説明

釣竿、及び釣竿の装着部材の形成方法

【課題】装着部材と、竿杆や介在部品との間の密着性が向上し、装着部材が剥離したりずれたりし難いように構成された釣竿を提供する。
【解決手段】本発明に係る釣竿は、竿杆1の表面に取着されたシート本体5の表面に握持部27を形成した構成において、シート本体5に、握持部27のずれを抑制する壁部を形成したことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は釣竿に関し、詳細には、リールシートに形成される握持部や、グリップ部のような装着部材を備えた釣竿及び前記装着部材の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、釣竿には、手によって握持される部分に樹脂やゴムなどの柔軟性を有する部材を装着することがある。例えば、特許文献1に開示されているように、基端側の竿杆に、芯材を介在させた状態で柔軟性を有するグリップ部を装着したり、或いは、特許文献2に開示されているように、竿杆に、各種のリールを装着できるリール脚固定装置(リールシートとも称する)を介在させた状態で柔軟性を有する握持部を装着したものがある。
【0003】
通常、上記したようなグリップ部や握持部(このような部材を「装着部材」と総称する)は、特許文献1に開示されているように、装着位置に成形金型を配置して、柔軟性を有する樹脂(例えば、熱可塑性のエラストマーなど)を注入することで形成したり、或いは、特許文献2に開示されているように、別体として形成された装着部材を、接着剤や両面テープ等を塗布することで、介在される部品や竿杆に取着している。
【特許文献1】特開平9−224531号公報
【特許文献2】特開2003−274813号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記したような従来の装着部材の形成方法では、竿杆や介在部品に対する密着性が強固ではないため、使用している間に、剥離したりずれが生じることがある。また、別体として形成された装着部材を接着剤や両面テープで取着する方法では、装着部材の端縁に段差が生じてしまい、握持、保持性も悪い上に見栄えも悪く、更には、段差部分の引っ掛かりによって、剥離や損傷等がより発生し易くなってしまう。
【0005】
本発明は、上記した問題に基づいてなされたものであり、装着部材と、竿杆や介在部品との間の密着性が向上し、装着部材が剥離したりずれたりし難いように構成された釣竿を提供することを目的とする。また、本発明は、竿杆や介在部品との間の密着性が良好でずれや剥離が発生し難い装着部材の形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するために、本発明に係る釣竿は、竿杆表面、又は竿杆表面に取着された介在部品の表面に装着部材を形成したものであって、前記竿杆、又は介在部品に、前記装着部材のずれを抑制する壁部を形成したことを特徴とする。
【0007】
上記した構成の釣竿において、装着部材は、竿杆表面、又は竿杆表面に取着された介在部品の表面に形成された壁部によって、ずれることが抑制されるため、両者の間で密着性が低下することが防止されて、装着部材が剥離したりずれることを効果的に抑制することが可能となる。
【0008】
この場合、上記した構成において、壁部とは、竿杆表面や介在部品の表面に取着されている装着部材が、その表面に沿って移動することを妨げるように形成されたもの、例えば表面に対して交差(好ましくは直交する方向)する方向に立設されて、装着部材のずれを抑制できるように構成されたものであれば良い。また、上記した構成において、竿杆は、いわゆる管状に構成されたもの、及び中実状に構成されたものであっても良い。さらに、装着部材は、直接、竿杆の表面に形成されたもの、或いは、竿杆の表面との間に介在部品を介在させて、介在部品の表面に形成されたものであっても良い。
【0009】
また、本発明は、上記した目的を達成するために、管状体の表面に装着部材を形成する方法であって、前記管状体の表面に複数箇所の孔部を形成する工程と、前記管状体に、少なくとも前記孔部の周辺において管状体の内周面と所定の隙間を有するように芯金を挿入する工程と、前記孔部を含む領域に、所定形状の装着部材を、熱可塑性の樹脂を射出成形することで形成する工程とを有することを特徴とする。
【0010】
このような装着部材の形成方法によれば、熱可塑性の樹脂を射出成形する際に、管状体の表面に複数箇所形成された孔内に熱可塑性の樹脂が入り込み、更には、その孔部周辺の裏側領域に入り込んで硬化することから、装着部材は、孔部の内面(壁部)に当て付いて、管状体の表面に対してずれることが抑制される。また、熱可塑性の樹脂は、管状体の裏面側にも入り込んで取着されることから、形成された装着部材は、剥離することが抑制されるようになる。この結果、両者の間で密着性が低下することが防止されて、装着部材が剥離したりずれることを効果的に抑制することが可能となる。
【0011】
また、本発明は、上記した目的を達成するために、竿杆表面、又は竿杆表面に取着された介在部品の表面に装着部材を形成する方法であって、前記竿杆表面、又は竿杆表面に取着された介在部品の表面に複数箇所の穴部を形成し、前記穴部を含む領域に、所定形状の装着部材を、熱可塑性の樹脂を射出成形することで形成することを特徴とする。
【0012】
このような装着部材の形成方法によれば、熱可塑性の樹脂を射出成形する際に、竿杆表面、又は竿杆表面に取着された介在部品の表面に複数箇所形成された穴部内に熱可塑性の樹脂が入り込んで硬化することから、装着部材は、穴部の内面(壁部)に当て付いて、竿杆表面、又は竿杆表面に取着された介在部品の表面に対してずれることが抑制される。この結果、両者の間で密着性が低下することが防止されて、装着部材が剥離したりずれることを効果的に抑制することが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、装着部材と、竿杆や介在部品との間の密着性が向上し、装着部材が剥離したりずれたりし難いように構成された釣竿が得られるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について、添付図面を参照しながら具体的に説明する。
図1〜図3は、本発明に係る釣竿の第1の実施形態を示しており、図1は、釣竿の内、リール脚固定装置(リールシート)部分の側面図、図2は、リール脚固定装置のリール装着側の構成を示す平面図、そして、図3は、リール脚固定装置の縦断面図である。
【0015】
本実施形態に係る釣竿は、複数の竿杆(各竿杆は、例えば繊維強化樹脂によって形成される)を、振り出し式、或いは並継式にすることで構成されており、その元竿杆1には、各種のリールを装着することが可能なリール脚固定装置3が配設されている。本実施形態のリール脚固定装置3は、内部に元竿杆1が貫通して装着される筒状のシート本体5を備えており、このシート本体5は、元竿杆1とは別体で、ナイロン、ABS等、比較的硬質な合成樹脂等で一体形成されている。
【0016】
本実施形態においては、このように一体形成されたシート本体5は、竿杆1の表面に接着剤によって取着される介在部品となり、このシート本体5の表面に、後述する形成方法によって握持部27(装着部材)が形成される。すなわち、図3に示すように、竿杆1の表面と握持部27の裏面との間にシート本体5が介在した状態となる。
【0017】
前記シート本体5には、軸方向に延出するようにして、魚釣用リールのリール脚100を載置可能にする平坦状のリール脚載置面7が設けられている。また、前記シート本体5には、リール脚載置面7の長手方向両端側に対向配置され、リール脚100の前部101及び後部102を受け入れるように一対のフード8,10が設けられている。本実施形態では、竿先側のフード8がシート本体5と共に一体形成される固定フード、基端側のフード10が軸方向に沿ってスライド可能な移動フードとして構成されている(以下、フード8を固定フード、フード10を移動フードと称する)。
【0018】
前記固定フード8及び移動フード10には、リール脚の前部及び後部が挿入されるよう脚受入部8a,10aが設けられている。また、移動フード10は、シート本体5の両側に軸方向に沿って形成された一対のガイド溝12に係合して軸方向にスライド可能に支持されている。
【0019】
なお、前記リール脚載置面7は、シート本体5と共に一体形成しても良いが、リール脚100がより安定して固定できるように、硬質な部材、例えばSUS、黄銅、アルミ等の金属、合成樹脂、セラミックス、木材、石材等で形成し、これをシート本体5に接着したものであっても良い。また、リール脚載置面7には、載置したリール脚100が安定するように、ゴム等によって構成された滑り止め部材7aを取着しておいても良い。そして、前記シート本体5のリール脚載置面7の後方側には、軸方向に沿って係止凹凸部14が連続形成されている。
【0020】
前記移動フード10は、前記ガイド溝12に係合するガイド片を両側に備えた金属、又は剛性の高い合成樹脂等で形成されたフード本体16を有しており、前記脚受入部10aは、このフード本体16に設けられている。また、移動フード10には、それ自身(フード本体16)の軸方向の位置を固定するための緊締レバー20と、この緊締レバー20の回動操作によって作動される係止板バネ21が設けられている。この係止板バネ21の端部には、係止爪(図示せず)が設けられており、この係止爪は、緊締レバー20を図1に示す状態に倒伏させた際、係止板バネ21を介して係止凹凸部14に係止されるようになっている。すなわち、移動フード10は、緊締レバー20を倒伏させた際、係止爪が係止凹凸部14に係止されることにより、その位置が固定されると共に、緊締レバー20を起立させた際、係止爪と係止凹凸部14の係止関係が解除されて、軸方向にスライド可能となる。
【0021】
前記シート本体5のリール脚載置面7の反対側には、図1に示すように、親指の腹部が当接可能で比較的硬質な材料で構成された当接部25と、この当接部25よりも柔軟性のある材料で、それよりも後方側に延出して形成される握持部27とが設けられている。この場合、本実施形態では、当接部25は、上述したように、ナイロン、ABS等によって一体形成されたシート本体5によって構成されており、握持部27は、当接部25よりも柔軟性のある材料である熱可塑性エラストマー(スチレン系、オレフィン系、ジオレフィン系、塩化ビニル系、ウレタン系、エステル系、アミド系)によって構成されている。
【0022】
前記当接部25は、図に示すように、スピニングリールを装着した状態で、シート本体5を握持、保持した際、親指の腹部の少なくとも一部が当接可能であれば良い。具体的には、柔軟性のある握持部27が形成される前端位置Pは、通常の手の大きさを有する釣人がスピニングリールの脚部100を中指と薬指で挟持した際、親指の腹部が当接部25に載置可能となる位置、ここでは固定フード8を側面視した際の最も高い位置となる開口縁8bから前方側の握持部27の前端位置Pまでの距離Lが20mm以内となるように設定される。すなわち、握持部27の前端位置Pを、このような位置にしておくことで、シート本体5を握持、保持した際の親指の腹部の少なくとも一部を確実に当接部25に当接させることが可能となる。
【0023】
この場合、好ましくは、開口縁8bから前端位置Pまでの距離Lを5mm以内に設定することで、親指の腹部の半分以上を確実に当接部25に当接させることが可能となり、より好ましくは、前端位置Pを開口縁8bと略同じ位置(L=0)か、それよりも後方側(L<0)に設定することで、親指の腹部の略全体を確実に当接部25に当接させることが可能となる。すなわち、親指の腹部が硬質な当接部25に当接する領域が多くなるほど、当接した親指に力を加えても握持部27による変形が生じることがなくなって、親指の載置状態が安定する。
【0024】
また、前記当接部25から後方に延出する握持部27は、後方側が幅広状になるように形成されている。ここでの幅広状とは、シート本体5を握持、保持した際に、掌があたる部分全体(掌面領域の略全体)が当接できるように、シート本体5の側面に及んで形成されたものであれば良い。好ましくは、幅広部分は、図1に示すように、シート本体5の側部に及んで、その中心軸Xよりも更に下方に延設することで、握り込んだ際、掌面領域の略全体を当接させることができ、握持、保持感の向上が図れるようになる。
【0025】
また、握持部27の中央から前端領域は、上述した幅広部分と比較して、狭くなっていることが好ましい。すなわち、握持部27は、図1に示すように、前端部から後端部に移行するにつれて、次第に幅広状に形成されていることが好ましい。通常、握持部27の中央Cから前側の領域は、合わせ操作や振込み操作を行なう際に、人差し指や中指で強く握り込む領域であることから、上記したように後端部に向けて次第に幅広状となるように構成することで、人差し指や中指が当たる領域は弾性変形することのない硬質領域となって、操作性の向上が図れるようになる。
【0026】
また、上記した握持部27は、シート本体5の表面に対して略面一状に設けられていることが好ましい。このように握持部27とシート本体5を略面一状にすることで両者の間に段差がなくなって、握持、保持感の向上が図れるようになる。具体的に、このように設けられる握持部27は、筒状のシート本体5を一体形成する際に、握持部が取着される領域に、予め握持部の肉厚分、凹所5aを形成しておき、この凹所5aに握持部27に対応するキャビティを具備した金型を配置して、上述した熱可塑性樹脂を注入することで一体形成(二重成形)される。
【0027】
以下、上記したシート本体(介在部品)5に対する握持部(装着部材)27の形成方法について、図4から図6を参照して説明する。
【0028】
最初に、図4(a)に示すように、シート本体5をナイロン、ABS等によって一体形成する。シート本体5は、筒状(管状体)に形成されており、一側面側にリール脚載置面7、固定フード8、係止凹凸部14等が形成され、径方向反対側に、握持部27を形成するための凹所5aが形成されている。この場合、凹所5aの底面には、小径の孔5bが貫通して複数箇所形成されており、凹所5aを規定する内壁5e(図6参照)及び孔5bの内面5f(図6参照)は、共に握持部27のずれを抑制する壁部を構成する。また、シート本体5の凹所5aよりも端部側の内周面には、凹所5a部分の内径よりも若干小径化される段部5cが形成されている。この段部5cは、後述する芯金50を挿入した際、シート本体5の凹所5a部分の裏面と、芯金の外周面との間に、360°に亘って所定の隙間を規定するために形成されたものである。
【0029】
次に、図4(b)に示すように、シート本体5の左側から芯金50を挿入する。この芯金50には、シート本体5の左側の端縁5dが当て付くように第1の段部51が形成されると共に、シート本体5の凹所5aよりも手前側で小径化する第2の段部52が形成されている。この場合、第2の段部52の径は、前記段部5cにおける径と同一(芯金が挿入された際に芯金外周とシート本体の内周との間に隙間が生じない)に形成されている。この結果、芯金50をシート本体5に挿入すると、第1の段部51がシート本体5の左側の端縁5dに当て付いて芯金50が位置決めされ、この状態で、前記凹所5a部分の裏面と、芯金50の外周面との間には、360°に亘って所定の隙間が形成される。
【0030】
次に、芯金50を挿入したシート本体5は、図5(a)に示すように、握持部27を形成するための金型60にセットされる。この金型60には、前記したシート本体5に形成された凹所5aに位置合わせして握持部27に対応する形状のキャビティ61が形成されており、このキャビティ内に、熱可塑性のエラストマー等を注入する。
【0031】
注入される熱可塑性のエラストマーは、キャビティ61の内面と凹所5aによって規定される空間に入り込むと共に、上記した孔5b、及び孔5bを介して、前記凹所5a部分の裏面と芯金の外周面との間の隙間に充填される。そして、金型60を取り外し(図5(b)参照)所定期間冷却した後、芯金50を取り外すことで、凹所5aに握持部27が二重成形されたシート本体5が形成される。
【0032】
図6に拡大して示すように、形成される握持部27は、シート本体5に対して二重成形(一体形成)されることから、シート本体5に対する密着性が良いと共に、上記した凹所5aによって形成される壁部5e、及び孔5bの内面によって形成される壁部5fによって、表面に沿った方向(軸方向や径方向)の移動が規制されるため、取着された握持部27はずれが発生することはなくなる。すなわち、手によって握持される握持部27のように、特にねじりトルクが発生し易い部分であっても、上記したように密着性が良いことに加え、壁部5e,5fによって、表面に沿った方向の移動が規制されることから、ずれが生じることがなくなり、更には、ずれによる密着性の低下に伴って、剥離が生じることも効果的に抑制することが可能となる。特に、本実施形態では、握持部27の表面とシート本体5の表面とは、略面一状に形成されているため、両者の境界部分で破損等生じることはなく、握持感及び外観が向上する。
【0033】
また、本実施形態の握持部27は、孔5bの裏面側に樹脂が入り込んでシート本体(介在部品)5の裏面側に取着された状態になるため、握持部27を、より剥離しない固定構造とすることが可能となる。
【0034】
そして、上記したように握持部27が一体形成されたシート本体5は、図3に示したように、釣竿の竿杆(元竿杆1)の外周面に、接着剤等によって接着、固定される。この場合、竿杆1は、管状に構成されていても良いし、中実に構成されていても良い。
【0035】
なお、上述した実施形態では、装着部材である握持部27は、介在部品であるシート本体5に形成されていたが、装着部材は、介在部品を配置することなく、直接、竿杆に形成する構成であっても良い。例えば、元竿杆に柔軟性を有するグリップ部を形成するのであれば、元竿杆に対して、直接、グリップ部を上記した方法によって形成することが可能である。
【0036】
この場合、上記した実施形態のように、装着部材のずれを抑制するために樹脂が充填される孔5bを形成することから、竿杆としては、管状体を用いる必要がある。また、竿杆である管状体には、装着部材が形成される部分に、上述したような凹所5aを形成することなく直接二重成形しても良い。すなわち、このような凹所を形成しなくても、孔に充填される樹脂によって、装着部材のずれを効果的に抑制することが可能となる。もちろん、管状体の表面に凹所を形成しておくことにより、装着部材の表面と管状体の表面を、略面一にすることが可能になると共に、凹所によって形成される壁部によって、ずれや剥離をより効果的に抑制することが可能となる。
【0037】
次に、本発明の別の実施形態について説明する。
図7は第2の実施形態を示す図である。上記した実施形態では、装着部材のずれを抑制するための壁部を、貫通する孔の内面によって構成したが、この図に示すように、竿杆1Aの表面(介在部品の表面であっても良い)に形成される有底の穴70の内面70aによって構成しても良い。このように、樹脂が充填される領域に穴70を複数箇所形成しておくことにより、穴70内に樹脂が充填されて、その内面70aによって、形成される装着部材72は、ずれが生じ難くなる。
【0038】
なお、このような有底の穴70を形成する構成では、更に、切削機械等を用いて、穴の延出方向に対して交差するようにアンダーカット71を形成しておくことが好ましい。このようなアンダーカット71を形成しておくことにより、このアンダーカット部分に樹脂が充填されて、上記したようにずれが生じ難いと共に剥離し難い構成とすることが可能となる。そして、このような穴部を形成して装着部材72を形成する方法では、竿杆1Aは、管状体ではなく、中実な構成であっても良い。
【0039】
図8は第3の実施形態を示す図である。この実施形態では、管状体1Bの表面(介在部品の表面であっても良い)に、貫通する孔80を形成すると共に、その内周面側に、管状体1Bの内部空間に露出するアンダーカット81を形成した構成を示している。このような構成においても上記した実施形態と同様、形成される装着部材82は、孔80の内面80aによってずれが生じ難いと共に、アンダーカット81によって剥離し難い構成とすることが可能となる。
【0040】
また、このような構成では、挿入される芯金の外周面と管状体の内周面との間に隙間を形成しておく必要がなくなり、寸法管理が容易になる。更には、管状体1Bの内周面側は、略面一になっていることから、振り出し式の釣竿の場合、中節が通過する際の引っ掛かりが防止されるよになる(並継式の釣竿であれば、内周面側に樹脂が露出していても差し支えない)。
【0041】
上記した実施形態のように、装着部材のずれを抑制するために形成される壁部は、貫通孔や有底の穴によって構成することが可能である。この場合、孔(穴)の形状については特に限定されることはなく、例えば、円形状にしたり、矩形状にすることが可能である。ただし、加工性を考慮した場合、円形にすることが好ましい。また、孔(穴)の延出方向については、竿杆や介在部品に対して垂直に形成しなくても良く、更には、径を変化させても良い。また、図示しないが、壁部については、竿杆や介在部品の表面から突出する凸部の外面によって構成しても良い。このように凸部を複数形成しておき、この周辺領域に装着部材を射出成形しても、凸部の外面によって装着部材のずれを効果的に抑制することが可能となる。
【0042】
さらに、芯金50を挿入した際に、管状体との間に形成される隙間については、360°に亘って形成されていなくても良い。すなわち、形成される孔の周辺領域に隙間が形成されていれば、樹脂が入り込んで、管状体の裏面に取着され、剥離を効果的に抑制することが可能となる。
【0043】
さらにまた、上述した各実施形態において、形成される装着部材に関しては、図9(a)及び(b)に示すように、その表面に、摩擦力を向上するように高摩擦手段を設けておくことが好ましい。このような高摩擦手段は、例えば、装着部材である握持部27の表面に多数の凸部27aを形成したり、ローレットを形成したり、或いは、粗面化処理を施すこと等によって形成することが可能である。
【0044】
このように、高摩擦手段を設けておくことにより、握持、保持した際に、掌部分で滑りやずれが生じることがなくなり、釣竿操作やリール操作をより安定して行なうことが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明は、釣竿以外にも、樹脂によって構成される装着部材を取着する各種の製品に適用することが可能である。例えば、ゴルフクラブのグリップ部分に適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明に係る釣竿の一実施形態を示しており、リール脚固定装置(リールシート)部分を示す側面図。
【図2】リール脚固定装置のリール装着側の構成を示す平面図。
【図3】リール脚固定装置の縦断面図。
【図4】釣竿に装着されるリール脚固定装置の形成方法を示す図であり、(a)は形成されたシート本体を示す図、(b)はシート本体に芯金を挿入した状態を示す図。
【図5】図4の工程の続きを示す図であり、(a)は芯金を挿入したシート本体を金型にセットした状態を示す図、(b)は金型から取り外した状態を示す図。
【図6】シート本体に形成された握持部の固定構造を示す拡大断面図。
【図7】本発明の第2の実施形態を示す図であり、竿杆に形成される装着部材の固定構造の拡大断面図。
【図8】本発明の第3の実施形態を示す図であり、竿杆に形成される装着部材の固定構造の拡大断面図。
【図9】リール脚固定装置における握持部の変形例を示す図であり、(a)は側面図、(b)は縦断面図。
【符号の説明】
【0047】
1 元竿杆
3 リール脚固定装置(リールシート)
5 シート本体(介在部品)
5a 凹所
5b 孔
5e,5f 壁部
7 リール脚載置面
27 握持部(装着部材)
50 芯金
60 金型
70 穴
71 アンダーカット
72,82 装着部材
80 孔
81 アンダーカット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竿杆表面、又は竿杆表面に取着された介在部品の表面に装着部材を形成した釣竿であって、
前記竿杆、又は介在部品に、前記装着部材のずれを抑制する壁部を形成したことを特徴とする釣竿。
【請求項2】
前記竿杆の表面、又は介在部品の表面には、凹所が形成されており、前記装着部材は、凹所内に取着されて前記竿杆の表面、又は介在部品の表面に対して略面一状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項3】
前記装着部材は、前記竿杆、又は介在部品に対して二重成形されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の釣竿。
【請求項4】
前記壁部は、前記竿杆、又は介在部品の前記装着部材が密着する領域に形成した孔部によって形成されており、前記装着部材は、前記孔部内に充填されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の釣竿。
【請求項5】
前記装着部材は、前記孔部を介して前記竿杆、又は介在部品の裏面に取着されていることを特徴とする請求項4に記載の釣竿。
【請求項6】
前記壁部は、前記竿杆、又は介在部品の前記装着部材が密着する領域に形成した有底の穴部の内面によって形成されており、前記装着部材は、穴部内に充填されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の釣竿。
【請求項7】
前記穴部には、装着部材の剥離を防止するように底部にアンダーカットが形成されていることを特徴とする請求項6に記載の釣竿。
【請求項8】
前記壁部は、前記竿杆、又は介在部品の前記装着部材が密着する領域に形成した凸部の外面によって形成されていることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の釣竿。
【請求項9】
前記装着部材の表面に高摩擦手段が施されていることを特徴とする請求項1から8のいずれか1項に記載の釣竿。
【請求項10】
管状体の表面に装着部材を形成する方法であって、
前記管状体の表面に複数箇所の孔部を形成する工程と、
前記管状体に、少なくとも前記孔部の周辺において管状体の内周面と所定の隙間を有するように芯金を挿入する工程と、
前記孔部を含む領域に、所定形状の装着部材を、熱可塑性の樹脂を射出成形することで形成する工程と、
を有することを特徴とする装着部材の形成方法。
【請求項11】
竿杆表面、又は竿杆表面に取着された介在部品の表面に装着部材を形成する方法であって、
前記竿杆表面、又は竿杆表面に取着された介在部品の表面に複数箇所の有底の穴部を形成し、
前記穴部を含む領域に、所定形状の装着部材を、熱可塑性の樹脂を射出成形することで形成することを特徴とする装着部材の形成方法。
【請求項12】
前記各穴部に、アンダーカットを形成したことを特徴とする請求項11に記載の装着部材の形成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−94818(P2006−94818A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−286992(P2004−286992)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】