説明

鉗子栓及び内視鏡

【課題】栓体の一部に低強度部などを形成することなく、栓体の再使用を不可能にする。
【解決手段】鉗子栓21の円筒形状の栓本体29内に、口金20が挿入される挿入穴33を形成する。栓本体29の内周面に、口金20の外周面に形成されたフランジ25に係合する4つの係合部30を設ける。係合部30に、フランジ25に係合する係合爪37と、挿入穴33の中心軸に向けて突出した突出部38を設ける。栓本体29の内周面でかつ各係合部30よりも処置具14の入口側に、スリット43を有する弁体31を設ける。鉗子栓21の取り外し時に、係合解除用具47を挿入穴33内に挿入する。係合解除用具47はスリット43を破壊した後、各係合部30の突出部38を押圧して、各係合爪37とフランジ25との係合を解除する。スリット43が破壊されることで、鉗子栓21の再使用が不可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内視鏡の鉗子口に取り付けられる再使用不可能な鉗子栓、及びこの鉗子栓を備える内視鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から医療分野において、被検者の体内に内視鏡の挿入部を挿入して、体内の観察だけではなく被観察部位に対して各種の処置を行っている。具体的には、鉗子や切開具などの各種処置具を、内視鏡の操作部に設けられた鉗子口から挿入部内の鉗子チャンネルに挿通させて、挿入部先端に開口した鉗子出口から導出させることにより、被観察部位の切除、採取等の各種の処置が行われる。
【0003】
鉗子口には、処置具が挿通可能な鉗子栓が装着されている。この鉗子栓は、体内の内圧の変化等によって、体内の体液、汚物、空気等が鉗子チャンネル内を漏出して、鉗子口から外部に洩れ出ることを防止する。このような鉗子栓としては、使用により体液等が付着するため、感染防止の観点から使用毎に新たなものと交換するように、再使用が不可能なディスポタイプのものが一般的である。
【0004】
特許文献1〜3の鉗子栓には、鉗子口に係合する鉗子栓の係合部の一部に、切り込みなどにより強度の低い低強度部が形成されている。この鉗子栓は、低強度部を破壊することにより鉗子口からの取り外しが可能になる。
【0005】
特許文献4には、ディスポタイプの先端カバーの再使用を防止可能な内視鏡が開示されている。この内視鏡の先端部(以下、内視鏡先端部という)には、先端カバーに設けられた係止片が係止されている。この先端カバーは、治具により係止片を破壊することで取り外しが可能になるので、使用済みの先端カバーの再使用は不可能になる。この特許文献4の記載に基づき、鉗子栓の取り外しの際に、鉗子栓の係合部を治具で破壊させるようにすることで、鉗子栓の再使用を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−043774号公報
【特許文献2】特開2006−346197号公報
【特許文献3】特開平3−047275号公報
【特許文献4】特開平9−075295号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1〜3の鉗子栓には、鉗子口からの取り外し時に破壊し易いように低強度部が形成されているので、鉗子栓を鉗子口に取り付ける際や内視鏡検査時等に、誤って低強度部を破壊してしまうおそれがある。
【0008】
また、特許文献4の記載に基づき鉗子栓の係合部を治具で破壊するためには、この破壊を容易にするために、係合部に予め低強度部を形成する必要がある。このため、特許文献1〜3と同様に誤って低強度部を破壊するおそれがある。
【0009】
本発明の目的は、鉗子栓の一部に低強度部などを形成することなく、再使用が不可能になる鉗子栓、及びこの鉗子栓を備える内視鏡を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明は、内視鏡の外面に設けられた筒状の鉗子口であって、内視鏡の内部に設けられたチャンネルに通じる鉗子口に装着される鉗子栓において、両端が開放されかつその一端から前記鉗子口の口部が挿入される挿入穴を有する筒状の栓本体と、前記挿入穴を形成する前記栓本体の内周面に設けられ、前記挿入穴に挿入された前記鉗子口の外周面に係合する係合部と、前記挿入穴内でかつ前記係合部よりも前記挿入穴の他端側に設けられ、前記挿入穴の他端から挿入された処置具が挿通されるスリットを有し、前記処置具の未挿通時には前記スリットが閉じるとともに、前記処置具の挿通時には前記スリットの縁部が前記処置具に密着することで前記鉗子口からの流体の漏出を防止する弾性のある弁体と、を備え、前記係合部は、前記挿入穴の他端より挿入された係合解除用具から係合解除操作を受けたときに、前記外周面との係合を解除し、前記スリットは、前記係合解除用具により前記係合解除操作がなされるときに、当該係合解除用具から力を受けて破壊されることを特徴とする。
【0011】
前記係合部は、前記栓本体の内周面上にその周方向に沿って複数配置され、前記挿入穴の中心軸に沿う方向に沿って延びたアーム部であって、前記鉗子口の外周面に対向するアーム一端部と、前記鉗子口の手前側に位置するアーム他端部とを有するアーム部と、各前記アーム一端部に設けられ、前記鉗子口の外周面に形成されたフランジに係合する係合爪と、各前記アーム他端部に設けられ、前記中心軸に向けて突出した突出部と、を備えるものであり、前記係合部は、前記係合解除操作として、前記突出部が前記係合解除用具から前記鉗子口の奥側に向かう押圧力を受けたときに、前記アーム一端部が前記鉗子口の外周面から離れかつ前記アーム他端部が前記中心軸に近づくように前記アーム部が傾くことで、前記係合爪と前記フランジとの係合を解除することが好ましい。
【0012】
前記スリットは、前記係合爪と前記フランジとの係合が解除される前に、前記係合解除用具から前記押圧力を受けて破壊されることが好ましい。
【0013】
前記弁体は、前記栓本体とは別体に設けられていることが好ましい。
【0014】
前記係合部は、前記鉗子口の内外を貫通しかつ前記挿入穴の中心軸及び前記スリットに対して略垂直な方向に延びた貫通孔に係合する係合突起であり、前記係合突起は、前記係合解除操作として、前記スリットを挿通した状態で前記鉗子口の内部に挿入された前記係合解除用具から前記鉗子口の外側に向かう半径方向の押圧力を受けたときに、前記貫通孔との係合を解除することが好ましい。
【0015】
前記栓本体の内周面には、前記鉗子口に形成された互いに対向する一対の前記貫通孔にそれぞれ係合する一対の前記係合突起が設けられており、一対の前記係合突起は、鋏状に開閉する前記係合解除用具から前記半径方向の押圧力を受けたときに、それぞれ一対の前記貫通孔との係合を解除することが好ましい。
【0016】
前記スリットは、前記係合突起と前記貫通孔との係合が解除される前に、前記係合解除用具から前記半径方向の押圧力を受けて破壊されることが好ましい。
【0017】
前記栓本体における前記鉗子口の外周面を囲む部分が剛性材料で形成されていることが好ましい。
【0018】
前記弁体には、前記スリットの両端部の各々に対してそのもう一方の端部側とは反対側の領域に、前記スリットに対して略直交する方向に延びる長孔が形成されていることが好ましい。
【0019】
また、本発明の内視鏡は、被検体内に挿入される挿入部と、前記挿入部の基端部に接続された操作部と、前記操作部内に設けられたチャンネルであって、挿入部の先端に設けられた開口に連通するチャンネルと、前記操作部の外表面に設けられ、前記チャンネルに通じる鉗子口と、前記鉗子口に装着される請求項1ないし9いずれか1項記載の鉗子栓と、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明の鉗子栓及び内視鏡は、係合解除用具により係合部と鉗子口の外周面との係合解除操作がなされる際に、この係合解除用具からの力を受けて弁体のスリットが破壊されるので、鉗子栓に切り込みなどの低強度部を形成することなく再使用を防止することができる。その結果、鉗子栓の装着時や内視鏡検査時などに、誤って低強度部を破壊して鉗子栓が使用不能になることが防止される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】内視鏡の斜視図である。
【図2】第1実施形態の鉗子栓の斜視図である。
【図3】鉗子栓の断面図である。
【図4】鉗子栓の分解斜視図である。
【図5】挿入穴及びセット溝の断面図である。
【図6】係合状態の係合部の斜視図である。
【図7】係合解除状態の係合部の斜視図である。
【図8】弁体の斜視図である。
【図9】係合解除用具の斜視図である。
【図10】口金への装着前の鉗子栓の断面図である。
【図11】鉗子栓の取り外し時における、挿入穴への係合解除用具の挿入を説明するための説明図である。
【図12】係合解除用具の先端が弁体まで到達したときの鉗子栓の断面図である。
【図13】係合解除用具の押圧によって、スリットの両端が裂けた弁体の斜視図である。
【図14】係合解除用具の押圧によって、スリットが完全に破壊された弁体の斜視図である。
【図15】各係合部が係合解除状態に切り替えられたときの鉗子栓の断面図である。
【図16】図15中の各係合部の斜視図である。
【図17】図15中の鉗子栓及び係合解除用具の斜視図である。
【図18】口金から取り外された鉗子栓の断面図である。
【図19】第2実施形態の鉗子栓の断面図である。
【図20】口金に装着前の鉗子栓の断面図である。
【図21】鉗子栓の取り外し時における、挿入穴への鋏形状の係合解除用具の挿入を説明するための説明図である。
【図22】係合解除用具により係合突起が内側から押圧されている鉗子栓の断面図である。
【図23】係合突起と貫通孔との係合が解除されたときの鉗子栓の断面図である。
【図24】口金から取り外された鉗子栓の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
[第1実施形態]
図1に示すように、内視鏡10は、例えば気管に挿入する気管支鏡である。この内視鏡10は、気管内に挿入される挿入部11と、挿入部11の基端部に連設された操作部12と、操作部12に接続されたユニバーサルコード13とを備えている。ユニバーサルコード13は、図示しないプロセッサ装置や光源装置などに接続される。
【0023】
挿入部11内には、鉗子などの処置具14を挿通するための鉗子チャンネル16が配設されている。鉗子チャンネル16は、その一端が挿入部11の先端面で開口し、その他端が操作部12に設けられた鉗子口17に接続している。また、鉗子チャンネル16は、挿入部11の先端面の開口から血液や体内汚物などを吸引するための経路としても用いられる。操作部12内には、鉗子チャンネル16から分岐した吸引チャンネル(図示せず)が配設されている。この吸引チャンネルは、操作部12に設けられた吸引ボタン19に接続している。
【0024】
吸引ボタン19は、操作部12外において負圧源(図示せず)に接続している。吸引ボタン19は、押圧操作またはその押圧操作の解除により、吸引通路と負圧源との連通/遮断を切り替える。
【0025】
図2に示すように、鉗子口17には、鉗子口口金(以下、単に口金という)20が設けられている。この口金20には、処置具14が挿通可能なディスポタイプの鉗子栓21が装着される。鉗子栓21は、処置具14により処置を行う際に、体内の体液、汚物、空気等の流体が鉗子チャンネル16内を漏出して口金20から外部に漏れることを防止する。
【0026】
図3ないし図5に示すように、口金20は、鉗子チャンネル16に通じる内部管路23を有している。口金20は、鉗子口17の開口の内部に固定された口金本体部20aと、鉗子口17の開口の手前側に突出した口金先端部20bとを有する。口金本体部20aの外周面には、鉗子口17の内周面との間からの気密を確保するパッキン24が嵌着されている。以下、口金20の奥側の方向を単に「奥方向」といい、この奥方向と反対側の口金20の手前側の方向を単に「手前方向」という。また、口金20及び鉗子栓21の各部の奥方向側の端部、端面をそれぞれ後端部、後端面といい、各部の手前方向側の端部、端面をそれぞれ前端部、前端面という。
【0027】
口金先端部20bは、その外径が口金本体部20aの外径よりも一回り小さく形成されている。口金先端部20bの先端の外周面には、鉗子栓21と係合するフランジ25が形成されている。
【0028】
鉗子栓21は、円筒形状の栓本体29と、4つの係合部30と、弁体31とを有している。栓本体29は、例えば樹脂など弾性材料で形成されている。栓本体29には、その内周面によって挿入穴33が形成されている。この挿入穴33は両端が開放されている。挿入穴33には、その奥方向側の開口から口金先端部20bが挿入され、その手前方向側の開口から処置具14が挿入される。
【0029】
また、栓本体29の内周面には、その周方向に沿って、各係合部30がそれぞれセットされる4つのセット溝34が形成されている。各セット溝34は、栓本体29の後端面から略中央部まで延びている。各セット溝34は、その開口の幅が底面の幅よりも狭くなるような断面台形状を有している。また、各セット溝34の前端部には、他よりも一段深くなる深溝部34aが形成されている。
【0030】
係合部30は、アーム部36と、係合爪37と、突出部38とを有している。アーム部36は、各セット溝34の中にそれぞれ配されており、挿入穴33の中心軸CAに沿う方向に長く延びた形状である。アーム部36は、断面台形状のセット溝34の両側壁面によりセット溝34から脱落しない程度の力で挟持されている。
【0031】
係合爪37は、各アーム部36の後端部(アーム一端部)に形成されており、中心軸CAに向けて突出している。各係合爪37は、挿入穴33の中に挿入された口金先端部20bのフランジ25に係合する。
【0032】
突出部38は、各アーム部36の前端部(アーム他端部)に形成されており、この前端部から中心軸CAに向けて口金先端部20bの開口上まで突出している。突出部38の前端面は、セット溝34の手前方向側の壁面に当接している。また、突出部38には、口金先端部20bの開口周縁部に当接する支点39が形成されている。
【0033】
栓本体29の内周面に対向するアーム部36の外周面には、深溝部34a内に突出した抜け止め部40が形成されている。抜け止め部40は、深溝部34aの奥方向側の壁面に当接している。これにより、各係合部30が栓本体29に対して相対的に奥方向側へ移動することが防止される。その結果、各係合部30がフランジ25に係合しているときには、鉗子栓21に対して手前方向側に引っ張り操作がなされても、鉗子栓21を口金20から取り外すことはできない。
【0034】
また、抜け止め部40は、その突出長さが深溝部34aの深さよりも長くなっている。これにより、栓本体29の内周面とアーム部36の外周面との間に隙間41が形成される。これにより、フランジ25に係合している係合爪37を挿入穴33の半径方向に移動させるためのスペースが確保される。その結果、セット溝34内で係合爪37を挿入穴33の半径方向に移動させて、フランジ25との係合を解除させることができる(図15参照)。
【0035】
係合部30は、図6に示すような係合爪37がフランジ25と係合する係合状態と、図7に示すような係合爪37がフランジ25との係合を解除した係合解除状態と、を取り得る。各係合部30は、個々の突出部38が奥方向側に向かう押圧力(以下、奥方向側押圧力という)を受けたときに、それぞれ係合状態から係合解除状態に切り替わる。
【0036】
具体的には、各突出部38が奥方向側押圧力を受けると、各係合爪37が中心軸CAから離れかつ各突出部38が中心軸CAに近づくように各アーム部36が傾く。これにより、各係合爪37がフランジ25に対して相対的に挿入穴33の半径方向に移動するため、各係合爪37とフランジ25との係合が解除される。その結果、各係合部30を係合状態から係合解除状態に切り替えることができる。
【0037】
図3及び図4に戻って、弁体31は、例えばゴムなどの各種弾性材料で略円板状に形成されている。弁体31は、挿入穴33内でかつ各係合部30よりも手前方向側の位置に設けられている。弁体31の中央部には、処置具14を挿通可能なスリット43が形成されている。
【0038】
スリット43は、処置具14の非挿通時には、弁体31の弾性力によって閉じた状態となって、水密・気密状態を保持する。また、スリット43は、処置具14が挿通した状態では、弁体31の弾性力によってスリット縁部が処置具14の外周面に密着した状態になる。これにより、処置具14の非挿通時及び挿通時のいずれにおいても、口金20からの体液等の漏出を防止することができる。
【0039】
図8に示すように、弁体31には、スリット43の両端部の各々に対してそのもう一方の端部側とは反対側の領域に、一対の長孔45が形成されている。両長孔45は、弁体の周縁に沿うように、スリット43に対して略直交する方向に延びている。なお、略直交とは、完全に直交している場合と、ほぼ直交している場合(スリット43と長孔45とのなす角度が90°に近い値となる場合)との両方が含まれる。弁体31には、スリット43と長孔45とが略H字形状をなすように形成される。両長孔45は、弁体31が奥方向側押圧力を受けたときに、スリット43の破壊を確実に生じさせるために形成されている(図13及び図14参照)。なお、一対の長孔45は栓本体29により手前方向、奥方向ともに覆われるように装着されるため、この部分から体液等が洩れ出ることはない。
【0040】
図9に示すように、口金20からの鉗子栓21の取り外しには、係合解除用具47が用いられる。この係合解除用具47は、各係合部30を係合状態から係合解除状態に切り替える。係合解除用具47は、円柱状の治具本体47aと、治具本体47aの後端面に設けられた棒状の挿入部47bとを有している。
【0041】
挿入部47bは、挿入穴33の手前方向側の開口から挿入穴33内に挿入される。挿入部47bの長さは、挿入穴33の手前方向側の開口から各突出部38までの長さよりも長く形成されている。また、挿入部47bの径は、挿入穴33の径とほぼ同じ大きさに形成されている。これにより、挿入穴33内に挿入された挿入部47bの先端は、スリット43を貫通した後に、突出部38に対して奥方向側押圧力を加える。
【0042】
次に、上記構成の鉗子栓21の作用、特に口金20への鉗子栓21の装着及び取り外し方法について説明を行う。最初に口金先端部20bの中心に対して挿入穴33の中心が一致するように、鉗子栓21の位置調整を行う。次いで、鉗子栓21を口金先端部20bに向けて押し付ける押付操作を開始する。これにより、挿入穴33内に口金先端部20b及びフランジ25が挿入される。
【0043】
図10に示すように、挿入穴33内に挿入されたフランジ25は、各係合部30の係合爪37に当接する。鉗子栓21の押付操作を継続すると、各係合爪37がフランジ25を乗り越えるまでの間は、このフランジ25による内側からの押圧により、各アーム部36が円弧状に湾曲されるとともに、各係合爪37が挿入穴33の径方向に広げられる。
【0044】
各係合爪37がフランジ25を乗り越えると、各アーム部36の元の形状に復元するとともに、各係合爪37がフランジ25に係合する。以上で鉗子栓21の装着が完了する。内視鏡検査の準備が完了した後、挿入部11が被検者の体内に挿入される。そして、観察しながら挿入部11の先端を体内の所望の位置に到達させる。この際に、処置の必要がある場合には、処置具14が鉗子栓21から鉗子チャンネル16に挿入されて各種の処置が施される。そして、内視鏡検査が終了した後、鉗子栓21の取り外しが実行される。
【0045】
図11に示すように、係合解除操作として、最初に係合解除用具47の挿入部47bを、挿入穴33内にその手前方向側の開口から挿入する。図12に示すように、挿入穴33内に挿入された挿入部47bは、弁体31のスリット43に接触する。挿入部47bの挿入を継続すると、挿入部47bがスリット43に対して奥方向側押圧力を加える。
【0046】
この際に、弁体31には長孔45が形成されている。このため、スリット43に対して一定以上の奥方向側押圧力が加えられると、図13に示すように、スリット43の両端が裂けてこの両端が長孔45に達する。その結果、スリット43が破壊されてしまうので、処置具14の非挿通時/挿通時に体液等の漏出を防ぐことは困難となる。
【0047】
引き続きスリット43に対して奥方向側押圧力が加えられると、図14に示すように、弁体31内のスリット43と長孔45とで囲まれる部分が奥方向側に折り曲げられてしまう。その結果、挿入部47bがスリット43を貫通したときには、スリット43は完全に破壊されてしまう。
【0048】
スリット43を貫通した挿入部47bは、各係合部30の突出部38に接触する。さらに挿入部47bの挿入を継続すると、挿入部47bにより突出部38に対して奥方向側押圧力が加えられる。これにより、各アーム部36は、支点39を中心として、各係合爪37が中心軸CAから離れかつ各突出部38が中心軸CAに近づくように傾く。その結果、各係合爪37が挿入穴33の径方向に広げられる。
【0049】
図15及び図16に示すように、挿入部47bが挿入穴33内に完全に挿入されると、各係合爪37とフランジ25との係合が解除される。これにより、各係合部30が係合状態から係合解除状態に切り替わる。また同時に、図17に示すように、治具本体47aの後端面が鉗子栓21の前端面に当接してさらなる挿入操作が規制される。従って、治具本体47aが鉗子栓21に当接するまで挿入操作を行えば、各係合部30は確実に係合解除状態に切り替えられる。以上で係合解除操作が完了する。
【0050】
図18に示すように、鉗子栓21に対して手前方向に向けて引っ張り操作がなされると、鉗子栓21が係合解除用具47とともに口金20から取り外される。この鉗子栓21のスリット43は、係合解除用具47により破壊されているので、処置具14の非挿通時/挿通時に体液等の漏出を防ぐことはできない。これにより、鉗子栓21に切り込みなどの低強度部を形成することなく再使用を防止することができる。その結果、鉗子栓21の取付時や内視鏡検査時などに、誤って低強度部を破壊して鉗子栓21が使用不能になることが防止される。
【0051】
[第2実施形態]
次に、図19及び図20を用いて、本発明の第2実施形態の鉗子栓50について説明を行う。この鉗子栓50は、鉗子口17に設けられた口金51に装着される。なお、上記第1実施形態と機能・構成上同一のものについては同一符号を付してその説明は省略する。
【0052】
口金51は、上記第1実施形態の口金20と基本的には同じ構成である。ただし、口金51の口金先端部51aには、中心軸CA及びスリット43に対して略垂直な軸方向VAに延び、かつ互いに対向する一対の貫通孔52が形成されている。両貫通孔52は、口金先端部51aの内外を貫通している。なお、略垂直とは、完全に垂直になる場合と、ほぼ垂直な場合(中心軸CA及びスリット43のそれぞれと、軸方向VAとがなす角度が90°に近い値となる場合)との両方が含まれる。
【0053】
鉗子栓50は、略円筒形状に形成されている。鉗子栓50には、その内周面によって挿入穴54が形成されている。挿入穴54は両端が開放されている。挿入穴54には、その奥方向側の開口から口金先端部51aが挿入される。また、挿入穴54には、その手前方向側の開口から処置具14あるいはキャップ55が挿入される。
【0054】
挿入穴54の内部は、スリット43を有する仕切り壁56により仕切られている。これにより、挿入穴54は、奥方向側に位置する口金挿入穴54aと、手前方向側に位置するキャップ挿入穴54bとに分割される。口金挿入穴54aには口金先端部51aが挿入される。キャップ挿入穴54bには、処置具14の不使用時にはキャップ55が挿入される。キャップ55は、接続ベルト57を介して鉗子栓50に一体的に設けられている。
【0055】
鉗子栓50は、口金挿入穴54aを有する栓後端部50aが金属や硬質の樹脂等の剛性材料で形成され、キャップ挿入穴54bを形成する栓前端部50bが樹脂材料等で形成されている。栓後端部50aの内周面には、両貫通孔52に係合する一対の係合突起60が突設されている。
【0056】
両係合突起60は、栓後端部50aより軟質であるゴムなどの各種弾性材料で形成されている。両係合突起60は、栓後端部50aの内周面から中心軸CAに向けて突出している。両係合突起60は剛性の栓後端部50aで覆われている。このため、両係合突起60が両貫通孔52に一旦係合すると、外部からでは係合突起60と貫通孔52との係合を解除することができず、鉗子栓50を口金51から取り外すことはできない。
【0057】
図21に示すように、口金20からの鉗子栓21の取り外しには、係合解除用具62が用いられる。係合解除用具62は鋏状に開閉する。係合解除用具62は、互い相対回転自在に連結されている第1アーム62aと第2アーム62bとを有する。両アーム62a,62bの先端には、それぞれ挿入穴54の半径方向に突出した突出部63a,63bが設けられている。
【0058】
また、両アーム62a,62bには、マーカ64が形成されている。マーカ64から突出部63a,63bまでの長さは、キャップ挿入穴54bの開口から両係合突起60までの長さとほぼ等しくなるように調整されている。
【0059】
次に、上記構成の鉗子栓50の作用、特に鉗子栓50の口金51からの取り外し処理について説明を行う。なお、鉗子栓50の口金51への装着は、鉗子栓50を口金先端部51aに向けて押し付ける押付操作を行うだけでよい。これにより、両係合突起60が弾性変形しながらフランジ25を乗り越えて両貫通孔52にそれぞれ係合する。
【0060】
内視鏡検査終了後に、キャップ55をキャップ挿入穴54bから取り外す。次いで、係合解除操作として、最初に係合解除用具62の両アーム62a,62bを閉じた状態のままで、両突出部63a,63bをキャップ挿入穴54b内に挿入する。そして、両突出部63a,63bがスリット43と略平行になるように係合解除用具62の位置調整を行った後に、係合解除用具62を口金51内に向けて挿入する。この挿入操作により、両突出部63a,63bがスリット43を挿通して口金先端部51a内に挿入される。
【0061】
係合解除用具62の挿入操作は、マーカ64がキャップ挿入穴54bの開口に達するまで継続される。これにより、両突出部63a,63bと両係合突起60との中心軸CAの軸方向における位置がほぼ等しくなる。次いで、中心軸CAを中心として、係合解除用具62を90°回転させることにより、両突出部63a,63bがそれぞれ両係合突起60に対向する。
【0062】
図22に示すように、両アーム62a,62bの開き操作を行うと、口金先端部51a内で両アーム62a,62bが開くことで、両突出部63a,63bがそれぞれ両係合突起60に押し付けられる。これにより、両係合突起60が、口金先端部51a内の内側から外側に向かう半径径方向(以下、単に口金半径方向という)に押圧されて、この口金半径方向に縮むように弾性変形する。また、このときに、スリット43も両アーム62a,62bからの押圧力を受けて拡げられる。
【0063】
図23に示すように、両アーム62a,62bの開き操作を継続すると、両係合突起60が両貫通孔52からそれぞれ押し出される。これにより、両係合突起60と両貫通孔52との係合が解除される。また、両者の係合が解除される前に、両アーム62a,62bによりスリット43がその限界を超えて拡げられることで、スリット43の両端が裂けてしまう。その結果、スリット43が破壊されてしまうので、第1実施形態と同様に、処置具14の非挿通時/挿通時に体液等の漏出を防ぐことが困難になる。以上で係合解除操作が完了する。
【0064】
図24に示すように、両係合突起60と両貫通孔52との係合が解除された後、鉗子栓50に対して手前方向に向けて引っ張り操作がなされる。これにより、鉗子栓50が口金51から取り外される。この鉗子栓50のスリット43は、係合解除用具62により破壊されているので、鉗子栓50を再使用することはできない。その結果、第1実施形態で説明した効果と同様の効果が得られる。
【0065】
上記第1実施形態では、弁体31が栓本体29とは別体に設けられているが、両者が一体形成されていてもよい。
【0066】
上記第1実施形態の弁体31には、スリット43の破壊を確実に生じさせるために一対の長孔45が形成されているが、例えば、第2実施形態の仕切り壁56にも同様の目的で一対の長孔45を形成してもよい。
【0067】
上記各実施形態では、鉗子口17の口金20,51に装着される鉗子栓21,50を例に挙げて説明を行ったが、鉗子口17の開口部に直に装着される鉗子栓に対しても本発明を適用することができる。
【0068】
上記実施形態では、気管に挿入する内視鏡10を例に挙げて説明を行ったが、例えば大腸に挿入される大腸内視鏡等の各種医療用内視鏡や、工業用途などの他の用途に使用される内視鏡などにも本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0069】
10 内視鏡
11 挿入部
17 鉗子口
20,51 鉗子口口金
21,50 鉗子栓
30 係合部
31 弁体
33,54 挿入穴
43 スリット
47,62 係合解除用具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内視鏡の外面に設けられた筒状の鉗子口であって、内視鏡の内部に設けられたチャンネルに通じる鉗子口に装着される鉗子栓において、
両端が開放されかつその一端から前記鉗子口の口部が挿入される挿入穴を有する筒状の栓本体と、
前記挿入穴を形成する前記栓本体の内周面に設けられ、前記挿入穴に挿入された前記鉗子口の外周面に係合する係合部と、
前記挿入穴内でかつ前記係合部よりも前記挿入穴の他端側に設けられ、前記挿入穴の他端から挿入された処置具が挿通されるスリットを有し、前記処置具の未挿通時には前記スリットが閉じるとともに、前記処置具の挿通時には前記スリットの縁部が前記処置具に密着することで前記鉗子口からの流体の漏出を防止する弾性のある弁体と、を備え、
前記係合部は、前記挿入穴の他端より挿入された係合解除用具から係合解除操作を受けたときに、前記外周面との係合を解除し、
前記スリットは、前記係合解除用具により前記係合解除操作がなされるときに、当該係合解除用具から力を受けて破壊されることを特徴とする鉗子栓。
【請求項2】
前記係合部は、
前記栓本体の内周面上にその周方向に沿って複数配置され、前記挿入穴の中心軸に沿う方向に沿って延びたアーム部であって、前記鉗子口の外周面に対向するアーム一端部と、前記鉗子口の手前側に位置するアーム他端部とを有するアーム部と、
各前記アーム一端部に設けられ、前記鉗子口の外周面に形成されたフランジに係合する係合爪と、
各前記アーム他端部に設けられ、前記中心軸に向けて突出した突出部と、を備えるものであり、
前記係合部は、前記係合解除操作として、前記突出部が前記係合解除用具から前記鉗子口の奥側に向かう押圧力を受けたときに、前記アーム一端部が前記鉗子口の外周面から離れかつ前記アーム他端部が前記中心軸に近づくように前記アーム部が傾くことで、前記係合爪と前記フランジとの係合を解除することを特徴とする請求項1記載の鉗子栓。
【請求項3】
前記スリットは、前記係合爪と前記フランジとの係合が解除される前に、前記係合解除用具から前記押圧力を受けて破壊されることを特徴とする請求項2記載の鉗子栓。
【請求項4】
前記弁体は、前記栓本体とは別体に設けられていることを特徴とする請求項1ないし3いずれか1項記載の鉗子栓。
【請求項5】
前記係合部は、前記鉗子口の内外を貫通しかつ前記挿入穴の中心軸及び前記スリットに対して略垂直な方向に延びた貫通孔に係合する係合突起であり、
前記係合突起は、前記係合解除操作として、前記スリットを挿通した状態で前記鉗子口の内部に挿入された前記係合解除用具から前記鉗子口の外側に向かう半径方向の押圧力を受けたときに、前記貫通孔との係合を解除することを特徴とする請求項1記載の鉗子栓。
【請求項6】
前記栓本体の内周面には、前記鉗子口に形成された互いに対向する一対の前記貫通孔にそれぞれ係合する一対の前記係合突起が設けられており、
一対の前記係合突起は、鋏状に開閉する前記係合解除用具から前記半径方向の押圧力を受けたときに、それぞれ一対の前記貫通孔との係合を解除することを特徴とする請求項5記載の鉗子栓。
【請求項7】
前記スリットは、前記係合突起と前記貫通孔との係合が解除される前に、前記係合解除用具から前記半径方向の押圧力を受けて破壊されることを特徴とする請求項5または6記載の鉗子栓。
【請求項8】
前記栓本体における前記鉗子口の外周面を囲む部分が剛性材料で形成されていることを特徴とする請求項5ないし7いずれか1項記載の鉗子栓。
【請求項9】
前記弁体には、前記スリットの両端部の各々に対してそのもう一方の端部側とは反対側の領域に、前記スリットに対して略直交する方向に延びる長孔が形成されていることを特徴とする請求項1ないし8いずれか1項記載の鉗子栓。
【請求項10】
被検体内に挿入される挿入部と、
前記挿入部の基端部に接続された操作部と、
前記操作部内に設けられたチャンネルであって、挿入部の先端に設けられた開口に連通するチャンネルと、
前記操作部の外表面に設けられ、前記チャンネルに通じる鉗子口と、
前記鉗子口に装着される請求項1ないし9いずれか1項記載の鉗子栓と、
を備えることを特徴とする内視鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【公開番号】特開2013−59397(P2013−59397A)
【公開日】平成25年4月4日(2013.4.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−198485(P2011−198485)
【出願日】平成23年9月12日(2011.9.12)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】