説明

鉄筋コンクリート構造物の電気防食施工方法および電気防食構造体

【課題】耐久性に優れた鉄筋コンクリート構造物の防食方法および電気防食に使用可能な電気防食構造体を提供する。
【解決手段】鉄筋コンクリート構造物4の電気防食施工方法であって、合成樹脂繊維と導電性金属線とにより形成されたシート材1Caを導電性接着剤8を使用して鉄筋コンクリート構造物に一体化し、導電性金属線に通電するための端子12,14を取り付ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄筋コンクリート構造物中の鉄筋の腐食を防止する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、建物の柱および橋脚等の鉄筋コンクリート構造物中の鉄筋の腐食を防止するために、電気防食が広く採用されている。鉄筋コンクリート構造物の防食に従来より用いられる電気防食法は、コンクリートの表面を直流電源装置の陽極に接続して微弱な直流電流を陰極側の鉄筋に向けて流すことにより鉄の電位差を均等化して鉄筋の腐食を防止するというものである。
このような電気防食法として、炭素繊維の不織布または炭素粉末をコーティングしたシートを鉄筋コンクリート構造物の表面に取り付けて直流電源の陽極に接続し鉄筋コンクリート構造物中の鉄筋を直流電源の陰極に接続しておこなう技術(特許文献1)、同じく鉄筋コンクリート構造物の表面に設けた炭素繊維シートを直流電源の陽極に接続し鉄筋コンクリート構造物中の鉄筋を直流電源の陰極に接続しておこなう技術(特許文献2)、および前述した電気防食法において炭素繊維シートを不働態皮膜を有する耐酸化金属、例えばニッケルで被覆する技術が開示されている(特許文献3)。
【特許文献1】特開2003−27607号公報
【特許文献2】特開2004−27709号公報
【特許文献3】特開2004−190119号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1および特許文献2に開示されたように、炭素繊維シートを直流電源の陽極に接続して防食を行うと、通電時間が経過するにつれて徐々に劣化により炭素繊維シートの導電抵抗が増加して電圧が上昇し、通電できなくなるおそれがある。また炭素を電極として使用した場合に炭素の内部が変色することが確認されており(「軽量FRPパネルと導電性材料を用いた電気防食システムについて」、コンクリート構造物の補修、補強、アップグレードシンポジウム論文報告集、第2巻、材料学会、P197〜202、2002年10月)、電極としての耐久性に不安がある。
【0004】
また、特許文献3に開示されたように炭素繊維シートをニッケルで被覆した場合も、特許文献1および2に開示された炭素繊維シート単独の場合と同様に耐久性に問題があるおそれがある(「ニッケル被覆炭素繊維シートの電気防食における通電性能に関する研究」、コンクリート工学論文集、No.1、Vol27,P1531〜1536、2005年6月)。
本発明は、上述の問題に鑑みてなされたもので、耐久性に優れた鉄筋コンクリート構造物の防食方法および電気防食用の陽極として使用可能な耐久性を有する電気防食構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記目的を達成するため、本発明においては以下の技術的手段を講じた。
すなわち、本発明に係る電気防食施工方法は、鉄筋コンクリート構造物の電気防食施工方法であって、合成樹脂繊維と導電性金属線とにより形成されたシート材を導電性接着剤を使用して前記鉄筋コンクリート構造物に一体化し、前記導電性金属線に通電するための端子を取り付ける。
好ましくは、前記導電性接着剤が炭素粉末を含むエポキシ樹脂である。
また、好ましくは、前記合成樹脂繊維がアラミド繊維であり、前記導電性金属線がチタン線である。
【0006】
本発明に係る電気防食構造体は、鉄筋コンクリート構造物の電気防食に使用される電気防食構造体であって、合成樹脂繊維と導電性金属線とを用いてシート状に編まれてなるシート材を有する。
好ましくは、前記シート材を前記鉄筋コンクリート構造物に一体化するための導電性接着剤を有する。
好ましくは、前記合成樹脂繊維がアラミド繊維であり、前記導電性金属線がチタン線である。
【0007】
また、好ましくは、前記導電性接着剤が炭素粉末を含むエポキシ樹脂である。
【発明の効果】
【0008】
本発明によると、耐久性に優れた鉄筋コンクリート構造物の防食方法および電気防食用の陽極として使用可能な耐久性を有する電気防食構造体を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
図1ないし図3は本発明に係る電気防食構造体を示す図である。
電気防食構造体は、アラミド繊維からなる糸(以下「アラミド繊維」ということがある)を編んでシート状としたものであり、アラミド繊維を編むときにチタン線が同時に編み込まれて導電性が付与されている。
図1において、電気防食構造体1a,1b,1cはアラミド繊維の糸2,…,2がいわゆる平織りされて形成された1方向シートであり、チタン線3,…,3は糸2,…,2に沿わせて2重にして編み込まれる。チタン線3,…,3は、図1(a)では縦方向および横方向のいずれも約1cm間隔ごとに糸2,…,2と2重にして編み込まれている。チタン線3,…,3は、図1(b)では縦方向および横方向のいずれも約3cm間隔ごとに糸2,…,2と2重にして編み込まれている。チタン線3,…,3は、図1(c)では縦方向および横方向のいずれも全てのアラミド繊維の糸2,…,2と2重にして編み込まれている。
【0010】
図2において、電気防食構造体1Ba,1Bbは縦糸2,…,2及び横糸2,…,2がいずれも密に編まれており、縦糸2,…,2および横糸2,…,2は、それぞれ他方向の糸3本を跨いで次の1本と交叉する2方向シートである。チタン線3,…,3は、適度な間隔ごとに縦糸2,…,2と2重にして編み込まれ(図2(a))、または適度な間隔ごとに横糸2,…,2と2重にして編み込まれる(図2(b))。図1に示される電気防食構造体1a,1bのように、縦糸2,…,2および横糸2,…,2すべてにまたはそれぞれ適度な間隔ごとに縦糸2,…,2および横糸2,…,2と2重にしてチタン線3,…,3を編み込んでもよい。
【0011】
図3において、電気防食構造体1Ca,1Cbはアラミド繊維の糸2,…,2およびチタン線3,…,3がメッシュ状(網の目状)に組み合わされて形成されている。図3(a)においては、チタン線3,…,3は、縦糸2,…,2と横糸2,…,2とを結びつけながら縦糸2,…,2に巻かれている。チタン線3,…,3を横糸2,…,2に巻いて横糸2,…,2と縦糸2,…,2とを結びつけてもよい。図3(b)においては、チタン線3,…,3は、縦糸2,…,2に沿わせて横糸2,…,2と編み合わされている。メッシュ状の電気防食構造体において、図1に示される電気防食構造体1a,1bのように、縦糸2,…,2および横糸2,…,2すべてにまたはそれぞれ適度な間隔ごとに縦糸2,…,2および横糸2,…,2に沿わせてチタン線3,…,3を編み込んでもよい。
【0012】
電気防食構造体に使用するアラミド繊維2,…,2として、例えば東レ・デュポン(株)社製のパラ系アラミド繊維KEVLAR(登録商標)が使用される。図1〜3の電気防食構造体におけるアラミド繊維2,…,2には0.1mmの太さの単繊維(1本の繊維)を1〜3に束ねたものが使用され、チタン線3,…,3には径が0.1mmのものが使用される。チタン線は、アラミド繊維への編み込み易さを考慮しアラミド繊維の単繊維と略同一の径のものを用いるのが好ましい。
アラミド繊維2自体としては絶縁性に優れているので漏電等のおそれがなく、チタン線3と組み合わせることにより、通電したい部分に集中的に通電することが可能である。
【0013】
図1ないし図3において、電気防食構造体1a,1b,1c,1Ba,1Bb,1Ca,1Cbにおけるチタン線3,…,3の編み込み密度は、1cm〜10cmとするのが好ましく、3cm〜10cmがより好ましい。ここで「チタン線の編み込み密度」とは、編み込まれた隣り合うチタン線3,3の間隔をいうものとする。また、原料コストを過度に増加させないためには、編み込むチタン線3の密度は30本/m2程度とするのが好ましい。また、チタン線3は、縦糸に沿わせて使用する場合および横糸に沿わせて使用する場合のいずれも、施工対象物表面の電流密度分布を均一にするためにそれぞれの方向について等間隔で配置されるように編み込むのが好ましい。
【0014】
電気防食構造体1a,1b,1c,1Ba,1Bb,1Ca,1Cbは、本発明におけるシート材である。
アラミド繊維に換えて他の合成繊維、例えばポリアミド繊維(ナイロン:登録商標)、ポリエステル繊維、およびポリプロピレン繊維等を使用してもよい。また、合成繊維以外にも、例えばガラス繊維、炭素繊維等の高強度繊維を使用することができる。電気防食構造体は、チタン線が編み込まれているので炭素繊維を使用しても電極としての耐久性を十分にもたせることが可能である。
【0015】
また、チタン線に換えて他の良電導性金属、例えば銅等を使用してもよい。
次に、電気防食構造体が施工された鉄筋コンクリート構造物について説明する。
図4は建物の床等に使用される鉄筋コンクリート構造物断面4の概略図、図5は図4のA−A矢視断面図、図6は図4,5の部位PのB−B矢視断面図である。
図4ないし図6において使用される電気防食構造体は、図3(a)に示される電気防食構造体1Caである。図4における鉄筋コンクリート構造物4の施工は、初めに主筋5および主筋5に交叉させた補強筋6,…,6が配置され、コンクリート7が型枠に流し込まれた後に数日間養生されて基礎が形成される。コンクリート7が硬化したら導電性接着剤8をコンクリート7表面に塗布し、塗布した導電性接着剤8の上から電気防食構造体1Caによってコンクリート7表面を覆う。導電性接着剤8は電気防食構造体1Ca全体に行き渡りメッシュ状の表面からはみ出る程度に十分に塗布する。電気防食構造体1Caによりコンクリート7表面を覆った後に、もう1度電気防食構造体1Caの表面に導電性接着剤8を塗布してもよい。
【0016】
導電性接着剤8が硬化する前に、電気防食構造体1Caの上に、長手方向が電気防食構造体1Caのチタン線3,…,3が編み込まれた方向と直角になるようにして、ディストリビュータ9を複数配置する。複数のディストリビュータ9,9,9は導線10により並列接続される。ディストリビュータ9,9,9を使用することにより、導電性接着剤8を介するのみの場合に比べ、電気防食構造体1Caのチタン線3,…,3に効率よく電流を印加することができる。
導電性接着剤8が硬化した後、電気防食構造体1Caの外側に型枠を組み、陽極保護コンクリート11を流し込んで、外観の改善とともに電気防食構造体1Ca、ディストリビュータ9,9,9および導線10を保護してもよい。
【0017】
主筋5または補強筋6には陰極端子12が溶接により接続され、陰極端子12の一端が鉄筋コンクリート構造物4の表面に露出するようにしてコンクリート7に埋め込まれている。コンクリート7には、照合電極13が取り付けられる。また、導線10は陽極端子14に接続され、陽極端子14の一端が表面に露出するようにして設置されている。そして、陰極端子12は直流電源15の陰極に接続され、陽極端子14は直流電源15の陽極に接続される。
導電性接着剤8は硬化して、メッシュ状の電気防食構造体1CaとともにFRP(Fiber Reinforced Plastics)を形成し、鉄筋コンクリート構造物4の強度を高める補強材として機能する。
【0018】
電気防食構造体1Caに換えて、図3(b)、図1(a)〜(c)、図2(a),(b)に示される他の電気防食構造体1a,1b,1c,1Ba,1Bb,1Cbを使用することができる。
鉄筋コンクリート構造物4の電気防食は、公知の電気防食と同様に行われる。すなわち、直流電源15により、鉄筋コンクリート構造物4に埋め込まれた照合電極13が測定した電位に基づいて決定された電流値を陽極端子14に印加し、鉄筋コンクリート構造物4内の腐食電流の発生を抑制することにより、鉄筋(主筋5および補強筋6,…,6)の腐食が防止される。
【0019】
このとき、鉄筋コンクリート構造物4における導電性接着剤層8は、図6に示されるように、電気防食構造体1Caのチタン線3,…,3を取り囲み、かつチタン線3,…,3とコンクリート7との間を埋める。したがって、導電性接着剤8層は、ディストリビュータ9とチタン線3,…,3との間の導電性およびチタン線3,…,3とコンクリート7との間の導電性を高める働きをする。
ここで使用される導電性接着剤8は、広く接着剤として使用されるエポキシ樹脂に導電性を有する炭素粉末を混入したものである。炭素粉末の混入量は、コンクリート7の体積抵抗率(1×102〜1×104Ω・cm2)以下になるように決定される。図7は接着剤への炭素粉末混入率と体積抵抗率との関係を示す図である。ここでいう「炭素粉末混入率」とは、導電性接着剤8(混合物)を100としたときに含まれる炭素粉末の重量%をいう。
【0020】
図7に示されるように、炭素粉末の混入率を50〜58%にすることにより、導電性接着剤8の体積抵抗率をコンクリート7の体積抵抗率に略等しくすることができる。このように、接着剤に混入する炭素粉末の量を調整することにより導電性接着剤8の体積抵抗率を調整することができる。
接着剤として接着力に優れるエポキシ樹脂を使用することにより、施工時にコンクリート7表面に付着する汚れを取り除く作業および表面を平滑にする作業程度で接着が可能であり、導電性材料層および接着剤層を塗り重ねる必要がない。そのため、工期の短縮および工事費用のコストダウンが可能である。
【0021】
図8は柱等に使用される鉄筋コンクリート構造物4Bの矢視断面図である。
鉄筋コンクリート構造物4Bには、図3(a)に示される電気防食構造体1Caが使用される。鉄筋コンクリート構造物4Bの施工は、図4における鉄筋コンクリート構造物4と同様に、初めに柱主筋5B,…,5Bおよび柱主筋5B,…,5Bに交叉させて柱主筋5B,…,5Bを取り巻くように横補強筋6Bが組まれ、型枠にコンクリート7Bが流し込まれた後に数日間養生されて柱が形成される。コンクリート7Bの硬化後に、導電性接着剤8をコンクリート7B表面に塗布し、塗布した導電性接着剤8の上から電気防食構造体1Caによってコンクリート7B表面を覆う。図8において、電気防食構造体1Caはチタン線3,…,3が柱主筋5B,…,5Bの長手方向と同じになるようにしてコンクリート7B表面を覆っている。導電性接着剤8の塗布の要領は、先に説明した鉄筋コンクリート構造物4の場合と同じである。
【0022】
導電性接着剤8が硬化する前に、電気防食構造体1Caの上に、電気防食構造体1Caのチタン線3,…,3が編み込まれた方向と直角方向にディストリビュータ9Bを複数配置する。複数のディストリビュータ9B,9B,9Bは導線10Bにより並列接続される。
導電性接着剤8が硬化した後、外周に型枠を組み立て陽極保護コンクリートを流し込んで数日間養生し、外観の改善を兼ねて電気防食構造体1Ca、ディストリビュータ9B,9B,9Bおよび導線10Bを保護してもよい。
【0023】
予め、横補強筋6Bには陰極端子12Bが連結され、ディストリビュータ9Bには陽極端子14Bが連結されて、いずれもその一端が表面に露出している。
コンクリート7Bには、照合電極が鉄筋および電気防食構造体1Caのいずれにも電気的に絶縁されて取り付けられる。陰極端子12Bは直流電源15の陰極に接続され、陽極端子14Bは直流電源15の陽極に接続される。
鉄筋コンクリート構造物4Bにおいても、導電性接着剤8は、電気防食構造体1CaとともにFRPを形成し、鉄筋コンクリート構造物4Bの強度を高める補強材として機能する。
【0024】
電気防食構造体1a,1b,1c,1Ba,1Bb,1Ca,1Cbは、上述したような新設の鉄筋コンクリート構造物4,4Bだけではなく、既設の鉄筋コンクリート構造物の補修、補強用にも使用することができる。そして、既設の鉄筋コンクリート構造物の補修、補強の際にも、新設におけると同様に導電性接着剤8を使用して鉄筋コンクリート構造物に取り付けられる。
図9は電気防食構造体1Caと炭素繊維シートとの復極量を比較した図、図10は復極量の測定要領を示す図、図11は電気防食構造体1Caと他のシート材質による電気防食構造体との通電電圧経時変化を示す図である。
【0025】
鉄筋のインスタントオフ電位の測定は、図10(a)に示される供試体16を作成して行った。
供試体16は、鉄筋17が内蔵された径約100mm、高さ約200mmのコンクリート円柱18の外周に、電気防食構造体1Caを巻いて導電性接着剤8により固定化したものである。電気防食構造体1Caは、図10においてチタン線3が周方向に略円を形成するように巻かれている。鉄筋17は導線19により直流電源20の陽極に接続され、電気防食構造体1Caはディストリビュータ21を介して直流電源20の陰極に接続される。
【0026】
供試体16への通電は、印加する電流密度を変化させて各電流密度でそれぞれ10分間行われる。そして、図10(b)を参照して、測定用電極22と電位測定器23とによって鉄筋の電位を測定する。測定は各電流密度にて行う。電位測定器23は、四国総合研究所製の携帯鉄筋腐食計(SRI−CM−III型)である。
電位測定の結果、 図9に示されるように、電気防食構造体1Caは、鉄筋コンクリート構造物の電気防食として実績のある炭素繊維シートと比べて、同程度の分極性能を示している。これより、防食性能は同程度である。
【0027】
図11におけるニッケル被覆シートは、炭素繊維の不織布の表面にニッケルをメッキ加工したもの、またはニッケルメッキ加工を行った炭素繊維をシート状に編んだものである。
図11に示されるように、電気防食構造体1Caおよび比較例1,2は、通電時間が20日までは同じように電圧が増加しているが、20日経過後は、電気防食構造体1Caは比較例1,2に比べて電圧の増加は極めて少なく、100日経過後も支障なく通電することができた。また、電気防食構造体1Caの表面および内部に何ら異常は認められず、比較例1,2に比べて優れた耐久性を示した。
【0028】
本願発明に係る電気防食構造体は、電気防食に使用される既存の各種シートに比べて遜色のない鉄筋コンクリート構造物の腐食防止効果を発揮し、既存の各種シートに比べて高い耐久性を有する。
また、本願発明に係る電気防食構造体は、鉄筋コンクリート構造物の補強用としても使用することができるので、建設当初は補強目的で鉄筋コンクリート構造物に施工しておき、鉄筋コンクリート構造物の腐食が促進されるおそれが明らかになったときに、改めて電気防食用の工事を行うことなく容易に電気防食の実施を行うことができる。
【0029】
本願発明に係る電気防食構造体は、電気防食の電極として炭素繊維を使用していないので、電極としての寿命、つまり耐久年数の向上が期待できる。また、変形しやすいアラミド繊維を主体とするため、従来のチタンメッシュの電極を取り付けモルタルで補強する工法に比べて複雑な形状の構造物に対応することができ、かつ軽くて取り扱いが容易である。
上述の実施形態において、電気防食構造体1a,1b,1c,1Ba,1Bb,1Ca,1Cb、および電気防食構造体1a,1b,1c,1Ba,1Bb,1Ca,1Cbの各構成または全体の構造、形状、寸法、個数、材質などは、本発明の趣旨に沿って適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、鉄筋コンクリート構造物中の鉄筋の腐食防止に利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明に係る電気防食構造体を示す図である。
【図2】本発明に係る電気防食構造体を示す図である。
【図3】本発明に係る電気防食構造体を示す図である。
【図4】高層建築の基礎等に使用される鉄筋コンクリート構造物断面の概略図である。
【図5】図4のA−A矢視断面図である。
【図6】図4,5の部位PのB−B矢視断面図である。
【図7】接着剤への炭素粉末混入率と体積抵抗率との関係を示す図である。
【図8】柱等に使用される鉄筋コンクリート構造物の矢視断面図である。
【図9】電気防食構造体と炭素繊維シートとの復極量を比較した図である。
【図10】復極量の測定要領を示す図である。
【図11】電気防食構造体と他のシート材質との通電電圧経時変化を示す図である。
【符号の説明】
【0032】
1 シート材(電気防食構造体)
2 合成樹脂繊維(アラミド繊維)
3 導電性金属線(チタン線)
4,4B 鉄筋コンクリート構造物
8 導電性接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄筋コンクリート構造物の電気防食施工方法であって、
合成樹脂繊維と導電性金属線とにより形成されたシート材を導電性接着剤を使用して前記鉄筋コンクリート構造物に一体化し、
前記導電性金属線に通電するための端子を取り付ける
ことを特徴とする電気防食施工方法。
【請求項2】
前記導電性接着剤が炭素粉末を含むエポキシ樹脂である
請求項1に記載の電気防食施工方法。
【請求項3】
前記合成樹脂繊維がアラミド繊維であり、
前記導電性金属線がチタン線である
請求項1または請求項2に記載の電気防食施工方法。
【請求項4】
鉄筋コンクリート構造物の電気防食に使用される電気防食構造体であって、
合成樹脂繊維と導電性金属線とを用いてシート状に編まれてなるシート材を有する
ことを特徴とする電気防食構造体。
【請求項5】
前記シート材を前記鉄筋コンクリート構造物に一体化するための導電性接着剤を有する
請求項4に記載の電気防食構造体。
【請求項6】
前記合成樹脂繊維がアラミド繊維であり、
前記導電性金属線がチタン線である、
請求項4または請求項5に記載の電気防食構造体。
【請求項7】
前記導電性接着剤が炭素粉末を含むエポキシ樹脂である
請求項6に記載の電気防食構造体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−284726(P2007−284726A)
【公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−111206(P2006−111206)
【出願日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【出願人】(000192626)神鋼鋼線工業株式会社 (44)
【Fターム(参考)】