釣竿部品の装着固定構造
【課題】シンプルであって、竿管強度への影響を小さくした釣竿部品の装着固定構造を提供する。
【解決手段】竿管10表面に釣竿部品を装着固定する構造であって、雄ねじ部品22と螺合する雌ねじを設けたナット部品20を有し、ナット部品は一端部に、隣接した首部よりも外径の大きな頭部20Tを有し、少なくとも該頭部に隣接した首部は断面非円形形状であり、装着釣竿部品16,18に対応する竿管の位置に前記ナット部品の頭部の挿通可能な大きさの孔12を設け、該孔の前又は後ろに連続し、前記頭部が挿通できない大きさであり、前記首部は所定の向きで前記孔から前後方向に移動できるが、移動後にはナット部品の軸線回りに回動できない大きさの連続孔14を設け、頭部を竿管の内側に位置させつつナット部品を連続孔に位置させ、ナット部品の他端部側に装着すべき釣竿部品16,18に設けた部品孔16H,18Hを位置させ、ナット部品の雌ねじに雄ねじ部品を螺合させて固定するよう構成する。
【解決手段】竿管10表面に釣竿部品を装着固定する構造であって、雄ねじ部品22と螺合する雌ねじを設けたナット部品20を有し、ナット部品は一端部に、隣接した首部よりも外径の大きな頭部20Tを有し、少なくとも該頭部に隣接した首部は断面非円形形状であり、装着釣竿部品16,18に対応する竿管の位置に前記ナット部品の頭部の挿通可能な大きさの孔12を設け、該孔の前又は後ろに連続し、前記頭部が挿通できない大きさであり、前記首部は所定の向きで前記孔から前後方向に移動できるが、移動後にはナット部品の軸線回りに回動できない大きさの連続孔14を設け、頭部を竿管の内側に位置させつつナット部品を連続孔に位置させ、ナット部品の他端部側に装着すべき釣竿部品16,18に設けた部品孔16H,18Hを位置させ、ナット部品の雌ねじに雄ねじ部品を螺合させて固定するよう構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿表面への部品装着構造に関し、中通し釣竿や外通し釣竿に適用できる。
【背景技術】
【0002】
釣竿部品を装着固定させる構造の例が、本出願人による下記特許文献1に開示されている。竿管に係止孔を設け、該係止孔に挿入する拡径可能な突出係合部を部品に設けておき、挿入後拡径させて係止孔に圧接係合させる構造である。また、本出願人による特許文献2には、巻回紐によって台座前後を竿管に固定し、該台座に対して釣糸導入孔位置のガイド部材を着脱可能にさせるべくねじ部材を使用した装着固定構造が開示されている。
【特許文献1】特開平7−313022号公報
【特許文献2】特開平11−46632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
然しながら、前者の装着構造では、竿管に設けた係止孔縁に部品の突出係合部を圧接させるため、係止孔が拡径する力を受ける。従って、竿管強度に悪影響を及ぼす虞がある。また、圧接構造のためガタが生じる可能性があり、装着固定構造としての信頼性に問題がある。更には、突出係合部が竿管内部に突出するため、振出式釣竿の場合は、前節の収納の際に、前節が当該突出係合部に当たる等の不具合が生じ得る。
後者の構造では、台座を竿管に固定するのに巻回紐を使用しており、更に、部品を装着固定するのにねじ部材を使用するという2重の装着構造となっており、一種の無駄ともいえる構造となっている。
従って解決しようとする課題は、シンプルであって、竿管強度への影響を小さくした釣竿部品の装着固定構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に係る発明では、竿管表面に釣竿部品を装着固定する構造であって、雄ねじ部品と螺合する雌ねじを設けたナット部品を有し、ナット部品は一端部に、隣接した首部よりも外径の大きな頭部を有し、少なくとも該頭部に隣接した首部は断面非円形形状であり、装着釣竿部品に対応する竿管の位置に前記ナット部品の頭部の挿通可能な大きさの孔を設け、該孔の前又は後ろに連続し、前記頭部が挿通できない大きさであり、前記首部は所定の向きで前記孔から前後方向に移動できるが、移動後にはナット部品の軸線回りに回動できない大きさの連続孔を設け、頭部を竿管の内側に位置させつつナット部品を連続孔に位置させ、ナット部品の他端部側に装着すべき釣竿部品に設けた部品孔を位置させ、ナット部品の雌ねじに雄ねじ部品を螺合させて固定することを特徴とする釣竿部品の装着固定構造を提供する。
【0005】
請求項2では、前記首部に隣接して肩部があり、連続孔に位置したナット部品の該肩部は前記連続孔の貫通方向に挿通できない幅を有するよう構成する。
請求項3では、前記頭部は板状であり、板厚が0.2〜1.0mmの範囲であるよう構成する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の請求項1では、ナット部材の頭部を竿管に設けた孔を通し、その首部を所定の向きにして連続孔に移動させ、治具等の適宜な手段でナット部材を保持しつつ、他端部(上方部)から部品孔を対面させた釣竿部品を、雄ねじ部品とナット部品の螺合によって竿管表面に装着固定する。この場合、連続孔の大きさとの関連で首部はナット部品の軸線回りに回動できないため、雄ねじ部品を締め込む際にナット部品が共回りしないで締め込むことができる。締め込み作業終了後では、ねじの螺合によって竿管は内部からナット部品の頭部裏面によって押圧され、外部からは装着釣竿部品によって押圧される。結局、竿管の孔周辺部は竿管面を押圧する力を受けるだけであり、孔が拡径される力を受けない。従って、竿管強度に及ぼす影響を小さくでき、また、このねじ螺合のみで部品を装着固定することができ、無駄の無いシンプルな構造にすることができる。
【0007】
請求項2では、ナット部品を連続孔に移動させた後手を離しても、肩部の存在によってナット部品は竿管内部に落ち込むことが無い。即ち、保持のための特別な治具が必要無く、非常に簡便に装着固定作業が可能となる。
請求項3では、ナット部品の竿管内部へ突出した頭部は板状であって0.2〜1.0mm故、突出量が小さい。従って振出構造の竿の場合、前節収納の邪魔になり難い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明に係る釣竿部品の装着固定構造の第1の形態例の要部縦断面図、図2は図1の矢視線B−Bによる横断面図、図3は図1の例に使用の竿管、図4は装着釣竿部品の一部品、図5は装着釣竿部品の他の一部品、図6は装着固定に使用のナット部品、図7はナット部品の他の形態例の図である。この第1形態例は中通し釣竿の釣糸導入部における釣糸導入部品の装着固定構造であり、竿管10には前後方向に長い長孔12が形成され、その前側位置にこの長孔と連通する連続孔14が形成されている。後述の理由によって、連続孔の幅W2は長孔の幅W1よりも狭い。
【0009】
この例の装着釣竿部品は、図4に示す金属材からなるブリッジ状導入部品16と、この導入部品16に装着する合成樹脂材からなり、内側に空洞部を有するノーズ部品18である。導入部品16の開口部16GHにはセラミックス等の硬質のガイドリング(図示せず)を装着させる。ノーズ部品は、釣竿先端から糸通しする際に、糸通し具の先部が該ノーズ内面によって案内され、前記ガイドリングから外部に確実に導出されるための物である。ノーズ部品18の稜線部近くは、導入部品16の板厚を幾分上回る深さの凹所18Aに形成しており、ここに導入部品の開口部16GHの前側の延伸脚部を嵌め込み、夫々に設けた部品孔16H,18Hを介して後述の雄ねじ部品22を挿通させ、竿管に対して固定する。組み込みの際の部品精度誤差を吸収するため、ノーズ部品の部品孔18Hは前後方向に長い長孔に形成している。また、連続孔14も同様の理由で前後方向に長く形成している。
【0010】
図6を参照してナット部品20を説明する。ステンレス等の金属製厚肉円筒状のナット部品の一端に板状フランジ頭部20Tを設けている。この頭部に隣接した首部には、180度径方向に対向するよう2箇所の平面部20Kがフライス作業により研削形成されている。この対向幅W2’は上記の連続孔の幅W2に近い(W2’が僅かに小さい)寸法に形成するが、その他の円筒部外側直径W3は連続孔の幅W2よりも大きい。また、首部よりも大きく、ナット部品の最大外径でもある頭部直径W4は前記長孔の幅W1より小さい。軸長方向において、頭部を反対側端部は肩部20Sとなっている。肩部の最大外径はW3である。なお、平面部20Kの図6(a)における左右方向の平面長さは、竿管10の肉厚よりも長く形成している。また、ナット部品20の全長(図6(a)における左右方向長さ)は、図2の装着固定状態においてその上端位置が部品16の下面位置、即ち、部品18の孔18Hの上端位置よりも低い位置になる長さに設定している。
【0011】
従って、ナット部品の頭部を前記長孔12に挿通でき、更には、1対の平面部20Kの面方向を竿管の長手方向にした(首部を所定方向にした)状態で該長孔から連続孔14に移動できる。こうして連続孔に位置したナット部品から手を離しても、肩部20Sの存在によって該ナット部品は落下せず、連続孔14の縁部に引っ掛り、保持される。
【0012】
この状態のナット部品20の他端部(頭部とは反対側の端部)に、既述部品18の長孔18Hと部品16の孔16Hを位置させて挿通させる。そして、部品16の外側(上方)からステンレス等の金属製雄ねじ部品22をナット部品の雌ねじ部に螺合させる。この際、ナット部品20は円筒部外径W3が連続孔14の幅W2よりも大きいため、平面部が連続孔の孔縁壁に係合して共回りせずに締結可能となる。即ち、雄ねじ部品の頭部が部品16を竿管表面の方向に押圧し、また、既述のように、ナット部品の全長は所定長さであるため、部品16下面が部品18の表面を押圧できて該部品18を竿管表面に押圧する。しかも、ナットの頭部20Tを竿管10の内面に押し当てて密着させるように引き上げる。なお、竿管10の連続孔14の付近の管壁は、竿管内側からはナット部品の頭部20Tによって外方向に押圧されている。即ち、竿管は管壁面が挟まれて圧縮されるように力を受けており、締結された後では、連結孔を拡径させる力は作用しない。
【0013】
このため、孔縁から竿管を裂くような力は存在せず、本発明の装着固定構造では竿管強度への影響が小さい。
なお、この例では、部品16は金属製であるが、繊維強化樹脂製の竿管10に対して直接接触している部品18が合成樹脂製故、締結装着固定時の竿管10に対する応力集中は小さい。即ち、図1の部位P1における応力集中は小さい。また、金属製部品16の端部が合成樹脂製部品18に及ぼす応力、即ち、図1の部位P2に作用する応力は、部品18自体が合成樹脂という柔軟性のある部材故、分散して応力集中が緩和される。
【0014】
装着後の部品安定性のために、部品18の長孔18Hの左右方向幅は、図2に示すように、ナット部品20の円筒部外径W3と概ね一致させている。更には、板状フランジ頭部20Tは約0.4mm程の厚さであり、竿管内面からの最大突出量が0.5mm程であり、振出構造の場合、前側節(前側竿管)を収納させる場合にも殆ど引っ掛りは生じない。また、釣竿先端からの糸通し(トップイン方式)の場合でも、糸通し具の先端部がこの頭部20Tに引っ掛る虞は非常に小さい。
【0015】
図1の参照記号Gは、セラミックスガイド部品であり、長孔12の先端部に位置している。また、ブリッジ状導入部品16とノーズ部品18との前部を本発明に係る装着固定構造で固定しているが、後部も同様に固定できる。しかし、本発明構造を前後の一方のみに適用し、他方を巻回糸で固定してもよい。
【0016】
図7はナット部品の他の形態例を示しており、第1例の場合と異なるのは、頭部以外は正八角形の首部に形成されており、対向する2箇所の平面部20Kが4対存在する。長孔12から連続孔14への移動時には、対向する所定の2平面部20Kを結ぶ線に対して直交する方向、例えば図7(C)の矢印線方向に移動させることができ、この移動後の雄ねじ部品との螺合では、平面部が連続孔14の孔縁壁に干渉して共回りしない。しかし、この例では頭部以外は首部であり、肩部が存在しない故、連続孔へ移動した後のナット部品を適宜な治具によって保持する必要がある。
【0017】
図8はリールを装着固定する板状リールシート部品26の前後位置に適用した例を示す。この例では合成樹脂製の台座28を介して固定している。この部品26,28を貫通した部品孔と、図9に示す連続孔34を介して、ナット部品20と雄ねじ部品22とによって装着固定している。ナット部品の板状フランジ頭部を竿管内に挿通させる孔32は、ここでは単純な丸孔形状である(第1例のように長孔である必要は無い)が、装着部品26の長さが長いため、組み込みの際の部品精度誤差を吸収すべく連続孔34は長孔としており、その幅寸法は孔32よりも小さい。後部位置の場合も同様である。
【0018】
図10は外通し釣竿のガイド部品36の足部の前後に適用した例を示す。この例では合成樹脂製の台座38を介して固定している。この部品36,38を貫通した部品孔と、図11に示す連続孔44を介して、ナット部品20と雄ねじ部品22とによって装着固定している。ナット部品の板状フランジ頭部を竿管内に挿通させる孔42は、ここでも単純な丸孔形状である(第1例のように長孔である必要は無い)が、装着部品36の足部の長さが比較的短いため、部品精度誤差が小さく、連続孔44は長孔としていない。その幅寸法は孔42よりも小さい。後部も同様である。
【0019】
第1例では部品18の存在により、また、図8や図10の例では、台座の存在により、雄ねじ部品の長さをその分長くできる。JIS規格の製品では、ねじ部品の長さが長いということはねじ径が大きいことに対応する。従って、その分、強度が強い。各装着部品毎に必要とされる固定力は異なるが、台座を設けるか否か、また、台座の厚さにより、そのねじ部品の強度(サイズ)を選択できる。以上の例のように、ナット部品20と雄ねじ部品22とを金属製とすれば、ねじ山の耐久性が向上し、ねじがバカになり難い。また、ナット部品の頭部は必ずしも板状である必要は無い。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、中通し釣竿や外通し釣竿への部品装着固定に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は本発明に係る釣竿部品の装着固定構造の第1の形態例の要部縦断面図である。
【図2】図2は図1の矢視線B−Bによる横断面図である。
【図3】図3は図1の例に使用の竿管の図である。
【図4】図4は装着釣竿部品の一部品の図である。
【図5】図5は装着釣竿部品の他の一部品の図である。
【図6】図6は装着固定に使用のナット部品の図である。
【図7】図7はナット部品の他の形態例の図である。
【図8】図8は他の部品に適用した例の部分側面図である。
【図9】図9は図8に使用している竿管の要部平面図である。
【図10】図10は更に他の部品に適用した例の部分側面図である。
【図11】図11は図10に使用している竿管の要部平面図である。
【符号の説明】
【0022】
10 竿管
14,34,44 連続孔
16,18 装着部品
16H,18H 部品孔
20 ナット部品
20N 平面部
20T 頭部
20S 肩部
22 雄ねじ部品
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿表面への部品装着構造に関し、中通し釣竿や外通し釣竿に適用できる。
【背景技術】
【0002】
釣竿部品を装着固定させる構造の例が、本出願人による下記特許文献1に開示されている。竿管に係止孔を設け、該係止孔に挿入する拡径可能な突出係合部を部品に設けておき、挿入後拡径させて係止孔に圧接係合させる構造である。また、本出願人による特許文献2には、巻回紐によって台座前後を竿管に固定し、該台座に対して釣糸導入孔位置のガイド部材を着脱可能にさせるべくねじ部材を使用した装着固定構造が開示されている。
【特許文献1】特開平7−313022号公報
【特許文献2】特開平11−46632号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
然しながら、前者の装着構造では、竿管に設けた係止孔縁に部品の突出係合部を圧接させるため、係止孔が拡径する力を受ける。従って、竿管強度に悪影響を及ぼす虞がある。また、圧接構造のためガタが生じる可能性があり、装着固定構造としての信頼性に問題がある。更には、突出係合部が竿管内部に突出するため、振出式釣竿の場合は、前節の収納の際に、前節が当該突出係合部に当たる等の不具合が生じ得る。
後者の構造では、台座を竿管に固定するのに巻回紐を使用しており、更に、部品を装着固定するのにねじ部材を使用するという2重の装着構造となっており、一種の無駄ともいえる構造となっている。
従って解決しようとする課題は、シンプルであって、竿管強度への影響を小さくした釣竿部品の装着固定構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
請求項1に係る発明では、竿管表面に釣竿部品を装着固定する構造であって、雄ねじ部品と螺合する雌ねじを設けたナット部品を有し、ナット部品は一端部に、隣接した首部よりも外径の大きな頭部を有し、少なくとも該頭部に隣接した首部は断面非円形形状であり、装着釣竿部品に対応する竿管の位置に前記ナット部品の頭部の挿通可能な大きさの孔を設け、該孔の前又は後ろに連続し、前記頭部が挿通できない大きさであり、前記首部は所定の向きで前記孔から前後方向に移動できるが、移動後にはナット部品の軸線回りに回動できない大きさの連続孔を設け、頭部を竿管の内側に位置させつつナット部品を連続孔に位置させ、ナット部品の他端部側に装着すべき釣竿部品に設けた部品孔を位置させ、ナット部品の雌ねじに雄ねじ部品を螺合させて固定することを特徴とする釣竿部品の装着固定構造を提供する。
【0005】
請求項2では、前記首部に隣接して肩部があり、連続孔に位置したナット部品の該肩部は前記連続孔の貫通方向に挿通できない幅を有するよう構成する。
請求項3では、前記頭部は板状であり、板厚が0.2〜1.0mmの範囲であるよう構成する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の請求項1では、ナット部材の頭部を竿管に設けた孔を通し、その首部を所定の向きにして連続孔に移動させ、治具等の適宜な手段でナット部材を保持しつつ、他端部(上方部)から部品孔を対面させた釣竿部品を、雄ねじ部品とナット部品の螺合によって竿管表面に装着固定する。この場合、連続孔の大きさとの関連で首部はナット部品の軸線回りに回動できないため、雄ねじ部品を締め込む際にナット部品が共回りしないで締め込むことができる。締め込み作業終了後では、ねじの螺合によって竿管は内部からナット部品の頭部裏面によって押圧され、外部からは装着釣竿部品によって押圧される。結局、竿管の孔周辺部は竿管面を押圧する力を受けるだけであり、孔が拡径される力を受けない。従って、竿管強度に及ぼす影響を小さくでき、また、このねじ螺合のみで部品を装着固定することができ、無駄の無いシンプルな構造にすることができる。
【0007】
請求項2では、ナット部品を連続孔に移動させた後手を離しても、肩部の存在によってナット部品は竿管内部に落ち込むことが無い。即ち、保持のための特別な治具が必要無く、非常に簡便に装着固定作業が可能となる。
請求項3では、ナット部品の竿管内部へ突出した頭部は板状であって0.2〜1.0mm故、突出量が小さい。従って振出構造の竿の場合、前節収納の邪魔になり難い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明を図面を用いて詳細に説明する。図1は、本発明に係る釣竿部品の装着固定構造の第1の形態例の要部縦断面図、図2は図1の矢視線B−Bによる横断面図、図3は図1の例に使用の竿管、図4は装着釣竿部品の一部品、図5は装着釣竿部品の他の一部品、図6は装着固定に使用のナット部品、図7はナット部品の他の形態例の図である。この第1形態例は中通し釣竿の釣糸導入部における釣糸導入部品の装着固定構造であり、竿管10には前後方向に長い長孔12が形成され、その前側位置にこの長孔と連通する連続孔14が形成されている。後述の理由によって、連続孔の幅W2は長孔の幅W1よりも狭い。
【0009】
この例の装着釣竿部品は、図4に示す金属材からなるブリッジ状導入部品16と、この導入部品16に装着する合成樹脂材からなり、内側に空洞部を有するノーズ部品18である。導入部品16の開口部16GHにはセラミックス等の硬質のガイドリング(図示せず)を装着させる。ノーズ部品は、釣竿先端から糸通しする際に、糸通し具の先部が該ノーズ内面によって案内され、前記ガイドリングから外部に確実に導出されるための物である。ノーズ部品18の稜線部近くは、導入部品16の板厚を幾分上回る深さの凹所18Aに形成しており、ここに導入部品の開口部16GHの前側の延伸脚部を嵌め込み、夫々に設けた部品孔16H,18Hを介して後述の雄ねじ部品22を挿通させ、竿管に対して固定する。組み込みの際の部品精度誤差を吸収するため、ノーズ部品の部品孔18Hは前後方向に長い長孔に形成している。また、連続孔14も同様の理由で前後方向に長く形成している。
【0010】
図6を参照してナット部品20を説明する。ステンレス等の金属製厚肉円筒状のナット部品の一端に板状フランジ頭部20Tを設けている。この頭部に隣接した首部には、180度径方向に対向するよう2箇所の平面部20Kがフライス作業により研削形成されている。この対向幅W2’は上記の連続孔の幅W2に近い(W2’が僅かに小さい)寸法に形成するが、その他の円筒部外側直径W3は連続孔の幅W2よりも大きい。また、首部よりも大きく、ナット部品の最大外径でもある頭部直径W4は前記長孔の幅W1より小さい。軸長方向において、頭部を反対側端部は肩部20Sとなっている。肩部の最大外径はW3である。なお、平面部20Kの図6(a)における左右方向の平面長さは、竿管10の肉厚よりも長く形成している。また、ナット部品20の全長(図6(a)における左右方向長さ)は、図2の装着固定状態においてその上端位置が部品16の下面位置、即ち、部品18の孔18Hの上端位置よりも低い位置になる長さに設定している。
【0011】
従って、ナット部品の頭部を前記長孔12に挿通でき、更には、1対の平面部20Kの面方向を竿管の長手方向にした(首部を所定方向にした)状態で該長孔から連続孔14に移動できる。こうして連続孔に位置したナット部品から手を離しても、肩部20Sの存在によって該ナット部品は落下せず、連続孔14の縁部に引っ掛り、保持される。
【0012】
この状態のナット部品20の他端部(頭部とは反対側の端部)に、既述部品18の長孔18Hと部品16の孔16Hを位置させて挿通させる。そして、部品16の外側(上方)からステンレス等の金属製雄ねじ部品22をナット部品の雌ねじ部に螺合させる。この際、ナット部品20は円筒部外径W3が連続孔14の幅W2よりも大きいため、平面部が連続孔の孔縁壁に係合して共回りせずに締結可能となる。即ち、雄ねじ部品の頭部が部品16を竿管表面の方向に押圧し、また、既述のように、ナット部品の全長は所定長さであるため、部品16下面が部品18の表面を押圧できて該部品18を竿管表面に押圧する。しかも、ナットの頭部20Tを竿管10の内面に押し当てて密着させるように引き上げる。なお、竿管10の連続孔14の付近の管壁は、竿管内側からはナット部品の頭部20Tによって外方向に押圧されている。即ち、竿管は管壁面が挟まれて圧縮されるように力を受けており、締結された後では、連結孔を拡径させる力は作用しない。
【0013】
このため、孔縁から竿管を裂くような力は存在せず、本発明の装着固定構造では竿管強度への影響が小さい。
なお、この例では、部品16は金属製であるが、繊維強化樹脂製の竿管10に対して直接接触している部品18が合成樹脂製故、締結装着固定時の竿管10に対する応力集中は小さい。即ち、図1の部位P1における応力集中は小さい。また、金属製部品16の端部が合成樹脂製部品18に及ぼす応力、即ち、図1の部位P2に作用する応力は、部品18自体が合成樹脂という柔軟性のある部材故、分散して応力集中が緩和される。
【0014】
装着後の部品安定性のために、部品18の長孔18Hの左右方向幅は、図2に示すように、ナット部品20の円筒部外径W3と概ね一致させている。更には、板状フランジ頭部20Tは約0.4mm程の厚さであり、竿管内面からの最大突出量が0.5mm程であり、振出構造の場合、前側節(前側竿管)を収納させる場合にも殆ど引っ掛りは生じない。また、釣竿先端からの糸通し(トップイン方式)の場合でも、糸通し具の先端部がこの頭部20Tに引っ掛る虞は非常に小さい。
【0015】
図1の参照記号Gは、セラミックスガイド部品であり、長孔12の先端部に位置している。また、ブリッジ状導入部品16とノーズ部品18との前部を本発明に係る装着固定構造で固定しているが、後部も同様に固定できる。しかし、本発明構造を前後の一方のみに適用し、他方を巻回糸で固定してもよい。
【0016】
図7はナット部品の他の形態例を示しており、第1例の場合と異なるのは、頭部以外は正八角形の首部に形成されており、対向する2箇所の平面部20Kが4対存在する。長孔12から連続孔14への移動時には、対向する所定の2平面部20Kを結ぶ線に対して直交する方向、例えば図7(C)の矢印線方向に移動させることができ、この移動後の雄ねじ部品との螺合では、平面部が連続孔14の孔縁壁に干渉して共回りしない。しかし、この例では頭部以外は首部であり、肩部が存在しない故、連続孔へ移動した後のナット部品を適宜な治具によって保持する必要がある。
【0017】
図8はリールを装着固定する板状リールシート部品26の前後位置に適用した例を示す。この例では合成樹脂製の台座28を介して固定している。この部品26,28を貫通した部品孔と、図9に示す連続孔34を介して、ナット部品20と雄ねじ部品22とによって装着固定している。ナット部品の板状フランジ頭部を竿管内に挿通させる孔32は、ここでは単純な丸孔形状である(第1例のように長孔である必要は無い)が、装着部品26の長さが長いため、組み込みの際の部品精度誤差を吸収すべく連続孔34は長孔としており、その幅寸法は孔32よりも小さい。後部位置の場合も同様である。
【0018】
図10は外通し釣竿のガイド部品36の足部の前後に適用した例を示す。この例では合成樹脂製の台座38を介して固定している。この部品36,38を貫通した部品孔と、図11に示す連続孔44を介して、ナット部品20と雄ねじ部品22とによって装着固定している。ナット部品の板状フランジ頭部を竿管内に挿通させる孔42は、ここでも単純な丸孔形状である(第1例のように長孔である必要は無い)が、装着部品36の足部の長さが比較的短いため、部品精度誤差が小さく、連続孔44は長孔としていない。その幅寸法は孔42よりも小さい。後部も同様である。
【0019】
第1例では部品18の存在により、また、図8や図10の例では、台座の存在により、雄ねじ部品の長さをその分長くできる。JIS規格の製品では、ねじ部品の長さが長いということはねじ径が大きいことに対応する。従って、その分、強度が強い。各装着部品毎に必要とされる固定力は異なるが、台座を設けるか否か、また、台座の厚さにより、そのねじ部品の強度(サイズ)を選択できる。以上の例のように、ナット部品20と雄ねじ部品22とを金属製とすれば、ねじ山の耐久性が向上し、ねじがバカになり難い。また、ナット部品の頭部は必ずしも板状である必要は無い。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明は、中通し釣竿や外通し釣竿への部品装着固定に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】図1は本発明に係る釣竿部品の装着固定構造の第1の形態例の要部縦断面図である。
【図2】図2は図1の矢視線B−Bによる横断面図である。
【図3】図3は図1の例に使用の竿管の図である。
【図4】図4は装着釣竿部品の一部品の図である。
【図5】図5は装着釣竿部品の他の一部品の図である。
【図6】図6は装着固定に使用のナット部品の図である。
【図7】図7はナット部品の他の形態例の図である。
【図8】図8は他の部品に適用した例の部分側面図である。
【図9】図9は図8に使用している竿管の要部平面図である。
【図10】図10は更に他の部品に適用した例の部分側面図である。
【図11】図11は図10に使用している竿管の要部平面図である。
【符号の説明】
【0022】
10 竿管
14,34,44 連続孔
16,18 装着部品
16H,18H 部品孔
20 ナット部品
20N 平面部
20T 頭部
20S 肩部
22 雄ねじ部品
【特許請求の範囲】
【請求項1】
竿管表面に釣竿部品を装着固定する構造であって、雄ねじ部品と螺合する雌ねじを設けたナット部品を有し、
ナット部品は一端部に、隣接した首部よりも外径の大きな頭部を有し、少なくとも該頭部に隣接した首部は断面非円形形状であり、
装着釣竿部品に対応する竿管の位置に前記ナット部品の頭部の挿通可能な大きさの孔を設け、該孔の前又は後ろに連続し、前記頭部が挿通できない大きさであり、前記首部は所定の向きで前記孔から前後方向に移動できるが、移動後にはナット部品の軸線回りに回動できない大きさの連続孔を設け、
頭部を竿管の内側に位置させつつナット部品を連続孔に位置させ、ナット部品の他端部側に装着すべき釣竿部品に設けた部品孔を位置させ、ナット部品の雌ねじに雄ねじ部品を螺合させて固定することを特徴とする釣竿部品の装着固定構造。
【請求項2】
前記首部に隣接して肩部があり、連続孔に位置したナット部品の該肩部は前記連続孔の貫通方向に挿通できない幅を有する請求項1記載の釣竿部品の装着固定構造。
【請求項3】
前記頭部は板状であり、板厚が0.2〜1.0mmの範囲である請求項1又は2記載の釣竿部品の装着固定構造。
【請求項1】
竿管表面に釣竿部品を装着固定する構造であって、雄ねじ部品と螺合する雌ねじを設けたナット部品を有し、
ナット部品は一端部に、隣接した首部よりも外径の大きな頭部を有し、少なくとも該頭部に隣接した首部は断面非円形形状であり、
装着釣竿部品に対応する竿管の位置に前記ナット部品の頭部の挿通可能な大きさの孔を設け、該孔の前又は後ろに連続し、前記頭部が挿通できない大きさであり、前記首部は所定の向きで前記孔から前後方向に移動できるが、移動後にはナット部品の軸線回りに回動できない大きさの連続孔を設け、
頭部を竿管の内側に位置させつつナット部品を連続孔に位置させ、ナット部品の他端部側に装着すべき釣竿部品に設けた部品孔を位置させ、ナット部品の雌ねじに雄ねじ部品を螺合させて固定することを特徴とする釣竿部品の装着固定構造。
【請求項2】
前記首部に隣接して肩部があり、連続孔に位置したナット部品の該肩部は前記連続孔の貫通方向に挿通できない幅を有する請求項1記載の釣竿部品の装着固定構造。
【請求項3】
前記頭部は板状であり、板厚が0.2〜1.0mmの範囲である請求項1又は2記載の釣竿部品の装着固定構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2006−87397(P2006−87397A)
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−280096(P2004−280096)
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年4月6日(2006.4.6)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年9月27日(2004.9.27)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】
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