説明

鉱物繊維用のサイズ剤組成物および得られる製品

本発明は、鉱物繊維、特にガラス繊維または岩石繊維用のサイズ剤組成物であって、液体の総重量に対して表される遊離ホルムアルデヒド含有量が0.1%以下である液体フェノール樹脂と増量剤とを含有する組成物に関する。この液体フェノール樹脂は、好ましくは、フェノール−ホルムアルデヒドおよびフェノール−ホルムアルデヒド−アミンの縮合物から主に構成されており、20℃での水希釈性が少なくとも1000%に等しい。本発明の他の主題は、前記サイズ剤組成物で処理された鉱物繊維をベースとしたインシュレーティング製品である。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
本発明は、遊離ホルムアルデヒドの含有量が低い、鉱物繊維、特にガラス繊維または岩石繊維用のサイズ剤組成物に関する。このサイズ剤組成物は、フェノール、ホルムアルデヒドおよびアミンを塩基性触媒の存在下で縮合させることによって得られる樹脂と、増量剤とを含む。
【0002】
また、本発明は、前記サイズ剤組成物によって処理された鉱物繊維をベースとするインシュレーティング製品に関する。
【0003】
鉱物繊維をベースとするインシュレーティング製品は、様々なプロセスによって、たとえば内部または外部遠心繊維化という公知の技術を使用して得られる繊維から形成され得る。
【0004】
内部遠心は、溶融材料(一般的には、ガラスまたは岩石)を多数の小さな穴を持つスピナーに導入し、この材料が遠心力の作用でスピナーの周壁に対して放出されてそこからフィラメントの形態で抜けることにある。スピナーを離れると、フィラメントは細くなり高速高温のガス流によって同伴されて受入部材に達し繊維のウェブを形成する。
【0005】
外部遠心に関しては、これは、ローターとして知られている回転部材の外周面上に溶融材料を注ぎ、そこから遠心力の作用で溶融材料を放出することにある。ガス流によって細くする手段および受入部材に集める手段も設けられている。
【0006】
繊維をいっしょに集めて凝集したウェブを与えるために、スピナーから離れると、繊維は熱硬化性樹脂を含むサイズ剤組成物でスプレーされる。サイズ剤で被覆された繊維のウェブは(一般的に100℃を超える温度で)熱処理を受け、樹脂を重縮合させ、こうして特有の性質、特に寸法安定性、引張強さ、圧縮後の厚さ回復性および一様な色を有する断熱および/または防音製品を得るようにする。
【0007】
サイズ剤組成物は、通常、繊維上にスプレーされる。一般的に、サイズ剤組成物は、通例は水溶液の形態をとる樹脂と、尿素、シラン、鉱油、アンモニア水溶液および重縮合触媒のような添加剤と、水とを含む。
【0008】
サイズ剤組成物の性質は樹脂の特性に大きく依存する。応用の論点から、サイズ剤組成物が優れたスプレー性を有し繊維の表面上に堆積することができ、それらを効率的に結合することが必要である。スプレー性は、大量の水で希釈され長期にわたって安定なままであり得るという樹脂が持っている能力に直接関連する。
【0009】
希釈可能性は「希釈性」によって特徴付けられ、これは、所定の温度で永久的な曇りが現れる前に単位体積の樹脂水溶液に加えることができる脱イオン水の体積と定義される。一般的に、樹脂は、20℃でのその希釈性が1000%以上である場合に、サイズ剤として使用できるとみなされる。
【0010】
サイズ剤組成物は一般的に使用時に樹脂と上述した添加剤とを混合することによって調製される。サイズ剤組成物に使用される前の所定時間、特に約12ないし18℃の温度で少なくとも8日間、樹脂が安定のままであること、およびこの期間の終わりに、20℃で、その希釈性が1000%以上、好ましくは2000%以上(無限希釈性)であることが重要である。
【0011】
更に、サイズ剤組成物は厳しい規制を受け、このことは、樹脂が含有する(およびサイジング作業の間にまたは引き続きインシュレーティング製品の硬化の間に生成する)、人体の健康または環境に対して有害であるとみなされる化合物ができるだけ少なくなければならないことを意味する。
【0012】
サイズ剤組成物に最も普通に使用される熱硬化性樹脂はレゾール群に属するフェノール樹脂である。上述した熱条件下でのそれらの優れた架橋性に加え、これらの樹脂は水に非常に可溶であり、鉱物繊維、特にガラス繊維に対する良好な親和性を有し、比較的安価である。
【0013】
これらの樹脂は、塩基性触媒の存在中で、ホルムアルデヒド/フェノールのモル比を一般的に1よりも大きくしてフェノールとホルムアルデヒドとの間の反応を促進させ樹脂中の残留フェノール含有量を低減させるようにして、フェノールとホルムアルデヒドとの重縮合によって得られる。
【0014】
残留するホルムアルデヒドの量を低減させるために、十分な量の尿素を樹脂に添加し、この尿素を遊離ホルムアルデヒドと反応させ、尿素−ホルムアルデヒド縮合物を生成させることが知られている(EP 0 148 050 A1を参照のこと)。得られた樹脂は、フェノール−ホルムアルデヒド縮合物および尿素−ホルムアルデヒド縮合物を含み、液体の総重量に対して表される遊離ホルムアルデヒドおよび遊離フェノールの含有量がそれぞれ3%以下および0.5%以下であり、水希釈性が少なくとも1000%である。
【0015】
残留フェノールの量は許容できるが、しかし残留ホルムアルデヒドの量が高すぎて現在の規制の制限を満たさない。
【0016】
更に、この樹脂は、この樹脂が架橋して繊維を効果的に結合して最終的なインシュレーティング製品にするために、サイジングされた繊維が受ける熱処理の条件下で安定でない。オーブン内で通常使用される温度、一般的には100℃より高い温度では、尿素−ホルムアルデヒド縮合物は劣化してホルムアルデヒドを放出し、このことは大気中への望ましくないガスの放出を増加させる。また、ホルムアルデヒドは、最終製品から、その断熱材および/または防音材としての使用中に、気候サイクルに関連した温度変化および更には湿度変化の影響を受けて放出される場合もある。
【0017】
EP 0 480 778 A1は、尿素の一部をアミンと置換することを提案しており、このアミンはMannich反応を経て遊離フェノールおよび遊離ホルムアルデヒドと反応して熱安定性が向上した縮合生成物を生成する。この樹脂の遊離フェノールおよび遊離ホルムアルデヒドの含有量は、それぞれ、0.20%以下および3%以下である。
【0018】
本発明の目的は、鉱物繊維にスプレーすることのできるサイズ剤組成物であって、遊離ホルムアルデヒドの含有量の低い液体フェノール樹脂と増量剤とを含むサイズ剤組成物を提供することにある。
【0019】
用語「増量剤」は、ここでは水性サイズ剤組成物に可溶なまたは分散可能な有機フィラーを意味すると理解される、すなわちこれは分配され得るかまたは分散液もしくはエマルジョンの形態にある。
【0020】
本発明の1つの主題は、より一般的には、遊離ホルムアルデヒドの含有量の低い液体フェノール樹脂と増量剤とを含む樹脂組成物にある。この樹脂組成物は、特に、上述したサイズ剤組成物の構成に組み込まれることを目的としている。
【0021】
本発明の他の主題は、上述したサイズ剤組成物によってサイジングされた鉱物繊維から得られる断熱および/または防音製品に関する。
【0022】
本発明に係るサイズ剤組成物の構成に組み込まれる液体樹脂は、液体の総重量に対して表される遊離ホルムアルデヒド含有量が、0.1%以下、好ましくは0.05%以下である。
【0023】
液体の総重量に対して表されるこの樹脂の遊離フェノール含有量は、0.5%以下、好ましくは0.4%以下である。
【0024】
有利には、樹脂は、フェノール−ホルムアルデヒド(P−F)およびフェノール−ホルムアルデヒド−アミン(P−F−A)の縮合物を主に含有する液体樹脂である。ここで、縮合物のうちPで示される「フェノール」部分は、(i)フェノール、または(ii)少なくとも1つの官能基で置換された(たとえば、ハロ−、ニトロ−、アルキル−)フェノール、または(iii)長鎖分子を有する、任意に置換されたフェノール基、または(iv)上述した化合物(i)、(ii)、(iii)の混合物で構成され得ることが理解される。
【0025】
この樹脂は、20℃で測定される希釈性が少なくとも1000%に等しく、好ましくは1200%以上であり、有利には1400%以上である。
【0026】
この樹脂は、温度の影響下で劣化する傾向が知られている尿素−ホルムアルデヒド(U−F)縮合物を含んでいないため、熱的に安定である。P−F−A縮合物に関しては、これらは、上述した条件下で安定であり、とりわけそれらは、特に最終インシュレーティング製品のエージングの間に、ホルムアルデヒドをほとんど発生させない。
【0027】
上で定義した樹脂は、先に定義をしたフェノール、好ましくはフェノールとホルムアルデヒドとを、塩基性触媒の存在下で、1よりも大きなホルムアルデヒド/フェノールのモル比で反応させること、反応混合物を冷却すること、および前記冷却中に、Mannich反応により遊離ホルムアルデヒドおよび遊離フェノールと反応するアミンを前記反応混合物に導入することにあるプロセスによって得られる。
【0028】
アミンが導入されたらすぐに冷却は中断され、反応混合物は、10ないし120分の間で変化する時間にわたって導入温度に維持され、冷却後、樹脂のpHが7未満となるのに十分な量の酸が添加される。
【0029】
好ましくは、フェノールおよびホルムアルデヒドを、フェノール転化度が93%以上となるように、2ないし4の間、または有利には3以下のホルムアルデヒド/フェノールモル比で反応させ、反応混合物の冷却を開始する。この冷却は、水でまだ希釈することのできる樹脂(希釈性が1000%よりも大きい)に対応する縮合の段階で行われる。
【0030】
表現「フェノール転化度」は、ホルムアルデヒドとの縮合反応に関与したフェノールの、出発フェノール含有量に対する割合を意味すると理解される。
【0031】
アミンは、フェノールとホルムアルデヒドとの間の反応が発熱性であるため、冷却中に徐々に添加され、アミンの添加の際の温度は、樹脂の希釈性が少なくとも1000%に等しいままであることを確実にするように対策を採用しながら、上述した時間にわたって維持される。
【0032】
アミンは、ホルムアルデヒドおよびフェノールと反応してMannich塩基を生成することのできるアミンから選択される。例としては、アルカノールアミン、特にモノエタノールアミンおよびジエタノールアミン、ならびに環状アミン、特にピペリジン、ピペラジン、およびモルフォリンが言及できる。モノエタノールアミンおよびジエタノールアミンが好ましい。
【0033】
アミンは、50ないし65℃の間で変わり得る温度、好ましくは約60℃の温度で、冷却の開始からすぐに導入される。
【0034】
温度が維持されている間の段階は、アミンを、反応媒体に存在するほとんど全てのホルムアルデヒドと反応させ、結果として、最終的な樹脂における遊離ホルムアルデヒド含有量を0.1%以下の値まで低下させる。
【0035】
混合物を上述した温度に維持することによって、樹脂中の遊離フェノール含有量を、特に、後者が3未満のホルムアルデヒド/フェノールのモル比で得られた場合に低減させることも可能である。したがって、樹脂中の遊離フェノール含有量は0.5%以下である。
【0036】
樹脂の調製は、3つの段階:加熱段階;第1温度保持;および冷却段階を含む温度サイクル下で行われる。
【0037】
第1段階では、ホルムアルデヒドおよびフェノールを、60ないし75℃の間にある温度、好ましくは約70℃まで徐々に加熱しながら、塩基性触媒の存在下で反応させる。ホルムアルデヒド/フェノールのモル比は1より大きく、好ましくは2から4まで変化し、有利には3以下である。
【0038】
触媒は、当業者に知られている触媒、たとえばトリエチルアミン、石灰(CaO)およびアルカリまたはアルカリ土類金属水酸化物、たとえば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウムまたは水酸化バリウムから選択されてもよい。水酸化ナトリウムが好ましい。
【0039】
触媒の量は、フェノールの初期重量に対して、2ないし15重量%、好ましくは5ないし9重量%、有利には6ないし8重量%の間で変化する。
【0040】
第2段階では、反応混合物を加熱した後(第1段階の終わり)にこの反応混合物が達する温度が、フェノール転化度が少なくとも93%に等しくなるまで維持される。
【0041】
第3段階は冷却段階であり、この間にアミンを反応混合物に導入して、残留したホルムアルデヒドおよび残留したフェノールとの反応を開始させ、こうしてP−F−A縮合物を生成する。
【0042】
アミンの添加は、上で示したようにこの反応の発熱性のために徐々に行われ、たとえば、アミンの総量の1ないし5重量%、好ましくは2ないし4重量%/分の速度で行われ得る。
【0043】
アミン、特にアルカノールアミンの量は、初期のフェノールのモルあたり、0.2ないし0.7mol、好ましくは0.25ないし0.5molのアミンの量で添加される。
【0044】
アミン添加の所要時間は、10ないし120分、好ましくは20ないし100分、有利には25ないし50分の間で変化し得る。
【0045】
好ましくは、アミンの添加は、50ないし65℃の間、有利には約60℃の温度で行われる。
【0046】
アミンを添加した後、導入の最後での温度を10ないし120分間、好ましくは少なくとも15分間維持することによって温度保持を行い、ホルムアルデヒドおよびフェノールとアミンとの反応をより進んだ段階まで継続させて遊離ホルムアルデヒドおよび遊離フェノールの量を更に低減させるが、20℃で測定する樹脂の希釈性を少なくとも1000%に維持しなければならない。
【0047】
P−F−A縮合物を生成した後、反応混合物を冷却してその温度が約20ないし25℃に達しするように、縮合反応を停止させるように反応混合物を中和させる。
【0048】
反応混合物は、7未満のpH、好ましくは6未満であり、有利には4より大きいpH、更に良好には約5のpHが得られるまで酸を添加することによって中和される。酸は、硫酸、スルファミン酸、リン酸およびホウ酸から選択される。硫酸およびスルファミン酸が好ましい。
【0049】
増量剤は、特に炭水化物、リグニン誘導体、特にリグノスルホン酸アンモニウム(ALS)またはリグノスルホン酸ナトリウムなどのリグノスルホン酸塩、動物性または植物性の蛋白質、特にダイズ蛋白質およびこれらの化合物の混合物から選択される。
【0050】
炭水化物の例としては、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、グルコース、アロース、アルトロース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、プシコース、フルクトース、ソルボースおよびタガトースなどの単糖類、ラクトース、マルトース、スクロース、セロビオース、トレハロース、ラフィノース、ゲンチアノース、メリビオースおよびスタキオースなどの少糖類、ならびに、澱粉、特にトウモロコシ、ジャガイモ、タピオカおよび小麦の澱粉(これらの澱粉は、加工されていてもよいし、加工されていなくてもよい)、セルロース、グアーガムおよびキサンタンガムなどのガム、アルギナートおよびペクチンなどの多糖類が挙げられる。
【0051】
水溶性炭水化物が好ましい。
【0052】
また、サイズ剤組成物は、樹脂および尿素によって構成される100乾燥重量部の混合物当たり、0ないし40部の尿素を含んでいてもよい。
【0053】
これらの増量剤は、適切な場合は、工業的または農業的なプロセス、特に農業食品加工のプロセスに由来する、または他の廃品に由来する副生物をベースにしてもよい。これらの材料は、様々な経路によって、フェノール樹脂の合成で一般的に使用される化学成分に利用され得るという利点があり、本発明に係る組成物の調製の従来の原材料の製造の変動に対してより影響を受けないようにする。
【0054】
サイズ剤組成物において、増量剤の含有量は、100乾燥重量部の液体樹脂当たり、0.1ないし40重量部の間で変化し、好ましくは20部以下、たとえば3ないし20部であり、特に15部以下である。
【0055】
一般的に、サイズ剤組成物は、100乾燥重量部の、樹脂および適切な場合には尿素当たり、以下の添加剤を更に含む:
−0ないし10部、好ましくは7部未満の重縮合触媒、たとえば硫酸アンモニウム;
−0ないし2部のシラン、特にアミノシラン;
−0ないし20部、好ましくは6ないし15部のオイル;および
−0ないし20部、好ましくは12部未満のアンモニア水溶液(20重量%溶液)。
【0056】
添加剤の役割は知られており、手短にここで述べる:尿素は、サイズ剤組成物のゲル化時間を調節して、あらゆるプレゲル問題を防ぐことを可能にする;硫酸アンモニウムは、サイズ剤組成物が繊維に対してスプレーされた後に、(ホットオーブンにおける)重縮合触媒として役立つ;シランは、繊維と樹脂との間のカップリングのためのカップリング剤であり、アンチエージング剤としても働く;オイルは、疎水性の防塵剤である;アンモニア水溶液は、冷たいときに、重縮合抑制剤として働く。
【0057】
以下の例は、本発明を説明するものであるが、これを限定しない。
【0058】
例1
頂部にコンデンサがあり、攪拌システムを備えた2リットルのリアクタに、378gのフェノール(4mol)、および37%の水溶液として809gのホルムアルデヒド(10mol)を導入し(2.5に等しいホルムアルデヒド/フェノールのモル比)、混合物を、攪拌しながら45℃に加熱した。
【0059】
50%の水溶液としての52.7gの水酸化ナトリウム(すなわち、フェノールに対して7重量%)を、30分間にわたって規則的に添加し、その後温度を30分かけて70℃へと徐々に上げ、この温度を80分間にわたって維持し、それにより93%に等しいフェノール転化度に達した。
【0060】
次に、温度を30分かけて60℃まで下げ、同時に75.3gのモノエタノールアミン(1.2mol)を規則的なしかたで反応混合物に導入した。温度を15分間にわたって60℃に維持し、混合物を30分かけて約25℃に冷却し、15%の溶液としてのスルファミン酸を60分かけてpHが5.0に等しくなるまで添加した。
【0061】
得られた樹脂は透明な水溶液組成物の外観を有していた:それは、遊離ホルムアルデヒド含有量が0.05%に等しく、遊離フェノール含有量が0.2%に等しく(これらの含有量は液体の総重量に対して表される)、希釈性が2000%を上回っていた。
【0062】
液体樹脂の固形物含有量を、水で50重量%に調節し、尿素(80乾燥重量部の液体樹脂当り20重量部)を添加した。
【0063】
100乾燥重量部の、樹脂および尿素からなる上述した混合物と、7重量部のモラセスと、3部の硫酸アンモニウムと、1部のシラン(OSIから販売されているSilquest(登録商標) A-1100)と、8部の鉱油とを混合することによってサイズ剤組成物を調製した。
【0064】
このサイズ剤組成物を、ミネラルウールをベースとしたインシュレーティング製品を製造するのに使用した。通常どおり、このサイズ剤組成物を、繊維化デバイスの出口において、繊維の重量に対してサイズ剤が4.5乾燥重量%となる量で、ガラス繊維に対してスプレーした。サイジングされた繊維をベルトコンベア上に集め、これらはグラスウールブランケットを生成し、次に製品の中央で200℃の最低温度が得られるようにオーブン中でこれを熱処理した。
【0065】
最終的なインシュレーティング製品は、見かけ厚さが200mmであり、見かけ密度が11kg/m3であった。これは、引張強さ、厚さ回復性および吸水容量の点で、増量剤を含有していない対照のサイズ剤組成物を用いて同様の条件の下に作製した製品のものと同じ機械的性質を有していた。
【0066】
例2
例1の条件下で液体樹脂を調製した。
【0067】
80乾燥重量部の液体樹脂と20重量部の尿素とを含有する混合物を調製した。
【0068】
100部(乾燥重量部)の、樹脂および尿素からなる上述した混合物と、5重量部の、コーンスターチから得られたデキストリンと、3部の硫酸アンモニウムと、0.75部のシラン(OSIから販売されているSilquest(登録商標) A-1100)と、9.5部の鉱油とを混合することによって、サイズ剤組成物を調製した。
【0069】
コーンスターチから得られたデキストリンは、重量平均分子量が3510に等しく、デキストロース当量(DE)が30に等しいか(Roquette Freiresから販売されているRoclys(登録商標) C30725;例2a)、または重量平均分子量が1850に等しく、デキストロース当量(DE)が30に等しかった(Roquette Freiresから販売されているTackidex(登録商標) 30L75;例2b)。
【0070】
通常通り、デキストロース当量DEは、以下の式によって定義される:
【数1】

【0071】
このサイズ剤組成物を例1の条件下で使用し、見かけ厚さが80mmであり、見かけ密度が11kg/m3であるミネラルウールをベースとしたインシュレーティング製品を製造した。
【0072】
また、サイズ剤組成物が増量剤を含有していないインシュレーティング製品(参照)も、同様の条件下で製造した。
【0073】
以下のパラメータを、得られたインシュレーティング製品に関して測定した:
−5/1に等しい圧縮比(見かけ厚さの圧縮下の厚さに対する比として定義される)による圧縮下で24時間後の厚さ回復性。この厚さ回復性は、測定された厚さの見かけ厚さに対する比であり、%で表される;これは製品の優れた寸法挙動を評価することを可能にする;および
−スタンピングによってインシュレーティング製品から切り取った試料に関するASTM C 686-71T規格に従った引張強さ。試料は、トーラス形状をしており、長さが122mm、幅が46mmであり、外縁での切片の曲率半径が38mmに等しく、内縁での切片の曲率半径が12.5mmに等しかった。
【0074】
試料を、試験機の2つの円筒状マンドレルの間に置いた。マンドレルの一方は可動であり、一定の速度で動く。試料の破断荷重F(単位:重量グラム、gF)を測定し、破断荷重Fの試料の質量に対する比(gF/gで表される)から引張強さを算出した。
【0075】
引張強さを、作製後(Ts fab.)、および105℃の温度のオートクレーブ中で100%の相対湿度下15分間にわたって加速エージングした後(TS15)に測定した。
【0076】
測定結果を表1にまとめる。
【0077】
例3
サイズ剤組成物を例2の条件下で調製したが、コーンスターチから得られたデキストリンをダイズ蛋白質水解物(Herculesから販売されているSoyad(登録商標) 12UT)で置換するように変更した。
【0078】
このサイズ剤組成物を使用して、例2と同じ条件下、ミネラルウールをベースとしたインシュレーティング製品を作製した。
【0079】
厚さ回復性および引張強さの測定結果を表1に示す。
【表1】

【0080】
例2および例3における増量剤の存在は、製品の引張強さを改善し、増量剤を含まない参照製品に匹敵する厚さ回復性を保持することを可能にする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱物繊維、特にガラス繊維または岩石繊維用のサイズ剤組成物であって、液体の総重量に対して表わされる遊離ホルムアルデヒド含有量が0.1%以下である液体フェノール樹脂と増量剤とを含有する組成物。
【請求項2】
前記液体フェノール樹脂が、フェノール−ホルムアルデヒドおよびフェノール−ホルムアルデヒド−アミンの縮合物で主に構成されていることを特徴とする請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
液体の総重量に対して表わされる遊離フェノール含有量が0.5%以下、好ましくは0.4以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の組成物。
【請求項4】
前記アミンが、アルカノールアミンまたは環状アミンであることを特徴とする請求項1ないし3の何れか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記アミンが、モノエタノールアミンまたはジエタノールアミンであることを特徴とする請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
前記樹脂は、遊離ホルムアルデヒド含有量が0.1%以下であり、遊離フェノール含有量が0.4%以下であり、20℃での水希釈性が1000%以上、好ましくは2000%以上であることを特徴とする請求項1ないし5の何れか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記増量剤が、炭水化物、リグニン誘導体、特にリグノスルホン酸アンモニウム(ALS)またはリグノスルホン酸ナトリウムなどのリグノスルホン酸塩、および動物性または植物性の蛋白質、特にダイズ蛋白質から選択されることを特徴とする請求項1ないし6の何れか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記炭水化物が、エリトロース、トレオース、リボース、アラビノース、キシロース、リキソース、グルコース、アロース、アルトロース、マンノース、グロース、イドース、ガラクトース、タロース、プシコース、フルクトース、ソルボースおよびタガトースなどの単糖類、ラクトース、マルトース、スクロース、セロビオース、トレハロース、ラフィノース、ゲンチアノース、メリビオースおよびスタキオースなどの少糖類、ならびに、加工または未加工の澱粉、セルロース、グアーガムおよびキサンタンガムなどのガム、アルギナートおよびペクチンなどの多糖類から選択されることを特徴とする請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
更に、100乾燥重量部の、樹脂および尿素によって構成される混合物当たり、0ないし40部の尿素を含むことを特徴とする請求項1ないし8の何れか1項に記載の組成物。
【請求項10】
増量剤の含有量は100乾燥重量部の液体樹脂当たり0.1ないし40部で変化し、好ましくは20部以下、たとえば3ないし20部であり、特に15部以下であることを特徴とする請求項1ないし9の何れか1項に記載の組成物。
【請求項11】
100乾燥重量部の、液体樹脂および適切な場合には尿素当たり、以下の添加剤を更に含むことを特徴とする請求項1ないし10の何れか1項に記載の組成物:
−0ないし10部、好ましくは7部未満の触媒、たとえば硫酸アンモニウム;
−0ないし2部のシラン、特にアミノシラン;
−0ないし20部、好ましくは6ないし15部のオイル;および
−0ないし20部、好ましくは12部未満のアンモニア水溶液(20重量%溶液)。
【請求項12】
液体の総重量に対して表される遊離ホルムアルデヒド含有量が0.1%以下である液体フェノール樹脂と増量剤とを含有する樹脂組成物。
【請求項13】
請求項1ないし11の何れか1項に記載されたサイズ剤組成物によってサイジングされた鉱物繊維を含むインシュレーション製品、特に断熱および/防音製品。
【請求項14】
前記繊維がガラス繊維または岩石繊維であることを特徴とする請求項13に記載の製品。
【請求項15】
請求項12に記載の樹脂組成物の使用であって、鉱物繊維、特にガラス繊維または岩石繊維をベースとしたインシュレーティング製品の製造のために意図されたサイズ剤組成物の製造のための使用。
【請求項16】
請求項1ないし11の何れか1項に記載のサイズ剤組成物の使用であって、鉱物繊維、特にガラス繊維または岩石繊維をベースとしたインシュレーティング製品の製造のための使用。

【公表番号】特表2011−516748(P2011−516748A)
【公表日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−503486(P2011−503486)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【国際出願番号】PCT/FR2009/050654
【国際公開番号】WO2009/136106
【国際公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【出願人】(501085706)サン−ゴバン・イソベール (46)
【Fターム(参考)】