説明

釣竿

【課題】 釣竿の持ち重り軽減策として、リール装着位置を前方に移動させる方法や釣竿の前部を伸縮させる方法等があるが、前者は移動したら螺子等で固着、固定して使用する技術であり微調整に止まる。後者は手が二本しかないので操作が難しい。簡単な操作で持ち重りを軽減しながら、竿本来の長さを利した釣りができる技術を求める。
【解決手段】 本発明では固定観念を廃し、リール3を装着した移動体2を釣竿1に固定させることなく自在に動かす。前方に移動させることで、待機時には持ち重りを軽減でき、魚を掛けた時には竿尻9を曲げた膝や腹部に軽く当てる動作でも簡単に復元できる。これには、釣竿1を覆うパイプ状の移動体2を移動する方式と、釣竿1に設置したレール5上を移動体2が移動する方式があるが、効果は同等である。実験では移動体2の25cm前方移動で60cmの竿先縮小と同等の効果が確認できた。これにより先の課題は解決可能となった。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、リールを装着する釣竿の形状および機能に関する。
【背景技術】
【0002】
リールを装着する釣竿はリールを持つ位置が支点となり、同じ竿であれば支点より前が短くなれば持ち重りが軽減すことになる。
そこで、持ち重りを軽減させるために参考文献1に代表される、支点となるリール位置より前方を一時的に縮小する方法が考えられた。それは、図8左に示すように、振出竿の元竿から二番目の竿体をその途中に設けられた金属リング等を用いて、一時的に元竿に固着させて短縮する技術である。
また、参考文献2、3に代表される、リール位置を前方に移動する方法も考えられた。それは図8右に示すように、リールを装着したパイプ状のグリップを任意の位置に移動させ、そこに螺子等の固定具を用いて固定もしくは固着させて使用する技術であるが、固定、固着しないで使用する発想と構造にはなっていない。
【特許文献1】特開2004−350660号公報
【特許文献2】特開2001−352866号公報
【特許文献3】特開2005−328826号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、特許文献1などの技術によれば、支点より前を縮小することにより持ち重りを改善できるが、大きな魚が掛かった時には竿の長さを復元する必要がある。長い竿はその分パワーがあるからである。ところが、手は二本しかなく、竿を持つ手は放せないのでリールを巻く手を放して竿を伸ばすしかなく、暴れ回る魚と格闘しながらでは、初心者等には操作がやや難しい点が問題である。
【0004】
また、特許文献2、3などの技術によれば、リール位置を前方に移動できるため持ち重りを軽減できる。ところが、リールは釣竿に固定して使用するものとの固定観念があるため、移動した位置で螺子等の固定具を用いて釣竿に固着、固定して使用する構造となっている。もし固定を怠ると移動を制限する構造となっていないためリールが釣竿本体からすっぽ抜けてしまうおそれがある。さらに、もし特許文献1と同程度の効果を期待してリール位置を大きく前方に移動させれば、釣りの最中には固定されて長くなっている竿尻が釣りの障害となる。そのため実用的には微調整程度に止めるしかない点が問題である。
【0005】
本発明は、このような従来の技術が有していた問題を解決しようとするものである。面倒な操作を必要とせずに釣りの最中にもリール位置を変えて自在に竿のバランスを変え、持ち重りを軽減しながら竿本来の長さを利した釣りができる技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記目的を達成するために、第一発明は、螺子等の固定具を用いて釣竿に固着、固定されることなく、自在に釣竿の上を動かせるリールを装着した移動体を用いることを特徴とする。
【0007】
第二発明は、リールを装着して釣竿を覆うパイプ状の移動体が釣竿の上を移動する構造により、第一発明の機能を実現させることを特徴とする。
【0008】
第三発明は、リールを装着した移動体が釣竿に固定したレール上を移動する構造により、第一発明の機能を実現させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、コロンブスの卵のように、リールを固定しないことにより、待機時には竿尻を手で軽く引くことなどで簡単にリールを前方に移動させて持ち重りを軽減できる。長くなっている竿尻は脇に挟むこともでき、釣竿を持つ手首の負担を軽減できる。また、突然の魚の引きには釣竿を立てる動作をとるため長くなっている竿尻は障害となりにくい。魚とやりとりする中でのリールの後方への復元は、釣竿とリールを持つ手を離さずとも、釣りの自然な動作の中で竿尻を曲げた膝や腹部に当てることなどでも操作可能であり操作しやすい。もちろん手でも操作できる。
結局、釣りの最中にも支点を自在に変えられることでバランスを変えて持ち重りを軽減し、それを簡単で自然な動作で速やかに復元できる。終始、釣竿自体の長さは変わらないので竿のパワーを損なわれず、長い仕掛けが使えるなど竿の長さを利した釣りが可能である。これらにより、この発明の目的は達成される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
パイプ方式の実施形態。図1、2に本発明の第一及び第二発明に基づくパイプ方式の移動体を使用する場合の実施形態を示す。釣竿本体1は、それを覆う形のリールシート4を一体成型したパイプ状の移動体2、移動体2の移動域を制限する金属リング10、移動体2の補強のための金属リング10を有し、釣竿1の表面と移動体2の内側に摩擦材を施す。
a.釣竿1より一回り太いパイプ状の移動体2にリール3を装着し、螺子等の固定具を用いて固着、固定することなく、適度な摩擦抵抗を掛けながら25cm程度自在に移動できるようにする。また、下記fの摩擦材を施すことにより移動体2、つまりリール3のぐらつきを防止することができる。
b.移動体2の長さはおおよそ18cm程度とし、素材は釣竿と同素材とすることを原則とするが素材と形状を問わない。移動体にはそれを釣竿に固着、固定する固定具を設けない。
c.また、移動体の前後に金属製のリング10等を設置して補強する。
d.移動体2の横回転を防止するため、釣竿1の移動体2の移動域と移動体2との断面を非円形に加工する。その際に、釣竿1の移動体2の移動域を非テーパー加工し、移動体2も非テーパー形状とすることで操作性が向上する。非円形への加工方法としては、双方の断面を同形の歪円形に加工する方法を基本とするが、様式を問わない。
e.竿本体1の移動体2の移動域両端に移動を制限する金属製のリング10を設置する。
f.移動体2は軽く力を掛ければ動かせるが不用意な動きを制限するために竿本体1と移動体2の接触面双方に摩滅に強い摩擦材11加工を施す。摩擦材11の移動制限リング10に近い領域を少し盛り上げて太くすることで、移動体2を移動域の両端部で半固定状態とすることも可能となる。
【0011】
レール方式の実施形態。図4、5に本発明の第一及び第三発明に基づくレール方式の移動体を使用する場合の実施形態を示す。釣竿本体1はそれに固定したレール5、レールに沿って移動するリールシート4を一体成型した移動体2、移動体2の移動域を制限するストッパー13、移動体の動きを制限するクラッチ機構8と14、レール受け部17を有す。
g.リール3を装着した移動体2を、固定具を用いて固着、固定することなく、釣竿1に固定したレール5の上を25cm程度自在に移動できるようにする。
h.レールの形状は金属製の逆T字型を基本とするが、形状と素材を問わない。
i.レール5は釣竿1に固定する。固定方法は釣竿1と一体形成することを基本とするが方法を問わない。
j.移動体2がレール5を掴むレール受け部17の形状はレール5の逆T字型を抱きかかえる形を基本とするが、その逆を含めレールの形態に合わせるものとし形状、材質を問わない。
k.レール5の両端には移動体2の移動を制限するためにストッパー13を設置する。その素材と形状を問わない。
l.移動体2は、レール受け部17とリールシート4とを合わせてカーボン樹脂で一体成型することを基本とするが、その素材と形状を問わない。
m.移動体2はレール5の上を軽く力を掛ければ動かせるが不用意な動きを制限するために、クラッチ機構8を設けるか、レール5と移動体2の接触面双方に摩滅に強い摩擦材11を施す。摩擦材は前述fに順じる。
n.クラッチ機構8は、レール5と移動体2に、横波型構造または方形の穴を連続して開け凹部とした形状とする。それに対応する凸部にはステンレス鋼の板バネ状突起14を設けてクラッチ機構を構成する。凸凹はどちら側に設置してもよいし波型または凹穴のサイズ、素材を問わない。
【他の実施形態】
【0012】
パイプ方式の変形実施形態B。上述d及び図3に示すように、釣竿1側に凸状の前後に繋がる突起6を設け、移動体2側にはそれに対応する凹部7を設け、補強材12で移動体を補強するパイプ方式Bの方法を用いることもできる。
【0013】
レール方式の変形実施形態B。上述h及び図6に示すように、釣竿1側に変形凹状のレール5を設け、移動体2側に設けたそれに対応する変形凸状のレール受け部17を抱きかかえる形状を用いることもできる。その凸凹は逆に設置してもよい。また、この場合には接触面が広く設定できるので、複雑なクラッチ機構ではなく設置面の双方に摩滅に強い摩擦材を設置しても良い。
【実施形態の効果】
【0014】
この実施形態によれば、パイプ方式の場合は釣竿を持つ際にリールを装着した移動体を握ることになり、移動体を前後させる時に釣竿に直接触れることがなく安全である。レール方式の場合は釣竿を持つ際に指で移動体を、掌で釣竿を直接握ることになるので、移動体を前後させる時にコントロールできる。それ以外には二つの方式に基本的な効果の差異はない。
また、持ち重りの改善に関しては次項の実験結果が提示できる。これは、二つの方式に共通で、移動体2を25cm前方に移動させることで生じる持ち重り軽減効果は、釣竿のリール装着位置より前方を縮小して持ち重りを軽減できる特許文献1のズームロッドを60cm縮小した場合とほぼ同等であることが確認された。
なお本発明は、上記の実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲での変更が可能である。例えば。釣竿のサイズ、素材、用途、延竿・並継・振出等の形状を問わない。釣竿の長さを伸縮させる方式を併用するものでも良い。
【0015】
本発明による持ち重り軽減効果の確認実験の結果
・図5で示すように、実際の釣竿でリール装着位置を移動させた場合の持ち重りの変化を測定する実験を行った。その結果、特許文献1の技術を用いて竿の前部を伸縮させるズームロッドを60cm縮小させた場合と、本発明で提起するようにリール装着位置を25cm前方に移動させた場合の数値はほぼ同じであった。
・なお、移動距離は25cm程度までが釣竿操作実験上の限界であった。
・実験ではシマノ社「初代αズーム磯スペシャルT1.5号5.3m」を使用した。
・▲1▼に秤を設置し数値を読み取った。 ※穂先が柔らかいため先端では測定できない
・▲4▼の通常リール装着位置(竿尻から34cm地点)に支点を設けた
(軽減率)
1、竿を伸ばした状態での▲1▼での数値は 49gであった −
2、60cm縮小した状態の▲1▼bでの数値は 37gであった(75.5%)
3、竿を伸ばした状態で▲4▼から20cm前方に
支点を移した状態▲3▼での▲1▼の数値は39gであった(79.6%)
4、同じく25cm前方に支点を移した状態
▲2▼での▲1▼の数値は36gであった(73.5%)
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】この発明のパイプ方式による一実施形態を示す正面図である。
【図2】この発明のパイプ方式による一実施形態を示す断面図である。
【図3】この発明のパイプ方式Bによる一実施形態を示す断面図である。
【図4】この発明のレール方式による一実施形態を示す正面図である。
【図5】この発明のレール方式による一実施形態を示す断面図である。
【図6】この発明のレール方式Bによる一実施形態を示す断面図である。
【図7】この発明のパイプ、レール方式共通の「持ち重り軽減効果」の確認実験を示す図面である。
【図8】従来技術を示す正面図である。
【符号の説明】
【0017】
1 釣竿本体
2 移動体
3 リール
4 リールシート
5 レール
6 回転止め凸
7 回転止め凹
8 クラッチ板
9 竿尻
10 金属リング
11 摩擦加工
12 補強材
13 ストッパー
14 クラッチ爪
15 固定具
16 摩擦材盛り上げ部
17 レール受け部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定具を用いて釣竿に固着、固定させることなく釣竿に沿って自在に動かせる移動式リール装着構造、を有することを特徴とする釣竿。
【請求項2】
前記の移動式リール装着構造として、釣竿を覆って動かせるパイプ状移動体を使用している、請求項1記載の釣竿。
【請求項3】
前記の移動式リール装着構造として、釣竿に固定したレール上を動かせる移動体を使用している、請求項1記載の釣竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−95330(P2009−95330A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−293702(P2007−293702)
【出願日】平成19年10月17日(2007.10.17)
【特許番号】特許第4182497号(P4182497)
【特許公報発行日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(507373287)
【Fターム(参考)】