説明

釣り竿及びそのトップカバー

【課題】 糸通し案内部材の折損、及び、竿袋への糸通し案内部材の突き刺さり等を阻止しながら、糸係止状態を安定させる糸通し案内部材を備えた釣り竿及びそのトップカバーを提供する点にある。
【解決手段】 トップカバー7を竿先部分に装着した状態で釣り糸挿通経路内に位置させるとともにトップカバー7を竿先部分から取り外す際に釣り糸aを釣り糸挿通経路内に引き込む糸通し案内部材8をトップカバーに装備する。糸通し案内部材8に釣り糸係止部8Aとその釣り糸係止部8Aの先端側に先鋭挿通部8cとを備える。釣り糸係止部8Aに釣り糸aを係止した状態で、その釣り糸係止部位及び先鋭挿通部8cを覆う筒状のカバー部材9を備えてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣り竿を構成する各竿体を元竿内に収納した状態でその釣り竿の穂先部分を覆う振出式釣り竿のトップカバー及びそのトップカバーを備えた振出式釣り竿に関する。
【背景技術】
【0002】
前記したトップカバーには、糸通し案内部材が設けてある。この糸通し案内部材は、トップカバーを穂先部分に装着した場合に、糸を案内する糸挿通経路内に位置し、トップカバーを取り外す場合に糸挿通経路内に糸を引き込むように、その釣り糸係止部に釣り糸を係止する構成を採っている。(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2003−169580号公報(段落番号〔0030〕及び、図1,2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
釣り糸係止部は、前記特許文献における図1,図2にも示すように、棒状の糸通し案内部材の先端部に形成された楕円状の孔である。釣り人は、この孔に釣り糸を通して、釣り糸を糸通し案内部材に係止させていた。
しかし、釣り糸を孔内に挿通した後に、結び目を形成することは、難儀をするものであるから、係止した部位より折り返し、折り返し代を長く採って、釣り糸を糸挿通経路内に導入する際に、途中で外れる等の不都合を回避する方策を採っていた。
【0005】
一方、糸通し案内部材の釣り糸係止孔の先端側は先鋭な挿通部となっている。これは、穂先竿に取り付けてあるトップガイドの釣り糸挿通孔径が可成り小径のものであるので、糸通し案内部材を釣り糸ガイドに挿通させる際に、通し易さを確保するためである。
しかし、その為に、次ぎのような不都合があった。つまり、糸通し案内部材は樹脂製の丸棒状に形成されており、特許文献1の図1に示すように、トップカバーを、穂先竿等を収納した元竿の竿先端に被せた場合に、糸通し案内部材を各釣り糸ガイドの糸挿通孔に挿通する。そして、挿通後に、糸通し案内部材の先端を元竿に沿うように曲げ形成して、バンドでトップカバーの装着部分とともに止付けていた。
【0006】
この場合に、中竿の本数が多くなると、釣り糸ガイドが大型化しその釣り糸挿通孔が元竿の外周面から離れる間隔が大きくなるので、前記したように、釣り糸挿通孔を通過させた糸通し案内部材の先端部を元竿に沿わせて止付ける為に、釣り糸挿通孔から大きく屈折させる必要があり、大きく屈折させると折損することもあった。
そこで、従来は、元竿に止付けずに、先端をフリー状態のままにしていた。そうすると、今度は、糸通し案内部材の先鋭挿通部が竿袋に収納する際に、袋に突き刺さる等の不都合があり、これらの解決を図る必要があった。
【0007】
本発明の目的は、糸通し案内部材の折損、及び、竿袋への糸通し案内部材の突き刺さり等を阻止しながら、糸係止状態を安定させる糸通し案内部材を備えた釣り竿及びそのトップカバーを提供する糸通し案内部材を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、前記トップカバーを前記竿先部分に装着した状態で釣り糸挿通経路内に位置するとともに前記トップカバーを前記竿先部分から取り外す際に釣り糸を釣り糸挿通経路内に引き込む糸通し案内部材を前記トップカバーに装備し、前記糸通し案内部材に釣り糸係止部を備え、前記釣り糸係止部に釣り糸を係止した状態で、その釣り糸係止部位を覆うカバー部材を備えてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0009】
〔作用〕
つまり、カバー部材を導入することによって、糸通し案内部材の釣り糸係止部に係止した釣り糸をカバー部材で覆うことができる。これによって、係止された釣り糸をカバー部材で押えることができるので、釣り糸が係止解除されることに意を配することはない。
【0010】
〔効果〕
したがって、釣り糸係止孔からの折り返し分を必要以上に採らなくても、トップガイドを取り外しながら、釣り糸を釣り糸ガイドの糸挿通経路内に導入する際に、釣り糸が途中で外れる等の不都合を回避することができた。
【0011】
請求項2に係る発明の特徴構成は、前記トップカバーを前記竿先部分に装着した状態で釣り糸挿通経路内に位置するとともに前記トップカバーを前記竿先部分から取り外す際に釣り糸を釣り糸挿通経路内に引き込む糸通し案内部材を前記トップカバーに装備し、前記糸通し案内部材に釣り糸係止部とその釣り糸係止部の先端側に先鋭挿通部とを備え、前記釣り糸係止部に釣り糸を係止した状態で、その釣り糸係止部位及び前記先鋭挿通部を覆うカバー部材を備えてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0012】
〔作用効果〕
つまり、カバー部材によって、先鋭挿通部を覆うことができるので、糸通し案内部材を大きく屈折させなければならない場合には元竿に固定する必要はなく、かつ、竿袋に収納する際に、先鋭挿通部が突き刺さるといったことも回避できる。このような効果を達成するに、カバー部材を導入するだけでよい。
【0013】
請求項3に係る発明の特徴構成は、請求項1又は2に係る発明において、前記糸通し案内部材の前記釣り糸係止部を弾性変形可能なコイルバネで形成してある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0014】
〔作用効果〕
密着コイルバネを軸線方向に引き伸ばすと、密着していたコイル部分同士が離間し隙間ができる。この隙間に釣り糸を差し込み密着コイルバネへの引き伸ばし力を解放すると、釣り糸が弾性的に係止保持される。
このように、コイルバネを引き伸ばす操作をすれば、その隙間に釣り糸を差込むだけでよく、釣り糸を挿通孔に差し込む場合のようにその部分を目視する必要性が薄く、作業性がよい。
釣り糸の取付係止が容易なものでありながら、係止した後には、カバー部材によって釣り糸係止部等を覆うことができるので、釣り糸が外れることを防止でき、トップカバーを外しながら糸挿通経路に釣り糸を導入する作業も円滑に行うことができる。
【0015】
請求項4に係る発明の特徴構成は、釣り竿が請求項1から3のうちのいずれか一つに記載の釣り竿のトップカバーを備えた点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0016】
〔作用効果〕
このようなトップカバーを備えることによって、釣り場での仕掛けの準備等を迅速に行うことができる釣り竿を提供できるに至った。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
〔第1実施形態〕
図2に示すように、穂先竿1、二番竿2、三番竿3、及び、四番竿4、五番竿5、元竿6によって、振出式の釣り竿Aを構成してある。穂先竿1には、トップガイド1Aと三つの中間ガイド1B、1Bを設けてある。二番竿2〜元竿6に、夫々、一番竿1と同様に釣り糸ガイド2A、3A、4A、5A、6Aが各竿体の外周面に取り付けてある。これら、トップガイド1A、中間ガイド1B、1B、釣り糸ガイド2A、3A、4A、5A、6Aの糸挿通孔で釣り糸挿通経路を構成する。
【0018】
トップカバー7について説明する。図1に示すように、穂先竿1、二番竿2、三番竿3、及び、四番竿4、五番竿5、元竿6竿1を夫々収縮して、すべての竿を元竿6内に収納する。この収納する状態で竿体1等の外周面に装着された、トップガイド1A及び釣り糸ガイド2A等は、元竿6の竿先側に整列されている。このような状態に収縮された各竿体1等の竿先部分とトップガイド1A及び釣り糸ガイド2A等をトップカバー7で被覆し、糸ガイドや竿先部分の保護を図っている。
【0019】
図1に示すように、トップカバー7は、各竿体1等の竿先部分とトップガイド1A及び釣り糸ガイド2A等を覆う筒状の本体部分7Aと、各竿体1等の竿先部分を本体部分7A内に導入する挿通孔7Bと、その挿通孔7Bを形成した部分から竿尻側に延出された装着部分7Cとを設けて構成してある。装着部分7Cには締め付け固定用のバンド7Dが設けてあり、その装着部分7Cを元竿6にあてがった状態でバンド7Dを巻回して、トップカバー7を元竿6に取付固定する。
トップカバー7の材料としては、本体部分7Aと装着部分7Cとしては樹脂を利用するが、金属であってもよい。バンド7Dには、ゴムや皮革などの伸縮性を有する材料を採用する。
【0020】
トップカバー7の本体部分7Aの内部に設けられる糸通し案内部材8について説明する。図1に示すように、本体部分7Aの先端部に取付プラグ部分7aを装着してあり、この取付プラグ部分7aに糸通し案内部材8の先端部が差し込み保持されている。
糸通し案内部材8は棒状のものであり、図2に示すように、先端側に釣り糸係止部8Aとしての釣り糸係止孔8aを形成すべく係止板部8bが形成してあり、係止板部8bの先端側に先端が尖った先鋭挿通部8cが形成されている。
【0021】
糸通し案内部材8における釣り糸係止孔8aより基端側には、筒状のカバー部材9が外嵌装着してある。筒状のカバー部材9は,塩化ビニール等の合成樹脂、または、NBR等のゴムを使用できる。
【0022】
糸通し案内部材8に釣り糸aを括り付けて、固定する構成について説明する。図2(イ)に示すように、釣り糸係止孔8aに釣り糸aを係止するとともに、図2(ロ)に示すように、挿通した釣り糸aの先端を釣り糸係止孔8aの縁から基端部側に折り返し、図2(ハ)に示すように、釣り糸係止孔8aに対する係止部位から先鋭挿通部8cに掛けて覆うように、カバー部材9をスライドさせて被覆する。
【0023】
被覆した後には、適当な治具を用いてカバー部材9を釣り糸aとともにカシメ処理して、釣り糸aの係止状態を固定するとともに、先鋭挿通部8cを被覆して後記するように、竿袋10に突き刺ささることがないように構成する。このように、釣り糸aの糸通し案内部材8への係止後に、カバー部材9で被覆することによって、釣り糸aが解どけ難くなり、釣り糸係止部位から折り返す量を最小限の長さに抑えることができる。
【0024】
そして、竿袋10内に釣り竿Aを収納する場合には、図1に示すように、糸通し案内部材8の釣り糸係止孔8aより先端側に形成された先鋭挿通部8cが、カバー部材9で覆われているので、竿袋10のニット等の収納本体10Aに突き刺さることを回避できる。
【0025】
以上のような構成において、次ぎのように、トップカバー7は使用される。図1(イ)に示すように、釣り竿の竿体1等を元竿6内に収納し、その竿先側に集積された釣り糸ガイド2A等と各竿体1等の穂先部分を覆うようにトップカバー7を被せる。トップカバー7を被せる際には、糸通し案内部材8がカバー部材9とともに各釣り糸ガイド2A等を貫通する状態となるようにトップカバー7を装着する。糸通し案内部材8の挿通孔7Bから突出した釣り糸係止孔8aを、カバー部材9で被覆する。カバー部材9で被覆した後は、糸通し案内部材8をバンド7Dで装着部分7Cを元竿6に取り付け固定する。
【0026】
糸通し案内部材8を、トップカバー7の装着部分7Cと伴にバンド7Dで元竿6に取り付けるか否かは、最も、竿体1から径方向に離間した位置に糸挿通孔が形成されている大型の釣り糸ガイド2Aに糸通し案内部材8を挿通し、挿通した糸通し案内部材8の先端を元竿6に取り付け固定すると、途中で折れ曲りが生ずるか否かで判断する。途中で折れ曲りが生ずる場合は、糸通し案内部材8の先端部を自由端状態に放置し、途中で折れ曲りが生じない場合は、糸通し案内部材8の先端部を元竿6に取り付け固定してもよい。
【0027】
次に、トップカバー7を取り外す場合について説明する。図示してはいないが、竿袋10より釣り竿Aを取り出し、リールを竿に装着した状態で、糸通し案内部材8にリールから繰出された釣り糸aを係止し、その釣り糸係止部8Aをカバー部材9で覆う。
【0028】
その状態より、図1(ロ)に示すように、トップカバー7を先端側に向けて引き抜いて行くと、トップカバー7がトップガイド1A及び釣り糸ガイド2A等を覆う状態からトップガイド1A及び釣り糸ガイド1A等を解放する状態に切り換わる。この際に糸通し案内部材8及びカバー部材9が各釣り糸ガイド2A等の糸案内孔内を移動してトップガイド1Aから抜け出ることになる。そうすると、釣り糸係止部8Aに取り付けられている釣り糸aがトップガイド1A及び釣り糸ガイド2A等内に導入されて、自動的に糸通しが行える。
【0029】
〔別実施形態〕
(1) 釣り糸係止部8Aとしては、密着巻きされたコイルバネで構成されていてもよい。全長に亘ってコイルで形成してあるので、全体が釣り糸係止部8Aとなっている。つまり、図3(イ)に示すように、密着コイルバネを軸線方向に引き伸ばすと、密着していたコイル部分同士が離間し隙間ができる。図3(ロ)に示すように、この隙間に釣り糸aを差し込み密着コイルバネへの引き伸ばし力を解放すると、釣り糸aが弾性的に係止保持される。そして、この場合には、コイルを引き伸ばした際に隙間ができる部位は限定されないので、釣り糸aを差込み装着するのも容易である。
図3(ハ)に示すように、釣り糸aを係止した釣り糸係止部8Aに対してカバー部材9を被せ、カバー部材9をコイルバネの先端を覆う位置まで延出する。
【0030】
(2)図4に示すように、糸通し案内部材8における釣り糸係止部8Aとしては、釣り糸貫通用の貫通孔8dと貫通孔8dに連通する幅の狭い係止溝8eとで構成する。つまり、係止溝8eにおける貫通孔8dに臨む入口部位を係止溝8eの中間位置に幅より狭くして釣り糸aが係止溝8e内に挿通された場合には、貫通孔8d側に抜け出ない構造とする。
上記した釣り糸係止部8Aに対して、カバー部材9を被せ、貫通孔8dから係止溝8eを介して先鋭挿通部8cまでを覆うように構成する。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】(イ)トップカバーを装着した釣り竿を竿袋に収納する前の状態を示す縦断側面図、(ロ)糸通し案内部材に釣り糸を取り付けて、トップカバーを取り外した状態を示す縦断側面図
【図2】(イ)糸通し案内部材の釣り糸係止孔に釣り糸を係止する前の状態を示す斜視図、(ロ)糸通し案内部材の釣り糸係止孔に釣り糸を係止した状態を示めす斜視図、(ハ)釣り糸係止孔に釣り糸を係止したものにカバー部材を被覆させた状態を示す斜視図
【図3】(イ)は糸通し案内部材の全長をコイルバネで構成し、釣り糸係止部としてのコイルバネを引き伸ばして釣り糸を係止する状態を示す斜視図、(ロ)は釣り糸係止部に糸を挟みこんだ状態を示す斜視図、(ハ)は釣り糸係止部位をカバー部材で被覆した状態を示す斜視図
【図4】(イ)は糸通し案内部材の釣り糸係止部として、挿通孔に係止溝を連通形成するもので構成し、釣り糸係止部に釣り糸を係止する状態を示す斜視図(ロ)は釣り糸係止部に糸を挟みこんだ状態を示す斜視図、(ハ)は釣り糸係止部位をカバー部材で被覆した状態を示す斜視図
【符号の説明】
【0032】
1、2、3、4、5、6 竿体
7 トップガイド
8 糸通し案内部材
8A 釣り糸係止孔、コイルバネ(釣り糸係止部)
a 釣り糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
釣り竿を構成する各竿体のうち竿先側に位置する竿体を元竿内に収納した状態でその釣り竿の竿先部分を覆う振出式釣り竿のトップカバーであって、
前記トップカバーを前記竿先部分に装着した状態で釣り糸挿通経路内に位置するとともに前記トップカバーを前記竿先部分から取り外す際に釣り糸を釣り糸挿通経路内に引き込む糸通し案内部材を前記トップカバーに装備し、前記糸通し案内部材に釣り糸係止部を備え、前記釣り糸係止部に釣り糸を係止した状態で、その釣り糸係止部位を覆うことができるカバー部材を備えてある振出式釣り竿のトップカバー。
【請求項2】
釣り竿を構成する各竿体のうち竿先側に位置する竿体を元竿内に収納した状態でその釣り竿の竿先部分を覆う振出式釣り竿のトップカバーであって、
前記トップカバーを前記竿先部分に装着した状態で釣り糸挿通経路内に位置するとともに前記トップカバーを前記竿先部分から取り外す際に釣り糸を釣り糸挿通経路内に引き込む糸通し案内部材を前記トップカバーに装備し、前記糸通し案内部材に釣り糸係止部とその釣り糸係止部の先端側に先鋭挿通部とを備え、前記釣り糸係止部に釣り糸を係止した状態で、その釣り糸係止部位及び前記先鋭挿通部を覆うことができるカバー部材を備えてある振出式釣り竿のトップカバー。
【請求項3】
前記糸通し案内部材の前記釣り糸係止部を弾性変形可能なコイルバネで形成してある請求項1又は2記載の振出式釣り竿のトップカバー。
【請求項4】
請求項1から3のうちのいずれか一つに記載の釣り竿のトップカバーを備えた釣り竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−173021(P2008−173021A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−7011(P2007−7011)
【出願日】平成19年1月16日(2007.1.16)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】