーは図3(a)に示すように、丸太材100から木片101や木片102といった複数の木片を切り出し、切り出された木片101や木片102を任意の形状に加工するという工程を経て製造されていた。ところが、木片は切り出される位置によって、比重が異なり、また、木片全体が均一な密度ではないので、木片の重心位置も異なる。例えば木片101と木片102とでは、同じ形状であっても重心位置が異なる。これにより、胴体部を同じ小魚形に加工しても、ルアーによっては左右のバランスがとれないものもあり、全てのルアーが同じ動きになるとは限らない。そのため、品質が均一である量産品を作るのは非常に困難で、量産品であっても1点1点泳がせて動きを確認しなければならないという問題があった。
【0004】
また、木製ルアーにおもりを内蔵させるには、図3(b)に示すように胴体部103の内部に一旦穴部105を開け、おもり104を胴体部に挿入した後、さらに穴部105をふさぐ必要があった。そのため、作業に手間がかかるという問題があった。
【0005】
さらに、木製ルアーの表面加工は切削加工で行わなければならず、複雑な加工の場合は手作業で行う必要があった。そのため、複雑な形状を有するルアーや変形ルアーの量産はできず、量産品のルアーは形状が制限されるという問題があった。
【0006】
また、強度よりも加工の容易性を重視し、図3(c)のように一方がネジクギ状で他方がリング状になっているヒートン106を胴体部103にねじ込み、釣り糸締結部や釣り針連結部としていた。そのため、ルアーの使用状況によっては、釣り糸締結部等の強度が十分でないという問題があった。
【0007】
なお、関連する文献公知発明として、胴体部を3分割して木製ルアーの製作を容易にする方法が特許文献1に開示されている。ところが、この方法によってもなお、ルアー表面の切削加工や胴体の接着工程など複雑な工程を経る必要がある。
【特許文献1】特開2005−102677
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、胴体部全体の比重が均一で、かつ、複雑な成形が容易にできる木製ルアーおよびその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するため、本願発明の釣り用ルアーは、胴体部と、釣り糸締結部分と、釣り針連結部とを備える釣り用ルアーの該胴体部の主材料を木粉とする。これにより、ルアー胴体部全体の比重を均一にでき、かつ、複雑な成形も容易に行うことができる。該胴体部が臭気材を含むようにしてもよい。
【0010】
また、釣り用ルアーの胴体部の製造方法は、木粉とバインダーとを混ぜ合わせて成形材を作る工程と、成形型を介して該成形材に圧力と熱とを加えることにより該成形材を該胴体部の形状に成形する工程とを備えるものとする。
【発明の効果】
【0011】
本願発明によれば、木製の釣り用ルアーの胴体部全体の比重を均一にすることができ、かつ、複雑な成形が容易にできる。
【0012】
また、本願発明に係る製造方法によれば、木粉とバインダーの材料や両者の割合を変えることで、ルアーの重さや硬さを任意に変えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、図を参照しつつ、本願発明に係る釣り用ルアーAの実施をするための最良の形態について説明する。
【0014】
まず、図1を参照しつつ、本願発明の一実施形態たる釣り用ルアーAについて説明する。図1は、釣り用ルアーAの断面図である。釣り用ルアーAは胴体部10と、おもり11と、釣り糸締結部12と、釣り針連結部13とを備える。
【0015】
胴体部10の形状は小魚を擬似した流線形状である。胴体部10は小魚に見えるように、小魚の目、エラに該当する部分の表面が凹凸となっている。例えば、胴体部10の小魚の目に該当する部分は、表面が円形に凹んでいる。また、胴体部10の表面は、光沢のある金属色の着色がなされている。
【0016】
おもり11は、胴体部10に内蔵されている。おもり11の大きさ及び内臓される位置は、ルアーの使用環境や釣りの対象となる魚の種類等から決定される。例えば、水面近くを泳ぐ魚を対象とする場合は、比較的軽いおもりを使用する。
【0017】
釣り糸締結部12は、釣り糸を釣り用ルアーAに締結させる部分であり、胴体部10の小魚の頭にあたる部分の先端に位置する。
【0018】
釣り針連結部13は、釣り針を釣り用ルアーAに連結させる部分であり、胴体部10の小魚の尾にあたる部分の先端および腹部にあたる部分にそれぞれ位置する。
【0019】
おもり11と、釣り糸締結部12と、釣り針連結部13とはステンレスワイヤー14で連結されている。このようにステンレスワイヤー14で連結させることで釣り糸締結部12の強度が増加する。これにより、本実施形態に係る釣り用ルアーは、ヒートンを釣り糸締結部として使用していた従来の木製ルアーとは異なり、海でのトローリングのような釣り糸締結部に力がかかる場合であってもルアーをロストしにくくなる。
【0020】
胴体部10の主材料はバルサ材等の木粉である。胴体部10の主材料を木粉とすることで、胴体部10の全体の比重を一定にできる。これにより、ルアーの左右のバランスが取れなくなることはなく、同一の製造方法で製作したルアーであれば、水中での動きは同一となる。よって、量産品は同一の品質を維持することができるため、出荷の際に1点1点ルアーの動きを確認する必要がなくなる。
【0021】
また、胴体部10の主材料を木粉とすることで、後述するように胴体部10の成形は成形型を使用して行えるため、複雑な成形が容易に行うことができる。これにより、複雑な形状を有するルアーや変形ルアーであっても量産が可能である。
【0022】
さらに、本実施例にかかる木粉製ルアーは従来の木製ルアーが持っている有利な点も失ってはいない。つまり、木粉製ルアーは従来の木製ルアーと同様に釣り場でロストした場合であっても、生分解されやすいため湖や海を汚す原因とはなりにくい。
【0023】
次に、図2を参照しつつ、釣り用ルアーAの製造方法について説明する。図2は、釣り用ルアーAの製造工程図であって、(a)〜(c)はそれぞれの工程の概念図を表したものである。
【0024】
まず、成形材16を作る。成形材16は木粉とバインダーをと混ぜ合わせ、その後に水を加え、さらに粘土状になるまでかき混ぜることによって作ることができる。
【0025】
木粉は、木粉の中でも比重の小さいバルサ粉を用いる。バルサ粉は、バルサ材を粉砕機にかけて粒度が一定になるよう粉砕すれば得ることができる。バルサ粉は、パウダー状であってもよいし、チップ状であってもよい。バルサ粉の粒子の大きさを変えることで、粒子間に生じる隙間の大きさが変化するため、胴体部10の比重を変えることもできる。バルサ粉は間伐材等の廃材を利用しても作ることができ、また、ルアー製作時に切りくずも発生しないため無駄がなく、材料コストを抑えることができる。なお、本実施形態では木粉をバルサ粉としているが、桐、杉及びユーカリ等の他の木粉を用いることも可能である。
【0026】
バインダーは、木粉同士を接着するための接着剤および糊である。釣り用ルアーAをロストした際に釣り用ルアーAが生分解されるよう、バインダーは生分解されるものを用いるのが望ましい。例えば、接着剤であればメトローズ、カゼイン及び炭酸ナトリウム等を用いるのが望ましく、糊であればデンプン糊、合成糊及び菖蒲糊等を用いるのが望ましい。また、バインダーは重量比で木粉を90〜50%、バインダーを50〜10%で混合することによって作ることができる。
【0027】
一方、木粉やバインダーの材料や両者の混合割合を変えることで、釣り用ルアーAの重さや硬さを容易に調整できることから、おもりのみによって釣り用ルアーを調整する場合に比べ、より緻密な調整が可能となる。例えば、水面近くで使用できるようルアー自体は重くしたくないが、重心位置を大きく変えたいような場合は、胴体部の比重を小さくし、比較的重いおもりで重心位置を変更することが考えられる。また、比重の大きい木粉を含む木粉を使用し、バインダーとの混合割合を変えることで、おもりを有しない釣り用ルアーを作ることも考えられる。
【0028】
なお、木粉とバインダーを混ぜ合わせるときに、ニンニクや昆虫のさなぎなどを粉末状にした臭気材を一緒に混ぜ合わせることもできる。魚の好む臭いがルアーの胴体部10と同一形状に含まれることで、集魚効果を得ることができる。特に湖などの水の流れがあまり早くない場所では、臭気材入りルアーを用いると集魚に高い効果を発揮できる。
【0029】
次に図2(a)にあるように、下側金型17Bに成形材16を充填させる。下側金型17Bは上側金型17Aと対になって金型17となる。金型17は胴体部10を成形するためのものである。上側金型17Aと下側金型17Bとを合わせると、その間に胴体部10と同一形状を有する空間ができる。
【0030】
さらに、充填させた成形材16の上におもり11、釣り糸締結部12および釣り針連結部13をステンレスワイヤー14で連結させた骨幹部15を乗せる。また、必要により集魚効果を高める部品やルアーの動きを向上させる部品を乗せても良い。集魚効果を高めるものとして、例えば音を発生させるラトラーがある。
【0031】
次に図2(b)にあるように、成形材16の上に載せた骨幹部15の上に成形材16をさらに盛り、上側金型17Aで盛られた成形剤16を覆うようにして、上側金型17Aと下側金型17Bとを重ね合わせる。この状態で、プレス式成形機を用いて上側金型17Aと下側金型17Bの両側から成形材15に圧力をかける。圧力をかける際には熱も同時にかける。このように成形材15に圧力と熱を加えることにより、バインダーが固まって木粉が金型16の形状に沿って固定され、胴体部10が形成される。その後、成形された胴体部10を金型17から取り出す。本実施例では成形型として金型を使用しているが、金型の代わりに樹脂型、ゴム型、シリコンゴム型又は木型等を使用してもよい。
【0032】
次に図2(c)にあるように、成形された胴体部10を自然乾燥または強制乾燥によって乾燥させる。胴体部10を一旦乾燥させた後、成形の際に発生したバリ18を取り除く。バリ18は金型17からはみ出した成形材16が固まって、胴体部10の上側金型17Aと下側金型17Bの間に相当する個所に生じる。さらにバリ18を除去した胴体部10をクリアラッカーに漬け、再度乾燥させる。このクリアラッカーに漬けて乾燥させる作業を5、6回繰り返す。
【0033】
その後、胴体部分10の外部表面にアルミホロ箔を貼り付ける。アルミホロ箔は、小魚のうろこを擬似したもので、アップダウン式又はローラー式の機械により胴体部10に貼り付けられる。なお、従来の木製ルアーは、アップダウン式やローラー式の機械を用いることができず、アルミホロ箔の貼り付けは手作業で行われていた。これは、アップダウン式やローラー式の機械を用いると胴体部に大きな圧力がかかるところ、従来の木製ルアーは胴体部の表面及び内部が軟らかいため胴体部が変形してしまうからである。一方、本実施形態にかかる木粉製ルアーAは、プレス工程を経ているため、胴体部10の表面や内部を硬く仕上げることができ、アップダウン式やローラー式の機械の圧力によっても胴体部10が変形することはない。
【0034】
アルミホロ箔を貼り付けた後は、その上から着色を行う。着色はエアーブラシで塗料を胴体部10に吹き付けることによって行う。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本願発明によれば、木製の釣り用ルアーの胴体部全体の比重を一定にすることができ、かつ、複雑な成形が容易にできる。よって、釣り具用品の技術分野において、特に釣り用ルアーの技術分野において有益である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】図1は、釣り用ルアーの断面図である。
【図2】図2は、釣り用ルアーの製造工程図であって、(a)〜(c)はその工程の概念図である。
【図3】図3(a)〜(c)は、従来の木製ルアーの製造工程及び構造を表した図である。
【符号の説明】
【0037】
A 釣り用ルアー
10 胴体部
11 おもり
12 釣り糸締結部
13 釣り針連結部
14 ステンレスワイヤー
15 骨幹部
16 成形材
17 金型
18 ばり
100 丸太材
101、102 木片
103 胴体部
104 おもり
105 穴部
106 ヒートン



【特許請求の範囲】
【請求項1】
胴体部と、釣り糸締結部と、釣り針連結部とを備え、該胴体部の主材料が木粉であることを特徴とする釣り用ルアー。
【請求項2】
該胴体部に臭気材が含まれる請求項1記載の釣り用ルアー。
【請求項3】
釣り用ルアーの胴体部の製造方法であって、木粉とバインダーとを混ぜ合わせて成形材を作る工程と、成形型を介して該成形材に圧力と熱とを加えることにより該成形材を該胴体部の形状に成形する工程とを備える釣り用ルアーの胴体部の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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