説明

鈴構造粒子及び鈴構造粒子の製造方法

【課題】製造上の制限が少なく、耐熱性に優れ、かつ、振動や音を減衰させる能力の高い鈴構造粒子を提供する。
【解決手段】殻体の空孔内に該殻体よりも小さな核微粒子が内包された鈴構造粒子であって、前記殻体及び核微粒子のいずれもが無機材料からなることを特徴とする鈴構造粒子。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製造上の制限が少なく、耐熱性に優れ、かつ、振動や音を減衰させる能力の高い鈴構造粒子に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、振動を吸収したり、音を吸収したりする目的に用いる制振材や遮音板等の制震材の材料として、鈴構造体が注目されている。鈴構造体とは、殻体の空孔内に、該殻体よりも小さな核微粒子が内包された構造体を意味する。このような鈴構造体に振動や音を照射した場合、入射した運動エネルギーが殻体の空孔内での核微粒子の運動に変換され、消費されることから、極めて高い効率で振動や音を減衰させることができる。例えば、特許文献1には、このような鈴構造体を含む制震材が記載されている。
【0003】
特許文献1では、多孔質の板状体の空孔中に核微粒子を配置しているが、例えば、鈴構造を有する粒子(鈴構造粒子)を用いれば、適当なバインダーに鈴構造粒子を分散させ塗工することにより、容易に制振性や遮音性が付与された部材を製造することができる。
【0004】
特許文献2及び特許文献3には、中空部を有する殻体と、前記中空部に外から入射する運動エネルギーを吸収する核とを有する鈴構造粒子が開示されている。
特許文献2には、有機材料の殻と無機材料の核との間に昇華特性又は蒸発特性を有する中間材を設けて、上記中間材を所定の温度に加熱して上記殻外に昇華又は蒸発させる鈴構造粒子の製造方法が記載されている。また、特許文献3には、有機材料の殻と無機材料の核との間に極性溶媒からなる中間材を設けて、上記中間材を所定の温度に加熱し蒸発させる方法により、上記殻体の内部であって上記殻体と核との間に空間を形成する鈴構造粒子の製造方法が記載されている。
【0005】
しかし、特許文献1、2に記載された鈴構造粒子は、空間形成材料として昇華性材料や有機溶剤を用いるため、殻体形成時に空間形成材層が不安定となり、均質な鈴構造粒子を製造することが困難であるという問題があった。また、特許文献1、2に記載された鈴構造粒子は、殻体及び核微粒子のいずれか、又は、いずれもが樹脂材料からなるものであった。このような樹脂材料を用いた鈴構造粒子は、製造が容易である一方、耐熱性が低いという問題があった。また、殻体が樹脂材料からなる場合、制震材を構成するマトリックスとの混練の際の加熱や衝撃等により、溶融してしまったり、破壊されてしまったりするという問題があった。更に、樹脂材料を用いた鈴構造粒子の場合、入射した運動エネルギーの消費効率が低く、期待したほどには振動や音を減衰させることができないことがあるという問題もあった。
【0006】
これに対して特許文献4には、核の材料となるセラミック材料と、殻体の材料となるセラミック材料とのコアシェル粒子を作製した後、焼結させる際にそれぞれの収縮率の差を利用して、核と殻体との間に空隙を形成させる方法が記載されている。しかしながら、特許文献4に記載された方法では、焼結の際に核と殻体とが融着してしまうことがあり、また、材料が極めて限定されることから、製造上の制限が大きいという問題があった。
【0007】
特許文献5には、無機材料からなる核の表面に炭酸塩の中間層を形成させ、該中間層の表面に金属酸化物の殻体を形成させた後、上記炭酸塩を酸により除去する方法が開示されている。しかしながら、特許文献5に記載された方法では、酸で炭酸塩を除去をする際に、金属酸化物の殻体も劣化してしまったり、殻体に炭酸塩が溶出する細孔ができてしまったりすることから、充分な強度を有する鈴構造粒子を製造できないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−226035号公報
【特許文献2】特開2000−148156号公報
【特許文献3】特開2006−249150号公報
【特許文献4】特開2006−335611号公報
【特許文献5】特開2008−74645号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、製造上の制限が少なく、耐熱性に優れ、かつ、振動や音を減衰させる能力の高い鈴構造粒子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、殻体の空孔内に該殻体よりも小さな核微粒子が内包された鈴構造粒子であって、前記殻体及び核微粒子のいずれもが無機材料からなる鈴構造粒子である。
以下に本発明を詳述する。
【0011】
本発明者は、鋭意検討の結果、核微粒子と殻体との中間層に樹脂を利用することにより、簡便かつ容易に、殻体及び核微粒子のいずれもが無機材料からなる鈴構造粒子を製造できることを見出した。そして、この製造方法により製造した、殻体及び核微粒子のいずれもが無機材料からなる鈴構造粒子は、極めて耐熱性に優れ、かつ、振動や音を減衰させる能力の高いことを見出し、本発明を完成した。
【0012】
本発明の鈴構造粒子は、殻体の空孔内に該殻体よりも小さな核微粒子が内包された構造を有する。図1及び図2に、本発明の鈴構造粒子の一例を表す模式図を示した。
【0013】
上記殻体は、空孔を有する粒子を意味する。図1及び図2においては、ただ1つの空孔を有する単孔粒子として記載されているが、これに限定されない。即ち、上記核微粒子を内包可能な空孔を有するものであれば、複数の空孔を有する多孔粒子であってもよい。
上記殻体の形状(外観)は特に限定されないが、球状が好適である。
上記殻体の空孔の形状は特に限定されないが、球状が好適である。
【0014】
上記殻体の空孔内に内包される核微粒子は、1個であってもよいし、2個以上の複数であってもよい。図1は、ただ1個の核微粒子を内包する鈴構造粒子を示しており、図2は、2個以上の核微粒子を内包する鈴構造粒子を示している。
上記核微粒子の形状は特に限定されないが、球状が好適である。
【0015】
上記殻体及び核微粒子は、いずれも無機材料からなる。殻体及び核微粒子が無機材料からなることにより、高い耐熱性を発揮することができる。また、核微粒子が無機材料であることにより、樹脂材料に比べて比重が重いことから、従来の樹脂材料からなる鈴構造粒子に比べて入射した運動エネルギーの消費効率が高く、振動や音を減衰させる性能を向上させることができる。
【0016】
上記殻体及び核微粒子を構成する無機材料は特に限定されず、4〜14属の金属及びこれらを主成分とした合金、及びその酸化物、窒化物、炭化物が挙げられる。
上記金属は、例えば、アルミニウム、ケイ素、チタン、バナジウム、鉄、コバルト、銅、ニッケル、亜鉛、ゲルマニウム、ジルコニウム、モリブデン、ロジウム、パラジウム、インジウム、スズ、白金、金等が挙げられる。
上記合金は、例えば、ステンレス、半田等が挙げられる。
上記金属及びこれらを主成分とする合金の酸化物、窒化物、炭化物は、例えば、酸化アルミニウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化スズ、酸化(インジウム−スズ)、酸化(亜鉛−アルミニウム)、酸化(亜鉛−ガリウム)、窒化ケイ素、炭化ケイ素等が挙げられる。
これらの無機材料は単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。なかでも、核微粒子を構成する無機材料としては、安価に製造できることから、酸化ケイ素(シリカ)、酸化チタン(チタニア)、酸化鉄(フェライト)、炭化ケイ素、ニッケルが好適である。
なお、上記殻体を構成する無機材料と、上記核微粒子を構成する無機材料とは同一であってもよく、相違していてもよい。
【0017】
本発明の鈴構造粒子は、上記殻体の空孔内に上記核微粒子のみが内包されていてもよいし、上記核微粒子の他に液体を内包していてもよい。液体を内包することにより、振動や音を減衰させる性能を更に向上させることができる。
【0018】
本発明の鈴構造粒子の粒子径は、用途によって異なるが、好ましい下限は500nm、好ましい上限は100μmである。本発明の鈴構造粒子の粒子径が500nm未満であると、核微粒子の質量が小さくなりすぎ、充分な運動エネルギーの消費が困難となることがある。本発明の鈴構造粒子の粒子径が100μmを超えると、本発明の鈴構造粒子を利用した制震材の物性が鈴構造粒子により大きく影響を受け、機械的強度が低下することがある。本発明の鈴構造粒子の粒子径のより好ましい下限は1μm、より好ましい上限は50μmである。
【0019】
上記核微粒子の大きさは、上記殻体よりも小さければ特に限定されないが、充分な振動や音を減衰させる能力を発揮するためには、上記核微粒子が上記殻体の空孔内で自由に運動できることが重要である。一方、上記核微粒子が上記殻体の空孔に比べて小さすぎても、充分な振動や音を減衰させる能力を発揮することはできない。上記核微粒子の体積(2個以上の場合には、全ての核微粒子の体積の合計)が、上記核微粒子が内包される上記殻体の空孔の体積の5〜50%であることが好ましい。
【0020】
上記核微粒子の粒子径は、核微粒子の材質(比重)にもよるが、好ましい下限は100nm、好ましい上限は95μmである。上記核微粒子の粒子径が100nm未満であると、核微粒子の質量が小さくなりすぎ、充分な運動エネルギーの消費が困難となることがある。上記核微粒子の粒子径が95μmを超えると、充分な振動や音を減衰させる能力を発揮するために鈴構造粒子の粒子径を大きくせざるを得ず、本発明の鈴構造粒子を利用した制震材の物性が鈴構造粒子により大きく影響を受け、機械的強度が低下することがある。
【0021】
上記殻体の厚みは特に限定されず、使用目的に応じて適宜選択すればよいが、好ましい下限は100nm、好ましい上限は5μmである。上記殻体の厚みが100nm未満であると、バインダー樹脂への混練時や上記核微粒子の振動により殻体が壊れてしまうことがある。上記殻体の厚みが5μmを超えると、錫構造粒子の粒子径や質量が大きくなるため、充分な制震機能を発現するためには制震体中に多量の鈴構造粒子を添加しなければならなくなる。
【0022】
本発明の鈴構造粒子は、例えば、以下の2種の製造方法により製造することができる。
第1の製造方法は、上記殻体の空孔内に1個の核微粒子が内包される本発明の鈴構造粒子の製造方法である。
第2の製造方法は、上記殻体の空孔内に2個以上の核微粒子が内包される本発明の鈴構造粒子の製造方法である。
これらの製造方法もまた、本発明の1つである。以下に、本発明の鈴構造粒子の製造方法を詳しく説明する。
【0023】
第1の製造方法は、1個の無機微粒子を樹脂で被覆して被覆粒子を調製する工程と、上記被覆粒子を更に無機材料で被覆して二重被覆粒子を調製する工程と、上記二重被覆粒子を加熱する工程とを有する鈴構造粒子の製造方法である。
【0024】
第1の鈴構造粒子の製造方法では、まず、1個の無機微粒子を樹脂で被覆して被覆粒子を調製する工程を行う。
上記無機微粒子は、得られる本発明の鈴構造粒子において核微粒子となるものである。
【0025】
上記樹脂は、空気、窒素、アルゴン下で燃焼、分解するものであれば特に限定されず、例えば、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ビニルエステル樹脂、アセタール樹脂、セルロース誘導体、エポキシ樹脂等が挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なかでも、比較的低温にて解重合し、気化する、ポリスチレン、ポリメタクリル酸メチル、ポリメタクリル酸イソブチル、ポリメタクリル酸t−ブチルを主成分とした樹脂が好適である。
【0026】
上記無機微粒子を樹脂で被覆して被覆粒子を調製する方法は特に限定されず、例えば、界面重合法による方法、グラフト重合法による方法、ヘテロ凝集による方法等が挙げられる。
また、比較的厚い樹脂層が必要な場合には、いったん上記各方法により無機微粒子の表面に種層を形成し、該種層に上記樹脂の原料となる重合性単量体を吸収させた後、該重合性単量体を重合して厚い樹脂層を形成させるシード重合法も好適である。なお、上記種層としては、上記重合性単量体を吸収することが可能な高分子化合物を用いる。
【0027】
第1の鈴構造粒子の製造方法では、次いで、上記被覆粒子を更に無機材料で被覆して二重被覆粒子を調製する工程を行う。上記無機材料からなる被覆層は、得られる本発明の鈴構造粒子において殻体となるものである。
【0028】
上記被覆粒子を更に無機材料で被覆して二重被覆粒子を調製する方法は特に限定されず、例えば、界面ゾルゲル法、メッキ等が利用可能である。
無機材料として比較的堅く、かつ、耐久性の高い材料である酸化ケイ素(シリカ)や酸化チタン(チタニア)を用いる場合は、界面ゾルゲル法が好適に用いられる。
更に、比較的厚い殻層を形成させるには、上記無機材料の粉体を被覆粒子表面へヘテロ凝集法やメカノケミカル法により集積させ、その後、ゾルゲル法やメッキ法を行う方法も好適である。
【0029】
第1の鈴構造粒子の製造方法では、次いで、上記二重被覆粒子を加熱する工程を行う。加熱により、上記樹脂からなる被覆層を分解するとともに、上記無機材料からなる被覆層を焼結させる。これにより、本発明の鈴構造粒子が形成される。
上記温度は、用いた樹脂の分解温度以上、かつ、上記無機材料からなる被覆層を焼結させる温度以上である。例えば、樹脂からなる被覆層がポリメタクリル酸メチル、無機材料からなる被覆層が酸化ケイ素の場合、ポリメタクリル酸メチルの解重合温度は300℃以上であり、酸化ケイ素の焼結温度は500℃以上である。従って、加熱温度を500℃以上とすれば、上記樹脂からなる被覆層を分解するとともに、上記無機材料からなる被覆層を焼結させることができる。
【0030】
第2の製造方法は、無機微粒子を複数個含有する樹脂粒子を調製する工程と、上記樹脂粒子を無機材料で被覆して被覆粒子を調製する工程と、上記被覆粒子を加熱する工程とを有する鈴構造粒子の製造方法である。
【0031】
第2の鈴構造粒子の製造方法では、まず、無機微粒子を複数個含有する樹脂粒子を調製する工程を行う。
上記無機微粒子及び樹脂については、第1の鈴構造粒子の製造方法と同様である。
【0032】
上記無機微粒子を複数個含有する樹脂粒子を調製する方法は特に限定されず、例えば、上記樹脂の原料となる重合性単量体と無機粒子を懸濁重合、乳化重合等により、複合粒子を調整する方法や、上記重合性単量体と無機粒子とをバルク重合又は溶液重合にて複合化し、粉砕する方法や、上記樹脂と無機粒子とを、コアセルべーション法、転相乳化法、液中乾燥法、造粒法等により複合化する方法等が用いられる。更に、粒径を揃えるため、湿式又は乾式の分級を行ってもよい。真球状の樹脂粒子を得るには、懸濁重合法、乳化重合法、コアセルべーション法、転相乳化法、液中乾燥法が好適に用いられる。
【0033】
第2の鈴構造粒子の製造方法では、次いで、上記樹脂粒子を無機材料で被覆して被覆粒子を調製する工程を行う。上記無機材料からなる被覆層は、得られる本発明の鈴構造粒子において殻体となるものである。
【0034】
上記樹脂粒子を無機材料で被覆して被覆粒子を調製する方法は特に限定されず、例えば、界面ゾルゲル法、メッキ等が利用可能である。
無機材料として比較的堅く、かつ、耐久性の高い材料である酸化ケイ素(シリカ)や酸化チタン(チタニア)を用いる場合は、界面ゾルゲル法が好適に用いられる。
更に、比較的厚い殻層を形成させるには、上記無機材料の粉体を被覆粒子表面へヘテロ凝集させ、その後、ゾルゲル法やメッキ法を行う方法も好適である。
【0035】
第2の鈴構造粒子の製造方法では、次いで、上記被覆粒子を加熱する工程を行う。加熱により、上記樹脂を分解するとともに、上記無機材料からなる被覆層を焼結させる。これにより、本発明の鈴構造粒子が形成される。
上記温度は、用いた樹脂の分解温度以上、かつ、上記無機材料からなる被覆層を焼結させる温度以上である。
【0036】
本発明の鈴構造粒子は、その優れた吸音声、遮音性及び制振性を生かして、各種用途に用いられる。例えば、自動車、航空機、電車、家電、電子機器の部品、構造材及び防音材、として好適である。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、製造上の制限が少なく、耐熱性に優れ、かつ、振動や音を減衰させる能力の高い鈴構造粒子を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】1個の核微粒子を殻体の空孔内に内包する本発明の鈴構造粒子の一例を表す模式図である。
【図2】2個以上の核微粒子を殻体の空孔内に内包する本発明の鈴構造粒子の一例を表す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下に実施例を挙げて本発明の態様を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例にのみ限定されるものではない。
【0040】
(実施例1)
粒径450nmのシリカ粒子(日産化学社製、MP−4540M)20gをエタノール100mLに分散させ、3−メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン2gを添加した後、70℃で12時間撹拌することにより、表面疎水化シリカ粒子を得た。
得られた表面疎水化シリカ粒子10gを80%エタノール水溶液中に分散させた後、スチレン10g、アゾビスイソブチロニトリル0.1gを添加し、窒素雰囲気下70℃で分散重合させることにより、表面にスチレン樹脂を主成分とした皮膜(スチレン樹脂層)を有するシリカ粒子(被覆粒子)を得た。
得られた被覆粒子におけるスチレン樹脂層の厚みは約200nmであった。
【0041】
得られた被覆粒子を80%エタノール水溶液200gに分散させ、28%−アンモニア水1gを添加した後、20%テトラエトキシシラン−エタノール溶液100gを12時間かけて滴下し、ゾルゲル反応させることにより、被覆粒子の表面にシリカ層が形成された二重被覆粒子を得た。
得られた二重被覆粒子の最外層であるシリカ層の厚みは約150nmであった。
【0042】
得られた二重被覆粒子を、電気炉にて500℃で3時間加熱することにより、メタクリル酸メチル樹脂の分解と最外シリカ層の焼結とを行い、殻体の空孔内に1個の核粒子が内包された鈴構造粒子1を得た。
得られた鈴構造粒子1の粒子径は1.1μmであった。
【0043】
(実施例2)
粒径5μmのシリカ粒子(積水化学工業社製、ミクロパールSI)10gを80%エタノール水溶液中に分散させた後、スチレン1g、アゾビスイソブチロニトリル0.01gを添加し、窒素雰囲気下70℃で分散重合させることにより、表面にスチレン樹脂薄膜(種層)を有するシリカ粒子を得た。
得られた種層を有するシリカ粒子を洗浄後、1%ラウリル硫酸ナトリウム水溶液中に分散させ、スチレン10g、過酸化ベンゾイル0.01gを添加し、室温で24時間撹拌し、更に70℃で12時間シード重合させることにより、表面にスチレン樹脂を主成分とする皮膜(スチレン樹脂層)を有するシリカ粒子(被覆粒子)を得た。
得られた被覆粒子におけるスチレン樹脂層の厚みは約1μmであった。
【0044】
得られた被覆粒子を20%エタノール水溶液中に分散させ、粒径450nmのシリカ粒子(日産化学社製、MP−4540M)を添加し、スチレン樹脂層の表面にヘテロ凝集させた。水洗後、80%エタノール水溶液200gに分散させ、28%−アンモニア水1gを添加した後、20%テトラエトキシシラン−エタノール溶液100gを12時間かけて滴下し、ゾルゲル反応させることにより、被覆粒子の表面にシリカ層が形成された二重被覆粒子を得た。
得られた二重被覆粒子の最外層であるシリカ層の厚みは約0.5μmであった。
【0045】
得られた二重被覆粒子を、電気炉にて500℃で3時間加熱することにより、スチレン樹脂の分解と最外シリカ層の焼結とを行い、殻体の空孔内に1個の核粒子が内包された鈴構造粒子2を得た。
得られた鈴構造粒子2の粒子径は8.0μmであった。
【0046】
(実施例3)
粒径200nmのシリカ粒子(日産化学社製、MP−2040)10gをエタノール100mLに分散させ、3−メタクリロイルプロピルトリメトキシシラン1gを添加した後、70℃で12時間撹拌することにより、表面疎水化シリカ粒子を得た。
メタクリル酸メチル10g、表面疎水化シリカ粒子5g、アゾビスイソブチロニトリル0.01gを均一に分散させた後、200rpmの撹拌下、5%ポリビニルピロリドンK30水溶液1000gに懸濁させ、窒素雰囲気下70℃で12時間重合することにより、複数のシリカ粒子が内包されたメタクリル酸メチル樹脂粒子を得た。得られたシリカ粒子内包メタクリル酸メチル樹脂粒子の平均粒径は約10μmであった。
【0047】
得られたシリカ粒子内包メタクリル酸メチル樹脂粒子を20%エタノール水溶液に分散させ、粒径450nmのシリカ粒子(日産化学社製、MP−4540M)を添加し、メタクリル酸メチル樹脂粒子表面にヘテロ凝集させた。水洗後、0%エタノール水溶液200gに分散させ、28%−アンモニア水1gを添加した後、20%テトラエトキシシラン−エタノール溶液150gを12時間かけて滴下し、ゾルゲル反応させることにより、シリカ粒子内包メタクリル酸メチル樹脂粒子の表面にシリカ層が形成された被覆粒子を得た。
得られた被覆粒子の最外層であるシリカ層の厚みは約0.8μmであった。
【0048】
得られた被覆粒子を、電気炉にて500℃で3時間加熱することにより、メタクリル酸メチル樹脂の分解と最外シリカ層の焼結とを行い、殻体の空孔内に複数個の核微粒子が内包された鈴構造粒子3を得た。
得られた鈴構造粒子3の粒子径は11.5μmであった。
【0049】
(評価)
ポリプロピレン系樹脂(三井化学社製「LA880」)を200℃でプラストミル混練し、実施例1で得られた鈴構造粒子1、実施例2で得られた鈴構造粒子2、実施例3で得られた鈴構造粒子3、及び、比較例1として粒径10μmのシリカ粒子を、それぞれ40重量%添加し、更に60秒間混練した。得られた混練物を加熱プレス装置を用いて180℃、1分間加熱プレスして、長さ300mm、幅2.5mm、厚さ5mmの樹脂プレートを作製した。
なお、参考例1として、防音粒子を添加しないポリプロピレン系樹脂のみの樹脂プレートも作製した。
【0050】
作製した各実施例、比較例及び参考例に係る樹脂プレートを、20℃の環境下でリオン社製の損失係数測定器(RION sound and vibration signal analyzer SA−74)で、周波数1000Hz近辺における損失係数(η)を測定した。
結果を表1に示した。
なお、損失係数(η)の数値が0.1以上であれば、一般に防音部材として充分な性能を有するといえる。
【0051】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明によれば、製造上の制限が少なく、耐熱性に優れ、かつ、振動や音を減衰させる能力の高い鈴構造粒子を提供することができる。
【符号の説明】
【0053】
1 1個の核微粒子を殻体の空孔内に内包する鈴構造粒子
1’2個以上の核微粒子を殻体の空孔内に内包する鈴構造粒子
2 殻体
3 核微粒子書

【特許請求の範囲】
【請求項1】
殻体の空孔内に該殻体よりも小さな核微粒子が内包された鈴構造粒子であって、前記殻体及び核微粒子のいずれもが無機材料からなることを特徴とする鈴構造粒子。
【請求項2】
1個の無機微粒子を樹脂で被覆して被覆粒子を調製する工程と、前記被覆粒子を更に無機材料で被覆して二重被覆粒子を調製する工程と、前記二重被覆粒子を加熱する工程とを有することを特徴とする鈴構造粒子の製造方法。
【請求項3】
無機微粒子を複数個含有する樹脂粒子を調製する工程と、前記樹脂粒子を無機材料で被覆して被覆粒子を調製する工程と、前記被覆粒子を加熱する工程とを有することを特徴とする鈴構造粒子の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−1258(P2011−1258A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−115370(P2010−115370)
【出願日】平成22年5月19日(2010.5.19)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【出願人】(504159235)国立大学法人 熊本大学 (314)
【Fターム(参考)】