説明

釣竿

【課題】軸方向にスライド可能なリール脚固定装置を有する釣竿において、脚部を安定して固定することが可能な釣竿を提供する。
【解決手段】本発明に係る釣竿1は、竿部材3の外周面にスライド可能に装着される本体部12と、本体部12に設けられ、魚釣用リール70の脚部71の一端側を受け入れる固定フード12Aと、固定フード12Aに対して接近/離反するように配設される移動フード15と、を備えたリール脚固定装置10を有する。そして、魚釣用リール70の脚部71の他端側を保持する保持部材20を備えており、保持部材20は、魚釣用リールの脚部71の他端側を保持した状態で移動フード15を固定フード12Aに対して接近移動させた際、竿部材3の外周面に押え付けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は釣竿に関し、詳細には、魚釣用リールの脚部を固定すると共に、釣竿を構成する竿部材に対してスライド可能なリール脚固定装置を備えた釣竿に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、釣竿の基端側には、様々なタイプの魚釣用リールを装着して固定するリール脚固定装置が設けられている。このリール脚固定装置として、例えば、特許文献1に開示されているような、竿部材(管状に構成されたものや、中実状に構成されたものを含む)に対して軸方向にスライド可能な構成が知られている。
【0003】
上記したタイプのリール脚固定装置は、竿部材の外周面にスライド可能に装着される筒状の本体部と、前記本体部の外面に形成された雄ネジ部に対して螺合されるナット部材(締付け部材)とを備えている。前記本体部には、固定しようとする魚釣用リールの脚部(リール脚とも称される)の一端側を受け入れる第1の受入部(固定フード)が形成されており、前記ナット部材の内周面には、リール脚の他端側を受け入れる第2の受入部(移動フード)が形成されている。
【0004】
上記した構成のリール脚固定装置によれば、使用者は、筒状の本体部を竿部材の所望の位置にスライドさせ、その位置で第1の受入部である固定フードに脚部の一端側を挿入しておき、この状態で、脚部の他端側に第2の受入部である移動フードが挿入されるようにナット部材を締め付けて行く。このため、リール脚固定装置は、移動フード(ナット部材)の締め付け力によって、魚釣用リールの脚部の裏面が竿部材の外周面に押圧されることで、その位置が固定される。
【特許文献1】特開平06−007059号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記したようなリール脚固定装置を備えた従来の釣竿は、ナット部材を締め付ける際、魚釣用リールの脚部の裏面が直接、竿部材の外周面に押圧される構成であるため、締め付け力が安定しないという問題がある。すなわち、釣竿に装着される魚釣用リールは、その脚部の裏面形状が、機種によって若干相違しており、また、竿部材の外径も種類によって異なることから、魚釣用リールの脚部の裏面と竿部材の表面が面接触せず、この結果、ナット部材の締め付け時に安定した押圧力が得られず、リール脚固定装置の固定状態が不安定になり易い。
【0006】
また、リール脚固定装置の固定状態が不安定になることで、脚部の裏面が竿部材の外周面に対して移動してしまい、竿部材の外周面に傷を付けてしまうという問題がある。
【0007】
本発明は、上記した問題に着目して成されたものであり、軸方向にスライド可能なリール脚固定装置を有する釣竿において、脚部を安定して固定することが可能な釣竿を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した目的を達成するために、本発明は、竿部材の外周面にスライド可能に装着される本体部と、前記本体部に設けられ、魚釣用リールの脚部の一端側を受け入れる固定フードと、前記固定フードに対して接近/離反するように配設される移動フードと、を備えたリール脚固定装置を有する釣竿において、前記魚釣用リールの脚部の他端側を保持する保持部材を備えており、前記保持部材は、魚釣用リールの脚部の他端側を保持した状態で前記移動フードを固定フードに対して接近移動させた際、前記竿部材の外周面に押え付けられることを特徴とする。
【0009】
上記した構成の釣竿では、魚釣用リールの脚部の一端側を固定フードに挿入しておき、脚部の他端側に保持部材を装着して、移動フードを固定フードに対して接近するように移動させる。移動フードが固定フードに接近移動されると、前記保持部材が移動フードによって竿部材の外周面に押え付けられ、その押圧力によって、リール脚固定装置の本体部は軸方向において固定された状態となる。この場合、保持部材は、竿部材の外周面の形状に応じた接触面を形成しておくことが可能であり、これにより、移動フードの移動による保持部材の押し付け時において、竿部材の外周面に対して押圧力を効果的に作用させることが可能となり、魚釣用リールの脚部を安定して固定することが可能となる。また、保持部材が竿部材の表面に対して移動することを防止できるため、竿部材の表面に傷が付くことが防止される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、軸方向にスライド可能なリール脚固定装置を有する釣竿において、脚部を安定して固定することが可能な釣竿が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図1は、本発明に係る釣竿の一実施形態を示した図である。
本実施形態に係る釣竿1は、1本の竿部材3によって構成されており、その基端側には魚釣用リール(両軸受型リール)70を着脱可能にするリール脚固定装置10が軸方向にスライド可能に装着されている。また、前記釣竿1には、複数の釣糸ガイド(外ガイド)5が設けられており、前記リール脚固定装置10に装着された両軸受型リール70から繰出される釣糸を案内するようになっている。
【0012】
この場合、釣竿1は、複数本の竿部材を軸方向に継合する構成であっても良い。また、釣竿1を構成する竿部材については、管状体に構成されていても良いし、中実状に構成されていても良い。また、釣竿は、釣糸を管状体の内部に挿通させる中通し式に構成されていても良い。さらに、竿部材を構成する素材については、例えば、強化繊維に合成樹脂を含浸した繊維強化樹脂材料(プリプレグシート)等を用いることが可能である。
【0013】
次に、図2から図7を参照して、図1に示したリール脚固定装置10の構成について説明する。これらの図において、図2はリール脚固定装置の平面図、図3は側面図、図4は図3のA−A線に沿った断面図、図5は部分断面図、図6はリール脚固定装置の本体部の構成を示す図(平面図、側面図、正面図、背面図、B−B線に沿った断面図を含む)、そして、図7はリール脚固定装置の保持部材の構成を示す図(平面図、側面図、正面図、背面図、裏面図、C−C線に沿った断面図を含む)である。
【0014】
リール脚固定装置10は、竿部材3の基端側の外周面にスライド可能に装着される本体部12と、本体部12に設けられ、魚釣用リール70の脚部71の一端側71aを受け入れる固定フード12Aと、固定フード12Aに対して接近/離反するように配設される移動フード15とを備えている。この移動フード15は、内面に雌ネジ部15aが形成された、いわゆるナット状に構成されており、後述するように、本体部12に形成された雄ネジ部12aと螺合することで、固定フード12Aに対して接近/離反するように回転操作される。
【0015】
なお、図5に示すように、移動フード15の開口側の内面は、前記雌ネジ部15aが形成されることはなく、後述する保持部材の傾斜面を押え付けることができるように、竿部材3の外周面との間で所定の隙間が生じるように形成されている。
【0016】
前記本体部12は、竿部材3に対して軸方向にスライドできるように、全体として略円筒型の形状を備えており、例えば、ナイロン、ABS等の硬質合成樹脂部材や、アルミ、SUS、チタン等の金属等によって、前記固定フード12Aと共に一体形成されている。前記本体部12には、装着される魚釣用リール70の脚部71と対応するように、図6に示すように、軸方向に沿って上方側が開口したリール脚設置部12Bが形成されている。また、本体部12の後端側(竿尻側)には、前記固定フード12Aと反対側に指掛け部(トリガー)12Cが形成されている。
【0017】
さらに、前記本体部12の前方側(穂先側)の領域には、前記移動フード15の雌ネジ部15aを螺合させる雄ネジ部12aが形成されている。この場合、前記リール脚設置部12Bは、図6に示すように、部分的に雄ネジ部12aの領域にも形成されており、この部分では、本体部12は、図6の断面図に示すように、略半円状に形成されている。
【0018】
なお、前記開口を規定するリール脚設置部12Bの軸方向両サイド(前記略半円状に形成されている本体部12の上端面)は、図6に示すように、後述する保持部材の裏面の両サイドが当接する平坦状の案内面12bとしておくことが好ましい。
【0019】
前記魚釣用リール70の脚部71の他端側71bは、リール脚固定装置10に固定される際、保持部材20によって保持される。本実施形態の保持部材20は、リール脚固定装置の本体部12とは別体として構成されており、魚釣用リール70の脚部71の他端側71bを保持した状態で前記本体部12のリール脚設置部12Bに位置付けられるようになっている。
【0020】
前記保持部材20は、図7に示すように、脚部71の他端側71bを挿入する受入口20aを備えている。また、保持部材20の裏面20bは、予め、竿部材3の外周面の曲率と略一致、好ましくは、竿部材3の外周面と略全面に亘って面接触するか、或いは、線接触することなく(特に、軸方向に沿うように線接触することなく)、面接触できるような形状を備えている。また、裏面20bの両サイドには、前記本体部12のリール脚設置部12Bの両サイドに形成された案内面12bと当接可能な当接部20cが形成されている(図4参照)。
【0021】
さらに、前記保持部材20の表面には、前記移動フード15が固定フード12Aに対して接近するように移動操作された際、移動フード15の開口側の内面によって押圧されるように、移動フード15の移動方向に沿って次第に上昇する傾斜面20dが形成されている。
【0022】
前記保持部材20は、魚釣用リール70をリール脚固定装置10に固定する際、移動フード15の開口領域の内面と、竿部材3の外周面との間に介在されて、竿部材3の外周面に押圧される部分となる。このため、保持部材20は、例えば、ナイロン、ABS、ポリアセタール、アルミ、ステンレス、黄銅等の素材によって一体形成することが好ましく、特に、ナイロン、ABS、ポリアセタールによって形成することで、竿部材3の外周面に押圧された際、竿部材3の表面に傷が付くことを防止することができる。或いは、保持部材20を、上記したナイロン、ABS。ポリアセタールによって形成し、竿部材3の外周面と接触する裏面20bに、ゴム、ウレタン、エラストマー等の柔軟性を有する部材を取着した構成としても良い。
【0023】
以上のように構成されるリール脚固定装置10の作用について説明する。
最初、リール脚固定装置10の本体部12は、竿部材3の外周面に対して、軸方向に摺動可能となっており、この状態で本体部12を所望の位置にセットする。また、装着しようとする魚釣用リール70の脚部71の他端側71bに保持部材20を保持する。
【0024】
そして、魚釣用リールの脚部71の一端側71aを固定フード12Aの受入口に嵌め込み、他端側71bに保持された保持部材20を、本体部12のリール脚設置部12B内(開口領域内)に位置付ける。このとき、移動フード15は締め付け固定前であり、保持部材20の裏面20bの両サイドに形成されている当接部20cと、本体部12のリール脚設置部12Bの両サイドに形成された案内面12bとの間には隙間が生じており、保持部材20は、竿部材3の外周面に対して押圧力が作用する前となっている。
【0025】
この状態で移動フード15を回転操作して、それ自身を固定フード12A側に接近させるように移動させると、保持部材20の傾斜面20dは、移動フード15の開口側の内面によって押圧されるようになり、これにより、保持部材20には、竿部材3の外周面に押し付ける力が作用する。
【0026】
また、保持部材20が竿部材3の外周面に押し付けられると、保持部材20の裏面20bの両サイドに形成されている当接部20cが、本体部12のリール脚設置部12Bの両サイドに形成された案内面12bと当接して、保持部材20は周方向への回転が規制され、魚釣用リール70は保持部材20を介して固定フード12Aと移動フード15との間で締め付け固定される。
【0027】
このように、移動フード15を固定フード12Aに向けて接近移動させると、保持部材20が移動フード15によって竿部材3の外周面に押え付けられ、その押圧力によって、リール脚固定装置10の本体部12は、軸方向の所望の位置で固定された状態となる。特に、保持部材20に傾斜面20dを形成したことで、移動フード15の移動時に、保持部材20を、固定フード12A側に移動させて脚部71を固定フード12Aと移動フード15との間に確実に位置させながら竿部材3の外周面に強固に押し付けることができ、魚釣用リール70の固定時に軸方向のガタ付きを効果的に防止することが可能となる。
【0028】
また、保持部材20の裏面20bの両サイドに形成されている当接部20cが、本体部12のリール脚設置部12Bの両サイドに形成された案内面12bと当接するため、周方向におけるガタ付きも効果的に防止することが可能となり、魚釣用リール70の脚部71を安定して固定することが可能となる。
【0029】
また、上記したような裏面構造を有する保持部材20を移動フード15と竿部材3の表面との間に介在させたことで、魚釣用リール70の脚部71の裏面が竿部材3の表面に対して移動することが防止されるため、竿部材3の表面に傷が付くことが防止される。
【0030】
図8から図10は、本発明の第2の実施形態を示す図であり、図8はリール脚固定装置の部分断面図、図9は図8のD−D線に沿った断面図、そして、図10はリール脚固定装置の保持部材の構成を示す図(平面図、側面図、正面図、背面図、裏面図、E−E線に沿った断面図を含む)である。
【0031】
本実施形態では、保持部材20は、移動フード15に対して一体的に移動可能に係止された状態となっている。具体的には、保持部材20の端部に円周方向に沿った突壁20Aを形成し、移動フード15の開口側の内周面に円周方向に沿った係止突部15Aを形成し、係止突部15Aに突壁20Aを係止させることで、保持部材20は、移動フード15に対して一体的に移動可能に係止されている。
【0032】
また、本体部12のリール脚設置部12Bを規定する開口縁部の両サイドには、軸方向に沿って案内溝12dが形成されており、ここに、保持部材20の両サイドに軸方向に沿って形成された突部20eが係合されている。これにより、保持部材20は、周方向の回転が規制されており、周方向におけるガタ付きが効果的に防止される。
【0033】
本実施形態の構成によれば、上記した実施形態と同様な作用効果が得られると共に、保持部材20は、移動フード15に対して係止された状態にあるため、リール脚固定装置10を操作する際に、保持部材20が上方に外れることが防止され、また、保持部材20を紛失することもない。
【0034】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は、上述した実施形態に限定されることは無く種々変形することが可能である。
【0035】
例えば、上記した移動フード15は、リール脚固定装置10に対して釣竿の基端側に配置されていても良い。また、リール脚固定装置10を構成する本体部12については、その全体形状や、固定フード部分の構成等に関して適宜変形することが可能である。また、本体部12に対する保持部材20の設置方法や構成、及び移動フード15が移動した際に竿部材の外周面に対して押圧力を作用させる構成についても、上記した実施形態に限定されることはなく、適宜、変形することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明に係る釣竿の一実施形態を示した図。
【図2】図1に示したリール脚固定装置の構成を示す平面図。
【図3】図1に示したリール脚固定装置の構成を示す側面図。
【図4】図3のA−A線に沿った断面図。
【図5】図2に示したリール脚固定装置の構成を示す部分断面図。
【図6】リール脚固定装置の本体部の構成を示す図(平面図、右側面図、正面図、背面図、B−B線に沿った断面図を含む)。
【図7】リール脚固定装置の保持部材の構成を示す図(平面図、右側面図、正面図、背面図、裏面図、C−C線に沿った断面図を含む)。
【図8】本発明の第2の実施形態を示す図であり、リール脚固定装置の部分断面図。
【図9】図8のD−D線に沿った断面図。
【図10】リール脚固定装置の保持部材の構成を示す図(平面図、右側面図、正面図、背面図、裏面図、E−E線に沿った断面図を含む)。
【符号の説明】
【0037】
1 釣竿
3 竿部材
10 リール脚固定装置
12 本体部
12A 固定フード
15 移動フード
20 保持部材
70 魚釣用リール
71 脚部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
竿部材の外周面にスライド可能に装着される本体部と、前記本体部に設けられ、魚釣用リールの脚部の一端側を受け入れる固定フードと、前記固定フードに対して接近/離反するように配設される移動フードと、を備えたリール脚固定装置を有する釣竿において、
前記魚釣用リールの脚部の他端側を保持する保持部材を備えており、
前記保持部材は、魚釣用リールの脚部の他端側を保持した状態で前記移動フードを固定フードに対して接近移動させた際、前記竿部材の外周面に押え付けられることを特徴とする釣竿。
【請求項2】
前記保持部材の表面には、固定フードに対して接近移動する移動フードの内周面が係合することによって、保持部材を竿部材の外周面に押え付ける傾斜面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の釣竿。
【請求項3】
前記保持部材の裏面の両サイドには、前記移動フードを固定フードに対して接近移動させた際、前記本体部と当接して保持部材の周方向の移動を規制する当接部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の釣竿。
【請求項4】
前記保持部材は、前記移動フードに一体的に移動可能に係止されると共に、周方向の移動が規制された状態で前記本体部に対して取り付けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の釣竿。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−51260(P2010−51260A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220837(P2008−220837)
【出願日】平成20年8月29日(2008.8.29)
【出願人】(000002495)グローブライド株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】