説明

鉛の浸出方法

【課題】 全てを湿式法により行う鉛の処理ができる方法が要望されている。
【解決手段】鉛含有物中の硫酸鉛を炭酸ナトリウムにより炭酸鉛にした後、炭酸鉛を100〜250g/Lのスラリー濃度で、スルファミン酸溶液のpHを3.0以下にすることで、Pbを80%以上浸出できる鉛の浸出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非鉄製錬の乾式煙灰中に含まれているPbを回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非鉄製錬の乾式煙灰中に含まれているPbを回収するため、煙灰を硫酸浸出し、硫酸鉛にした後、電気炉で溶融還元を行う。溶融還元により分離されたメタルをソーダ処理し、その後、メタルをアノード鋳造した後、珪フッ素酸浴中にて電解精製することでPbを回収している。
また、特許文献1では、鉛を炭酸塩にする手法が開示されているが、後工程において、硝酸を用いている。
【0003】
上記方法では、前処理工程が乾式法であり、排ガス処理設備を設置する必要性がある。
また、更に後工程の電解精製では、珪フッ素酸を用いていることから、排水にフッ素を処理する設備が必要となる。
【0004】
特許文献1では、硝酸を使用していることから、溶液中から鉛を回収するために硫酸を添加し、硫酸鉛として回収している。しかし、本発明では、スルファミン酸で浸出された溶液を電解採取することで、板状の電着鉛として回収することができる。
【特許文献1】特開2000−109939 出願人:日鉱金属株式会社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の技術に対して、全てを湿式法により行う鉛の処理ができる方法が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上記の課題を解決するため以下の発明を成した。
(1)鉛含有物中の硫酸鉛を炭酸ナトリウムにより炭酸鉛にした後、炭酸鉛を100〜250g/Lのスラリー濃度で、スルファミン酸溶液のpHを3.0以下にすることで、Pbを80%以上浸出できる鉛の浸出方法。
【0007】
(2)鉛含有物にビスマスが含有する物を炭酸塩にした後、炭酸鉛を100〜250g/Lのスラリー濃度で、スルファミン酸溶液のpHを1.5〜2.5にすることによりPbを85%以上浸出することができる共にBiの浸出を防止する鉛の浸出方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、
(1)湿式法により、容易に鉛を効率良く回収できる方法を見出した。
(2)硫酸鉛は、難溶性であるが、炭酸ナトリウムにより硫酸鉛を炭酸鉛にすることで酸性溶液に溶けやすくなること、さらにスルファミン酸で炭酸鉛を浸出することで他の成分に比べPbが浸出しやすいことを見出した。
【0009】
(3)スルファミン酸溶液をpH=3.0以下で炭酸鉛を浸出することでPbが80%以上浸出することができる。
(4)また一方、炭酸鉛中に含まれているBiを溶出させないようにすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
原料は、本発明の鉛含有物は、鉛 45mass%以下、錫7mass%以下、ビスマス 4mass%以下、銅 1mass%以下、亜鉛 8mass%以下含有する。
例えば、ダスト処理工程から産出する鉛滓(主成分:PbSO4)、銅転炉ダスト等がある。
上記鉛含有物を、水によりリパルプし、炭酸ソーダにより脱SO4した炭酸化残渣(主成分:PbCO3)とする。
炭酸ソーダは、鉛含有物中のSに対して、1.5倍当量の炭酸ソーダを添加する。
鉛含有物を炭酸化した後、スルファミン酸浸出処理を行う。
該浸出方法としては、その一例を図1に示す。
【0011】
スルファミン酸溶液のpHを1以下にして、0.5-1.5時間浸出した結果、Pb浸出率は、90%以上あることを確認することができた。
スルファミン酸濃度:150-250g/L、炭酸鉛スラリー濃度:100-250g/Lで、浸出した結果、Pb浸出率は、99%浸出された。
【0012】
次にスルファミン酸溶液のpHと浸出液中の濃度推移を確認した。
その結果、浸出液のpHが低くなるにつれ、Pb浸出率が増加することが分かり、pH=1.0以下であれば、Pbは、90%以上浸出することができた。またpH=3.0以下であれば、Pbは、80%以上浸出することができた。
Bett法では、PbとSnの分離が困難であるが、スルファミン酸で浸出すると、Snは、0.03%以下しか浸出されないことが判明した。
【0013】
しかし、他の成分(Cu,Zn,Bi)に関しては、Pbと同様にpHを下げると各浸出率が増加する傾向が見られた。
Biに関しては、浸出液のpH管理としてpH=1.5以上にすることにより、Bi浸出を防止することにした。
本発明においては、鉛の浸出率が高いとともに、ビスマスの浸出を防止する方法も提示する。
その方法としては、鉛含有物にビスマスが含有する物を炭酸塩にした後、炭酸鉛を100〜250g/Lのスラリー濃度で、スルファミン酸溶液のpH=1.5〜2.5にするものである。
これにより、Biの浸出を防止するとともにPbの浸出率を85%以上することができる。
【実施例】
【0014】
(実施例1) 鉛の浸出率を良好にする方法
原料である本発明における鉛含有物は、ダスト処理工程から産出する鉛滓(主成分:PbSO4)を水によりリパルプし、炭酸ソーダにより脱SO4した炭酸化残渣(主成分:PbCO3)を用いて、スルファミン酸浸出試験を実施した。
浸出方法としては、図1に示す。
【0015】
スルファミン酸溶液のpHを1以下にして、1時間浸出した結果、Pb浸出率は、90%以上あることを確認することができた。
スルファミン酸濃度:200g/L、炭酸鉛スラリー濃度:250g/Lで、浸出した結果、Pb浸出率は、99%浸出された。
浸出時間と浸出率の推移は、図2に示す。
【0016】
次に図3に示すように、スルファミン酸溶液のpHと浸出液中の濃度推移を確認した。
その結果、浸出液のpHが低くなるにつれ、Pb浸出率が増加することが分かり、pH=3.0以下であれば、Pbは、80%以上浸出することができた。
【0017】
(実施例2) ビスマスの浸出を防止する方法
実施例1と同様な条件において、実施した。
Bett法では、PbとSnの分離が困難であるが、スルファミン酸で浸出すると、図3の(2)に示すようにSnは、0.03%以下しか浸出されないことが判明した。
【0018】
しかし、他の成分(Cu,Zn,Bi)に関しては、図3の(3)から(5)に示すようにPbと同様にpHを下げると各浸出率が増加する傾向が見られた。
Biに関しては、図3(4)浸出液のpH管理としてpH=1.5以上にすることにより、Bi浸出を防止することにした。
【0019】
(実施例3) 鉛の浸出率が高いとともにビスマスの浸出を防止する方法
実施例1と同様な条件において、実施した。
【0020】
図4浸出液のpH管理としてpH=1.5〜2.5にすることにより、Biの浸出を防止するとともにPbの浸出率を85%以上することができた。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明におけるスルファミン酸浸出手順の一例である。
【図2】本発明にかかるスルファミン酸浸出の時間と濃度推移の変化の一例である。
【図3】本発明における溶液中のpHと各成分の浸出率の関係の一例である。
【図4】本発明における溶液中のpHとPbおよびBiの浸出率の関係の一例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛含有物中の硫酸鉛を炭酸ナトリウムにより炭酸鉛にした後、炭酸鉛を100〜250g/Lのスラリー濃度で、スルファミン酸溶液のpHを3.0以下にすることで、Pbを80%以上浸出できることを特徴とする鉛の浸出方法。
【請求項2】
鉛含有物にビスマスが含有する物を炭酸塩にした後、炭酸鉛を100〜250g/Lのスラリー濃度で、スルファミン酸溶液のpHを1.5〜2.5にすることによりPbを85%以上浸出することができる共にBiの浸出を防止することを特徴とする鉛の浸出方法。
































【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−127102(P2009−127102A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−304820(P2007−304820)
【出願日】平成19年11月26日(2007.11.26)
【出願人】(591007860)日鉱金属株式会社 (545)
【Fターム(参考)】