説明

釣り用靴

【課題】 本発明は釣り用靴に関し、土踏まず部で船縁に足をかけた際に、確実にグリップ力が確保できる釣り用靴を提供することを目的とする。
【解決手段】 靴底の土踏まず部内の前側と後側に、釣船の船縁に土踏まず部を乗せた際に船縁の角部に係止する船縁係止用突部を、靴底の左右方向に設けたことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は釣り用靴に関し、詳しくは靴底に改良を加え、土踏まず部で船縁に足をかけた際に、確実にグリップ力が確保できる釣り用靴に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、靴底がラジアルやスパイクの釣り用靴は、歩行性能を重視して、通常の靴と同様、土踏まず部が上方にえぐれて地面に接地しない構造を採用している。
そして、ラジアルの釣り用靴は、土踏まず部を除く靴底の下面全体に滑り止めに好適な凹凸構造を持ったパターンを描いて必要なグリップ力を実現し、また、スパイクの釣り用靴は、ラジアルの靴底に更にスパイクを取り付けて高グリップ力を発揮させている。
【0003】
ところで、釣人は、磯釣りをする際に釣船に乗り込んで磯まで運んでもらったり、釣船で沖合に出て船上で釣りをすることが多いが、釣人が釣船に乗り込んだり降りたりする際に、船縁に足をかけて乗り降りすることがあり、このとき、釣人は船縁に土踏まず部を乗せることがある。
しかし、既述したように、従来、この種の釣り用靴は、靴底の下面に凹凸構造を持ったパターンを描いてグリップ力を実現しているが、靴底本来の柔軟性を確保し、また、歩行時に土踏まず部が地面に接地しないこともあって、土踏まず部にグリップ力を得る凹凸構造が設けられていなかった。
【0004】
このため、釣船の乗り降りの際に釣人が船縁に土踏まず部を乗せると、グリップ力がなくて滑り易い欠点があった。
尚、特許文献1には、土踏まず部に薄肉な平行リブ列を設けた山岳靴や長靴,釣り用靴等の靴底が開示されているが、この特許文献1の発明は、土踏まず部を除く靴底の下面全体に如何に滑り止めに好適な凹凸構造を設けるかを目的とするもので、土踏まず部には単に薄肉な平行リブ列を設けることで靴底本来の柔軟性を確保したものに過ぎず、船縁に土踏まず部を乗せた際に、従来と同様、グリップ力がなくて滑り易い欠点があった。
【0005】
また、特許文献2には、降雨,凍結,着氷,着雪路面及び高所で作業する際に滑りを防止するため、図7及び図8に示すように土踏まず部1を除く靴底3の下面全体に、滑り止めに好適な複数の突部5からなる凹凸構造7を設けると共に、土踏まず部1と土踏まず部1に対向するヒール部9の台構成部分に薄肉で細かな突条からなる滑り止め部11,13を設けた構造が開示されている。
【特許文献1】特開2002−177008号公報
【特許文献2】特開平10−113201号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし乍ら、前記靴底3を釣り用靴に適用した場合、薄肉で細かな突条からなる滑り止め部11は、その構造上、複数の突部5からなる凹凸構造7の如きグリップ作用はなく、このため、船縁に土踏まず部を乗せた際に、依然として滑り易い欠点がある。
而も、滑り止め部11は薄肉で細かいため、船縁の角部に対する当たり所がはっきりせず、船縁の角部と細かな突条の滑り止め部11の先端部同士が当接すると、船縁の角部の納まり所がなくなるため滑りを防止できない。
【0007】
また、一般に土踏まず部1は靴底3の前後方向に幅広に形成されているため、船縁にかけた足が滑って、土踏まず部1を挟んで対向する滑り止め部13や突部5a(土踏まず部1側に位置する突部5a)が船縁の角部に引っ掛かる迄に若干の間があり、その間、釣人は怖い思いをするといった欠点もあった。
本発明は斯かる実情に鑑み案出されたもので、土踏まず部で船縁に足をかけた際に、確実にグリップ力が確保できる釣り用靴を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
斯かる目的を達成するため、請求項1に係る発明は、靴底の土踏まず部内の前側と後側に、釣船の船縁に土踏まず部を乗せた際に船縁の角部に係止する船縁係止用突部を、靴底の左右方向に設けたことを特徴とする。
そして、請求項2に係る発明は、請求項1に記載の釣り用靴に於て、前記船縁係止用突部は、靴底の左右両側まで延設されていないことを特徴とし、請求項3に係る発明は、請求項1に記載の釣り用靴に於て、前記船縁係止用突部は、靴底の左右方向に延設された一つの突部からなることを特徴とし、更に、請求項4に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の釣り用靴に於て、前記船縁係止用突部は、靴底の左右方向に並設された複数の突部からなることを特徴とする。
【0009】
また、請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の釣り用靴に於て、前記船縁係止用突部の土踏まず部中央側の傾斜は、土踏まず部外側の傾斜に比し緩やかに形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
請求項1,請求項3及び請求項4に係る発明によれば、釣船の乗り降りの際に、土踏まず部で船縁に足をかけても、船縁の角部を包み込むようにホールドする船縁係止用突部によって確実にグリップ力が確保できるため、滑りを止めることができる利点を有する。
そして、請求項2に係る発明によれば、船縁係止用突部で船縁の角部に直接乗ってしまっても、体重で船縁係止用突部が変形して土踏まず部に沈み込み、船縁係止用突部の両側の土踏まず部が下方に出っ張るように変形して角部に接するため、更に確実に滑り止めが図れる利点を有する。
【0011】
また、請求項5に係る発明によれば、角部に係止する船縁係止用突部の傾斜が緩やかであると、角部との接触面積が大きくなって滑りをより確実に止めることができる利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1乃至図4は請求項1乃至請求項3及び請求項5に係る釣り用靴の一実施形態を示し、図1に於て、21は柔軟性に富んだウレタンスポンジ等の樹脂材料で形成された釣り用靴23のアッパー(本体部)、25は当該アッパー21の底部に取り付く靴底で、アッパー21は一般的な長靴と同様の形状に形成され、靴底25は弾性力,柔軟性に富んだゴム,合成樹脂で形成されている。そして、図1及び図2に示すように靴底25には、従来と同様、靴底25のつま先側接地部Tとかかと側接地部Kの間(足の土踏まずに該当する位置)に、地面41に接しないように形成した土踏まず部27が設けられると共に、土踏まず部27を除く靴底25の下面全体に、滑り止めに好適な各種形状の突部29からなる凹凸構造31を持ったパターンが描かれて、必要なグリップ力が確保されている。
【0013】
そして、本実施形態は、上述の如き従来と同様の構成に加え、図3に示すように、釣船の乗り降りで船縁33に土踏まず部27を乗せた際に、船縁33の角部35に係止する2つの船縁係止用突部37,39を土踏まず部27内に設けたことを特徴とする。
図1及び図2に示すように船縁係止用突部37,39は、夫々、土踏まず部27内の前側と後側に一体成形されて、靴底25の前側と後側に所定の間隔Lを空けて左右方向へ平行に延設された連続する一つの断面略円弧状の突部で構成されている。そして、図4に示すように両船縁係止用突部37,39は、前記突部29と略同一の厚肉に突設されているが、つま先側接地部Tとかかと側接地部Kに対し、凹状に形成した土踏まず部27内に設けられ、つま先側接地部T及びかかと側接地部Kより下方へ突出しないように形成されているため、歩行時にこれらは地面41に接地せず、靴底25の土踏まず部27本来の機能を損なわないようになっている。
【0014】
また、図2に示すように船縁係止用突部37,39は、夫々、靴底25の左右幅に比し短寸に形成されて、夫々の左右両端が靴底25の左右両側に達しない寸法とされている。このため、船縁係止用突部37,39の左右両側には土踏まず部27が残されている。
更に、図4に示すように両船縁係止用突部37,39の土踏まず部中央側の傾斜は、土踏まず部外側の傾斜に比し緩やか(角度A<角度B)に形成されており、斯様に船縁係止用突部37,39の土踏まず部中央側の傾斜を緩やかにしたことで、例えば図3の如く船縁係止用突部37の内側が船縁33の角部35に係止して変形した際に、大きな接触面積で船縁係止用突部37が角部35に接触するようになっている。
【0015】
そして、両船縁係止用突部37,39の土踏まず部中央側の基部から土踏まず部27にかけて薄肉な小突起43が複数突設されると共に、両船縁係止用突部37,39間の土踏まず部27の中央に、前記小突起43に対応して薄肉な小突起45が複数突設されて、本実施形態に係る釣り用靴23が形成されている。
本実施形態はこのように構成されているから、例えば釣船への乗船の際に、釣り用靴23を履いた釣人が、図3に示すように船縁33の角部35に船縁係止用突部37,39間の土踏まず部27を当てて足47を船縁33上に踏み込むと、土踏まず部27を支点に靴底25がく字状に屈曲して、両船縁係止用突部37,39が角部35を包み込むようにホールドし乍ら係止するため、小突起43,45による滑り止めとの相乗作用で靴底25に大きなグリップ力が得られて滑りが防止される。
【0016】
而も、既述したように両船縁係止用突部37,39の土踏まず部中央側の傾斜が、土踏まず部外側の傾斜に比し緩やかに形成されているため、例えば図3の如く船縁係止用突部37を船縁33の角部35に掛けるようにして船縁33上に踏み込んだ場合、船縁係止用突部37は体重で沈み込むように変形するが、傾斜が緩やかであるため角部35との接触面積が大きくなって滑りを確実に止めることができる。
【0017】
更に、図2に示すように船縁係止用突部37,39は、夫々、靴底25の左右幅に比し短寸に形成されて、夫々の左右両端が靴底25の左右両側に達しない寸法とされているため、例えば船縁係止用突部37で角部35に直接乗ってしまっても、体重で船縁係止用突部37が変形して土踏まず部27に沈み込むようになると共に、船縁係止用突部37の両側の土踏まず部27が下方に出っ張るように変形して角部35に接することで、滑りを止めることとなる。
【0018】
また、両船縁係止用突部37,39の間には土踏まず部27が形成され、この部分が最も凹んで地面との間隔が最も大きくなるため、角部35が安定して接する。
このように、本実施形態は、土踏まず部27内の前側と後側に、2つの船縁係止用突部37,39を所定の間隔を空けて靴底25の左右方向に連続するように延設したので、土踏まず部27で船縁33に足をかけた際に、角部35を包み込むようにホールドする船縁係止用突部37,39によって確実にグリップ力が確保でき、而も、既述したように角部35に係止する船縁係止用突部37の傾斜が緩やかであるため、角部35との接触面積が大きくなって滑りを確実に止めることができ、また、船縁係止用突部37で角部35に直接乗ってしまっても、体重で船縁係止用突部37が変形して土踏まず部27に沈み込み、船縁係止用突部37の両側の土踏まず部27が下方に出っ張るように変形して角部35に接するため、釣船の乗り降りの際に、船縁33で滑ることがない利点を有する。
【0019】
更にまた、両船縁係止用突部37,39の間には間隔Lを空けて土踏まず部27が設けられているため、角部35を間隔L内の土踏まず部27で容易に踏むことができ、間隔Lによって両船縁係止用突部37,39は夫々角部35から離れて船縁33に当接するため、体重がかかっても安定し、滑りを防止する。
そして、船縁係止用突部37,39は歩行時に地面41に接地しないため、土踏まず部27本来の機能を損なうこともない。
【0020】
図5及び図6は請求項1,請求項2,請求項4及び請求項5の一実施形態に係る釣り用靴を示し、図示するように本実施形態は、1つの突部で船縁係止用突部37,39を夫々形成した前記実施形態に代え、船縁係止用突部37-1,39-1を、夫々、靴底25-1の左右方向に並設された複数の断面台形形状の突部49,51,53,55で断続的に形成すると共に、船縁係止用突部37-1を構成する突部49,51の頂部に凹部57を設け、船縁係止用突部39を構成する突部53,55の頂部に小突起59を突設したもので、船縁係止用突部37-1,39-1は、夫々、靴底25-1の左右幅に比し短寸に形成されている。
【0021】
そして、本実施形態に於ても、両船縁係止用突部37-1,39-1の土踏まず部中央側の傾斜、即ち、各突部49,51,53,55の土踏まず部中央側の傾斜が、土踏まず部外側の傾斜に比し緩やかに形成されている。
また、図5に示すように両船縁係止用突部37-1,39-1は、歩行時に地面41に接地せず、靴底25-1の土踏まず部27本来の機能を損なわないようになっている。
【0022】
尚、その他の構成は図1の釣り用靴23と同様であるので、同一のものには同一符号を付してそれらの説明は省略する。
本実施形態に係る釣り用靴23-1はこのように構成されており、本実施形態によっても、前記釣り用靴23と同様、土踏まず部27で船縁33に足をかけた際に、角部35を包み込むようにホールドする船縁係止用突部37-1,39-1によって確実にグリップ力が確保できるため、釣船の乗り降りの際に、船縁33で滑ることがない利点を有する。
【0023】
そして、船縁係止用突部37-1,39-1は歩行時に地面41に接地せず、土踏まず部27本来の機能を損なうこともない。
また、本実施形態は、突部49,51の頂部に凹部57を設けると共に、突部53,55の頂部に小突起59を突設したので、これらの滑り止め作用との相乗作用で更に良好等滑り止め効果が得られる利点を有する。
【0024】
更にまた、本実施形態は、船縁係止用突部37-1,39-1を複数の突部49,51,53,55で形成しているため、夫々が独立して船縁33の角部35の形状に合わせて変形して滑りを止めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】請求項1乃至請求項3及び請求項5の一実施形態に係る釣り用靴の側面図である。
【図2】靴底の底面図である。
【図3】船縁に足を掛けた状態の釣り用靴の要部拡大断面図である。
【図4】靴底の土踏まず部の断面図である。
【図5】請求項1,請求項2,請求項4及び請求項5の一実施形態に係る釣り用靴の側面図である。
【図6】靴底の底面図である。
【図7】従来の靴底の底面図である。
【図8】図7に示す靴底の断面図である。
【符号の説明】
【0026】
21 アッパー
23,23-1 釣り用靴
25,25-1 靴底
27 土踏まず部
29,49,51,53,55 突部
31 凹凸構造
33 船縁
35 角部
37,39,37-1,39-1 船縁係止用突部
41 地面
43,45,59 小突起
47 足
57 凹部


【特許請求の範囲】
【請求項1】
靴底の土踏まず部内の前側と後側に、釣船の船縁に土踏まず部を乗せた際に船縁の角部に係止する船縁係止用突部を、靴底の左右方向に設けたことを特徴とする釣り用靴。
【請求項2】
前記船縁係止用突部は、靴底の左右両側まで延設されていないことを特徴とする請求項1に記載の釣り用靴。
【請求項3】
前記船縁係止用突部は、靴底の左右方向に延設された一つの突部からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の釣り用靴。
【請求項4】
前記船縁係止用突部は、靴底の左右方向に並設された複数の突部からなることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の釣り用靴。
【請求項5】
前記船縁係止用突部の土踏まず部中央側の傾斜は、土踏まず部外側の傾斜に比し緩やかに形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれか1項に記載の釣り用靴。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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