鉛蓄電池用の改良防縮剤
蓄電池ペースト組成物中で使用される防縮剤配合物。本防縮剤配合物は、有効量、もしくは最大6%の高濃度のグラファイトならびにカーボンブラックおよびグラファイトの混合物を取り込み、高率PSOC蓄電池作動の間の負極板表面上での硫酸鉛の蓄積を減らし、もしくは最小化し、ならびに/または鉛蓄電池の電気化学的効率、リザーブキャパシティ、コールドクランキング性能およびサイクル寿命を増加させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は、この明細書および開示の全体が参照により本明細書に組み込まれており、発明の名称が「高温における寿命が改良された鉛蓄電池防縮剤(Lead−Acid Battery Expanders with Improved Life at High Temperatures)」である2007年6月6日に出願された同時係属中のU.S.Patent Application Serial No.11/810,659の一部継続出願である、2008年9月2日に出願されたU.S.Non−Provisional Patent Application Serial No.12/231,347の優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、一般に、蓄電池ペースト中で使用される防縮剤および蓄電池極板を製造する方法に関する。特に、蓄電池ペースト中で使用するための防縮剤配合物および種々の鉛蓄電池用の負極板を製造する方法が開示される。より具体的には、本開示は、グラファイトを取り込む1種以上の防縮剤配合物を含む。このような防縮剤配合物から作製された負極板を取り込むハイブリッド電気自動車蓄電池は、負極板表面上での硫酸鉛の蓄積の低下を特徴とし、サイクル寿命の増加および/または電気化学的効率の改良をもたらす。このような防縮剤配合物から作製された負極板を取り込む標準自動車蓄電池は、蓄電池の寿命サイクル、ならびにリザーブキャパシティおよびコールドクランキング性能の大幅な改良をもたらす。
【背景技術】
【0003】
鉛蓄電池用の蓄電池極板の生産は、一般に、ペーストの混合、硬化、乾燥の操作を伴い、この操作において、蓄電池ペースト中の活物質が化学的および物理的変化を受け、この変化を使用して蓄電池極板を形成するのに必要な化学的および物理的構造、ならびにその後の機械的強度を確立する。典型的な蓄電池極板を製造するため、物質を、酸化鉛、水および硫酸の順で市販のペースト混合装置に添加し、次いで、これらの物質をペーストのコンシステンシーまで混合する。蓄電池用の負極板または正極板のいずれを製造するかに応じて、慣用添加物、例えば、短繊維または防縮剤を使用してペーストの特性および製造される極板の性能を改質することもできる。他の添加物、例えば、この開示の全体が参照により本明細書に組み込まれている2006年10月10日にBodenらに発行されたU.S.Patent No.7,118,830に開示の添加物を使用して蓄電池極板の化学的および物理的構造、ならびに性能を向上させ、または改良することができる。
【0004】
鉛蓄電池の負極板は、通常、防縮剤添加物を有するペーストを調製し、次いで、この蓄電池ペーストをグリッドとして知られている導電性鉛合金構造体に塗布することにより製造される。典型的には、次いで、これらのペースト極板を、高い相対湿度を有する空気を含有する加熱チャンバ中で硬化させる。この硬化プロセスにより、その後の取扱および蓄電池における性能に要求される必要な化学的および物理的構造が生じる。硬化後、極板を任意の好適な手段を使用して乾燥させる。従って、負極活物質を含むこれらの極板は、蓄電池中で使用するのに好適である。
【0005】
防縮剤は、通常、硫酸バリウム、炭素およびリグノスルホナートまたは他の有機物質の混合物であり、ペーストを調製する間に負極板活物質に添加される。蓄電池の性能を改良するため、防縮剤は、他の公知成分、例えば、木粉およびソーダ灰を取り込んでもよい。防縮剤物質は、ペースト混合プロセスの間にペーストに別個に添加することができるが、改良手順は、防縮剤の構成物質を混合してから、これらの構成物質をペースト混合物に添加することである。
【0006】
防縮剤は、負極板中で多くの機能を果たし、これらの機能について簡単に説明する。硫酸バリウムの機能は、極板を放電したときに生成される硫酸鉛に対する核形成剤として作用することである。
【0007】
【数1】
【0008】
硫酸鉛放電生成物は硫酸バリウム粒子上に堆積し、この硫酸バリウム粒子は活物質全体にわたる硫酸鉛の均一分布を実現し、鉛粒子の被覆を妨げる。硫酸バリウムという用語は、0.5から5マイクロメートルの粒度のこの化合物の永久白形態と重晶石形態の両方およびこれらの混合物を表す。硫酸バリウム結晶は、極めて多数の小さい種晶が負極活物質中に埋め込まれるように1ミクロン以下のオーダーの極めて小さい粒度を有することが望ましい。この小さい粒度は、硫酸バリウム核上で成長している硫酸鉛結晶が小さく、一様の大きさであることを確保するので、これらの硫酸鉛結晶は極板を充電したときに鉛活物質に容易に変換される。
【0009】
【数2】
【0010】
炭素は、放電状態における活物質の導電率を増加させ、この導電率の増加により活物質の電荷受容量が改良される。炭素は、通常、カーボンブラックおよび/または活性炭の形態である。慣用防縮剤配合物の負極活物質中の炭素の量は、1パーセントという小さい割合にすぎない。
【0011】
リグノスルホナートの機能は、より複雑である。リグノスルホナートは、鉛活物質上に化学吸着し、鉛活物質の表面積の顕著な増加をもたらす。リグノスルホナートが存在しない場合、表面積は1グラム当たり約0.2平方メートルのオーダーである一方、リグノスルホナートが0.50%存在する場合、表面積はグラム当たり約2平方メートルまで増加する。この大きな表面積により電気化学的プロセスの効率が増加し、この効率の増加により負極板の性能が改良される。リグノスルホナートは、負極活物質の物理的構造も安定化させ、この安定化により蓄電池作動中の劣化が遅延する。この特性により、蓄電池の稼働寿命が増加する。有機物質は、任意のリグノスルホナート化合物、または負極活物質の表面上に吸着することができ、この吸着により負極活物質の表面積および電気化学的挙動に影響を与える他の好適な有機物質であってよい。
【0012】
鉛蓄電池は、自動車、産業用動力、例えば、フォークリフトトラック用の産業用動力、電気通信、および予備電源システム、即ち、無停電電源供給装置の蓄電池を含む種々の用途において使用される。さらに蓄電池は、液式(flooded−electrolyte)または制御弁式設計のものであってよい。これらの蓄電池は、最適な性能および寿命を付与するため、防縮剤成分の異なる比率および活物質への異なる添加率を要求する。従って、防縮剤は、一般に、この用途、例えば、自動車、産業用動力および産業用予備電源に従って分類することができる。これらの防縮剤は、液式および制御弁式の蓄電池設計について下位分割することもできる。上記用途のための慣用防縮剤配合物の典型例を図1に示す。
【0013】
防縮剤について認識される問題は、上記の慣用防縮剤配合物が、例えば、ハイブリッド電気自動車中で使用される蓄電池において有効でないことである。この用途において、蓄電池は、蓄電池が完全放電または完全充電されることのない条件である部分充電状態(PSOC)条件で作動される。この条件下で、負極板は、常に、硫酸鉛に部分的に変換され、この硫酸鉛は、慣用蓄電池のように周期的な完全充電により鉛に変換されない。負極板は、回生ブレーキの間に発生する電流から極めて高率で充電を受け入れることもできなければならない。
【0014】
このタイプの作動の間、硫酸鉛が負極板表面上に蓄積し、この硫酸鉛が極板を充電するのに必要なイオンおよび電流の流れに対して遮断物として作用することが示されている。結果的に、硫酸鉛層の厚さが次第に増加し、蓄電池性能の低減または劣化がもたらされる。結局、蓄電池が適正に機能することができなくなるまで性能が降下する。この現象の代表例を図2に示す。この問題により、ハイブリッド電気自動車中における鉛蓄電池の使用が妨げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第7,118,830号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
結果的に、高率PSOC蓄電池作動の間の硫酸鉛の蓄積の問題を解決するにあたって有効である、蓄電池ペーストおよび極板用の改良防縮剤配合物、ならびに種々のタイプの鉛蓄電池に蓄電池容量、効率、性能および寿命の改良を提供する改良防縮剤配合物が必要とされている。本開示は、公知の従来技術の防縮剤、蓄電池ペーストおよび負極蓄電池極板を製造する方法の上記の欠点および/または欠陥を解決し、これらの従来技術に対して顕著な改良を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本開示は、鉛蓄電池用の蓄電池ペースト組成物中で使用される改良防縮剤配合物に関する。改良防縮剤配合物は、有効量のグラファイトまたはカーボンブラックおよびグラファイトの混合物を取り込む。改良防縮剤配合物の濃度も、従来使用される量を超えて顕著に増加する。改良防縮剤配合物を取り込む蓄電池ペーストから作製された負極蓄電池極板は、蓄電池の容量、効率、性能、さらには蓄電池の寿命の大幅な改良を示す。ハイブリッド電気自動車蓄電池において、改良防縮剤配合物は、高率PSOC蓄電池作動の間の負極板表面上での硫酸鉛の蓄積を減らし、または最小化する。
【0018】
特に、ハイブリッド電気自動車用の制御弁式鉛蓄電池において、改良防縮剤配合物は、約0.2%から6%のグラファイトまたは炭素およびグラファイトの混合物を含み、好ましくは、約1%から5%である。特に、約1%から3%のグラファイトを有する改良防縮剤が好ましい。最適には、改良防縮剤は、約1%から2%のカーボンブラックおよび約1%から3%のグラファイトを有し、約2%のカーボンブラックおよび約2%のグラファイトが最も好ましい。
【0019】
標準自動車に使用するための鉛蓄電池において、特に、液式自動車蓄電池用の鉛蓄電池において、改良防縮剤配合物は、約0.3%から1.1%のグラファイトまたは炭素およびグラファイトの混合物を含み、好ましくは、0.3%から1.0%のグラファイトを含む。
【0020】
従って、本開示の目的は、有効量のグラファイトまたはカーボンブラックおよびグラファイトの混合物を増加濃度で取り込む改良防縮剤配合物を提供することである。
【0021】
本開示の別の目的は、蓄電池の容量、効率、性能、および/または鉛蓄電池の寿命サイクルの大幅な改良を示す、改良防縮剤配合物を取り込む蓄電池ペースト組成物を提供することである。
【0022】
本開示のさらに別の目的は、部分充電状態作動による高率充電の間の負極板表面上での硫酸鉛の蓄積が顕著に低下する負極板を有し、サイクル寿命および電気化学的効率の改良をもたらす、ハイブリッド電気自動車用の鉛蓄電池を提供することである。
【0023】
本開示のさらに別の目的は、蓄電池産業の標準試験、例えば、コールドクランキングアンペア試験、リザーブキャパシティ試験およびSAE J240サイクル試験において慣用防縮剤に対して電気性能の改良を提供する負極板を有する標準自動車鉛蓄電池を提供することである。
【0024】
本開示の多数の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から容易に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】種々の鉛蓄電池の負極板についての慣用防縮剤配合物および添加率を説明する表である。
【図2】PSOC作動による高率充電の間のハイブリッド電気自動車用の鉛蓄電池の負極板表面上での硫酸鉛の蓄積の説明である。
【図3】ハイブリッド電気自動車用の制御弁式鉛蓄電池用の改良防縮剤配合物の実施例を説明する表である。
【図4】図3の実施例1の改良防縮剤配合物を有する蓄電池セルのサイクル寿命をそれぞれ説明するグラフである。
【図5】図3の実施例2の改良防縮剤配合物を有する蓄電池セルのサイクル寿命をそれぞれ説明するグラフである。
【図6】図3の実施例3の改良防縮剤配合物を有する蓄電池セルのサイクル寿命をそれぞれ説明するグラフである。
【図7】図3の実施例4の改良防縮剤配合物を有する蓄電池セルのサイクル寿命をそれぞれ説明するグラフである。
【図8】図3の実施例5の改良防縮剤配合物を有する蓄電池セルのサイクル寿命をそれぞれ説明するグラフである。
【図9】制御弁式鉛蓄電池用の慣用防縮剤配合物を有する蓄電池セルのサイクル寿命を説明するグラフである。
【図10】慣用防縮剤を有する負極蓄電池極板の横断面の電子顕微鏡像である。
【図11】図3の実施例1の防縮剤を有する負極蓄電池極板の横断面の電子顕微鏡像である。
【図12】慣用防縮剤および図3の実施例1から5の改良防縮剤配合物を有する負極活物質の電気化学的効率を説明する表である。
【図13】標準自動車液式鉛蓄電池用の改良防縮剤配合物の実施例を説明する表である。
【図14】慣用防縮剤および図13の実施例6の改良防縮剤を含有するグループ27およびグループ31の蓄電池についてのリザーブキャパシティおよびコールドクランキング試験データを説明する表である。
【図15】摂氏41度(41℃)におけるSAE J240寿命サイクル試験からの、慣用防縮剤および図13の実施例6の改良防縮剤を含有するグループ27の蓄電池についての蓄電池寿命試験データを説明する表である。
【図16】慣用防縮剤および図13の実施例7の改良防縮剤を含有するグループ24の蓄電池についてのリザーブキャパシティおよびコールドクランキング試験データを説明する表である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は多くの異なる形態の実施形態を許容する一方、本明細書においては本開示の好ましい実施形態および択一的な実施形態を詳細に説明する。しかしながら、本開示は、本発明の原理の例示とみなすべきであり、説明される実施形態の本発明および/または特許請求の範囲の趣旨および範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0027】
説明として、本開示の改良防縮剤配合物の7種の実施例を本明細書において記載する。実施例1から5は、ハイブリッド電気自動車蓄電池用であり、図3から12に関して説明する。実施例6から7は、標準自動車蓄電池用であり、図13から16に関して説明する。さらなる実施例は、本明細書において提供される開示から、当業者に明白であることを理解されたい。本開示は、蓄電池ペースト混合物中で防縮剤を使用して負極蓄電池極板を形成する任意のタイプの蓄電池に適用可能であることも理解されたい。
【0028】
本開示の改良防縮剤配合物の7種の実施例を、図3および13において説明する。これらの実施例のそれぞれを以下に詳述する。
【実施例1】
【0029】
実施例1は、8kgの硫酸バリウム、6kgのリグノスルホナート、好ましくは、ナトリウムリグノスルホナート、20kgのカーボンブラックおよび20kgのグラファイトの組成を有する有効な防縮剤添加物の実施例を説明する。この添加物を1000kgの酸化鉛から製造された典型的な負極ペーストバッチに添加した場合、この添加物は、0.8%の硫酸バリウム、0.6%のナトリウムリグノスルホナート、2.0%のカーボンブラックおよび2.0%のグラファイト、即ち、4%のカーボンブラックおよびグラファイトの混合物を有する負極板を生じさせる。上記パーセントは全て、ペーストバッチ中で使用される酸化物に対するものである。この組成は好ましい実施例組成であること、ならびに他の量および比も本開示の有益な結果を生むことを理解されたい。
【0030】
1.74アンペアアワーの容量を有する鉛蓄電池セルを、実施例1のこの防縮剤配合物を使用する負極板から作製し、8kgの硫酸バリウム、3kgのリグノスルホナートおよび1kgのカーボンブラックを含む慣用防縮剤ブレンドを使用するセルと比較した。セルを、3.48アンペアにおいて1分間放電し、次いで30秒間休止させ、次いで3.48アンペアにおいて1分間充電し、次いで30秒間休止させることを含む模擬ハイブリッド電気自動車試験スケジュールに従って試験した。1回の試験順序を1サイクルと指定した。この順序を、セルが故障するまで繰り返した。実施例1の防縮剤についての典型的な試験結果を、図4に示す。改良防縮剤は、180058サイクルを付与した一方、上記の慣用防縮剤は、23,477サイクルを許容したにすぎなかった(図9を参照のこと)。
【実施例2】
【0031】
実施例2は、8kgの硫酸バリウム、2kgのリグノスルホナート、好ましくは、ナトリウムリグノスルホナートおよび20kgのグラファイトの組成を有する有効な添加物の別の実施例を説明する。この添加物を1000kgの酸化鉛から製造された典型的な負極ペーストバッチに添加した場合、この添加物は、0.8%の硫酸バリウム、0.2%のナトリウムリグノスルホナートおよび2.0%のグラファイトを有する負極板を生じさせる。上記パーセントは全て、ペーストバッチ中で使用される酸化物に対するものである。この組成は好ましい実施例組成であること、ならびに他の量および比も本開示の有益な結果を生むことを理解されたい。
【0032】
1.74アンペアアワーの容量を有する鉛蓄電池セルを、実施例2のこの防縮剤配合物を使用する負極板から作製し、実施例1に関して上記の慣用防縮剤ブレンドを使用するセルと比較した。セルを、実施例1に関して上記の模擬ハイブリッド電気自動車試験スケジュールに従って試験した。実施例2の防縮剤についての典型的な試験結果を、図5に示す。改良防縮剤は、224,499サイクルを付与した一方、上記の慣用防縮剤は、23,477サイクルを許容したにすぎなかった(図9を参照のこと)。
【実施例3】
【0033】
実施例3は、8kgの硫酸バリウム、2kgのリグノスルホナート、好ましくは、ナトリウムリグノスルホナート、20kgのカーボンブラックおよび20kgのグラファイトの組成を有する有効な防縮剤添加物のさらに別の実施例を説明する。この添加物を1000kgの酸化鉛から製造された典型的な負極ペーストバッチに添加した場合、この添加物は、0.8%の硫酸バリウム、0.2%のナトリウムリグノスルホナート、2.0%のカーボンブラックおよび2.0%のグラファイト、即ち、4%のカーボンブラックおよびグラファイトの混合物を有する負極板を生じさせる。上記パーセントは全て、ペーストバッチ中で使用される酸化物に対するものである。この組成は好ましい実施例組成であること、ならびに他の量および比も本開示の有益な結果を生むことを理解されたい。
【0034】
1.74アンペアアワーの容量を有する鉛蓄電池セルを、実施例3のこの防縮剤配合物を使用する負極板から作製し、実施例1に関して上記の慣用防縮剤ブレンドを使用するセルと比較した。セルを、実施例1に関して上記の模擬ハイブリッド電気自動車試験スケジュールに従って試験した。実施例3の防縮剤についての典型的な試験結果を、図6に示す。改良防縮剤は、191,225サイクルを付与した一方、上記の慣用防縮剤は、23,477サイクルを許容したにすぎなかった(図9を参照のこと)。
【実施例4】
【0035】
実施例4は、8kgの硫酸バリウム、2kgのリグノスルホナート、好ましくは、ナトリウムリグノスルホナート、10kgのカーボンブラックおよび10kgのグラファイトの組成を有する有効な防縮剤添加物のさらに別の実施例を説明する。この添加物を1000kgの酸化鉛から製造された典型的な負極ペーストバッチに添加した場合、この添加物は、0.8%の硫酸バリウム、0.2%のナトリウムリグノスルホナート、1.0%のカーボンブラックおよび1.0%のグラファイト、即ち、2%のカーボンブラックおよびグラファイトの混合物を有する負極板を生じさせる。上記パーセントは全て、ペーストバッチ中で使用される酸化物に対するものである。この組成は好ましい実施例組成であること、ならびに他の量および比も本開示の有益な結果を生むことを理解されたい。
【0036】
1.74アンペアアワーの容量を有する鉛蓄電池セルを、図4のこの防縮剤配合物を使用する負極板から作製し、実施例1に関して上記の慣用防縮剤ブレンドを使用するセルと比較した。セルを、実施例1に関して上記の模擬ハイブリッド電気自動車試験スケジュールに従って試験した。典型的な試験結果を図7に示す。改良防縮剤は、123319サイクルを付与した一方、上記の慣用防縮剤は、23,477サイクルを許容したにすぎなかった(図9を参照のこと)。
【実施例5】
【0037】
実施例5は、8kgの硫酸バリウム、2kgのナトリウムリグノスルホナート、20kgのカーボンブラックおよび30kgのグラファイトの組成を有する有効な防縮剤添加物のさらに別の実施例を説明する。この添加物を1000kgの酸化鉛から製造された典型的な負極ペーストバッチに添加した場合、この添加物は、0.8%の硫酸バリウム、0.2%のナトリウムリグノスルホナート、2.0%のカーボンブラックおよび3.0%のグラファイト、即ち、5%のカーボンブラックおよびグラファイトの混合物を有する負極板を生じさせる。上記パーセントは全て、ペーストバッチ中で使用される酸化物に対するものである。この組成は好ましい実施例組成であること、ならびに他の量および比も本開示の有益な結果を生むことを理解されたい。
【0038】
1.74アンペアアワーの容量を有する鉛蓄電池セルを、実施例5のこの防縮剤配合物を使用する負極板から作製し、実施例1に関して上記の慣用防縮剤ブレンドを使用するセルと比較した。セルを、実施例1に関して上記の模擬ハイブリッド電気自動車試験スケジュールに従って試験した。実施例5の防縮剤についての典型的な試験結果を、図8に示す。改良防縮剤は、106,803サイクルを付与した一方、上記の慣用防縮剤は、23,477サイクルを許容したにすぎなかった(図9を参照のこと)。
【0039】
これらの実施例1から5は、改良防縮剤により鉛蓄電池セルの寿命が最大で9倍を超える倍率だけ増加することを示す。これらの改良防縮剤添加物を用いて作製された負極蓄電池極板の形態についての試験は、これらの添加物が負極板表面上での硫酸鉛の蓄積を解決するにあたって極めて有効であり、代わりに負極活物質全体にわたる硫酸鉛の均一分布を生むことを示す。このことは、上記の慣用防縮剤(図10を参照のこと)および実施例1の改良防縮剤添加物(図11を参照のこと)を用いてサイクルにかけた負極蓄電池極板における硫酸鉛の分布を示す図10および11に説明する。図10の白みがかった領域は、充電(1479サイクル)後の極板表面上の硫酸鉛の存在を示す一方、図11に示す極板は、2倍超のサイクル(3596)後、充電後の硫酸鉛をほとんど示さない。
【0040】
実施例1から4の改良防縮剤配合物により、鉛蓄電池充放電プロセスの電気化学的効率も増加する。この電気化学的効率は、極板上の1グラムの活物質から得ることができる電気の量として測定し、通常、1グラムの活物質当たりのミリアンペアアワーの単位で測定する。図12は、慣用防縮剤および改良防縮剤を利用する鉛蓄電池セルの電気化学的効率の比較を示す。実施例1から4の改良防縮剤は、最大18%のパーセントの改良をもたらすことを理解することができる。
【0041】
図12において理解することができる通り、実施例5に関して、慣用防縮剤よりも低い電気化学的効率を有するが、ハイブリッド自動車試験において大きく改良されたサイクル寿命を依然として有する、グラファイトを有する改良防縮剤配合物を作製することができる(図8を参照のこと)。実施例5のより低い電気化学的効率は、活物質を高配合量のカーボンブラック/グラファイト添加物に置き換えたことに起因する。
【0042】
さらなる実施例(実施例6および7、図13を参照のこと)として、グラファイトを有する改良防縮剤配合物は、エンジン始動用途蓄電池、例えば、標準自動車液式蓄電池、例えば、グループ24、グループ27およびグループ31の蓄電池においても有効である。これらのグループ番号は、蓄電池サイズを指し、特定の自動車中で使用されるタイプを指定する。グループ24は、典型的な普通自動車蓄電池である。グループ27は、典型的な大型自動車蓄電池である。グループ31は、トラクタートレーラー中において使用される典型的な大型トラック蓄電池である。
【実施例6】
【0043】
実施例6は、6kgの硫酸バリウム、2kgのリグノスルホナート、好ましくは、ナトリウムリグノスルホナート、1kgのカーボンブラックおよび10kgのグラファイトの組成を有する、標準自動車蓄電池用の有効な防縮剤添加物の実施例を説明する。この添加物を1000kgの酸化鉛から製造された典型的な負極ペーストバッチに添加した場合、この添加物は、0.6%の硫酸バリウム、0.2%のナトリウムリグノスルホナート、0.1%のカーボンブラックおよび1.0%のグラファイト、即ち、1.1%のカーボンブラックおよびグラファイトの混合物を有する負極板を生じさせる。上記パーセントは全て、ペーストバッチ中で使用される酸化物に対するものである。この組成は好ましい実施例組成であること、ならびに他の量および比も本開示の有益な結果を生むことを理解されたい。
【0044】
グループ27およびグループ31タイプの標準自動車の始動、点灯および点火蓄電池を、0.546%の硫酸バリウム、0.225%のリグノスルホナート、0.084%の木粉および0.136%のカーボンブラックを含有する慣用防縮剤を含有する負極を用いて作製した。第2のグループは、同一添加物を含有し、10kgまたは1.0%のグラファイトが添加された、改良防縮剤を用いて構成した(実施例6)。2種のグループを、国際電池評議会(Battery Council International)のコールドクランキングおよびリザーブキャパシティ試験に従って試験した。結果を図14に示す。リザーブキャパシティおよびコールドクランキング性能は、実施例6の改良防縮剤を有する蓄電池の両方のタイプについて改良された。
【0045】
さらに、グループ27の蓄電池に、自動車技術者協会(Society of Automotive Engineers)(SAE)J240の手順を41℃/105°Fの温度において使用する寿命試験を施した。この試験からの結果を図15に示す。理解することができる通り、SAE J240寿命サイクルは、実施例6の改良防縮剤を有するグループ27の蓄電池について改良された。
【実施例7】
【0046】
実施例7は、6kgの硫酸バリウム、3kgのリグノスルホナート、好ましくは、ナトリウムリグノスルホナート、および3kgのグラファイトの組成を有する、標準自動車蓄電池用の有効な防縮剤添加物の実施例を説明する。この添加物を1000kgの酸化鉛から製造された典型的な負極ペーストバッチに添加した場合、この添加物は、0.6%の硫酸バリウム、0.3%のナトリウムリグノスルホナート、および0.3%のグラファイトを有する負極板を生じさせる。上記パーセントは全て、ペーストバッチ中で使用される酸化物に対するものである。この組成は好ましい実施例組成であること、ならびに他の量および比も本開示の有益な結果を生むことを理解されたい。
【0047】
グループ24タイプの標準自動車の始動、点灯および点火蓄電池を、0.546%の硫酸バリウム、0.225%のリグノスルホナート、0.084%の木粉および0.136%のカーボンブラックを含有する慣用防縮剤を含有する負極を用いて作製した。第2のグループは、同一添加物を含有し、3kgまたは0.3%のグラファイトが添加された、改良防縮剤を用いて構成した(実施例7)。2種のグループを、国際電池評議会のコールドクランキングおよびリザーブキャパシティ試験に従って試験した。結果を図16に示す。リザーブキャパシティおよびコールドクランキング性能は、実施例7の改良防縮剤を有するグループ24の蓄電池について改良された。
【0048】
一般に、本開示の改良防縮剤は、硫酸バリウム、リグノスルホナートおよび高濃度のカーボンブラックおよび/またはグラファイトを含有する。約0.2%から6%、好ましくは、1%から5%のカーボンブラックおよび/またはグラファイトとこれらの物質の混合物のいずれかを含有する、ハイブリッド電気自動車用の制御弁式鉛蓄電池用の防縮剤が有効である。好ましくは、このような改良防縮剤は、約1%から3%のグラファイトを含む。最適には、このような改良防縮剤は、カーボンブラックとグラファイトの両方を、約1%から2%のカーボンブラックおよび約1%から3%のグラファイトの範囲内で含み、約2%のカーボンブラックおよび2%のグラファイトが最も好ましい。
【0049】
約0.3%から1.1%のカーボンブラックおよび/またはグラファイトとこれらの物質の混合物のいずれかを含有する、標準自動車鉛蓄電池用の防縮剤が有効である。好ましくは、このような改良防縮剤は、約0.3%から1.0%のグラファイトを含む。
【0050】
これらの配合は、負極活物質中の防縮剤混合物およびこの成分の濃度についての一般範囲を表し、本開示の趣旨または範囲を限定するものでないことを認識されたい。他の物質、例えば、木粉およびソーダ灰を、本開示の趣旨または範囲を物質的に変更することなく本開示の改良防縮剤に添加することができることも理解されたい。
【0051】
上記明細書は、本開示の好ましい実施形態および択一的な実施形態を記載するにすぎない。上記以外の他の実施形態も実現することができる。従って、用語および表現は本開示を実施例のみにより説明するために機能するにすぎず、本開示を限定するために機能するものではない。上記とは異なる一方、本明細書に記載され、特許請求される本開示の精神および範囲から逸脱しない差異が認められることが予期される。
【技術分野】
【0001】
(優先権の主張)
本出願は、この明細書および開示の全体が参照により本明細書に組み込まれており、発明の名称が「高温における寿命が改良された鉛蓄電池防縮剤(Lead−Acid Battery Expanders with Improved Life at High Temperatures)」である2007年6月6日に出願された同時係属中のU.S.Patent Application Serial No.11/810,659の一部継続出願である、2008年9月2日に出願されたU.S.Non−Provisional Patent Application Serial No.12/231,347の優先権を主張するものである。
【0002】
本開示は、一般に、蓄電池ペースト中で使用される防縮剤および蓄電池極板を製造する方法に関する。特に、蓄電池ペースト中で使用するための防縮剤配合物および種々の鉛蓄電池用の負極板を製造する方法が開示される。より具体的には、本開示は、グラファイトを取り込む1種以上の防縮剤配合物を含む。このような防縮剤配合物から作製された負極板を取り込むハイブリッド電気自動車蓄電池は、負極板表面上での硫酸鉛の蓄積の低下を特徴とし、サイクル寿命の増加および/または電気化学的効率の改良をもたらす。このような防縮剤配合物から作製された負極板を取り込む標準自動車蓄電池は、蓄電池の寿命サイクル、ならびにリザーブキャパシティおよびコールドクランキング性能の大幅な改良をもたらす。
【背景技術】
【0003】
鉛蓄電池用の蓄電池極板の生産は、一般に、ペーストの混合、硬化、乾燥の操作を伴い、この操作において、蓄電池ペースト中の活物質が化学的および物理的変化を受け、この変化を使用して蓄電池極板を形成するのに必要な化学的および物理的構造、ならびにその後の機械的強度を確立する。典型的な蓄電池極板を製造するため、物質を、酸化鉛、水および硫酸の順で市販のペースト混合装置に添加し、次いで、これらの物質をペーストのコンシステンシーまで混合する。蓄電池用の負極板または正極板のいずれを製造するかに応じて、慣用添加物、例えば、短繊維または防縮剤を使用してペーストの特性および製造される極板の性能を改質することもできる。他の添加物、例えば、この開示の全体が参照により本明細書に組み込まれている2006年10月10日にBodenらに発行されたU.S.Patent No.7,118,830に開示の添加物を使用して蓄電池極板の化学的および物理的構造、ならびに性能を向上させ、または改良することができる。
【0004】
鉛蓄電池の負極板は、通常、防縮剤添加物を有するペーストを調製し、次いで、この蓄電池ペーストをグリッドとして知られている導電性鉛合金構造体に塗布することにより製造される。典型的には、次いで、これらのペースト極板を、高い相対湿度を有する空気を含有する加熱チャンバ中で硬化させる。この硬化プロセスにより、その後の取扱および蓄電池における性能に要求される必要な化学的および物理的構造が生じる。硬化後、極板を任意の好適な手段を使用して乾燥させる。従って、負極活物質を含むこれらの極板は、蓄電池中で使用するのに好適である。
【0005】
防縮剤は、通常、硫酸バリウム、炭素およびリグノスルホナートまたは他の有機物質の混合物であり、ペーストを調製する間に負極板活物質に添加される。蓄電池の性能を改良するため、防縮剤は、他の公知成分、例えば、木粉およびソーダ灰を取り込んでもよい。防縮剤物質は、ペースト混合プロセスの間にペーストに別個に添加することができるが、改良手順は、防縮剤の構成物質を混合してから、これらの構成物質をペースト混合物に添加することである。
【0006】
防縮剤は、負極板中で多くの機能を果たし、これらの機能について簡単に説明する。硫酸バリウムの機能は、極板を放電したときに生成される硫酸鉛に対する核形成剤として作用することである。
【0007】
【数1】
【0008】
硫酸鉛放電生成物は硫酸バリウム粒子上に堆積し、この硫酸バリウム粒子は活物質全体にわたる硫酸鉛の均一分布を実現し、鉛粒子の被覆を妨げる。硫酸バリウムという用語は、0.5から5マイクロメートルの粒度のこの化合物の永久白形態と重晶石形態の両方およびこれらの混合物を表す。硫酸バリウム結晶は、極めて多数の小さい種晶が負極活物質中に埋め込まれるように1ミクロン以下のオーダーの極めて小さい粒度を有することが望ましい。この小さい粒度は、硫酸バリウム核上で成長している硫酸鉛結晶が小さく、一様の大きさであることを確保するので、これらの硫酸鉛結晶は極板を充電したときに鉛活物質に容易に変換される。
【0009】
【数2】
【0010】
炭素は、放電状態における活物質の導電率を増加させ、この導電率の増加により活物質の電荷受容量が改良される。炭素は、通常、カーボンブラックおよび/または活性炭の形態である。慣用防縮剤配合物の負極活物質中の炭素の量は、1パーセントという小さい割合にすぎない。
【0011】
リグノスルホナートの機能は、より複雑である。リグノスルホナートは、鉛活物質上に化学吸着し、鉛活物質の表面積の顕著な増加をもたらす。リグノスルホナートが存在しない場合、表面積は1グラム当たり約0.2平方メートルのオーダーである一方、リグノスルホナートが0.50%存在する場合、表面積はグラム当たり約2平方メートルまで増加する。この大きな表面積により電気化学的プロセスの効率が増加し、この効率の増加により負極板の性能が改良される。リグノスルホナートは、負極活物質の物理的構造も安定化させ、この安定化により蓄電池作動中の劣化が遅延する。この特性により、蓄電池の稼働寿命が増加する。有機物質は、任意のリグノスルホナート化合物、または負極活物質の表面上に吸着することができ、この吸着により負極活物質の表面積および電気化学的挙動に影響を与える他の好適な有機物質であってよい。
【0012】
鉛蓄電池は、自動車、産業用動力、例えば、フォークリフトトラック用の産業用動力、電気通信、および予備電源システム、即ち、無停電電源供給装置の蓄電池を含む種々の用途において使用される。さらに蓄電池は、液式(flooded−electrolyte)または制御弁式設計のものであってよい。これらの蓄電池は、最適な性能および寿命を付与するため、防縮剤成分の異なる比率および活物質への異なる添加率を要求する。従って、防縮剤は、一般に、この用途、例えば、自動車、産業用動力および産業用予備電源に従って分類することができる。これらの防縮剤は、液式および制御弁式の蓄電池設計について下位分割することもできる。上記用途のための慣用防縮剤配合物の典型例を図1に示す。
【0013】
防縮剤について認識される問題は、上記の慣用防縮剤配合物が、例えば、ハイブリッド電気自動車中で使用される蓄電池において有効でないことである。この用途において、蓄電池は、蓄電池が完全放電または完全充電されることのない条件である部分充電状態(PSOC)条件で作動される。この条件下で、負極板は、常に、硫酸鉛に部分的に変換され、この硫酸鉛は、慣用蓄電池のように周期的な完全充電により鉛に変換されない。負極板は、回生ブレーキの間に発生する電流から極めて高率で充電を受け入れることもできなければならない。
【0014】
このタイプの作動の間、硫酸鉛が負極板表面上に蓄積し、この硫酸鉛が極板を充電するのに必要なイオンおよび電流の流れに対して遮断物として作用することが示されている。結果的に、硫酸鉛層の厚さが次第に増加し、蓄電池性能の低減または劣化がもたらされる。結局、蓄電池が適正に機能することができなくなるまで性能が降下する。この現象の代表例を図2に示す。この問題により、ハイブリッド電気自動車中における鉛蓄電池の使用が妨げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】米国特許第7,118,830号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
結果的に、高率PSOC蓄電池作動の間の硫酸鉛の蓄積の問題を解決するにあたって有効である、蓄電池ペーストおよび極板用の改良防縮剤配合物、ならびに種々のタイプの鉛蓄電池に蓄電池容量、効率、性能および寿命の改良を提供する改良防縮剤配合物が必要とされている。本開示は、公知の従来技術の防縮剤、蓄電池ペーストおよび負極蓄電池極板を製造する方法の上記の欠点および/または欠陥を解決し、これらの従来技術に対して顕著な改良を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本開示は、鉛蓄電池用の蓄電池ペースト組成物中で使用される改良防縮剤配合物に関する。改良防縮剤配合物は、有効量のグラファイトまたはカーボンブラックおよびグラファイトの混合物を取り込む。改良防縮剤配合物の濃度も、従来使用される量を超えて顕著に増加する。改良防縮剤配合物を取り込む蓄電池ペーストから作製された負極蓄電池極板は、蓄電池の容量、効率、性能、さらには蓄電池の寿命の大幅な改良を示す。ハイブリッド電気自動車蓄電池において、改良防縮剤配合物は、高率PSOC蓄電池作動の間の負極板表面上での硫酸鉛の蓄積を減らし、または最小化する。
【0018】
特に、ハイブリッド電気自動車用の制御弁式鉛蓄電池において、改良防縮剤配合物は、約0.2%から6%のグラファイトまたは炭素およびグラファイトの混合物を含み、好ましくは、約1%から5%である。特に、約1%から3%のグラファイトを有する改良防縮剤が好ましい。最適には、改良防縮剤は、約1%から2%のカーボンブラックおよび約1%から3%のグラファイトを有し、約2%のカーボンブラックおよび約2%のグラファイトが最も好ましい。
【0019】
標準自動車に使用するための鉛蓄電池において、特に、液式自動車蓄電池用の鉛蓄電池において、改良防縮剤配合物は、約0.3%から1.1%のグラファイトまたは炭素およびグラファイトの混合物を含み、好ましくは、0.3%から1.0%のグラファイトを含む。
【0020】
従って、本開示の目的は、有効量のグラファイトまたはカーボンブラックおよびグラファイトの混合物を増加濃度で取り込む改良防縮剤配合物を提供することである。
【0021】
本開示の別の目的は、蓄電池の容量、効率、性能、および/または鉛蓄電池の寿命サイクルの大幅な改良を示す、改良防縮剤配合物を取り込む蓄電池ペースト組成物を提供することである。
【0022】
本開示のさらに別の目的は、部分充電状態作動による高率充電の間の負極板表面上での硫酸鉛の蓄積が顕著に低下する負極板を有し、サイクル寿命および電気化学的効率の改良をもたらす、ハイブリッド電気自動車用の鉛蓄電池を提供することである。
【0023】
本開示のさらに別の目的は、蓄電池産業の標準試験、例えば、コールドクランキングアンペア試験、リザーブキャパシティ試験およびSAE J240サイクル試験において慣用防縮剤に対して電気性能の改良を提供する負極板を有する標準自動車鉛蓄電池を提供することである。
【0024】
本開示の多数の他の目的、特徴および利点は、以下の詳細な説明および特許請求の範囲から容易に明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】種々の鉛蓄電池の負極板についての慣用防縮剤配合物および添加率を説明する表である。
【図2】PSOC作動による高率充電の間のハイブリッド電気自動車用の鉛蓄電池の負極板表面上での硫酸鉛の蓄積の説明である。
【図3】ハイブリッド電気自動車用の制御弁式鉛蓄電池用の改良防縮剤配合物の実施例を説明する表である。
【図4】図3の実施例1の改良防縮剤配合物を有する蓄電池セルのサイクル寿命をそれぞれ説明するグラフである。
【図5】図3の実施例2の改良防縮剤配合物を有する蓄電池セルのサイクル寿命をそれぞれ説明するグラフである。
【図6】図3の実施例3の改良防縮剤配合物を有する蓄電池セルのサイクル寿命をそれぞれ説明するグラフである。
【図7】図3の実施例4の改良防縮剤配合物を有する蓄電池セルのサイクル寿命をそれぞれ説明するグラフである。
【図8】図3の実施例5の改良防縮剤配合物を有する蓄電池セルのサイクル寿命をそれぞれ説明するグラフである。
【図9】制御弁式鉛蓄電池用の慣用防縮剤配合物を有する蓄電池セルのサイクル寿命を説明するグラフである。
【図10】慣用防縮剤を有する負極蓄電池極板の横断面の電子顕微鏡像である。
【図11】図3の実施例1の防縮剤を有する負極蓄電池極板の横断面の電子顕微鏡像である。
【図12】慣用防縮剤および図3の実施例1から5の改良防縮剤配合物を有する負極活物質の電気化学的効率を説明する表である。
【図13】標準自動車液式鉛蓄電池用の改良防縮剤配合物の実施例を説明する表である。
【図14】慣用防縮剤および図13の実施例6の改良防縮剤を含有するグループ27およびグループ31の蓄電池についてのリザーブキャパシティおよびコールドクランキング試験データを説明する表である。
【図15】摂氏41度(41℃)におけるSAE J240寿命サイクル試験からの、慣用防縮剤および図13の実施例6の改良防縮剤を含有するグループ27の蓄電池についての蓄電池寿命試験データを説明する表である。
【図16】慣用防縮剤および図13の実施例7の改良防縮剤を含有するグループ24の蓄電池についてのリザーブキャパシティおよびコールドクランキング試験データを説明する表である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本開示は多くの異なる形態の実施形態を許容する一方、本明細書においては本開示の好ましい実施形態および択一的な実施形態を詳細に説明する。しかしながら、本開示は、本発明の原理の例示とみなすべきであり、説明される実施形態の本発明および/または特許請求の範囲の趣旨および範囲を限定するものではないことを理解されたい。
【0027】
説明として、本開示の改良防縮剤配合物の7種の実施例を本明細書において記載する。実施例1から5は、ハイブリッド電気自動車蓄電池用であり、図3から12に関して説明する。実施例6から7は、標準自動車蓄電池用であり、図13から16に関して説明する。さらなる実施例は、本明細書において提供される開示から、当業者に明白であることを理解されたい。本開示は、蓄電池ペースト混合物中で防縮剤を使用して負極蓄電池極板を形成する任意のタイプの蓄電池に適用可能であることも理解されたい。
【0028】
本開示の改良防縮剤配合物の7種の実施例を、図3および13において説明する。これらの実施例のそれぞれを以下に詳述する。
【実施例1】
【0029】
実施例1は、8kgの硫酸バリウム、6kgのリグノスルホナート、好ましくは、ナトリウムリグノスルホナート、20kgのカーボンブラックおよび20kgのグラファイトの組成を有する有効な防縮剤添加物の実施例を説明する。この添加物を1000kgの酸化鉛から製造された典型的な負極ペーストバッチに添加した場合、この添加物は、0.8%の硫酸バリウム、0.6%のナトリウムリグノスルホナート、2.0%のカーボンブラックおよび2.0%のグラファイト、即ち、4%のカーボンブラックおよびグラファイトの混合物を有する負極板を生じさせる。上記パーセントは全て、ペーストバッチ中で使用される酸化物に対するものである。この組成は好ましい実施例組成であること、ならびに他の量および比も本開示の有益な結果を生むことを理解されたい。
【0030】
1.74アンペアアワーの容量を有する鉛蓄電池セルを、実施例1のこの防縮剤配合物を使用する負極板から作製し、8kgの硫酸バリウム、3kgのリグノスルホナートおよび1kgのカーボンブラックを含む慣用防縮剤ブレンドを使用するセルと比較した。セルを、3.48アンペアにおいて1分間放電し、次いで30秒間休止させ、次いで3.48アンペアにおいて1分間充電し、次いで30秒間休止させることを含む模擬ハイブリッド電気自動車試験スケジュールに従って試験した。1回の試験順序を1サイクルと指定した。この順序を、セルが故障するまで繰り返した。実施例1の防縮剤についての典型的な試験結果を、図4に示す。改良防縮剤は、180058サイクルを付与した一方、上記の慣用防縮剤は、23,477サイクルを許容したにすぎなかった(図9を参照のこと)。
【実施例2】
【0031】
実施例2は、8kgの硫酸バリウム、2kgのリグノスルホナート、好ましくは、ナトリウムリグノスルホナートおよび20kgのグラファイトの組成を有する有効な添加物の別の実施例を説明する。この添加物を1000kgの酸化鉛から製造された典型的な負極ペーストバッチに添加した場合、この添加物は、0.8%の硫酸バリウム、0.2%のナトリウムリグノスルホナートおよび2.0%のグラファイトを有する負極板を生じさせる。上記パーセントは全て、ペーストバッチ中で使用される酸化物に対するものである。この組成は好ましい実施例組成であること、ならびに他の量および比も本開示の有益な結果を生むことを理解されたい。
【0032】
1.74アンペアアワーの容量を有する鉛蓄電池セルを、実施例2のこの防縮剤配合物を使用する負極板から作製し、実施例1に関して上記の慣用防縮剤ブレンドを使用するセルと比較した。セルを、実施例1に関して上記の模擬ハイブリッド電気自動車試験スケジュールに従って試験した。実施例2の防縮剤についての典型的な試験結果を、図5に示す。改良防縮剤は、224,499サイクルを付与した一方、上記の慣用防縮剤は、23,477サイクルを許容したにすぎなかった(図9を参照のこと)。
【実施例3】
【0033】
実施例3は、8kgの硫酸バリウム、2kgのリグノスルホナート、好ましくは、ナトリウムリグノスルホナート、20kgのカーボンブラックおよび20kgのグラファイトの組成を有する有効な防縮剤添加物のさらに別の実施例を説明する。この添加物を1000kgの酸化鉛から製造された典型的な負極ペーストバッチに添加した場合、この添加物は、0.8%の硫酸バリウム、0.2%のナトリウムリグノスルホナート、2.0%のカーボンブラックおよび2.0%のグラファイト、即ち、4%のカーボンブラックおよびグラファイトの混合物を有する負極板を生じさせる。上記パーセントは全て、ペーストバッチ中で使用される酸化物に対するものである。この組成は好ましい実施例組成であること、ならびに他の量および比も本開示の有益な結果を生むことを理解されたい。
【0034】
1.74アンペアアワーの容量を有する鉛蓄電池セルを、実施例3のこの防縮剤配合物を使用する負極板から作製し、実施例1に関して上記の慣用防縮剤ブレンドを使用するセルと比較した。セルを、実施例1に関して上記の模擬ハイブリッド電気自動車試験スケジュールに従って試験した。実施例3の防縮剤についての典型的な試験結果を、図6に示す。改良防縮剤は、191,225サイクルを付与した一方、上記の慣用防縮剤は、23,477サイクルを許容したにすぎなかった(図9を参照のこと)。
【実施例4】
【0035】
実施例4は、8kgの硫酸バリウム、2kgのリグノスルホナート、好ましくは、ナトリウムリグノスルホナート、10kgのカーボンブラックおよび10kgのグラファイトの組成を有する有効な防縮剤添加物のさらに別の実施例を説明する。この添加物を1000kgの酸化鉛から製造された典型的な負極ペーストバッチに添加した場合、この添加物は、0.8%の硫酸バリウム、0.2%のナトリウムリグノスルホナート、1.0%のカーボンブラックおよび1.0%のグラファイト、即ち、2%のカーボンブラックおよびグラファイトの混合物を有する負極板を生じさせる。上記パーセントは全て、ペーストバッチ中で使用される酸化物に対するものである。この組成は好ましい実施例組成であること、ならびに他の量および比も本開示の有益な結果を生むことを理解されたい。
【0036】
1.74アンペアアワーの容量を有する鉛蓄電池セルを、図4のこの防縮剤配合物を使用する負極板から作製し、実施例1に関して上記の慣用防縮剤ブレンドを使用するセルと比較した。セルを、実施例1に関して上記の模擬ハイブリッド電気自動車試験スケジュールに従って試験した。典型的な試験結果を図7に示す。改良防縮剤は、123319サイクルを付与した一方、上記の慣用防縮剤は、23,477サイクルを許容したにすぎなかった(図9を参照のこと)。
【実施例5】
【0037】
実施例5は、8kgの硫酸バリウム、2kgのナトリウムリグノスルホナート、20kgのカーボンブラックおよび30kgのグラファイトの組成を有する有効な防縮剤添加物のさらに別の実施例を説明する。この添加物を1000kgの酸化鉛から製造された典型的な負極ペーストバッチに添加した場合、この添加物は、0.8%の硫酸バリウム、0.2%のナトリウムリグノスルホナート、2.0%のカーボンブラックおよび3.0%のグラファイト、即ち、5%のカーボンブラックおよびグラファイトの混合物を有する負極板を生じさせる。上記パーセントは全て、ペーストバッチ中で使用される酸化物に対するものである。この組成は好ましい実施例組成であること、ならびに他の量および比も本開示の有益な結果を生むことを理解されたい。
【0038】
1.74アンペアアワーの容量を有する鉛蓄電池セルを、実施例5のこの防縮剤配合物を使用する負極板から作製し、実施例1に関して上記の慣用防縮剤ブレンドを使用するセルと比較した。セルを、実施例1に関して上記の模擬ハイブリッド電気自動車試験スケジュールに従って試験した。実施例5の防縮剤についての典型的な試験結果を、図8に示す。改良防縮剤は、106,803サイクルを付与した一方、上記の慣用防縮剤は、23,477サイクルを許容したにすぎなかった(図9を参照のこと)。
【0039】
これらの実施例1から5は、改良防縮剤により鉛蓄電池セルの寿命が最大で9倍を超える倍率だけ増加することを示す。これらの改良防縮剤添加物を用いて作製された負極蓄電池極板の形態についての試験は、これらの添加物が負極板表面上での硫酸鉛の蓄積を解決するにあたって極めて有効であり、代わりに負極活物質全体にわたる硫酸鉛の均一分布を生むことを示す。このことは、上記の慣用防縮剤(図10を参照のこと)および実施例1の改良防縮剤添加物(図11を参照のこと)を用いてサイクルにかけた負極蓄電池極板における硫酸鉛の分布を示す図10および11に説明する。図10の白みがかった領域は、充電(1479サイクル)後の極板表面上の硫酸鉛の存在を示す一方、図11に示す極板は、2倍超のサイクル(3596)後、充電後の硫酸鉛をほとんど示さない。
【0040】
実施例1から4の改良防縮剤配合物により、鉛蓄電池充放電プロセスの電気化学的効率も増加する。この電気化学的効率は、極板上の1グラムの活物質から得ることができる電気の量として測定し、通常、1グラムの活物質当たりのミリアンペアアワーの単位で測定する。図12は、慣用防縮剤および改良防縮剤を利用する鉛蓄電池セルの電気化学的効率の比較を示す。実施例1から4の改良防縮剤は、最大18%のパーセントの改良をもたらすことを理解することができる。
【0041】
図12において理解することができる通り、実施例5に関して、慣用防縮剤よりも低い電気化学的効率を有するが、ハイブリッド自動車試験において大きく改良されたサイクル寿命を依然として有する、グラファイトを有する改良防縮剤配合物を作製することができる(図8を参照のこと)。実施例5のより低い電気化学的効率は、活物質を高配合量のカーボンブラック/グラファイト添加物に置き換えたことに起因する。
【0042】
さらなる実施例(実施例6および7、図13を参照のこと)として、グラファイトを有する改良防縮剤配合物は、エンジン始動用途蓄電池、例えば、標準自動車液式蓄電池、例えば、グループ24、グループ27およびグループ31の蓄電池においても有効である。これらのグループ番号は、蓄電池サイズを指し、特定の自動車中で使用されるタイプを指定する。グループ24は、典型的な普通自動車蓄電池である。グループ27は、典型的な大型自動車蓄電池である。グループ31は、トラクタートレーラー中において使用される典型的な大型トラック蓄電池である。
【実施例6】
【0043】
実施例6は、6kgの硫酸バリウム、2kgのリグノスルホナート、好ましくは、ナトリウムリグノスルホナート、1kgのカーボンブラックおよび10kgのグラファイトの組成を有する、標準自動車蓄電池用の有効な防縮剤添加物の実施例を説明する。この添加物を1000kgの酸化鉛から製造された典型的な負極ペーストバッチに添加した場合、この添加物は、0.6%の硫酸バリウム、0.2%のナトリウムリグノスルホナート、0.1%のカーボンブラックおよび1.0%のグラファイト、即ち、1.1%のカーボンブラックおよびグラファイトの混合物を有する負極板を生じさせる。上記パーセントは全て、ペーストバッチ中で使用される酸化物に対するものである。この組成は好ましい実施例組成であること、ならびに他の量および比も本開示の有益な結果を生むことを理解されたい。
【0044】
グループ27およびグループ31タイプの標準自動車の始動、点灯および点火蓄電池を、0.546%の硫酸バリウム、0.225%のリグノスルホナート、0.084%の木粉および0.136%のカーボンブラックを含有する慣用防縮剤を含有する負極を用いて作製した。第2のグループは、同一添加物を含有し、10kgまたは1.0%のグラファイトが添加された、改良防縮剤を用いて構成した(実施例6)。2種のグループを、国際電池評議会(Battery Council International)のコールドクランキングおよびリザーブキャパシティ試験に従って試験した。結果を図14に示す。リザーブキャパシティおよびコールドクランキング性能は、実施例6の改良防縮剤を有する蓄電池の両方のタイプについて改良された。
【0045】
さらに、グループ27の蓄電池に、自動車技術者協会(Society of Automotive Engineers)(SAE)J240の手順を41℃/105°Fの温度において使用する寿命試験を施した。この試験からの結果を図15に示す。理解することができる通り、SAE J240寿命サイクルは、実施例6の改良防縮剤を有するグループ27の蓄電池について改良された。
【実施例7】
【0046】
実施例7は、6kgの硫酸バリウム、3kgのリグノスルホナート、好ましくは、ナトリウムリグノスルホナート、および3kgのグラファイトの組成を有する、標準自動車蓄電池用の有効な防縮剤添加物の実施例を説明する。この添加物を1000kgの酸化鉛から製造された典型的な負極ペーストバッチに添加した場合、この添加物は、0.6%の硫酸バリウム、0.3%のナトリウムリグノスルホナート、および0.3%のグラファイトを有する負極板を生じさせる。上記パーセントは全て、ペーストバッチ中で使用される酸化物に対するものである。この組成は好ましい実施例組成であること、ならびに他の量および比も本開示の有益な結果を生むことを理解されたい。
【0047】
グループ24タイプの標準自動車の始動、点灯および点火蓄電池を、0.546%の硫酸バリウム、0.225%のリグノスルホナート、0.084%の木粉および0.136%のカーボンブラックを含有する慣用防縮剤を含有する負極を用いて作製した。第2のグループは、同一添加物を含有し、3kgまたは0.3%のグラファイトが添加された、改良防縮剤を用いて構成した(実施例7)。2種のグループを、国際電池評議会のコールドクランキングおよびリザーブキャパシティ試験に従って試験した。結果を図16に示す。リザーブキャパシティおよびコールドクランキング性能は、実施例7の改良防縮剤を有するグループ24の蓄電池について改良された。
【0048】
一般に、本開示の改良防縮剤は、硫酸バリウム、リグノスルホナートおよび高濃度のカーボンブラックおよび/またはグラファイトを含有する。約0.2%から6%、好ましくは、1%から5%のカーボンブラックおよび/またはグラファイトとこれらの物質の混合物のいずれかを含有する、ハイブリッド電気自動車用の制御弁式鉛蓄電池用の防縮剤が有効である。好ましくは、このような改良防縮剤は、約1%から3%のグラファイトを含む。最適には、このような改良防縮剤は、カーボンブラックとグラファイトの両方を、約1%から2%のカーボンブラックおよび約1%から3%のグラファイトの範囲内で含み、約2%のカーボンブラックおよび2%のグラファイトが最も好ましい。
【0049】
約0.3%から1.1%のカーボンブラックおよび/またはグラファイトとこれらの物質の混合物のいずれかを含有する、標準自動車鉛蓄電池用の防縮剤が有効である。好ましくは、このような改良防縮剤は、約0.3%から1.0%のグラファイトを含む。
【0050】
これらの配合は、負極活物質中の防縮剤混合物およびこの成分の濃度についての一般範囲を表し、本開示の趣旨または範囲を限定するものでないことを認識されたい。他の物質、例えば、木粉およびソーダ灰を、本開示の趣旨または範囲を物質的に変更することなく本開示の改良防縮剤に添加することができることも理解されたい。
【0051】
上記明細書は、本開示の好ましい実施形態および択一的な実施形態を記載するにすぎない。上記以外の他の実施形態も実現することができる。従って、用語および表現は本開示を実施例のみにより説明するために機能するにすぎず、本開示を限定するために機能するものではない。上記とは異なる一方、本明細書に記載され、特許請求される本開示の精神および範囲から逸脱しない差異が認められることが予期される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
硫酸バリウム;
高濃度の炭素および/またはグラファイト;ならびに
有機物質
を含む、鉛蓄電池用の蓄電池極板用の蓄電池ペースト用の防縮剤。
【請求項2】
有機物質がリグノスルホナートである、請求項1に記載の防縮剤。
【請求項3】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、ハイブリッド電気自動車用の鉛蓄電池用の蓄電池極板用の蓄電池ペースト中で使用される酸化物の量に対して約0.2%から6%である、請求項1に記載の防縮剤。
【請求項4】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、約1%から5%である、請求項3に記載の防縮剤。
【請求項5】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、約1%から3%のグラファイトを含む、請求項4に記載の防縮剤。
【請求項6】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、約1%から2%のカーボンブラックを含む、請求項5に記載の防縮剤。
【請求項7】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、約2%のグラファイトおよび約2%のカーボンブラックを含む、請求項6に記載の防縮剤。
【請求項8】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、液式自動車鉛蓄電池用の蓄電池極板用の蓄電池ペースト中で使用される酸化物の量に対して約0.3%から1.1%である、請求項1に記載の防縮剤。
【請求項9】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、約0.3%から1.0%のグラファイトを含む、請求項8に記載の防縮剤。
【請求項10】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、鉛蓄電池中の負極活物質表面上での硫酸鉛の蓄積を低下させる、請求項1に記載の防縮剤。
【請求項11】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、鉛蓄電池の電気化学的効率、リザーブキャパシティ、コールドクランキング性能およびサイクル寿命の少なくとも1つを増加させる、請求項1に記載の防縮剤。
【請求項12】
請求項1に記載の防縮剤を取り込む蓄電池ペースト。
【請求項13】
請求項12に記載の蓄電池ペーストから作製された蓄電池極板。
【請求項14】
蓄電池ペースト混合物を配合する工程;
蓄電池ペースト混合物に、硫酸バリウム、有機物質、ならびに高濃度の炭素および/またはグラファイトを別個に、または予備混合して添加する工程
を含む、鉛蓄電池用の蓄電池極板用の蓄電池ペーストを製造する方法。
【請求項15】
有機物質がリグノスルホナートである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、ハイブリッド電気自動車用の鉛蓄電池用の蓄電池極板用の蓄電池ペースト中で使用される酸化物の量に対して約0.2%から6%である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、約1%から5%である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、約1%から3%のグラファイトを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、約1%から2%のカーボンブラックを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、約2%のグラファイトおよび約2%のカーボンブラックを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、液式自動車鉛蓄電池用の蓄電池極板用の蓄電池ペースト中で使用される酸化物の量に対して約0.3%から1.1%である、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、約0.3%から1.1%のグラファイトを含む、請求項14に記載の防縮剤。
【請求項23】
請求項14に記載の方法から作製された蓄電池極板。
【請求項24】
請求項23に記載の蓄電池極板から作製された蓄電池。
【請求項1】
硫酸バリウム;
高濃度の炭素および/またはグラファイト;ならびに
有機物質
を含む、鉛蓄電池用の蓄電池極板用の蓄電池ペースト用の防縮剤。
【請求項2】
有機物質がリグノスルホナートである、請求項1に記載の防縮剤。
【請求項3】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、ハイブリッド電気自動車用の鉛蓄電池用の蓄電池極板用の蓄電池ペースト中で使用される酸化物の量に対して約0.2%から6%である、請求項1に記載の防縮剤。
【請求項4】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、約1%から5%である、請求項3に記載の防縮剤。
【請求項5】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、約1%から3%のグラファイトを含む、請求項4に記載の防縮剤。
【請求項6】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、約1%から2%のカーボンブラックを含む、請求項5に記載の防縮剤。
【請求項7】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、約2%のグラファイトおよび約2%のカーボンブラックを含む、請求項6に記載の防縮剤。
【請求項8】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、液式自動車鉛蓄電池用の蓄電池極板用の蓄電池ペースト中で使用される酸化物の量に対して約0.3%から1.1%である、請求項1に記載の防縮剤。
【請求項9】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、約0.3%から1.0%のグラファイトを含む、請求項8に記載の防縮剤。
【請求項10】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、鉛蓄電池中の負極活物質表面上での硫酸鉛の蓄積を低下させる、請求項1に記載の防縮剤。
【請求項11】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、鉛蓄電池の電気化学的効率、リザーブキャパシティ、コールドクランキング性能およびサイクル寿命の少なくとも1つを増加させる、請求項1に記載の防縮剤。
【請求項12】
請求項1に記載の防縮剤を取り込む蓄電池ペースト。
【請求項13】
請求項12に記載の蓄電池ペーストから作製された蓄電池極板。
【請求項14】
蓄電池ペースト混合物を配合する工程;
蓄電池ペースト混合物に、硫酸バリウム、有機物質、ならびに高濃度の炭素および/またはグラファイトを別個に、または予備混合して添加する工程
を含む、鉛蓄電池用の蓄電池極板用の蓄電池ペーストを製造する方法。
【請求項15】
有機物質がリグノスルホナートである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、ハイブリッド電気自動車用の鉛蓄電池用の蓄電池極板用の蓄電池ペースト中で使用される酸化物の量に対して約0.2%から6%である、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、約1%から5%である、請求項15に記載の方法。
【請求項18】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、約1%から3%のグラファイトを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、約1%から2%のカーボンブラックを含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、約2%のグラファイトおよび約2%のカーボンブラックを含む、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、液式自動車鉛蓄電池用の蓄電池極板用の蓄電池ペースト中で使用される酸化物の量に対して約0.3%から1.1%である、請求項14に記載の方法。
【請求項22】
高濃度の炭素および/またはグラファイトが、約0.3%から1.1%のグラファイトを含む、請求項14に記載の防縮剤。
【請求項23】
請求項14に記載の方法から作製された蓄電池極板。
【請求項24】
請求項23に記載の蓄電池極板から作製された蓄電池。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公表番号】特表2012−501519(P2012−501519A)
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−525020(P2011−525020)
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/004941
【国際公開番号】WO2010/027451
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(506322558)ハモンド グループ,インク. (3)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月2日(2009.9.2)
【国際出願番号】PCT/US2009/004941
【国際公開番号】WO2010/027451
【国際公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【出願人】(506322558)ハモンド グループ,インク. (3)
【Fターム(参考)】
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