説明

釣り竿

【課題】ゴム系塗料塗装層を厚く塗布するにしても、剥がれ難いものにする釣り竿を提供する。
【解決手段】竿素材Bの外周面の所定位置にゴム系塗料製のゴム系塗料塗装層Aを形成してある。竿素材Bの外周面におけるゴム系塗料塗装層Aの形成領域の端部に相当する部位に凹入溝aを形成し、その凹入溝内に竿素材Bの外周面に施したゴム系塗料塗装層Aの端部を位置させてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、竿素材の外周面の所定位置にゴム系塗料製のゴム系塗料塗装層を形成してある釣り竿に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム系塗料塗装層をグリップ部に形成するものがあった。このものにおいては、プリプレグをマンドレルに巻回して竿素材を形成するとともに、この竿素材を焼成炉において焼成後、竿素材に対して研磨処理を施して、その後、その竿素材の外周面における所定位置に、ゴム入り塗料を施して、グリップ部を形成していた(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平07‐327556号公報(公報第3欄の第19行〜第40行、及び、図1、図2)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ゴム系塗料塗装層としては、その弾力性のある特徴を生かす為に通常の下塗り塗装層等の塗装厚よりも厚く塗るものである。そうすると、竿素材の外周面とゴム系塗料塗装層の端部との境界面には大きな段差ができている。その為に、釣り操作を行う釣り人の手が無意識のうちにその段差部分を捲り上げる力を及ぼすことがある。
そうすると、ゴム系塗料塗装層がその端部から剥がれを生ずる虞れがあった。
【0005】
本発明の目的は、ゴム系塗料塗装層を厚く塗布するにしても、剥がれ難いものにする釣り竿を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
〔構成〕
請求項1に係る発明の特徴構成は、前記竿素材の外周面における前記ゴム系塗料塗装層の形成領域の端部に相当する部位に凹入溝を形成し、その凹入溝内に前記竿素材の外周面に施した前記ゴム系塗料塗装層の端部を位置させてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0007】
〔作用〕
つまり、ゴム系塗料塗装層の端部が竿素材の外周面の凹入溝内に形成してあるので、ゴム系塗料塗装層の端部と竿素材の外周面との段差が少なくなり、釣り人の手がゴム系塗料塗装層の端部に接触する機会が少なくなり、ゴム系塗料塗装層の端部を捲り上げることが少なくなる。
【0008】
〔効果〕
したがって、竿素材の外周面に凹入溝を形成するという工夫を施すことによって、ゴム系塗料塗装層を厚く塗布しても剥がれにくい塗装層を形成することができた。
【0009】
請求項2に係る発明の特徴構成は、竿素材の外周面に下塗り塗装層を形成し、その下塗り塗装層の外周面の所定位置にゴム系塗料製のゴム系塗料塗装層を形成してある釣り竿であって、
前記下塗り塗装層における前記ゴム系塗料塗装層の形成領域の端部に相当する部位に凹入溝を形成し、その凹入溝内に前記下塗り塗装層の外周面に施した前記ゴム系塗料塗装層の端部を位置させてある点にあり、その作用効果は次の通りである。
【0010】
〔作用効果〕
つまり、ゴム系塗料塗装層の端部が下塗り塗装層の外周面の凹入溝内に形成してあるので、ゴム系塗料塗装層の端部と下塗り塗装層の外周面との段差が少なくなり、釣り人の手がゴム系塗料塗装層の端部に接触する機会が少なくなり、ゴム系塗料塗装層の端部を捲り上げることが少なくなる。
したがって、下塗り塗装層の外周面に凹入溝を形成するという工夫を施すことによって、ゴム系塗料塗装層を厚く塗布しても剥がれにくい塗装層を形成することができた。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】環状凹入溝を施した竿素材の外周面にゴム系塗料を塗布する状態を示す斜視図である。
【図2】環状凹入溝を施した竿素材の外周面にゴム系塗料を塗布した状態を示す縦断側面図である。
【図3】元竿を示す側面図である。
【図4】元竿の握り部における塗装構造を示す側面図である。
【図5】環状凹入溝を施したウレタン系樹脂塗装層の外周面にゴム系塗料を塗布した状態を示す縦断側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
〔第1実施形態〕
竿素材の外周面にゴム系塗料塗装層Aを形成する形態について説明する。
まず、竿素材Bについて説明する。 図示していないが、一方向に引き揃え配置した炭素繊維等の強化繊維にエポキシ等の熱硬化性樹脂を含浸させたプリプレグを、竿素材Bの全長に亘る長さに裁断されたメインパターンを複数枚用意する。ここでは、強化繊維cを円周方向に引き揃えた第1メインパターン、強化繊維を軸線方向に引き揃えた第2メインパターン、強化繊維を円周方向に引き揃えた第3メインパターンの3枚を重ねてマンドレルに巻回する。尚、玉口等を補強する目的で口巻き補強パターンを前記第1メインパターンの内側に配置する。口巻き補強パターンは、メインパターン等と同様のプリプレグから軸線方向に沿った長さをメインパターン等より短くしたものである。
【0013】
上記した3つのメインパターン等と口巻き補強パターンとを巻回して形成した竿素材Bをマンドレルに装着したままで、焼成した後に、所定位置に環状凹入溝aを形成する。環状凹入溝aの深さは、後記するゴム系塗料塗装層Aの厚みと略同等の深さで形成する。
図1及び図2に示すように、ゴム系塗料塗装層Aを形成する予定の塗装層形成領域に隣接する領域に紙製又はプラスチック製のマスク板材Cを被せて、その隣接領域をカバーする。マスク板材Cの端部は、環状凹入溝aにおける竿素材Bの軸線方向に沿った軸方向幅の中央位置まで延出されて、環状凹入溝aの半分を覆うように配置する。
この状態で、ゴム系塗料をスプレーガンDによって、ゴム系塗料塗装層形成領域に吹き付け塗装する。これによって、図2に示すように、ゴム系塗料塗装層Aの端部は環状凹入溝a内に位置しているので、釣り人の手に触れる事が少なくなる。
【0014】
このゴム系塗料としては、軟質系ポリエステル型ポリウレタン樹脂塗料が使用される。この塗料はカシュウ株式会社製の商品名「セノソフト」「セノソフトII」として市販されているものであり、その他には、藤倉化成株式会社製の商品名「ベルベックス」等、東和ペイント株式会社製の商品名「ANEXTEL」、「ALEXIT」等の超微粒子プラスティック顔料を配合したウレタン樹脂塗料や、出光石油化学株式会社製の商品名「マティロ」等の天然コラーゲン繊維を超微粉化したプロテインパウダーと特殊ウレタン樹脂とを複合化したウレタン樹脂塗料等が該当する。これらの塗料は、感触が軟らかくかつ弾力性を有している。また、艶消し効果が大きく、均一の艶消し状態が得られる。更に、耐傷つき性や耐磨耗性が高く強靭で可撓性に富んでいる。耐水性、耐油性等に優れている。
【0015】
〔第2実施形態〕
磯竿等の釣り竿に形成されるグリップ部4にゴム系塗料塗装層Aを適用する構造について説明する。図3に示すように、釣り竿の元竿1にリールシート2を取り付け固定するとともに、竿尻端に尻栓3を取り付け、尻栓3の竿先側に握り部としてのグリップ部4を形成してある。
【0016】
元竿1は、前記した竿素材Bに基づいて構成されるので、竿素材Bの製造方法については省略する。
上記した竿素材Bに対して、その竿素材Bをマンドレルに装着したままで、塗装を施す。つまり、図4に示すように、下塗り塗装層としてエポキシ系樹脂塗装層8とその上からウレタン系樹脂塗装層9とを竿素材Bの全長に亘って施すとともに、竿尻端部の一定領域に、本願発明のゴム系塗料を施して、ゴム系塗料塗装層Aを形成する。このゴム系塗料塗装層Aの厚みとしては、0.03〜0.3mm位が適当である。
ここに、ゴム系塗料としては、前記したと同様のものを使用する。
【0017】
ゴム系塗料を施す前に、ウレタン系樹脂塗装層9の外周面に、前記したように、環状凹入溝aを形成して、マスク板材Cを施して吹付け塗装を行う。
塗装方法は図1に示す方法に基づいて次のように行う。つまり、前記したプリプレグを巻回することによって筒状の竿素材Bを作り出した後に、
(イ)竿素材Bの全長に亘って、吹き付け塗装方法を用いて、エポキシ系樹脂塗料を塗布して、エポキシ系樹脂塗装層8を形成する。
(ロ)所定時間乾燥後、エポキシ系樹脂塗装層8の上から、竿素材Bの全長に亘って、ウレタン系樹脂塗料をスプレーガンD等によって塗布して、ウレタン系樹脂塗装層9を形成する。
ウレタン系樹脂塗装層9の上から、前記した環状凹入溝aを形成する。
(ハ)所定時間乾燥後、ウレタン系樹脂塗装層9の上から、環状凹入溝aに臨む状態でマスク板材Cを施して、グリップ部4を形成する竿素材Bの竿尻端部の領域に、前記したゴム系樹脂塗料をスプレーガンD等によって塗布して、ゴム系塗料塗装層Aを形成する。これによって、グリップ部4を形成する。
【0018】
以上のように塗装を施された竿素材Bに対しては、図示しないが、次ぎのように、処理が施される。
(ニ)竿素材Bに対して塗装後、セロファンテープ等の成形テープ(図示せず)を巻回し、マンドレルに竿素材Bを装着した状態で、焼成処理を施す。
(ホ)焼成後、マンドレルを竿素材Bから抜き出し、成形テープを剥離させた後に、所定長さに竿素材Bを裁断して、竿素材Bの全長に亘ってセンタレス研磨機によって表面処理加工を施し、形成テープ跡を均すこととする。
(へ) 次ぎに、ゴム系塗料塗装層Aの表面に対してセンタレス研磨機によって粗面化処理を行う。これによって、グリップ部4の表面が粗面化し、グリップ部4を握った状態で滑りにくくなる。また、このように粗面化することによって、グリップ部4の表面にゴムに類似した質感を持たせることができる。
【0019】
〔別実施形態〕
(1) 環状凹入溝aとしては、深さは必ずしも、ゴム系塗装層Aの厚さと同一のものでなくてもよく、多少浅くても、または、深くてもよい。また、断面形状も半円形のものでなくともよく、矩形または楕円形等適宜選択することができる。
(2)下塗り塗装層としては、エポキシ系樹脂塗装層8とウレタン系樹脂塗装層9との二層構造のものについて記載したが、いずれか一層でもよく、又は、三層以上のものに構成してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、釣り竿の握り部に適用されることが最適であるが、握り部以外の部分においても、適用できる。
【符号の説明】
【0021】
A ゴム系塗料塗装層
B 竿素材
a 環状凹入溝(凹入溝)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竿素材の外周面の所定位置にゴム系塗料製のゴム系塗料塗装層を形成してある釣り竿であって、
前記竿素材の外周面における前記ゴム系塗料塗装層の形成領域の端部に相当する部位に凹入溝を形成し、その凹入溝内に前記竿素材の外周面に施した前記ゴム系塗料塗装層の端部を位置させてある釣り竿。
【請求項2】
竿素材の外周面に下塗り塗装層を形成し、その下塗り塗装層の外周面の所定位置にゴム系塗料製のゴム系塗料塗装層を形成してある釣り竿であって、
前記下塗り塗装層における前記ゴム系塗料塗装層の形成領域の端部に相当する部位に凹入溝を形成し、その凹入溝内に前記下塗り塗装層の外周面に施した前記ゴム系塗料塗装層の端部を位置させてある釣り竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−161963(P2010−161963A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−6045(P2009−6045)
【出願日】平成21年1月14日(2009.1.14)
【出願人】(000002439)株式会社シマノ (1,038)
【Fターム(参考)】