説明

鉄道車両客車のフロアを構成するキャリヤ要素及び鉄道車両客車のフロア構造体並びに鉄道車両客車

【課題】シートアレンジメント(レイアウト)の可変形態の実現を可能にすると同時に頑丈な形態のものである鉄道車両客車用フロア構造体を提案する。
【解決手段】鉄道車両客車の客車ボディシェルに固定可能であって、鉄道車両客車のフロアを構成するキャリヤ要素が提案される。キャリヤ要素(100)の長手方向に延びると共にキャリヤ要素(100)の横方向に互いに間隔をおいて設けられた少なくとも2本のC形材(130,132)が乗客シートのフットブラケットの固定に役立つ。一方の側が開口している少なくとも1本のケーブルダクト(120)がC形材(132,132)相互間でキャリヤ要素の長手方向に延びる。組み立て状態では、フットブラケットは、C形材(130,132)の支え面(131)で支持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両客車のフロアを構成するキャリヤ要素及び鉄道車両客車のフロア構造体に関する。本発明は又、鉄道車両客車に関する。
【背景技術】
【0002】
鉄道車両技術において、鉄道車両の内部義装(艤装又はぎ装ともいう)に対する需要がますます高くなっている。鉄道車両は、典型的には、1等(ファーストクラス)及び2等(セカンドクラス)と呼ばれる2つの別々の乗客等級を備えている。義装は、大収容力客車を提供するよう実施されることがますます多くなっている。乗客シートの配置構成は、典型的には、大収容力客車内を延びる中央通路の左側及び右側に1つ、2つ又は3つのシートの形態で実現される。大収容力客車は、互いに向かい合った乗客シート相互間にテーブルを備える場合がある。
【0003】
独国特許第102006032333(B4)号明細書及び欧州特許出願公開第1880914(A1)号明細書は、車両長手方向に延びる曲げ剛性の高い長手方向ビームを備えた鉄道車両客車のフロア構造体を開示し、乗客シート用のシート脚がこれら長手方向ビームに固定され、フロアパネルは、これら長手方向ビームで支持されている。各長手方向ビームは、弾性材料と一緒になって、客車ボディに固定される予備組み立てユニットを形成する。
【0004】
独国出願公開第102007036670(A1)号明細書は、シート及びフロアパネルの固定のために多数本の金属レールで構成された鉄道車両客車のフロア構造体を記載している。この場合、内側断面材又は異形材が弾性要素を介して外側断面材又は異形材で支持され、これら外側断面材又は異形材は、客車ボディシェルに固定される。
【0005】
欧州特許第1112206(B1)号明細書は、フロア固定具の音響的に切り離された固定のための連結要素を備えたフロア構造体を開示している。
【0006】
別の技術が、独国特許第10126404号明細書において提供され、この技術では、ダブルシートが側壁に完全に固定されている。
【0007】
韓国特許出願公開第10‐2009‐0015499号明細書は、フロアレール及び側壁レールへのシートの固定の仕方を提供している。
【0008】
オランダ国特許第1003636(C2)号明細書は、二重C字形レールを備えたフロア構造体を記載している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】独国特許第102006032333(B4)号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第1880914(A1)号明細書
【特許文献3】独国出願公開第102007036670(A1)号明細書
【特許文献4】欧州特許第1112206(B1)号明細書
【特許文献5】独国特許第10126404号明細書
【特許文献6】韓国特許出願公開第10‐2009‐0015499号明細書
【特許文献7】オランダ国特許第1003636(C2)号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上述の技術には、例えば乗客シートの通常の使用中に生じる側方荷重シフトに、限られた程度でしか対応することができないという欠点がある。さらに、上述の技術では、例えばシートアレンジメントが狭い範囲でしか変化させることができない。さらに、フロア内張りの移行部を覆うために覆いレール(covering rails)が必要であり、その結果、フロア内張りは、連続ではなくなる。
【0011】
したがって、本発明の目的は、可変形態のシートアレンジメントの実現を可能にすると同時に頑丈な形態のフロア構造体を提案することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
この目的は、請求項1記載の鉄道車両客車のフロア構造体、請求項12記載の鉄道車両客車のフロアを構成するキャリヤ要素、請求項18記載の鉄道車両客車及び請求項19記載の鉄道車両客車のフロア構造体の組み立て方法によって達成される。別の実施形態、改造例及び改良例は、以下の説明及び添付の特許請求の範囲の記載から明らかになろう。
【0013】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な一実施形態では、鉄道車両客車のフロア構造体が鉄道車両客車の長手方向に延びると共に鉄道車両客車の客車ボディシェルに固定された少なくとも1つのキャリヤ要素を有し、キャリヤ要素には室内装備ユニットのフットブラケットが固定され、キャリヤ要素は、第1のフロアパネルを支持した側方外方に向いている肩表面を有する。キャリヤ要素は、第2のフロアパネルによって覆われ、この第2のフロアパネルは、キャリヤ要素によって支持された隣り合う第1のフロアパネル相互間に配置され、第2のフロアパネルの少なくとも幾つかは、鉄道車両客車の長手方向に互いに間隔をおいて配置され、キャリヤ要素の室内装備ユニットのフットブラケットの固定のためにキャリヤ要素へのアクセスを可能にしている。
【0014】
フロア構造体は、2つの形式のフロアパネルを有する。第1のフロアパネルは、キャリヤ要素の外側肩表面で支持されるが、キャリヤ要素を実質的に自由にしたままである。これとは対照的に、第2のフロアパネルは、キャリヤ要素を覆い、第2のフロアパネルは、第1のフロアパネル相互間に配置される。第1のフロアパネルは、横方向で見て、互いに間隔をおいて設けられる。これとは対照的に、長手方向に関し、第1のフロアパネルは、互いに当接し又は連続フロアを形成するための他の何らかの適当な仕方で互いに連結される。第1のフロアパネルは、鉄道車両客車の長手方向において連続したフロアを形成し、いずれの場合においても、1つの「ダクト」又は中間スペースがキャリヤ要素の上方で第1のフロアパネル相互間に位置したままである。
【0015】
第2のフロアパネルは、この「ダクト」すなわち中間スペースを覆うのに役立ち、これら第2のフロアパネルは、例えば厚さ及びこれらの固定形式に関して第1のフロアパネルとは異なっている。しかしながら、このような中間スペース内に位置した第2のフロアパネルは、代表的には、長手方向において、特にそれぞれ1つの室内装備ユニット、例えばシングルシート又はダブルシートの固定のためにキャリヤ要素へのアクセスを保証する程度まで、互いに間隔をおいて設けられる。長手方向において間隔をおいて設けられた室内装備ユニット相互間の中間スペースは、連続フロアを実現するために横方向において第1のフロアパネルまで延びる第2のフロアパネルによって覆われる。第1のフロアパネルと第2のフロアパネルは、代表的には、これらが一緒になってステップフリー(段部無し)フロアを形成するよう設計される。
【0016】
例えばシートアレンジメントのレイアウトを変更、例えば、長手方向において隣り合う鉄道車両のシート相互間の間隔(これは、シートピッチとも呼ばれる)を変更しようとした場合、第2のフロアパネルを持ち上げ、それに従って室内装備ユニットを変位させ又はずらし、このようにして変更されたシートピッチに合った新たな第2のフロアパネルを挿入することが必要なだけである。
【0017】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な一実施形態では、キャリヤ要素の肩表面で支持された第1のフロアパネルは、それぞれキャリヤ要素の方へ向いた第1のフロアパネルの縁部に、鉄道車両の長手方向に延びる段部を有し、キャリヤ要素を覆っている第2のフロアパネルは、段部で支持される。
【0018】
このように、第1にフロアパネル相互間の連結を向上させ、第2にフロアパネルのトップサイドが互いに面一をなすようにするために第1のフロアパネルと第2のフロアパネルとの間にオーバーラップが作られる。この場合、ステップ高さは、第2のフロアパネルの厚さに一致するのが良い。さらに、この構成は、汚れ及び液体が侵入しないようフロアの封止を可能にする。これを適当なシールの使用によって更に一層向上させることができる。
【0019】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な一実施形態では、キャリヤ要素は、キャリヤ要素の長手方向に延びると共にキャリヤ要素の横方向に互いに間隔をおいて設けられた少なくとも2本の異形レール、例えばC形材を有し、室内装備ユニットのフットブラケットは、異形レールに固定される。
【0020】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な一実施形態では、キャリヤ要素は、キャリヤ要素の長手方向に延びると共にそれぞれキャリヤ要素の横方向に互いに間隔をおいて設けられた3本の異形レール、例えばC形材を有し、各フットブラケットは、キャリヤ要素の少なくとも2本の異形レールに固定される。
【0021】
上記で詳述したように、キャリヤ要素は、2本又は3本の異形レールを有するのが良い。フロアは、代表的には、同一構成のキャリヤ要素を備える。この場合、例えば、鉄道車両客車1つ当たり横方向に互いに間隔をおいて設けられた2つのキャリヤ要素を用いることが可能であり、これらキャリヤ要素は、鉄道車両客車の客室全体を貫通して延びる。各キャリヤ要素は、長手方向において一体連続形態のものであるのが良く又は互いに連結された個々の長手方向セグメントで構成されるのが良い。
【0022】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な一実施形態では、キャリヤ要素の異形レールは、全体として、第2のフロアパネルの下に配置される。この場合、異形レールを第1のフロアパネルではなく、第2のフロアパネルだけで覆うことが可能である。
【0023】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な一実施形態では、フロア内張りが第1及び第2のフロアパネル上に施され、フロア内張りは、それぞれ少なくとも1枚の第1のフロアパネルを覆っている第1の表面部分を有し、フロア内張りは、それぞれ少なくとも1枚の第2のフロアパネルを覆っている第2の表面部分を有し、表面部分の縁部は、オーバーラップすることなく且つ密封的に互いに連結される。
【0024】
フロア内張りは、覆いレール等を必要としないでエッジとエッジを突き合わせた状態で敷かれるのがよい。連続表面の実現が可能になる。
【0025】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な一実施形態では、フロア構造体は、鉄道車両客車の横方向に互いに間隔をおいて設けられると共に鉄道車両客車の長手方向に延び、且つ鉄道車両客車の客車ボディシェルに固定された2つのキャリヤ要素を有し、室内装備ユニットのフットブラケットがこれらキャリヤ要素に固定され、第1のフロアパネルの少なくとも1つは、両方のキャリヤ要素で支持される。
【0026】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な一実施形態では、1つ又は複数個のキャリヤ要素は、音響切り離し(acoustic decoupling)即ち防音のための弾性支えを介して客車ボディシェルの一部をなすビームに固定される。
【0027】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な一実施形態では、C字形ブラケットは、客車ボディシェルの一部をなすビームに固定される。ほぼC字形の弾性支えは、C字形ブラケットの内壁に当てて支持されるようC字形ブラケット中に配置され、弾性支えは、キャリヤ要素に取り外し可能に連結される固定要素の係合ウェブ又は係合バーが嵌め込まれる受け入れ溝を有する。
【0028】
C字形ブラケットは、弾性支えの周りに係合し、それにより弾性支え及び固定要素を保持する。固定要素をこれらの係合ウェブと共に長手方向でC字形ブラケット中に挿入するのが良い。次に、キャリヤ要素を固定要素の上に置き、好ましくはこれにねじ止めする。
【0029】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な一実施形態では、室内装備ユニットのフットブラケットは、それぞれ、1つのキャリヤ要素又はキャリヤ要素の1つに固定された1つの支持ビーム及び支持ビームを包囲すると共に第1及び第2のフロアパネルに着座した仕上げ材又はカバーを有する。
【0030】
支持ビームは、室内装備ユニットの実際の固定手段を構成し、適当な仕方で異形レールに取り付けられる。仕上げ材は、支持ビームを包囲し、支持構造体及び室内装備ユニットのケーブル端子を被覆する。仕上げ材は、第1及び第2のフロアパネルにより自由な状態になっているキャリヤ要素の領域も又覆う。開放状態のままになっているこれら領域は、室内装備ユニットの下に位置している。封止仕上げ材を作るため、仕上げ材は、フロアパネルに着座し、追加のシールが提供されるのが良い。
【0031】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な一実施形態では、第2のフロアパネルは、1つ又は複数のキャリヤ要素に取り外し可能に固定される。第2のフロアパネルを検査目的で又は転換作業中、容易に取り外すことができる。
【0032】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な一実施形態では、室内装備ユニットは、フットブラケットだけで1つ又は2つ以上のキャリヤ要素に力をかけない即ち能動的でない(non-positively)ロック方式で(圧力嵌め方式で)固定され、フットブラケットは、取り外し可能であると共に/或いは変位可能である。壁ビームへの固定は、不要である。
【0033】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な一実施形態では、鉄道車両のフロア構造体用のキャリヤ要素であって、キャリヤ要素の長手方向に延びると共に室内装備ユニット、例えば乗客シート及びテーブルのフットブラケットの固定に役立つ異形レールを有し、キャリヤ要素は、鉄道車両客車の客車ボディシェルに固定可能である。キャリヤ要素は、キャリヤ要素の長手方向に延びると共にキャリヤ要素の横方向に互いに間隔をおいて設けられた少なくとも2本の異形レール、特にC字形レールを有し、少なくとも1本のケーブルダクトが異形レール相互間でキャリヤ要素の長手方向に延び、異形レールは、異形レールがキャリヤ要素に取り付けられたときにフットブラケットを支持する支え面を有する。
【0034】
キャリヤ要素の異形レールは、鉄道車両客車の長手方向における室内装備ユニットの間隔の自由調整を可能にする。異形レールは、横方向において互いに間隔をおいて設けられると共に両方とも室内装備ユニットの固定に利用できるので、例えば乗客シートの使用中に生じる大きい横荷重であっても、このような横荷重にキャリヤ要素で確実に対応し、鉄道車両の支持構造体中に散逸させることが可能である。この場合、室内装備ユニットのフットブラケットは、異形レールの支え面と力をかけないロック方式で接触状態(圧力嵌め接触状態)にある。フットブラケットは、代表的には、適当な固定要素により、例えば、異形要素中に配置されたスライドブロック又はスライドレールにしっかりとねじ止めされているフットブラケットによって力をかけないロック方式で支え面に固定される。それにより、室内装備ユニットを専らキャリヤ要素に固定することが可能である。客車ボディシェルの側壁ビームへの追加の固定は、もはや不要である。
【0035】
さらに、ケーブル類全体をフロアの下で、2本の異形レール相互間に延びるケーブルダクト内に納めることができる。この場合、ケーブルダクトは、上方に開口しているのが良い。これにより、シートアレンジメントのレイアウトの所望の変更中、転換作業が容易になる。
全体として、本明細書において説明するキャリヤ要素の使用により、鉄道車両客車の内部の形態及び可変性に関し、相当な自由度が得られる。
【0036】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な一実施形態では、横方向で見て、キャリヤ要素は、各外側異形レールに隣接して、それぞれ、第1のフロアパネルを支持する1つの側方外方に向いた肩表面を有する。
【0037】
肩表面は、例えば、固定的に取り付けられたフロアパネルを支持し、取り外し可能な連結方式も又、この場合使用できる。このようなフロアパネルを第1のフロアパネルと呼ぶことも可能である。肩表面は、支え面に対して引っ込められるのが良く、即ち、キャリヤ要素の設置状態では、この支え面の下に位置するのが良い。第1のフロアパネルは、代表的には、これらのエッジがこれら肩表面上に位置し、この場合、各キャリヤ要素は、少なくとも2枚の第1のフロアパネルを支持する。横方向で見て、この場合、第1のフロアパネルは、互いに間隔をおいて設けられ、特に、2本の異形レール及びケーブルダクトは、自由なままである。
【0038】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な一実施形態では、キャリヤ要素は、キャリヤ要素の長手方向に延びると共にそれぞれキャリヤ要素の横方向に互いに間隔をおいて設けられた3本の異形レール、例えばC形材を有し、各フットブラケットは、キャリヤ要素の少なくとも2本の異形レールに固定される。
【0039】
この実施形態では、乗客シートの固定のため、横方向に互いに間隔をおいて設けられた3本の異形レールが提供され、その結果、内部客室のレイアウトの形態に関し、更に自由度が得られる。室内装備ユニット、例えば乗客シートは、例えば、2本の外側異形レールに固定されるのが良い。これら異形レールは、互いに最も長い距離を置いたところに位置し、横荷重に対応する最も高い能力を提供するので、外側異形レールは、例えば、ダブルシートの固定に適している。これとは対照的に、個々のシートの固定のためには、中間異形レールと一緒に2本の外側異形レールの1本を使用するのが良く、その結果、横方向において或る程度の可変性が得られる。
【0040】
さらに、上述の実施形態では、例えば中間異形レールによって互いに空間的に分離されている2本のケーブルダクトが提供される。このように、電流を送るケーブルは、信号を送るケーブルとは別個に布設することができ、安全性が高められると同時に干渉が減少する。これは、基本的に、単一のケーブルダクトが用いられる場合、ケーブルダクトが2つ又は3つ以上の別々のチャンバを有している場合にも当てはまる。適当な仕切りによってこれらチャンバを容易に作ることができ、この場合、仕切りは、ケーブルダクト内に一体に提供されても良く又は次にケーブルダクト中に配置される適当なインサートによって作っても良い。
【0041】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な一実施形態では、キャリヤ要素は、外側異形レールに隣接して、それぞれ、異形レールを覆っている第2のフロアパネルの支持及び/又は固定のために1つの内方に向いた肩表面を有する。
【0042】
外側肩表面とも呼ぶことができ、代表的には、外側異形レール上にのみ設けられる外方に向いた肩表面に加えて、キャリヤ要素は、内側肩表面とも呼ぶことができる内方に向いた肩表面を更に有するのが良い。内側肩表面は、例えば、外側異形レール上にのみ設けられるのが良い。また、内側肩表面を中間異形レール上にも設けることが可能である。
【0043】
内側肩表面は、容易に取り外すことができるよう設計されているのが良いフロアパネルを支持する。第2のフロアパネル又は可変フロアパネルとも呼ばれるこのようなフロアパネルは、長手方向に互いに隣接して位置する室内装備ユニット相互間でキャリヤ要素を覆うのに役立つ。必要な場合のある点検の際又は例えばシートアレンジメントの転換の際、キャリヤ要素へのアクセスを可能にするためには第2のフロアパネルを持ち上げるだけで良い。これとは対照的に、第1のフロアパネルは、取り外しの必要がない。第1のフロアパネルは、固定フロアパネルと呼ばれる場合もある。しかしながら、第2のフロアパネルは、固定も又必要とする場合のあることは自明である。しかしながら、これは、面ファスナ(マジックテープ式固定具)又は他の取り外しが容易な固定手段によって好都合に実施できる。
【0044】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な一実施形態では、キャリヤ要素は、一体であり、特に、押し出し断面材である。肩表面を含む異形レールは、一体形のものであるのが良い。キャリヤ要素は、全体を複数個のチャンバを備えた中空断面材として形成でき、この場合、異形レール及び肩表面は、キャリヤ要素上に一体に形成される。しかしながら、基本的には、キャリヤ要素を個々のコンポーネントから構成することも又可能である。
【0045】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な一実施形態では、隣り合う異形レール相互間に且つこれらと平行に延びるケーブルダクトは、一方の側が開放しているのが良い。1本又は2本以上のケーブルダクトに容易にアクセスできる。
【0046】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な一実施形態では、鉄道車両客車が可変シートレイアウトを備えると共に鉄道車両客車の長手方向に延びるキャリヤ要素を2つ有し、キャリヤ要素には、室内装備ユニットが固定され、第1及び第2のフロアパネル又は上述のフロア構造体がキャリヤ要素で支持され、室内装備ユニットは、取り外し可能且つ/或いは変位可能な仕方でキャリヤ要素に固定される。
【0047】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な一実施形態では、フロア構造体を組み立てる方法が、
少なくとも1つのキャリヤ要素を鉄道車両客車の客車ボディシェルに設けられている制動要素に固定するステップを有し、キャリヤ要素は、キャリヤ要素の長手方向に延びると共にキャリヤ要素の横方向に互いに間隔をおいて設けられた少なくとも2本の異形レールを有し、
第1のフロアパネルをキャリヤ要素に固定するステップを有し、
室内装備ユニットの少なくとも1つのフットブラケットをキャリヤ要素に固定するステップを有し、この方法は、
まず最初に、第1のフロアパネルを鉄道車両客車の長手方向において異形レールに隣接してキャリヤ要素に固定するステップを有し、
次に、第2のフロアパネルを鉄道車両の長手方向において第1のフロアパネル相互間でキャリヤ要素に固定し、長手方向における異形レールの少なくとも一部分を自由なままにし、少なくとも1つのフットブラケットをこの一部分に固定するステップを有することを特徴とする。
【0048】
室内装備ユニットのフットブラケットは、代表的には、第2のフロアパネルを布設する前に固定される。
【0049】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な一実施形態では、フロア内張りに関し、少なくとも1つの第1のフロアパネルを覆っている第1の表面部分及び少なくとも1つの第2のフロアパネルを覆っている第2の表面部分を所定サイズに切断して第1及び第2のフロアパネルに固定し、表面部分の縁部をオーバーラップすることなく且つ密封的に互いに連結する。
【0050】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な一実施形態では、室内装備ユニットの配置の変更は、次のステップ、即ち、
第2のフロアパネルを取り外すステップ(第1のフロアパネルは、定位置のままである)、
フットブラケットをキャリヤ要素から解除するステップ、
フットブラケットをキャリヤ要素に沿って変位させるステップ又はフットブラケットを交換するステップ、
変位され又は交換されたフットブラケットをキャリヤ要素に固定するステップ、
第2のフロアパネルを取り付けるステップ(第2のフロアパネルの寸法は、鉄道車両の長手方向における固定されたフットブラケットの間隔に合わされている)によって実施される。
【0051】
本明細書において説明する他の実施形態と組み合わせ可能な一実施形態では、第1のフロアパネルを取り外すためには、まず最初に、フロア内張りを第1及び第2の表面部分のエッジで切断し又は裁断し、設置状態の第2のフロアパネルに合わせて構成されたフロア内張り表面部分を第2のフロアパネルに取り付け、フロア内張りの第1及び第2の表面部分のエッジ(エッジとエッジを突き合わせて配置されている)を互いに連結する。
【0052】
さらに、各フットブラケットについてカバー又は仕上げ材を設けるのが良く、このカバーは、フットブラケットをその長手方向軸線の方向に包囲すると共にキャリヤ要素への固定部を覆う。このようなカバーは、フットブラケットの組み立て後に取り付けられ、分解プロセスの際に、フットブラケットを取り外す前に取り外される。
【0053】
全体として、内部コンポーネントの融通性の高い構成が可能である。特に、フロアを持ち上げることなくシート配置構成を短時間で変えることができる。シートピッチを変更する場合、第2のフロアパネルを取り外す必要があるに過ぎない。例えば1等から2等への変更又はその逆の変更を行う場合においてシートピッチを維持すると共にシートアレンジメントを単に交換する場合においても、第2のフロアパネルは、定位置に位置したままであって良い。
【0054】
キャリヤ要素により、シートはシングルシートであれダブルシートであれトリプルシートであれいずれにせよこのこととは無関係に、列をなすシートを1つの脚だけでフロアに固定することができる。客車側壁への固定手段は、不要である。
【0055】
本明細書において提案するフロア構造体は、特に、液体及び埃が侵入しないよう封止された設計を可能にする。この場合、客室内のフロア領域は、全体にわたって一様なフロア内張りを有するよう構成されるのが良い。着座領域におけるフロア上の覆い断面材又はエッジは、不要であり、従って目に見えない。
【0056】
乗客シートの所望のケーブル類を、1本又は2本以上のケーブルダクトに納めた状態でフロアの下に布設でき、そしてシート脚を介して乗客シートまで導くことができる。
【0057】
キャリヤ要素は、客車ボディシェルからのフロア装備品を含むフロアの音響切り離し及び車体によって運ばれる音の切り離しを可能にする。
【0058】
本明細書において提案するフロア構造体により、以下の設計要件、即ち、
乗客シート(シングルシート、シート列)の脚が固定される客車長手方向におけるフロア領域に設けられたレール形成キャリヤ要素付きフロアブラケットによって可変シート配置構成を可能にするという要件、
シートの所望の列又は個々のシートから脚を介するフロアブラケットへの力の安定した伝達(これは、荷重シフトをものともしない)を保証するという要件、
フロア領域の封止設計を達成すること、
目に見えるカバーを備えることがないようフロアを設計するという要件を部分的に又は全て満足させることができる。
【0059】
フロア構造体は、出費を僅かしか必要としない可変シート列配置構成と連続的に平坦であり且つ一様でありしかも封止されたフロア内張りの隊列に対する気の利いた解決手段を提供する。
【0060】
本明細書において提案するキャリヤ要素及び提案されるフロア構造体を特に、市内及び域内乗客輸送並びに長距離及び高速乗客輸送のための客室を備えた鉄道車両客車に利用できる。
【0061】
添付の図面は、実施形態を示し、本明細書の説明と一緒になって、本発明の原理を説明するのに役立つ。図面の要素は、互いに対して相対的であり、必ずしも縮尺通りではない。同一の参照符号は、対応した同一の部分を示すために用いられている。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】一実施形態としてのフロア構造体の3次元図である。
【図2】一実施形態としてのフロア構造体の3次元図である。
【図3】一実施形態としてのフロア構造体の2次元図である。
【図4】一実施形態としてのキャリヤ要素へのシート脚の固定の仕方を示す図である。
【図5】客車ボディシェルに固定された別の実施形態としてのキャリヤ要素の断面図である。
【図6】客車ボディシェルに固定された別の実施形態としてのキャリヤ要素の断面図である。
【図7】一実施形態としてのフロア構造体を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0063】
図1〜図3は、第1の実施形態としてのフロア構造体を示している。
【0064】
鉄道車両客車の客車ボディシェル250は、例えば、一体設計のものであり且つアルミニウムで作られるのが良い。鉄道車両客車の内部領域は、種々の乗客等級を備えた大収容力客車として構成されるのが良い。シートアレンジメントは、中央通路の左側及び右側に1つのシート、2つのシート又はオプションとして3つのシートを備えたシート列の形態をしているべきである。テーブルを、オプションとして設けることができる。本明細書において説明するフロア構造体は、融通性の極めて高いレイアウトの実現を可能にする。
【0065】
フロア構造体200は、鉄道車両客車の長手方向に延びる少なくとも1つのキャリヤ要素100を有する。この場合、長手方向及び横方向は、鉄道車両客車における方向であり、キャリヤ要素100の長手方向は、設置状態では、鉄道車両客車の長手方向に一致する。この実施形態では、キャリヤ要素100は、横方向において互いに間隔をおいて設けられると共にこの場合上方に開いたスロットを備えるC字形レールの形態をした3本のC字形断面材又はC形材130,132を有する。この場合、C形材130,132は、異形レールを形成する。ステップ又は段部の形態をした肩表面115が2つの外側C形材132上に形成されている。フランジのようにボックス状中空断面材の形態をした肩表面115は、それぞれ外方に向くよう外側C形材132に隣接して位置している。
【0066】
キャリヤ要素100は、所要の安定性、剛性及び強度を備えたキャリヤ要素100を提供するために複数個の適当に成形された中空断面材から一体に形成されるのが良い。代表的には、押し出しアルミニウム断面材が用いられる。特に、横方向における強度を保証することが求められている。この場合、個々の中空断面材は、荷重を受けたり伝達したりすることができるのにも適するのが良い共通側面を有する。
【0067】
特に図3で理解できるように、キャリヤ要素100を、肩表面115を形成する中空断面材で客車ボディシェル250に固定するのが良い。肩表面115の中空断面材は、鉄道車両客車の横方向で見て、互いに最も遠くに位置しているので、横方向における荷重を受ける最大能力の実現が可能になる。さらに、固定は、構造的にそれぞれの外側C形材132のすぐ近くで行われて荷重の直接的伝達がこの場所でも保証されるようになっている。
【0068】
客車ボディシェル250は、押し出しアルミニウム断面材として形成され、横方向ストラット構造が内部に位置した2つの向かい合った壁を備えたベースパネルを有するのが良い。ベースパネルは、キャリヤ要素100のキャリヤを構成している。ベースパネル上には、好ましくは一体に形成されると共に内方に向いたC字形ブラケット170が形成されている。各キャリヤ要素100について、C字形ブラケット170の長手方向に配置された2つの列が設けられている。これら列の間隔は、肩表面115の側方間隔にほぼ一致している。変形例として、C字形ブラケット170は、長手方向において連続してベースパネルに一体に形成されても良い。
【0069】
音響切り離しのためのゴムインサート160が各C字型ブラケット170中に挿入されている。これらゴムインサート160は、この実施形態では弾性支えを構成し、これらゴムインサートは、欧州特許第1112206(B1)号明細書に記載された支持要素と同様に形成されるのが良い。C字形ブラケット170は又、欧州特許第1112206(B1)号明細書に記載されているように設計されても良い。欧州特許第1112206(B1)号明細書を参照により引用し、C字形ブラケット及びゴムインサートの構成に関する開示内容を本明細書の一部とする。
【0070】
ゴムインサート160は、固定要素150の係合ウェブが嵌め込まれた受け入れ溝を有し、これら係合ウェブは、この実施形態では、ほぼH形状のものである。固定要素150は、横方向ウェブ152によって互いに一体に連結されている2つのウェブ151,153を有する。ウェブ153は、ゴムインサートによって包囲された丸形端部を有している。
【0071】
ゴムインサート160の外側輪郭は、C字形ブラケット170の内側輪郭にほぼ一致し、C字形ブラケットは、互いに対して角度をなした側壁を有し、これら側壁は、ほぼ凹形状のものであり且つ互いの方へ向いた内壁を有する。ゴムインサート160は、垂直方向及び横方向に固定作用をもたらすよう内面で支持されている。ゴムインサート160及び固定要素150を圧力下でC字形ブラケット170の開放側部からC字形ブラケット170中に挿入することができる。固定要素150は、キャリヤ要素100に取り外し可能に連結されているので、組み立てのため、まず最初に、固定要素150をゴムインサート160と一緒に個々にC字形ブラケット中に挿入し、次に、キャリヤ要素100を例えば固定要素150にねじ止めして固定する。高さ補償が必要な場合、例えばアルミニウムパネルの形態をした中間層118を固定要素150とキャリヤ要素100との間に挿入するのが良い。
【0072】
C字形ブラケット170は、鉄道車両の長手方向に互いに間隔を置いた状態で配置するのが良い。長手方向に隣接して位置したC字形ブラケット170相互間の間隔及び長手方向におけるC字形ブラケットの長さを、受ける荷重に従って設定するのが良い。キャリヤ要素100は、長手方向において複数個のC字形ブラケット170に固定される。本明細書において説明するキャリヤ要素100の固定の結果として、客車ボディシェルからのベース領域における構造体の音響切り離し及び振動切り離しが達成される。
【0073】
長手方向における滑りを阻止するため、スペーサを挿入状態の固定要素150相互間に配置するのが良く、これらスペーサは、固定要素150を互いに間隔を置いた状態に保つ。スペーサは、例えば、連続レールの形態をしたC字形ブラケット170中にクランプするのが良く又は長手方向に隣接して位置するC字形ブラケット170相互間に固定的にクランプするのが良い。
【0074】
図2は、下側から見たフロア構造体を示しているが、より分かりやすくするために、C字形ブラケットを備えた客車ボディシェルは図示されていない。
【0075】
図1〜図3に示されたキャリヤ要素100は、中央C形材130によって横方向の間隔を保持されると共にケーブル類を案内するのに役立つ2本のケーブルダクト120を更に有し、電流導通給電ケーブルが信号伝送ケーブルとは別個に案内される。
【0076】
ケーブルダクト120とそれぞれの外側C形材との間に内側肩表面134が設けられ、これら内側肩表面は、この場合、第2のフロアパネル220の固定のために用いられる。内側肩表面134は、フランジのように外側C形材132の側壁に取り付けられ、次に、それぞれのケーブルチャネルの側壁に合体している。外側C形材の側部へのステップ又は段部が作られている。内側肩表面134は、C形材130,132の支え面131に対して下方に凹んでいるが、外側肩表面115までは凹んでいない。
【0077】
2つの上方に開いたケーブルダクト120及びこれら相互間に設けられたC形材130を有する形態の結果として、キャリヤ要素100を断面で見てW形であると呼ぶこともでき、この場合、Wの2本の外側の脚は、外側C形材132により形成されている。2つの外側C形材132は、横方向においてこれらのそれぞれの中心線に関し約20cm〜30cm離れて位置するのが良い。比較的大きな横荷重が予想される場合、間隔をそれに応じて合わせるのが良い。
【0078】
キャリヤ要素100は、肩表面115を形成している中空断面材相互間で、全体が保護内壁を備えた中空断面材として形成されている。C形材130,132は、キャリヤ要素に一体に形成されている。このため、剛性及び安定性が極めて高いキャリヤ要素100を全体として得られる。
【0079】
スライドブロック140がC形材130,132中に挿入されている。乗客シートの各固定のため、各C形材に関し、2つの雌ねじを備えた1つのスライドブロック140が用いられる。スライドブロック140の長さは、要求される強度及び荷重対応能力に合わせて定められている。図示の実施形態では、スライドブロック140は、外側C形材132中にのみ配置され、この場合、ダブルシートの固定に役立つ。シングルシートの場合、1つの外側C形材132及び中間C形材130を用いれば十分である。シングルシートは、横方向に、中央C形材130と外側C形材132との間の間隔だけオフセットしているのが良い。
【0080】
第1のフロアパネル210がキャリヤ要素100の外側肩表面115上に載っている。フロアパネルは、例えば接着により又はねじを用いて適切に固定される。図3で理解できるように、第1のフロアパネル210は、多層構造のものであるのが良い。この場合、キャリヤ層として役立ち且つ必要な場合、高さ補償要素若しくは制動要素117、例えばゴム支えが介在させた肩表面115上に載るエッジ層又はカバー層211が設けられている。エッジ層又はカバー層211は、例えば、樺の木合板パネルであるのが良い。エッジ層又はカバー層211の下には、エッジ層又はカバー層211の縁から間隔を置いた状態で、断熱層又は一体形フロアヒータであるのが良い別の層が取り付けられている。断熱層174は、キャリヤ要素100の下面に取り付けられても良い。
【0081】
エッジ層又はカバー層211のトップサイドは、フロア内張り213で内張りされるのが良い。図1及び図3で理解できるように、第1のフロアパネル210は、キャリヤ要素100の方へ向いたこれらのエッジに、それぞれ、1つのステップ又は段部212を有し、このステップは、長手方向に延び、その深さは、第2のフロアパネル220の厚さにほぼ一致している。第1のフロアパネル210よりも薄い第2のフロアパネル220は、第1のフロアパネル210のこのステップ上に位置し、トップサイド端が第1のフロアパネル210と面一をなしている。同様に、第2のフロアパネル220をフロア内張り223で内張りするのが良い。
【0082】
第2のフロアパネル220は、更に、C形材130,132の支え面131上に載っている。内側肩表面134は、マジックテープ式ストリップ135で内張りされるのが良く、このマジックテープ式ストリップは、第2のフロアパネル220の下面に被着された対応のマジックテープ式ストリップと一緒になって、第2のフロアパネル220をしっかりと保持するのに役立つ。第2のフロアパネル220は、固定的に取り付けられた第1のフロアパネル210によって側方に滑るのが阻止される。変形例として、第2のフロアパネル220は、C字形レールにスナップ嵌め可能なクリップによってキャリヤ要素100に固定されても良い。肩表面134は、この場合、これ又高さ補償可能にする弾性支え135で内張りされるのが良い。
【0083】
第1のフロアパネル210と第2のフロアパネル220は、互いに異なる厚さを有しているので、外側肩表面115と内側肩表面134は、厚さの差を考慮に入れるために異なる高さに配置されている。
【0084】
第1のフロアパネル210は、フロア内張り213の第1の表面部分213aで内張りされている。これとは対照的に、第2のフロアパネル220は、フロア内張り213の第2の表面部分223aで内張りされている。これら表面部分213a,223aのエッジは、エッジとエッジが突き合わされた状態で位置し、そして連続フロア表面を形成するようオーバーラップしないで且つ密封的に互いに連結されている。
【0085】
図2で理解できるように、第1のフロアパネル210は、互いに僅かにオーバーラップするために横方向に延びるこれらのエッジが面取りされている。変形例として、さねはぎ継ぎ又は連結方式の採用も又可能である。相互オーバーラップ及び支持がフロアパネル210,220の全ての間で達成され、汚れ及び水分に対して封止された閉鎖が可能である。封止用接着剤を更に用いるのが良い。
【0086】
組み立て状態の乗客シート相互間の領域は、第2のフロアパネル220で覆われ、これら第2のフロアパネルは、これに対応して、長手方向に所定サイズに合わせて切断され、乗客シートの固定領域は、自由なまま残されている。
【0087】
フロアパネルの全て、即ち、固定された第1のフロアパネル210及び可変状態の第2のフロアパネル220は、連続プラスチックフロア内張りで覆われている。第2のフロアパネル220のフロア内張りは、第1のフロアパネル210のフロア内張りに封着(seal)されると共に溶接されている。
【0088】
フロア領域全体は、長手方向に延びる3つの区分710,720,730に分割されている。これは、例えば、図7で理解できる。断面で見て、第1のフロアパネル720の1つは、この場合概略的に示されているに過ぎないキャリヤ要素700相互間に位置し、キャリヤ要素は、鉄道車両客車の長手方向に延びると共に左側及び右側シート列を構成している。他の2つの第1のフロアパネル710,730は、それぞれ、左側及び右側側壁740とこれらの最も近くに位置するキャリヤ要素700との間に位置している。第1のフロアパネル710,720,730は、キャリヤ要素700の付近で互いに間隔をおいて配置されている。この場合、フロアは、第2のフロアパネル750で形成される。
【0089】
乗客シートの固定の仕方が一例として図4に示されている。図4は、ほぼBB′線に沿って取った断面を示し、これに対し、図3は、ほぼAA′線に沿った断面を示している。フットブラケット280は、キャリヤパネル281を備えた支持ビームを有し、キャリヤパネルは、ねじ連結部284によってスライドブロック140に連結され、キャリヤパネル281は、C形材、この場合、具体的には外側C形材132の上側支え面131にしっかりとクランプされている。この場合、キャリヤパネル281も又、中間C形材130上に載っている。
【0090】
支持ビーム又は支持体282がキャリヤパネル281に連結され、このような支持ビーム又は支持体は、1つ又は2つ以上のリブ283、例えば4つのリブによってキャリヤパネル281に当てた状態で支持されている。フットブラケット280の仕上げ材285が破線で示されている。仕上げ材285は、第1のフロアパネル210上に載せられ、フロアパネル相互間で自由な状態に残されている開口部を閉鎖している。さらに、仕上げ材285は、この場合も又開口部を閉鎖するよう第2のフロアパネル220上にも載せられている。
【0091】
シート列及び/又は乗客シート及び/又はテーブルのレイアウトの変更を行う場合、第1のフロアパネル210と第2のフロアパネル220との間の溶接箇所を切断し、必要な場合、第2のフロアパネル220を取り外す。単に点検を行う場合、フットブラケット280の仕上げ材185だけを取り外せば十分である。フットブラケット280及びケーブル類へのアクセスが可能になる。レイアウトの変更を実施した後、場合によっては変更されるシートピッチに合った新たな第2のフロアパネル220を挿入する。
【0092】
図5及び図6は、2本のC形材530のみを有するキャリヤ要素500を備えたフロア構造体の実施形態を示し、C形材530は、互いに間隔をおいて設けられ、これらC形材相互間には、C形材に平行に延びるケーブルダクト520が配置されている。この場合も又、第1のフロアパネル510は、キャリヤ要素500の外側肩表面515で支持される。同様にステップ又は段部512を備えた第1のフロアパネル510で第2のフロアパネル520が支持されている。キャリヤ要素500は、上述したように客車ボディシェルに消音方式で固定されるのが良い。
【0093】
一実施形態では、フロア構造体は、鉄道車両客車の横方向に互いに間隔をおいて設けられると共に鉄道車両の長手方向に延び、しかも鉄道車両の客車ボディシェルに固定された2つのキャリヤ要素を有し、これら2つのキャリヤ要素には室内装備ユニットのフットブラケットが固定され、第1のフロアパネルの少なくとも1枚は、両方のキャリヤ要素で支持されている。
【0094】
一実施形態では、1つ又は複数のキャリヤ要素は、音響切り離しのための弾性支えを介して客車ボディシェルの一部をなすビームに固定される。
【0095】
一実施形態では、室内装備ユニットのフットブラケットは、それぞれ、1つのキャリヤ要素又はキャリヤ要素の1つに固定された1本の支持ビーム及びこの支持ビームを包囲すると共に第1及び第2のフロアパネル上に載っている仕上げ材を有する。
【0096】
一実施形態では、第2のフロアパネルは、1つのキャリヤ要素又は複数個のキャリヤ要素に取り外し可能に固定される。
【0097】
一実施形態では、キャリヤ要素は、一体であり、特に、押し出し断面材である。
【0098】
一実施形態では、隣り合う異形レール相互間に且つこれらに平行に延びるケーブルダクトは、一方の側が開いている。
【0099】
一実施形態では、本発明の方法は、更に、
‐第1のフロアパネルの取り外しのため、第1に、フロア内張りを第1及び第2の表面部分のエッジで切断し、
‐取り付けられた第2のフロアパネルに適合したフロア内張りの第2の表面部分をこれら第2のフロアパネルに取り付け、
‐フロア内張りの第1及び第2の表面部分のエッジとエッジを突き合わせた状態で位置するエッジを互いに連結することを特徴としている。
【0100】
特定の実施形態を図示すると共に本明細書において説明したが、本発明の保護範囲から逸脱することなく、図示の実施形態を適当に改造することは、本発明の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0101】
100,500,700 キャリヤ要素
115,515 外側肩表面
117 高さ補償要素/制動要素
118 中間層/高さ補償要素
120,520 ケーブルダクト
130,132,530 C形材(C字形断面材)
131 C形材の支え面
134 内側肩表面
135 マジックテープ式ストリップ/支え
140 スライドブロック/スライドレール
150 固定要素
151 長手方向ウェブ
152 横方向ウェブ
153 係合ウェブ
160 弾性支持体
170 C字形ホルダ
174 断熱層
200 フロア
210,510,710,720,730 第 1のフロアパネル
211 エッジ層又はカバー層
212,512 ステップ又は段部
213,223 フロア内張り
213a,223a 表面部分
220,520,750 第2のフロアパネル
250 客車ボディシェル
280 フットブラケット
281 キャリヤパネル
282 支持体/支持ビーム
283 リブ
284 ねじ
285 仕上げ材
740 側壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両客車のフロア構造体(200)であって、前記鉄道車両客車の長手方向に延びると共に前記鉄道車両客車の客車ボディシェル(250)に固定された少なくとも1つのキャリヤ要素(100)を有し、前記キャリヤ要素には室内装備ユニットのフットブラケット(280)が固定され、前記キャリヤ要素(100)は、第1のフロアパネル(210)を支持した側方外方に向いている肩表面(115)を有するフロア構造体において、
前記キャリヤ要素(100)は、第2のフロアパネル(220)によって覆われ、該第2のフロアパネルは、前記キャリヤ要素(100)によって支持された隣り合う前記第1のフロアパネル(210)相互間に配置され、前記第2のフロアパネル(220)の少なくとも幾つかは、前記鉄道車両客車の長手方向に互いに間隔をおいて配置され、前記キャリヤ要素(100)の前記室内装備ユニットの前記フットブラケット(280)の固定のために前記キャリヤ要素(100)へのアクセスを可能にしている、
ことを特徴とするフロア構造体。
【請求項2】
前記キャリヤ要素(100)の前記肩表面(115)で支持された前記第1のフロアパネル(210)は、それぞれ前記キャリヤ要素(100)の方へ向いた前記第1のフロアパネルの縁部に、前記鉄道車両の長手方向に延びる段部(212)を有し、前記キャリヤ要素(100)を覆っている前記第2のフロアパネル(220)は、前記段部で支持されている、
請求項1記載のフロア構造体。
【請求項3】
前記キャリヤ要素(100)は、前記キャリヤ要素(100)の長手方向に延びると共に前記キャリヤ要素(100)の横方向に互いに間隔をおいて設けられた少なくとも2本の異形レール(130,132)を有し、前記室内装備ユニットの前記フットブラケット(280)は、前記異形レールに固定されている、
請求項1又は2記載のフロア構造体。
【請求項4】
前記キャリヤ要素(100)は、前記キャリヤ要素(100)の長手方向に延びると共にそれぞれ前記キャリヤ要素(100)の横方向に互いに間隔をおいて設けられた3本の異形レール(130,132)を有し、各フットブラケット(280)は、キャリヤ要素(100)の少なくとも2本の異形レール(130,132)に固定されている、
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のフロア構造体。
【請求項5】
前記キャリヤ要素(100)の前記異形レール(130,132)は、全体として、前記第2のフロアパネル(220)の下に配置されている、
請求項3又は4記載のフロア構造体。
【請求項6】
フロア内張り(213)が前記第1及び前記第2のフロアパネル(210,220)上に施され、前記フロア内張りは、それぞれ少なくとも1枚の第1のフロアパネル(210)を覆っている第1の表面部分(213a)を有し、前記フロア内張りは、それぞれ少なくとも1枚の第2のフロアパネル(220)を覆っている第2の表面部分(223a)を有し、前記表面部分(213a,223a)の縁部は、オーバーラップすることなく且つ密封的に互いに連結されている、
請求項1ないし5のいずれか1項に記載のフロア構造体。
【請求項7】
前記室内装備ユニットは、前記フットブラケットによってのみ1つ又は2つ以上の前記キャリヤ要素(100)に力をかけないロック方式で固定され、前記フットブラケットは、取り外し可能であると共に/或いは変位可能である、
請求項1ないし6のいずれか1項に記載のフロア構造体。
【請求項8】
特に請求項1ないし7のいずれか1項に記載の鉄道車両のフロア構造体用のキャリヤ要素であって、前記キャリヤ要素(100)の長手方向に延びると共に室内装備ユニットのフットブラケットの固定に役立つ異形レール(130)を有し、前記キャリヤ要素(100)は、鉄道車両客車の客車ボディシェルに固定可能である、キャリヤ要素において、
前記キャリヤ要素(100)は、前記キャリヤ要素(100)の長手方向に延びると共に前記キャリヤ要素(100)の横方向に互いに間隔をおいて設けられた少なくとも2本の異形レール、特にC字形レール(130,132)を有し、少なくとも1本のケーブルダクト(120)が前記異形レール相互間で前記キャリヤ要素(100)の長手方向に延び、前記異形レール(130,132)は、前記異形レールが前記キャリヤ要素(100)に取り付けられたときに前記フットブラケットを支持する支え面(131)を有する、
ことを特徴とするキャリヤ要素。
【請求項9】
前記横方向で見て、前記キャリヤ要素(100)は、各外側異形レール(130)に隣接して、それぞれ、第1のフロアパネル(210)を支持する1つの側方外方に向いた肩表面(115)を有する、
請求項8記載のキャリヤ要素。
【請求項10】
前記キャリヤ要素(100)は、前記キャリヤ要素(100)の長手方向に延びると共にそれぞれ前記キャリヤ要素(100)の横方向に互いに間隔をおいて設けられた3本の異形レール(130,132)を有し、これらの3本の異形レール(130,132)間のそれぞれに、1本のケーブルダクト(120)が、前記キャリア要素(100)の長手方向に延びている、
請求項8又は9記載のキャリヤ要素。
【請求項11】
前記キャリヤ要素(100)は、外側異形レール(132)に隣接して、それぞれ、前記異形レールを覆っている第2のフロアパネル(220)の支持及び/又は固定のために1つの内方に向いた肩表面(134)を有する、
請求項8ないし10のいずれか1項に記載のキャリヤ要素。
【請求項12】
可変シートレイアウトを備えた鉄道車両客車であって、前記鉄道車両客車の長手方向に延びる請求項8ないし11のいずれか1項に記載のキャリヤ要素(100)を2つ有し、前記キャリヤ要素には、室内装備ユニットが固定され、第1及び第2のフロアパネル(210,220)又は請求項1〜11のうちいずれか一に記載のフロア構造体が前記キャリヤ要素で支持され、前記室内装備ユニットは、取り外し可能且つ/或いは変位可能な仕方で前記キャリヤ要素(100)に固定されている、
鉄道車両客車。
【請求項13】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の鉄道車両のフロア構造体を組み立てる方法であって、
少なくとも1つのキャリヤ要素(100)を鉄道車両客車の客車ボディシェル(250)に設けられている制動要素(160,170)に固定するステップを有し、前記キャリヤ要素(100)は、前記キャリヤ要素(100)の長手方向に延びると共に前記キャリヤ要素(100)の横方向に互いに間隔をおいて設けられた少なくとも2本の異形レールを有し、
第1のフロアパネル(210)を前記キャリヤ要素(100)に固定するステップを有し、
室内装備ユニットの少なくとも1つのフットブラケット(280)を前記キャリヤ要素(100)に固定するステップを有する、方法において、
まず最初に、前記第1のフロアパネル(210)を前記鉄道車両客車の長手方向において前記異形レール(130,132)に隣接して前記キャリヤ要素(100)に固定するステップを有し、
次に、第2のフロアパネル(220)を前記鉄道車両の長手方向において前記第1のフロアパネル(210)相互間で前記キャリヤ要素(100)に固定し、前記長手方向における前記異形レール(130,132)の少なくとも一部分を自由なままにし、前記少なくとも1つのフットブラケットを該一部分に固定するステップを有する、
ことを特徴とする方法。
【請求項14】
前記フロア内張りに関し、少なくとも1つの第1のフロアパネル(210)を覆っている第1の表面部分(213a)及び少なくとも1つの第2のフロアパネル(220)を覆っている第2の表面部分(223a)を所定サイズに切断して前記第1及び前記第2のフロアパネル(210,220)に固定し、前記表面部分(213a,223a)の縁部をオーバーラップすることなく且つ密封的に互いに連結する、
請求項13記載の方法。
【請求項15】
前記室内装備ユニットの配置の変更は、次のステップ、即ち、
第2のフロアパネル(220)を取り外すステップ(前記第1のフロアパネル(210)は、定位置のままである)、
前記フットブラケットを前記キャリヤ要素(100)から解除するステップ、
前記フットブラケットを前記キャリヤ要素(100)に沿って変位させるステップ又は前記フットブラケットを交換するステップ、
前記変位され又は交換されたフットブラケットを前記キャリヤ要素(100)に固定するステップ、
第2のフロアパネル(220)を取り付けるステップ(前記第2のフロアパネルの寸法は、前記鉄道車両の長手方向における前記固定されたフットブラケットの間隔に合わされている)によって実施される、
請求項13又は14記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図7】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−60192(P2013−60192A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−202701(P2012−202701)
【出願日】平成24年9月14日(2012.9.14)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.マジックテープ
【出願人】(508352595)ボンバルディアー トランスポーテーション ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (8)