鉄道車両用側扉制御装置
【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道車両の側扉の開閉を制御するための鉄道車両用側扉制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄道車両の側面に設けられた乗客乗降口は、鉄道車両用側扉装置によって開閉される。このような側扉装置では、空気圧によって側扉の作動力を得る在来の空気式のものが一般的であったが、最近では、低コスト、メンテナンスフリー及び艤装の簡素化等のメリットから、電気式ドアエンジン、例えば電動モータを用いたものが普及している。
【0003】
上記のような電気式の側扉の開閉を制御する、従来の制御装置として、特開平9−301161号公報に開示された鉄道車両用側扉制御装置がある。この従来の鉄道車両用側扉制御装置は、当該制御装置のマイコン化により、その機能を高度化していた。さらに、この従来の鉄道車両用側扉制御装置は、各種の指令及び検出信号を多重化することにより、マイクロコンピュータの誤動作による側扉の誤作動を防止して乗客に対する安全性を確保していた。具体的には、この従来の鉄道車両用側扉制御装置では、例えば側扉の開閉指令信号を二重系として、一方の系と他方の系とのそれぞれの開閉指令信号が一致した場合にのみ、有効な指令であると判断し、電動モータを駆動して側扉を開成又は閉成していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来の鉄道車両用側扉制御装置では、二重系とした開閉指令信号が互いに一致しない場合、当該制御装置に故障が生じていると判断し、電動モータへの給電を禁止していた。このため、この従来の鉄道車両用側扉制御装置では、二重系とした開閉指令信号が互いに不一致な状態である場合は、制御対象の側扉が開閉されずに、乗客は他の側扉に迂回することを余儀なくされた。このような乗客に対する不便やサービスの低下(車両の運行阻害)を解消するために、この従来の鉄道車両用側扉制御装置では、電動モータへの給電を禁止した制御装置に代えて、例えば隣接する他の側扉用の制御装置を用いて、両方の側扉を制御することも提案している。しかし、他の制御装置が故障を生じたものに代わって制御するためには、それら互いに故障発生時に代替し合う制御装置の間を故障発生時のための信号線で接続する必要がある。また、乗客の安全性を確保するためには、故障側のドア状態を他の正常な制御装置が検知するための信号線をもそれらの制御装置間に設ける必要があり、より複雑化してしまう。
【0005】
上記のような従来の問題点に鑑み、本発明は、多重系としたいくつかの信号系に故障が生じた場合でも、側扉の作動を確保して車両の運行を阻害しない鉄道車両用側扉制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の鉄道車両用側扉制御装置は、鉄道車両の側扉の開閉を制御するための装置であって、前記側扉を作動させるための扉動作指令信号を入力して、複数の扉動作指令信号に多重化し出力する入力変換回路と、前記側扉を駆動するための電動モータに駆動電流を供給するための駆動手段と、前記入力変換回路からの多重化した複数の扉動作指令信号を入力して、その入力した複数の扉動作指令信号に従って、前記駆動手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記複数の扉動作指令信号のうち、少なくとも1つの扉動作指令信号がON状態に変化した時点から所定の設定時間以内に、残りの扉動作指令信号がON状態に変化しないことを検知した場合、前記少なくとも1つの扉動作指令信号のON状態からOFF状態への立ち下がり、または前記残りの扉動作指令信号に含まれたいずれか1つの扉動作指令信号のON状態からOFF状態への立ち下がりに基づいて、前記電動モータを駆動するための制御信号を駆動手段に出力するものである(請求項1)。
【0007】
上記のように構成された鉄道車両用側扉制御装置(請求項1)では、複数の扉動作指令信号のうち、少なくとも1つの扉動作指令信号がON状態に変化した時点から所定の設定時間以内に、残りの扉動作指令信号がON状態に変化しないことを検知した場合、制御手段は少なくとも1つの扉動作指令信号のON状態からOFF状態への立ち下がり、または前記残りの扉動作指令信号に含まれたいずれか1つの扉動作指令信号のON状態からOFF状態への立ち下がりに基づいて、電動モータを駆動するための制御信号を駆動手段に出力している。これにより、制御手段は、少なくとも1つの扉動作指令信号、または残りの扉動作指令信号に含まれたいずれか1つの扉動作指令信号がON状態からOFF状態に変化することを検知して、ON状態からOFF状態に変化しない信号系に故障が生じたと判断することができる。
【0008】
また、上記鉄道車両用側扉制御装置(請求項1)において、前記制御手段は、前記複数の扉動作指令信号のうち、少なくとも1つの扉動作指令信号がON状態に変化した時点から前記設定時間以内に、残りの扉動作指令信号がON状態に変化しないことを検知し、さらにその残りの扉動作指令信号に含まれたいずれか1つの扉動作指令信号が前記設定時間以降の時点でON状態に変化し、その後にOFF状態に変化したことを検知した場合、ON状態が保持されるON保持故障が前記少なくとも1つの扉動作指令信号の信号系に生じたと判断してもよい。(請求項2)。
この場合、制御手段は、上記ON保持故障を生じたと判断した信号系の扉動作指令信号を除いて、他の正常な信号系の扉動作指令信号により、側扉を制御することができる。
【0009】
また、上記鉄道車両用側扉制御装置(請求項1)において、前記制御手段は、前記複数の扉動作指令信号のうち、少なくとも1つの扉動作指令信号がON状態に変化した時点から前記設定時間以内に、残りの扉動作指令信号がON状態に変化しないことを検知し、さらに前記少なくとも1つの扉動作指令信号が前記設定時間以降の時点でOFF状態に変化したことを検知した場合、OFF状態が保持されるOFF保持故障が前記残りの扉動作指令信号の信号系に生じたと判断してもよい(請求項3)。
この場合、制御手段は、上記OFF保持故障を生じたと判断した信号系の扉動作指令信号を除いて、他の正常な信号系の扉動作指令信号により、側扉を制御することができる。
【0010】
また、上記鉄道車両用側扉制御装置(請求項2または3)において、前記制御手段は、前記ON保持故障または前記OFF保持故障を生じたと判断した信号系と、その判断した故障の内容とを少なくとも含んだ故障情報をメモリに記録してもよい(請求項4)。
この場合、故障を生じたと判断した信号系を判別して、その信号系の故障を作業員等が事後確認することができる。
【0011】
また、上記鉄道車両用側扉制御装置(請求項1)において、前記制御手段は、前記複数の扉動作指令信号のうち、少なくとも1つの扉動作指令信号がON状態に変化した時点から前記設定時間以内に、残りの扉動作指令信号がON状態に変化しないことを検知した場合、前記残りの扉動作指令信号に含まれたいずれか1つの扉動作指令信号が前記設定時間以降の時点でON状態に変化し、その後に前記いずれか1つの扉動作指令信号がOFF状態に変化することを検知するまでの間、前記制御信号の出力を禁止してもよい(請求項5)。
この場合、制御手段は、上記少なくとも1つの扉動作指令信号の信号系にON保持故障が生じた場合でも、残りの扉動作指令信号に含まれたいずれか1つの扉動作指令信号の信号系に故障が生じていないことを確認して、側扉を制御することができる。
【0012】
また、上記鉄道車両用側扉制御装置(請求項1)において、前記駆動手段と前記電動モータとの間に設けられ、前記電動モータを短絡するためのSCRリレーを有するモータ短絡回路をさらに備え、
前記モータ短絡回路は、前記鉄道車両が所定の速度に達しているか否かを示す所定速度検知信号を入力して、前記鉄道車両が所定の速度以上で走行している場合に前記SCRリレーを動作して前記電動モータを短絡し、さらに前記SCRリレーの動作状態を示す複数の信号を、それぞれ複数のフィードバック信号として前記制御手段に出力し、
前記制御手段は、前記所定速度検知信号を入力し、その入力した所定速度検知信号と、前記モータ短絡回路からの複数の各フィードバック信号とに基づいて、前記制御信号の出力を禁止してもよい(請求項6)。
この場合、制御手段は、上述の所定速度検知信号及び複数の各フィードバック信号の妥当性について、相互に検証することができ、それらの信号に異常が生じていないかどうかについて判別して、電動モータへの給電を禁止することができる。
【0013】
また、上記鉄道車両用側扉制御装置(請求項6)において、前記制御手段は、入力した所定速度検知信号と、前記複数の各フィードバック信号による前記SCRリレーの動作状態とに整合がとれているか否かについて判別して、整合がとれていないことを検知した場合、その検知した時点から所定の時間が経過した経過時点で、前記所定速度検知信号または前記SCRリレーに異常が生じたと判断してもよい(請求項7)。
この場合、制御手段は、所定速度検知信号とSCRリレーの動作状態とに整合がとれていない場合に、異常が所定速度検知信号またはSCRリレーに生じたと判断して、電動モータへの給電を禁止することができる。
【0014】
また、上記鉄道車両用側扉制御装置(請求項7)において、前記制御手段は、前記所定速度検知信号が前記経過時点からOFF状態に変化するまでの時点の間、前記制御信号の出力を禁止してもよい(請求項8)。
この場合、所定速度検知信号またはSCRリレーに異常が生じた場合に、電動モータへの給電を禁止して、乗客に対する安全性を維持することができる。
【0015】
また、上記鉄道車両用側扉制御装置(請求項7)において、前記制御手段は、前記経過時点から前記複数のフィードバック信号のうち、過半数を越える数のフィードバック信号がON状態に変化し、さらにそのON状態に変化したいずれか1つのフィードバック信号がOFF状態に変化するまでの時点の間に、前記所定速度検知信号がOFF状態に変化しないことを検知した場合、ON状態が保持されるON保持故障が前記所定速度検知信号の信号系に生じたと判断してもよい(請求項9)。
この場合、制御手段は、上記所定速度検知信号の信号系に生じたON保持故障を検知して、その検知したON保持故障を車掌等の鉄道車両の乗務員に通知することができる。
【0016】
また、上記鉄道車両用側扉制御装置(請求項7)において、前記制御手段は、前記経過時点から前記所定速度検知信号がOFF状態に変化するまでの時点の間に、全ての前記フィードバック信号がON状態に変化しないことを検知した場合、前記SCRリレーに故障が生じたと判断してもよい(請求項10)。
この場合、制御手段は、故障を生じたと判断したSCRリレーによる誤動作の発生を防止して、側扉を適切に制御することができる。
【0017】
また、上記鉄道車両用側扉制御装置(請求項9または10)において、前記制御手段は、前記所定速度検知信号の信号系にON保持故障を生じたと判断したとき、または前記SCRリレーに故障が生じたと判断したとき、その判断した故障の内容を少なくとも含んだ故障情報をメモリに記録してもよい(請求項11)。この場合、故障を生じたと判断した所定速度検知信号の信号系またはSCRリレーを判別して、その判別した故障を作業員等が事後確認することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の鉄道車両用側扉制御装置の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施の形態に係る鉄道車両用側扉制御装置が適用された鉄道車両での側扉を制御するための制御系の具体的な構成例を示す説明図である。図1において、鉄道車両では、乗客の乗降口毎に、ローカルコントロールユニット(LCU:Local Control Unit)1、前記ローカルコントロールユニット1によって駆動制御される電動モータ2、及び前記電動モータ2により駆動される側扉(図示せず)を含んだドア装置3が設けられている。尚、乗降口は、例えば鉄道車両の側面に形成され、上記側扉の開閉動作によって開成または閉成される。また、具体的な側扉には、車両側面と平行な方向にスライド可能に構成され、かつ互いに反対方向に作動する二枚の扉により構成されたものがある。
【0020】
ローカルコントロールユニット1は、CPUを含んで構成され、本実施形態の鉄道車両用側扉制御装置により構成されている。ローカルコントロールユニット1は、各種の指令信号及び検出信号を入力して、これらの信号に基づいて、例えば直流モータにより構成された電動モータ2を駆動し側扉を開閉する。具体的な指令信号及び検出信号には、例えば扉動作指令信号としての開信号及び閉信号、非常時に側扉をわずかに開くための一斉解錠信号、全閉していない側扉のみを再度開閉動作させるための再開閉信号、及び鉄道車両の走行速度が所定の速度に達したことを示す所定速度検知信号としての5km/h検知信号が入力されている。これらの開信号、閉信号、一斉解錠信号、及び再開閉信号は、例えば車掌の操作に応じて出力されるものであり、全ての車両を引通された車両引通し線によって伝達される。また、ローカルコントロールユニット1には、ドア装置3に含まれたドアロックスイッチ(以下、”DLS”(DLS:Door Lock Switch)ともいう)から後述のドアロック接点信号が入力されている。
【0021】
また、ローカルコントロールユニット1には、当該ローカルコントロールユニット1が、後に詳述するように、ON保持故障等の故障を検知したときに点灯する故障表示ランプ4が接続されている。この故障表示ランプ4を設けることにより、例えば定期点検作業において、作業員等の点検作業を容易なものとすることができる。
尚、上記の説明以外に、例えば鉄道車両の運転台とローカルコントロールユニット1とを双方向のデータ通信線で接続する構成でもよい。
【0022】
図2は、上記ローカルコントロールユニット1の具体的な構成を示すブロック図である。
図2において、ローカルコントロールユニット1は、マイコン制御方式のものであって、所定のプログラムに従って動作する制御手段としてのCPU5と、各種の指令信号及び検出信号をCPU5に入力するための入力変換回路6及びドアロックスイッチ入力変換回路(以下、”DLS入力変換回路”という)7とを備えている。CPU5には、上述のプログラム及び入力した信号に基づいて、所定の機能を実行する機能部5aと、入力信号に所定の論理判定を行う判定論理部5b及びDLS判定論理部5cとが設けられている。尚、上述のプログラムは、メモリまたは類似の記録媒体(図示せず)に格納されている。
【0023】
ローカルコントロールユニット1には、電動モータ2に駆動電力を供給するための出力ドライバ8、CPU5と出力ドライバ8との間に設けられたプログラマブルロジックデバイス(以下、”PLD”(PLD:Programmable Logic Device)という)9、上記出力ドライバ8に接続されたチョッパ回路/Hブリッジ回路10、及びチョッパ回路/Hブリッジ回路10と電動モータ2との間に接続されたモータ短絡回路11が設けられている。上記の出力ドライバ8、PLD 9、及びチョッパ回路/Hブリッジ回路10は、電動モータ2に駆動電流を供給するための駆動手段を構成している。モータ短絡回路11には、電動モータ2を短絡するためのSCRリレーが設けられている。
【0024】
ローカルコントロールユニット1は、上記チョッパ回路/Hブリッジ回路10に接続されたモータ電流検出回路12、モータ過電流検出回路13、及びモータ電圧検出回路14と、これらの検出回路とCPU5との間に設けられたA/Dコンバータ15と、後述の電源手段とチョッパ回路/Hブリッジ回路10との間に接続された開回路遮断回路16と、開回路遮断回路16を制御するための開回路遮断制御回路17とを具備している。開回路遮断回路16には、例えばCPU5の暴走により、側扉が不用意に開成することを防止するためのフェイルセーフリレー(FSR)が設けられている。
【0025】
また、ローカルコントロールユニット1には、各部に供給すべき電源電圧を発生するための電源手段としてのフィルタ回路18及びDC−DCコンバータを含んだ定電圧回路19と、CPU5に接続されたチャイム出力回路20及び通信回路21とが設けられている。チャイム出力回路20及び通信回路21には、表示器22及び外部端末装置にそれぞれ接続するためのインターフェース(図示せず)が設けられている。尚、表示器22は、例えばLEDディスプレイにより構成され、鉄道車両の内部に設けられて、ローカルコントロールユニット1からの指示信号に従って、行き先情報や次の駅名などのような各種の案内情報を表示する。また、上記外部端末装置は、例えばノート型パソコンを含んだ携帯情報端末であり、鉄道車両の定期点検作業時などにおいて、当該制御装置に接続されて作業員等の点検作業に使用される。上記通信回路21を内蔵することにより、ローカルコントロールユニット1は、例えばRS232Cに準拠したケーブルを介して外部のコンピュータ機器に接続可能となり、双方向のデータ通信を行うことができる。
【0026】
ここで、図3を用いて、CPU5、入力変換回路6、及びDLS入力変換回路7について、具体的に説明する。
図3は、図2に示したCPU5、入力変換回路6、及びDLS入力変換回路7の詳細な構成を示すブロック図である。尚、以下の説明では、説明の簡略化のために、CPU5が二重化された入力信号を処理する構成を例示して説明する。
図3に示すように、CPU5の機能部5aが実行する機能には、例えば故障検知機能、モータ制御機能、戸挟み検知機能、及びドア位置検出機能がある。上記故障検知機能には、当該ローカルコントロールユニット1の自己診断(モニタリング)機能が含まれている。また、この故障検知機能には、入力変換回路6やDLS入力変換回路7から入力される二重系とした2つの入力信号を相互に検証して、各入力信号の妥当性を判断し異常を生じた信号を判別することも含まれている(詳細は後述)。モータ制御機能には、電動モータ2の回転方向を検出するモータ回転方向検出機能、電動モータ2への供給電圧を設定するモータ電圧設定機能、及び電動モータ2の回転数を可変にして、側扉の開閉速度を変更するためのクッション制御機能が含まれている。
【0027】
判定論理部5bには、入力変換回路6から入力される入力信号に応じて、論理判定を行う5km/h信号判定論理部5b1、開信号判定論理部5b2、一斉解錠判定論理部5b3、再開閉信号判定論理部5b4、及び閉信号判定論理部5b5が設けられている。
判定論理部5bとDLS判定論理部5cとは、各々二重化された入力信号を少なくとも入力して、それらの入力信号の状態が一致しているか否かについて判断し、その判断結果を示す信号を機能部5aに出力している。これらの判定論理部5b及びDLS判定論理部5cには、図示を省略したフィルタ手段が設けられて、入力信号のチャタリングをカットしている。詳細には、上記フィルタ手段は、入力信号のON状態またはOFF状態が所定の時間(例えば、50msec)の間持続しない場合、その入力信号はチャタリングであると判断しカットして、機能部5aに出力しない。
【0028】
判定論理部5bに含まれた各判定論理部のうち、所定の判定論理部、具体的には、5km/h信号判定論理部5b1、開信号判定論理部5b2、及び閉信号判定論理部5b5は、入力信号の状態が不一致になった場合、入力信号をそのまま機能部5aに出力している。機能部5aは、後に詳述するように、ON状態からOFF状態に変化する入力信号を判別し、正常であると判断した信号系の入力信号を用いて側扉を制御する。
一方、一斉解錠判定論理部5b3、再開閉信号判定論理部5b4、またはDLS判定論理部5cに入力した2つの入力信号の状態が不一致になった場合、機能部5aはその入力信号の信号系に故障が生じたと判断して、以後の入力信号を無効とする。さらに、機能部5aは、故障が生じたと判断した信号系を含む故障情報を生成してメモリに記録する。これにより、故障を生じたと判断した信号系を判別して、その信号系の故障を容易に解消することができる。
【0029】
入力変換回路6は、例えば複数のフォトカプラを含んで構成され、電気的絶縁状態を保ちつつ、入力信号をCPU5に入力できる構成になっている。この入力変換回路6には、上述の5km/h検知信号、開信号、閉信号、一斉解錠信号、及び再開閉信号が入力されている。これらの入力信号は、上述したように、例えば車掌の操作に応じて伝達されたものであり、当該入力変換回路6によって二重化されて2つの信号としてCPU5に出力されている。さらに、この入力変換回路6には、モータ短絡回路11(図2)からSCRリレーの動作状態を示す複数、例えば2つの信号が上記のSCRリレーのフィードバック信号1,2としてそれぞれ入力されている。尚、これらのフィードバック信号1,2は、上記モータ短絡回路11内に設けた後述の検出手段によって検出したフィードバック信号を二重化したものである。また、これ以外に、二つの検出手段を上記モータ短絡回路11内に設けて、フィードバック信号1,2を互いに独立して入力変換回路6に出力してもよい。
【0030】
具体的には、入力変換回路6には、図3に示すように、SCR1入力変換回路6aと、SCR2入力変換回路6bと、5km/h入力変換回路6cと、開信号用の1系入力変換回路6d及び2系入力変換回路6eと、一斉解錠信号用の1系入力変換回路6f及び2系入力変換回路6gと、再開閉信号用の1系入力変換回路6h及び2系入力変換回路6iと、閉信号用の1系入力変換回路6j及び2系入力変換回路6kとが設けられている。SCR1入力変換回路6a、SCR2入力変換回路6b、及び5km/h入力変換回路6cは5km/h信号判定論理部5b1に接続され、開信号用の1系入力変換回路6d及び2系入力変換回路6eは開信号判定論理部5b2に接続されている。一斉解錠信号用の1系入力変換回路6f及び2系入力変換回路6gは一斉解錠判定論理部5b3に接続され、再開閉信号用の1系入力変換回路6h及び2系入力変換回路6iは再開閉信号判定論理部5b4に接続され、閉信号用の1系入力変換回路6j及び2系入力変換回路6kは閉信号判定論理部5b5に接続されている。
【0031】
DLS入力変換回路7は、例えば複数のフォトカプラを含んで構成され、電気的絶縁状態を保ちつつ、側扉毎に設けられたドアロックスイッチ(DLS)3aからのドアロック接点信号をCPU5に入力できる構成になっている。詳細には、DLS入力変換回路7には、図3に示すように、2つのDLS入力変換回路7a、7bが設けられ、ドアロックスイッチ3aからのドアロック接点信号がそれぞれ二重化され、CPU5のDLS判定論理部5cに出力されている。上記ドアロックスイッチ3aは、例えばリミットスイッチにより構成されたものであり、側扉が全閉状態になったときに作動し、その全閉状態を保持するためのロック機構(図示せず)に付随して設けられている。このロック機構が施錠状態になると、ドアロックスイッチ3aは側扉が全閉状態でロックされたことを示すロック検知信号をドアロック接点信号としてDLS入力変換回路7に出力する。尚、上記のロック機構は、側扉を開成する方向に電動モータ2を駆動することによって解錠されるように構成されている。
【0032】
図2に戻って、出力ドライバ8には、PLD 9を介して、電動モータ2を駆動するための制御信号がCPU5から入力される。具体的には、側扉を開成する場合、出力ドライバ8にはCPU5から電動モータ2を正転させるための制御信号が入力される。逆に、側扉を閉成する場合、出力ドライバ8にはCPU5から電動モータ2を逆転させるための制御信号が入力される。CPU5からPLD 9を介して出力ドライバ8に出力される信号には、その出力ドライバ8及びPLD 9をリセットするためのリセット信号がある。
【0033】
電動モータ2に流れる電流の方向及び大きさは、上記のモータ電流検出回路12によって検出され、その検出信号はA/Dコンバータ15によってデジタル信号に変換された後、CPU5にフィードバックされている。同様に、電動モータ2に印加された電圧は、上記のモータ電圧検出回路14によって検出され、その検出信号はA/Dコンバータ15によってデジタル信号に変換された後、CPU5にフィードバックされている。CPU5は、上記のフィードバックされた検出信号に基づいて、制御信号のパルス幅またはデューティ比を所望のモータ回転速度に対応するように変更し出力して、所望のモータ制御機能を行う。
【0034】
モータ短絡回路11に設けられたSCRリレーは、5km/h検知信号に基づいて励磁されるSCRリレーコイル、及び前記SCRリレーコイルによって開閉するリレー接点を備えている(図示せず)。SCRリレーは、上記SCRリレーコイルの働きにより、チョッパ回路/Hブリッジ回路10からの電流を電動モータ2に供給する通電位置と、電動モータ2を短絡してその動作を禁止するとともにブレーキをかける短絡位置とをとることができる。つまり、鉄道車両の速度が所定の速度である5km/h以上になると、SCRリレーコイルは短絡位置に制御され、電動モータ2の回転を禁止する。したがって、鉄道車両が5km/h以上で走行している期間に側扉が開成されることはない。また、5km/h検知信号(所定速度検知信号)は、CPU5に対して制御信号の出力を禁止するから、5km/h以上での走行中には、出力ドライバ8に電動モータ2を駆動するための制御信号が入力されることもない。
【0035】
チョッパ回路/Hブリッジ回路10の電源側には、フェイルセーフリレー(FSR)を有する開回路遮断回路16が接続されている。このフェイルセーフリレーは、開回路遮断制御回路17からの制御信号によって励磁されるリレーコイル、及び上記チョッパ回路/Hブリッジ回路10のHブリッジ回路に設けられ、リレーコイルによって開閉するリレー接点を備えている(図示せず)。開回路遮断制御回路17は、5km/h検知信号、開信号、または一斉解錠信号に従って、フェイルセーフリレーを作動するための制御信号を生成し出力する。
フェイルセーフリレーは、そのリレーコイルの働きにより、上記電源手段からの電力供給を制御して、チョッパ回路/Hブリッジ回路10からモータ短絡回路11への電動モータ2の駆動電力の供給を制御する。これにより、例えばCPU5の暴走などによって電動モータ2を回転させるための制御信号が誤って出力されていた場合でも、フェイルセーフリレーによって電動モータ2への駆動電力の供給を行わずに、不用意に側扉が開成されることを防止することができる。
開回路遮断回路16及び開回路遮断制御回路17は、FSR接点フィードバック信号及びFSR自己保持信号をCPU5にそれぞれ出力して、フェイルセーフリレーの動作状態をCPU5に通知している。
【0036】
以下、図4に示すフローチャートを用いて、二重系とした2つの入力信号を処理するCPU5の処理動作について、具体的に説明する。尚、以下の説明では、二重系とした開信号及び閉信号のうち、開信号を処理する処理動作を例示して説明し、その処理動作と同様な処理動作を行う閉信号のものについては省略する。図4に示すように、CPU5は、まず1系入力変換回路6dからの1系の開信号がON状態かどうかについて判別して(ステップS1)、1系の開信号がON状態である場合、2系入力変換回路6eからの2系の開信号がON状態かどうかについて判別する(ステップS2)。
2系の開信号がON状態である場合、CPU5は側扉の開成を指示する開指令をON状態として制御信号に含めて出力する(ステップS3)。
【0037】
一方、上記ステップS1において、1系の開信号がON状態でない場合、つまりOFF状態である場合、CPU5は2系の開信号がON状態かどうかについて判別する(ステップS4)。
2系の開信号がON状態である場合、CPU5は1系及び2系の開信号が不一致な状態であることを検知して、それらの開信号が不一致な状態である時間を計測する。そして、CPU5は、計測している時間が予め設定された所定の設定時間(例えば、50msec)を越えるかどうかについて調べる(ステップS5)。
そして、計測している時間が上記の設定時間を越えたとき、CPU5は1系または2系の開信号がOFF状態かどうかについて判別して(ステップS6)、いずれかの開信号がOFF状態である場合、CPU5は上記開指令を生成し、制御信号に含めて出力する(ステップS7)。また、いずれかの開信号もOFF状態でない場合、CPU5はいずれかの開信号がOFF状態となるまで、ステップS6の判別処理を繰り返し行う。
【0038】
また、上記ステップS2において、2系の開信号がOFF状態である場合、1系の開信号はON状態であるので、CPU5は1系及び2系の開信号の状態が不一致な状態であると判断する。そして、CPU5は、上述のステップS5、S6、及びS7に示した処理動作を行う。
また、上記ステップS4において、2系の開信号がOFF状態である場合、1系及び2系の開信号はともにOFF状態であるので、CPU5は開指令をOFF状態として制御信号に含めて出力する(ステップS7)。同様に、上記ステップS5において、計測している時間が設定時間を超えずに、1系及び2系の開信号が一致した場合も、1系及び2系の開信号はともにOFF状態であり、CPU5は上記ステップS7に示した処理動作を行う。
【0039】
ここで、図5乃至図7を用いて、CPU5での二重系とした入力信号、例えば2つの開信号を相互に検証して、各開信号の妥当性を判断し異常を生じた開信号を判別する処理動作について、詳細に説明する。
図5は、図2に示したCPU5での二重系とした信号系に異常が生じていない場合の動作例を示すタイミングチャートである。図6は、図2に示したCPU5での二重系とした信号系の一方の信号系にOFF保持故障が生じている場合の動作例を示すタイミングチャートである。図7は、図2に示したCPU5での二重系とした信号系の一方の信号系にON保持故障が生じている場合の動作例を示すタイミングチャートである。
図5に示すように、1系の開信号が時点T0でON状態に変化すると、CPU5は1系及び2系の開信号が不一致な状態であることを検知して、不一致な状態である時間を時点T0から計測する。そして、上記の設定時間以内の時点T1で2系の開信号がON状態となると、CPU5は1系及び2系の開信号が正常な信号であると判断して、開指令を直ちにON状態として出力する。その後、CPU5は、1系の開信号がOFF状態に立ち下がった時点T2で、開指令をON状態からOFF状態に変化させる。これにより、側扉が開成される。
【0040】
また、図6に示すように、OFF状態が保持されるOFF保持故障が、例えば1系の開信号に生じている場合、2系の開信号が時点T3でON状態に変化すると、CPU5は1系及び2系の開信号が不一致な状態であることを検知して、不一致な状態である時間を時点T3から計測する。そして、上記の設定時間を越えた時点T4で2系の開信号がON状態からOFF状態に立ち下がると、CPU5は上記のように状態が変化した2系の開信号は正常な信号であると判断して、開指令を直ちにON状態として出力する。さらに、CPU5は、OFF状態から変化しなかった1系の開信号にOFF保持故障が生じていると判断する。そして、CPU5は、OFF保持故障が生じていると判断した信号系(開信号の1系)と、故障の内容(OFF保持故障)を含んだ故障情報を作成しメモリに記録する。その後、CPU5は、例えば0.5secの間、開指令をON状態で維持し時点T5でOFF状態に変化させる。このように、CPU5は、OFF保持故障を生じたと判断した1系の開信号を除いて、正常な2系の開信号により、側扉を開成することができる。さらに、上記のような故障情報を記録しているので、例えば鉄道車両の定期点検作業時において、作業員等は故障を生じた開信号の1系を判別し事後確認することができ、その1系の故障を容易に解消することができる。尚、OFF保持故障を検知した時刻(時点T4)などの時間情報を故障情報に含めて記録しても良い。
【0041】
また、図7に示すように、例えば1系の開信号が時点T6でON状態に変化しそのON状態が保持されるON保持故障が生じている場合、CPU5はその時点T6で1系及び2系の開信号が不一致な状態であることを検知して、不一致な状態である時間の計測を開始する。そして、上記の設定時間を越えた時点T7で2系の開信号がOFF状態からON状態に立ち上がり、時点T8でON状態からOFF状態に立ち下がると、CPU5は上記のように状態が変化した2系の開信号は正常な信号であると判断して、開指令を直ちにON状態として出力する。さらに、CPU5は、ON状態から変化しなかった1系の開信号にON保持故障が生じていると判断する。そして、CPU5は、ON保持故障が生じていると判断した信号系(開信号の1系)と、故障の内容(ON保持故障)を含んだ故障情報を作成しメモリに記録する。その後、CPU5は、例えば0.5secの間、開指令をON状態で維持し時点T9でOFF状態に変化させる。このように、CPU5は、ON保持故障を生じたと判断した1系の開信号を除いて、正常な2系の開信号により、側扉を開成することができる。さらに、上記のような故障情報を記録しているので、例えば鉄道車両の定期点検作業時において、作業員等は故障を生じた開信号の1系を判別し事後確認することができ、その1系の故障を容易に解消することができる。尚、ON保持故障を検知した時刻(時点T8)などの時間情報を故障情報に含めて記録しても良い。
【0042】
以上のように、CPU5は、二重系とした2つの開信号を相互に検証して、各入力信号の妥当性を判断し異常を生じた開信号を判別している。その結果、CPU5は、二重系とした一方の信号系に故障が生じた場合でも、側扉の作動を確保して鉄道車両の運行を阻害することなく、他方の信号系の開信号を用いて側扉を開成することができる。
【0043】
尚、上述の説明では、二重系とした2つの入力信号(開信号)に対する処理動作を説明したが、本実施形態の鉄道車両用側扉制御装置はこれに限定されるものではなく、三重系以上に多重化された複数の扉動作指令信号にも適応することができる。具体的には、CPU5が複数の扉動作指令信号のうち、少なくとも1つの扉動作指令信号がON状態に変化した時点から所定の設定時間以内に、残りの扉動作指令信号がON状態に変化しないことを検知した場合、CPU5は少なくとも1つの扉動作指令信号のON状態からOFF状態への立ち下がり、または上記残りの扉動作指令信号に含まれたいずれか1つの扉動作指令信号のON状態からOFF状態への立ち下がりに基づいて、電動モータ2を駆動するための制御信号を出力すればよい。これにより、CPU5は、少なくとも1つの扉動作指令信号、または残りの扉動作指令信号に含まれたいずれか1つの扉動作指令信号がON状態からOFF状態に変化することを検知してその信号系に故障が生じていないと判断し、さらにON状態からOFF状態に変化しない信号系に故障が生じたと判断することができる。したがって、本実施形態の鉄道車両用側扉制御装置では、多重系とした複数の信号のうち正常な信号だけを検知して、その正常な信号を用いて当該制御装置の機能を低下することなく、側扉の制御を行えるという、冗長性を向上した制御装置を実現することができる。
【0044】
次に、CPU5での5km/h検知信号(所定速度検知信号)とSCRリレーの各フィードバック信号1,2とを用いた故障検知機能の処理動作について、具体的に説明する。
5km/h検知信号とフィードバック信号1,2の各状態の組み合わせは、下記の表1に示す状態1から状態8の8つの状態がある。尚、表1において、CPU5にデジタル入力される5km/h検知信号のON状態とは鉄道車両が5km/h以上の速度で走行している場合を示し、同検知信号のOFF状態とは鉄道車両が5km/h未満の速度で走行している場合を示している。また、表1において、SCRリレーの各フィードバック信号1,2のON状態とはSCRリレーのリレー接点が閉じられている場合を示し、各フィードバック信号1,2のOFF状態とは上記のリレー接点が開かれている場合を示している。
【0045】
【表1】
【0046】
表1の状態1に示すように、5km/h検知信号及びフィードバック信号1,2が全てON状態である場合、CPU5は5km/h検知信号と、各フィードバック信号1,2によるSCRリレーの動作状態とに整合がとれていると判断して、5km/h検知信号の信号系及びSCRリレーに故障が生じていないと判断する。そして、CPU5は、5km/h検知信号が有りと認識して、電動モータ2を駆動するための制御信号の出力を禁止する。
また、表1の状態2に示すように、5km/h検知信号及びフィードバック信号1がON状態であり、フィードバック信号2がOFF状態である場合、CPU5はそれらの信号は整合がとれていないと判断して、その判断した時点から所定の時間(例えば、100msec)を経過した時点で、フィードバック信号2に異常が生じたと判断する。そして、CPU5は、5km/h検知信号が有りと認識して、電動モータ2を駆動するための制御信号の出力を禁止する。
【0047】
また、表1の状態3に示すように、5km/h検知信号及びフィードバック信号2がON状態であり、フィードバック信号1がOFF状態である場合、CPU5はそれらの信号は整合がとれていないと判断して、その判断した時点から上記所定の時間を経過した時点で、フィードバック信号1に異常が生じたと判断する。そして、CPU5は、5km/h検知信号が有りと認識して、電動モータ2を駆動するための制御信号の出力を禁止する。
また、表1の状態4に示すように、5km/h検知信号及びフィードバック信号1,2が全てOFF状態である場合、CPU5はそれらの信号に整合がとれていると判断して、5km/h検知信号の信号系及びSCRリレーに故障が生じていないと判断する。そして、CPU5は、5km/h検知信号が無しと認識して、電動モータ2を駆動するための制御信号の出力を認める。
【0048】
また、表1の状態5に示すように、5km/h検知信号及びフィードバック信号2がOFF状態であり、フィードバック信号1がON状態である場合、CPU5はそれらの信号は整合がとれていないと判断して、その判断した時点から上記所定の時間を経過した時点で、フィードバック信号1に異常が生じたと判断する。そして、CPU5は、5km/h検知信号が無しと認識して、電動モータ2を駆動するための制御信号の出力を認める。
また、表1の状態6に示すように、5km/h検知信号及びフィードバック信号1がOFF状態であり、フィードバック信号2がON状態である場合、CPU5はそれらの信号は整合がとれていないと判断して、その判断した時点から上記所定の時間を経過した時点で、フィードバック信号2に異常が生じたと判断する。そして、CPU5は、5km/h検知信号が無しと認識して、電動モータ2を駆動するための制御信号の出力を認める。
【0049】
また、表1の状態7に示すように、5km/h検知信号がON状態であり、フィードバック信号1,2がOFF状態である場合、CPU5はそれらの信号は整合がとれていないと判断して、その判断した時点から上記所定の時間を経過した時点で、5km/h検知信号またはSCRリレーに異常が生じたと判断する。そして、CPU5は、5km/h検知信号が有りと認識して、5km/h検知信号がON状態からOFF状態に変化するまでの間、電動モータ2を駆動するための制御信号の出力を禁止する。
また、表1の状態8に示すように、5km/h検知信号がOFF状態であり、全てのフィードバック信号1,2がON状態である場合、CPU5はそれらの信号は整合がとれていないと判断して、その判断した時点から上記所定の時間を経過した時点で、5km/h検知信号に異常が生じたと判断する。そして、CPU5は、5km/h検知信号が有りと認識して、電動モータ2を駆動するための制御信号の出力を禁止する。
【0050】
上記の説明から明らかなように、状態7の場合では、他の状態1〜6及び状態8の場合と異なり、CPU5は入力した5km/h検知信号及びフィードバック信号1,2の状態による多数決の論理を用いていない。詳細には、状態2,3,5,6,8の各状態では、CPU5は上記3つの入力信号による多数決によって5km/h検知信号の有無を判断している。これに対して、状態7の場合では、CPU5は5km/h検知信号が有りと認識して、電動モータ2を駆動するための制御信号の出力を禁止している。つまり、状態7では、5km/h検知信号のON保持故障またはリレーコイルの断線を含むSCRリレーの故障を想定して、上記制御信号の出力を禁止している。これにより、状態7では、電動モータ2の駆動を確実に防いで、乗客に対する安全性を確保することができる。
【0051】
ここで、図8及び図9を用いて、上記状態7での5km/h検知信号またはSCRリレーの故障を判別する処理動作について、詳細に説明する。
図8は、図2に示したCPU5における、表1の状態7に含まれる故障に対する動作例を示すタイミングチャートである。図9は、図2に示したCPU5における、表1の状態7に含まれる別の故障に対する動作例を示すタイミングチャートである。
図8に示すように、デジタル入力された5km/h検知信号が時点T10でON状態に変化しそのON状態が保持されるON保持故障が生じている場合、CPU5はその時点T10で5km/h検知信号と、各フィードバック信号1,2によるSCRリレーの動作状態とに整合がとれていないことを検知して、整合がとれていない時間の計測を開始する。そして、CPU5は、上記の時間を経過した経過時点T11で5km/h検知信号またはSCRリレーに異常が生じたと判断して、5km/h検知信号が有りと認識して、電動モータ2を駆動するための制御信号の出力を禁止する。
【0052】
その後、各フィードバック信号1,2が時点T12でOFF状態からON状態に共に立ち上がり、いずれかのフィードバック信号、例えばフィードバック信号1が時点T13でON状態からOFF状態に立ち下がると、CPU5は上記のように状態が変化したフィードバック信号1は正常な信号であると判断する。さらに、CPU5は、ON状態から変化しなかった5km/h検知信号の信号系にON保持故障が生じていると判断する。このとき、CPU5は、乗客に対する安全性を優先して、5km/h検知信号が有りと認識して、電動モータ2を駆動するための制御信号の出力を禁止する。尚、この制御信号の出力の禁止は、5km/h検知信号がOFF状態に変化するまで継続される。
【0053】
また、上記時点T13において、ON保持故障が5km/h検知信号の信号系に生じていると判断したとき、CPU5はその信号系でのON保持故障を検知したことを故障表示ランプ4を点灯させることで作業員等に通知する。尚、CPU5が検知したON保持故障を、例えば運転台に即座に通知して車掌等の鉄道車両の乗務員に通知するよう構成してもよい。さらに、CPU5は、ON保持故障が生じていると判断した信号系(5km/h検知信号)と、故障の内容(ON保持故障)を含んだ故障情報を作成しメモリに記録する。これにより、例えば鉄道車両の定期点検作業時において、作業員等はON保持故障を生じた5km/h検知信号を判別し事後確認することができ、その5km/h検知信号の故障を容易に解消することができる。尚、CPU5は、故障の内容を特定できるまでは故障情報を生成し記録しない。つまり、CPU5は、同図に示すように、時点T10から時点T13までの間は故障が生じていると認識しない。また、ON保持故障を検知した時刻(時点T13)などの時間情報を故障情報に含めて記録しても良い。
【0054】
また、図9に示すように、5km/h検知信号だけが時点T14でON状態に変化した場合、CPU5はその時点T14で5km/h検知信号と、各フィードバック信号1,2によるSCRリレーの動作状態とに整合がとれていないことを検知して、整合がとれていない時間の計測を開始する。そして、CPU5は、上記の時間を経過した経過時点T15で5km/h検知信号またはSCRリレーに異常が生じたと判断して、5km/h検知信号が有りと認識して、電動モータ2を駆動するための制御信号の出力を禁止する。
その後、CPU5は、5km/h検知信号が時点T16でON状態からOFF状態に変化したことを検知すると、CPU5はこのように状態が変化した5km/h検知信号は正常な信号であると判断する。そして、CPU5は、5km/h検知信号が無しと認識して、電動モータ2を駆動するための制御信号の出力を認める。
【0055】
さらに、CPU5は、上記経過時点T15から時点T16の間に、全てのフィードバック信号1,2がON状態に変化しないことを検知した場合、SCRリレーに故障が生じていると判断する。そして、CPU5は、故障が生じていると判断したSCRリレーと、故障の内容(OFF保持故障)を含んだ故障情報を作成しメモリに記録する。これにより、CPU5は、故障を生じたと判断したSCRリレーによる誤動作の発生を防止して、側扉を適切に制御することができる。さらに、上記のような故障情報を記録しているので、例えば鉄道車両の定期点検作業時において、作業員等は故障を生じたSCRリレーを判別し事後確認することができ、そのSCRリレーの故障を容易に解消することができる。尚、CPU5は、図8に示した場合と同様に、時点T14から時点T16までの間は故障が生じていると認識せずに、故障の内容が特定できたあと、故障情報を生成し記録する。また、故障を検知した時刻(時点T16)などの時間情報を故障情報に含めて記録しても良い。
【0056】
また、上述の状態3及び状態5において、CPU5がフィードバック信号1に異常が生じたと判断したとき、CPU5はフィードバック信号1の信号系に故障が生じたことを含む故障情報を生成してメモリに記録する。同様に、状態2及び状態6において、CPU5がフィードバック信号2に異常が生じたと判断したとき、CPU5はフィードバック信号2の信号系に故障が生じたことを含む故障情報を生成してメモリに記録する。同様に、上記状態8において、CPU5が5km/h検知信号に異常が生じたと判断したとき、CPU5は5km/h検知信号の信号系に故障が生じたことを含む故障情報を生成してメモリに記録する。これにより、例えば鉄道車両の定期点検作業時において、作業員等は故障を生じたフィードバック信号1,2及び5km/h検知信号の信号系を判別し事後確認することができ、その信号系の故障を容易に解消することができる。
【0057】
以上のように、CPU5は、5km/h検知信号と各フィードバック信号1,2とを入力して、入力した5km/h検知信号と各フィードバック信号1,2の妥当性について相互に検証し異常が生じていないかどうかについて判別して、電動モータ2への給電を禁止することができる。その結果、CPU5は、異常を生じた5km/h検知信号またはSCRリレーによる側扉の開成動作を確実に防止することができ、乗客に対する安全性を向上することができる。
【0058】
尚、上述の説明では、5km/h検知信号(所定速度検知信号)と2つのフィードバック信号1,2とを用いた処理動作を説明したが、本実施形態の鉄道車両用側扉制御装置はこれに限定されるものではなく、3つ以上の複数のフィードバック信号を用いることもできる。
【0059】
【発明の効果】
以上のように構成された本発明は以下の効果を奏する。
請求項1の鉄道車両用側扉制御装置によれば、制御手段は、少なくとも1つの扉動作指令信号、または残りの扉動作指令信号に含まれたいずれか1つの扉動作指令信号がON状態からOFF状態に変化することを検知して、ON状態からOFF状態に変化しない信号系に故障が生じたと判断することができる。その結果、制御手段は、多重系としたいくつかの信号系に故障が生じた場合でも、側扉の作動を確保して車両の運行を阻害することなく、残りの信号系の扉動作指令信号を用いて側扉を制御することができる。
【0060】
請求項2の鉄道車両用側扉制御装置によれば、制御手段は、上記ON保持故障を生じたと判断した信号系の扉動作指令信号を除いて、他の正常な信号系の扉動作指令信号により、側扉を制御することができる。
請求項3の鉄道車両用側扉制御装置によれば、制御手段は、上記OFF保持故障を生じたと判断した信号系の扉動作指令信号を除いて、他の正常な信号系の扉動作指令信号により、側扉を制御することができる。
【0061】
請求項4の鉄道車両用側扉制御装置によれば、故障を生じたと判断した信号系を判別して、その信号系の故障を作業員等が事後確認することができる。
請求項5の鉄道車両用側扉制御装置によれば、制御手段は、上記少なくとも1つの扉動作指令信号の信号系にON保持故障が生じた場合でも、残りの扉動作指令信号に含まれたいずれか1つの扉動作指令信号の信号系に故障が生じていないことを確認して、側扉を制御することができる。
【0062】
請求項6の鉄道車両用側扉制御装置によれば、制御手段は、上述の所定速度検知信号とSCRリレーの動作状態とに整合がとれていない場合に、それらの所定速度検知信号及び複数の各フィードバック信号の妥当性について相互に検証して、所定速度検知信号またはSCRリレーに生じた異常を検知することができる。そして、所定速度検知信号とSCRリレーの動作状態とに整合がとれていなければ、制御信号の出力が禁止されるので、所定速度検知信号またはSCRリレーに異常が生じている場合には、電動モータへの給電を確実に禁止することができる。
【0063】
請求項7の鉄道車両用側扉制御装置によれば、制御手段は、所定速度検知信号とSCRリレーの動作状態とに整合がとれていない場合に、異常が所定速度検知信号またはSCRリレーに生じたと判断して、電動モータへの給電を禁止することができる。
請求項8の鉄道車両用側扉制御装置によれば、制御手段は、所定速度検知信号またはSCRリレーに異常が生じた場合に、電動モータへの給電を禁止して、乗客に対する安全性を維持することができる。
【0064】
請求項9の鉄道車両用側扉制御装置によれば、制御手段は、上記所定速度検知信号の信号系に生じたON保持故障を検知して、その検知したON保持故障を車掌等の鉄道車両の乗務員に通知することができる。
請求項10の鉄道車両用側扉制御装置によれば、制御手段は、故障を生じたと判断したSCRリレーによる誤動作の発生を防止して、側扉を適切に制御することができる。
請求項11の鉄道車両用側扉制御装置によれば、故障を生じたと判断した所定速度検知信号の信号系またはSCRリレーを判別して、その判別した故障を作業員等が事後確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る鉄道車両用側扉制御装置が適用された鉄道車両での側扉を制御するための制御系の具体的な構成例を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態であるローカルコントロールユニット1の具体的な構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示したCPU5、入力変換回路6、及びDLS入力変換回路7の詳細な構成を示すブロック図である。
【図4】図2に示したCPU5での二重系とした信号系の信号に対する処理動作を示すフローチャートである。
【図5】図2に示したCPU5での二重系とした信号系に異常が生じていない場合の動作例を示すタイミングチャートである。
【図6】図2に示したCPU5での二重系とした信号系の一方の信号系にOFF保持故障が生じている場合の動作例を示すタイミングチャートである。
【図7】図2に示したCPU5での二重系とした信号系の一方の信号系にON保持故障が生じている場合の動作例を示すタイミングチャートである。
【図8】図2に示したCPU5における、表1の状態7に含まれる故障に対する動作例を示すタイミングチャートである。
【図9】図2に示したCPU5における、表1の状態7に含まれる別の故障に対する動作例を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
1 ローカルコントロールユニット
4 電動モータ
5 CPU(制御手段)
8 出力ドライバ
9 PLD
10 チョッパ回路/Hブリッジ回路
11 モータ短絡回路
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、鉄道車両の側扉の開閉を制御するための鉄道車両用側扉制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
鉄道車両の側面に設けられた乗客乗降口は、鉄道車両用側扉装置によって開閉される。このような側扉装置では、空気圧によって側扉の作動力を得る在来の空気式のものが一般的であったが、最近では、低コスト、メンテナンスフリー及び艤装の簡素化等のメリットから、電気式ドアエンジン、例えば電動モータを用いたものが普及している。
【0003】
上記のような電気式の側扉の開閉を制御する、従来の制御装置として、特開平9−301161号公報に開示された鉄道車両用側扉制御装置がある。この従来の鉄道車両用側扉制御装置は、当該制御装置のマイコン化により、その機能を高度化していた。さらに、この従来の鉄道車両用側扉制御装置は、各種の指令及び検出信号を多重化することにより、マイクロコンピュータの誤動作による側扉の誤作動を防止して乗客に対する安全性を確保していた。具体的には、この従来の鉄道車両用側扉制御装置では、例えば側扉の開閉指令信号を二重系として、一方の系と他方の系とのそれぞれの開閉指令信号が一致した場合にのみ、有効な指令であると判断し、電動モータを駆動して側扉を開成又は閉成していた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記のような従来の鉄道車両用側扉制御装置では、二重系とした開閉指令信号が互いに一致しない場合、当該制御装置に故障が生じていると判断し、電動モータへの給電を禁止していた。このため、この従来の鉄道車両用側扉制御装置では、二重系とした開閉指令信号が互いに不一致な状態である場合は、制御対象の側扉が開閉されずに、乗客は他の側扉に迂回することを余儀なくされた。このような乗客に対する不便やサービスの低下(車両の運行阻害)を解消するために、この従来の鉄道車両用側扉制御装置では、電動モータへの給電を禁止した制御装置に代えて、例えば隣接する他の側扉用の制御装置を用いて、両方の側扉を制御することも提案している。しかし、他の制御装置が故障を生じたものに代わって制御するためには、それら互いに故障発生時に代替し合う制御装置の間を故障発生時のための信号線で接続する必要がある。また、乗客の安全性を確保するためには、故障側のドア状態を他の正常な制御装置が検知するための信号線をもそれらの制御装置間に設ける必要があり、より複雑化してしまう。
【0005】
上記のような従来の問題点に鑑み、本発明は、多重系としたいくつかの信号系に故障が生じた場合でも、側扉の作動を確保して車両の運行を阻害しない鉄道車両用側扉制御装置を提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明の鉄道車両用側扉制御装置は、鉄道車両の側扉の開閉を制御するための装置であって、前記側扉を作動させるための扉動作指令信号を入力して、複数の扉動作指令信号に多重化し出力する入力変換回路と、前記側扉を駆動するための電動モータに駆動電流を供給するための駆動手段と、前記入力変換回路からの多重化した複数の扉動作指令信号を入力して、その入力した複数の扉動作指令信号に従って、前記駆動手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記複数の扉動作指令信号のうち、少なくとも1つの扉動作指令信号がON状態に変化した時点から所定の設定時間以内に、残りの扉動作指令信号がON状態に変化しないことを検知した場合、前記少なくとも1つの扉動作指令信号のON状態からOFF状態への立ち下がり、または前記残りの扉動作指令信号に含まれたいずれか1つの扉動作指令信号のON状態からOFF状態への立ち下がりに基づいて、前記電動モータを駆動するための制御信号を駆動手段に出力するものである(請求項1)。
【0007】
上記のように構成された鉄道車両用側扉制御装置(請求項1)では、複数の扉動作指令信号のうち、少なくとも1つの扉動作指令信号がON状態に変化した時点から所定の設定時間以内に、残りの扉動作指令信号がON状態に変化しないことを検知した場合、制御手段は少なくとも1つの扉動作指令信号のON状態からOFF状態への立ち下がり、または前記残りの扉動作指令信号に含まれたいずれか1つの扉動作指令信号のON状態からOFF状態への立ち下がりに基づいて、電動モータを駆動するための制御信号を駆動手段に出力している。これにより、制御手段は、少なくとも1つの扉動作指令信号、または残りの扉動作指令信号に含まれたいずれか1つの扉動作指令信号がON状態からOFF状態に変化することを検知して、ON状態からOFF状態に変化しない信号系に故障が生じたと判断することができる。
【0008】
また、上記鉄道車両用側扉制御装置(請求項1)において、前記制御手段は、前記複数の扉動作指令信号のうち、少なくとも1つの扉動作指令信号がON状態に変化した時点から前記設定時間以内に、残りの扉動作指令信号がON状態に変化しないことを検知し、さらにその残りの扉動作指令信号に含まれたいずれか1つの扉動作指令信号が前記設定時間以降の時点でON状態に変化し、その後にOFF状態に変化したことを検知した場合、ON状態が保持されるON保持故障が前記少なくとも1つの扉動作指令信号の信号系に生じたと判断してもよい。(請求項2)。
この場合、制御手段は、上記ON保持故障を生じたと判断した信号系の扉動作指令信号を除いて、他の正常な信号系の扉動作指令信号により、側扉を制御することができる。
【0009】
また、上記鉄道車両用側扉制御装置(請求項1)において、前記制御手段は、前記複数の扉動作指令信号のうち、少なくとも1つの扉動作指令信号がON状態に変化した時点から前記設定時間以内に、残りの扉動作指令信号がON状態に変化しないことを検知し、さらに前記少なくとも1つの扉動作指令信号が前記設定時間以降の時点でOFF状態に変化したことを検知した場合、OFF状態が保持されるOFF保持故障が前記残りの扉動作指令信号の信号系に生じたと判断してもよい(請求項3)。
この場合、制御手段は、上記OFF保持故障を生じたと判断した信号系の扉動作指令信号を除いて、他の正常な信号系の扉動作指令信号により、側扉を制御することができる。
【0010】
また、上記鉄道車両用側扉制御装置(請求項2または3)において、前記制御手段は、前記ON保持故障または前記OFF保持故障を生じたと判断した信号系と、その判断した故障の内容とを少なくとも含んだ故障情報をメモリに記録してもよい(請求項4)。
この場合、故障を生じたと判断した信号系を判別して、その信号系の故障を作業員等が事後確認することができる。
【0011】
また、上記鉄道車両用側扉制御装置(請求項1)において、前記制御手段は、前記複数の扉動作指令信号のうち、少なくとも1つの扉動作指令信号がON状態に変化した時点から前記設定時間以内に、残りの扉動作指令信号がON状態に変化しないことを検知した場合、前記残りの扉動作指令信号に含まれたいずれか1つの扉動作指令信号が前記設定時間以降の時点でON状態に変化し、その後に前記いずれか1つの扉動作指令信号がOFF状態に変化することを検知するまでの間、前記制御信号の出力を禁止してもよい(請求項5)。
この場合、制御手段は、上記少なくとも1つの扉動作指令信号の信号系にON保持故障が生じた場合でも、残りの扉動作指令信号に含まれたいずれか1つの扉動作指令信号の信号系に故障が生じていないことを確認して、側扉を制御することができる。
【0012】
また、上記鉄道車両用側扉制御装置(請求項1)において、前記駆動手段と前記電動モータとの間に設けられ、前記電動モータを短絡するためのSCRリレーを有するモータ短絡回路をさらに備え、
前記モータ短絡回路は、前記鉄道車両が所定の速度に達しているか否かを示す所定速度検知信号を入力して、前記鉄道車両が所定の速度以上で走行している場合に前記SCRリレーを動作して前記電動モータを短絡し、さらに前記SCRリレーの動作状態を示す複数の信号を、それぞれ複数のフィードバック信号として前記制御手段に出力し、
前記制御手段は、前記所定速度検知信号を入力し、その入力した所定速度検知信号と、前記モータ短絡回路からの複数の各フィードバック信号とに基づいて、前記制御信号の出力を禁止してもよい(請求項6)。
この場合、制御手段は、上述の所定速度検知信号及び複数の各フィードバック信号の妥当性について、相互に検証することができ、それらの信号に異常が生じていないかどうかについて判別して、電動モータへの給電を禁止することができる。
【0013】
また、上記鉄道車両用側扉制御装置(請求項6)において、前記制御手段は、入力した所定速度検知信号と、前記複数の各フィードバック信号による前記SCRリレーの動作状態とに整合がとれているか否かについて判別して、整合がとれていないことを検知した場合、その検知した時点から所定の時間が経過した経過時点で、前記所定速度検知信号または前記SCRリレーに異常が生じたと判断してもよい(請求項7)。
この場合、制御手段は、所定速度検知信号とSCRリレーの動作状態とに整合がとれていない場合に、異常が所定速度検知信号またはSCRリレーに生じたと判断して、電動モータへの給電を禁止することができる。
【0014】
また、上記鉄道車両用側扉制御装置(請求項7)において、前記制御手段は、前記所定速度検知信号が前記経過時点からOFF状態に変化するまでの時点の間、前記制御信号の出力を禁止してもよい(請求項8)。
この場合、所定速度検知信号またはSCRリレーに異常が生じた場合に、電動モータへの給電を禁止して、乗客に対する安全性を維持することができる。
【0015】
また、上記鉄道車両用側扉制御装置(請求項7)において、前記制御手段は、前記経過時点から前記複数のフィードバック信号のうち、過半数を越える数のフィードバック信号がON状態に変化し、さらにそのON状態に変化したいずれか1つのフィードバック信号がOFF状態に変化するまでの時点の間に、前記所定速度検知信号がOFF状態に変化しないことを検知した場合、ON状態が保持されるON保持故障が前記所定速度検知信号の信号系に生じたと判断してもよい(請求項9)。
この場合、制御手段は、上記所定速度検知信号の信号系に生じたON保持故障を検知して、その検知したON保持故障を車掌等の鉄道車両の乗務員に通知することができる。
【0016】
また、上記鉄道車両用側扉制御装置(請求項7)において、前記制御手段は、前記経過時点から前記所定速度検知信号がOFF状態に変化するまでの時点の間に、全ての前記フィードバック信号がON状態に変化しないことを検知した場合、前記SCRリレーに故障が生じたと判断してもよい(請求項10)。
この場合、制御手段は、故障を生じたと判断したSCRリレーによる誤動作の発生を防止して、側扉を適切に制御することができる。
【0017】
また、上記鉄道車両用側扉制御装置(請求項9または10)において、前記制御手段は、前記所定速度検知信号の信号系にON保持故障を生じたと判断したとき、または前記SCRリレーに故障が生じたと判断したとき、その判断した故障の内容を少なくとも含んだ故障情報をメモリに記録してもよい(請求項11)。この場合、故障を生じたと判断した所定速度検知信号の信号系またはSCRリレーを判別して、その判別した故障を作業員等が事後確認することができる。
【0018】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の鉄道車両用側扉制御装置の好ましい実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施の形態に係る鉄道車両用側扉制御装置が適用された鉄道車両での側扉を制御するための制御系の具体的な構成例を示す説明図である。図1において、鉄道車両では、乗客の乗降口毎に、ローカルコントロールユニット(LCU:Local Control Unit)1、前記ローカルコントロールユニット1によって駆動制御される電動モータ2、及び前記電動モータ2により駆動される側扉(図示せず)を含んだドア装置3が設けられている。尚、乗降口は、例えば鉄道車両の側面に形成され、上記側扉の開閉動作によって開成または閉成される。また、具体的な側扉には、車両側面と平行な方向にスライド可能に構成され、かつ互いに反対方向に作動する二枚の扉により構成されたものがある。
【0020】
ローカルコントロールユニット1は、CPUを含んで構成され、本実施形態の鉄道車両用側扉制御装置により構成されている。ローカルコントロールユニット1は、各種の指令信号及び検出信号を入力して、これらの信号に基づいて、例えば直流モータにより構成された電動モータ2を駆動し側扉を開閉する。具体的な指令信号及び検出信号には、例えば扉動作指令信号としての開信号及び閉信号、非常時に側扉をわずかに開くための一斉解錠信号、全閉していない側扉のみを再度開閉動作させるための再開閉信号、及び鉄道車両の走行速度が所定の速度に達したことを示す所定速度検知信号としての5km/h検知信号が入力されている。これらの開信号、閉信号、一斉解錠信号、及び再開閉信号は、例えば車掌の操作に応じて出力されるものであり、全ての車両を引通された車両引通し線によって伝達される。また、ローカルコントロールユニット1には、ドア装置3に含まれたドアロックスイッチ(以下、”DLS”(DLS:Door Lock Switch)ともいう)から後述のドアロック接点信号が入力されている。
【0021】
また、ローカルコントロールユニット1には、当該ローカルコントロールユニット1が、後に詳述するように、ON保持故障等の故障を検知したときに点灯する故障表示ランプ4が接続されている。この故障表示ランプ4を設けることにより、例えば定期点検作業において、作業員等の点検作業を容易なものとすることができる。
尚、上記の説明以外に、例えば鉄道車両の運転台とローカルコントロールユニット1とを双方向のデータ通信線で接続する構成でもよい。
【0022】
図2は、上記ローカルコントロールユニット1の具体的な構成を示すブロック図である。
図2において、ローカルコントロールユニット1は、マイコン制御方式のものであって、所定のプログラムに従って動作する制御手段としてのCPU5と、各種の指令信号及び検出信号をCPU5に入力するための入力変換回路6及びドアロックスイッチ入力変換回路(以下、”DLS入力変換回路”という)7とを備えている。CPU5には、上述のプログラム及び入力した信号に基づいて、所定の機能を実行する機能部5aと、入力信号に所定の論理判定を行う判定論理部5b及びDLS判定論理部5cとが設けられている。尚、上述のプログラムは、メモリまたは類似の記録媒体(図示せず)に格納されている。
【0023】
ローカルコントロールユニット1には、電動モータ2に駆動電力を供給するための出力ドライバ8、CPU5と出力ドライバ8との間に設けられたプログラマブルロジックデバイス(以下、”PLD”(PLD:Programmable Logic Device)という)9、上記出力ドライバ8に接続されたチョッパ回路/Hブリッジ回路10、及びチョッパ回路/Hブリッジ回路10と電動モータ2との間に接続されたモータ短絡回路11が設けられている。上記の出力ドライバ8、PLD 9、及びチョッパ回路/Hブリッジ回路10は、電動モータ2に駆動電流を供給するための駆動手段を構成している。モータ短絡回路11には、電動モータ2を短絡するためのSCRリレーが設けられている。
【0024】
ローカルコントロールユニット1は、上記チョッパ回路/Hブリッジ回路10に接続されたモータ電流検出回路12、モータ過電流検出回路13、及びモータ電圧検出回路14と、これらの検出回路とCPU5との間に設けられたA/Dコンバータ15と、後述の電源手段とチョッパ回路/Hブリッジ回路10との間に接続された開回路遮断回路16と、開回路遮断回路16を制御するための開回路遮断制御回路17とを具備している。開回路遮断回路16には、例えばCPU5の暴走により、側扉が不用意に開成することを防止するためのフェイルセーフリレー(FSR)が設けられている。
【0025】
また、ローカルコントロールユニット1には、各部に供給すべき電源電圧を発生するための電源手段としてのフィルタ回路18及びDC−DCコンバータを含んだ定電圧回路19と、CPU5に接続されたチャイム出力回路20及び通信回路21とが設けられている。チャイム出力回路20及び通信回路21には、表示器22及び外部端末装置にそれぞれ接続するためのインターフェース(図示せず)が設けられている。尚、表示器22は、例えばLEDディスプレイにより構成され、鉄道車両の内部に設けられて、ローカルコントロールユニット1からの指示信号に従って、行き先情報や次の駅名などのような各種の案内情報を表示する。また、上記外部端末装置は、例えばノート型パソコンを含んだ携帯情報端末であり、鉄道車両の定期点検作業時などにおいて、当該制御装置に接続されて作業員等の点検作業に使用される。上記通信回路21を内蔵することにより、ローカルコントロールユニット1は、例えばRS232Cに準拠したケーブルを介して外部のコンピュータ機器に接続可能となり、双方向のデータ通信を行うことができる。
【0026】
ここで、図3を用いて、CPU5、入力変換回路6、及びDLS入力変換回路7について、具体的に説明する。
図3は、図2に示したCPU5、入力変換回路6、及びDLS入力変換回路7の詳細な構成を示すブロック図である。尚、以下の説明では、説明の簡略化のために、CPU5が二重化された入力信号を処理する構成を例示して説明する。
図3に示すように、CPU5の機能部5aが実行する機能には、例えば故障検知機能、モータ制御機能、戸挟み検知機能、及びドア位置検出機能がある。上記故障検知機能には、当該ローカルコントロールユニット1の自己診断(モニタリング)機能が含まれている。また、この故障検知機能には、入力変換回路6やDLS入力変換回路7から入力される二重系とした2つの入力信号を相互に検証して、各入力信号の妥当性を判断し異常を生じた信号を判別することも含まれている(詳細は後述)。モータ制御機能には、電動モータ2の回転方向を検出するモータ回転方向検出機能、電動モータ2への供給電圧を設定するモータ電圧設定機能、及び電動モータ2の回転数を可変にして、側扉の開閉速度を変更するためのクッション制御機能が含まれている。
【0027】
判定論理部5bには、入力変換回路6から入力される入力信号に応じて、論理判定を行う5km/h信号判定論理部5b1、開信号判定論理部5b2、一斉解錠判定論理部5b3、再開閉信号判定論理部5b4、及び閉信号判定論理部5b5が設けられている。
判定論理部5bとDLS判定論理部5cとは、各々二重化された入力信号を少なくとも入力して、それらの入力信号の状態が一致しているか否かについて判断し、その判断結果を示す信号を機能部5aに出力している。これらの判定論理部5b及びDLS判定論理部5cには、図示を省略したフィルタ手段が設けられて、入力信号のチャタリングをカットしている。詳細には、上記フィルタ手段は、入力信号のON状態またはOFF状態が所定の時間(例えば、50msec)の間持続しない場合、その入力信号はチャタリングであると判断しカットして、機能部5aに出力しない。
【0028】
判定論理部5bに含まれた各判定論理部のうち、所定の判定論理部、具体的には、5km/h信号判定論理部5b1、開信号判定論理部5b2、及び閉信号判定論理部5b5は、入力信号の状態が不一致になった場合、入力信号をそのまま機能部5aに出力している。機能部5aは、後に詳述するように、ON状態からOFF状態に変化する入力信号を判別し、正常であると判断した信号系の入力信号を用いて側扉を制御する。
一方、一斉解錠判定論理部5b3、再開閉信号判定論理部5b4、またはDLS判定論理部5cに入力した2つの入力信号の状態が不一致になった場合、機能部5aはその入力信号の信号系に故障が生じたと判断して、以後の入力信号を無効とする。さらに、機能部5aは、故障が生じたと判断した信号系を含む故障情報を生成してメモリに記録する。これにより、故障を生じたと判断した信号系を判別して、その信号系の故障を容易に解消することができる。
【0029】
入力変換回路6は、例えば複数のフォトカプラを含んで構成され、電気的絶縁状態を保ちつつ、入力信号をCPU5に入力できる構成になっている。この入力変換回路6には、上述の5km/h検知信号、開信号、閉信号、一斉解錠信号、及び再開閉信号が入力されている。これらの入力信号は、上述したように、例えば車掌の操作に応じて伝達されたものであり、当該入力変換回路6によって二重化されて2つの信号としてCPU5に出力されている。さらに、この入力変換回路6には、モータ短絡回路11(図2)からSCRリレーの動作状態を示す複数、例えば2つの信号が上記のSCRリレーのフィードバック信号1,2としてそれぞれ入力されている。尚、これらのフィードバック信号1,2は、上記モータ短絡回路11内に設けた後述の検出手段によって検出したフィードバック信号を二重化したものである。また、これ以外に、二つの検出手段を上記モータ短絡回路11内に設けて、フィードバック信号1,2を互いに独立して入力変換回路6に出力してもよい。
【0030】
具体的には、入力変換回路6には、図3に示すように、SCR1入力変換回路6aと、SCR2入力変換回路6bと、5km/h入力変換回路6cと、開信号用の1系入力変換回路6d及び2系入力変換回路6eと、一斉解錠信号用の1系入力変換回路6f及び2系入力変換回路6gと、再開閉信号用の1系入力変換回路6h及び2系入力変換回路6iと、閉信号用の1系入力変換回路6j及び2系入力変換回路6kとが設けられている。SCR1入力変換回路6a、SCR2入力変換回路6b、及び5km/h入力変換回路6cは5km/h信号判定論理部5b1に接続され、開信号用の1系入力変換回路6d及び2系入力変換回路6eは開信号判定論理部5b2に接続されている。一斉解錠信号用の1系入力変換回路6f及び2系入力変換回路6gは一斉解錠判定論理部5b3に接続され、再開閉信号用の1系入力変換回路6h及び2系入力変換回路6iは再開閉信号判定論理部5b4に接続され、閉信号用の1系入力変換回路6j及び2系入力変換回路6kは閉信号判定論理部5b5に接続されている。
【0031】
DLS入力変換回路7は、例えば複数のフォトカプラを含んで構成され、電気的絶縁状態を保ちつつ、側扉毎に設けられたドアロックスイッチ(DLS)3aからのドアロック接点信号をCPU5に入力できる構成になっている。詳細には、DLS入力変換回路7には、図3に示すように、2つのDLS入力変換回路7a、7bが設けられ、ドアロックスイッチ3aからのドアロック接点信号がそれぞれ二重化され、CPU5のDLS判定論理部5cに出力されている。上記ドアロックスイッチ3aは、例えばリミットスイッチにより構成されたものであり、側扉が全閉状態になったときに作動し、その全閉状態を保持するためのロック機構(図示せず)に付随して設けられている。このロック機構が施錠状態になると、ドアロックスイッチ3aは側扉が全閉状態でロックされたことを示すロック検知信号をドアロック接点信号としてDLS入力変換回路7に出力する。尚、上記のロック機構は、側扉を開成する方向に電動モータ2を駆動することによって解錠されるように構成されている。
【0032】
図2に戻って、出力ドライバ8には、PLD 9を介して、電動モータ2を駆動するための制御信号がCPU5から入力される。具体的には、側扉を開成する場合、出力ドライバ8にはCPU5から電動モータ2を正転させるための制御信号が入力される。逆に、側扉を閉成する場合、出力ドライバ8にはCPU5から電動モータ2を逆転させるための制御信号が入力される。CPU5からPLD 9を介して出力ドライバ8に出力される信号には、その出力ドライバ8及びPLD 9をリセットするためのリセット信号がある。
【0033】
電動モータ2に流れる電流の方向及び大きさは、上記のモータ電流検出回路12によって検出され、その検出信号はA/Dコンバータ15によってデジタル信号に変換された後、CPU5にフィードバックされている。同様に、電動モータ2に印加された電圧は、上記のモータ電圧検出回路14によって検出され、その検出信号はA/Dコンバータ15によってデジタル信号に変換された後、CPU5にフィードバックされている。CPU5は、上記のフィードバックされた検出信号に基づいて、制御信号のパルス幅またはデューティ比を所望のモータ回転速度に対応するように変更し出力して、所望のモータ制御機能を行う。
【0034】
モータ短絡回路11に設けられたSCRリレーは、5km/h検知信号に基づいて励磁されるSCRリレーコイル、及び前記SCRリレーコイルによって開閉するリレー接点を備えている(図示せず)。SCRリレーは、上記SCRリレーコイルの働きにより、チョッパ回路/Hブリッジ回路10からの電流を電動モータ2に供給する通電位置と、電動モータ2を短絡してその動作を禁止するとともにブレーキをかける短絡位置とをとることができる。つまり、鉄道車両の速度が所定の速度である5km/h以上になると、SCRリレーコイルは短絡位置に制御され、電動モータ2の回転を禁止する。したがって、鉄道車両が5km/h以上で走行している期間に側扉が開成されることはない。また、5km/h検知信号(所定速度検知信号)は、CPU5に対して制御信号の出力を禁止するから、5km/h以上での走行中には、出力ドライバ8に電動モータ2を駆動するための制御信号が入力されることもない。
【0035】
チョッパ回路/Hブリッジ回路10の電源側には、フェイルセーフリレー(FSR)を有する開回路遮断回路16が接続されている。このフェイルセーフリレーは、開回路遮断制御回路17からの制御信号によって励磁されるリレーコイル、及び上記チョッパ回路/Hブリッジ回路10のHブリッジ回路に設けられ、リレーコイルによって開閉するリレー接点を備えている(図示せず)。開回路遮断制御回路17は、5km/h検知信号、開信号、または一斉解錠信号に従って、フェイルセーフリレーを作動するための制御信号を生成し出力する。
フェイルセーフリレーは、そのリレーコイルの働きにより、上記電源手段からの電力供給を制御して、チョッパ回路/Hブリッジ回路10からモータ短絡回路11への電動モータ2の駆動電力の供給を制御する。これにより、例えばCPU5の暴走などによって電動モータ2を回転させるための制御信号が誤って出力されていた場合でも、フェイルセーフリレーによって電動モータ2への駆動電力の供給を行わずに、不用意に側扉が開成されることを防止することができる。
開回路遮断回路16及び開回路遮断制御回路17は、FSR接点フィードバック信号及びFSR自己保持信号をCPU5にそれぞれ出力して、フェイルセーフリレーの動作状態をCPU5に通知している。
【0036】
以下、図4に示すフローチャートを用いて、二重系とした2つの入力信号を処理するCPU5の処理動作について、具体的に説明する。尚、以下の説明では、二重系とした開信号及び閉信号のうち、開信号を処理する処理動作を例示して説明し、その処理動作と同様な処理動作を行う閉信号のものについては省略する。図4に示すように、CPU5は、まず1系入力変換回路6dからの1系の開信号がON状態かどうかについて判別して(ステップS1)、1系の開信号がON状態である場合、2系入力変換回路6eからの2系の開信号がON状態かどうかについて判別する(ステップS2)。
2系の開信号がON状態である場合、CPU5は側扉の開成を指示する開指令をON状態として制御信号に含めて出力する(ステップS3)。
【0037】
一方、上記ステップS1において、1系の開信号がON状態でない場合、つまりOFF状態である場合、CPU5は2系の開信号がON状態かどうかについて判別する(ステップS4)。
2系の開信号がON状態である場合、CPU5は1系及び2系の開信号が不一致な状態であることを検知して、それらの開信号が不一致な状態である時間を計測する。そして、CPU5は、計測している時間が予め設定された所定の設定時間(例えば、50msec)を越えるかどうかについて調べる(ステップS5)。
そして、計測している時間が上記の設定時間を越えたとき、CPU5は1系または2系の開信号がOFF状態かどうかについて判別して(ステップS6)、いずれかの開信号がOFF状態である場合、CPU5は上記開指令を生成し、制御信号に含めて出力する(ステップS7)。また、いずれかの開信号もOFF状態でない場合、CPU5はいずれかの開信号がOFF状態となるまで、ステップS6の判別処理を繰り返し行う。
【0038】
また、上記ステップS2において、2系の開信号がOFF状態である場合、1系の開信号はON状態であるので、CPU5は1系及び2系の開信号の状態が不一致な状態であると判断する。そして、CPU5は、上述のステップS5、S6、及びS7に示した処理動作を行う。
また、上記ステップS4において、2系の開信号がOFF状態である場合、1系及び2系の開信号はともにOFF状態であるので、CPU5は開指令をOFF状態として制御信号に含めて出力する(ステップS7)。同様に、上記ステップS5において、計測している時間が設定時間を超えずに、1系及び2系の開信号が一致した場合も、1系及び2系の開信号はともにOFF状態であり、CPU5は上記ステップS7に示した処理動作を行う。
【0039】
ここで、図5乃至図7を用いて、CPU5での二重系とした入力信号、例えば2つの開信号を相互に検証して、各開信号の妥当性を判断し異常を生じた開信号を判別する処理動作について、詳細に説明する。
図5は、図2に示したCPU5での二重系とした信号系に異常が生じていない場合の動作例を示すタイミングチャートである。図6は、図2に示したCPU5での二重系とした信号系の一方の信号系にOFF保持故障が生じている場合の動作例を示すタイミングチャートである。図7は、図2に示したCPU5での二重系とした信号系の一方の信号系にON保持故障が生じている場合の動作例を示すタイミングチャートである。
図5に示すように、1系の開信号が時点T0でON状態に変化すると、CPU5は1系及び2系の開信号が不一致な状態であることを検知して、不一致な状態である時間を時点T0から計測する。そして、上記の設定時間以内の時点T1で2系の開信号がON状態となると、CPU5は1系及び2系の開信号が正常な信号であると判断して、開指令を直ちにON状態として出力する。その後、CPU5は、1系の開信号がOFF状態に立ち下がった時点T2で、開指令をON状態からOFF状態に変化させる。これにより、側扉が開成される。
【0040】
また、図6に示すように、OFF状態が保持されるOFF保持故障が、例えば1系の開信号に生じている場合、2系の開信号が時点T3でON状態に変化すると、CPU5は1系及び2系の開信号が不一致な状態であることを検知して、不一致な状態である時間を時点T3から計測する。そして、上記の設定時間を越えた時点T4で2系の開信号がON状態からOFF状態に立ち下がると、CPU5は上記のように状態が変化した2系の開信号は正常な信号であると判断して、開指令を直ちにON状態として出力する。さらに、CPU5は、OFF状態から変化しなかった1系の開信号にOFF保持故障が生じていると判断する。そして、CPU5は、OFF保持故障が生じていると判断した信号系(開信号の1系)と、故障の内容(OFF保持故障)を含んだ故障情報を作成しメモリに記録する。その後、CPU5は、例えば0.5secの間、開指令をON状態で維持し時点T5でOFF状態に変化させる。このように、CPU5は、OFF保持故障を生じたと判断した1系の開信号を除いて、正常な2系の開信号により、側扉を開成することができる。さらに、上記のような故障情報を記録しているので、例えば鉄道車両の定期点検作業時において、作業員等は故障を生じた開信号の1系を判別し事後確認することができ、その1系の故障を容易に解消することができる。尚、OFF保持故障を検知した時刻(時点T4)などの時間情報を故障情報に含めて記録しても良い。
【0041】
また、図7に示すように、例えば1系の開信号が時点T6でON状態に変化しそのON状態が保持されるON保持故障が生じている場合、CPU5はその時点T6で1系及び2系の開信号が不一致な状態であることを検知して、不一致な状態である時間の計測を開始する。そして、上記の設定時間を越えた時点T7で2系の開信号がOFF状態からON状態に立ち上がり、時点T8でON状態からOFF状態に立ち下がると、CPU5は上記のように状態が変化した2系の開信号は正常な信号であると判断して、開指令を直ちにON状態として出力する。さらに、CPU5は、ON状態から変化しなかった1系の開信号にON保持故障が生じていると判断する。そして、CPU5は、ON保持故障が生じていると判断した信号系(開信号の1系)と、故障の内容(ON保持故障)を含んだ故障情報を作成しメモリに記録する。その後、CPU5は、例えば0.5secの間、開指令をON状態で維持し時点T9でOFF状態に変化させる。このように、CPU5は、ON保持故障を生じたと判断した1系の開信号を除いて、正常な2系の開信号により、側扉を開成することができる。さらに、上記のような故障情報を記録しているので、例えば鉄道車両の定期点検作業時において、作業員等は故障を生じた開信号の1系を判別し事後確認することができ、その1系の故障を容易に解消することができる。尚、ON保持故障を検知した時刻(時点T8)などの時間情報を故障情報に含めて記録しても良い。
【0042】
以上のように、CPU5は、二重系とした2つの開信号を相互に検証して、各入力信号の妥当性を判断し異常を生じた開信号を判別している。その結果、CPU5は、二重系とした一方の信号系に故障が生じた場合でも、側扉の作動を確保して鉄道車両の運行を阻害することなく、他方の信号系の開信号を用いて側扉を開成することができる。
【0043】
尚、上述の説明では、二重系とした2つの入力信号(開信号)に対する処理動作を説明したが、本実施形態の鉄道車両用側扉制御装置はこれに限定されるものではなく、三重系以上に多重化された複数の扉動作指令信号にも適応することができる。具体的には、CPU5が複数の扉動作指令信号のうち、少なくとも1つの扉動作指令信号がON状態に変化した時点から所定の設定時間以内に、残りの扉動作指令信号がON状態に変化しないことを検知した場合、CPU5は少なくとも1つの扉動作指令信号のON状態からOFF状態への立ち下がり、または上記残りの扉動作指令信号に含まれたいずれか1つの扉動作指令信号のON状態からOFF状態への立ち下がりに基づいて、電動モータ2を駆動するための制御信号を出力すればよい。これにより、CPU5は、少なくとも1つの扉動作指令信号、または残りの扉動作指令信号に含まれたいずれか1つの扉動作指令信号がON状態からOFF状態に変化することを検知してその信号系に故障が生じていないと判断し、さらにON状態からOFF状態に変化しない信号系に故障が生じたと判断することができる。したがって、本実施形態の鉄道車両用側扉制御装置では、多重系とした複数の信号のうち正常な信号だけを検知して、その正常な信号を用いて当該制御装置の機能を低下することなく、側扉の制御を行えるという、冗長性を向上した制御装置を実現することができる。
【0044】
次に、CPU5での5km/h検知信号(所定速度検知信号)とSCRリレーの各フィードバック信号1,2とを用いた故障検知機能の処理動作について、具体的に説明する。
5km/h検知信号とフィードバック信号1,2の各状態の組み合わせは、下記の表1に示す状態1から状態8の8つの状態がある。尚、表1において、CPU5にデジタル入力される5km/h検知信号のON状態とは鉄道車両が5km/h以上の速度で走行している場合を示し、同検知信号のOFF状態とは鉄道車両が5km/h未満の速度で走行している場合を示している。また、表1において、SCRリレーの各フィードバック信号1,2のON状態とはSCRリレーのリレー接点が閉じられている場合を示し、各フィードバック信号1,2のOFF状態とは上記のリレー接点が開かれている場合を示している。
【0045】
【表1】
【0046】
表1の状態1に示すように、5km/h検知信号及びフィードバック信号1,2が全てON状態である場合、CPU5は5km/h検知信号と、各フィードバック信号1,2によるSCRリレーの動作状態とに整合がとれていると判断して、5km/h検知信号の信号系及びSCRリレーに故障が生じていないと判断する。そして、CPU5は、5km/h検知信号が有りと認識して、電動モータ2を駆動するための制御信号の出力を禁止する。
また、表1の状態2に示すように、5km/h検知信号及びフィードバック信号1がON状態であり、フィードバック信号2がOFF状態である場合、CPU5はそれらの信号は整合がとれていないと判断して、その判断した時点から所定の時間(例えば、100msec)を経過した時点で、フィードバック信号2に異常が生じたと判断する。そして、CPU5は、5km/h検知信号が有りと認識して、電動モータ2を駆動するための制御信号の出力を禁止する。
【0047】
また、表1の状態3に示すように、5km/h検知信号及びフィードバック信号2がON状態であり、フィードバック信号1がOFF状態である場合、CPU5はそれらの信号は整合がとれていないと判断して、その判断した時点から上記所定の時間を経過した時点で、フィードバック信号1に異常が生じたと判断する。そして、CPU5は、5km/h検知信号が有りと認識して、電動モータ2を駆動するための制御信号の出力を禁止する。
また、表1の状態4に示すように、5km/h検知信号及びフィードバック信号1,2が全てOFF状態である場合、CPU5はそれらの信号に整合がとれていると判断して、5km/h検知信号の信号系及びSCRリレーに故障が生じていないと判断する。そして、CPU5は、5km/h検知信号が無しと認識して、電動モータ2を駆動するための制御信号の出力を認める。
【0048】
また、表1の状態5に示すように、5km/h検知信号及びフィードバック信号2がOFF状態であり、フィードバック信号1がON状態である場合、CPU5はそれらの信号は整合がとれていないと判断して、その判断した時点から上記所定の時間を経過した時点で、フィードバック信号1に異常が生じたと判断する。そして、CPU5は、5km/h検知信号が無しと認識して、電動モータ2を駆動するための制御信号の出力を認める。
また、表1の状態6に示すように、5km/h検知信号及びフィードバック信号1がOFF状態であり、フィードバック信号2がON状態である場合、CPU5はそれらの信号は整合がとれていないと判断して、その判断した時点から上記所定の時間を経過した時点で、フィードバック信号2に異常が生じたと判断する。そして、CPU5は、5km/h検知信号が無しと認識して、電動モータ2を駆動するための制御信号の出力を認める。
【0049】
また、表1の状態7に示すように、5km/h検知信号がON状態であり、フィードバック信号1,2がOFF状態である場合、CPU5はそれらの信号は整合がとれていないと判断して、その判断した時点から上記所定の時間を経過した時点で、5km/h検知信号またはSCRリレーに異常が生じたと判断する。そして、CPU5は、5km/h検知信号が有りと認識して、5km/h検知信号がON状態からOFF状態に変化するまでの間、電動モータ2を駆動するための制御信号の出力を禁止する。
また、表1の状態8に示すように、5km/h検知信号がOFF状態であり、全てのフィードバック信号1,2がON状態である場合、CPU5はそれらの信号は整合がとれていないと判断して、その判断した時点から上記所定の時間を経過した時点で、5km/h検知信号に異常が生じたと判断する。そして、CPU5は、5km/h検知信号が有りと認識して、電動モータ2を駆動するための制御信号の出力を禁止する。
【0050】
上記の説明から明らかなように、状態7の場合では、他の状態1〜6及び状態8の場合と異なり、CPU5は入力した5km/h検知信号及びフィードバック信号1,2の状態による多数決の論理を用いていない。詳細には、状態2,3,5,6,8の各状態では、CPU5は上記3つの入力信号による多数決によって5km/h検知信号の有無を判断している。これに対して、状態7の場合では、CPU5は5km/h検知信号が有りと認識して、電動モータ2を駆動するための制御信号の出力を禁止している。つまり、状態7では、5km/h検知信号のON保持故障またはリレーコイルの断線を含むSCRリレーの故障を想定して、上記制御信号の出力を禁止している。これにより、状態7では、電動モータ2の駆動を確実に防いで、乗客に対する安全性を確保することができる。
【0051】
ここで、図8及び図9を用いて、上記状態7での5km/h検知信号またはSCRリレーの故障を判別する処理動作について、詳細に説明する。
図8は、図2に示したCPU5における、表1の状態7に含まれる故障に対する動作例を示すタイミングチャートである。図9は、図2に示したCPU5における、表1の状態7に含まれる別の故障に対する動作例を示すタイミングチャートである。
図8に示すように、デジタル入力された5km/h検知信号が時点T10でON状態に変化しそのON状態が保持されるON保持故障が生じている場合、CPU5はその時点T10で5km/h検知信号と、各フィードバック信号1,2によるSCRリレーの動作状態とに整合がとれていないことを検知して、整合がとれていない時間の計測を開始する。そして、CPU5は、上記の時間を経過した経過時点T11で5km/h検知信号またはSCRリレーに異常が生じたと判断して、5km/h検知信号が有りと認識して、電動モータ2を駆動するための制御信号の出力を禁止する。
【0052】
その後、各フィードバック信号1,2が時点T12でOFF状態からON状態に共に立ち上がり、いずれかのフィードバック信号、例えばフィードバック信号1が時点T13でON状態からOFF状態に立ち下がると、CPU5は上記のように状態が変化したフィードバック信号1は正常な信号であると判断する。さらに、CPU5は、ON状態から変化しなかった5km/h検知信号の信号系にON保持故障が生じていると判断する。このとき、CPU5は、乗客に対する安全性を優先して、5km/h検知信号が有りと認識して、電動モータ2を駆動するための制御信号の出力を禁止する。尚、この制御信号の出力の禁止は、5km/h検知信号がOFF状態に変化するまで継続される。
【0053】
また、上記時点T13において、ON保持故障が5km/h検知信号の信号系に生じていると判断したとき、CPU5はその信号系でのON保持故障を検知したことを故障表示ランプ4を点灯させることで作業員等に通知する。尚、CPU5が検知したON保持故障を、例えば運転台に即座に通知して車掌等の鉄道車両の乗務員に通知するよう構成してもよい。さらに、CPU5は、ON保持故障が生じていると判断した信号系(5km/h検知信号)と、故障の内容(ON保持故障)を含んだ故障情報を作成しメモリに記録する。これにより、例えば鉄道車両の定期点検作業時において、作業員等はON保持故障を生じた5km/h検知信号を判別し事後確認することができ、その5km/h検知信号の故障を容易に解消することができる。尚、CPU5は、故障の内容を特定できるまでは故障情報を生成し記録しない。つまり、CPU5は、同図に示すように、時点T10から時点T13までの間は故障が生じていると認識しない。また、ON保持故障を検知した時刻(時点T13)などの時間情報を故障情報に含めて記録しても良い。
【0054】
また、図9に示すように、5km/h検知信号だけが時点T14でON状態に変化した場合、CPU5はその時点T14で5km/h検知信号と、各フィードバック信号1,2によるSCRリレーの動作状態とに整合がとれていないことを検知して、整合がとれていない時間の計測を開始する。そして、CPU5は、上記の時間を経過した経過時点T15で5km/h検知信号またはSCRリレーに異常が生じたと判断して、5km/h検知信号が有りと認識して、電動モータ2を駆動するための制御信号の出力を禁止する。
その後、CPU5は、5km/h検知信号が時点T16でON状態からOFF状態に変化したことを検知すると、CPU5はこのように状態が変化した5km/h検知信号は正常な信号であると判断する。そして、CPU5は、5km/h検知信号が無しと認識して、電動モータ2を駆動するための制御信号の出力を認める。
【0055】
さらに、CPU5は、上記経過時点T15から時点T16の間に、全てのフィードバック信号1,2がON状態に変化しないことを検知した場合、SCRリレーに故障が生じていると判断する。そして、CPU5は、故障が生じていると判断したSCRリレーと、故障の内容(OFF保持故障)を含んだ故障情報を作成しメモリに記録する。これにより、CPU5は、故障を生じたと判断したSCRリレーによる誤動作の発生を防止して、側扉を適切に制御することができる。さらに、上記のような故障情報を記録しているので、例えば鉄道車両の定期点検作業時において、作業員等は故障を生じたSCRリレーを判別し事後確認することができ、そのSCRリレーの故障を容易に解消することができる。尚、CPU5は、図8に示した場合と同様に、時点T14から時点T16までの間は故障が生じていると認識せずに、故障の内容が特定できたあと、故障情報を生成し記録する。また、故障を検知した時刻(時点T16)などの時間情報を故障情報に含めて記録しても良い。
【0056】
また、上述の状態3及び状態5において、CPU5がフィードバック信号1に異常が生じたと判断したとき、CPU5はフィードバック信号1の信号系に故障が生じたことを含む故障情報を生成してメモリに記録する。同様に、状態2及び状態6において、CPU5がフィードバック信号2に異常が生じたと判断したとき、CPU5はフィードバック信号2の信号系に故障が生じたことを含む故障情報を生成してメモリに記録する。同様に、上記状態8において、CPU5が5km/h検知信号に異常が生じたと判断したとき、CPU5は5km/h検知信号の信号系に故障が生じたことを含む故障情報を生成してメモリに記録する。これにより、例えば鉄道車両の定期点検作業時において、作業員等は故障を生じたフィードバック信号1,2及び5km/h検知信号の信号系を判別し事後確認することができ、その信号系の故障を容易に解消することができる。
【0057】
以上のように、CPU5は、5km/h検知信号と各フィードバック信号1,2とを入力して、入力した5km/h検知信号と各フィードバック信号1,2の妥当性について相互に検証し異常が生じていないかどうかについて判別して、電動モータ2への給電を禁止することができる。その結果、CPU5は、異常を生じた5km/h検知信号またはSCRリレーによる側扉の開成動作を確実に防止することができ、乗客に対する安全性を向上することができる。
【0058】
尚、上述の説明では、5km/h検知信号(所定速度検知信号)と2つのフィードバック信号1,2とを用いた処理動作を説明したが、本実施形態の鉄道車両用側扉制御装置はこれに限定されるものではなく、3つ以上の複数のフィードバック信号を用いることもできる。
【0059】
【発明の効果】
以上のように構成された本発明は以下の効果を奏する。
請求項1の鉄道車両用側扉制御装置によれば、制御手段は、少なくとも1つの扉動作指令信号、または残りの扉動作指令信号に含まれたいずれか1つの扉動作指令信号がON状態からOFF状態に変化することを検知して、ON状態からOFF状態に変化しない信号系に故障が生じたと判断することができる。その結果、制御手段は、多重系としたいくつかの信号系に故障が生じた場合でも、側扉の作動を確保して車両の運行を阻害することなく、残りの信号系の扉動作指令信号を用いて側扉を制御することができる。
【0060】
請求項2の鉄道車両用側扉制御装置によれば、制御手段は、上記ON保持故障を生じたと判断した信号系の扉動作指令信号を除いて、他の正常な信号系の扉動作指令信号により、側扉を制御することができる。
請求項3の鉄道車両用側扉制御装置によれば、制御手段は、上記OFF保持故障を生じたと判断した信号系の扉動作指令信号を除いて、他の正常な信号系の扉動作指令信号により、側扉を制御することができる。
【0061】
請求項4の鉄道車両用側扉制御装置によれば、故障を生じたと判断した信号系を判別して、その信号系の故障を作業員等が事後確認することができる。
請求項5の鉄道車両用側扉制御装置によれば、制御手段は、上記少なくとも1つの扉動作指令信号の信号系にON保持故障が生じた場合でも、残りの扉動作指令信号に含まれたいずれか1つの扉動作指令信号の信号系に故障が生じていないことを確認して、側扉を制御することができる。
【0062】
請求項6の鉄道車両用側扉制御装置によれば、制御手段は、上述の所定速度検知信号とSCRリレーの動作状態とに整合がとれていない場合に、それらの所定速度検知信号及び複数の各フィードバック信号の妥当性について相互に検証して、所定速度検知信号またはSCRリレーに生じた異常を検知することができる。そして、所定速度検知信号とSCRリレーの動作状態とに整合がとれていなければ、制御信号の出力が禁止されるので、所定速度検知信号またはSCRリレーに異常が生じている場合には、電動モータへの給電を確実に禁止することができる。
【0063】
請求項7の鉄道車両用側扉制御装置によれば、制御手段は、所定速度検知信号とSCRリレーの動作状態とに整合がとれていない場合に、異常が所定速度検知信号またはSCRリレーに生じたと判断して、電動モータへの給電を禁止することができる。
請求項8の鉄道車両用側扉制御装置によれば、制御手段は、所定速度検知信号またはSCRリレーに異常が生じた場合に、電動モータへの給電を禁止して、乗客に対する安全性を維持することができる。
【0064】
請求項9の鉄道車両用側扉制御装置によれば、制御手段は、上記所定速度検知信号の信号系に生じたON保持故障を検知して、その検知したON保持故障を車掌等の鉄道車両の乗務員に通知することができる。
請求項10の鉄道車両用側扉制御装置によれば、制御手段は、故障を生じたと判断したSCRリレーによる誤動作の発生を防止して、側扉を適切に制御することができる。
請求項11の鉄道車両用側扉制御装置によれば、故障を生じたと判断した所定速度検知信号の信号系またはSCRリレーを判別して、その判別した故障を作業員等が事後確認することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施の形態に係る鉄道車両用側扉制御装置が適用された鉄道車両での側扉を制御するための制御系の具体的な構成例を示す説明図である。
【図2】本発明の一実施の形態であるローカルコントロールユニット1の具体的な構成を示すブロック図である。
【図3】図2に示したCPU5、入力変換回路6、及びDLS入力変換回路7の詳細な構成を示すブロック図である。
【図4】図2に示したCPU5での二重系とした信号系の信号に対する処理動作を示すフローチャートである。
【図5】図2に示したCPU5での二重系とした信号系に異常が生じていない場合の動作例を示すタイミングチャートである。
【図6】図2に示したCPU5での二重系とした信号系の一方の信号系にOFF保持故障が生じている場合の動作例を示すタイミングチャートである。
【図7】図2に示したCPU5での二重系とした信号系の一方の信号系にON保持故障が生じている場合の動作例を示すタイミングチャートである。
【図8】図2に示したCPU5における、表1の状態7に含まれる故障に対する動作例を示すタイミングチャートである。
【図9】図2に示したCPU5における、表1の状態7に含まれる別の故障に対する動作例を示すタイミングチャートである。
【符号の説明】
1 ローカルコントロールユニット
4 電動モータ
5 CPU(制御手段)
8 出力ドライバ
9 PLD
10 チョッパ回路/Hブリッジ回路
11 モータ短絡回路
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の側扉の開閉を制御するための装置であって、
前記側扉を作動させるための扉動作指令信号を入力して、複数の扉動作指令信号に多重化し出力する入力変換回路と、
前記側扉を駆動するための電動モータに駆動電流を供給するための駆動手段と、
前記入力変換回路からの多重化した複数の扉動作指令信号を入力して、その入力した複数の扉動作指令信号に従って、前記駆動手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記複数の扉動作指令信号のうち、少なくとも1つの扉動作指令信号がON状態に変化した時点から所定の設定時間以内に、残りの扉動作指令信号がON状態に変化しないことを検知した場合、前記少なくとも1つの扉動作指令信号のON状態からOFF状態への立ち下がり、または前記残りの扉動作指令信号に含まれたいずれか1つの扉動作指令信号のON状態からOFF状態への立ち下がりに基づいて、前記電動モータを駆動するための制御信号を駆動手段に出力する、
ことを特徴とする鉄道車両用側扉制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記複数の扉動作指令信号のうち、少なくとも1つの扉動作指令信号がON状態に変化した時点から前記設定時間以内に、残りの扉動作指令信号がON状態に変化しないことを検知し、さらにその残りの扉動作指令信号に含まれたいずれか1つの扉動作指令信号が前記設定時間以降の時点でON状態に変化し、その後にOFF状態に変化したことを検知した場合、ON状態が保持されるON保持故障が前記少なくとも1つの扉動作指令信号の信号系に生じたと判断する、
ことを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用側扉制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記複数の扉動作指令信号のうち、少なくとも1つの扉動作指令信号がON状態に変化した時点から前記設定時間以内に、残りの扉動作指令信号がON状態に変化しないことを検知し、さらに前記少なくとも1つの扉動作指令信号が前記設定時間以降の時点でOFF状態に変化したことを検知した場合、OFF状態が保持されるOFF保持故障が前記残りの扉動作指令信号の信号系に生じたと判断する、
ことを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用側扉制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記ON保持故障または前記OFF保持故障を生じたと判断した信号系と、その判断した故障の内容とを少なくとも含んだ故障情報をメモリに記録する、
ことを特徴とする請求項2または3記載の鉄道車両用側扉制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記複数の扉動作指令信号のうち、少なくとも1つの扉動作指令信号がON状態に変化した時点から前記設定時間以内に、残りの扉動作指令信号がON状態に変化しないことを検知した場合、前記残りの扉動作指令信号に含まれたいずれか1つの扉動作指令信号が前記設定時間以降の時点でON状態に変化し、その後に前記いずれか1つの扉動作指令信号がOFF状態に変化することを検知するまでの間、前記制御信号の出力を禁止する、
ことを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用側扉制御装置。
【請求項6】
前記駆動手段と前記電動モータとの間に設けられ、前記電動モータを短絡するためのSCRリレーを有するモータ短絡回路をさらに備え、
前記モータ短絡回路は、前記鉄道車両が所定の速度に達しているか否かを示す所定速度検知信号を入力して、前記鉄道車両が所定の速度以上で走行している場合に前記SCRリレーを動作して前記電動モータを短絡し、さらに前記SCRリレーの動作状態を示す複数の信号を、それぞれ複数のフィードバック信号として前記制御手段に出力し、
前記制御手段は、前記所定速度検知信号を入力し、その入力した所定速度検知信号と、前記モータ短絡回路からの複数の各フィードバック信号とに基づいて、前記制御信号の出力を禁止する、
ことを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用側扉制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、入力した所定速度検知信号と、前記複数の各フィードバック信号による前記SCRリレーの動作状態とに整合がとれているか否かについて判別して、整合がとれていないことを検知した場合、その検知した時点から所定の時間が経過した経過時点で、前記所定速度検知信号または前記SCRリレーに異常が生じたと判断する、
ことを特徴とする請求項6記載の鉄道車両用側扉制御装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記所定速度検知信号が前記経過時点からOFF状態に変化するまでの時点の間、前記制御信号の出力を禁止する、
ことを特徴とする請求項7記載の鉄道車両用側扉制御装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記経過時点から前記複数のフィードバック信号のうち、過半数を越える数のフィードバック信号がON状態に変化し、さらにそのON状態に変化したいずれか1つのフィードバック信号がOFF状態に変化するまでの時点の間に、前記所定速度検知信号がOFF状態に変化しないことを検知した場合、ON状態が保持されるON保持故障が前記所定速度検知信号の信号系に生じたと判断する、
ことを特徴とする請求項7記載の鉄道車両用側扉制御装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記経過時点から前記所定速度検知信号がOFF状態に変化するまでの時点の間に、全ての前記フィードバック信号がON状態に変化しないことを検知した場合、前記SCRリレーに故障が生じたと判断する、
ことを特徴とする請求項7記載の鉄道車両用側扉制御装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記所定速度検知信号の信号系にON保持故障を生じたと判断したとき、または前記SCRリレーに故障が生じたと判断したとき、その判断した故障の内容を少なくとも含んだ故障情報をメモリに記録する、
ことを特徴とする請求項9または10記載の鉄道車両用側扉制御装置。
【請求項1】
鉄道車両の側扉の開閉を制御するための装置であって、
前記側扉を作動させるための扉動作指令信号を入力して、複数の扉動作指令信号に多重化し出力する入力変換回路と、
前記側扉を駆動するための電動モータに駆動電流を供給するための駆動手段と、
前記入力変換回路からの多重化した複数の扉動作指令信号を入力して、その入力した複数の扉動作指令信号に従って、前記駆動手段を制御する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記複数の扉動作指令信号のうち、少なくとも1つの扉動作指令信号がON状態に変化した時点から所定の設定時間以内に、残りの扉動作指令信号がON状態に変化しないことを検知した場合、前記少なくとも1つの扉動作指令信号のON状態からOFF状態への立ち下がり、または前記残りの扉動作指令信号に含まれたいずれか1つの扉動作指令信号のON状態からOFF状態への立ち下がりに基づいて、前記電動モータを駆動するための制御信号を駆動手段に出力する、
ことを特徴とする鉄道車両用側扉制御装置。
【請求項2】
前記制御手段は、前記複数の扉動作指令信号のうち、少なくとも1つの扉動作指令信号がON状態に変化した時点から前記設定時間以内に、残りの扉動作指令信号がON状態に変化しないことを検知し、さらにその残りの扉動作指令信号に含まれたいずれか1つの扉動作指令信号が前記設定時間以降の時点でON状態に変化し、その後にOFF状態に変化したことを検知した場合、ON状態が保持されるON保持故障が前記少なくとも1つの扉動作指令信号の信号系に生じたと判断する、
ことを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用側扉制御装置。
【請求項3】
前記制御手段は、前記複数の扉動作指令信号のうち、少なくとも1つの扉動作指令信号がON状態に変化した時点から前記設定時間以内に、残りの扉動作指令信号がON状態に変化しないことを検知し、さらに前記少なくとも1つの扉動作指令信号が前記設定時間以降の時点でOFF状態に変化したことを検知した場合、OFF状態が保持されるOFF保持故障が前記残りの扉動作指令信号の信号系に生じたと判断する、
ことを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用側扉制御装置。
【請求項4】
前記制御手段は、前記ON保持故障または前記OFF保持故障を生じたと判断した信号系と、その判断した故障の内容とを少なくとも含んだ故障情報をメモリに記録する、
ことを特徴とする請求項2または3記載の鉄道車両用側扉制御装置。
【請求項5】
前記制御手段は、前記複数の扉動作指令信号のうち、少なくとも1つの扉動作指令信号がON状態に変化した時点から前記設定時間以内に、残りの扉動作指令信号がON状態に変化しないことを検知した場合、前記残りの扉動作指令信号に含まれたいずれか1つの扉動作指令信号が前記設定時間以降の時点でON状態に変化し、その後に前記いずれか1つの扉動作指令信号がOFF状態に変化することを検知するまでの間、前記制御信号の出力を禁止する、
ことを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用側扉制御装置。
【請求項6】
前記駆動手段と前記電動モータとの間に設けられ、前記電動モータを短絡するためのSCRリレーを有するモータ短絡回路をさらに備え、
前記モータ短絡回路は、前記鉄道車両が所定の速度に達しているか否かを示す所定速度検知信号を入力して、前記鉄道車両が所定の速度以上で走行している場合に前記SCRリレーを動作して前記電動モータを短絡し、さらに前記SCRリレーの動作状態を示す複数の信号を、それぞれ複数のフィードバック信号として前記制御手段に出力し、
前記制御手段は、前記所定速度検知信号を入力し、その入力した所定速度検知信号と、前記モータ短絡回路からの複数の各フィードバック信号とに基づいて、前記制御信号の出力を禁止する、
ことを特徴とする請求項1記載の鉄道車両用側扉制御装置。
【請求項7】
前記制御手段は、入力した所定速度検知信号と、前記複数の各フィードバック信号による前記SCRリレーの動作状態とに整合がとれているか否かについて判別して、整合がとれていないことを検知した場合、その検知した時点から所定の時間が経過した経過時点で、前記所定速度検知信号または前記SCRリレーに異常が生じたと判断する、
ことを特徴とする請求項6記載の鉄道車両用側扉制御装置。
【請求項8】
前記制御手段は、前記所定速度検知信号が前記経過時点からOFF状態に変化するまでの時点の間、前記制御信号の出力を禁止する、
ことを特徴とする請求項7記載の鉄道車両用側扉制御装置。
【請求項9】
前記制御手段は、前記経過時点から前記複数のフィードバック信号のうち、過半数を越える数のフィードバック信号がON状態に変化し、さらにそのON状態に変化したいずれか1つのフィードバック信号がOFF状態に変化するまでの時点の間に、前記所定速度検知信号がOFF状態に変化しないことを検知した場合、ON状態が保持されるON保持故障が前記所定速度検知信号の信号系に生じたと判断する、
ことを特徴とする請求項7記載の鉄道車両用側扉制御装置。
【請求項10】
前記制御手段は、前記経過時点から前記所定速度検知信号がOFF状態に変化するまでの時点の間に、全ての前記フィードバック信号がON状態に変化しないことを検知した場合、前記SCRリレーに故障が生じたと判断する、
ことを特徴とする請求項7記載の鉄道車両用側扉制御装置。
【請求項11】
前記制御手段は、前記所定速度検知信号の信号系にON保持故障を生じたと判断したとき、または前記SCRリレーに故障が生じたと判断したとき、その判断した故障の内容を少なくとも含んだ故障情報をメモリに記録する、
ことを特徴とする請求項9または10記載の鉄道車両用側扉制御装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【特許番号】特許第3634236号(P3634236)
【登録日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【発行日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−124306(P2000−124306)
【出願日】平成12年4月25日(2000.4.25)
【公開番号】特開2001−301616(P2001−301616A)
【公開日】平成13年10月31日(2001.10.31)
【審査請求日】平成14年5月27日(2002.5.27)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【参考文献】
【文献】特開平09−301161(JP,A)
【文献】特開平11−180303(JP,A)
【文献】特開昭61−102376(JP,A)
【登録日】平成17年1月7日(2005.1.7)
【発行日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成12年4月25日(2000.4.25)
【公開番号】特開2001−301616(P2001−301616A)
【公開日】平成13年10月31日(2001.10.31)
【審査請求日】平成14年5月27日(2002.5.27)
【出願人】(503405689)ナブテスコ株式会社 (737)
【参考文献】
【文献】特開平09−301161(JP,A)
【文献】特開平11−180303(JP,A)
【文献】特開昭61−102376(JP,A)
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