説明

鉛の電解方法

【課題】高Bi品位のアノードに対しても高純度の鉛を回収することができる鉛の電解方法を提供する。
【解決手段】Bi品位5から30 mass%の高不純物アノードを用いた、スルファミン酸浴での電解精製において、電着した鉛中のビスマスが60mass ppm以下となる時間までの時間に電気分解でカソード側に電着した鉛を除去した後、再度、カソードを装入して電気分解を行うことで高純度の鉛を回収する鉛の電解方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、非鉄製錬、基盤や電子部品などリサイクル原料の溶融炉、及び産業廃棄物を溶融処理する乾式炉より発生する乾式煙灰中に含まれているPbを回収する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
非鉄製錬、基盤や電子部品などリサイクル原料の溶融炉、及び産業廃棄物を溶融処理する乾式炉より非鉄製錬の乾式煙灰中に含まれているPbを回収するため、煙灰を硫酸浸出し、硫酸鉛にした後、電気炉で溶融還元を行う。溶融還元により分離されたメタルをソーダ処理し、その後、メタルをアノード鋳造した後、珪フッ素酸浴中にて電解精製することでPbを回収している。
特許文献1に関しては、高Bi品位のアノードに対して、スルファミン酸浴により高純度の電着鉛を回収している。
【0003】
特許文献1において、最適な電流密度として、50A/m2以下としている。しかし、鉛の回収量を増加するためには、電槽の槽数を増加するなど設備投資をする必要があることから、更に最適な電流密度を上げることが望まれる。
【特許文献1】整理番号T21-0202 鉛の電解方法 特許出願人:日鉱金属株式会社
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の技術に対して、高Bi品位のアノードに対しても高純度の鉛を回収することができる鉛の電解方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等は、上記の課題を解決するため以下の発明を成した。
即ち本発明は、
(1)Bi品位5から30 mass%の高不純物アノードを用いた、スルファミン酸浴での電解精製において、
初期に電気分解でカソード側に電着した鉛を除去した後、再度、カソードを装入して電気分解を行うことで高純度の鉛を回収することができる鉛の電解方法。
【0006】
(2)上記(1)の初期とは、電着した鉛中のビスマスが、60 massppm以下となる電解開始後から一定時間後である鉛の電解方法。
(3)上記(1)の初期とは、電解開始後20から26時間後である鉛の電解方法。
である。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、高Bi品位の鉛アノードから効率よく、更に設備投資することなく、Bi品位が極めて低い高純度の鉛を回収することができることを特徴とする鉛の電解方法を見出した。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下に本発明をさらに詳細に説明する。
原料は、本発明の鉛含有物は、鉛 70〜99mass%、錫 0.04mass%、ビスマス5〜30mass%含有する。ビスマスが、アノード中に5から30mass%と高くなると電着した電気鉛中のビスマスの汚染が多くなるためである。
例えば、上記鉛含有物を、アノード鋳造をし、そのアノードを用いて電解精製を行う。アノードのサイズとしては、カソードのサイズに比べ小さくすることで、エッジ効果を防ぐことができ、平滑で良好な電着鉛を回収することができる。
【0009】
電解液として、スルファミン酸の濃度は、20〜100g/L、鉛濃度は、20〜100g/Lが最適である。更に平滑剤としては、ノイゲン BN-1390、または、ノイゲン BN-2560を1〜10mg/Lにすることで、平滑で良好な電着鉛を回収することができる。
【0010】
次に電着鉛の回収方法として、電流密度を100A/m2以下で通電し、電気分解によりカソードに電着した鉛の品位の推移を確認した結果、図1に示した通り、初期に電着した電着鉛中のBi品位が、60massppm以上と高いことから、初期の電着鉛を一定時間後、例えば、24時間後、引揚げ、除去後、再度、カソードを装入して、電気分解し、電着鉛を回収することで、Bi品位が、30
massppm以下と低Bi品位の電着鉛を回収することができる。
また、上記の初期とは、電着した鉛中のビスマスが、60
mass ppm以下となる時間までを言う。これまで、初期に電着し、剥ぎ取り除去すると次に電着した鉛中のビスマスは、30 mass ppm以下のと成るためである。
また、初期とは電解開始後、20から26時間後である。この時間経過後は、電着した鉛中のビスマスが、30
mass ppm以下のと成るためである。
【実施例】
【0011】
(実施例1) 低Bi品位の電着鉛を回収する方法
電解液の組成として、鉛濃度:80g/L、スルファミン酸濃度:20g/Lに調整した溶液に平滑剤としてノイゲンBN-1390を10mg/Lになるように添加する。
高Bi品位の鉛アノードと、カソードとして、ステンレス板を交互に電槽に装入する。カソードの大きさは、アノードに対して、20〜30mm程度大きくした方が、エッジ部への電流集中を緩和することができ、最適である。
電極装入後、電槽内に電解液を補充し、電解液の電槽内滞留時間が1h程度になるように給液することで、電槽内の濃度分布を均等にする。
電解液の液温を、20〜30℃に調整後、電流密度を100A/m2で通電し、24h後にカソードを引揚げ、カソード表面に付いた電着鉛を除去後、再度、カソードを装入し、電流密度100A/m2で72h通電することで、低Bi品位の電着鉛を回収することができる。
得られた鉛中のBi品位は、30massppmであった。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明における通電時間毎の電着鉛中のBi品位(単位:massppm)の推移

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Bi品位5から30mass%%の高不純物アノードを用いた、スルファミン酸浴での電解精製において、
初期に電気分解でカソード側に電着した鉛を除去した後、再度、カソードを装入して電気分解を行うことで高純度の鉛を回収することができることを特徴とする鉛の電解方法。
【請求項2】
請求項1の初期とは、電着した鉛中のビスマスが、60 massppm以下となる電解開始後から一定時間後であることを特徴とする鉛の電解方法。
【請求項3】
請求項1の初期とは、電解開始後20から26時間後であることを特徴とする鉛の電解方法。





























【図1】
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【公開番号】特開2010−222626(P2010−222626A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−69982(P2009−69982)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(591007860)日鉱金属株式会社 (545)
【Fターム(参考)】