説明

鉄道車両用出入り口クツズリ部の構造

【課題】車いすやベビーカーを押す人達でも,車両ドア部を通過する場合、レールに引っ掛からずスムースに乗降することのできる鉄道車両用出入り口のクツズリ部の構造を提供する。
【解決手段】
鉄道車両の出入り口近傍の床面のドア4の下端部のドア開閉方向に凹部2を形成し、該凹部2内の同じドア開閉方向に該凹部2よりも幅狭で高さの低い凸部3を形成し、前記ドア4の下端面に設けた凹部5と前記床面に設けた凹部2内の凸部3とを嵌合させてなることを特徴とする鉄道車両用出入り口クツズリ部の構造とする。これにより、ドア4の前後には車いすやベビーカーを押す人達や歩行の困難な人達でもスムースに通過することのできる車両用出入り口のクツズリ部とすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉄道車両用出入り口のドア用レールに乗客の足が引っ掛かり、転倒しないようバリアフリーとした鉄道車両用出入り口のクツズリ部の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
図3において、側出入り口の上部の内側側壁には凹部12を設けた上レール11が固定され、ドア10の上部に回転輪13が回転自在に取り付けられ、該回転輪13は前記上レール11の凹部12上を走行するようにしてある。そして、図4に示すように、ドア10の下部は出入り口のクツズリ部14に設けられたレール15にガイドされるようにしてある。クツズリ部14の内側には溝16が形成され、土等の塵埃が車内に入らないように構成されている。
【0003】
上記するように、鉄道車両の側出入り口には開閉用のドア10が設けられる。この場合、出入り口の床にはドア下部案内用のレール15が敷設されているが、該下部案内用レール15があると乗客の乗降の妨げとなるので、鉄道車両の側入り口下部が邪魔にならないような構造が提案されている。このような例として、側入り口下部フレーム10の上面に、階段状に折り曲げ形成され、さらに車体外側を下方へ折り曲げられた防水板14(説明の都合上符号は引用文献1で使用されたものをそのまま使用する、以下、引用文献2や本願発明の明細書で使用のものも同様)が溶接固定され、該防水板上に、前記下部案内レール4が敷設されるとともに該下部案内レール4を挟んで車内側の内側クツズリ15と車外側の外側クツズリ16とで構成されるクツズリがそれぞれ取付金具18を介して前記下部案内レール4と同高に設けられた鉄道車両の側入り口下部構造が提案されている(特許文献1)
【0004】
通常、側引戸3の下部は凹形の溝となっていて、レール5のガイドとなっている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第4335016号
【特許文献2】実開昭55−102613
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
通常、電車の乗降側出入り口には、開閉するドア10が設けてある。図3に示すように、このドア10の上部は、回転輪13が設けてあり、開閉時に、車体上側面内側に設けられた上レール11の凹部12を該回転輪13が転がるように係止させてある。また、図4に示すように。このドア10の下部には、車両床面の側出入り口部近傍に該ドア10をスムースに移動させるためのレール15が固定されている。そして前記レール15の車内側床面には雨水や塵埃等の侵入を防止するため段差の付いた溝16が設けてある。
【0007】
しかし車両に乗り降りする場合、車いすやベビーカーを押す人,シニアカ―の人あるいは歩行困難な人達には、レール15による突起(凸部)や段差の付いた溝16に苦労させられることがある。また、女性にとってハイヒールを履いた場合、細い靴のかかとがレールの突起(凸部)に引っ掛かり転んだりすることもある。さらに、車両が混雑した場合などでは健常者でも足元がレールに引っ掛かることがある。
【0008】
本発明は、上記する課題に対処するためになされたものであり、車いすやベビーカーを押す人達や歩行の困難な人達でも,車両の出入り口を通過する場合、レールに引っ掛からずスムースに乗降することのできる鉄道車両用出入り口のクツズリ部の構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち、本発明は上記する課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、
鉄道車両用出入り口のクツズリ部が、鉄道車両の出入り口近傍の床面のドア4の下端部のドア開閉方向に凹部2を形成し、該凹部2内の同じ車両のドア開閉方向に該凹部2よりも幅狭で高さが凹2と同等か、または低い凸部3を形成し、前記ドア4の下端面に設けた凹部5と前記床面に設けた凹部2内の凸部3とを嵌合させてなることを特徴とするものである。
【0010】
また、請求項2に記載の発明は、鉄道車両の出入り口のクツズリ部1が、鉄道車両の出入り口近傍の床面のドアの下端部のドア開閉方向の外側床面と内側床面との間に凹部2を形成し、該凹部2内に、同じ車両のドア開閉方向に該凹部2よりも幅狭で高さの低い複数の凸部3A,3Bを形成し、前記ドア4の下端面を複数個の凹部5A、5Bとし、これらの床面の凹部2内の複数の凸部3と、ドア4の凹部5とを嵌合させてあることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明は、クツズリ部を凹状とし、側出入り口のレールによる突起(凸部)を無くしたので車両出入り口を通過する場合、車いすやベビーカーを押す人達や歩行の困難な人達でもスムースに車両に乗り降りすることができるようになる。また、ドア下端面と床面の凹部2との間はガイド機能を有することになり、ドアの移動もスムースとなる。さらに、ドア下端面と凹部内の凸部3を複数個とすると係合状態も安定し、ドアの移動状態が円滑でスムースとなる。さらに、本発明では内側クツズリ、外側クツズリ、取付金具等に分かれておらず、部品点数の少なさや簡単な構造により組立工数を低減することができるという特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、鉄道車両の下部の車両長手方向に対して直角の断面図であって、本発明の鉄道車両用出入り口のクツズリ部を示す図である。
【図2】図2は、この発明の鉄道車両用出入り口のクツズリ部を示す図の他の実施例である。
【図3】従来の鉄道車両の上部の片側内部の断面図の簡略図である。
【図4】従来の鉄道車両の下部の片側内部の断面図の簡略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1は、鉄道車両の下部の車両長手方向(前後方向)に対して直角の断面図であって、本発明の鉄道車両用出入り口のクツズリ部を示す図である。本発明には、鉄道車両用出入り口にクツズリ部が形成されている。さらに詳細に説明すると、この図において、鉄道車両(以下、車両とする)のクツズリ部1は、外側クツズリ部1Aと内側クツズリ部1Bとで形成される。この間に凹部2のみで車両用のドア下部をガイドさせることは可能であるが上記[0007]に記載したような凸部に対する問題を回避する為には、ドア開閉方向に、凹部2が形成され、該凹部2の中央部には、同じくドア開閉方向に前記凹部の深さよりも背の低い凸部3が形成されている。すなわち、本発明には、鉄道車両用出入り口に形成される床面には、該床面より高い凸部が無いようにクツズリ部1が形成されている。また、鉄道車両の側出入り口のドア4の下端部に凹部5を形成してある。
【0014】
すなわち、本発明は、鉄道車両の側出入り口のドア4の下端部に凹部5を形成し、鉄道車両の側出入り口近傍の床面にドア開閉方向に凹部2を形成するとともに、該凹部2内に同じくドア開閉方向に該凹部2よりも幅狭で高さの低い凸部3を形成し、該凹部2の凸部3に、前記ドアの下端部に凹部5を嵌合させてある。
【0015】
図2は、この発明の鉄道車両用出入り口のクツズリ部1を示す図の他の実施例である。図1において、車両の床の出入り口の近傍に設けた凹部2にはドア4の下端部に設けた凹部5を嵌合させるが、さらにしっかり外れないように図2に示すように、床の凹部2に二つの凸部3Aと、3Bとを形成し、ドア4の下端部にも二つの凹部5A,5Bを形成し、これらを嵌合させる。
【0016】
本発明の鉄道車両用出入り口のクツズリ部を上記構成とすると、車両の出入り口から出入りする乗客、特に車いすやベビーカーを押す人,シニアカ―の人あるいは歩行困難な人達がレールの突起が邪魔になることもなく、段差もなくスムースに乗り降りすることができるようになる。また、床面の凹部2にドア4の下端部の凹部5を嵌め合うので、ドア4をガイドする機能も有することになり、ドア4の移動もスムースである。
【0017】
本発明の構造は、凹部2が排水や防塵の役割を兼ねているので、従来と同じ様な排水管19を設置することが可能であり、また、排水・廃塵のために凹部2の溝に車外に向かって排水穴20を設置することも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0018】
ベビーカーや車いす生活の人達だけでなく、身体の不自由な人達でも利用しやすいので、本発明の鉄道車両用出入り口のクツズリ部を備えた車両は極めて利用価値が高く、需要も多いので大いに生産される可能性がある。
【符号の説明】
【0019】
1 クツズリ部
1A 外側クツズリ部
1B 内側クツズリ部
2 クツズリ凹部
3 凸部
3A 凹部内の凸部
3B 凹部内の凸部
4 ドア
5 凹部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄道車両の出入り口近傍の床面のドアの下端部のドア開閉方向に凹部2を形成し、該凹部2内の同じ車両のドア開閉方向に該凹部2よりも幅狭で高さが凹2と同等か、または低い凸部3を形成し、前記ドア4の下端面に設けた凹部5と前記床面に設けた凹部2内の凸部3とを嵌合させてなることを特徴とする鉄道車両用出入り口のクツズリ部の構造。
【請求項2】
鉄道車両の出入り口近傍の床面のドアの下端部のドア開閉方向の外側床面と内側床面との間に凹部2を形成し、該凹部2内に、同じドア開閉手方向に該凹部2よりも幅狭で高さの低い複数の凸部3A,3Bを形成し、前記ドア4の下端面を複数個の凹部5A、5Bとし、これらの床面の凹部2内の複数の凸部3と、ドア4の凹部5とを嵌合させてあることを特徴とする鉄道車両の出入り口のクツズリ部の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−82261(P2013−82261A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−222099(P2011−222099)
【出願日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【出願人】(000163372)近畿車輌株式会社 (108)