説明

鉄道用まくら木の制振性測定方法、並びに、鉄道用まくら木の制振性測定装置

【課題】まくら木の制振性を安定して測定することが可能な、まくら木の制振性測定方法及びまくら木の制振性測定装置を提供する。
【解決手段】本発明のまくら木の制振性測定方法では、まくら木の制振性測定装置を用いて測定するものである。具体的には、まくら木である測定対象物10を加振用部材12と振動確認部材13によって挟んだ状態とする。そして、振動発生部材11を用いて加振用部材を叩くことにより振動させ、振動確認部材13に伝達される振動を振動センサー20、21によって測定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道用まくら木の制振性を測定する鉄道用まくら木の制振性測定方法、並びに、鉄道用まくら木の制振性測定装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鉄道軌道などでは、レールを固定するために鉄道用まくら木(以下、単に「まくら木」という。)が用いられている。このようなまくら木は様々な材質ものが用いられており、例えば、木製のもの、コンクリート製のもの、長繊維で補強されたポリウレタン発泡樹脂などのものが用いられている。
【0003】
このようなまくら木の中には、特許文献1等に記載されるように、制振性を向上させたものがある。かかるまくら木では、レールからの振動をまくら木によって減衰させ、まくら木から道床などへ伝達される振動を低減させ、列車通過時などに発生する騒音を低減させることができる。
【特許文献1】特開2004−316338号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載されているまくら木以外にも様々な種類の制振性を有するまくら木が存在しているが、これらのまくら木の制振性を比較する手段がなかった。
すなわち、今までは、実際にまくら木を敷設しなければ制振性が優れるものかどうかがわからなかった。また、実際にまくら木を使用される状態に設置して制振性を確認する方法では、設置条件を一定にすることができず、列車などの通過による振動源ではバラツキを生じやすく、正確な評価ができなかった。
【0005】
また、まくら木単体を振動させ、その振動の減衰を調べることにより、まくら木の制振性を確認することが考えられるが、まくら木をインパルスハンマーなどで叩いて、まくら木に取り付けた振動センサーによって測定するのでは、安定して測定することが難しく、実際の評価と異なる結果が出る場合があった。
【0006】
そこで、まくら木の制振性を安定して測定することが可能な、まくら木の制振性測定方法やまくら木の制振性測定装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した目的を達成するための請求項1に記載の発明は、まくら木である測定対象物を加振用部材と振動確認部材によって挟んだ状態とし、加振用部材を振動させ、振動確認部材に伝達される振動を測定することを特徴とするまくら木の制振性測定方法である。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、まくら木である測定対象物を加振用部材と振動確認部材によって挟んだ状態とし、加振用部材を振動させ、振動確認部材に伝達される振動を測定するので、まくら木を直接叩いたりせず振動させて、発生させる振動を安定させ、また、振動確認部材の振動の確認によって測定することにより、測定結果を安定させることができる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、加振用部材及び振動確認部材は、鋼材が用いられていることを特徴とする請求項1に記載のまくら木の制振性測定方法である。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、加振用部材及び振動確認部材は、鋼材が用いられているので、加振用部材及び振動確認部材での振動の減衰を小さくすることができ、より正確な評価を行うことができる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、加振用部材に発生させる振動は、振動発生部材を加振用部材に当てて行うものであることを特徴とする請求項1又は2に記載のまくら木の制振性測定方法である。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、加振用部材に発生させる振動は、振動発生部材を加振用部材に当てて行うものであるので、簡単に振動を発生させることができる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、振動確認用部材はH型鋼が用いられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のまくら木の制振性測定方法である。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、振動確認用部材はH型鋼が用いられているので、軽くて強度が高く、振動の減衰を小さくしながら、測定装置を軽くすることができる。
【0015】
請求項5に記載の発明は、加振用部材及び振動確認部材を有し、まくら木である測定対象物を加振用部材及び振動確認部材によって圧縮しながら挟んだ状態とし、加振用部材を振動させ、振動確認部材に伝達される振動を測定することができることを特徴とするまくら木の制振性測定装置である。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、加振用部材及び振動確認部材を有し、まくら木である測定対象物を加振用部材及び振動確認部材によって圧縮しながら挟んだ状態とし、加振用部材を振動させ、振動確認部材に伝達される振動を測定することができるので、まくら木を直接叩いたりせず間接的に振動させて発生させる振動を安定させ、また、振動確認部材の振動の確認によって測定することにより、測定結果を安定させることができる。
【0017】
請求項6に記載の発明は、振動確認用部材はH型鋼が用いられていることを特徴とする請求項5に記載のまくら木の制振性測定装置である。
【0018】
請求項6に記載の発明によれば、振動確認用部材はH型鋼が用いられているので、軽くて強度を高く、振動の減衰を小さくしながら、装置を軽くすることができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のまくら木の制振性測定方法やまくら木の制振性測定装置によれば、まくら木の制振性を安定して測定することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下さらに本発明の具体的実施例について説明する。
図1は、本発明のまくら木の制振性測定装置を示した正面図である。図2は、図1に示すまくら木の制振性測定装置の要部を示した分解斜視図である。
【0021】
本発明のまくら木の制振性測定方法では、図1に示すまくら木の制振性測定装置90を用いて、まくら木である測定対象物10の制振性を確認するものである。そして、まくら木の制振性測定装置90には、振動発生部材11、加振用部材12、振動確認部材13、振動解析装置14及び挟み付け装置15を有するものである。
【0022】
本実施形態で測定される測定対象物10は直方体状であり、平面状の天面10a及び底面10bを有している。そして、天面10aが上側に、底面10bが下側になるように配置されており、測定の際には、天面10a側に加振用部材12が接触し、底面10b側に振動確認部材13が接触している。
尚、測定対象物であるまくら木は、必ずしも直方体状ではなくさまざまな形状のものがあり、例えば、一部に切り欠きがあるもの、カーブ部分に使用される上下面が水平でないもの、表面にゴム板等が貼り付けられたもの、接触面に円穴又は溝が設けられていて他部材が埋め込まれているものなどもある。
【0023】
本発明のまくら木の制振性測定方法で測定される測定対象物10の材質は、特に限定されるものでなく、まくら木に用いられているものを測定することができる。例えば、ガラス長繊維補強ポリウレタン発泡樹脂製のものや、コンクリート製のものや、木製のものなどを測定することができる。
【0024】
振動発生部材11は、加振用部材12に振動を起こさせるものである。本実施形態の振動発生部材11は、具体的にはインパクトハンマーが使用されている。そして、振動発生部材11を加振用部材12に当てて振動を発生させるものであり、言い換えると、振動発生部材11を用いて加振用部材12を叩いて振動させるものである。
さらに、振動発生部材11であるインパクトハンマーは、加振力を電気信号に変換することができ、叩いたときに発生する振動を確認することができるものである。また、図1に示されるように、振動発生部材11は振動解析装置14とつながっており、この電気信号を振動解析装置14へ送信することができる。なお、振動発生部材11は、振動を発生させることができれば、インパクトハンマー以外の他のものを用いることができる。
【0025】
加振用部材12は測定対象物10の上側に配置されるものである。加振用部材12は鋼材が用いられており、具体的には、図2に示すように、通常のレールを切断したものが用いられている。そして、加振用部材12で発生する振動によって、加振用部材12に接触している測定対象物10を振動させることができる。
【0026】
また、図1、図2に示されるように、加振用部材12を測定対象物10と比較すると、長さ方向(図1における横方向、図2における左下から右上への方向)には、加振用部材12が測定対象物10よりも長く、幅方向(図2における左上から右下への方向)には加振用部材12が測定対象物10よりも短い。そのため、測定対象物10の天面10aの一部が加振用部材12と接触している。
【0027】
振動確認部材13は、測定対象物10の下側に配置されるものである。振動確認用部材13の材質は鋼材が用いられており、図2に示すように、H型鋼が用いられている。そして、測定対象物10を通過して、振動確認部材13に伝達される振動を振動確認部材13によって確認するものである。
【0028】
H型鋼である振動確認部材13には、図2に示されるように、上面部13a、下面部13b及び連結部13cを有しており、上面部13a及び下面部13bの面が水平方向に、連結部13cの面が垂直方向となるように設置される。
そして、上面部13aの面積は、測定対象物10よりも大きく、測定対象物10の底面10bの全体が接触した状態で測定される。
但し、まくら木とH型鋼などの振動確認用部材とは一部が接触していれば測定可能であり、まくら木と振動確認用部材の面積については特に限定されるものではないが、測定精度、再現性などの点から、測定対象物10の底面10bの全体が接触した状態で測定されることが好ましい。
【0029】
振動解析装置14は、加振用部材12から測定対象物10へと伝わる振動や、測定対象物10から振動確認部材13へと伝わる振動を調べて、測定対象物10によってどれだけ振動が減衰したかを解析することができるものである。
そして、振動解析装置14は、振動発生部材(インパクトハンマー)11や、振動確認用部材13に取り付けられた振動センサー20、21とつながっており、これらから発信された電気信号が振動解析装置14へ送信される。
なお、振動解析装置14は、公知の解析装置を使用することができる。
【0030】
振動センサー20、21は振動を電気信号に変換することができるものであって、具体的には加速度ピックアップが用いられている。そして、振動センサー20、21は、それぞれ、振動確認部材13の下面部13b及び連結部13cに取り付けられており、水平方向の振動、上下方向の振動を確認することができる。
【0031】
また、挟み付け装置15は、図1に示されるように、本体部30、可動部31及び圧縮力確認部32を有するものであり、上下方向に移動可能な可動部31を下げて挟み付けることができる。そして、圧縮力確認部32は具体的にはロードセルであり、可動部31の下方に位置しており、挟み付けられた状態での圧縮力を確認することができる。
【0032】
挟み付け装置15と、加振用部材12や振動確認部材13との間には、ゴム板33、35を挟んでいる。そして、このゴム板33、35によって、外部との間で振動を伝わりにくくして、より精度の高い測定を行うことができる。
【0033】
次に、まくら木の制振性測定装置90を用いて、制振性を確認する方法について説明する。
まず、測定対象物10であるまくら木を所定の形状や大きさに加工する。本実施形態では、使用される測定対象物10は、高さが140mmであり、幅及び長さがそれぞれ200mmの直方体状であるので、これより大きい試料を用いる場合には、切断などによってこの大きさにすることが好ましい。
なお、測定対象物10の大きさは上記以外のものでも良く、また、形状は直方体状以外の形状であっても、天面10aと底面10bを有する形状であればよい。また、直方体状の場合には、取り扱いや評価作業の容易さなどの理由により、高さが300mm以下、幅が150〜350mm、長さが1000mm以下の範囲とするのが望ましい。
【0034】
挟み付け装置15の本体部30の上にゴム板33及び振動確認部材13を載せ、さらに、測定対象物10を載せる。そして、その上に、加振用部材12及びゴム板35を載せ、この上を可動部31によって押しつける。このときの圧縮力が、19.6kN(2000kgf)となるようにして行う。
【0035】
この圧縮力は、加振用部材12や振動確認部材13と、測定対象物10とを密着させる程度の力が望ましく、天面10aや底面10bでの接触面積や、測定対象物10の硬さに応じて決めることができる。また、使用される条件を考慮して決めることができる。
例えば、ガラス長繊維補強ポリウレタン発泡樹脂製の測定対象物10の場合、加重を1〜80kNの範囲とすることにより、良好な測定を行うことができる。
【0036】
本実施形態では、天面10a側(加振用部材12)の接触面積は400平方cmであり、好ましい範囲としては200〜800平方cmである。また、底面10b側(振動確認部材13)の接触面積は400平方cmであり、好ましい範囲としては200〜800平方cmである。
【0037】
そして、加振用部材12を、振動発生部材11を用いて叩くことにより、振動を発生させる。この叩く位置は特に限定されるものではないが、加振用部材12の端の上側を叩くことができる。この位置を叩くことにより、実際に使用される際に発生する振動に近い測定を行うことができる。
【0038】
そうすると、発生した振動が、加振用部材12から測定対象物10へと伝達され、さらに、振動確認部材13へと伝達される。このとき発生する振動は振動発生部材11によって検出され、また、振動確認部材13へ伝達された振動は振動センサー20、21によって検出され、これらのデータは振動解析装置14に入力される。
【0039】
振動解析装置14では、上記のデータを解析することによってどれくらい振動が減衰したかどうかを確認する。具体的には、任意の周波数の振動についてどれだけ減少したかを周波数解析などにより確認する。
そして、評価を行う場合、単一の周波数の値によって評価しても良く、複数の周波数の値によって評価しても良い。また、振動発生部材11を数回叩いて、複数回測定し、平均値を用いても良い。さらに、周波数応答関数を求めて、これにより評価することもできる。
【0040】
このように、本発明のまくら木の制振性測定方法では、加振用部材12と振動確認部材13によって挟んだ状態で、加振用部材12からの振動を振動確認部材13によって測定を行うので、測定対象物10を直接叩くことなく、安定した測定を行うことができる。すなわち、測定対象物10(まくら木)の材質が違う場合にも発生させる振動を安定させることができる。また、振動センサー20、21が直接測定対象物10に取り付けられておらず、振動確認部材13に取り付けられているので、振動の検出も安定させることができる。
【0041】
また、加振用部材12と振動確認部材13によって、圧縮しながら挟んだ状態で、測定するものであるので、測定対象物10と、加振用部材12及び振動確認部材13との密着を確実に行うことができ、バラツキの少ない安定した評価を行うことができる。
【0042】
さらに、加振用部材12にはレール型の鋼材を用いているので、レールを転用することができ、測定を行いやすい。なお、加振用部材12として他の形状の鋼材や、他の材質のものを用いても良い。
【0043】
振動確認部材13は、H型鋼を用いているので、水平方向及び垂直方向の振動の確認を行いやすく、また、測定対象物10への接触面積を確保しつつ軽くすることができ、同じ加振力でも振動がしやくなり、良いものと悪いものの差がつきやすく評価しやすい。なお、振動確認部材13として、他の形状の鋼材や、他の材質のものを用いても良い。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明のまくら木の制振性測定装置を示した正面図である。
【図2】図1に示すまくら木の制振性測定装置の要部を示した分解斜視図である。
【符号の説明】
【0045】
10 測定対象物(まくら木)
11 振動発生部材
12 加振用部材
13 振動確認部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道用まくら木である測定対象物を加振用部材と振動確認部材によって挟んだ状態とし、加振用部材を振動させ、振動確認部材に伝達される振動を測定することを特徴とする鉄道用まくら木の制振性測定方法。
【請求項2】
加振用部材及び振動確認部材は、鋼材が用いられていることを特徴とする請求項1に記載の鉄道用まくら木の制振性測定方法。
【請求項3】
加振用部材に発生させる振動は、振動発生部材を加振用部材に当てて行うものであることを特徴とする請求項1又は2に記載の鉄道用まくら木の制振性測定方法。
【請求項4】
振動確認用部材はH型鋼が用いられていることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の鉄道用まくら木の制振性測定方法。
【請求項5】
加振用部材及び振動確認部材を有し、鉄道用まくら木である測定対象物を加振用部材及び振動確認部材によって挟んだ状態とし、加振用部材を振動させ、振動確認部材に伝達される振動を測定することができることを特徴とする鉄道用まくら木の制振性測定装置。
【請求項6】
振動確認用部材はH型鋼が用いられていることを特徴とする請求項5に記載の鉄道用まくら木の制振性測定装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2007−270466(P2007−270466A)
【公開日】平成19年10月18日(2007.10.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−95227(P2006−95227)
【出願日】平成18年3月30日(2006.3.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】