説明

釣用リール装置

【課題】シェル外輪のハウジング内での滑りを有効に防止すると共に、製品コストを抑えた一方向クラッチを採用することによって、信頼性の高い釣用リール装置を提供する。
【解決手段】釣用リール装置は、溝部4aを有するハウジングとしての側方部材4と、側方部材4に保持される回転軸としての駆動軸6と、ハンドルと、スプールと、側方部材4および駆動軸6の間に配置され、駆動軸6の一方方向への回転のみを許容し、他方方向への回転を阻止する一方向クラッチ11とを備える。一方向クラッチ11に注目すると、軸方向端部に切欠き部15を有するシェル外輪12と、シェル外輪12の切欠き部15を有する側の端部に嵌まり込むリング部19a、およびリング部19aの外周面から切欠き部15を通ってシェル外輪12の外径面よりも径方向外側に位置する廻り止め部19bを含む側板19とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、釣用リール装置に関し、特に回転軸の一方方向への回転のみを許容する逆転防止機構を備えた釣用リール装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の釣用リール装置は、例えば、実登3006902号公報(特許文献1)に記載されている。同公報に記載されている釣用リール装置は、回転軸の一方方向への回転を許容し、他方方向への回転を阻止する逆転防止装置としての一方向クラッチを備えていると記載されている。
【0003】
上記の一方向クラッチに類似する一方向クラッチが、例えば、特開2000−213566号公報(特許文献2)および特開2003−56601号公報(特許文献3)に記載されている。
【0004】
上記の各公報に記載されている一方向クラッチは、内径面にカム面を有し、ハウジングに固定される外輪と、外輪と回転軸との間に形成される環状空間に配置される複数のころとを主に備える。また、外輪の外径面に隆起部を、ハウジングの内径面に隆起部を受け入れる溝をそれぞれ形成し、隆起部と溝とを係合させることによって外輪がハウジングの内部で滑るのを防止することができると記載されている。
【特許文献1】実登3006902号公報
【特許文献2】特開2000−213566号公報
【特許文献3】特開2003−56601号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特開2000−213566号公報(特許文献2)では引き抜き加工によって、特開2003−56601号公報(特許文献3)ではブローチ加工によって、それぞれ外輪の外径面に隆起部を形成している。これらの加工方法は、作業工数および作業コストが非常に高いので、結果として製品コストの増大を招く。
【0006】
そこで、この発明の目的は、シェル外輪のハウジング内での滑りを有効に防止すると共に、製品コストを抑えた一方向クラッチを採用することによって、信頼性の高い釣用リール装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明に係る釣用リール装置は、溝部を有するハウジングと、ハウジングに回転自在に保持される回転軸と、回転軸の一方側に連結されて回転軸を回転させるハンドルと、回転軸の他方側に連結されて釣糸を巻回するスプールと、ハウジングおよび回転軸の間に配置され、回転軸の一方方向への回転のみを許容し、他方方向への回転を阻止する一方向クラッチとを備える。一方向クラッチに注目すると、軸方向端部に切欠き部を有し、ハウジングに嵌まり込むシェル外輪と、シェル外輪の切欠き部を有する側の端部に嵌まり込むリング部、およびリング部の外周面から切欠き部を通ってシェル外輪の外径面よりも径方向外側に位置し、溝部に係合する廻り止め部を含む側板とを備える。
【0008】
一実施形態として、廻り止め部はシェル外輪の外径面に沿って軸方向に延びている。
【0009】
上記構成の一方向クラッチは、ハウジングに圧入されると共に、廻り止め部がハウジングに設けられた溝部に係合する。これにより、シェル外輪の耐クリープ力を大幅に向上することができる。また、シェル外輪の軸方向端部に側板を設けたことにより、シェル外輪の内部に配置される構成部品の軸方向への抜けを有効に防止することができる。さらに、このシェル外輪は、プレス加工によって製造可能であるので、製造工数および製造コストを大幅に削減することができる。
【0010】
好ましくは、切欠き部は、廻り止め部を受け入れる幅広部と、開口側端部に位置する幅狭部とを含む。そして、幅広部の円周方向幅寸法をx、幅狭部の円周方向幅寸法をy、廻り止め部の円周方向幅寸法をzとすると、x>z>yを満たす。または、シェル外輪は切欠き部を有する側の端部から側板を軸方向外側から覆うように径方向内側に突出する鍔部を有する。上記のような方法によれば、シェル外輪と側板とをより強固に一体化することができる。
【0011】
一実施形態として、シェル外輪は、その内径面に軸方向に延びる複数のカム面を有する。一方向クラッチは、カム面の径方向内側の円周方向一方側と他方側とで径方向の隙間が異なる楔空間に配置されるころをさらに備える。
【0012】
一実施形態として、一方向クラッチは総ころ形式である。
【0013】
好ましくは、一方向クラッチは円弧形状の弾性部材をさらに有する。シェル外輪は、切欠き部に連なって軸方向に延びる係合部をさらに有する。そして、弾性部材は、弾性縮径された状態で一端が係合部に係合し、他端が隣接するころの間の空間に位置し、ころを楔空間の径方向隙間が減少する方向に付勢する。これにより、ころの遊度が小さくなるので、回転軸の逆転を敏速に停止させることが可能となる。
【0014】
他の実施形態として、一方向クラッチは隣接するころの間隔を保持する保持器をさらに備える。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、廻り止め部を有する側板をシェル外輪に取り付けたので、一方向クラッチの製造コストを抑えることができる。そして、このような一方向クラッチを逆転防止機構として採用することにより、信頼性の高い釣用リール装置を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
まず、図1を参照して、この発明の一実施形態に係る釣用リール装置1を説明する。なお、図1は釣用リール装置1の概略断面図である。
【0017】
釣用リール装置1は、釣糸を巻回するスプール2と、スプール2を両端から狭持する側方部材3,4と、スプール2を回転させるハンドル5と、ハウジングとしての側方部材4に収容され、ハンドル5の回転をスプール2に伝達する回転伝達機構とを主に備える。なお、釣用リール装置1の軽量化の観点から、例えば、側方部材3,4は樹脂材料等で形成されている。
【0018】
回転伝達機構は、駆動軸6と、従動軸7と、駆動軸6に連結される駆動歯車8と、従動軸7に連結される従動歯車9と、側方部材4と駆動軸6との間に配置される逆転防止機構としての一方向クラッチ11とを備える。
【0019】
回転軸としての駆動軸6は、側方部材4に軸受(図示省略)によって回転自在に支持されている。また、駆動軸6の一方側はハンドル5と、他方側は駆動歯車8、従動歯車9、および従動軸7を介してスプール2とそれぞれ連結しており、ハンドル5と駆動軸6とは常に一体回転する。従動軸7は、側方部材4に軸受(図示省略)によって回転自在に支持されている。また、従動軸7の一方側端部はスプール2に連結されている。
【0020】
駆動歯車8は駆動軸6に嵌合して一体回転する。従動歯車9は従動軸7に嵌合して一体回転する。そして、駆動歯車8と従動歯車9とは噛合った状態となっている。したがって、駆動軸6と従動軸7とは常に逆回転する。同様に、スプール2とハンドル5とも逆回転する。
【0021】
一方向クラッチ11は、側方部材4に圧入されると共に内径面に駆動軸6を受け入れる。そして、駆動軸6の一方方向の回転(図1中の矢印イの方向。以下「正転」という)のみを許容し、他方方向への回転(図1中の矢印ロの方向。以下「逆転」という)を阻止する逆転防止機構として動作する。
【0022】
図2〜図8を参照して、図1に示す一方向クラッチ11を説明する。なお、図2は一方向クラッチ11を回転軸線と平行な平面で切断した断面図、図3は図2の矢印IIIの方向から見た矢視図、図4は図2のIV−IVにおける断面図、図5および図6はC形ばね18の形状を示す図、図7および図8は側板19の形状を示す図である。
【0023】
まず、図2〜図4を参照して、一方向クラッチ11は、シェル外輪12と、シェル外輪12の内径面に沿って配置される複数のころ17と、弾性部材としてのC形ばね18と、シェル外輪12の軸方向一方側端部に配置される側板19とを備える。なお、この実施形態における一方向クラッチ11は総ころ形式である。
【0024】
シェル外輪12は、内径面に軸方向に延びる複数のカム面13と、軸方向一方側端部から径方向内側に突出する円環形状の鍔部14と、軸方向他方側端部に切欠き部15と、切欠き部15に連なって軸方向に延びる係合部16とを有する。この実施形態においては、切欠き部15を円周方向の4箇所に90°間隔で設け、係合部16を切欠き部15の1つに軸方向に連ねて設けている。また、この実施形態における係合部16は、シェル外輪12を厚み方向に貫通する例を示したが、これに限ることなく、シェル外輪12の内径面に設けられた不貫通凹部であってもよい。
【0025】
カム面13は、シェル外輪12の内径面の複数箇所に形成されている。このカム面13の径方向内側には、円周方向一方側と他方側とで径方向の隙間が異なる楔空間が形成されている。この実施形態においては、反時計回り方向(図4中の矢印ハの方向)に向かって径方向の隙間が増加(「拡大方向」という)し、時計回り方向(図4中の矢印ニの方向)に向かって径方向の隙間が減少している(「狭小方向」という)。そして、各楔空間には、ころ17が配置されている。
【0026】
鍔部14は、シェル外輪12の軸方向一方側端部に位置する円環形状の部分である。この鍔部14は、シェル外輪12の内部に収容される構成部品(例えば、「ころ17」、「C形ばね18」等を指す)の軸方向への抜けを防止する。
【0027】
図5および図6を参照して、C形ばね18は、円弧形状のC形部18aと、C形部18aの一方側および他方側端部にC形部18aと交差(この実施形態では「直交」)する方向に延びる係合突起18b,18cとを有する。
【0028】
このC形ばね18は、一方向クラッチ11に挿通する駆動軸6とシェル外輪12との間に形成される環状空間に弾性縮径された状態で配置される。そして、一方側端部の係合突起18bは係合部16に係合し、他方側端部の係合突起18cは隣接するころ17の間の空間(PCDより外側の空間)に配置される。
【0029】
図7および図8を参照して、側板19は、円環形状のリング部19aと、リング部19aの外周面から径方向に突出すると共に、外縁部を厚み方向に折り曲げて形成した廻り止め部19bとを備える。この廻り止め部19bは、切欠き部15に対応する位置、すなわち、リング部19aの外周面の4箇所に90°の間隔で設けられている。
【0030】
なお、リング部19aの外径寸法は、シェル外輪12の内径寸法より僅かに小さく設定され、厚み方向に屈曲した廻り止め部19bの内径寸法は、シェル外輪12の外径寸法より僅かに大きく設定されている。
【0031】
そして、リング部19aは、廻り止め部19bが切欠き部15に嵌まり込む位置関係でシェル外輪12の軸方向他方側端部(鍔部14と反対側の端部を指す)に嵌まり込む。廻り止め部19bは、それぞれ切欠き部15を通ってシェル外輪12の外径面に沿って軸方向に延びている。
【0032】
この廻り止め部19bは、側方部材4の内径面に設けられる溝部4aに係合して、シェル外輪12が側方部材4の内部で滑るのを防止する。したがって、駆動軸6のロック時に廻り止め部19bに負荷される荷重を分散する観点からは、廻り止め部19bの軸方向に延びる部分の長さLは長いほうが望ましい。一方、長さLをシェル外輪12の軸方向幅寸法より長くすれば、一方向クラッチ11を受け入れる側方部材4の軸方向のスペースも大きくする必要が生じる。したがって、側方部材4の一方向クラッチ11を受け入れる部分のスペースをコンパクト化する観点からは、廻り止め部19bの先端がシェル外輪12の外径面上に位置するように長さLを設定するのが望ましい。
【0033】
上記構成の一方向クラッチ11は、例えば、内径面に駆動軸6を受け入れると共に、側方部材4に圧入される。側方部材4は廻り止め部19bを受け入れる溝部4aを有している。そして、廻り止め部19bと溝部4aとが係合するような位置関係で一方向クラッチ11を側方部材4に嵌め込む。
【0034】
より具体的には、ハンドル5を正転させたときに駆動軸6が反時計方向(図4中の矢印ハの方向)に回転するように、一方向クラッチ11を駆動軸6に嵌合させる。駆動軸6が反時計方向(図4中の矢印ハの方向)に回転するとき、ころ17は楔空間の拡大方向に移動し、空転する。すなわち、駆動軸6の正転を許容する。このとき、従動軸7に連結されたスプール2は歯車8,9によって駆動軸6とは反対周りに回転し、釣糸を収容する。
【0035】
一方、スプール2を正転(釣糸が繰り出される方向)させようとすると、駆動軸6が逆転しようとする。駆動軸6が時計方向(図4中の矢印ニの方向)に回転するとき、ころ17は楔空間の狭小方向に移動し、シェル外輪12と駆動軸6との間に噛み合って、駆動軸6の逆転を阻止する。つまり、獲物の引き等によって釣糸が繰り出されるのを防止することができる。
【0036】
ここで、シェル外輪12と側方部材4とは、嵌め合いによって固定されていると共に、廻り止め部19bと溝部4aとが係合している。これにより、駆動軸6がロックしたときの伝達トルクが大きくても、シェル外輪12が側方部材4の内部で滑るのを確実に防止することができる。この発明は、側方部材4が樹脂等の比較的剛性の低い材料で形成されている場合に、特に有利な効果を奏する。
【0037】
また、C形ばね18は、一方側端部が係合部16に係合した状態で拡径しようとして(元の状態に復帰しようとして)、ころ17を狭小方向(図4中の矢印ニの方向)に付勢する。これにより、ころ17の遊度が小さくなるので、駆動軸6の逆転を敏速に停止させることが可能となる。なお、弾性部材は、図5および図6に示すC形ばね18に限らず、ころ17を狭小方向に付勢可能なあらゆる形態を採用することができる。
【0038】
さらに、シェル外輪12の軸方向一方側端部に鍔部14を、軸方向他方側端部に側板19をそれぞれ設けたことにより、ころ17やC形ばね18等の軸方向への抜けを防止することができる。
【0039】
なお、隣接するころ17の間隔を保持する保持器を組み込んでもよい。ただし、保持器を組み込んだ場合、総ころ形式と比較して収容可能なころ17の本数が減少するので、一方向クラッチの負荷容量が低下する。したがって、高荷重環境下で使用する場合には、図2〜図4に示した総ころ形式の一方向クラッチ11が適しているといえる。
【0040】
次に、図9〜図19を参照して、一方向クラッチ11の製造方法を説明する。なお、図9は一方向クラッチ11の製造方法の主な工程を示すフロー図、図10〜図19は各工程におけるシェル外輪12の形状を示す図である。
【0041】
まず、図9および図10を参照して、第1の工程では、打ち抜き加工によって鋼板から円盤21を得る(S11)。
【0042】
次に、図9、図11、および図12を参照して、第2の工程では、絞り加工によって円盤21をカップ状部材22に成形すると共に、カップ状部材22の内側壁に深さ方向に延びるカム面13を形成する(S12)。具体的には、内径寸法がシェル外輪12の外径寸法に一致するダイス(図示省略)に円盤21を載置し、外径面の形状がシェル外輪12の内径面の形状に対応するポンチ(図示省略)によって絞り加工を行う。なお、1度の絞り加工によってカップ状部材22を得てもよいし、複数回の絞り加工を経てカップ状部材22を形成してもよい。
【0043】
次に、図9および図13を参照して、第3の工程では、打ち抜き加工によって鍔部14を残して、カップ状部材22の底壁22aを除去する(S13)。
【0044】
次に、図9、および図14〜図16を参照して、第4の工程では、切欠き部15を形成する(S14)。図16を参照して、切欠き部15は、廻り止め部19bを受け入れる幅広部15aと、幅広部15aの開口側端部に廻り止め部19bの抜けを防止する幅狭部15bとを含む。すなわち、幅広部15aの円周方向幅寸法をx、幅狭部15bの幅寸法をy、廻り止め部19bの幅寸法をz(図19参照)とすると、x>z>yを満たすような寸法関係となる。
【0045】
また、切欠き部15の形成と同時に係合部16を形成してもよい。係合部16の位置は特に限定されないが、図16に示すように切欠き部15の1つに軸方向に連ねて形成してもよい。
【0046】
次に、図9を参照して、第5の工程では、シェル外輪12に必要な機械的性質を得るために、カップ状部材22に熱処理を施す(S15)。熱処理としては、例えば、浸炭窒化処理や浸炭焼入れ処理を施す。これにより、表面は硬く、内部は軟らかく靭性の高い性質が得られる。さらに、上記の熱処理によって生じた残留応力や内部ひずみを低減し、靭性の向上や寸法を安定化させるために、上記の熱処理の後に焼戻を行う。
【0047】
次に、図9、図17〜図19を参照して、第6の工程では、一方向クラッチ11の組立を行う(S16)。具体的には、図17に示すようにシェル外輪12の内部に複数のころ17およびC形ばね18を組み込む。さらに、図18および図19に示すように側板19を切欠き部15の幅狭部15bを弾性変形させながらかち込む。
【0048】
なお、側板19をシェル外輪12に組み込む前に、図8に示すように廻り止め部19bを側板19の厚み方向に折り曲げておいてもよい。または、廻り止め部19bは、シェル外輪12の外径面よりも径方向外側に位置していればよく、必ずしもシェル外輪12の外径面に沿って折り曲げる必要はない。すなわち、図18および図19に示す状態でもシェル外輪12の滑りを防止することができる。
【0049】
また、第4の工程(S14)において幅狭部15bを形成せず(x=y>z)、側板19を組み込んだ後に切欠き部15の開放端部に加締め加工を施して幅狭部15b(「加締め部」ともいう)を形成してもよい。これにより、側板19の組込み性が向上すると共に、シェル外輪12と側板19とをより強固に一体化することができる。
【0050】
上記の各工程を経て、図2および図3に示したような一方向クラッチ11を得ることができる。このように、廻り止め部19bを有する側板19をシェル外輪12に取り付けたので、従来の引き抜き加工やブローチ加工等によって外輪に廻り止め加工を施す場合と比較して、作業工数および作業コストを削減することができる。その結果、低廉な一方向クラッチ11を得ることができる。
【0051】
なお、図9に示した製造工程は、一方向クラッチ11の製造方法の一部であって、さらに工程を追加してもよいし、各工程をさらに細分化してもよい。また、一部の工程については順序を相互に入れ替えることもできる。
【0052】
次に、図20〜図22を参照して、他の実施形態に係る一方向クラッチ31およびその製造方法を説明する。なお、図20は一方向クラッチ31を回転軸線に平行な平面で切断した断面図、図21は図20の矢印XXIの方向から見た矢視図、図22は図9の第6の工程(S16)終了後の状態を示す図である。また、一方向クラッチ11との共通部分の説明は省略し、相違点を中心に説明する。
【0053】
まず、図20および図21を参照して、一方向クラッチ31は、シェル外輪32と、複数のころ37と、C形ばね38と、側板39とを主に備える。シェル外輪32は、内径面にカム面(図示省略)と、軸方向両端部に鍔部33,34と、切欠き部35と、係合部36とを備える。
【0054】
シェル外輪32の軸方向一方側端部には、径方向内側に突出する円環形状の鍔部33が設けられている。一方、軸方向他方側端部には、側板39を軸方向外側から覆うように径方向内側に突出する円弧形状の鍔部34a,34b,34c,34d(これらを総称して「鍔部34」という)が4箇所に設けられている。切欠き部35は、隣接する鍔部34の間にそれぞれ設けられている。
【0055】
上記構成の一方向クラッチ31の製造方法は、図9に示す工程と共通する。ただし、第1の工程(S11)において得られる円盤21の直径は、鍔部34の分だけ大きくなる。また、第4の工程(S14)において形成する切欠き部35には幅狭部を設ける必要がない(x=y>z)。
【0056】
そして、図22を参照して、第7の工程(図9では図示省略)では、曲げ加工によってシェル外輪32の開放側端部を径方向内側に折り曲げて鍔部34を形成する。なお、この工程に先立って、鍔部34となる部分に部分焼鈍しを施しておくのが望ましい。これにより、容易に曲げ加工を行うことができる。
【0057】
なお、上記の各実施形態においては、シェル外輪12,32の内径面にころ17,37を配置した一方向クラッチ11,31の例を示したが、シェル外輪12,32は、他の一方向クラッチにも適用することができる。例えば、スプラグタイプの一方向クラッチにも適用することができる。
【0058】
また、上記構成の釣用リール装置1は、操作性の観点から、歯車8,9を用いてハンドル5とスプール2とが逆回転するようにしたが、従動軸7および従動歯車9を省略して、駆動軸6の一方側にハンドル5を、他方側にスプール2をそれぞれ連結し、両者を同一方向に回転させる構成としても、この発明の効果を得ることができる。
【0059】
さらに、この発明の一実施形態に係る釣用リール装置1として、ベイトリールの例を示したが、この発明は他の構成の釣用リール装置にも適用することができる。例えば、スピニングリールにも適用することができる。
【0060】
以上、図面を参照してこの発明の実施形態を説明したが、この発明は、図示した実施形態のものに限定されない。図示した実施形態に対して、この発明と同一の範囲内において、あるいは均等の範囲内において、種々の修正や変形を加えることが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0061】
この発明は、釣用リール装置に有利に利用される。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】この発明の一実施形態に係る釣用リール装置の概略断面図である。
【図2】図1に示す一方向クラッチを回転軸線に平行な平面で切断した断面図である。
【図3】図2の矢印IIIの方向から見た矢視図である。
【図4】図2のIV−IVにおける断面図である。
【図5】C形ばねを径方向から見た図である。
【図6】C形ばねを軸方向から見た図である。
【図7】側板を軸方向から見た図である。
【図8】図7のVIII−VIIIにおける断面図である。
【図9】図1に示す一方向クラッチの製造方法の主な工程を示すフロー図である。
【図10】図9の第1の工程で得られた円盤の形状を示す図である。
【図11】図9の第2の工程で得られたカップ状部材を回転軸線に平行な平面で切断した断面図である。
【図12】図11のXII−XIIにおける断面図である。
【図13】図9の第3の工程終了後のカップ状部材の形状を示す断面図である。
【図14】図9の第4の工程終了後のカップ状部材の形状を示す断面図である。
【図15】図14の矢印XVの方向から見た矢視図である。
【図16】図14の矢印XVIの方向から見た矢視図である。
【図17】図9の第6の工程の途中における一方向クラッチの状態を示す図である。
【図18】図9の第6の工程終了後の一方向クラッチの状態を示す図である。
【図19】図18の矢印XIXの方向から見た矢視図である。
【図20】他の実施形態に係る一方向クラッチを回転軸線に平行な平面で切断した断面図である。
【図21】図20の矢印XXIの方向から見た矢視図である。
【図22】図9の第6の工程終了後の一方向クラッチの状態を示す図である。
【符号の説明】
【0063】
1 釣用リール装置、2 スプール、3,4 側方部材、4a 溝部、5 ハンドル、6 駆動軸、7 従動軸、8 駆動歯車、9 従動歯車、11,31 一方向クラッチ、12,32 シェル外輪、12 カム面、14,33,34,34a,34b,34c,34d 鍔部、15,35 切欠き部、15a 幅広部、15b 幅狭部、16,36 係合部、17,37 ころ、18,38 C形ばね、18a C形部、18b,18c 係合突起、19,39 側板、19a リング部、19b 廻り止め部、21 円盤、22 カップ状部材、22a 底壁。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溝部を有するハウジングと、
前記ハウジングに回転自在に保持される回転軸と、
前記回転軸の一方側に連結されて前記回転軸を回転させるハンドルと、
前記回転軸の他方側に連結されて釣糸を巻回するスプールと、
前記ハウジングおよび前記回転軸の間に配置され、前記回転軸の一方方向への回転のみを許容し、他方方向への回転を阻止する一方向クラッチとを備え、
前記一方向クラッチは、
軸方向端部に切欠き部を有し、前記ハウジングに嵌まり込むシェル外輪と、
前記シェル外輪の切欠き部を有する側の端部に嵌まり込むリング部、および前記リング部の外周面から前記切欠き部を通って前記シェル外輪の外径面よりも径方向外側に位置し、前記溝部に係合する廻り止め部を含む側板とを含む、釣用リール装置。
【請求項2】
前記廻り止め部は、前記シェル外輪の外径面に沿って軸方向に延びている、請求項1に記載の釣用リール装置。
【請求項3】
前記切欠き部は、前記廻り止め部を受け入れる幅広部と、開口側端部に位置する幅狭部とを含み、
前記幅広部の円周方向幅寸法をx、前記幅狭部の円周方向幅寸法をy、前記廻り止め部の円周方向幅寸法をzとすると、
x>z>yを満たす、請求項1または2に記載の釣用リール装置。
【請求項4】
前記シェル外輪は、前記切欠き部を有する側の端部から前記側板を軸方向外側から覆うように径方向内側に突出する鍔部を有する、請求項1または2に記載の釣用リール装置。
【請求項5】
前記シェル外輪は、その内径面に軸方向に延びる複数のカム面を有し、
前記一方向クラッチは、前記カム面の径方向内側の円周方向一方側と他方側とで径方向の隙間が異なる楔空間に配置されるころをさらに備える、請求項1〜4のいずれかに記載の釣用リール装置。
【請求項6】
前記一方向クラッチは、総ころ形式である、請求項5に記載の釣用リール装置。
【請求項7】
前記一方向クラッチは、円弧形状の弾性部材をさらに有し、
前記シェル外輪は、前記切欠き部に連なって軸方向に延びる係合部をさらに有し、
前記弾性部材は、弾性縮径された状態で一端が前記係合部に係合し、他端が隣接する前記ころの間の空間に位置し、前記ころを前記楔空間の径方向隙間が減少する方向に付勢する、請求項6に記載の釣用リール装置。
【請求項8】
前記一方向クラッチは、隣接する前記ころの間隔を保持する保持器をさらに備える、請求項5に記載の釣用リール装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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