説明

釣竿保持装置

【課題】基体の左右の幅を大きくすることなく、釣竿保持部を左右に大きく方向変更することが可能な釣竿保持装置を提供する。
【解決手段】本発明の釣竿保持装置1は、基体2と、基体2に水平方向に回動可能に支持された釣竿保持部10と、基体2と釣竿保持部10のそれぞれの対向位置に設けられ、互いに係合して釣竿保持部の回動を規制するストッパ部28a,28b及び18a,18bとを有する。基体2と釣竿保持部10は、略同じ幅で形成されると共に、ストッパ部28a,28b及び18a,18bは、夫々左右両側に設けられて互いに係合するようになっており、釣竿保持部10を左に回動したときに基体2の左側ストッパ部28aと釣竿保持部の右側ストッパ部18bが係合可能であり、釣竿保持部を右に回動したときに基体2の右側ストッパ部28bと釣竿保持部の左側ストッパ部18aが係合可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、船縁に取り付け可能な釣竿保持装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、船釣りをする際、船縁に釣竿を保持するための釣竿保持装置を装着することが行われている。従来の船縁に取り付け可能な釣竿保持装置は、コの字状の基体と、この基体に取り付けた釣竿保持部とを有しており、万力等のクランプ装置で基体を船縁に取り付け、魚のあたりを待つ間、釣竿保持部に釣竿を保持させている。
【0003】
ところで、乗船した他の釣人と並んで釣りをする場合や、複数本の釣竿を使用する場合等、釣竿を自分の正面を外して斜め方向に設置したいことがあり、このような釣竿を斜め方向に設置できる釣竿保持装置として、例えば、特許文献1には、釣竿保持部を、左右に方向変更できるようにしたものが紹介されている。
【0004】
この特許文献1に開示されている釣竿保持装置は、釣竿保持部を左右に回動可能に取り付けた基体上面に複数の凹部を設けておき、釣竿保持部を左右に回動したときに、釣竿保持部の下面中央に設けた1つの凸部を前記凹部に選択的に係合して回動を規制し、釣竿保持部の方向付けを行うよう構成されている。
【特許文献1】特開2002−176895号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した釣竿保持装置は、釣竿保持部の下面の中央に1つの凸部を設け、この凸部を基体に設けた複数の凹部に選択的に係合する構成となっている。ところが、基体の左右の幅は限られているため、基体に設けておく凹部の数には限りがあり、結果として、釣竿保持部を左右に大きく方向を変えることができないという問題がある。
【0006】
本発明は、上記した問題に着目してなされたものであり、基体の左右の幅を大きくすることなく、釣竿保持部を左右に大きく方向変更することが可能な釣竿保持装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するために、本発明に係る釣竿保持装置は、基体と、該基体に水平方向に回動可能に支持された釣竿保持部と、前記基体と前記釣竿保持部のそれぞれの対向位置に設けられ、互いに係合して釣竿保持部の回動を規制する規制手段とを有する構成において、前記基体と釣竿保持部は、略同じ幅で形成されており、前記規制手段は、前記基体及び釣竿保持部の夫々左右両側に設けられて互いに係合するストッパ部を備えており、釣竿保持部を左に回動したときに前記基体の左側ストッパ部と釣竿保持部の右側ストッパ部が係合可能であり、釣竿保持部を右に回動したときに前記基体の右側ストッパ部と釣竿保持部の左側ストッパ部が係合可能であることを特徴とする。
【0008】
上記した構成では、釣竿保持部は、規制手段を構成する基体及び釣竿保持部の夫々左右両側に設けられたストッパ部が互いに係合することで左右に回動することなく、釣竿を保持した状態となる。そして、上記したストッパ部は、基体及び釣竿保持部の夫々左右両側に設けられており、かつ釣竿保持部を左に回動したときに基体の左側ストッパ部と釣竿保持部の右側ストッパ部が係合し、釣竿保持部を右に回動したときに基体の右側ストッパ部と釣竿保持部の左側ストッパ部が係合するようになっているので、釣竿保持部の左右の回動角度を大きくすることが可能である。また、基体と釣竿保持部は、略同じ幅で形成することから、回動角度を大きくしながら装置のコンパクト化が図れる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、基体の左右の幅を大きくすることなく、釣竿保持部を左右に大きく方向変更することが可能な釣竿保持装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明の一実施の形態について、図1から図8を参照して説明する。
これらの図において、図1は、船縁に取り付けた釣竿保持装置の全体構成を示す図、図2は、釣竿保持装置の詳細な構造を示す部分断面図、図3は、釣竿保持部が回動する状態を示す部分断面図、図4は、図2に示す状態から釣竿保持部を付け替えた状態を示す部分断面図、図5は、図4に示す状態で船縁に取り付けた状態を示す部分断面図、図6は、図2乃至図5に示す主要部の拡大図、図7は、釣竿保持装置の平面図、そして、図8は、図7のA−A線に沿った要部断面図である。
【0011】
釣竿保持装置1は、船縁50に取り付けられるように構成されており、実際に船縁50に取り付ける基体2と、釣竿60を保持する釣竿保持部10とを備えて構成されている。
【0012】
前記船縁50は、図1及び図5に示すように、船によって、或いは着座する位置によって形状が異なっており、図1に示すように水平方向の張出部50aがあれば、釣竿保持装置1は、後述するクランプ機構を上下方向に締め付けて取り付け、図5に示すように、水平方向の張出部50aがないかまたは短い形状であれば、同クランプ機構を水平方向に締め付けて取り付ける。
【0013】
前記基体2は、縦フレーム2A、横フレーム2B及びクランプ支持フレーム2Cを具備したコの字状に形成されており、クランプ支持フレーム2Cに装着されたクランプ機構3を締め付けることで、基体2を船縁50に締め付け、固定することが可能となっている。このクランプ機構3は、公知の構成であり、縦フレーム2Aと平行に延出するシャフト3aを、下端に装着された操作レバー3bを回転することで、押圧部3cを横フレーム2Bに向けて進退させ、基体2を船縁50の張出部50a(図1参照)や、船縁50の側壁50b(図5参照)に対して締め付けて取り付けることが可能となる。
【0014】
前記基体2の横フレーム2Bの上面には、図1及び図2に示すように、釣竿保持部10が取り付けられている。本実施形態の釣竿保持部10は、後述する位置変更機構によって、基体2から取り外すことなく、縦フレーム2Aの上面に移動して取り付けることが可能となっている(図5参照)。
【0015】
釣竿保持部10は、釣竿60が載置されるY字状の竿受け部12と、釣竿緊締具15aを具備する竿掛け部15と、これら竿受け部12と竿掛け部15を支持する台座17とを有している。
【0016】
前記竿受け部12は、台座17に対して、矢印A方向に揺動して竿受け部12の位置を上下方向に調整可能に構成されている。具体的には、竿受け部12は、その本体12aの基端部が支持部12bによって台座17に対して揺動可能に軸支されると共に、本体12aには、ボルト13が螺入されている。このボルト13は、本体12aの下面から下側に突出しており、その突出端には、ツマミ13aが装着されている。このため、本体12aを台座17に対して持ち上げ、ツマミ13aを回転操作してボルト13の位置(突出量)を調整することで、竿受け部12の位置は上下方向に調整可能となっている。
【0017】
前記竿掛け部15は、台座17に対して取り付けられており、実釣時において、釣竿60の元竿に取着される釣竿緊締具15aを着脱可能にしている。この場合、公知のように、レバー15bを操作することで、釣竿緊締具15aは竿掛け部15から取り外しできるよう構成されている。
【0018】
また、本実施形態の釣竿保持部10は、位置変更機構20を構成する軸部23を回動操作することによって基体2から取り外すことなく、横フレーム2B及び縦フレーム2Aの上面に対して、選択的に取り付けすることが可能となっている。
【0019】
以下、位置変更機構20の構成について詳細に説明する。
前記基体2の縦フレーム2Aと横フレーム2Bの交差部は略直角に屈曲しており、この交差部には、縦フレームから横フレームに通じる溝21が形成されている。具体的に、溝21は、略直角に屈曲する交差部領域において、側面視で正方形状となるように形成されており、縦フレーム2Aの表面から横フレーム2Bの表面にかけて開口するように形成されている。
【0020】
そして、前記溝21の内部には、前記軸部23の基端部が支軸23aを介して枢着(軸支)されている。この軸部23は、その基端部が支軸23aを介して枢着されることで、溝21に沿って縦フレーム2A側から横フレーム2B側、及び横フレーム2B側から縦フレーム2A側に回動可能となっている。
【0021】
前記軸部23は、上記したように回動することで、釣竿保持部10を、選択的に縦フレーム2Aの表面、及び横フレーム2Bの表面のいずれかに取り付ける機能を有する。この場合、軸部23には、雄ネジ部23bが形成されており、その部分にナット部材24が螺合されている。このナット部材24は、一端に摘み24aを具備した軸方向に延出する袋ナットとして構成されており、軸部23に螺合されるナット部材24は、前記釣竿保持部10の台座17に形成された挿通孔17aに挿通され、摘み24aを台座17の表面から露出させている。
【0022】
この結果、摘み24aを締め付け操作することで、図1及び図2に示すように、台座17(釣竿保持部10)は、横フレーム2Bの表面に押圧され、移動が規制されて取り付けされる。
【0023】
また、ナット部材24を緩めると、台座17(釣竿保持部10)は、軸部23(ナット部材24を構成する袋ナット)に沿って上方に移動することが可能となる。すなわち、緩めたナット部材24が軸部に螺合したままで釣竿保持部10を軸部に沿って上方に移動させ、横フレーム2Bから離して軸部23を溝21に沿って縦フレーム2A側に回動し(図3参照)、同時に釣竿保持部10を縦フレーム2A側に移動させることで、釣竿保持部10を基体2から取り外すことなく、縦フレーム2Aの表面に取り付け可能に移動させることができる。この場合、図6に示すように、軸部23の先端部には、例えば、周方向溝が形成されており、この部分にC型のリング状部材で構成された抜け止め23dが装着されている。このような抜け止め23dを装着しておくことで、ナット部材24を緩めていっても、最終的に、その雌ネジ部が抜け止め部23dに引っ掛かってナット部材24が軸部23から抜けて脱落することを防止している。
【0024】
そして、釣竿保持部10を、縦フレーム2A側に回動して移動させた後は、再び摘み24aを締め付け操作することで、図4に示すように、台座17(釣竿保持部10)を、縦フレーム2Aの表面に押圧して、移動を規制して取り付けすることができ、これにより、図5に示すように、クランプ機構3を水平方向に締め付けて釣竿保持装置1を装着することが可能となる。
【0025】
すなわち、ナット部材24を螺合操作するだけで、釣竿保持部10は、基体2から外れることなく、所望のフレーム(縦フレーム2A又は横フレーム2B)に対して、押圧、取り付けすることができる。
【0026】
なお、釣竿保持部10を縦フレーム2A側に回動して移動する際には、釣竿保持部10を、軸部23を中心にして周方向に略180°回転することで、以下の規制手段30を互いに係合させ、縦フレーム2A側においても、横フレーム2B側と同様、釣竿保持部10の左右の回動を規制するようにしている。
【0027】
前記基体2と釣竿保持部10には、釣竿保持部10が、縦フレーム2A及び横フレーム2Bのいずれに対して押圧、取り付けされた際にも、互いに係合して釣竿保持部10の左右方向(釣人が実釣時において、船縁に装着された釣竿保持装置を視認した際の方向で定義する)の回動を規制する規制手段30が設けられている。
【0028】
前記基体2と釣竿保持部10は、図7及び図8に示すように、左右方向で同一幅に形成されており、両者が面接した際に、左右方向に膨出部が生じないように構成されている(もちろん、両者は全く同一幅ではなく、一方が他方に対して多少膨出した状態であっても良い)。
【0029】
前記規制手段30は、互いに面接する基体2と釣竿保持部10(台座17)の夫々の対向位置に設けられており、互いに係合するストッパ部として構成されている。ストッパ部は、図8に示すように、基体2及び釣竿保持部(台座17)の夫々左右両側に設けられており、互いが係合するよう構成されている。
【0030】
この場合、基体2に形成されるストッパ部は、凹部(左側凹部28a,右側凹部28b)として構成され、台座17に形成されるストッパ部は、基体の凹部28a,28bと係合可能な凸部(左側凸部18a,右側凸部18b)として構成されており、両者の係合を確実にして、釣竿保持部10の左右方向の回動が確実に規制され方向が決められるようになっている。
【0031】
上記したストッパ部は、通常の状態、すなわち、左側凹部28aと右側凸部18aが係合し、かつ右側凹部28bと右側凸部18bが係合した状態では、図8及び図9に示すように、釣竿保持部10は正面を向いた状態となり、両者の凹凸の係合関係によって、左右の回動が規制されて位置決めされた状態となる。このため、釣人は、釣竿を正面に向けて保持させることができる。
【0032】
そして、図9及び図10に示すように、釣竿保持部10を左に回動したとき、左側凹部28aと右側凸部18bが係合可能であり、釣竿保持部10を右に回動したとき、右側凹部28bと左側凸部18aが係合可能となっている。
【0033】
上記したように、基体2に形成されるストッパ部(左側凹部28a,右側凹部28b)と、台座17に形成されるストッパ部(左側凸部18a,右側凸部18b)は、それぞれ左右の両端部に設けているため、釣竿保持部を左右に回動した際、それぞれの端部のストッパ部が係合することで、釣竿保持部10の左右の回動を、装置本体を大型化することなく、可能な限り大きくすることが可能となる。
【0034】
なお、上記したストッパ部の左右の端面からの形成位置は、端部から近ければ近いほど好ましいが、あまり近すぎると、釣竿保持部を左右に回動させた際、支持状態が安定しない可能性があるため、図8に示すように、上記した基体2の幅をW、基体2の端面からストッパ部の中心までの長さをLとした場合、L/Wは、5〜20%の範囲に設定しておくことが好ましい。すなわち、このような範囲に設定しておくことで、左右の回動範囲を可能な限り大きくした状態で、安定して釣竿保持部10を位置決めすることが可能となる。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上記した実施形態に限定されることはなく、種々変形することが可能である。例えば、上記の規制手段であるストッパ部については、釣竿保持部10側を凹部、基体2側を凸部にする等、釣竿保持部10の回動を規制できるように構成されたものであれば良い。また、本実施形態では、釣竿保持部10は、基体2から取り外すことなく、その取り付け位置を変更できるように構成されていたが、釣竿保持部10を基体2から取り外して取り付け位置を変更できる構成であっても良く、更には、取り付け位置を変更できない釣竿保持装置においても適用することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】船縁に取り付けた釣竿保持装置の全体構成を示す図。
【図2】釣竿保持装置の詳細な構造を示す部分断面図。
【図3】釣竿保持部が回動する状態を示す部分断面図。
【図4】図2に示す状態から釣竿保持部を付け替えた状態を示す部分断面図。
【図5】図4に示す状態で船縁に取り付けた状態を示す部分断面図。
【図6】図2乃至図5に示す主要部の拡大図。
【図7】釣竿保持装置の平面図。
【図8】図7のA−A線に沿った要部断面図。
【図9】図7において、釣竿保持部を左右に回動させた状態を示す図。
【図10】図8において、釣竿保持部を左右に回動させた状態を示す図。
【符号の説明】
【0037】
1 釣竿保持装置
2 基体
2A 縦フレーム
2B 横フレーム
3 クランプ機構
10 釣竿保持部
17 台座
18a,18b ストッパ部(凸部)
20 位置変更機構
23 軸部
24 ナット部材
28a,28b ストッパ部(凹部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、該基体に水平方向に回動可能に支持された釣竿保持部と、前記基体と前記釣竿保持部のそれぞれの対向位置に設けられ、互いに係合して釣竿保持部の回動を規制する規制手段とを有する釣竿保持装置において、
前記基体と釣竿保持部は、略同じ幅で形成されており、
前記規制手段は、前記基体及び釣竿保持部の夫々左右両側に設けられて互いに係合するストッパ部を備えており、
釣竿保持部を左に回動したときに前記基体の左側ストッパ部と釣竿保持部の右側ストッパ部が係合可能であり、釣竿保持部を右に回動したときに前記基体の右側ストッパ部と釣竿保持部の左側ストッパ部が係合可能であることを特徴とする釣竿保持装置。
【請求項2】
前記基体のストッパ部は凹部で形成され、前記釣竿保持部のストッパ部は前記基体の凹部と係合可能な凸部で形成されていることを特徴とする請求項1に記載の釣竿保持装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−50239(P2009−50239A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−222524(P2007−222524)
【出願日】平成19年8月29日(2007.8.29)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】