説明

銀交換されたゼオライト及びその製造方法

本発明は、Agと交換されており、そして別の触媒作用又は化学的反応性機能よりも、吸着を優先するような方法で熱的に処理されている10以下のシリカ/アルミナ比(Si/Al≦10)を有するゼオライトに一般に関する。本発明の吸着剤及びそのような吸着剤を生成する方法は、π−錯化により作業吸着能率を最大にする。そのような吸着剤のための適用は、ガス流からの汚染物質がゼオライト中のAgとπ−錯体を形成することができる任意の方法を包含し、特に空気からのCO、エチレン、プロピレン等の除去、及び超高純度(UHP)Nの生産における予備精製装置の吸着器において空気からCO/Hの除去を包含する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はAgと交換され、そして別の触媒作用的及び化学反応的機能よりも吸着を優先するような方法で熱的に処理されている10以下のシリカ/アルミナ比(Si/Al<10)を有するゼオライト類に一般に関する。本発明の吸着剤及びそのような吸着剤の製造方法は、π−錯化による作業吸着能率(working adsorption capacity)を最大にする。そのような吸着剤のための適用は、ガス流からの汚染物質がゼオライト中のAgとπ−錯体を形成することができる任意の方法を包含し、特に空気からのCO、エチレン、プロピレン等の除去、そして超高純度(ultra high purity)(UHP)N生産における予備精製装置吸着器中の空気からのCO/Hの除去を包含する。
【背景技術】
【0002】
工業的処理ガス流からの汚染物質を除去し、そして/又は回収することの必要性が存在する。吸着による分離は、反応副生成物を回避でき、そして吸着剤の再生/再使用が可能であるので、触媒作用及び反応方法以上に一般に好ましい。アルカリ及びアルカリ土類陽イオンを含有するゼオライト中に非常に弱く吸着される或るクラスの汚染物質が存在するが、しかしそのような汚染物質の吸着は、Cu、Ag又はAuとの交換により非常に強化されることができる。この強化は、物理吸着がπ−錯化を介しての化学吸着により有意義に増大される場合に生ずる。そのようなクラスの分子はゼオライト構造に入り込むのに十分に小さく、そしてゼオライトにおいての陽イオンと容易にπ−結合を形成する電子構造を持っており、例えば一酸化炭素(CO)、エチレン(C)、プロピレン(C)等である。
【0003】
AgX及びAgYにおいてのCOの平衡吸着能力(equilibrium adsoption capacity)は、純粋な成分等温線(isotherms)としてHuang(J.Catal.,Vol.32、第482頁〜第491頁(1974))により測定された。0.1トルの平衡圧及び25℃で約1.0ミリモル/gのCOがAgX粉末上に吸着される。100トルより高い圧力で同じような量のNが吸着される。このCO平衡能力(equilibrium capacity)は魅力的であるけれども、これらのデータはCO又は関連ある他の汚染物質の除去及び/又は回収のために計画された現実の方法においてのそのような材料の有用性を確認していない。さらに特定的には、ガス流中の競合成分類の同時吸着を反映するCOの作業能率(working capacity)及び凝集ゼオライトの吸着速度論を考慮しなければならない。物質移動前面特性及び酸化剤や還元剤のような吸着抑制物質の存在はまた、実際的適用において重要な考慮すべき事項である。
【0004】
これらの実際の方法の効果の1つの例は通常の周囲の温度での空気からのCOの除去である。CO及びHは、約0.5ppm〜10.0ppmの濃度で大気の空気中に存在する。Hは、Agに対して還元剤として働く可能性があり、一方ではO(約21容積%)は酸化剤として働き、そしてまたNと一緒に同時吸着される。したがってH及びOは、Ag陽イオンに関して非活性化剤であることができ、一方ではO及びNは吸着空間に対してCOと競合する。さらに、COの低い濃度で、CO物質移動前面は全体の吸着剤床上に拡散し且つ展延し、即ちはっきりとした平衡帯域が存在しない。これらの理由により純粋な成分等温線(isotherms)から得られた平衡CO能力(capacity)データは、実際の処理流からのCO除去のための吸着剤の有効性を予想するにあたって、限られた価値のものである。
【0005】
さらに、大規模な吸着剤処理は、多様であり、そして研究室又はベンチ規模の処理においては存在しない問題を引き入れ、その結果、所望の性質を有する吸着剤の多量の生産は保証されない。多量の固体材料の処理においての固有の問題の幾つかは:固体を均一に混合し且つ加熱すること、パージ流の分布、パージ/固体接触、水蒸気の迅速な除去、及び廃溶液の廃棄処分を包含する。他の問題は、汚染物質不含有乾燥パージガス、交換溶液及び脱イオン洗浄水のコスト、そして多量の固体を取り扱うために必要とされる資本設備を包含する。さらに、先行技術は、高い多様性及びそのような材料の性能においての一貫性の欠如を明らかに示している。
【0006】
Si/Al比においての変動性及び電化バランスのとれた陽イオンと組み合わされた多くのタイプのアルミノ珪酸塩ゼオライトを提供するとして、ゼオライト類についての多くの文献が現れた。そのような技術文献の主要な目的は、材料の合成を示すこと、そしてその物理的、化学的及び吸着的/触媒性質を特徴づけることである。そのような技術において典型的な条件及び実施は、(しばしば粉末形においての)処理される吸着剤のグラム量の使用、吸着剤の量に関連しての大過剰でのイオン交換溶液(1種又は複数種)及び脱イオン洗浄水の使用、廃棄化学物質の廃棄処分のための最小要件である。非常にゆっくりとした加熱が、材料の熱活性化の間に、多量の乾燥不活性パージ又は真空排気と組み合わせて典型的に適用される。そのような慣用操作は、吸着剤又は触媒の工業的規模の生産のために経済的でないし、また実際的でない。
【0007】
先行技術は、Ag交換されたゼオライト類の多くの適用、例えば真空空間からのHの掃気、Ar/O/N分離、水の浄化においての殺菌剤として、及び液相芳香族炭化水素異性体の分離を認識している。
【0008】
マトシュ(Matsch)等(米国特許第3,108,706号)は、極低温貯蔵容器の真空絶縁環状空間を維持するにあたってのH捕獲剤(ゲッター:getter)として使用するためのAgXゼオライトを記載している。この適用において、HはAg−交換されたゼオライトとの化学反応により除去される、即ちゼオライト中に含有されているAg及び/又は過剰AgOはHにより還元される。
【0009】
ロスバック(Rosback)(米国特許第3,969,276号)は、X又はYゼオライトの何れかを周期律表の第IA族、第IIA族及び第IB族からの陽イオンとイオン交換することを含む吸着剤の製造方法を提供する。好ましい吸着剤は、炭化水素の液相混合物を分離するためのBaX又はBaKXである。
【0010】
チャング(Chiang)等(米国特許第6,432,170号)は、Ar/Oガス混合物の分離のための20%〜70%の銀交換水準を有するLiAgXゼオライトを記載している。この発明の目的は、(銀含有量を最小にすることにより)減少させた費用でOより高くに高められたAr選択率を有する吸着剤を生成することである。
【0011】
空気中においてOより高くNを選択する吸着選択率及びOより高くArを選択する吸着選択率を有するAgAゼオライトを製造する方法が、セバスチャン(Sebastian)等への米国特許第6,572,838号に開示されている。任意の銀塩の水溶液を使用する単一工程イオン交換方法は、ヒドロキシル化に反応を示さない吸着剤を生成すると言われている。
【0012】
ラボ(Rabo)等への米国特許第4,019,880号は水蒸気及びCOの存在下にCOに対して高い親和性を有するAg−交換されたゼオライト類を開示している。この発明による好ましいゼオライト類は、20≦SiO/Al≦200を有するZSM−系列の高シリカゼオライトを包含する。HO及びCOに対して抵抗力はあるけれども、これらのゼオライトは、Ag陽イオンがHにより還元されるので、Hにより非活性化に付される。
【0013】
クー(Coe)等(米国特許第4,544,378号)は、吸着剤の処理においての熱活性化工程に対して特別の注意を払うことによりゼオライトの骨組みと陽イオン加水分解との両方の損傷作用を避けるように試みている、空気分離のためのCaXゼオライトに関している。
ヤング(Yang)等による米国特許第6,780,806号において、空気分離においてのN吸着のためにLiAgXゼオライトを開示している。好ましい配合物は、Ag<20%の交換可能な陽イオンと共に、Si/Al=1.0を包含する。増加しているN吸着能率は、π−錯化に起因するNクラスターとAgクラスターとの間に形成された補足の弱い化学結合の結果であると考えられる。しかしながら、十分に交換されたAgXは、吸着剤の再生のためのNの脱着において困難を生ずる、低い圧力でのNの強い吸着に起因して吸着分離のために有利でないことが示唆されている。
【0014】
を捕捉するような適用のために作成されたAg−交換されたオライト類(米国特許第3,108,706号)は、Agを還元し、反応し、そして/又は活性化するように熱的に処理されて、ゼオライトの微細孔容積の部分の又は殆どの破壊を生じる。したがって触媒作用的又は化学反応的機能が吸着能力を犠牲にして促進される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
ほとんど例外なく、先行技術では暗黙のうちに、ガス分離のために調製されたイオン交換されたゼオライトのベンチ規模処理から生ずる吸着特性が、大規模製造において自動的に再現可能であると想定している。そのような考え方は、ゼオライト類の工業的規模の量を処理するにあたっての物理的及び経済的な制限を完全に無視している。各々が熱及び物質移動を包含するイオン交換、乾燥及び熱活性化工程は、実験室処理の典型的な吸着剤のグラム量から、効率のよい製造のために必要とされる大きなkg量に、直線状に規模尺度は移動しない。上記のように、先行技術は高い多様性を示しており、そしてそのような材料の性能において一貫性が欠如している。
【0016】
さらにイオン交換溶液中に使用されるAgの高い費用、それらの廃液の廃棄処分及び乾燥パージガスを提供する費用は大規模な製造において無視できない。
【0017】
“高純度及び超高純度ガスの生産”と題する、共通しての本願出願人自身のPCT国際公開第WO 03/101587A1は、空気分離プラント予備精製装置においてCOを除去するためのAg−交換されたゼオライトの使用を開示している。そのPCT国際公開第WO 03/101587号の全体の内容を参照することにより本明細書に組み入れる。
【0018】
先行技術は、種々様々な分離のためのAg−交換されたゼオライト類の幾つかの例を提供しているけれども、その先行技術はCO、C、C等のようなπ−錯化に受容性のガス分子のための一貫した高い動的な能力を示す高い性能の吸着剤を開示していない。
【0019】
したがって、高い作業能率(working capacity)を達成し、その上に物理的吸着により通常強く同時吸着されるガス類(N、O、CO等)の高い濃度の存在下に又は強い還元剤(例えばH)及び酸化剤(例えば、O)の存在下に十分に性能を果たす吸着剤を一貫して提供することが望ましいだろう。
【課題を解決するための手段】
【0020】
発明の簡単な概要
本発明は、吸着剤が改良された一貫性のある、そして再現可能な作業能率(working capacity)特性を示す吸着剤を提供し、そしてその製造方法を提供する。それらの吸着剤は、典型的には物理的吸着により強く同時吸着されるであろうガス類(N、O、CO、等)の高濃度の存在下に用いられることができる。本発明の吸着剤はまた、強い還元剤(例えばH)及び酸化剤(例えばO)の存在下に改良された性能特性を有する。
【0021】
本発明の吸着剤のユニークな特性は:Si/Al<10を有するゼオライト類の選択、高いAg交換(例えば≧80%)、ゼオライトの細孔に付着した過剰のAg及び他の汚染物質の制御、≦2.0重量%への水分含有量の制御、及び微細孔容積の維持の最大化(例えば≧85%)を包含する要因の組み合わせから達成される。さらに特定的には、本発明の吸着剤は15%以下に熱水による構造損傷(即ち微細孔容積の破壊)を制限することにより特徴づけられる。これらの性質は工業的規模の生産のために実際的な処理条件の適当な組み合わせにより大部分は達成される。本発明の望ましい処理条件は、苛性溶液を用いてのゼオライトの予備処理、真空活性化、迅速な加熱及び固定オーブン活性化のような先行技術において普通に用いられている処理を避けるものである。
【0022】
上記したように、本発明の吸着剤の一面は、Si/Al<10及びAgと置き換えられる少なくとも80%の交換可能な陽イオンを有するゼオライト類である。それらの吸着剤は、ゼオライトの十分に交換された電荷バランスのとれているAg陽イオン能力より高い過剰のAg含有量を10%以下に、好ましくは5%以下に制限することによりさらに特徴づけられる。さらに、ゼオライトの最終水分水準は2.0重量%以下であり、そして1.0重量%以下が好ましい。本発明の吸着剤は、15%以下、好ましくは10%以下の熱水構造損傷を示す。最も好ましくは、熱水構造損傷は5%以下である。さらに、本発明の吸着剤の動的作業能率(dynamic working capacity)、即ち△COは、COの動的作業能率が決定される基準ブレークスルー(a reference breakthrough)試験により決定されたとき、少なくとも0.045ミリモルCO/Ag−ゼオライトg、さらに好ましくは≧0.055ミリモル/g、最も好ましくは≧0.065ミリモル/gである。
【0023】
本発明の他の面は、そのような改良された吸着剤を製造する方法であり、その方法において大規模製造で吸着剤を生成するために以下の工程を用いる。Si/Al<10を有するゼオライト類を選択し、そして交換可能な陽イオンの少なくとも80%をAgと置き換えるように、Agと交換させる。Ag−交換されたゼオライト(即ちAg−ゼオライト)は、ゼオライトの細孔から過剰のAg、Ag化合物及び/又はAg塩類、又は他の交換可能な陽イオン又は不純物を排除するように十分に洗浄され、そのような過剰のAgの含有量はゼオライトの完全な電荷−バランスがとれているAg陽イオン能力より、10%以下、好ましくは5%以下に制限される。交換されたゼオライトが2.0重量%以下の、生成物中最終水分水準を達成するようにゼオライトは、好ましくは1.0重量%以下の最終水分水準を達成するように熱的に乾燥され、そして活性化される。熱処理は15%以下、好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下に熱水構造損傷を最小にするように行われる。結果として、少なくとも0.045ミリモルCO/Ag−ゼオライトのgの動的作業能率、即ち△COを有する吸着剤を一貫して提供することができる。好ましくはCO吸着能率(adsorptive capacity)は、COの動的作業能率(dynamic working capacity)が決定される基準ブレークスルー試験により決定されたとき≧0.055ミリモル/g、最も好ましくは≧0.065ミリモル/gである。
【0024】
上記された吸着剤特性及び製造方法は、ゼオライト類の作業吸着能率を最大にし、したがって別の触媒作用的及び化学的に反応性の機能以上に、吸着を優先することによる高められたπ−錯化を可能にする。
【0025】
本発明及びその利点をさらに完全に理解するために、添付図面と一緒に考えて、以下の詳細な記載を参照すべきである。
【0026】
詳細な記載
Ag−交換された吸着剤の高い費用の故に、意図した汚染物質を除去するための性能を最大にすることが重要である。さらにそのような最大化された性能を、本発明において提供された特定の製造方法により、一貫して実現することができる。
【0027】
本発明は、π−錯化による汚染物質の除去及び/又は回収により、Ag−交換されたゼオライト類を用いて高純度及び超高純度(UHP)のガス流を生成するのに特に有効である。本発明の目的のために、“高純度”とは精製されたガス生成物中の≦100ppb(parts per billion;10億分当たりの部)の汚染物質を意味し、“超高純度”又は“UHP”とは精製ガス生成物中の≦10ppb汚染物質を意味する。したがって先行技術の制限は克服されて、高い性能特性を一貫して示すAg−交換された吸着剤の工業的規模の量を生産するために実際的な必要性を満足させる。
【0028】
本発明のAg−交換されたゼオライト類及び工業的規模の量でのそのような吸着剤を製造する方法は、先行技術における確実な制限を認識しておりそして検討している。限定として解釈されるべきではないけれども、そして何ら理論により束縛されることを意図しないけれども、本発明は、以下のことを認識している:(1)従来の吸着剤においてのCOの非常に弱い物理的吸着から生ずる比較的に有効でない吸着に起因して(副生成物としてCOを形成する)接触酸化(触媒による酸化)によりガス流からしばしばCOが除去される;(2)超高純度製品を生成するためにガス流からごく微量の不純物質を除去することは、イオン交換から離れた細片(debris)による吸着剤細孔閉塞に起因しての増大した物質移動抵抗に対して特に感受性があることが分かった;(3)構造的及び化学的変化は、特に乾燥及び活性化において、処理の方法により影響され、そして同じ一般的タイプの吸着剤が処理の方法により左右されて全く異なる吸着性質を有する可能性がある;(4)ゼオライトのイオン交換は、金属原子を均一に分散する都合のよい且つ有効な手段であるけれども、触媒活性、化学反応又は吸着のような一定のタイプのゼオライトの種々の可能な機能性は、目的としている適用において所望の性能を達成させるために、異なる熱的及び/又は化学的処理を各々指示する可能性がある;そして(5)先行技術の教示は、工業的用途のために必要な数十キログラム又は数百キログラムよりもむしろグラム量でのゼオライト類を合成し又は調節する方法を主として検討している。
【0029】
本発明は、π−錯化を促進するように計画された吸着、特に化学吸着を目標としている。触媒的活性は望ましくなく、その存在は触媒部位に変換された吸着部位の表示である。さらに、触媒作用変換は、全体的な生成物純度要件を満足させるためにさらに除去することを必要とするかもしれない生成物を生ずる。
【0030】
ゼオライト中の金属陽イオン及び不純物は、ゼオライトの全体的触媒作用可能性を促進するか又は高めるように、熱処理及び/又は化学処理の間に酸化、還元又は化学反応により変換される可能性がある。そのような処理は結晶間空間から金属原子を追い出し、そして微細孔の崩壊を生じ、それにより崩壊したゼオライトの表面上にかなり分散され且つ露出された遊離の金属又は金属化合物を放出する可能性がある。そのような結果は重大に触媒作用を促進し、その上に吸着を重大に遅らせるだろう。
【0031】
過剰の塩を除去するためにイオン交換後にゼオライトを洗浄することは知られているけれども、有効な洗浄のための特別の規準は、先行技術において特に工業的規模の生産のために、まれにしか論じられない。さらにごく微量の汚染物質の除去においてのマクロ細孔閉塞の作用にもほとんど注意が払われていなかった。これに関してのマクロ細胞は、凝集吸着剤粒子内に形成された流体輸送のための導管(マクロ細孔(macropores)及びメソ細孔(mesopores))を称する。そのような細孔はゼオライト結晶の内側の微細孔と対照をなしている。マクロ細孔が閉塞されたとき、物質移動抵抗において増大がある、即ち大きな流れ(bulk sream)からゼオライト結晶への流体の輸送を遅延化する。吸着器中の汚染物質のより短い維持時間、減少した作業能率及びより早いブレークスルーはマクロ細孔の閉塞の結果である。
【0032】
下に論じるように、そして例6及び例7において示されるように、本発明の洗浄処理は、乾燥及びか焼処理が微細孔ゼオライト結晶の熱水的構造損傷を最小にする一方で、凝集化吸着剤粒子のマクロ細孔の閉塞を最小にする。ごく微量の汚染物質の除去の場合において、十億当たりの部(parts−per−billion)(ppb)水準でブレークスルーは測定される。Hはマクロ細孔閉塞の重大度を示すための有効な精査深針(probes)分子であることが分かった。
【0033】
Ag−交換されたゼオライト類は、ガス相及び/又は液相精製及び分離に対して有効に適用できる1つ以上の機能(例えば、触媒作用、捕獲(ゲッター)作用又は吸着)を示すことができる。しかしながら、通常、特定の分離に適用するには、材料の特殊な機能性が要求される。そのような機能性は、ゼオライト中に分布しているAgの量、位置及び状態に直接関係している。特殊な且つ望ましい機能は、ゼオライトの処理によって大部分は促進される。結果として、ゼオライトの異なる分離特性は、処理の方法の直接の結果である。仕上げ製品はまた、しばしば所望の適用に不利となる、1つ以上の機能を持つ可能性がある。
【0034】
Ag−交換されたゼオライト中のAg原子の集塊化への特有な傾向はゼオライト構造を熱水的損傷にいっそう感受性にさせる可能性がある。この感受性はゼオライトの熱処理の注意深い制御により何とか切り抜けていかなければならない。ゼオライト粒子の乾燥及び活性化のそのような制御は、大規模製造において行うためにはいっそう困難である。研究室(小規模)処理において通常使用される、真空熱活性化は、ゼオライトに対して損傷を与えることがいっそう少ないが、しかしゼオライトの工業的規模の熱処理のためには実際的ではない。処理条件に適切な注意を払うことがなければ、製造から生ずる材料の性質は、全く一貫性に欠け、そして研究室の方法を用いて得られる材料の性質とは異なる恐れがある。
【0035】
高度に促進されたπ−錯化によるAg−交換されたゼオライト中への吸着を目標とする本発明は、先行技術の以下の制限を逃れるか又は最小にする:いっそう感受性であるAg−ゼオライト構造に対する熱水損傷;Hのような成分による還元に対するAg陽イオンの感受性;ゼオライトのマクロ細孔の表面上及びその内部に付着したAg塩類、Ag化合物又は他の不純物の保持;及び製造の再現可能な方法による所望の吸着剤特性を一方では維持しながら、吸着剤のグラム量から工業的規模の量に、経済的且つ首尾一貫してのスケールアップ生産することに対する不可能性。
【0036】
本発明は、Agとのπ−錯化により弱い化学結合を形成する吸着されたガス相成分の高い作業能率に作用することが必要とされるAg−交換されたゼオライト吸着剤の性質を確認している。要因の組み合わせは、一致安定した(一貫した)且つ再現可能な規準で所望の性能を達成することにおいて重要である。上に論じたように、高いイオン交換能力を有するゼオライト類(Si/Al<10)を選択すること、≧80%にAgと交換すること、イオン交換後に適当な洗浄により過剰のAg及び他の不純物を最小にすること、そして2.0重量%以下の水分含有量を達成するために(乾燥パージガスの存在下に)計画を立てた熱乾燥及び活性化は、重要な要因であることができる。
【0037】
限定であることを意図しないけれども、マクロ細孔拡散への抵抗及び主要なガス相成分(例えばN、CO、O、等)の同時吸着を最小に維持しなければならない場合に、そして高純度及び超高純度(UHP)製品を所望する場合に、本発明は、(π−錯化において活性な)ごく微量の汚染物質の除去のために特に十分に適している。(例えばガス流からCOの除去のために)接触酸化を吸着と置き換えることはまた、反応の生成物を排除し、そして吸着された汚染物質を回収する選択を提供する。
【0038】
本発明の高度に交換されたゼオライト中の貴重な金属Agの使用は、13X、5A、等のような従来の市販の吸着剤に対して比較的高い費用の吸着剤を生ずる可能性がある。しかしながら、交換された吸着剤の作業能率を最大にすることによりいっそう少ない吸着剤を任意の特定分離のために必要とすることができる。市場規模の量で処理して、吸着剤のそのような性能を達成すれば、減少した量の吸着剤及び減少した全体的資本費用により、改良された競争できる経済的利点を提供する。したがって、本発明のAg−交換された吸着剤は、高い吸着性能の故に、他の分離方法と経済的に競争できる。そのような材料は、高純度及び超高純度分離が可能であるけれども、他の方法又は材料は等価値の特性を有しないであろう。
【0039】
上に述べたように、本発明のAg−交換されたゼオライト類は、π−錯化によるガス類の吸着を目標としている。Si/Al<10を有するゼオライトは、それらが電荷バランスがとれている一価の陽イオンに豊富にさせることができるので、特に重要なものである。高いAg交換水準と組み合わされた低いSi/Al比は最も大きな数のAg陽イオンを生じ、それ故、π−結合形成のための最も大きな可能性を生ずる。ファウジァサイト(faujasites)(タイプX及びY)、タイプA、クリノプチロライト(clinoptilolite)、モルデン沸石(mordenite)及び菱沸石(chabazite)は魅力的なゼオライト候補物である。Si/Al=1.0は陽イオンの最大数を提供するけれども、そのような材料、例えば低シリカX(LSX)(米国特許第4,544,378号)は、活性化の間に熱的安定性がいっそう小さいことが知られている。Agと容易に相互作用してπ−結合を形成するガス種(species)は、CO、C及びC、等を包含する。この発明の目的のために吸着性能は、COブレークスルー(breakthrough)試験を用いて明らかに示される。生成方法は後でのAgとの交換のための原材料として市販級の13XHPを用いて行われる。13XHPは、Si/Al=1.2〜1.25を有するNaXビーズであり、そして米国イリノイ州、デスプレインズ(Des Plaines)のUOPから市販されている。
【0040】
Ag−交換されたゼオライトを処理する方法は、吸着剤とガス流中の汚染物質(1種又は複数種)との間のπ−結合相互作用の最大水準を達成させるために重要であることが分かった。所望の性質を有する吸着剤を生成することができる処理条件の1つ以上の組み合わせが存在し得るので、製造方法の成功は吸着剤特性及び性能に基づいて決定される。そのような規準は、微細孔容積維持、Ag交換水準、水分含有量及びCO作業能率に関して明らかにされた。これらの性質を決定する方法を下に示す。
【0041】
ゼオライト内に最大微細孔容積を維持することは、主要な適用が吸着によるガス分離である場合に重要である。熱水構造損傷及びゼオライト含有量の損失は、吸着能力において減少を生ずる。微細孔容積の有効な測定はMcBain O試験法を用いての低温及び低圧で吸着された酸素の量である(例えば、1976年ニューヨークのAcademic Press発行、R.B.Anderson及びP.T.Dawson編集のExperimental Methods in Catalytic Research,Vol.IIにおいてのBolton,A.P.著“Molecular Sieve Zeolites”(この文献を参照することにより本明細書に組み入れる)を参照)。
【0042】
McBain試験の前に、ゼオライトサンプルを自由流動状態(通常HO飽和状態の少し下まわる)にまで空気乾燥する。次ぎにそれをMcBain装置中に置き、そして一夜真空下、即ち約1 x 10−4トルの圧力でゆっくりと脱水し、且つ活性化する。活性化は、8時間で周囲の温度から約400℃に温度を勾配上昇させ、次ぎに追加の8時間この温度に維持したときに起こる。次ぎに、サンプルを液体N温度(77K)に冷却し、そして平衡に到達するまで超高純度のOを導入し、そして70トルの圧力に維持する。吸着したOの量(重量%)を、較正された螺旋形スプリングの長さの変化の正確な測定により重力測定的に決定する。
【0043】
McBain O試験は、構造的損傷を決定するための慣用のX線回折よりいっそう有効であり、そして定量的にいっそう優れた方法である。その試験は、ゼオライトの結合されていない結晶粉末類似体に相対しての結合されたゼオライトの分別(fractional)ゼオライト含有量を測定するためにしばしば用いられるけれども、それは本明細書では吸着された重量%Oにより表される絶対的な微細孔容積の測定として適用される。乾燥/活性化前と、乾燥/活性化後との微細孔容積(即ちMcBain O、重量%)の比較は、乾燥/活性化工程の間にこうむったゼオライト構造に対する損傷を確認する手段を提供する。これは、同じ構造のゼオライトのための結合剤の変化する量を補整する必要性を排除することに加えて、異なる特徴の微細孔容積を有する種々の構造タイプのために別々の基準を表す必要性を排除する。結果として、本発明のAg−交換されたゼオライトのための共通した基準は、(McBain O収容能力(capacity)により測定されたときの微細孔の容積においての%減少として解釈される)熱活性化中に最大15%(好ましくは10%以下)までに構造的損傷を制限することである。別法として、(イオン交換後そして乾燥前に決定された)微細孔容積の85%以上が熱処理後に維持されるべきである。
【0044】
Agとの種々のゼオライト類のイオン交換を、先行技術において知られているようなかなり多数の方法を用いて行うことができる。“高純度及び超高純度のガスの生産”と題するPCT国際公開第WO 03/101587号(この全体の内容を参照することにより本明細書に組み入れる)において幾つかのイオン交換の例を提供している。π−錯化のための最も有効な吸着剤を提供するために、ゼオライトは交換可能な陽イオン容積の100%に出来るだけ近くに、Agで交換されるべきであろう。この量を超えての少しでも過剰のAgは以下に述べられているように最小であるべきである。本発明の例のために、イオン交換は以下の方法を用いて行われた。
【0045】
所望の量の原料材料(例においてUOPからの13XHPビーズ)を生産カラム中に装入し、そして脱イオン水で湿潤させる。第2カラムに同様に装入し、そしてそのカラムを、廃水中のAgの量を最小にするために掃気(scavenge)カラムとして供する。0.1M〜1.0MのAgNO溶液を第1カラム中に、そして次ぎに掃気カラム中にゆっくりと循環させ、掃気カラムから、それは貯蔵タンク中に出ていく。最初の回分の交換の完了後、掃気カラムは生産カラムになる。変化している濃度の溶液を貯蔵タンクから再使用し(一定のカラム上での後での交換を、増大させていくAgNO濃度で行うことを常に確実にする)、それにより廃棄処分のための廃溶液の量を最小にする。(生産カラムについて上に記載したように)周囲の温度で行われたその系列の連続交換を、生産カラムからの流出溶液中のAgNO濃度が入口濃度に到達したときに終わらせる。次ぎにAgNOの1.0M〜5.0Mの新しい溶液をカラムに入れることにより上昇温度交換を開始し、そしてカラムを40℃〜80℃に加熱する。所望の温度に到達した際に、加熱器を止め、そして生産カラムを約30分間放置して冷却する。交換溶液を排出させ、そして脱イオン水を導入して洗浄を開始する。脱イオン水を加えてカラム中のゼオライトをカバーし(約0.5リットルHO/リットル固体)そして10.0分の最小から30分までの範囲の時間期間維持する。洗浄水を排出させるか、又は別法としてAgNO濃度が交換溶液として再循環させるために十分高い場合に、掃気カラムに送る。例1についての生産方法はAgNO濃度が<0.02Mになるまで固体吸着剤の容積の1.0〜1.5倍に等しい洗浄水の合計容量が生ずる2〜3回繰り返しての回分洗浄を包含した。
【0046】
イオン交換のための上記記載は限定ではなく、そして当業界に既知の他の方法は、例えばAg塩類及びこれら塩類の種々の濃度の使用を受け入れることができる。交換溶液とのゼオライトの接触時間及びイオン交換後の洗浄の程度及び有効性を制限することは、先行技術において典型的に見い出される考慮を超えての重要な考慮であることが分かった。カルザフェリ(Calzaferri)、等(Chem.Soc.Rev.(2003年)第32巻第29頁〜第37頁)は、Ag塩溶液との過剰な接触時間が“結晶の形態構造を損傷”さえする可能性があると記載していた。この発明の目的のために過剰の接触時間(数日以上)は、ゼオライト粒子の細孔内のAg及び他の交換可能な陽イオン化合物の保持を助長することが分かった。高い濃度の交換溶液はまた、時間経過にわたってゼオライト骨組みを冒す可能性がある。この発明の基礎のゼオライト類は、一般に他の陽イオンよりもAgを優先するので、Agの交換を通常2、3時間以下以内で行うことができる。
【0047】
洗浄の有効性は、特に超高純度のガス類を生産することを目標とするごく微量の汚染物質吸着において、吸着物の吸い上げの速度に影響する。先行技術は、水溶性イオンと交換されたゼオライト類を洗浄するための一般的ガイドライン、即ち“交換溶液の過剰の塩類を除去するために十分に洗浄する”ことをしばしば挙げている。ときには、交換されたイオン含有量は、それがもはや検出されなくなるまで、洗浄溶液中で測定されることを示唆している。しかしながら、そのような規準は定性的であり、そして置き換えられたイオンの塩でのマクロ細孔の起こりうる閉塞を無視しており、そして不完全なイオン交換、吸着剤粒子寸法及び細孔からのゆっくりとした溶解の作用について適当に考慮していない。ベンチ規模でのイオン交換のためには、固体に対する洗浄水の非常に大きな比を、脱イオン水又は廃棄処分の高い費用なしで達成することができる。この発明の材料の工業的規模での生産のために、洗浄効率は最終製品の吸着性能及び費用に有効に影響する。上記の洗浄方法に対する変形を以下の例において示す。
【0048】
本発明に従えば、マクロ細孔封鎖を最小にするために、吸着性能から洗浄規準を確立することは、洗浄水中のAg濃度の測定から決定する規準よりも好ましい。限定として解釈されるべきではないけれども、使用される脱イオン水の合計容積は、Agとのその交換後の固体吸着剤の容積の少なくとも約3倍であることができる。これはゼオライトの約6回繰返し回分の洗浄であろう。
【0049】
洗浄後、Ag−交換されたゼオライトから液体を排出すべきである。次ぎに、吸着剤は、活性化のための準備において吸着剤が自由流動性になるまで、表面水を除去するために空気乾燥されるべきであろう。乾燥時間を減少させるために、20℃〜約60℃の温度で空気又は不活性乾燥ガスパージをまた適用することができる。通常、この予備乾燥処理を1時間〜数時間で完了することができる。表面水分の自由及び迅速な蒸発のために、固体を、粒子の単一層に展延させるか、又は連続的に混合して乾燥環境にさらさせることができる。合理的な時間で出来るだけ多くの水分を除去することは次ぎに続く最終活性化を促進させる。この発明の典型的な吸着剤のkg量の生産のために、浅くもなく、また深くもない床乾燥/活性化を推奨する。
【0050】
本明細書において論じられているように、活性化は、残留する水分のほとんどを除去し、そしてAgの状態及び位置を安定化するために、吸着剤をずっと高い温度に加熱することを包含する。多量の吸着剤を単一層に展延することは多量の処理領域を必要とする可能性があるので、固体混合又は運搬の幾つかの形を熱活性化処理の間に用いることができる。この固体運動は、ゼオライト表面から水分を追い出し、そして吸着剤細孔の中から外への水蒸気拡散を促進させるさせるために、加熱空気又は不活性ガスパージとのひんぱんな接触を行うために重要である。ゼオライト構造への如何なる熱水的損傷をも最少にしながら水を脱着しなければならない。先行技術は熱活性化の間の真空脱着をしばしば教示している。活性化の間の微細孔容積の損失を最少にすることにおいてかなり有効であるけれども、真空排気化は非常に少量の吸着剤を処理する場合においてのみ実際的であり、そして本発明により検討しているような工業的規模生産のためには経済的に実現可能ではない。活性化のための最も重要な要因は、パージガスとの固体の全体的な混合、固体とガスとの加熱、ガスパージの低い露点及び乾燥時間である。これらの可変事項の首尾のよい組み合わせを、処理された吸着剤の特性及び性能により確認する。
【0051】
これらの処理条件の重要性を示すために下記の例の幾つかにおいて活性化条件を変化させた。Ag−交換されたゼオライトのために、最小の熱水的損傷および2.0重量%以下の水分含有量を生ずる熱乾燥及び活性化処理条件は、下記の事項を包含する:(1)周囲の温度で空気乾燥(飽和又はそれより低いゼオライトの水分含有量)後、ゼオライトの温度を1.0℃/分の最大速度(好ましくは、0.5℃/分以下)で150℃まで上昇させ、そこで吸着剤を少なくとも30分間、好ましくは1.0時間〜3.0時間維持し;(2)ゼオライトを150℃より高く加熱する前に、ゼオライトの水分含有量は8.0重量%の最大、好ましくは5.0重量%以下であるべきであり;(3)次ぎに2.0℃/分の最大速度(好ましくは1.0℃/分以下)で300℃〜400℃まで、好ましくは350℃までゼオライトの温度を上昇させ:(4)上記の加熱工程の間に乾燥空気又は不活性ガスパージが、脱水されたAg−交換されたゼオライトのkg当たり1.0Nm/時間〜2.0Nm/時間の速度で連続的に流動している十分に混合されたゼオライトと、直接接触状態にあるべきであり;そして(5)パージガスの露点は10℃未満又は10℃に等しく、好ましくは−10%未満、最も好ましくは−30℃未満である。
【0052】
0.5mの二重円錐回転混合機中で連続的に混合している、AgXの生産(70kg〜100kg回分)に、これらの乾燥及び活性化条件を適用した。所望の水分含有量及び維持された微細孔容積を首尾よく達成させるために、これらの組み合わせの条件を適用したけれども、そのような処理条件は実施可能性(enabling)を示すが限定ではない。これらの処理条件は他の適当な処理条件を決定するために、即ち処理されたゼオライトのCO作業能率、維持された微細孔容積、水分含有量及びAg−交換水準との組み合わせを考慮に入れる場合に、当業者の道案内をするために役に立つことができる。例えば、処理条件の異なる組み合わせは、他のAg−交換されたゼオライトタイプの処理のために、ゼオライトのより小さな又はより大きな回分のために、そして別のタイプの処理装置に手段を提供するために必要とされるだろう。
【0053】
この発明のAg−交換されたゼオライトの所望の特性は、50kg以上の量でAg−交換されたゼオライトの有効な且つ経済的な生産(回分式又は連続式)により得られる。本明細書において記載された方法はまた、より少ない量、例えば10kg〜50kgに適用するが、しかし経済上では50kg〜100kg又はそれ以上の範囲での生産がより好ましい。処理おいて必要とされる装置の各々の部品は、上記した量を含有するのに十分な大きさのものであるべきであり、例えば、各々が最終製品の少なくとも50kgを含有することが出来るイオン交換床、オーブン又は活性化装置であるべきである。回分式処理は、この生産の大きさの範囲で最も適当であり、回分当たり2日以下の生産時間が望ましく、そして回分当たり1日の生産時間が最も望ましい。ずっと高い生産水準(1000kg/日〜20,000kg/日)は、この目的のために計画され且つ規準が定められた装置を用いて、連続的処理の使用、あるいは回分式処理と連続式処理との組み合わせの使用がより好ましいだろう。それでもやはり、本明細書において記載された方法は、一般に回分式処理と連続的処理との両方に適用する。本発明に従って高度にAg−交換されたゼオライトは高い性能と高い価値の製品との両方を表し、そして回分式処理はしばしば生産の費用的に最も有効な手段を提供する。
【0054】
受け入れる吸着物とのπ−錯化を行うための吸着剤の能力を同時に表しながら、処理条件に密接に反映するAg−交換されたゼオライトの最も重要な特性は、維持された微細孔容積、Ag交換水準、水分含有量及びCO作業能率である。維持された微細孔容積の小部分を上に記載されたようにMcBain O試験により測定する。凝集した吸着剤中のAgの量を、誘導結合形高周波プラズマ原子発光分光学(Inductively Coupled Plasma Atomic Emission Spectroscopy)(ICP)により又は試金法(Fire Assay)法により決定することができる。他のように記載しない限り、Ag試金法(Ag Assay method)を用いそして本明細書において示された(重量%Agとして報告された)Ag試金(Ag assay)の結果は、ゴールデン カンパニー(Golden,Co.)のハーゼンリサーチ インコーポレーテッド(Hazen Research,Inc.)により行われた。またニューヨークのジョンワイリー&サンズ(John Wiley&Sons)発行のバグビー(Bugbee)著のA Textbook of Fire Assaying,第3版(1940年)を参照(これを参照することにより本明細書に組み入れる)。メトラー−トレド インターナショナル インコーポレーテッド(Mettler−Toledo International,Inc.)から市販されているメトラーDL18カールフィッシャー滴定器を用いて水分含有量を測定する。そのような方法は当業者に既知である。
【0055】
ブレークスルー試験の一般的概念及び方法はまた、当業者に周知である。この発明の目的のために、ブレークスルー又は作業能率(△CO)を、100ppbのCOブレークスルー濃度で供給流及び流出流においてのCOの全体的物質収支から決定する。一方では、同時に実際の方法に固有の同時吸着及び動的効果を包含させて、π−錯化による汚染物質を除去するための吸着剤の能力を表すために、ここではCO吸着物の動的作業能率を定める。吸着物(特に大気ガス類)は、熱旋回吸着法(thermal swing adsorption processes)(TSA)において吸着剤から完全に熱的に脱着することが予想される。そのようり条件下、方程式(1)はCO作業能率(△CO)を表す:
【0056】
【数1】


(式中、minは床中へのモル供給物流であり、YinはCOの入口モル部分(fraction)であり、YoutはCOの出口モル部分であり、Wは吸着剤の質量であり、そしてtは所定のブレークスルー濃度(100ppb CO)に相当するブレークスルー時間である。2.0ppm/0.1ppm=20のCO濃度減少比を用いて決定して、作業能率は物質移動抵抗から生ずる動的効果を固有的に取り込む。本発明の目的のためにブレークスルー試験の供給ガス中の主要成分はNである。供給物流中のNの濃度は、COの濃度に比較して圧倒的であるので、Nに対するCOの同時吸着の影響は無視することができる。逆に、Nの同時吸着は、COの吸着に対して重大な影響を有する。NとOとの同時吸着、H還元及び物質移動効果は、得られたCO積載量(loading)に自動的に導入されるので、記載されたようなブレークスルー試験方法はCOについて作業能率を決めるために好ましい。したがって、最良の吸着剤は、そのような抑制要因の存在下に高いCO作業能率(長いブレークスルー時間)を示す吸着剤である。
【0057】
この方法で、COの作業能率をCOのブレークスルー試験から決定し、そしてπ−結合を形成するための吸着剤の能力の基準指針(reference indicator)として用いた。実際的な処理条件下の所望の吸着能力について吸着剤を批評的に評価するために試験の条件を注意深く選択した。5.9cmの長さの吸着カラムを用いて、7.9バール(114.7psia)、10℃及び約21 slpm(78.7モル/m秒)の入口ガス流速で基準ブレークスルー試験を行った。供給ガスは、2.0ppmのCO、3.0ppmのH、79%のN及び21%のOを含んでいた。CO作業能率を決定する相当するCO分圧は、2.3x10−4psia(0.012mmHg)である。この試験の詳細はPCT国際公開第WO 03/101587(この公開の全体の内容を参照することにより本明細書に組み入れる)に示されている。これらの基準条件に対する幾つかの変形を以下の例において示す。
【実施例】
【0058】
例 1
表1において示されるような、市販のAgXゼオライトのサンプルを、ウイスコンシン州ミルウォキーのアルドリッヒ ケミカル カンパニー リミテッドから得た(C 0)、そしてコロラド州ラファイアットに設立されたモレキュラール プロダクツ インコーポレーテッド(C*CHEM部門)から得た(C 1〜C 5)。これらの材料は、(例えば米国特許第3,108,706号に記載されているような)真空空間で使用するためのH捕獲剤(ゲッター)として、H/O反応に触媒作用するために、そしてガス流からハロゲンを除去するために、宣伝されている。(10x16)ビーズとして受容して、これらのゼオライト類の平均直径は、1.4mm〜1.5mmであった。サンプルC 1〜C 5は、異なる生産ロットを表し、全てはそれらの最初の処理の部分として乾燥され且つ活性化された。しかしながら、サンプルC 2、C 3及びC 4は、全て2.0重量%より大の水分含有量で受け入れた。高いAg重量%の故、これらのゼオライト類は、例えば$200/kg以上のかなり高価なものである。Ag重量%、水分含有量及びMcBain Oを、上に言及した方法を用いて測定し、そして表1に示す。
【0059】
【表1】


*はICP法により測定され、他の全てはAg試金方法で測定された。
【0060】
先行技術の生産方法を表すAgXの5つのみの各々の生産ロットの標本をサンプルにとって表1のブレークスルー時間、△CO作業能率及びMcBainO結果から、先行技術のAgXの品質及び一貫性が非常に変わりやすいことがまったく明らかである。4もしくはそれ以上の要因のこの変動性は、顧客に契約した製品純度を保証するための最小性能に計画するにあたって受け入れることが出来ない重い荷を負わせる。(そのような高価な吸着剤の高い性能から由来するような)全体的に競争することが出来る利点を達成しそして維持することは、高いCO作業能率を一貫して有する吸着剤を生産することを必要とする。
【0061】
各々の材料のサンプルを5.9cm長さの床に詰め込み、そして水分含有量を1.0重量%未満に減少させるためにCOブレークスルー試験前に乾燥させた。1.5重量%〜2.0重量%より大の水分水準は、COの吸着を妨げる。温度を周囲の温度から350℃の温度にゆっくりと勾配上昇させ、次ぎに一夜350℃に維持しながら、13.6slpmの乾燥N(<−50℃露点)パージ流を用いてこの乾燥を行った。同じパージ下に周囲の温度に冷却後、27℃で、他のすべての条件はブレークスルー試験の記載において上記したとおりで、COブレークスルー試験を行った。
【0062】
(恐らくは、交換後の不完全な洗浄から生ずる不純物又は過剰のAg化合物との反応から)供給組成物への第1の露出において不可逆的反応が観察されたことが、この例及びそれに続く例において認められ、その結果、第1のブレークスルー試験を廃棄した。第2の且つ次ぎのブレークスルー試験の結果は再現可能であることが分かり、したがってCO作業能率を計算するために用いた。175℃〜275℃で変化させる温度で2時間、乾燥空気(<−50℃露点)中で吸着剤床を再生し、そして全て2.0slpmで3.0時間、乾燥N中で冷却することにより、ブレークスルー試験後に、CO及び他の吸着不純物を除去する。方程式(1)から決定されたCO作業能率を表1に示す。
【0063】
例 2
市販の13XHP(10x20)ゼオライトビーズ(89429−556P−ロット番号)の幾つかのサンプルをイリノイ州デスプレインズ(Des Plaines)のUOPから得た。13XHPは約1.25のSi/Al比を有する合成NaXゼオライトである。同じSi/Alを有する純粋な結合剤不含有NaXについてのMcBain O収容能率(capacity)は、およそ33重量%〜34重量%であり、一方では表2の結合されたゼオライトの平均O収容能力は29.65重量%である。McBain O試験においての加熱/真空排気の最初の工程は、サンプルを完全に乾燥し、そしてO吸着への水分のいかなる影響も排除する。結合された13XHPと純粋なNaX粉末との間の、McBain Oにおいての相対的な差(即ち微細孔容積においての差)は、市販の出発物質(13XHP)がおよそ10重量%〜12重量%の結合剤を含有することを示す。
【0064】
十分に交換されたAgX、即ちNaXで出発しそして85〜86Na/単位セルの本質的に全てをAgと交換してのAgX中のAgの重量分画を、純粋な脱水されたNaXゼオライト(Bolton)の周知の構造及び組成から、コンピューターを使用して計算することができる。13XHPの結合剤含有量を考慮して、十分に交換された13XHPゼオライト中のAgの量は、約39重量%(脱水された基準)である。
【0065】
10℃の供給物温度で、そしてその他は例1において上に記載された条件及び方法で、5.9cm長さの、充てんされた床を用いて、13XHPサンプルの1つを用いてCOブレークスルー試験を行った。13XHP(NaX)ゼオライトは、低いCO濃度でCOについて本質的に収容能力(capacity)を有しない、即ち表2おいて示されるようにCOは13XHP中に即座にブレークスルーする。
【0066】
【表2】

【0067】
例1及び例2の結果は、例1においてのサンプルのAg含有量が、例えば表1においてのサンプルC 0について、Ag含有量=(36重量%/39重量%)x100=92.3%であって、92.3%Ag交換の最小当量を表すことを示す。例1のAgXゼオライトは重大なゼオライト損傷を有するので、そのような水準の交換は吸着剤の減少した損傷を受けていないゼオライトの部分においてのみ存在し、即ちゼオライトの損傷した部分はCO分子に接近することができない崩壊した微細孔構造により特徴付けられる。
【0068】
微細孔容積は、AgによるNaの置き換えにより相対的に影響されるべきではないけれども、吸着剤密度においての差に起因して、McBain O重量%は、NaXゼオライト及びAgXゼオライトについて異なるであろう。NaX吸着剤とAgX吸着剤との両方の既知の組成から容易に決定することができるように、AgXの吸着剤粒子密度(ならびに充てんかさ密度)は、NaXのそれの約1.48倍である。十分に交換されたAgXについての予期されるO収容能力(capacity)は、表2においての13XHPについてのMcBain Oデータの範囲から概算することが出来、即ち、29.14/1.48=19.7重量%ないし30.18/1.48=20.4重量%である。(36.66重量%の平均O収容能力を有するMcBain基準吸着剤についてのサンプル標準偏差は0.17重量%である)。明らかに、それらの結果は、例1のAgXの先行技術生産サンプルの全てが(熱水的損傷に起因するとここでは推定される)微細孔容積の25%以上の損失を受けていることを示している。例1及び例2の結果は、高水準のAg交換だけでは高いCO作業能率を保証しないが、しかし高いAg交換はゼオライト微細孔容積の最小破壊と同時に得られなければならないことをはっきりと示している。
【0069】
この例はまた、3つの重要な基本線、即ち(1)結合された13XHP吸着剤の4つの生産ロットの(基礎ゼオライトの微細孔容積を表す)吸着されたOの平均量は29.65重量%であり;(2)十分に交換された13XHP吸着剤中のAgの量は39重量%であり;そして(3)(十分に交換されたAgXの微細孔の容積を表す)吸着されたOの平均量は20.4重量%である、ことを確立する。
【0070】
例 3
第6番目の生産ロット(C 6)からの市販のAgXのサンプルは、Molecular Products,Inc.(C*CHEM部門)から得られた。(1.9重量%の水分含有量を受け入れた)C 6を、サンプルC 1〜C 5と同じ方法により生産した。イオン交換及び洗浄工程の完了まで、即ち何らかの熱処理前、C 6の生産におけると同じ13XHP基礎ゼオライト、イオン交換溶液及び方法を用いて、研究室で第2サンプル(C 7)を調製した。次ぎに、このC 7サンプルの一部分(50〜100g)を周囲の条件で空気乾燥した。次ぎに標準の5.9cm床にこの材料(約11.5g)を充てんし、管炉中に入れ、そして一方では同時に150℃に温度を上昇(1℃/分)させ、そして数時間維持しながら、乾燥Nを用いて13.6slpmでパージした。サンプルC 6をまた、標準の5.9cm床に入れた。次ぎに、サンプルC 6の床及びC 7の床の両方を350℃で活性化し、次ぎに例1において記載された方法と同じ方法を用いて27℃でCOブレークスルー試験を行った。これらの試験の結果を表3に要約する。通常の3.0ppmからCO収容能力への影響を無視できる約200ppbに減少された供給物中のH濃度でサンプルC 7についてブレークスルー試験をまた行った。活性化後及びブレークスルー試験前の両方のサンプルの水分含有量は<1.0重量%であった。
【0071】
【表3】


周囲環境での乾燥後の水分含有量は研究室活性化後に0.3重量%HOに減少した。
【0072】
これらの2つのサンプルのMcBain O結果は、生産規模か焼処理に起因するサンプルC 6においての破壊された微細孔容積の量、即ち微細孔容積における%損失=(1−(13.1/18.5))x100=29.2%、即ち、70.8%維持されたO収容能力を示す。例1、2及び3の結果から誘導されたCOブレークスルー時間とMcBain O収容能力との間の関係を、図1に示す。McBain試験に伴う予備調整の1部分として“おだやかな活性化”が行われたけれども、McBain O試験は、“受け入れられたままの(as received)”吸着剤について行われる。この例において、C 6は先行技術生産方法を用いて十分に処理された吸着剤を表す。C 7は、C 6と同じイオン交換及び洗浄処理により処理された吸着剤を表すが、しかしC 6だけが本生産方法により活性化された。CO吸着能力は、熱水的損傷により損失された微細孔容積損失の量により強く影響される。(O収容能力の絶対値よりもむしろ)ゼオライト損傷の測定としてのO収容能力における相対的損失(微細孔容積においての損失)を使用することにより、この発明の任意のAg−交換されたゼオライト、例えば、AgA、AgY、AgX、等に適用することができる乾燥及びか焼処理のための簡単な基準を規定することができる。これは、本方法においての乾燥/か焼工程の前にそしてその後にO収容能力を測定することにより表3に示されるように成し遂げることができる。これは、ゼオライトのタイプ、結合剤の量、又は基礎の出発材料の処理からの何らかの先立っての熱的損傷に無関係に熱処理の効果を決定する。
【0073】
例 4
上に記載された方法、即ち例1の材料についてのようなAgXの市場生産において使用されるのと同じ方法を用いて、最初に13XHP(10x20)(ロット番号2010004827)を最初にAgで交換し、そして脱イオン水で洗浄することにより、工業的規模の回分式生産を開始した。各々の回分において生産されたか焼AgXの量は80kg〜90kgで変化した。
【0074】
回分R 906から水を排出させた後にゼオライトをトレイ(数cmの浅い床の深さ)に入れ、通気させた(しかしパージされない)オーブン中に入れ、そして温度を260℃に設定した。約1時間後に吸着剤を取り出し、0.5mの二重円錐回転混合機に入れた。混合機中の吸着剤の温度を175℃まで約0.25℃/分で、そして175℃から345℃まで0.6℃/分で上昇させるように初めに制御した。
【0075】
回分R 916及びR 922を排水させ、そして各々をか焼の前に混合機中に直接入れた。図2に示されるこれらの回分について加熱プロフィールは150℃での滞留時間を、R 916についての1.0時間からR 922についての2.0時間に延長させた以外は類似したものである。混合機内に含有されている電気素子からの370℃の最終温度に吸着剤を間接的に加熱する。吸着剤は加熱用素子とは接触していない。全ての3つの回分について、連続的周囲空気パージを約100Nm/時間の速度で混合機に供給した。既に記載された方法を用いて、水分及びAgの量及びO収容能力を、熱処理の終わりに測定した。10℃で、その他は例1において記載された条件及び方法を用いてCOブレークスルー試験を行った。
【0076】
906についてのパージなしでの浅い床のオーブン加熱は、微細孔容積において重大な損失を生じた。微細孔容積においてのこの損失は、表4において示されるMcBain O結果及びCOブレークスルー時間の両方において反映されている。
【0077】
固定オーブンを回避し、そして一方では加熱速度を制御しながらパージとの固体の連続混合を導入することにより微細孔容積においての損失がほとんどないか、又は全くないAgX吸着剤であって、そして優れたCO作業能率及びブレークスルー時間を有するAgX吸着剤を生じた。事実、R 916についてのCO収容能力は、例1の市販サンプルのそれよりも2倍〜8倍高かった。加熱サイクルにおいて異なる温度で吸着剤のサンプルを混合機から取り出した。これらのサンプルの水分含有量を測定した。吸着剤(回分R 916及びR 922)の加熱及び乾燥速度を図2に示す。この水分水準/温度の組み合わせは、ゼオライトに対する最小の熱水的損傷を有する乾燥及びか焼への上首尾の指針を表す。
【0078】
922のいっそう低いAg重量%は、ゼオライト中の交換可能なNa陽イオンの約84%の交換を表す。Ag陽イオンの減少した量に一部分起因して得られたCOブレークスルー時間は実質的にいっそう低い。より高い見掛けO収容能力は、不完全に交換された吸着剤のより低い密度と一致している。
【0079】
【表4】

【0080】
例 5
(各々79kg〜91kgのか焼AgXを生ずる)6つの回分を、回分R−916について例4において記載したのと同じ装置、条件及び方法を用いて13XHP(ロット番号2010004827)から処理した。仕上げ製品の平均粒子寸法は1.5mmであって、一方では回分水分含有量は0.85重量%〜1.57重量%で変化した。Ag含有量、即ち交換水準は、(100%Ag交換を表す39重量%Agに基づいて)交換可能な陽イオンの93%〜101%で、変化した。乾燥/か焼工程において用いられた周囲空気パージの水分含有量は制御されなかった、そして周囲の相対湿度に従って変化した。(乾燥/か焼の前に及びその後にMcBain O収容能力を測定することにより決定されたとき)O収容能力の維持された量はまた変化した、即ち熱水損傷の変化する水準を生ずる過剰の水分を保持している間にゼオライトは150℃より高い温度に到達した。10℃の供給物温度で、その他は例1において上記した条件及び方法でCOブレークスルー試験を、5.9cmの長さの充てん床上で行った。維持されたO収容能力を、図3においてCOブレークスルー時間の関数として示す。増大していく微細孔容積の維持と共に、増大していくCO収容能力の傾向は、図1において示された傾向に類似している。
【0081】
乾燥器を据え付け、そして混合機への135Nm/時間の空気流速で、周囲の空気パージの水分含有量を−10℃未満の露点に制御した。本明細書において示す以外は回分R 916について例4において記載したと同じ装置、条件及び方法を用いて、13XHP(ロット番号2012005900)から、(各々が74kg〜105kgのか焼AgXを生ずる)回分を処理した。仕上げ製品の平均粒子寸法は、1.4mmであって、その一方で回分水分含有量は0.62重量%〜0.98重量%で変化した。Ag含有量は、(100%Ag交換を表す39重量%Agに基づいて)94%〜106%で変化した。この発明の目的のためにAg含有量≦100%はAg交換の水準、即ちAgにより置き換えられたゼオライト中の交換可能な陽イオンのパーセントを表す。Ag含有量>100%について、100%より高いAg量は、十分に交換されたゼオライトのために必要とされるより過剰のAgを表し、そのような過剰分は細孔内にさもなくばゼオライト吸着剤上に又は吸着剤内部に付着して好ましくない存在を示す。この例において上記したようにしてCOブレークスルー試験を行った。維持されたO収容能力を、COブレークスルー時間の関数として図3に示す。
【0082】
制御された加熱計画と組み合わせて(固体吸着剤と密接に接触する)乾燥空気パージの適当な流れを導入することは、高い微細孔容積(O収容能力)維持を明らかに達成させる。10の回分の全てにおいて90%より大の維持されたO収容能力(か焼に起因する微細孔容積においての<10%損失)、そしてこれら10の回分のうちの9つにおいて95%以上の維持されたO収容能力が存在する。それでもやはり乾燥/か焼条件の適当な制御により、微細孔容積においての損失をいったん最小にされた、最も低いCOブレークスルー時間と最も高いCOブレークスルー時間との間に大きな差、即ち約5.0時間〜9.0時間の差がいぜんとして存在する。
【0083】
例 6
粒子寸法、水分含有量及び測定誤差は全て、変化するCOブレークスルー時間及びCO収容能力に対しての一因となるかもしれないが、(この発明においてのそれらの変化範囲内での)これらの要因のいずれも、図3においての約5.0時間〜9.0時間のCOブレークスルー時間の変化、即ち維持されたO収容能力≧90%について明らかにしない。
【0084】
各々が約75kgの仕上げ製品を生成する、13XHP(ロット番号2010006043)から処理された一連の3つの連続した生産回分は、低い性能、即ち4.5時間〜5.1時間の範囲のCOブレークスルー時間を生じた。これらの回分は、イオン交換処理を中断したときにAgと部分的に交換された。部分的に交換された吸着剤から交換溶液を排出させ、そしてその吸着剤を約1週間ドラム中に入れて密封し、その後に交換カラムに再装入して交換処理を完了させた。CO性能に対する追加の洗浄の影響を調べるために、これらの回分(R 956)の最も不利な実施処理を用いた。この特定の回分は、典型的な生産ロット(平均粒子寸法1.4mm〜1.5mm)よりも大きな平均粒子寸法(1.8mm)を有し、そして熱活性化においてそのO収容能力のおよそ10%を損失した。これらの要因の両方(より大きな粒子寸法及び微細孔容積の損失)は、より低い全体的なCO作業能率への一因となる。
【0085】
熱活性化の前に、Ag−交換されたサンプルをこの生産回分から抜き取り、そして脱イオン水を用いての追加の洗浄(ベンチ規模)に付した(R 956 a)。完全な洗浄を確実にするためにゼオライトサンプルを過剰の水で3回洗浄した。3回洗浄の全てからの水の総量はゼオライトサンプルの容積のおよそ100倍であった。熱活性化後、十分に処理された生産回分のサンプルをまた取り出し、飽和まで注意深く再水和し、そして同様に、即ちゼオライトサンプル容積のおよそ100倍の容積の過剰の水で洗浄した(R 956 b)。
【0086】
ベンチ規模の洗浄後、サンプルC 7について例3に記載されたのと同じ方法を用いてサンプルR 956 a及びR 956 bを乾燥し、そして活性化した。10℃の供給物温度で、その他は例1において記載された条件及び方法で、5.9cm長さの充てん床上でCOブレークスルー試験を行った。特別の洗浄に付されたサンプルについての結果を表5において通常の生産ロットR 956の結果と比較する。表5おいてのおいての各々のCOブレークスルー時間は、試験対の間で0.2時間の最大の変化を有する、2つの試験の平均を表す。十分に処理されたゼオライトの特別の洗浄(R 956 b)は、CO収容能力においてほんのささやかな改良を生じた。しかしながら、熱活性化の直前に与えられた追加の洗浄(R 956 a)は、十分に処理されたゼオライトのCO収容能力の2倍以上を生じた。
【0087】
【表5】

【0088】
1)十分な生産処理、直接に試験されたサンプル
2)イオン交換処理、試験前に研究室にて再洗浄され且つ乾燥されたサンプル
3)十分な生産処理、試験前に研究室にて再洗浄され且つ再乾燥されたサンプル
【0089】
イオン交換直後の広範囲な洗浄(R 956 a)は図3に示される最大に近いCO収容能力を生じ、その一方で熱活性化後においてのみ行われた同じ水準の洗浄(R 956 b)はCO収容能力においてほんのささやかな改良を提供する。図4に示されたCOブレークスルー特性は、物質移動抵抗に対する洗浄の影響を明らかに示す。2つのセットの洗浄実験は、熱処理後に水溶性材料のほんの一部分だけが可溶性の状態のままにあることを確認する。
【0090】
細孔閉塞のメカニズムの徴候は、図4において示されるように種々のサンプル上へのH活性の水準において明らかである。最も大きなHホールドアップ(holdup)は、最も早いCOブレークスルーに相当する。3.0ppmへのHの即時のブレークスルーは、0ホールドアップを表し、その一方で流出流中のいっそう低いH濃度は、吸着剤に維持されたH(即ち“Hホールドアップ”)のいっそう高い水準を表す。Hホールドアップの変化する水準は、細孔中の不純物との相互作用の結果であると信じられる。細孔中の過剰の塩(AgNO)、遊離のAg、AgO及び他の不純物は、ゆっくりとした物質移動による同時減少したCO作業能率に相当する(より低い水準のHブレークスルーにより明らかに示されるように観察された増大したHホールドアップを生ずる)Hと反応する。この場合において、追加のHホールドアップは、いっそう貧弱なCO性能の原因ではないけれども、Hは閉塞された細孔の表示又は深査指針として役に立つ。
【0091】
不完全な洗浄は、不完全な乾燥、低いCO拡散速度、そして望ましくない接触反応を生ずる可能性がある過剰のAg又はAg化合物の保持のような幾つかの他の問題が現れる可能性がある。何ら特定の理論に限定されることを望まないが、追加の洗浄の後に観察される性能改良は、吸着剤のπ−錯化能力を最大にすることに対する価値のある直観的見通しを提供すると信じられる。洗浄は、イオン交換からのゼオライトのマクロ細孔(そして多分、微細孔)中の過剰のAgNO塩の沈着を取り除くために適当でなければならない。必要とされる水の量を、廃棄洗浄水中のAgの濃度により適当に決定することは出来ないけれども、残留している塩(過剰のAg及び逆交換されたNa又は出発ゼオライト中の他の内在する陽イオン)は、清浄な脱イオン水を用いての洗浄により一般に除去される。
【0092】
イオン類は、ゼオライト構造物及び粒子から外に拡散しなければならないので、拡散時間は、ゼオライト粒子の寸法により左右される。粒子寸法、洗浄水の量、洗浄時間及び交換時間の変化は、交換ゼオライトからの残留塩の一貫しない除去(不完全な洗浄)を生ずる。塩−閉塞細孔はまた、次ぎに、熱処理の間にゼオライトからの水の除去を妨げ、末端製品において変化する水準の残留水分を生ずる。交換後、細孔中に残された何らかの水溶性塩の大部分は、か焼の間に到達した温度で溶融する可能性があり、そして細孔の壁上に遊離のAg又はAgOとして分散され且つ隙間に埋め込まれる可能性がある。閉塞された細孔はまたCOの拡散速度を減少させ、そして動的な除去処理の有効な物質移動速度及び物質移動帯域(MTZ)に影響する、即ち動的なCO収容能力を減少させる(いっそう短いブレークスルー時間)。最適なCO収容能力を阻害する第2のメカニズムは、交換処理からの残留塩でのゼオライトの細孔の閉塞であると思われる。したがって交換後の適当な洗浄は、吸着剤のπ−錯化能力を最大にするために重要である。
【0093】
例 7
例5のAgX生産ロットは、2〜3の回分洗浄を典型的に必要とした。各々の回分洗浄は、洗浄される固体ゼオライトの容積の約50%に等しい容積の脱イオン水を使用した。上に示された一般的なイオン交換方法において記載された規準に従って、即ち流出洗浄水中のAgNO濃度が<0.02Mまでで、洗浄を停止した。したがって、2〜3の回分洗浄において用いられた脱イオン水の総容積は固体吸着剤の容積の1.0〜1.5倍に等しかった、即ち例6において使用された過剰の水よりもはるかに少なかった。
【0094】
生産において追加の洗浄の合理的な量が性能を改良することができるかどうかを調べるために、(各々が約75kgのか焼製品を表す)2つのロットのAgXを13XHP(ロット番号2012005900)から処理した。この材料を、イオン交換工程後に6の回分洗浄に付した。用いられた脱イオン水の総容積は固体吸着剤の容積のおよそ3倍であった。追加の洗浄以外は、乾燥空気パージ方法を用いて例5に記載されているように吸着剤を処理した。仕上げ製品の平均粒子寸法は、1.4mmであった。Ag−交換水準は、交換可能な陽イオンの99%〜100.5%の範囲にわたった。O収容能力のおよそ95%が、両方の生産ロットのための熱活性化後に維持された。
【0095】
10℃の供給物温度で、そしてその他は例1において上記した条件及び方法で5.9cm長さの充てん床上でCOブレークスルー試験を行った。平均のCOブレークスルー時間を表6に要約する。図3おいての生産データと比較して、追加の洗浄を用いるこれらのロットは最大近くのCOブレークスルー時間を生じた。したがってマクロ細孔閉塞を最小にするために吸着性能から洗浄基準を決めることは、洗浄水中のAg濃度の測定から決められたものよりも好ましい。
【0096】
【表6】

【0097】
例 8
【表7】

【0098】
多数の回分のAgXを生産した幾つかの生産キャンペーンを行い、そしてその結果を表7に示す。第1の生産キャンペーンは20の回分のAgXを包含し、各々の回分は70〜100kgのAgXを生成した。10℃の供給物温度で、その他は例1において上記した条件及び方法で、5.9cm長さの充てん床を用いて、各々の生産キャンペーンにおいての各々のAgX回分についてCOブレークスルー試験を行った。最初の3つの生産キャンペーンの各々についての平均CO性能結果を表7に要約する。最も低い平均△CO積載量(loading・ローディング)及び最も高い変わりやすさ(variability)(ブレークスルー時間について決定された標準偏差σtb)が第1の生産キャンペーン(1)において起こった。パージ乾燥器を取り付ける前に、このキャンペーンの一部分を周囲の空気パージを用いて行った。イオン交換後の洗浄条件、パージ流、か焼温度計画化及びパージ露点を、例4〜6において反映されるように、第1生産キャンペーン全体にわたって、検討し且つ調節した。本発明の方法論を用いて、乾燥/か焼工程の非常に良好な制御下に、生産キャンペーン(2)及び(3)を行った。これらの後者の2つのキャンペーンは10の回分及び18の回分をそれぞれ包含し、各々の回分は生産キャンペーン(1)の回分について上に示されたと同じ範囲内の量のAgXを生成した。得られた△CO積載量は、生産キャンペーン(1)に比較して生産キャンペーン(2)及び(3)について有意義に高くそしていっそう一貫性(低い変わりやすさ)である。
【0099】
上記例は、本発明のAg−交換された吸着剤が吸着分離性能において、現在市販されている吸着剤よりもかなりの改良を表すことを示している。基準動的CO収容能力に関連して、この発明の最も高い性能を果たすAgX吸着剤は、最良の市販のAgX材料の吸着能力の2倍までの吸着能力を有し、そして最も不利な性能の市販のAgX吸着剤の能力のほぼ8倍の吸着能力を有する。そのような改良は、以下のユニークな組み合わせから得られる:(1)Si/Al<10を有するゼオライトを選択し、そしてその交換可能な陽イオンの少なくとも80%をAgと置き換えるように交換する;(2)ゼオライトの細孔から過剰なAg、Ag化合物あるいは不純物の塩又は他の交換可能な陽イオンの塩を排除するのに十分な洗浄を行い、そのような過剰のAgの含有量はゼオライトの十分な交換可能な電荷バランスがとれた陽イオンの容量より以上の10%以下、好ましくは5%以下に制限される;(3)2.0重量%以下(好ましくは1.0重量%以下)の、製品中の最終水分水準を達成させるために熱的な乾燥及び活性化を行う;(4)McBain O収容能力(capacity)により決定されたとき15%以下(好ましくは10%以下、最も好ましくは5%以下)に熱水構造損傷を最小にするように行われるべきの熱処理;(5)COの動的作業能率を決定する基準ブレークスルー試験により測定されたとき少なくとも0.45ミリモルのCO/Ag−ゼオライトのg(好ましくは≧0.055ミリモル/g、最も好ましくは≧0.065ミリモル/g)のAg−ゼオライトの動的作業能率を生ずるための上記処理の統合された効果。
【0100】
上に論じたように、本発明は、Agとの弱い化学的π結合の形成により適当な分子の高められた吸着のためのそれらの潜在能力を最大にするためにAg−交換されたゼオライトを提供する。Si/Al比<10を有するゼオライトは、Agに対するそれらの高い交換能力の故、好ましい。この特性を有するタイプのゼオライトの例は、X、Y、A、モルデン沸石、クリノプチロライト(clinoptilolite)、菱沸石、等を包含する。天然ゼオライト及び合成ゼオライトの両方を考慮に入れることができる。
【0101】
これらのゼオライトにより表される多様な構造の故、O収容能力により規定されたときに微細孔容積において対応する変化が存在するであろう。最も大きな絶対微細孔容積(及びそれに対応するゼオライト構造)はそれ自体、Agとの交換のための最良の基礎材料を規定していない、即ち究極的にはπ−錯化のための最良の吸着剤として規定していない。しかしながら、Agとの交換前にすでに熱的に処理された一定の構造のタイプの基礎材料のために、最も高いO収容能力を有する基礎材料が好ましい。
【0102】
電荷バランスがとれた陽イオンとして、Naを有する幾種かの市販の合成ゼオライトを容易に手に入れることができるけれども、他の陽イオンを有するゼオライト類を出発ゼオライトして使用することができる。Agとの交換前に基礎材料中に存在してもよい典型的な陽イオンは、単独又は組み合わせてのいずれかで、Na、Li、K、Mg、Ca、等である。
【0103】
基礎材料(交換前の出発ゼオライト)は、結合剤と共に又は結合剤無しで、凝集粒子、押し出し物、ビーズであることができ又は顆粒形にあることができる。そのような凝集粒子の平均寸法は、約0.4mm〜4.0mmであることができる。基礎ゼオライトはまた、上に示されたように、後で凝集粒子になり、Agとの交換のときに粉末であることができ、あるいは基材上に又は基材中に分散して、ガスセパレーターとして用いられるべき膜、モノリス又は他の構造形を作るためにAgとの交換のときに粉末であることができる。
【0104】
弱い化学結合は吸着のための主要なメカニズムを提供するので、熱再生を導入する分離処理は、吸着された成分の脱着のために好ましい。しかしながら、この発明の吸着剤を使用する分離方法は、吸着剤の再生のために熱旋回(thermal swing)、圧力旋回又は変位(displacement)手段(シミュレートした移動床(SMB))及びそれらの組み合わせを包含することができる。この発明の吸着剤は−50℃〜約50℃の範囲(例えば殆どの供給ガス流を精製する典型的な温度範囲)での供給ガス温度で使用するために十分に適しているけれども、分離に依存していっそう高い温度又はいっそう低い温度を排除しない。同様に、0.1気圧〜20気圧の範囲の圧力が最も典型的であるけれども、操作圧力に対する特別の制限は存在しない。
【0105】
この発明の吸着剤は、汚染物質ガス類がπ−錯化によりゼオライト中のAg陽イオンと弱い化学結合を形成することを特に受け入れるガス流からの汚染物質ガス類の除去のために最もよく適している。この様式でAgと相互に作用する最も普通のガス類は、一酸化炭素(CO)、エチレン(C)、及びプロピレン(C)であるけれども、他の適当な分子を同様に結合するだろう。
【0106】
精製及び多量の分離の両方は、この発明の吸着剤により行うことができる。空気からのCOの除去、N、H、不活性ガス又はこれらのガス類の混合物は、精製の例である。これらの吸着剤は、ごく微量の汚染物質(供給流中のppm(100万当たり部)水準ないし0.5容積%)を、高純度及び超高純度のガス類の生産のために必要とされるppb水準にまで、除去するのに特に有効である。Ag−交換された吸着剤の高い選択率及び作業能率は、空気中の濃度が≦10ppmである場合の空気からの汚染物質、例えば空気中のCOを、π−錯化により吸着させるためこれらの材料を理想的なものにする。多量分離の例は、供給流中の最も強く吸着される成分の濃度が≧1.0容積%である、合成ガスからのCOの回収及びパラフィン類からのオレフィン類の分離を包含する。最後に、水の精製及び炭化水素溶媒回収のような液相分離は、これらの吸着剤のための可能性がある適用である。
【0107】
この発明のAg−交換されたゼオライトの高い作業能率(例えば△CO≧0.045ミリモル/g)は、薄い吸着剤層の使用を容易にする。このことは、非常に高価な吸着剤を使用する分離の全体的な費用を制限するにあたって有利であり、あるいは空間が、小さな吸着器に限られるか、又は現存する吸着器を限られた余地の空間を用いて改良設置することに限られた場合に有利である。
【0108】
Si/Al<10を有するAg−交換されたゼオライトは、ガス相分離においてのHOにより部分的に又は完全に非活性化される可能性があるけれども、このことを、適当な熱活性化又は乾燥により逆転させることができる。反対に、これらの同じ吸着剤は、弱いないしは適当に強い物理的吸着により一般に同時吸着される他のガス類の存在下に弱いπ−結合を形成するガス類、例えばN、O、CO等を除去するために特に有効である。この発明の吸着剤はまた、Ag陽イオンの還元(例えばH)及び酸化に対して抵抗性がある。
【0109】
本発明は、CO濃度の除去、及び随意的に、入ってくる供給流からのHO、CO及びHの1種以上の除去のためのTSA吸着器及びシステムにおいて用いられることができる。CO及び随意的に他の汚染物質の除去のために適している例示的容器のデザインを、図5に言及しながら下に記載する。図5において示される矢印は、本方法の精製工程の間に吸着器床/容器中を通過するガス流の方向を示す。そのような容器を組み込んでいるTSA予備精製装置システムを図6に言及しながら下に開示する。
【0110】
再び図5に言及して容器30を示す。容器30は容器30に入ってくるHOの実質的全てを除去するためのアルミナ、シリカゲル又は分子篩又はそれらの混合物のようなHO吸着剤の第1層(31)を含有する。13X(NaX)又は5Aあるいはこれらの混合物のようなCO吸着剤の第2層(32)は、COの実質的に全てを除去するために随意的に用いられる。そのCO吸着剤層はまたHO吸着剤層(31)からの残っている全ての残留水を除去することができる。CO吸着剤の第3層(33)がCO吸着剤の下流に置かれる。(“下流”と言う用語により吸着器容器の流出又は生成物末端にいっそう近いことが意味される)。容器30を、吸着剤層33単独で用いることができることが、当業者により認識されるだろう。実質的にHOを含有しない、そしてCOを含有しないガス流が、このCO吸着剤層に入ってくる。CO吸着剤層は、本発明のCO吸着剤から形成される。別法として、吸着剤層(33)は、他の材料との本発明のCO吸着剤の混合材である。そのような混合材は、Ackleyによるそして“吸着剤及び触媒混合物”と題する、2005年6月30日に出願された共係属中の共通して本願出願人自身の米国特許出願シリアル第11/170,109号に記載されている。そのAckleyによる、そして“吸着剤及び触媒混合物”と題する、2005年6月30日に出願された共係属中の共通して本願出願人自身の米国特許出願シリアル題11/170,109号の全体内容を参照することにより本明細書に組み入れる。
【0111】
“高純度及び超高純度ガスの生産”と題するPCT公開第03/101587号に示されるような吸着又は触媒作用のために、層33の上又は層31の下に、追加の層を加えることができることが認識されるだろう。
【0112】
本発明に従えば本発明の吸着剤を用いて現存する予備精製装置を容易に改良設置をすることができる。例示的な方法は図6に関連して本明細書に記載される。供給空気を圧縮器70において圧縮し、そして冷却手段71により冷却した後に、2つの吸着器(76及び77)の1つに入り、そこで少なくとも汚染物質HO、CO及びCOを該空気から除去する。吸着器76及び77の各々は同じ吸着剤床形状を有しており、それらは、例えば図5に関連して上に記載されたようなものであることができる。精製された空気は吸着器を出、次ぎに空気分離装置(ASU)に入り、そこで次ぎに空気の主要な成分NとOとに極低温的に分離される。ASUの特別のデザインで、Ar、Kr及びXeをまた、空気から分離しそして回収することができる。床の1つが空気から汚染物質を吸着している一方で、他の床はパージガスを用いて再生される。吸着された汚染物質を脱着し、それにより吸着器を再生し、そしてサイクルにおいての次ぎの吸着工程のためにそれを準備するために、汚染物質が存在しない乾燥したパージガスを、ASUからの生成物又は廃棄流から、又は独立した源から供給することができる。パージガスは、N、O、NとOとの混合物、空気又は任意の不活性ガスであることができる。熱旋回吸着(thermal swing adsorption)(TSA)の場合において、パージガスを、最初に加熱器(82)において加熱し、その後に吸着工程においての供給流の方向に対して対向流の方向で吸着器中に通過させる。TSAサイクルはまた、圧力旋回(pressure swing)を包含することができる。圧力旋回吸着(PSA)のみを使用する場合、加熱器は存在しない。
【0113】
ここで、1つの吸着器76について図6に関連して、典型的なTSAサイクルの操作を記載する。他の吸着器容器77が同じサイクルを用いて、精製された空気が連続してASUに使用できるような方法で第1吸着器との同期運転無しでのみ働くことを、当業者は認識するだろう。この同期運転しないサイクルの操作はカッコ内番号に関連して示される。
【0114】
供給空気を圧縮器70に導入し、そこでそれを加圧する。冷却手段71、例えば機械的冷却器、又は直接接触後置−冷却器と蒸発冷却器との組み合わせ中で、圧縮の熱を除去する。次ぎに圧縮された冷たいそしてHO飽和された供給流は、吸着器76(77)に入る。吸着器容器76(77)を加圧するとき、バルブ72(73)を開き、そしてバルブ74(75)、78(79)及び80(81)を閉じる。いったん吸着圧力に到達したとき、バルブ78(79)を開き、そして精製された生成物を、極低温空気分離のためにASUに送る。吸着器76(77)が吸着工程を完了したときに、より低い圧力、典型的には周囲の圧力近くの圧力にするために、バルブ78(79)及び72(73)を閉じ、そしてバルブ74(75)を開ける。いったん圧力が下がったならば、バルブ80(81)を開け、そして吸着器76(77)の生成物末端に加熱パージガスを導入する。パージサイクルの間の或る時期に、加熱器を止めてパージガスが供給物温度近くに吸着剤を冷却するようにするか、又は随意的にバイパスを介して冷却パージを容器に直接に供給する。
【0115】
上記記載は典型的な予備精製器サイクルのほんの一例を表し、そして例えば、PCT公開第03/101587号に示されるような、本発明と共に使用できるような典型的なサイクルの多くの変形が存在することを、当業者はさらに認識するだろう。
【0116】
本明細書において用いられるものとして、△CO作業能率は、5.9cm長さの吸着カラムを用いて、以下の試験条件、即ち7.9バール(114.7psia)、10℃及びおよそ21 slpm(78.7モル/m秒)の入口ガス流速で行われた基準ブレークスルー試験から決定される。供給ガスは、2.0ppmのCO、3.0ppmのH、79%のN及び21%のOを含む。△CO作業能率は、方程式(1)及び100.0ppbのCOブレークスルー濃度を用いてのそのブレークスルー試験の結果から決定される。
【0117】
また、本明細書において用いられるものとして、“Ag含有量”と言う語句は、Agとの交換可能な陽イオンのすべての完全な置き換えのために必要とされる量に対しての、凝集化吸着剤中に存在するAgの総量を意味する。(十分に交換された)Ag陽イオン収容能力(cation capacity)は、当該の凝集化吸着剤についての重量%Agに換算して最初に決定される。例のために、そして限定として解釈されるべきではないけれども、13XHP基礎材を用いての十分に交換されたAgXは39重量%に等価のAg陽イオン収容能力を有する。この等価重量%収容能力は、ゼオライトのタイプによって変化することは勿論のこと、その結合剤含有量によっても変化する。次ぎに、“Ag含有量”は以下のとおりにして、最終Ag−交換された吸着剤製品中のAgの測定された量から決定される。
【数2】

【0118】
“熱水構造損傷”と言う語句により、それは下記を意味する;
【数3】

【0119】
上に開示された特定の態様は、本発明の同じ目的を実施するために他の構造に修正するか又は計画するための基準として容易に使用することができることを、当業者により認識されるべきである。そのような等価値の構成は、特許請求の範囲に記載されたような本発明の精神及び範囲から外れないように、当業者によりまた実現されるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】例1〜3の結果に基づいて、COブレークスルー時間とMcBain O収容能力との間の関係を例示する。
【図2】例4においての回分R 916及びR 922からの吸着剤の加熱及び乾燥速度を例示する。
【図3】COブレークスルー時間の関数として、維持されたO収容能力を示す。
【図4】例6のCO及びHブレークスルー特性を例示し、そして物質移動抵抗への洗浄の効果を示す。
【図5】本発明に従う吸着剤容器/床においての例示的吸着剤配置の概要図である。
【図6】本発明に従って使用するために適している予備精製装置の概要図である。
【符号の説明】
【0121】
30 吸着剤容器
31 HO吸着剤の第1層
32 CO吸着剤の第2層
33 CO吸着剤の第3層
70 圧縮器
71 冷却手段
72 バルブ
73 バルブ
74 バルブ
75 バルブ
76 吸着器
77 吸着器
78 バルブ
79 バルブ
80 バルブ
81 バルブ
82 加熱器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
10未満のSi/Al比、約2.0重量%以下の水分含有量、80〜110%のAg含有量、15%以下の熱水構造損傷及び0.045ミリモルCO/Ag−ゼオライトg以上の△CO作業能率を有し、該△CO作業能率は基準ブレークスルー試験から決定される、Ag−交換されたゼオライトを含む、吸着剤材料。
【請求項2】
Ag−交換されたゼオライトが0.055ミリモルCO/Ag−ゼオライトg以上の△CO作業能率を有する、請求項1の吸着剤。
【請求項3】
Ag−交換されたゼオライトが0.065ミリモルCO/Ag−ゼオライトg以上の△CO作業能率を有する、請求項1の吸着剤。
【請求項4】
Ag−交換されたゼオライトが1.0重量%以下の水分含有量を有する、請求項1の吸着剤。
【請求項5】
Ag含有量が80〜105%である、請求項1の吸着剤。
【請求項6】
Ag−交換されたゼオライトが10%以下の熱水構造損傷を有する、請求項1の吸着剤。
【請求項7】
Ag−交換されたゼオライトが5%以下の熱水構造損傷を有する、請求項1の吸着剤。
【請求項8】
Ag−交換されたゼオライトが約1.0重量%以下の水分含有量、105%未満のAg含有量、10%以下の熱水構造損傷、及び0.065ミリモルCO/Ag−ゼオライトg以上の△CO作業能率を有し、該△CO作業能率は基準ブレークスルー試験から決定される、請求項1の吸着剤。
【請求項9】
Si/Al<10を有するゼオライト材料を用意し;
該ゼオライト中の交換可能な陽イオンの少なくとも80%をAgと交換し;
過剰のAg、Ag化合物及び/又は不純物の塩類又は他の交換可能な陽イオンの塩を該ゼオライトの細孔から排除するために十分に交換されたゼオライトを洗浄し;そして
交換されたゼオライトが2.0重量%以下のゼオライト中の最終水分水準及び15%以下の熱水構造損傷を達成するように、交換されたゼオライトを熱的に処理し、そして活性化する;
ことを含む、吸着剤を作成する方法。
【請求項10】
Ag含有量が80〜110%である、請求項9の方法。
【請求項11】
Ag含有量が80〜105%である、請求項10の方法。
【請求項12】
ゼオライト中の最終水分水準が1.0重量%以下である、請求項9の方法。
【請求項13】
吸着剤がCO吸着剤である、請求項9の方法。
【請求項14】
洗浄工程に用いられる水の総容積のゼオライトの容積に対する比が、少なくとも3である、請求項9の方法。
【請求項15】
熱処理が、ゼオライトに対する熱水構造損傷を10%以下に最小に抑えるように成し遂げられる、請求項9の方法。
【請求項16】
熱処理が、ゼオライトに対する熱水構造損傷を5%以下に最小に抑えるように成し遂げられる、請求項15の方法。
【請求項17】
ゼオライトが、少なくとも0.045ミリモルCO/Ag−ゼオライトgの△CO作業能率を有し、その△CO作業能率が基準ブレークスルー試験から決定される、請求項9の方法。
【請求項18】
Ag−交換されたゼオライトが、少なくとも0.055ミリモルCO/Ag−ゼオライトgの△CO作業能率を有する、請求項17の方法。
【請求項19】
Ag−交換されたゼオライトが、少なくとも0.065ミリモルCO/Ag−ゼオライトgの△CO作業能率を有する、請求項18の方法。
【請求項20】
少なくとも1種の汚染物質を含有する供給物流から前記少なくとも1種の汚染物質を除去するための方法であって、前記方法が該供給物流を0.045ミリモル/g以上の△CO作業能率を有する吸着剤と接触させて、前記少なくとも1種の汚染物質が激減したガス流を生成することを含む、前記方法。
【請求項21】
該激減されたガス流が≦100ppbの少なくとも1種の汚染物質の濃度を有する、請求項20の方法。
【請求項22】
該激減されたガス流が≦10ppbの少なくとも1種の汚染物質の濃度を有する、請求項21の方法。
【請求項23】
供給物流が窒素、He、Ne、Ar、Xe、Kr、H、CH、CO、空気、O及びそれらの混合物からなる群から選ばれた少なくとも1種のガスを含有しそして吸着剤がAgで交換されたゼオライトである、請求項20の方法。
【請求項24】
少なくとも1種の汚染物質が、CO、エチレン、プロピレン、それらの混合物、又はAgとπ−錯体を形成する他の汚染物質を含む、請求項23の方法。
【請求項25】
少なくとも1種の汚染物質が、CO、エチレン、プロピレン、それらの混合物、又はAgとπ−錯体を形成する他の汚染物質を含む、請求項20の方法。
【請求項26】
Ag−交換されたゼオライトが少なくとも0.055ミリモルCO/Ag−ゼオライトgの△CO作業能率を有する、請求項20の方法。
【請求項27】
Ag−交換されたゼオライトが少なくとも0.065ミリモルCO/Ag−ゼオライトgの△CO作業能率を有する、請求項26の方法。
【請求項28】
少なくとも1種の汚染物質を含有する供給物流から前記少なくとも1種の汚染物質を除去するための方法であって、前記方法が該供給物流を、少なくとも0.045ミリモル/gの△CO作業能率を有するCO吸着剤と接触させて、前記少なくとも1種の汚染物質が激減したガス流を生成することを含み、該吸着剤がAg交換されたゼオライトである、前記方法。
【請求項29】
少なくとも1種の汚染物質が、CO、エチレン、プロピレン、それらの混合物、又はAgとπ−錯体を形成する他の汚染物質を含む、請求項28の方法。
【請求項30】
Ag−交換されたゼオライトが少なくとも0.055ミリモルCO/Ag−ゼオライトgの△CO作業能率を有する、請求項28の方法。
【請求項31】
Ag−交換されたゼオライトが少なくとも0.065ミリモルCO/Ag−ゼオライトgの△CO作業能率を有する、請求項30の方法。
【請求項32】
激減されたガス流が≦100ppbの少なくとも1種の汚染物質の濃度を有する、請求項28の方法。
【請求項33】
激減されたガス流が≦10ppbの少なくとも1種の汚染物質の濃度を有する、請求項28の方法。
【請求項34】
少なくとも1種の汚染物質を含有する供給物流から該少なくとも1種の汚染物質を除去するための吸着装置であって、前記装置が吸着剤層を含有する少なくとも1つの吸着容器を含み、前記吸着剤が0.045ミリモル/g以上の△CO作業能率を有し、しかも前記吸着剤がAgで交換されたゼオライトである、前記装置。
【請求項35】
Ag−交換されたゼオライトが少なくとも0.055ミリモルCO/Ag−ゼオライトgの△CO作業能率を有する、請求項34の装置。
【請求項36】
Ag−交換されたゼオライトが少なくとも0.065ミリモルCO/Ag−ゼオライトgの△CO作業能率を有する、請求項35の装置。
【請求項37】
空気供給流からCOを除去するための空気予備精製吸着装置であって、前記装置がCO吸着剤層を含有する少なくとも1つの吸着容器を含み、前記CO吸着剤が0.045ミリモル/g以上の△CO作業能率を有し、しかも前記吸着剤が<10のSi/Al比を有するゼオライトであり、そしてAgでイオン交換されている、前記装置。
【請求項38】
Ag−交換されたゼオライトが少なくとも0.055ミリモルCO/Ag−ゼオライトgの△CO作業能率を有する、請求項37の装置。
【請求項39】
Ag−交換されたゼオライトが少なくとも0.065ミリモルCO/Ag−ゼオライトgの△CO作業能率を有する、請求項38の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−544849(P2008−544849A)
【公表日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−519467(P2008−519467)
【出願日】平成18年6月27日(2006.6.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/024901
【国際公開番号】WO2007/005398
【国際公開日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【出願人】(392032409)プラクスエア・テクノロジー・インコーポレイテッド (119)
【Fターム(参考)】