説明

鉄塔組立・解体用デリック

【課題】吊荷を吊り上げた状態でブームを起こす場合巻き取り荷重が大きくならず、容易にブームを起伏できる。
【解決手段】鉄塔の上端部に垂直に仮固定されたマストに、起伏自在に一端を取り付けたブームを設け、当該ブームの先端の滑車から、下端にフックを有する吊上げワイヤロープを下ろし、当該吊上げワイヤロープの他端をマスト上部の滑車に掛けてマストの下方で当該吊上げワイヤロープを操作して吊荷を吊り上げ又は吊り下げるデリックにおいて、前記マスト2を筒状として前記鉄塔20の部材に周方向の回転を可能に支持し、マスト2の上部に頂部滑車23を設け、前記ブーム3の先端に設けた軸受けフレーム22aに先端滑車22を軸支し、前記吊上げワイヤロープ8の一端は、先端滑車22及び頂部滑車23に夫々掛け、吊上げワイヤロープ8の他端のフックに、軸受けフレーム22aに係止自在なストッパ7aを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鉄塔の組立及び解体に用いるための鉄塔組立・解体用デリックに関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄塔の組立・解体装置及び方法が特許文献1に開示されている。この装置は、台棒を鉄塔に取り付け、組立後に取り外し、順次台棒を鉄塔の上方に移動させていくものである。しかし、特許文献1の装置では、台棒の鉄塔に対する取り付けと取り外しが面倒であり、作業を迅速に行うことが困難である。
【0003】
そこで、本願の出願人は、図9に示すように、円筒状のマスト2と、一方の端部が前記マスト2に対して周方向に回転可能に取り付けた棒状のブーム3と、前記マスト2の外側を挿通可能なリング状の2個のマストガイド4、5と、前記マスト2の外周側に連続して突出するマスト基台6とを有し、前記ブーム3は前記マスト2に対して旋回部材を介して取り付けられ、前記マスト2は前記旋回部材14の位置で切断され、上側のマスト2aは、前記旋回部材14とともに回転可能であり、前記ブーム3の先端には吊上げワイヤロープ8を介してフック7が備わり、当該吊上げワイヤロープ8は、前記旋回部材14の上側に備わるガイドローラ9を通って前記マスト2内に通され、前記マスト2の下側から前記吊上げワイヤロープ8を操作することにより、前記フック7が上下移動可能であり、前記ブーム3の先端近傍には起伏ワイヤ11の一方の端部が取り付けられ、当該起伏ワイヤ11は前記マスト2の上端に備わる起伏ワイヤ用滑車12を通り、前記起伏ワイヤ11の他方の端部は前記マスト2に対して周方向に回転可能に固定され、前記ブーム3は、前記起伏ワイヤ11の長さ調節をすることにより、前記ブーム3の前記マスト2に対する固定端部を支点にして回動可能であり、前記マストガイド4、5及びマスト基台6には、鉄塔20の主材19に固定するための固定ロープ16、17、18が夫々連結され、前記マスト基台6には、前記鉄塔20の主材19に固定され、巻き上げ可能な揚重工具21が連結された鉄塔組立・解体用デリック1を開発した。
【0004】
この鉄塔組立・解体用デリック1では、吊荷の位置を変えるためのブーム起伏ワイヤ11と吊荷の巻上・巻下げ用の吊上げワイヤロープ8との2本のワイヤを使用していた。吊上げワイヤロープ8はマスト内を通して地上まで下ろしてウインチで巻き取っているが、前記起伏ワイヤ11は、ブーム3の旋回時に吊上げワイヤロープ8に絡みついて旋回できなくなるため、マスト2上部で巻き取っていた。
【0005】
【特許文献1】特開2005−68864号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前記図9の鉄塔組立・解体用デリック1では鉄塔部材等の吊荷を吊り上げた状態でブーム3を起こす場合、起伏ワイヤ11の巻き取り荷重が大きくなるため、巻き取り装置の操作に時間と労力を要していた。また、起伏ワイヤ11を巻き取ってブーム3を起こす時、図10(A)に示すように、ブーム3が直立状態に近づくと、ブーム3を起こす方向の荷重が吊荷に比べて大きくなるため、ブーム3が急激に起き上がり、マスト2等に対し吊荷による衝撃が生じ、危険であった。また、図10(B)に示すように、直立状態のブーム3で吊荷のない時には、前記起伏ワイヤ11を緩めても、ブーム3の自重で伏せることができないため、ブーム3先端に取り付けた操作ロープ10を地上から引いて伏せる必要があり、操作が面倒であった。
【0007】
この発明はこのような従来技術を考慮したものであって、吊荷を吊り上げた状態でブームを起こす場合巻き取り荷重が大きくならず、容易にブームを起伏できる鉄塔組立・解体用デリックを提供することを目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで、請求項1の発明は、組立又は解体途中の鉄塔の上端部に垂直に仮固定されたマストに、起伏自在に一端を取り付けたブームを設け、当該ブームの先端の滑車から、下端にフックを有する吊上げワイヤロープを下ろし、当該吊上げワイヤロープの他端をマスト上部の滑車に掛けてマストの下方で当該吊上げワイヤロープを操作して吊荷を吊り上げ又は吊り下げるデリックにおいて、前記マストを筒状として前記鉄塔の上端部の部材に、周方向の回転を可能として仮固定し、当該マストの頂部に頂部滑車を設け、前記ブームの先端に設けた軸受けフレームに軸支された先端滑車を設け、前記吊上げワイヤロープの一端は、前記ブーム先端の軸受けフレーム内の先端滑車及びマストの前記頂部滑車に夫々掛けてマスト内に通して当該マストの下方に導出させ、当該吊上げワイヤロープの他端に設けたフックの基端にストッパを設け、当該ストッパは、前記吊上げワイヤロープを引き上げると前記先端滑車の軸受けフレームに係止自在とした、鉄塔組立・解体用デリックとした。
【0009】
また、請求項2の発明は、前記請求項1の発明において、前記ブームの中間部に一端を固定した起伏ロック用線条体の他端を、前記頂部滑車の下方のマストに設けた起伏ロック用滑車に掛けて下方に下ろし、前記マストに垂直方向に設けた多数の係止部の一つに係止自在とし、前記ブームから起伏ロック用滑車までの当該起伏ロック用線条体の長さを調節、固定自在な起伏ロック装置を設けた、鉄塔組立・解体用デリックとした。
【0010】
また、請求項3の発明は、前記請求項1の発明において、前記ブームの中間部に一端を固定した起伏ロック用線条体の他端を、前記頂部滑車の下方のマストに設けた起伏ロック用滑車に掛けて下方に下ろし、前記マストに設けたラチェット爪付きの巻き上げ機に固定し、前記ブームから起伏ロック用滑車までの当該起伏ロック用線条体の長さを調節、固定自在な起伏ロック装置を設けた、鉄塔組立・解体用デリックとした。
【0011】
また、請求項4の発明は、前記請求項1〜3のいずれかの発明において、前記マストの頂部滑車とブームの先端滑車との間の吊上げワイヤロープを被うブーム押さえパイプを設け、当該ブーム押さえパイプは、複数の各短パイプの突き合わせ端を、一方の短パイプ内に他方の短パイプを挿入して、長さ方向に伸縮自在とし、これらの短パイプの前記頂部滑車に近い短パイプの一端を当該頂部滑車の軸受けに垂直方向に回転自在に取り付け、前記ブームの先端滑車に近い短パイプの一端を先端滑車の軸受けフレームに垂直方向に回転自在に取り付け、これらの複数の短パイプから成るブーム押さえパイプが常時長手方向に伸びるよう付勢されたスプリングバネを当該ブーム押さえパイプに設けた、鉄塔組立・解体用デリックとした。
【発明の効果】
【0012】
請求項1の発明によれば、ブームの先端から垂下した吊上げワイヤロープで吊荷をブーム先端箇所まで吊り上げた状態で、吊上げワイヤロープのフックの基部のストッパが先端滑車の軸受けフレームに係止され、さらに地上からウインチ等で吊上げワイヤロープを巻き上げると、前記ブームは前記マストに対して起き上がる。従って、吊上げワイヤロープ1本で、吊荷の吊上げ、吊り下げ及びブームの起伏が可能である。また、ブームをマストに対して起こす際も、地上からウインチ等で吊上げワイヤロープを巻き上げればよく、巻き取り荷重が大きくならず、容易にブームを起伏できる。
【0013】
また、請求項2及び3の発明によれば、上記請求項の発明の効果に加え、起伏ロック装置を有するため、前記吊上げワイヤロープの巻き取り、繰り出しでブームをマストに対して起こしたり伏せたりする際は、起伏ロック装置の起伏ロック線条体の係止、又はラチェット爪を外していなければならないが、ブームを任意の起伏箇所で止めた場合、前記起伏により起伏ロック線条体が緩んだ場合は、起伏ロック用線条体を緊張させて、その状態で容易かつ確実にロックすることができ、安全である。
【0014】
また、請求項3の発明では、上記請求項の発明の効果に加え、吊荷を吊ったままブームを起こす時、ブームが直立近くになると吊上げワイヤロープによるブームを起こす方向の荷重が大きくなり、急激に起き上がり、大きな衝撃が生じて危険であるが、ブーム押さえパイプの外周に設けたスプリングバネの反発荷重により、ブームの急激な起き上がりを防ぐことができる。また、直立近くで起きている、空荷のブームをブーム押さえパイプのスプリングバネの力で伏せることができるので、従来のように地上から操作ロープをひかなくても容易にブームを伏せることができるので効率的である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
この発明は、組立又は解体途中の鉄塔の上端部に垂直に仮固定されたマストに、起伏自在に一端を取り付けたブームを設け、当該ブームの先端の滑車から、下端にフックを有する吊上げワイヤロープを下ろし、当該吊上げワイヤロープの他端をマスト上部の滑車に掛けてマストの下方で当該吊上げワイヤロープを操作して吊荷を吊り上げ又は吊り下げるデリックにおいて、前記マストを筒状として前記鉄塔の上端部の部材に、周方向の回転を可能として仮固定し、当該マストの頂部に頂部滑車を設け、前記ブームの先端に設けた軸受けフレームに軸支された先端滑車を設け、前記吊上げワイヤロープの一端は、前記ブーム先端の軸受けフレーム内の先端滑車及びマストの前記頂部滑車に夫々掛けてマスト内に通して当該マストの下方に導出させ、当該吊上げワイヤロープの他端に設けたフックの基端にストッパを設け、当該ストッパは、前記吊上げワイヤロープを引き上げると前記先端滑車の軸受けフレームに係止自在とした、鉄塔組立・解体用デリックとした。
【実施例1】
【0016】
以下、この発明の実施例1を図に基づいて説明する。
図1は、この発明の係る鉄塔組立・解体用デリックの概略正面図、図2はこの発明の要部の拡大正面図である。
【0017】
図示したように、この発明に係る鉄塔組立・解体用デリック1は、マスト2と、ブーム3と、マストガイド4、5と、マスト基台6で構成される。マスト2は円筒形状であり、上端と下端は連通している。ブーム3は、棒状であり、一方の端部である基端部3aにおいて、マスト2に、垂直方向に回転自在に取り付けられている。マストガイド4、5はリング状であり、マスト2を挿通して設けられている。マスト基台6は、マスト2の下端に備わり、マスト2の外周側に連続して突出形成されている。マスト基台6の外形は、マストガイド4、5と略同様の形状である。
【0018】
ブーム3は、その基端部3aにおいて、マスト2に対して、垂直方向に回転可能に取り付けられている。当該ブーム3の先端には、軸受けフレーム22aが取り付けられ、当該軸受けフレーム22aには先端滑車22が軸支されている。そして吊上げワイヤロープ8をこの軸受けフレーム22a内に通して先端滑車22にかけ、その一端部を前記軸受けフレーム22aから導出してフック7に接続している。当該フック7の基部はストッパ7aが形成され、前記吊上げワイヤロープ8を上方に引き上げると、当該ストッパ7aが前記軸受けフレーム22aに引っ掛かる。従って、これ以上吊上げワイヤロープ8を引き上げると、ブーム3が前記基端部3aを中心に垂直に回転し、ブーム3は起きる。
【0019】
また、前記マスト2の頂部には、頂部滑車23が設けられており、前記吊上げワイヤロープ8の他端部は、当該頂部滑車23に掛けて、マスト2の内部に通されている。マスト2内に通された吊上げワイヤロープ8は、マスト2の下端から露出し、地上に設けられたウインチ(図示省略)のドラムに固定され、このウインチにより、吊上げワイヤロープ8の巻き取りや繰り出しが可能である。吊上げワイヤロープ8を巻き取れば、前記フック7が上昇し、繰り出せば前記フック7が下降する。そして、この吊上げワイヤロープ8を巻き取り、前記フック7のストッパ7aが前記軸受けフレーム22aに引っかかると、そのまま前記ブーム3は起き上がり、また、吊上げワイヤロープ8を繰り出すと前記ブーム3は基端部3aを中心に下方に回転し、伏せることとなる。
【0020】
前記、マストガイド4、5及びマスト基台6は、夫々固定ロープ16、17、18を介して鉄塔20の4本の主材19に固定されている。このように、マスト2の下端のマスト基台6を鉄塔20に固定し、マスト2の中間部分をマストガイド4、5で支持しながら鉄塔20に固定するので、マスト2は鉄塔20内の中空でその軸がぶれることなく確実に保持されている。従って、ブーム3を操作して鉄塔を組み立てる際に、安全に作業することが出来る。
【0021】
また、鉄塔20の組立てに応じて、前記マスト2を組み立て中のマスト2に上端部に移動させるが、その際は、前記マスト基台6を支持している各固定ロープ18の4本の主材19への固定を解いて、各揚重工具21の一端を前記マスト基台6に固定し、他端を主材19の上部に固定し、各揚重工具21に備えたウインチを作動さえて、マスト基台6を上方に移動させる。
【0022】
図3は前記ブーム3の概略図である。図示したように、ブーム3は段差部3bを有する2枚の板材3c、3cを対称にして重ねて形成されている。従って、ブーム3の一方の端部は二股に分かれ、この端部が前記基端部3aとなり、この二股の基端部3aでマスト2を挟持して軸支されている。また、他方の端部には前記軸受けフレーム22a及び先端滑車22が設けられている。また、このブーム3の中程の二股の各板材3c、3cとの間に支持体24が設けられ、さらに、このブーム3の先端部から中程にかけて、船底型のカバーフレーム25が設けられている。
【0023】
また、基端部3aと段差部3bとの距離Lは、マスト2におけるブーム3の取り付け位置とマスト2の、頂部滑車23を含めた上端との距離と略同一である。これにより、ブーム3の軸線とマスト2の軸線とを一致させるまで、ブーム3を起こすことが出来る。
【0024】
また、当該マスト2の下端は、前記マスト基台6に取り付けられているが、図4に示すように、マスト基台6にベアリングを設けて、マスト2の周方向に回転可能に取り付けられている。従って、当該マスト2の外周に固定した旋回レバー26を起こし、これに手を掛けてマスト2をその周方向に回し、ブーム3の水平方向の位置を変えることが出来る。
【0025】
また、前記先端滑車22と頂部滑車23との間の吊上げワイヤロープ8には、図2に示すように、ブーム押さえパイプ27が被冠されている。このブーム押さえパイプ27は、その外周に設けたスプリングバネ28により長手方向に伸びるように付勢され、従って、ブーム3は、常に図1及び図2に示す略水平位置に成るよう押し付けられている。
【0026】
このブーム押さえパイプ27は、図5に示すように、3本の各短パイプ27aの突き合わせ端を、一方の短パイプ27a内に他方の短パイプ27aを夫々挿入して、長さ方向に伸縮自在に接続され、これらの短パイプ27aの前記頂部滑車23に近い短パイプ27の一端を二股に拡げて、当該頂部滑車23の軸に垂直方向に回転自在に取り付け、前記ブーム3の先端滑車22に近い短パイプ27aの一端を先端滑車22の軸受けフレーム22aに垂直方向に回転自在に取り付け、これらの両端に位置する二つの短パイプ27aの外周に各端部を固定した、長手方向に伸びるよう付勢されたスプリングバネ28を設けたものである。
【0027】
前記のように、地上から吊上げワイヤロープ8をウインチ等で巻き取り、前記フック7のストッパ7aが軸受けフレーム22aに当たってブーム3の先端が上方に回転するが、その際、前記ブーム押さえパイプ27は、スプリングバネ28の力に抗して縮む。また、ブーム3を伏せるように回転させると前記スプリングバネ28の力でブーム押さえパイプ27は長手方向に伸びる。
【0028】
従って、マスト2の下方から吊上げワイヤロープ8を引っ張るとブーム3は起きるが、その先端がマスト2に近づき、直立状態に近くなると吊上げワイヤロープ8によるブーム3を起こす方向の荷重が大きくなり、急激に起き上がろうとするが、前記ブーム押さえパイプ27の外周に設けたスプリングバネ28の反発荷重により、ブーム3の急激な起き上がりを防ぐことができる。また、直立近くで起きている、空荷のブーム3を伏せる場合、ブーム押さえパイプ27のスプリングバネ28の力で、ブーム押さえパイプ28は長手方向に伸びる力が働き、容易にブーム3を伏せることができる。
【0029】
また、この鉄塔組立・解体用デリック1には、前記ブーム3の起伏の任意の位置で当該ブーム3をロックする起伏ロック装置30を設けている。この起伏ロック装置30は,図6に示すように、縦長の角筒状のケース30aから成り、前記頂部滑車23の下方のマスト2に設けられている。また、この起伏ロック装置30の上方のマスト2に固定スプロケット31を軸支している。この固定スプロケット31の下方の前記起伏ロック装置30のケース30a内を略垂直方向に上下する可動スプロケット32を設け、前記ブーム3の支持体24に一端を固定したストッパチェーン33の他端を、前記固定スプロケット31に上から掛け下方に下ろし、前記可動スプロケット32の下部に掛けて上方に向け、前記固定スプロケット31の下方のマスト2に固定している。
【0030】
また、前記可動スプロケット32は、ケース30a内を上下方向にのみ移動自在な可動フレーム34の上部に回転自在に軸支されている。そして、この可動フレーム34の下部にはシャフト35が設けられ、一端にツメを有する2つのツメ付きリンク36、36が前記シャフト35で交差し、当該シャフト35を中心として対称に軸支されている。これらの各ツメ付きリンク36の下端に夫々リンク37、37の上部が軸支され、これらの各リンク37の下端をシャフト38で軸支し、当該シャフト38に操作ロープ39の一端が固定され、当該操作ロープ39の他端は下方のマスト2の外周に設けたレバーロック40に固定されている。
【0031】
また、前記各ツメ付きリンク36の下部と前記可動フレーム34の間にはバネ41を夫々設け、常に各ツメ付きリンク36の先端が左右方向に開くよう付勢されている。一方、前記ケース30aは、図8に示すように、相対向する両側板に多数の係止孔42が規則的に設けられ、前記2つの各ツメ付きリンク36のツメがこれらの係止孔42の一つに勘合、係止自在であり、常時前記バネ41の力で各ツメ付きリンク36の先端のツメが前記係止孔42の一つに勘合されている。
【0032】
そして、マスト2に設けた前記レバーブロック40を解き、操作ロープ39を図7に示すように、前記バネ41の力に抗して下方に引っ張ると、各ツメ付きリンク36はすぼまり、先端のツメがケース30aの左右の係止孔42から外れ、この状態で操作ロープ29を下方に引っ張りながら可動フレーム34をケース30a内で下に移動できる。また、前記ブーム3を倒す場合は、前記ブーム押さえパイプ27の長手方向への伸びる力及びブーム3の自重により、前記ストッパチェーン33が繰り出され、可動フレーム34は、操作ロープ29を下方に引っ張った状態で上方に移動できる。なお、前記可動フレーム34は、前記ケース30aの上端に設けたストッパ体43により上方への移動が規制されている。
【0033】
この起伏ロック装置30により、ブーム3の起伏動作を止めた位置で、操作ロープ39を操作してブーム3とマスト2の間の前記ストッパチェーン33を緊張させてロックする。
【0034】
なお、この起伏ロック装置30及びストッパチェーン33は上記実施例のものに限定されない。例えば、ストッパチェーンに代えて、適宜の起伏ロック用線条体でもよい。さらに、一端を前記ブーム3の中程に固定した起伏ロック用線条体の他端を、マスト2に設けたラチェット爪付きの巻き上げ機に固定し、この起伏ロック用線条体を巻き上げ機で巻き上げる構成の起伏ロック装置としてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】この発明の実施例1の概略正面図である。
【図2】この発明の実施例1の要部拡大正面図である。
【図3】この発明の実施例1のブームの拡大図で、(A)図は平面図、(B)図は正面図である。
【図4】この発明の実施例1のマスト基台の拡大正面図である。
【図5】この発明の実施例1のブーム押さえパイプの分解図である。
【図6】この発明の実施例1の起伏ロック装置のロック状態の縦断面図である。
【図7】この発明の実施例1の起伏ロック装置のロックを解除した状態の縦断面図である。
【図8】この発明の実施例1の起伏ロック装置のケースの説明図で、(A)図は側面図、(B)は正面図、(C)は平面図である。
【図9】従来例の正面図である。
【図10】(A)図、(B)図は、夫々従来例における使用説明図である。
【符号の説明】
【0036】
1 鉄塔組立・解体用デリック 2 マスト
3 ブーム 3a 基端部
3b 段差部 3c 板材
4 マストガイド 5 マストガイド
6 マスト基台 7 フック
7a ストッパ 8 吊上げワイヤロープ
16 固定ロープ 17 コテイロープ
18 固定ロープ 19 主材
20 鉄塔 21 揚重工具
22 先端滑車 22a 軸受けフレーム
23 頂部滑車 24 支持体
25 カバーフレーム 26 旋回レバー
27 ブーム押さえパイプ 28 スプリングバネ
30 起伏ロック装置 31 固定スプロケット
32 可動スプロケット 33 ストッパチェーン
34 可動フレーム 35 シャフト
36 ツメ付きリック 37 リンク
38 シャフト 39 操作ロープ
40 レバーロック 41 バネ
42 係止孔 45 ストッパ体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
組立又は解体途中の鉄塔の上端部に垂直に仮固定されたマストに、起伏自在に一端を取り付けたブームを設け、当該ブームの先端の滑車から、下端にフックを有する吊上げワイヤロープを下ろし、当該吊上げワイヤロープの他端をマスト上部の滑車に掛けてマストの下方で当該吊上げワイヤロープを操作して吊荷を吊り上げ又は吊り下げるデリックにおいて、
前記マストを筒状として前記鉄塔の上端部の部材に周方向の回転を可能として仮固定し、
当該マストの頂部に頂部滑車を設け、
前記ブームの先端に設けた軸受けフレームに軸支された先端滑車を設け、
前記吊上げワイヤロープの一端は、前記ブーム先端の軸受けフレーム内の先端滑車及びマストの前記頂部滑車に夫々掛けてマスト内に通して当該マストの下方に導出させ、
当該吊上げワイヤロープの他端に設けたフックの基端にストッパを設け、当該ストッパは、前記吊上げワイヤロープを引き上げると前記先端滑車の軸受けフレームに係止自在としたことを特徴とする、鉄塔組立・解体用デリック。
【請求項2】
前記ブームの中間部に一端を固定した起伏ロック用線条体の他端を、前記頂部滑車の下方のマストに設けた起伏ロック用滑車に掛けて下方に下ろし、前記マストに垂直方向に設けた多数の係止部の一つに係止自在とし、前記ブームから起伏ロック用滑車までの当該起伏ロック用線条体の長さを調節、固定自在な起伏ロック装置を設けたことを特徴とする、請求項1に記載の鉄塔組立・解体用デリック
【請求項3】
前記ブームの中間部に一端を固定した起伏ロック用線条体の他端を、前記頂部滑車の下方のマストに設けた起伏ロック用滑車に掛けて下方に下ろし、前記マストに設けたラチェット爪付きの巻き上げ機に固定し、前記ブームから起伏ロック用滑車までの当該起伏ロック用線条体の長さを調節、固定自在な起伏ロック装置を設けたことを特徴とする、請求項1に記載の鉄塔組立・解体用デリック。
【請求項4】
前記マストの頂部滑車とブームの先端滑車との間の吊上げワイヤロープを被うブーム押さえパイプを設け、当該ブーム押さえパイプは、複数の各短パイプの突き合わせ端を、一方の短パイプ内に他方の短パイプを挿入して、長さ方向に伸縮自在に接続し、これらの短パイプの前記頂部滑車に近い短パイプの一端を当該頂部滑車の軸受けに垂直方向に回転自在に取り付け、前記ブームの先端滑車に近い短パイプの一端を先端滑車の軸受けフレームに垂直方向に回転自在に取り付け、これらの複数の短パイプから成るブーム押さえパイプが常時長手方向に伸びるように付勢されたスプリングバネを当該ブーム押さえパイプに設けたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の鉄塔組立・解体用デリック。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−235265(P2010−235265A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85393(P2009−85393)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(505272618)株式会社TLC (18)
【出願人】(000001890)三和テッキ株式会社 (134)
【Fターム(参考)】