説明

釣服

【課題】ズボンやジャケット等の釣服に係り、服本体に設けた収納部内に発泡材シートからなるパッドを収納した釣服に改良を加え、パッドのずれを防止した釣服を提供する。
【解決手段】服本体1に設けた収納部37、39内に発泡材シートからなるパッド15,17を収納した釣服に於て、前記収納部37、39を、前記服本体1に当て部材35を取り付けて形成し、前記パッド15,17の周縁部を、服本体または当て部材35のいずれか一方に止着したことを特徴とする。また、服本体に設けた収納部内に発泡材シートからなるパッドを収納した釣服に於て、前記収納部37、39を、前記服本体1を形成する表地3と裏地とで形成し、前記パッドの周縁部を、服本体の表地3または裏地のいずれか一方に止着したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ズボンやジャケット等の釣服に関する。
【背景技術】
【0002】
釣場に於て、釣人は膝をついたり腰を下ろしたり、肘をついて身体を支える等、様々な姿勢で釣りを行うため、膝や肘等、釣りをするときに地面につき易い部分に収納部を設け、この収納部内に発泡材シートからなる緩衝用のパッドを収納した釣服が知られている。
【0003】
また、特許文献1には、ズボン本体の膝部の内側に膝当て(当て部材)を取り付けて、クッション用スポンジ(以下、「スポンジ」という)の挿入口が開口する袋状の収納部を設け、作業者が膝をついて作業するときに挿入口から収納部内にスポンジを挿入し、スポンジが不要なときは、挿入口からスポンジを取り出すことができるようにした作業用ズボンが提案されている。
【特許文献1】実開昭62−114011号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし乍ら、このように袋状の収納部内にスポンジを着脱自在に収納した構造では、例えば膝を曲げ伸ばしたり、膝をついた状態で身体を動かしたりするうちに、スポンジの位置が全体的にずれたり、角が捲れてスポンジが部分的に重なりあって小さく丸まってずれることで、緩衝材としての機能が損なわれてしまう虞があった。
【0005】
また、従来の釣服に於ても、同様に膝や肘等の収納部内に収納したパッドが、膝や肘の曲げ伸ばし等でずれてしまう虞があった。
【0006】
本発明は斯かる実情に鑑み案出されたもので、服本体に設けた収納部内に発泡材シートからなるパッドを収納した釣服に改良を加え、パッドのずれを防止した釣服を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
斯かる目的を達成するため、請求項1に係る発明は、服本体に設けた収納部内に発泡材シートからなるパッドを収納した釣服に於て、前記収納部を、前記服本体に当て部材を取り付けて形成し、前記パッドの周縁部を、服本体または当て部材のいずれか一方に止着したことを特徴とする。
【0008】
また、請求項2に係る発明は、服本体に設けた収納部内に発泡材シートからなるパッドを収納した釣服に於て、前記収納部を、前記服本体を形成する表地と裏地とで形成し、前記パッドの周縁部を、服本体の表地または裏地のいずれか一方に止着したことを特徴とする。
【0009】
更にまた、請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の釣服に於て、前記パッドの周縁部を、間隔を空けて複数箇所で止着したことを特徴とし、請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の釣服に於て、前記パッドの周縁部に止着片を取り付け、該止着片を介してパッドを止着したことを特徴とする。
【0010】
一方、請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の釣服に於て、前記パッドの周縁部を補強片で覆ったことを特徴とする。
【0011】
そして、請求項6に係る発明は、請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の釣服に於て、前記パッドが、該パッドを収納する収納部の外形形状に沿って形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
請求項1,請求項2及び請求項6に係る発明によれば、膝を曲げ伸ばしたり膝をついた状態で身体を動かしたりしても、パッドが収納部内でずれたり角が捲れて部分的に重なりあって小さく丸まってずれてしまうことがないため、長期に亘ってパッドによる確実な緩衝機能が得られる利点を有する。
【0013】
また、請求項3に係る発明によれば、パッドの周縁部が間隔を空けて複数箇所で止着されているため、身体を動かしたり膝を曲げたりしたときに、ズボン本体の動きに規制されることなくパッドが自在に伸びて圧迫感を感じることがない。
【0014】
そして、請求項4及び請求項5に係る発明によれば、パッドが止着片や補強片を介して止着されているため、パッドを直接縫着した場合に比しパッドに縫着による縫い目が広がることがなく、パッドの破損が防止できる利点を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0016】
図1乃至図4は請求項1,請求項3,請求項4及び請求項6に係る発明を釣服のズボンに適用した一実施形態を示し、図中、1は防水,透湿性を有する樹脂シートからなる表地3と、その内側に配された例えばメッシュ状の裏地5とで形成されたズボン本体(服本体)で、図2に示すように左右の裾部7の後側に設けた上下方向の切欠きにファスナ9が開閉可能に縫着され、ファスナ9を開くと、裾部7が広がって容易に足を通してズボン本体1の脱ぎ履きができるようになっている。
【0017】
そして、図1及び図2に示すようにズボン本体1の左右の膝部11と臀部13に、パッド15,17,19を備えた緩衝部21,23が設けられている。
【0018】
即ち、図2及び図3に示すように臀部13には、ズボン本体1の表地3と同一素材からなる正面略矩形に裁断された1枚の臀当て(当て部材)25を臀部13の左右に亘って表面に当てがい、その周縁部全周をズボン本体1(表地3と裏地5)に縫着して、臀当て25とズボン本体1とからなる袋状の収納部27が形成されている。そして、該収納部27内にパッド19が収納されて臀部13側の緩衝部23が形成されている。
【0019】
前記パッド15,17,19は、クロロプレンゴム等のゴムやウレタン等の合成樹脂の発泡材シートからなり、本実施形態では、図3及び図4に示すように、独立気泡発泡体のクロロプレンゴムシート29とこの両面にナイロン等の合成樹脂繊維の織布31が貼着された発泡ゴムシートを用いている。このため、パッド15,17,19はズボン本体1の表地3より大きな伸縮性を有し、身体の動きを窮屈にしないように柔軟性を有している。
【0020】
そして、図2に示すようにパッド19は、収納部27の外形形状(臀当て25の縫着線)に沿って裁断されているが、図2及び図3に示すようにパッド19の周縁部の4箇所、即ち、パッド19の各辺の中央に止着片33が間隔を空けて取り付けられており、パッド19は各止着片33を介してズボン本体1の表地3に縫着されて収納部27内でのズレ(移動)が規制されている。
【0021】
前記各止着片33は、例えばパッド19よりも伸びの少ないナイロン等の合成樹脂繊維の織布を短冊状に裁断して、図3の如く両端でパッド19を挟んでその表裏に縫着し、パッド19の外方へ突出させた折り返し部を表地3側に縫着することで、パッド19の複数箇所を夫々表地3に固定している。
【0022】
このようにパッド19の固定に当たり止着片33を用いることで、パッド19を直接表地3に縫着する場合に比し、パッド19に縫着による縫い目が広がることを防止している。
【0023】
一方、図1及び図4に示すように膝部11に設けた緩衝部21は、前記臀当て25と同一素材からなる正面視ホームベース形状に裁断された1枚の膝当て(当て部材)35を、夫々、左右の膝部11の表面に当てがい、その周縁部全周と横方向2箇所をズボン本体1(表地3と裏地5)に縫着して、該膝当て35とズボン本体1とからなる3つの袋状の収納部37,39が上下方向に区画形成されている。
【0024】
図1に示すように上側の2つの収納部37は正面視矩形状に形成され、下側の収納部39は正面視三角形状に形成されている。そして、各収納部37,39内にパッド15,17が収納されて膝部11側の緩衝部21が形成されており、上側の2つの収納部37内に収納されたパッド15は収納部37の外形形状に沿って正面視矩形状に裁断され、下側の収納部39内に収納されたパッド15は収納部39の外形形状に沿って正面視三角形状に裁断されている。
【0025】
そして、図1及び図4に示すようにパッド15の各辺の中央に止着片33が間隔を空けて取り付けられており、パッド15は各止着片33を介してズボン本体1の表地3に縫着されて収納部37内でのズレ(移動)が規制されている。
【0026】
同様に、パッド17の各辺の中央に止着片33が間隔を空けて取り付けられており、パッド17は各止着片33を介してズボン本体1の表地3に縫着されて収納部39内でのズレ(移動)が規制されている。そして、前記緩衝部23と同様、止着片33はナイロン等の合成樹脂繊維の織布を短冊状に裁断して、図4の如く両端でパッド15,17を挟んでその表裏に縫着し、パッド15,17の外方へ突出させた折り返し部を表地3側に縫着することで、パッド15,17の複数箇所を夫々表地3に固定している。
【0027】
本実施形態に係るズボン41はこのように構成されており、釣場に於て、釣人が膝をついたり腰を下ろしたりする場合、緩衝部21,23内のパッド15,17,19が釣人の膝や臀を保護するが、既述したようにパッド15,17,19は各収納部37,39,27の外形形状に沿って裁断され、而も、止着片33を介して各収納部37,39,27内で表地3に止着されているため、膝を曲げ伸ばしたり、膝をついた状態で身体を動かしたりしてもパッド15,17,19が各収納部37,39,27内でずれたり、角が捲れて部分的に重なりあって小さく丸まってずれてしまうことがない。また、膝部11は細かく収納部37,39が分かれているため、膝が曲げ易い。
【0028】
そして、パッド15,17,19は周縁部全周が止着されず、止着片33を介して夫々の周縁部が間隔を空けて複数箇所で止着され、而も、それらの中央も止着されていないため、身体を動かしたり膝を曲げたりしたときに、パッド15,17,19に比し伸びの少ない表地3によってパッド15,17,19の伸びが規制されず、ズボン本体1の動きに規制されることなくパッド15,17,19が自在に伸びて圧迫感を感じることがない。
【0029】
また、パッド15,17,19を各収納部37,39,27内で表地3に止着するに当たり、止着片33を用いているため、パッド15,17,19を直接表地3に縫着した場合に比し、パッド15,17,19に縫着による縫い目が広がることが防止される。
【0030】
このように本実施形態によれば、
(1)膝を曲げ伸ばしたり、膝をついた状態で身体を動かしたりしても、パッド15,17,19が各収納部37,39,27内でずれたり角が捲れて部分的に重なりあって小さく丸まってずれてしまうことがないため、長期に亘ってパッド15,17,19による確実な緩衝機能が得られる。
【0031】
(2)パッド15,17,19の周縁部が間隔を空けて複数箇所で止着されているため、身体を動かしたり膝を曲げたりしたときに、ズボン本体1の動きに規制されることなくパッド15,17,19が自在に伸びて圧迫感を感じることがない。
【0032】
そして、
(3)パッド15,17,19が止着片33を介して止着されているため、パッド15,17,19を直接表地3に縫着した場合に比し、パッド19に縫着による縫い目が広がることがなく、パッド15,17,19の破損が防止できる利点を有する。
【0033】
尚、前記実施形態では、止着片33を介してパッド15,17,19を表地3に止着したが、パッド15,17,19を止着片33を介して膝当て35や臀当て25側に止着した後、膝当て35や臀当て25をズボン本体1の膝部11や臀部13に縫着してもよい。
【0034】
図5乃至図8は請求項2,請求項3,請求項5及び請求項6に係る発明を同じく釣服のズボンに適用した一実施形態を示し、図5及び図6に示すように本実施形態も、ズボン本体43の左右の膝部11と臀部13に、前記パッド15,17,19を備えた緩衝部45,47を設けたものであるが、図6及び図7に示すように本実施形態は、先ず、ズボン本体43を構成する臀部13の表地3と裏地5との間にパッド19に沿った収納部49を形成し、該収納部49内でパッド19を裏地5に止着して緩衝部47を形成したものである。
【0035】
而して、パッド19の周縁部の表裏全周は、前記止着片33と同一素材からなる帯状の補強片51で覆われており、図6に示すようにパッド19は、該補強片51を介して周縁部が間隔を空けて複数箇所で糸53で裏地5に縫着されている。
【0036】
同様に、図5及び図8に示すようにズボン本体43の膝部11には、表地3と裏地5を糸53で縫着して、これらの間にパッド15,17に沿った3つの袋状の収納部55,579が上下方向に区画形成されている。
【0037】
そして、上側の2つの収納部55内にパッド15が収納され、下側の収納部57内にパッド17が収納されて膝部11側の緩衝部45が構成されており、図5及び図8に示すようにパッド15,17の周縁部の表裏全周は夫々補強片51で覆われ、パッド15,17は、該補強片51を介して周縁部が間隔を空けて複数箇所で糸53で裏地5に縫着されている。
【0038】
本実施形態に係るズボン59はこのように構成されており、釣人が膝をついたり腰を下ろしたりする場合、緩衝部45,47内のパッド15,17,19が釣人の膝や臀を保護するが、パッド15,17,19は各収納部55,57,49内で裏地5に止着されているため、膝を曲げ伸ばしたり、膝をついた状態で身体を動かしたりしてもパッド15,17,19が各収納部55,57,49内でずれたり、角が捲れて部分的に重なりあって小さく丸まってずれてしまうことがない。
【0039】
そして、パッド15,17,19は周縁部全周が止着されず、補強片51を介して周縁部が間隔を空けて複数箇所で止着され、而も、それらの中央も止着されていないため、身体を動かしたり膝を曲げたりしたときに、パッド15,17,19に比し伸びの少ない裏地5によってパッド15,17,19の伸びが規制されず、ズボン本体43の動きに規制されることなくパッド15,17,19が自在に伸びて圧迫感を感じることがない。
【0040】
また、パッド15,17,19を各収納部55,57,49内で裏地5に止着するに当たり、補強片51を用いているため、パッド15,17,19を直接裏地5に縫着した場合に比し、パッド15,17,19に縫着による縫い目が広がることが防止される。
【0041】
従って、本実施形態によっても、前記実施形態と同様、所期の目的を達成することが可能で、長期に亘ってパッド15,17,19による確実な緩衝機能が得られる。
【0042】
尚、前記実施形態では、補強片51を介してパッド15,17,19を裏地5に止着したが、パッド15,17,19を表地5側に縫着してもよい。
【0043】
また、既述した各実施形態は、請求項1乃至請求項6に係る発明を釣服のズボンに適用したが、釣服のジャケットの肘部に設ける緩衝部にも適用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】請求項1,請求項3,請求項4及び請求項6の一実施形態に係るズボンの正面図である。
【図2】図1のズボンの背面図である。
【図3】臀部の緩衝部の断面図である。
【図4】膝部の緩衝部の断面図である。
【図5】請求項2,請求項3,請求項5及び請求項6の一実施形態に係るズボンの一部切欠き正面図である。
【図6】図5のズボンの一部切欠き背面図である。
【図7】臀部の緩衝部の断面図である。
【図8】膝部の緩衝部の断面図である。
【符号の説明】
【0045】
1,43 ズボン本体
3 表地
5 裏地
11 膝部
13 臀部
15,17,19 パッド
21,23,45,47 緩衝部
25 臀当て
27,37,39,49,55,57 収納部
29 クロロプレンゴムシート
31 織布
33 止着片
35 膝当て
41,59 ズボン
51 補強片
53 糸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
服本体に設けた収納部内に発泡材シートからなるパッドを収納した釣服に於て、
前記収納部を、前記服本体に当て部材を取り付けて形成し、前記パッドの周縁部を、服本体または当て部材のいずれか一方に止着したことを特徴とする釣服。
【請求項2】
服本体に設けた収納部内に発泡材シートからなるパッドを収納した釣服に於て、
前記収納部を、前記服本体を形成する表地と裏地とで形成し、前記パッドの周縁部を、服本体の表地または裏地のいずれか一方に止着したことを特徴とする釣服。
【請求項3】
前記パッドの周縁部を、間隔を空けて複数箇所で止着したことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の釣服。
【請求項4】
前記パッドの周縁部に止着片を取り付け、該止着片を介してパッドを止着したことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の釣服。
【請求項5】
前記パッドの周縁部を、補強片で覆ったことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の釣服。
【請求項6】
前記パッドは、該パッドを収納する収納部の外形形状に沿って形成されていることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか1項に記載の釣服。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−126836(P2010−126836A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−302621(P2008−302621)
【出願日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】