説明

釣竿

【課題】竿管の外周面を損傷することなく、極めて簡単かつ確実に竿管をハンドル部材に固定することができる釣竿を提供すること。
【解決手段】魚釣用リール8を取付けるリール載置部22を形成したリールシート本体16とこのリール載置部22の後方に配置した握り部18とを有するハンドル部材12を備え、このハンドル部材12の先側に、竿管14の竿尻部14aを固定する釣竿であって、前記リールシート本体16は、前方に開口する竿管装着孔34と、リール載置部22側に開口する操作用開口部40とを有し、この操作用開口部40を介してリールシート本体16内に挿通される連結部材38により、前記竿管装着孔内に挿入された竿管14の竿尻部14aをこの竿管装着孔内の所要位置に固定する釣竿。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、釣竿に関し、特に、握り部を有するハンドル部材の先側に、竿管の竿尻部を固定する釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、釣竿には、対象とする魚種や大きさ等の用途に合せて種々のタイプのものがあり、例えばキャスティング用の釣竿には、魚釣用リールを固定するフレームの先側に竿管を着脱可能としたものがある(例えば特許文献1参照)。
【0003】
このような竿管の着脱は、竿管の竿尻部を受け入れるハウジングの先側の薄肉の円筒状部を、周方向に間隔をおいてスリットを形成したチャックあるいはコレットとして形成し、この上からコレットナットを締め込むことにより、内部に収容した竿管の竿尻部を締付け、保持することが一般的に行われている。このコレット内に挿入される竿管の竿尻部の長さは、竿管の撓み性を損なわない範囲に設定される。
【特許文献1】特開昭50−148193
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、このように、竿管の竿尻部を周部から締付けて保持する釣竿は、ナットを過度に強く締付けて保持しようとすると、局部的な応力の増大により、竿管の外周部が損傷する虞がある。逆に、ナットの締め付けが不足する場合には、特にキャスティングの際に竿管がフレームに対して長手方向および周方向に移動して外周面が傷付き、更に、抜け落ちるおそれがある。そのため、竿管を最適の締付け力で保持することが困難である。
【0005】
本発明は、このような事情に基づいてなされたもので、竿管の外周面を損傷することなく、極めて簡単かつ確実に竿管をハンドル部材に固定することができる釣竿を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の釣竿は、魚釣用リールを取付けるリール載置部を形成したリールシート本体とこのリール載置部の後方に配置した握り部とを有するハンドル部材を備え、このハンドル部材の先側に、竿管の竿尻部を固定する釣竿であって、前記リールシート本体は、前方に開口する竿管装着孔と、リール載置部側に開口する操作用開口部とを有し、この操作用開口部を介してリールシート本体内に挿通される連結部材により、前記竿管装着孔内に挿入された竿管の竿尻部をこの竿管装着孔内の所要位置に固定することを特徴とする。
【0007】
前記竿管装着孔の底壁に、前記連結部材を挿通する連絡孔が形成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
本発明の釣竿によると、リールシート本体の竿管装着孔に挿入された竿管の竿尻部が、リール載置部側に開口する操作用開口部を介して挿入された連結部材により、このリールシート本体に固定されるため、竿管の外周面を締付けることなく、竿管がハンドル部材に極めて簡単かつ確実に保持され、実釣中に竿管が抜出るのが防止される。
【0009】
また、竿管装着孔の底壁に、連結部材を挿通する連絡孔が形成される場合には、この底壁を介して竿管を位置決めすることが可能であり、極めて簡単かつ正確に取付けることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
図1に示すように、本発明の好ましい実施形態による釣竿10は、ルアーのキャスティング用として形成してあり、ハンドル部材12の先側に竿管14が着脱自在となっている。釣り糸を巻回する両軸タイプの魚釣用リール8がハンドル部材12に取付けられ、竿管14には、竿管の外面に釣り糸が付着するのを防止する釣糸ガイド6が、魚釣用リール8と同じ側で、釣竿10の穂先に向けて所定間隔をおいて固定され、竿先にはトップガイド6aが取付けられている。このような釣糸ガイド6の個数および配置位置は、図示の例に限らず、任意に設定することが可能である。
【0011】
本実施形態のハンドル部材12は、魚釣用リール8を取付けるためのリールシート本体16と、このリールシート本体16の後方に配置された握り部18とを備える。繊維強化樹脂製であるのが好ましい竿管14の竿尻部が、このリールシート本体16の先側に設けられた取付部20に固定される。このリールシート本体16に取付ける竿管14は、一本竿だけでなく、2本あるいはそれ以上の竿管を継合させたものでもよい。
【0012】
図2から図4に示すように、本実施形態のリールシート本体16は、合成樹脂あるいは軽金属等の適宜の材料で、例えば外径が20mm〜30mm程度の略円筒状部材として形成され、上下方向に比較して幅方向の差渡し寸法が大きい偏平構造に形成された長手方向の中央部に、魚釣用リール8を取付けるリール載置部22が形成されている。このリール載置部22には、把持したときに上側となる一側に、魚釣用リール8のリール本体を載置可能な平坦面状のリール載置面24を形成してあり、例えば締付けボルト等の図示しない適宜の固定具を、リール本体と共にこのリールシート本体16を上下方向あるいは横方向に貫通させて、直接固定することができる。図示の実施形態では、このリール載置面24は、このリール載置部22の中心軸線と同一あるいはこれよりもわずかに上方に配置することができる。
【0013】
このように、リール載置面24を、リールシート本体16の中心軸線に近接する位置に配置し、このリール載置面24上に、リール本体を直接載置して固定する場合には、魚釣用リール8の取付け高さが低くなり、繰出されていく釣り糸や回転しているスプールに親指で触れて、ルアーの飛びあるいはスプールの回転を調節するサミング操作、あるいは、魚釣用リール8の全体を握り込んで操作するパーミング操作等の種々の魚釣り操作を好適に行うことができる。なお、魚釣用リール8は、上述のように、リール載置面24に魚釣用リール8のリール本体を直接載置して取付けることに代え、リール本体に設けた取付脚部(図示しない)を載置して取付けることも可能である。この場合には、通常の場合と同様に、通常のリールシート本体16に設ける一対のフード等で、この魚釣用リール8の取付脚部をリール載置面24に固定してもよい。但し、取付脚部の高さに相当する分だけ、魚釣用リールの高さが増大することになる。
【0014】
本実施形態のハンドル部材12は、握り部18に、例えば木材あるいは硬質の樹脂材製のグリップ部材26を設けてあり、リール載置部22の後方から、リールシート本体16の一体部材として延びる支持部28が、このグリップ部材26を支えている。この支持部28は、リール載置部22の最小径部よりも更に小径に形成し、リール載置部22からグリップ部材26の長手方向に沿う略半分程度の位置まで延設してある。これにより、握り部18を握持した際の操作性を向上するために、グリップ部材26の後方部位を下方に向けることも可能であり、この場合でも、グリップ部材26を強固に支えることができる。なお、グリップ部材26を例えばコルク材や発泡性樹脂材等の比較的柔軟な材料で形成する場合には、グリップ部材26の外形に応じて、長さおよび延出方向を調整することも可能である。
【0015】
このグリップ部材26は、リールシート本体16の下側すなわちリール載置部22の径方向反対側で、このリール載置部22に近接した部位からは、トリガー30が突出する。このトリガー30の先側には、凹部32が形成されており、魚釣用リール8の糸巻き部に親指を置いてスプールの回転を調節するサミング操作等の際に人差指あるいは中指をトリガー30にかけ易く形成してある。
【0016】
更に、リールシート本体16は、リール載置部22の先側から、竿管14を取付ける円筒状の取付部20が一体部材として延びており、この取付部20に、竿管14の竿尻部14aを挿入して取付ける竿管装着孔34を、前方すなわちリール載置部22に対して反対方向に向けて開口させて形成してある。
【0017】
この取付部20は、リール載置部22の幅方向の差渡し寸法よりも小さな径を有する円筒状形状に形成してあり、先端部は、テーパ状に形成され、竿管14の竿尻部14aを挿入する竿管装着孔34が、この取付部20内で前方に開口させて形成してある。この竿管装着孔34の軸方向長さは、竿管14の強度を確保するために、略50〜70mm程度に形成してあり、後側には底壁36が形成されている。竿管14を取付ける際に、この底壁36に竿尻部14aを当接させることで、常に一定の位置に配置することができる。
【0018】
この竿管装着孔34に挿入した竿尻部14aを、リールシート本体16に固定するため、本実施形態では締付けネジ38である連結部材を挿通する操作用開口部40が、リール載置面24に開口する。この操作用開口部40は、底壁36に形成した連絡孔36aを介して竿管装着孔34と同軸状に連通する。この操作用開口部40は、リール載置面24内で、連結部材である締付けネジ38の頭部を自由に挿通できる大きさに開口する。また、連絡孔36aは、ネジ38の軸部を挿通し、一方、頭部を係止する大きさに形成してある。
【0019】
本実施形態の操作用開口部40は、リール載置面24にほぼ一定幅で長手方向に沿って開口する断面半円形状の溝状に形成してある。このような操作用開口部40は、例えばリールシート本体16の軸線に沿って断面円形状の孔を延設し、リール載置面24を平坦状に切削することにより、リール載置面24に開口させることができる。この操作用開口部40は、連結部材である締付けネジ38を挿通できるものであれば、どのように形成してもよい。
【0020】
この連結部材すなわち締付けネジ38で竿管14の竿尻部14aを固定するため、この竿尻部14aの開口端に、閉塞栓42を例えば接着剤で固着してある。この閉塞栓42には、締付けネジ38を螺合する雌ネジを形成した結合孔42aを形成してある。この閉塞栓42は、竿管14内に完全に挿入してもよく、あるいは、わずかに後方に突出させた状態で固着してもよい。閉塞栓42が後方から突出する場合には、尻栓部14aが底壁36に当接した際に、竿管14の端面が底壁36あるいはその近部の内壁に接触して損傷するのを防止することができる。
【0021】
このような閉塞栓42を、竿尻部14aの後部の開口端に固定する方法には、上述のような接着剤を用いる他にも、竿管14の後部の開口端の内面に雌ネジを形成し、外周部に雄ネジを形成した閉塞栓42を、この開口端からねじ込み、固着することもできる。この場合には、接着剤を併用してもよい。
【0022】
この竿管14をハンドル部材12に装着する場合は、魚釣用リール8を取外した状態で、竿管装着孔34の前方から竿管14の竿尻部14aを挿入し、底壁36にその端部を当接させる。この後、操作用開口部40から締付けネジ38を挿入し、連絡孔36aを介して、竿尻部14aの閉塞栓42に形成したネジ孔すなわち結合孔42aに締め込む。これにより、竿尻部14aが底壁36に締付けられ、竿管14の外周面は竿管装着孔34の内周面で支えられる。竿管14の外周面には、大きな力が作用することはない。
【0023】
締付けネジ38を操作用開口40内に配置した状態では、例えばクランク状に軸を屈曲させた工具を用いることにより、簡単かつ確実に締付けることができる。また、締付けネジ38を閉塞栓42の結合孔42a内に締付けた状態では、締付けネジ38の全体が連絡孔42あるいは操作用開口部40内に収容されて保護された状態となるため、握持する手に触れることもなく、緩むこともない。
【0024】
したがって、本実施形態の釣竿10は、リールシート本体16の竿管装着孔34に挿入された竿管14の竿尻部14aが、リール載置面24側に開口する操作用開口部40を介して挿入された連結用の締付けネジ38により、このリールシート本体16に固定されるため、竿管14の外周面を別個の部材で締付けることなく、竿管14がハンドル部材12に極めて簡単かつ確実に保持され、実釣中に竿管14が抜出るのが確実に防止される。
【0025】
竿管14の竿尻部14aが竿管装着孔34の底壁36に当接し、この底壁36に形成した連絡孔36aを介して挿通される締付けネジ38で固定されることにより、この底壁36を介して竿管14を位置決めすることができ、いつでも、極めて簡単かつ正確な位置に取付けることができる。
【0026】
図5および図6は、変形例を示す。なお、以下に説明する変形例は、基本的には上述の実施形態と同様であるため、同様な部位には同様な符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0027】
この変形例では、締付けネジ38に代えて、円筒状の軸部46の一端から突片47を突出させたキー部材48で連結部材を形成してある。また、連絡孔36aには、キー部材48の軸部46が挿通する円筒状部56と突片47が挿通する溝部57とを有する非円形断面を有する。そして、竿尻部14aに取付ける閉塞栓42に形成した結合孔42aは、キー部材48の軸部46が挿通される円筒状部66が貫通し、後方部位すなわち底壁36に近接する側に、キー部材48の突片47が挿通する断面矩形の溝部67が形成され、底壁36から離隔する側に、断面扇形で突片47を周方向に移動可能とする回動部68を形成し、この回動部68と溝部67との間に、キー部材48の突片47を係止可能な係止壁70を形成してある。
【0028】
このようなキー部材48を用いて竿管14をリールシート本体16に固定する場合は、キー部材48を、操作用開口部40から連絡孔36aを介して、竿尻部14aの閉塞栓42に形成した結合孔42aに突片47の位置を合わせ、挿入する。突片47が結合孔42aの溝部67を超えて回動部68に達したときに、軸部46を中心としてこのキー部材48を回動し、突片47を結合孔42aの係止壁70に係合させる。このキー部材48の回動は、操作用開口部40を介して、例えばクランク状に屈曲した工具(図示しない)を用いて行うことができる。
【0029】
この変形例においても、竿管14が閉塞栓42およびキー部材48を介してリールシート本体16に固定され、抜け止めされる。竿尻部14aの外面には締付け力が作用せず、しかも、確実に固定される。
【0030】
なお、底壁36と竿尻部14aとの間に圧縮バネあるいはゴム材等の弾性部材(図示しない)を配置し、キー部材48と閉塞栓42の係止壁70とを常に係合させておくことができる。これにより、キー部材48を係止壁70に押し当て、キー部材48の回り止めを行うことができる。また、係止壁70を傾斜面で形成し、キー部材48を回動することにより、突部47により底壁36側に締付け力が作用するように形成することもできる。
【0031】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明してきたが、本発明の釣竿10は、上述の実施形態あるいは変形例に限定されるものではなく、例えば材料あるいは大きさ等は、対象とする魚種に応じて適宜に変更可能なことは明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の好ましい実施形態による釣竿の全体を示す側面図。
【図2】図1の釣竿のハンドル部材の拡大図。
【図3】リールシート本体の内部構造を示す部分断面図。
【図4】リールシート本体に竿管を取付ける部分を分解して示す概略的な斜視図。
【図5】変形例によるリールシート本体の一部を示し、(A)は竿管を取り付けた状態の断面図、(B)および(C)は、それぞれ(A)のB−B線およびC−C線に沿う断面図。
【図6】図5の変形例を説明する図4と同様な斜視図。
【符号の説明】
【0033】
8…魚釣用リール、10…釣竿、12…ハンドル部材、14…竿管、14a…竿尻部、16…リールシート本体、22…リール載置部、34…竿管装着孔、38…連結部材、40…操作用開口部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
魚釣用リールを取付けるリール載置部を形成したリールシート本体とこのリール載置部の後方に配置した握り部とを有するハンドル部材を備え、このハンドル部材の先側に、竿管の竿尻部を固定する釣竿であって、
前記リールシート本体は、前方に開口する竿管装着孔と、リール載置部側に開口する操作用開口部とを有し、この操作用開口部を介してリールシート本体内に挿通される連結部材により、前記竿管装着孔内に挿入された竿管の竿尻部をこの竿管装着孔内の所要位置に固定することを特徴とする釣竿。
【請求項2】
前記竿尻部は、竿管の開口端に、後方に突出した状態に固着された閉塞栓を有することを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項3】
前記竿管装着孔の底壁と竿尻部との間に、弾性部材が配置されることを特徴とする請求項1又は2に記載の釣竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−187916(P2008−187916A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−23272(P2007−23272)
【出願日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【出願人】(000002495)ダイワ精工株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】