説明

銀塩光熱ドライイメージング材料及びその画像形成方法

【課題】 印刷製版用のスキャナー、イメージセッター用として、超硬調で且つ未処理感材の保存安定性及び熱現像後の画像保存性に優れ、且つ作業環境負荷が小さい銀塩光熱ドライイメージング材料を提供すること及びその画像形成方法を提供する。
【解決手段】 支持体上に非感光性有機銀塩、該有機銀塩の還元剤、感光性ハロゲン化銀、硬調化剤およびバインダーを含有する画像形成層と該画像形成層を保護する非感光性層を各々少なくとも1層有する銀塩ドライイメージング材料において、前記還元剤が下記一般式(R1)または一般式(R2)で表される化合物であり、且つ前記硬調化剤が下記一般式(1)〜(3)で表される化合物であり、更に120℃における「におい強度」が−3以上1以下であることを特徴とする銀塩光熱ドライイメージング材料。
【化1】


【化2】


【化3】


【化4】


【化5】

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銀塩光熱ドライイメージング材料及びその画像形成方法に関し、特に印刷製版用に適した銀塩光熱ドライイメージング料及び画像形成方法に関するものである。更に詳しくは、超硬調で保存安定性と熱現像後の画像保存性に優れ、且つ高感度である銀塩光熱ドライイメージング材料及びその画像形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、医療分野や印刷製版分野において環境保全、省スペースの観点から写真現像処理のドライ化が強く望まれている。これらの分野では、デジタル化が進展し、画像情報をコンピューターに取り込み、保存、そして必要な場合には加工し、通信によって必要な場所で、レーザー・イメージセッターまたはレーザー・イメージャーにより感光材料に出力し、現像して画像をその場で作製するシステムが急速に広がってきている。感光材料としては、高い照度のレーザー露光で記録することができ、高解像度および鮮鋭さを有する鮮明な黒色画像を形成することがが必要とされている。このようなデジタル・イメージング記録材料としては、インクジェットプリンター、電子写真など顔料、染料を利用した各種ハードコピーシステムが一般画像形成システムとして流通しているが、医療用画像のように診断能力を決定する画質(鮮鋭度、粒状性、階調、色調)の点、記録スピード(感度)の点で、不満足であり、従来の湿式現像の医療用銀塩フィルムを代替できるレベルに到達していない。一方、有機銀塩を利用した熱画像形成システムが多数記載されて(例えば、特許文献1、2、非特許文献1参照。)いる。
【0003】
銀塩光熱ドライイメージング材料は、一般に、感光性ハロゲン化銀、還元剤、還元可能な銀塩(例、有機銀塩)、必要により銀の色調を制御する色調剤を、バインダーのマトリックス中に分散した画像形成層を有している。バインダーとして熱現像温度より低い領域にガラス転移点を有するポリマーが用いられる。従来一般に用いられてきたのはポリビニルブチラ−ルであり、メチルエチルケトン(以後MEKと略称する)などの有機溶媒にバインダーを溶解し、その中に感光性ハロゲン化銀、還元剤、有機銀塩などの素材を分散ないし溶解して皮膜状に支持体上に塗布、乾燥して画像形成層を作製していた。一方、最近、新しくバインダーとしてポリマーラテックスを用いた銀塩光熱ドライイメージング材料も開発されてきている。
【0004】
銀塩光熱ドライイメージング材料は、画像露光後、高温(例えば80℃以上)に加熱し、ハロゲン化銀あるいは還元可能な銀塩(酸化剤として機能する)と還元剤との間の酸化還元反応により、黒色の銀画像を形成する。酸化還元反応は、露光で発生したハロゲン化銀の潜像の触媒作用により促進される。その結果、露光領域に黒色の銀画像が形成される。銀塩光熱ドライイメージング材料は、多くの文献に開示されて(例えば、特許文献3、4参照。)いる。
【0005】
銀塩光熱ドライイメージング材料は上記のように銀供給源(有機銀塩)と還元剤が感材中に共存するため、特に未処理の感光材料を安定に保存することが難しいといった欠点がある。特に感光材料をパッケージから出した後、熱現像処理機にセットした状態では、周りの環境に影響され、経時による写真性の悪化(特に画像色調の変動)が大きな問題となる。
【0006】
銀塩光熱ドライイメージング材料の保存安定性を高めるために、化学増感と高Tgバインダーの組合せが開示されて(例えば、特許文献5参照。)いる。この明細書によると保存後の感材の感度の動きは確かに改良されるものの、色調の変動については言及されていない。
【0007】
特に、有機溶剤塗布方式の銀塩光熱ドライイメージング材料では、水性塗布法式に比べて上記の色調変動がより大きい傾向にあり、また上述の改良手段を用いてもその効果がまだ不充分であり、さらなる改良が望まれた。
【特許文献1】米国特許第3,152,904号明細書 (第1〜7頁)
【特許文献2】米国特許第3,457,075号明細書 (第1〜6頁)
【非特許文献1】D.クロスタボーア(Klosterboer)著「熱によって処理される銀システム(Thermally Processed Silver Systems)」イメージング・プロセッシーズ・アンド・マテリアルズ(Imaging Processes and Materials)Neblette 第8版、J.スタージ(Sturge)、V.ウオールワース(Walworth)、A.シェップ(Shepp)編集、第9章、第279頁、1989年
【特許文献3】米国特許第2,910,377号明細書 (第1〜4頁)
【特許文献4】特公昭43−4924号公報 (第1〜4頁)
【特許文献5】特開2002−287292号公報 (第2〜28頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、特に印刷製版用のスキャナー、イメージセッター用として、超硬調で且つ未処理感材の保存安定性及び熱現像後の画像保存性に優れ、且つ作業環境負荷が小さい銀塩光熱ドライイメージング材料を提供すること及びその画像形成方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成することができる。
【0010】
(請求項1)
支持体上に非感光性有機銀塩、該有機銀塩の還元剤、感光性ハロゲン化銀、硬調化剤およびバインダーを含有する画像形成層と該画像形成層を保護する非感光性層を各々少なくとも1層有する銀塩ドライイメージング材料において、前記還元剤が下記一般式(R1)または一般式(R2)で表される化合物であり、且つ前記硬調化剤が下記一般式(1)〜(3)で表される化合物であり、更に120℃における「におい強度」が−3以上1以下であることを特徴とする銀塩光熱ドライイメージング材料。
【0011】
【化1】

【0012】
(式中、R1およびR1′は、各々独立に炭素数1〜20のアルキル基を表す。R2およびR2′は、各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な置換基を表す。R3は、3ないし7員の炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及びリン原子から選ばれる原子により構成される環を形成する置換基を表す。XおよびX′は、各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。)
【0013】
【化2】

【0014】
(式中、R1、R1′、R2、R2′、XおよびX′は、一般式(R1)と同義の基を表す。R3′は、アルケニル基又は不飽和結合を有するアルキル基を表す。)
【0015】
【化3】

【0016】
〔式中、R11、R12及びR13は各々水素原子又は一価の置換基を表し、X11は電子供与性のヘテロ環基、シクロアルキルオキシ基、シクロアルキルチオ基、シクロアルキルアミノ基又はシクロアルケニル基を表す。〕
【0017】
【化4】

【0018】
〔式中、R21はアルキル基を表し、R22及びR23は各々水素原子又は一価の置換基を表し、X21は電子吸引性基を表し、L21は芳香族炭素環基を表し、n2は0又は1を表す。〕
【0019】
【化5】

【0020】
〔式中、X31は電子吸引性のヘテロ環基、ハロゲン原子又はハロアルキル基を表し、R31又はR32のいずれか一方が水素原子であり、他方がヒドロキシル基を表す。〕
(請求項2)
請求項1に記載の銀塩光熱ドライイメージング材料を、熱現像自現機の熱現像部の前にプレヒート部を有し、該プレヒート部の温度が80〜120℃である熱現像機を用いて処理し、画像を形成することを特徴とする画像形成方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明により、印刷製版用のスキャナー、イメージセッター用として、超硬調で且つ未処理感材の保存安定性及び熱現像後の画像保存性に優れ、且つ作業環境負荷が小さい銀塩光熱ドライイメージング材料を提供すること及びその画像形成方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明を更に詳しく説明する。
【0023】
本発明で使用する還元剤について説明する。還元剤は、熱現像時に銀イオンを還元して現像銀にすることができる化合物である。
【0024】
一般式(R1)において、R1およびR1′は、各々独立に置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基であり、アルキル基の置換基は特に限定されることはないが、好ましくは、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、アシル基、カルバモイル基、エステル基、ウレイド基、ウレタン基及びハロゲン原子等があげられる。
【0025】
1およびR1′として好ましくは炭素数3〜15の2級または3級のアルキル基であり、具体的にはイソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基及び1−メチルシクロプロピル基などがあげられる。R1およびR1′としてより好ましくは炭素数4〜12の3級アルキル基で、その中でもt−ブチル基、t−アミル基又は1−メチルシクロヘキシル基が更に好ましく、t−ブチル基が最も好ましい。
【0026】
2およびR2′は、各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な置換基であり、XおよびX′も各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。それぞれベンゼン環に置換可能な基としては、好ましくはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基及びアシルアミノ基があげられる。
【0027】
2およびR2′として好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、メトキシメチル基及びメトキシエチル基などがあげられる。より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基又はt−ブチル基である。
【0028】
XおよびX′は、好ましくは水素原子、ハロゲン原子及びアルキル基で、より好ましくは水素原子である。
【0029】
3は3ないし7員の炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子、リン原子より構成される環を形成する置換基を表す。環はすべてが炭素原子でもよく、炭素原子と前記ヘテロ原子から構成される複素環基であってもよい。また、これらの環は置換基を有していてもよい。置換基を含めた炭素数の範囲は2から30の範囲が好ましい。R3で表される環の具体例はシクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、2−ノルボルニル基、2−[2,2,2]−ビシクロオクチル基、2−アダマンチル基、2−シクロペンテニル基、2−シクロヘキセニル基、3−シクロヘキセニル基、2−テトラヒドロフラニル基、2−ジヒドロフラニル基、2−テトラヒドロピラニル基、3−ジヒドロピラニル基、2−ピロリジン基、2−ピペリジン基、3−テトラヒドロチオピラニル基及び3−テトラヒドロホスホラン基などがあげられる。
【0030】
3で表される基は、置換基を有していてもよい。置換基の例としてはハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アリルオキシ基、アリルチオ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、カルボニル基、ヒドロキシ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基及びヘテロ環基などがあげられる。
【0031】
3は、好ましくは5ないし6員の炭素環またはヘテロ環を形成する炭素数3から20の基で、より好ましくは炭素原子または酸素原子から成る環を形成する基である。
これらの環には不飽和結合が含まれていてもよい。
【0032】
3として好ましくは炭素数1〜15のシクロアルキル基、シクロアルケニル基、ヘテロ環基であり、シクロアルキル基としてはシクロヘキシル基又はシクロペンチル基が好ましく、シクロアルケニル基としては2−シクロヘキセニル基、3−シクロヘキセニル基又は3−シクロペンテニル基が好ましい。ヘテロ環基としては、2−テトラヒドロフラニル基、2−テトラヒドロピラニル基又は3−テトラヒドロピラニル基が好ましい。R3として特に好ましいのはシクロヘキシル基、3−シクロヘキセニル基又は3−シクロペンテニル基である。
【0033】
上記還元剤は単独で使用することもできるが、現像性や色調を調整する目的で2種以上を組み合わせて使用することが好ましい。また、一般式(R1)で表される化合物以外の還元剤と組み合わせて使用することができる。一般式(R1)で表される化合物と組み合わせて使用できる好ましい還元剤は、後述の一般式(R)及び/又は一般式(R2)で表される還元剤である。本発明では、少なくとも、一般式(R2)で表される化合物及び一般式(R1)で表される化合物の中から1種を使用すればよい。
【0034】
一般式(R1)で表される化合物と併用する場合、一般式(R2)で表される化合物に対する一般式(R1)で表される化合物の質量比率(R1:R2)は、1:20〜20:1好ましく、より好ましくは、1:10〜10:1である。
【0035】
一般式(R1)及び/又は一般式(R2)で表される化合物と、後述の一般式(R)で表される化合物とを組み合わせて使用する場合、一般式(R1)及び/又は一般式(R2)で表される化合物に対する一般式(R)で表される化合物の質量比率は、1:20〜20:1であることが好ましく、より好ましくは、1:10〜10:1である。
【0036】
以下に、本発明における一般式(R1)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0037】
【化6】

【0038】
【化7】

【0039】
【化8】

【0040】
【化9】

【0041】
【化10】

【0042】
【化11】

【0043】
【化12】

【0044】
一般式(R2)において、R1、R1′、R2、R2′、XおよびX′は、一般式(R1)と同義の基を表す。
【0045】
3′は、炭素数2から20のアルケニル基又は不飽和結合を有するアルキル基を表す。アルキル基及びアルケニル基は、置換基を有していてもよいし、無置換でもよい。置換基の例としてはハロゲン原子、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、シクロアルキル基、アリール基、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、ヒドロキシ基、カルボキシ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、カルボニル基、ヒドロキシ基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基及びヘテロ環基などがあげられる。
【0046】
不飽和結合として好ましくは、炭素−炭素不飽和結合または炭素−窒素不飽和結合であり、より好ましくは炭素−炭素不飽和結合を有する基である。
不飽和結合を有するアルキル基は、具体的には炭素−炭素二重結合、炭素−炭素三重結合、炭素−窒素二重結合、炭素−窒素三重結合のいずを有するアルキル基で、より好ましくは炭素−炭素二重結合を有するアルキル基である。
【0047】
これらの基は分子内に少なくとも1つ含まれる。これらの基は分子内に2つ以上置換していてもよく、その場合共役していても共役していなくてもよいが、共役していないことがより好ましい。
【0048】
上記一般式(R2)で表される化合物は、単独で使用することもできるが、現像性や色調を調整する目的で、一般式(R2)で表される化合物の2種以上を組み合わせて使用することが好ましい。また、一般式(R2)で表される化合物以外の還元剤と組み合わせて使用することができる。
【0049】
一般式(R2)で表される化合物と組み合わせて使用できる好ましい還元剤は、前述の一般式(R1)で表される化合物、及び後述の一般式(R)で表される化合物である。
一般式(R1)で表される化合物と一般式(R2)で表される化合物との比率(R1:R2)は、一般式(R1)の説明で記載した値と同様である。
【0050】
一般式(R1)及び/又は一般式(R2)で表される化合物と、一般式(R)で表される化合物とを組み合わせて使用する場合の比率は、一般式(R1)の説明で記載した値と同様である。
【0051】
以下に本発明における一般式(R2)で表される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0052】
【化13】

【0053】
【化14】

【0054】
【化15】

【0055】
【化16】

【0056】
【化17】

【0057】
本発明において、一般式(R1)及び(R2)で表される化合物と併用できる還元剤としては、フェノール性水酸基のオルト位に置換基を有するいわゆるヒンダードフェノール系還元剤あるいはビスフェノール系還元剤が好ましく、下記一般式(R)で表される化合物がより好ましい。
【0058】
【化18】

【0059】
式中、R11およびR11′は、各々独立に炭素数1〜20のアルキル基を表す。R12およびR12′は、各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な置換基を表す。Lは、−S−基または−CHR13−基を表す。R13は、水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表す。X1およびX1′は、各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。
【0060】
一般式(R)において、R11およびR11′は各々独立に置換または無置換の炭素数1〜20のアルキル基であり、アルキル基の置換基は特に限定されることはないが、好ましくは、アリール基、ヒドロキシ基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、アシル基、カルバモイル基、エステル基、ウレイド基、ウレタン基、ハロゲン原子等があげられる。
【0061】
12およびR12′は各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な置換基であり、X1およびX1′も各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。それぞれベンゼン環に置換可能な基としては、好ましくはアルキル基、アリール基、ハロゲン原子、アルコキシ基、アシルアミノ基があげられる。
【0062】
Lは−S−基または−CHR13−基を表す。R13は水素原子または炭素数1〜20のアルキル基を表し、アルキル基は置換基を有していてもよい。R13の無置換のアルキル基の具体例はメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘプチル基、ウンデシル基、イソプロピル基、1−エチルペンチル基、2,4,4−トリメチルペンチル基などがあげられる。アルキル基の置換基の例はR11の置換基と同様で、ハロゲン原子、アルコキシ基、アルキルチオ基、アリールオキシ基、アリールチオ基、アシルアミノ基、スルホンアミド基、スルホニル基、ホスホリル基、オキシカルボニル基、カルバモイル基、スルファモイル基などがあげられる。
【0063】
11およびR11′として好ましくは炭素数3〜15の2級または3級のアルキル基であり、具体的にはイソプロピル基、イソブチル基、t−ブチル基、t−アミル基、t−オクチル基、シクロヘキシル基、シクロペンチル基、1−メチルシクロヘキシル基、1−メチルシクロプロピル基などがあげられる。R11およびR11′としてより好ましくは炭素数4〜12の3級アルキル基で、その中でもt−ブチル基、t−アミル基、1−メチルシクロヘキシル基が更に好ましく、t−ブチル基が最も好ましい。
【0064】
12およびR12′として好ましくは炭素数1〜20のアルキル基であり、具体的にはメチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、t−アミル基、シクロヘキシル基、1−メチルシクロヘキシル基、ベンジル基、メトキシメチル基、メトキシエチル基などがあげられる。より好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、t−ブチル基である。
【0065】
1およびX1′は、好ましくは水素原子、ハロゲン原子、アルキル基で、より好ましくは水素原子である。
【0066】
Lは好ましくは−CHR13−基である。
【0067】
13として好ましくは水素原子または炭素数1〜15のアルキル基であり、アルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、2,4,4−トリメチルペンチル基が好ましい。R13として特に好ましいのは水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基またはイソプロピル基である。
【0068】
13が水素原子である場合、R12およびR12′は好ましくは炭素数2〜5のアルキル基であり、エチル基、プロピル基がより好ましく、エチル基が最も好ましい。
【0069】
13が炭素数1〜8の1級または2級のアルキル基である場合、R12およびR12′はメチル基が好ましい。R13の炭素数1〜8の1級または2級のアルキル基としてはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基がより好ましく、メチル基、エチル基、プロピル基が更に好ましい。
【0070】
11、R11′、R12およびR12′がいずれもメチル基である場合には、R13は2級のアルキル基であることが好ましい。この場合R13の2級アルキル基としてはイソプロピル基、イソブチル基、1−エチルペンチル基が好ましく、イソプロピル基がより好ましい。
【0071】
上記還元剤はR11、R11′、R12、R12′およびR13の組み合わせにより、熱現像性、現像銀色調などが異なる。2種以上の還元剤を組み合わせることでこれらを調整することができるため、目的によっては2種以上を組み合わせて使用することが好ましい。
【0072】
以下に本発明の一般式(R)で表される化合物の具体例を示すが、本発明では、一般式(R1)及び(R2)で表される化合物と併用できる還元剤は、これらに限定されるものではない。
【0073】
【化19】

【0074】
【化20】

【0075】
本発明において還元剤の添加量は0.1〜3.0g/m2であることが好ましく、より好ましくは0.2〜1.5g/m2で、さらに好ましくは0.3〜1.0g/m2である。画像形成層を有する面の銀1モルに対しては5〜50モル%含まれることが好ましく、より好ましくは8〜30モル%であり、10〜20モル%で含まれることがさらに好ましい。還元剤は画像形成層に含有させることが好ましい。
【0076】
複数種の還元剤を併用する場合は、これらの合計添加量が上記範囲内にあることが好ましい。
【0077】
還元剤は、支持体に対して画像形成層面のいかなる層に添加しても良いが、画像形成層又はそれに隣接する層が好ましく、画像形成層がより好ましい。
【0078】
還元剤は溶液形態、乳化分散形態、固体微粒子分散物形態など、いかなる方法で塗布液に含有せしめ、感光材料に含有させてもよい。
【0079】
よく知られている乳化分散法としては、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどのオイル、酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化分散物を作製する方法が挙げられる。
【0080】
特に、塗布溶媒あるいは塗布溶媒に混和し得る有機溶剤に溶解して添加するのが好ましい。
【0081】
本発明において好ましく用いられる銀塩光熱ドライイメージング材料において、前記一般式(1)〜(3)で表される化合物の少なくとも1種を含有することが好ましい。本発明に係る化合物を含有せしめることにより、高感度、高Dmaxで、かつ硬調な階調を実現すると共に、黒ポツ耐性を有し保存安定性に優れた銀塩光熱ドライイメージング材料を得ることができる。
【0082】
一般式(1)〜(3)で表される化合物について以下詳細に述べるが、まず本発明でいう電子供与性基及び電子吸引性基について説明をする。本発明でいう電子供与性基とは、ハメットの置換基定数σpが負の値を取る置換基のことであり、電子供与性基としては、例えば、ヒドロキシル基(又はその塩)、アルコキシ基、アリールオキシ基、ヘテロ環オキシ基、アミノ基、アルキルアミノ基、アリールアミノ基、ヘテロ環アミノ基、σpが負の値を取るヘテロ環基又はこれらの電子供与性基で置換されたフェニル基等が挙げられる。本発明でいう電子吸引性基とは、ハメットの置換基定数σpが正の値を取る置換基のことであり、電子吸引性基としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、アルケニル基、アルキニル基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルバモイル基、カルボンアミド基、スルファモイル基、スルホンアミド基、トリフルオロメチル基、トリクロロメチル基、ホスホリル基、カルボキシ基(又はその塩)、スルホ基(又はその塩)、イミノ基、σpが正の値を取るヘテロ環基又はこれらの電子吸引性基で置換されたフェニル基等が挙げられる。ハメット則は、ベンゼン誘導体の反応又は平衡に及ぼす置換基の影響を定量的に論じるために1935年に、L.P.Hammetにより提唱された経験則であるが、これは今日広く妥当性が認められている。ハメット則により求められた置換基定数にはσp値とσm値とがあり、これらの値は多くの一般的な成書に記載があり、「Lange’s Handbook of Chemistry;J.A.Dean著」第12販、1979年(Mc Graw−Hill)や「化学の領域増刊」、第122号、第96〜103頁、1979年(南江堂)、Chemical Reviews、第91巻、第165〜195頁、1991年に詳しく述べられている。本発明における電子吸引性基及び電子供与性基は、σp値により規定しているが、上記の成書に記載の文献既知の値がある置換基にのみ限定されるものではない。
【0083】
一般式(1)で表される化合物について説明する。式中、X11は電子供与性のヘテロ環基、シクロアルキルオキシ基、シクロアルキルチオ基、シクロアルキルアミノ基又はシクロアルケニル基を表す。電子供与性のヘテロ環の代表例としては、「Substituent Constants for Correlation Analysis in Chemistry and Biology;Corwin Hansch and Albert Leo著」の第66〜339頁に記載のσpが負のヘテロ環であり、ヘテロ環の具体的な例としてはピペリジニル基、ピロリジニル基、モルフォリノ基、ピペラジニル基、3−チエニル基、2−フリル基、3−フリル基、2−ピロロ基等が挙げられる。好ましくは3−チエニル基、2−フリル基又は3−フリル基である。これらのヘテロ環は、σpが0又は正にならない範囲で任意の置換基を有しても良い。
【0084】
また、シクロアルキルオキシ基、シクロアルキルチオ基又はシクロアルキルアミノ基の具体的な例としては、シクロプロピルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、シクロプロピルチオ基、シクロペンチルチオ基、シクロヘキシルチオ基、シクロヘプチルチオ基、シクロプロピルメチルアミノ基、シクロペンチルメチルアミノ基、シクロヘキシルメチルアミノ基、シクロヘプチルメチルアミノ基等が挙げられる。好ましくはシクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロペンチルチオ基及びシクロヘキシルチオ基である。シクロアルケニル基の具体的な例としては、シクロプロぺニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基、シクロヘキセニル基及びシクロヘプテニル基等が挙げられる。好ましくは、シクロペンテニル基又はシクロヘキセニル基である。
【0085】
11、R12及びR13は、各々水素原子又は一価の置換基を表す。一価の置換基としては、例えばアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、複素環基、4級化された窒素原子を含むヘテロ環基(例えばピリジニウム基)、ヒドロキシ基、アルコキシ基(例えばエチレンオキシ基もしくはプロピレンオキシ基単位を繰り返し含む基を含む)、アリールオキシ基、アシルオキシ基、アシル基、アルコキシカルボニル基、アリールオキシカルボニル基、カルバモイル基、ウレタン基、カルボキシル基、イミド基、アミノ基、カルボンアミド基、スルホンアミド基、ウレイド基、チオウレイド基、スルファモイルアミノ基、セミカルバジド基、チオセミカルバジド基、ヒドラジノ基、4級のアンモニオ基、(アルキル、アリール、又はヘテロ環)チオ基、メルカプト基、(アルキル又はアリール)スルホニル基、(アルキル又はアリール)スルフィニル基、スルホ基、スルファモイル基、アシルスルファモイル基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルウレイド基、(アルキルもしくはアリール)スルホニルカルバモイル基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、リン酸アミド基などが挙げられる。
【0086】
11は好ましくは電子吸引性基であり、さらに好ましくはシアノ基である。また、R12が水素原子、R13が電子供与性基であることが好ましい。最も好ましくは、R11がシアノ基、R12が水素原子、R13がヒドロキシル基である。
【0087】
以下、一般式(1)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に列挙する化合物において、ケト−エノール型互変異性体又はシス−トランス型幾何異性体が存在する場合には、その両方を表すものとする。
【0088】
【化21】

【0089】
【化22】

【0090】
【化23】

【0091】
【化24】

【0092】
【化25】

【0093】
【化26】

【0094】
次に、一般式(2)で表される化合物について説明する。式中、R21はアルキル基を表し、R22及びR23は水素原子または一価の置換基を表し、X21は電子吸引性基を表し、L21は炭素芳香族環基を表し、n2は0又は1を表す。R21で表されるアルキル基の具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、へプチル基、オクチル基等が挙げられる。好ましくはメチル基、エチル基又はプロピル基である。R22及びR23が一価の置換基のとき、具体的な例としては一般式(1)におけるR11、R12、R13と同様の置換基が挙げられる。X21で表される電子吸引性基としては一般式(1)におけるX11と同様の電子吸引性基が挙げられ、好ましくはシアノ基である。L21で表される炭素芳香族環残基の具体的な例としては、フェニレン基、ナフチレン基等が挙げられる。フェニレン基、ナフチレン基はさらにアルキル基が置換してもよい。さらには、R22が水素原子、R23が電子供与性基であることが好ましい。最も好ましくは、X21がシアノ基、R22が水素原子、R23がヒドロキシル基である。
【0095】
以下に、一般式(2)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に列挙する化合物において、ケト−エノール型互変異性体又はシス−トランス型幾何異性体が存在する場合には、その両方を表すものとする。
【0096】
【化27】

【0097】
【化28】

【0098】
次に、一般式(3)で表される化合物について説明する。式中、X31は電子吸引性のヘテロ環基、ハロゲン原子又はハロアルキル基を表す。電子吸引性のヘテロ環基の代表例としては、「Substituent Constants for Correlation Analysis in Chemistry and Biology;Corwin Hansch and Albert Leo著」の第66〜339頁に記載のσpが正のヘテロ環基であり、具体的な例としては、2−ピリジル基、2−ピリミジル基、2−ピラジル基、2−キナゾリル基、2−ベンゾチアゾリル基、2−ベンゾオキサゾリル基等が挙げられる。これらの電子吸引性のヘテロ環基は、σpが0又は負にならない範囲で任意の置換基を有しても良い。電子吸引性のヘテロ環基の好ましい例は、2−ピリジル基、2−ピリミジル基又は2−ピラジル基である。ハロゲン原子としては、具体的にはフッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子等が挙げられる。ハロゲン原子の好ましい例は、塩素原子又は臭素原子である。ハロアルキル基としては、モノクロロメチル基、ジクロロメチル基、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基、トリフルオロメチル基、1,2−ジクロロエチル基、ペンタフルオロエチル基等が挙げられる。ハロアルキル基として好ましくは、トリクロロメチル基、トリブロモメチル基又はトリフルオロメチル基である。
【0099】
以下に、一般式(3)で表される化合物の具体例を挙げるが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、以下に列挙する化合物において、ケト−エノール型互変異性体又はシス−トランス型幾何異性体が存在する場合には、その両方を表すものとする。
【0100】
【化29】

【0101】
本発明に係る一般式(1)〜(3)で表される化合物は、公知の方法により容易に合成することができ、また薬品メーカーから直接購入することが可能な化合物も存在する。
【0102】
一般式(1)〜(3)で表される化合物の添加層は、ハロゲン化銀乳剤を含む感光層及び/又は感光層に隣接した層であることが好ましい。また、本発明に係る化合物の添加量は、ハロゲン化銀粒子の粒径、ハロゲン組成、化学増感の程度、抑制剤の種類等により最適量が異なり、一様ではないが、概ねハロゲン化銀1モル当たり10-6モル〜10-1モル程度、特には10-5モル〜10-2モルの範囲が好ましい。
【0103】
本発明に係る一般式(1)〜(3)で表される化合物は、適当な有機溶媒、例えばアルコール類(メタノール、エタノール、プロパノール、フッ素化アルコール)、ケトン類(アセトン、メチルエチルケトン)、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、メチルセルソルブなどに溶解して用いることができる。また、既に良く知られている乳化分散法によっても組み入れることができる。例えば、ジブチルフタレート、トリクレジルフォスフェート、グリセリルトリアセテートあるいはジエチルフタレートなどの高沸点有機溶媒及び酢酸エチルやシクロヘキサノンなどの補助溶媒を用いて溶解し、機械的に乳化して乳化分散物を作製し、所望の構成層に添加することができる。また、固体分散法として知られている方法、例えば、本発明の一般式(1)〜(3)で表される化合物の粉末を、例えばボールミル、コロイドミル、あるいは超音波分散機等の分散手段を用いて水系微粒子分散物として、任意に添加することもできる。
【0104】
本発明の銀塩光熱ドライイメージング材料の120℃におけるにおい強度は、−3〜1、好ましくは−2.5〜0.5、更に好ましくは−2.5〜0である。本発明において、銀塩光熱ドライイメージング材料から発生するにおい強度は、以下の方法によって測定した値として定義される。
【0105】
<試料の調製>
銀塩光熱ドライイメージング材料を密閉包装している包材から室温(25℃)で取り出して直ちに4cm×4cmの大きさに裁断し、サンプルバッグ(ポリエチレンテレフタレート製:容量2リットル)に封入後窒素ガスを充填する。窒素ガスを充填したサンプルバッグをホットプレートにて120℃で4分間加熱を行う。
【0106】
<におい強度の測定>
におい識別装置FF−1((株)島津製作所製:カーボン系捕集管による昇温熱脱離濃縮方式、酸化物半導体センサ、6センサ)でサンプルバッグ内の臭気を捕集し、におい強度(SC1軸の数値)を測定する。測定条件を次に示す。
恒温槽温度:60℃定常持ガス流量:40ml/min
サンプリング流量:165ml/min
サンプリング時間:18s (捕集管温度 40℃)
ドライパージ流量:500ml/min
ドライパージ時間:90s (捕集管温度 40℃)
デソープション流量:20ml/min
デソープション時間:120s (捕集管温度 220℃)
クリーニング流量:150ml/min
クリーニング時間:60s (捕集管温度 250℃)
<におい強度の校正>
上記測定条件で得られるにおい強度SC1について、下記の方法により校正し、常に同じものさしで比較する事ができる。標準データは、5ppmのトルエンを用い、サンプルリング時間を3秒、12秒、48秒と濃縮度を変えて3点測定する。これらのSC1値をそれぞれ−1.0、0.0、1.8とし、FF−1の校正を行なう。5ppmのトルエンは市販のものが使用できる。フィルム試料を測定するたびに、上記の方法で校正することにより、センサの経時劣化を補正した、再現性の良いデータが得られる。この測定は、FF−1の校正シーケンスという自動測定のモードを選択し、FF−1に組み込まれている、ソフトを立ち上げることにより、自動的に計算させることができる。
【0107】
本発明において銀塩光熱ドライイメージング材料から発生するにおい強度を制御する方法については特に限定は無いが、例えば
1.銀塩光熱ドライイメージング材料を製造する際に、有機溶剤およびにおいを発生する化合物を極力使用しない、
2.有機溶剤を使用する場合には低沸点の有機溶剤を使用する、
3.銀塩光熱ドライイメージング材料の塗布乾燥時に乾燥能力を強化する(乾燥温度を上げる、乾燥時間を長くする等)、
4.銀塩光熱ドライイメージング材料の塗布乾燥後更に加熱を加える等の方法を挙げることができる。これらの方法は単独で用いてもよいし、適宜組み合わせて用いてもよい。におい強度の発生源は、有機溶剤のみならず有機溶剤以外の他の添加剤からの揮散成分も含まれ、有機溶剤量とにおい強度とは必ずしも対応しない。におい強度を増加させる成分は、メルカプト系化合物、比較的高分子の化合物等が多く、熱現像時に高温でいくつかの成分が反応して生成する物質も含まれる。これらの、有機溶剤とは異なる成分であって、臭気強度測定器のセンサーに検出される成分が、ある範囲内に入っていることが写真性能上良好であることは予想外であった。
【0108】
本発明の銀塩光熱ドライイメージング材料には、上記化合物の他に米国特許第5,545,505号に記載のヒドロキシルアミン化合物、アルカノールアミン化合物やフタル酸アンモニウム化合物、米国特許第5,545,507号に記載のヒドロキサム酸化合物、米国特許第5,558,983号に記載のN−アシル−ヒドラジン化合物、米国特許第5,937,449号に記載のベンズヒドロールやジフェニルフォスフィンやジアルキルピペリジンやアルキル−β−ケトエステルなどの水素原子ドナー化合物を適宜添加することができる。これらの化合物を含有させることにより、Dmaxをさらに向上できると共に、ヒドラジン誘導体を用いて形成した画像において生じやすい黒ポツの発生を抑制することができ、この結果として著しい画質の改良を果たすことができる。
【0109】
また、本発明の銀塩光熱ドライイメージング材料には、カブリを低減する目的で、例えば米国特許第3,874,946号、同第4,756,999号、同第5,340,712号、欧州特許第605,981A1号、同第622,666A1号、同第631,176A1号、特公昭54−165号、特開平7−2781号、同9−160164号、同9−244178号、同9−258367号、同9−265150号、同9−281640号、同9−319022号公報等に記載のポリハロゲン化合物を好ましく用いることができる。これらの中でも、下記一般式(B)で示される化合物を本発明に係る化合物と共に用いることが、特に好ましい。
【0110】
【化30】

【0111】
式中、Qは脂肪族炭化水素基、芳香族炭素環基またはヘテロ環基を表す。X1及びX2は、それぞれハロゲン原子を表す。Yは、カルボニル基またはスルホニル基を表す。Aは水素原子、ハロゲン原子又は電子吸引性基を表す。nは、0又は1を表す。
【0112】
以下に一般式(B)で示される化合物の具体例をあげるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0113】
【化31】

【0114】
【化32】

【0115】
【化33】

【0116】
【化34】

【0117】
【化35】

【0118】
【化36】

【0119】
一般式(B)で表される化合物は、当業者に周知の通常の方法により合成することができる。
【0120】
これらの一般式(B)で表される化合物の添加量に特に制限はないが、10-4〜1モル/Agモルが好ましく、特に10-3〜0.3モル/Agモルが好ましい。
【0121】
続いて、本発明の銀塩光熱ドライイメージング材料について説明する。
【0122】
本発明の銀塩光熱ドライイメージング材料に用いられる有機銀塩は、還元可能な銀源であり、還元可能な銀イオン源を含有する有機酸及びヘテロ有機酸の銀塩、その中でも特に長鎖(炭素原子数10〜30、好ましくは15〜25)の脂肪族カルボン酸及び含窒素複素環が好ましい。配位子が、銀イオンに対する総安定定数として4.0〜10.0の値を有する有機又は無機の銀錯体も本発明においては有用である。好適な銀塩の例は、リサーチ・ディスクロージャー(以降、単にRDとも言う)No.17029及び同29963に記載されており、以下のものを挙げることができる:有機酸の銀塩(例えば、没食子酸、シュウ酸、ベヘン酸、アラキジン酸、ステアリン酸、パルミチン酸、ラウリン酸等の銀塩);銀のカルボキシアルキルチオ尿素塩(例えば、1−(3−カルボキシプロピル)チオ尿素、1−(3−カルボキシプロピル)−3,3−ジメチルチオ尿素等);アルデヒドとヒドロキシ置換芳香族カルボン酸とのポリマー反応生成物の銀錯体(例えば、アルデヒド類(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ブチルアルデヒド等)とヒドロキシ置換酸類(例えば、サリチル酸、安息香酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、5,5−チオジサリチル酸)とのポリマー反応生成物の銀錯体);チオン類の銀塩又は錯体(例えば、3−(2−カルボキシエチル)−4−ヒドロキシメチル−4−(チアゾリン−2−チオン、及び3−カルボキシメチル−4−チアゾリン−2−チオン));イミダゾール、ピラゾール、ウラゾール、1,2,4−チアゾール及び1H−テトラゾール、3−アミノ−5−ベンジルチオ−1,2,4−トリアゾール及びベンゾトリアゾールから選択される窒素酸と銀との錯体又は塩;サッカリン、5−クロロサリチルアルドキシム等の銀塩;及びメルカプチド類の銀塩等である。好ましい銀源は、ベヘン酸銀、アラキジン酸銀、ステアリン酸銀及びそれらの混合物である。
【0123】
有機銀塩化合物は、水溶性銀化合物と銀と錯形成する化合物を混合することにより得られるが、正混合法、逆混合法、同時混合法、特開平9−127643号に記載されている様なコントロールドダブルジェット法等が好ましく用いられる。例えば、有機酸にアルカリ金属塩(例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなど)を加えて、有機酸アルカリ金属塩ソープ(例えば、ベヘン酸ナトリウム、アラキジン酸ナトリウムなど)を作製した後に、コントロールドダブルジェット法により、前記ソープと硝酸銀などを添加して有機銀塩の結晶を作製する。その際には、以下に述べる感光性ハロゲン化銀粒子(以降、単にハロゲン化銀粒子という)を混在させてもよい。
【0124】
本発明におけるハロゲン化銀粒子は、光センサーとして機能するものである。本発明においては、画像形成後の感光材料の白濁化の抑制、及び良好な画質を得るため平均粒子サイズは小さい方が好ましく、平均粒子サイズが0.1μm以下、より好ましくは0.01μm〜0.1μm、特に好ましくは0.02μm〜0.08μmである。ここでいう粒子サイズ(粒径)とは、ハロゲン化銀粒子が立方体或いは八面体のいわゆる正常晶である場合には、ハロゲン化銀粒子の稜の長さをいう。又、正常晶でない場合、例えば球状、棒状、或いは平板状の粒子の場合には、ハロゲン化銀粒子の体積と同等な球を想定したときの球の直径をいう。また、ハロゲン化銀粒子は単分散であることが好ましい。ここでいう単分散とは、下記式で求められる単分散度が40%以下をいう。更に好ましくは30%以下であり、特に好ましくは0.1%以上20%以下となる粒子である。
【0125】
単分散度=(粒径の標準偏差)/(粒径の平均値)×100
本発明においては、ハロゲン化銀粒子が平均粒径0.1μm以下でかつ単分散粒子であることが好ましく、この範囲にすることで画像の粒状度も向上する。
【0126】
ハロゲン化銀粒子の形状については、特に制限はないが、ミラー指数〔100〕面の占める割合が高いことが好ましく、この割合が50%以上、更には70%以上、特には80%以上であることが好ましい。ミラー指数〔100〕面の比率は、増感色素の吸着における〔111〕面と〔100〕面との吸着依存性を利用したT.Tani,J.Imaging Sci.,29,165(1985)に記載の方法により求めることができる。
【0127】
また、本発明における好ましい他のハロゲン化銀粒子の形状は、平板粒子である。ここでいう平板粒子とは、投影面積の平方根を粒径rμmとし、垂直方向の厚みをhμmとした場合のアスペクト比=r/hが3以上のものをいう。その中でも好ましくは、アスペクト比が3〜50である。また平板粒子における粒径は、0.1μm以下であることが好ましく、さらに0.01μm〜0.08μmが好ましい。これら平板粒子は、米国特許第5,264,337号、同第5,314,798号、同第5,320,958号等に記載の方法により、容易に得ることができる。本発明においては、該平板状粒子を用いることにより、さらに画像の鮮鋭度も向上することができる。
【0128】
ハロゲン化銀粒子のハロゲン組成は、特に制限はなく、塩化銀、塩臭化銀、塩沃臭化銀、臭化銀、沃臭化銀、沃化銀のいずれであってもよい。本発明に用いられる写真乳剤は、P.Glafkides著Chimie et Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Duffin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Focal Press刊、1966年)、V.L.Zelikman et al著Making and Coating Photographic Emulsion(The Focal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いて調製することができる。
【0129】
本発明に用いられるハロゲン化銀には、相反則不軌特性改良や階調調整のために、元素周期律表の第6族から第10族に属する金属のイオン又は錯体イオンを含有せしめることが好ましい。上記の金属としては、W、Fe、Co、Ni、Cu、Ru、Rh、Pd、Re、Os、Ir、Pt、Auが好ましい。
【0130】
ハロゲン化銀粒子は、ヌードル法、フロキュレーション法等、当業界で知られている方法により不要の塩類を除去(脱塩)することができるが、本発明においては脱塩は行っても行わなくてもいずれでもよい。
【0131】
本発明におけるハロゲン化銀粒子は、化学増感が施されていることが好ましい。好ましい化学増感法としては、当業界でよく知られているような硫黄増感法、セレン増感法、テルル増感法、金化合物や白金、パラジウム、イリジウム化合物等の貴金属増感法や還元増感法等を用いることができる。
【0132】
本発明においては、感光材料の失透を防ぐため、ハロゲン化銀及び有機銀塩の総量は、銀量に換算して1m2当たり0.5g以上2.2g以下であることが好ましい。この範囲に銀量を設定することにより硬調な画像を得ることができる。また、銀総量に対するハロゲン化銀量の比率は、質量比で50%以下、好ましくは25%以下、更に好ましくは0.1〜15%である。
【0133】
本発明の銀塩光熱ドライイメージング材料に好適なバインダーは、透明又は半透明で、一般に無色である、天然ポリマー合成樹脂やポリマー及びコポリマー、その他フィルムを形成する媒体、例えば:ゼラチン、アラビアゴム、ポリ(ビニルアルコール)、ヒドロキシエチルセルロース、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリ(ビニルピロリドン)、カゼイン、デンプン、ポリ(アクリル酸)、ポリ(メチルメタクリル酸)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(メタクリル酸)、コポリ(スチレン−無水マレイン酸)、コポリ(スチレン−アクリロニトリル)、コポリ(スチレン−ブタジエン)、ポリ(ビニルアセタール)類(例えば、ポリ(ビニルホルマール)及びポリ(ビニルブチラール))、ポリ(エステル)類、ポリ(ウレタン)類、フェノキシ樹脂、ポリ(塩化ビニリデン)、ポリ(エポキシド)類、ポリ(カーボネート)類、ポリ(ビニルアセテート)、セルロースエステル類、ポリ(アミド)類がある。バインダーとしては、親水性でも疎水性でもよいが、本発明においては、熱現像処理後のカブリを低減させるためには、疎水性透明バインダーを使用することが好ましい。好ましいバインダーとしては、例えば、ポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリアクリル酸、ポリウレタンなどが挙げられる。その中でもポリビニルブチラール、セルロースアセテート、セルロースアセテートブチレート及びポリエステルが、特に好ましく用いられる。
【0134】
感光材料の表面を保護したり擦り傷を防止するために、感光層の外側に非感光層を塗設することが好ましい。これらの非感光層に用いられるバインダーは、感光層に用いられるバインダーと同じ種類でも異なった種類でもよい。
【0135】
本発明においては、熱現像速度を高めるため感光層のバインダー量が1.5〜10g/m2であることが好ましい。さらに好ましくは、1.7〜8g/m2である。1.5g/m2未満では、未露光部の濃度(Dmin)が大幅に上昇し、実用上障害を起こす場合がある。
【0136】
本発明においては、感光層側にマット剤を含有せしめることが好ましく、熱現像処理後の画像の傷つき防止のため、感光材料の表面に配するマット剤量は、感光層側の全バインダーに対し質量比で0.5〜30%含有することが好ましい。また、支持体をはさみ感光層の反対側に非感光層を設ける場合には、該非感光層側の少なくとも1層中にマット剤を含有することが、すべり性や指紋付着防止のためにも好ましく、そのマット剤量は該非感光層の全バインダーに対し、質量比で0.5〜40%含有せしめることが好ましい。マット剤の形状は、定形、不定形どちらでも良いが、好ましくは定形で、特には球形が好ましい。
【0137】
本発明の銀塩光熱ドライイメージング材料は、支持体上に少なくとも一層の感光層を有している。支持体上に感光層のみを形成しても良いが、感光層の上に少なくとも1層の非感光層を形成することが好ましい。また、感光層を通過する光の量又は波長分布を制御するため、感光層と同じ側にフィルター染料層及び/又は反対側にアンチハレーション染料層、いわゆるバッキング層を形成しても良いし、あるいは感光層に直接染料又は顔料を含ませても良い。
【0138】
これら非感光性層には、前記のバインダーやマット剤の他にポリシロキサン化合物、ワックス類や流動パラフィンのようなスベリ剤を含有してもよい。
【0139】
また、本発明の銀塩光熱ドライイメージング材料には、塗布助剤として各種の界面活性剤が用いりことができる。その中でも特にフッ素系界面活性剤が、帯電特性を改良したり、斑点状の塗布故障を防ぐために好ましく用いられる。
【0140】
感光層は、複数層にしても良く、また階調を整えるため高感度層/低感度層又は低感度層/高感度層等の複数の層構成をとっても良い。
【0141】
本発明に用いられる好適な色調剤の例は、RD17029号に開示されている。
【0142】
本発明の銀塩光熱ドライイメージング材料には、現像を抑制あるいは促進させ現像強度を制御するため、分光増感効率を向上させるためあるいは現像処理前後における保存安定性を向上させるため、メルカプト化合物、ジスルフィド化合物、チオン化合物等の抑制剤を含有させることができる。
【0143】
また、本発明の銀塩光熱ドライイメージング材料には、例えば界面活性剤、酸化防止剤、安定化剤、可塑剤、紫外線吸収剤、被覆助剤等を用いても良い。これらの添加剤及び上述したその他の添加剤はRD17029(1978年6月p.9〜15)に記載されている化合物を好ましく用いることができる。
【0144】
上述の各種添加剤は、感光層、非感光層又はその他の形成層のいずれに添加しても良い。
【0145】
本発明で用いられる支持体は、現像処理後に所定の光学濃度を得るため、及び現像処理後の画像の変形を防ぐためプラスチックフィルム(例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリカーボネート、ポリイミド、ナイロン、セルローストリアセテート、ポリエチレンナフタレート)であることが好ましい。
【0146】
その中でも好ましい支持体としては、ポリエチレンテレフタレート(以下PETと略す)及びシンジオタクチック構造を有するスチレン系重合体を含むプラスチック(以下SPSと略す)の支持体が挙げられる。支持体の厚みとしては50〜300μm程度、好ましくは70〜180μmである。
【0147】
また、熱処理したプラスチック支持体を用いることもできる。採用するプラスチックとしては、前述のプラスチックが挙げられる。支持体の熱処理とは、支持体を製膜後、感光層が塗布されるまでの間に、支持体のガラス転移点より30℃以上高い温度、好ましくは35℃以上高い温度で、更に好ましくは40℃以上高い温度で加熱することを指す。
【0148】
本発明においては、帯電性を改良するために金属酸化物及び/又は導電性ポリマーなどの導電性化合物を構成層中に含ませることができる。これらはいずれの層に含有させてもよいが、好ましくは下引層、バッキング層、感光層と下引の間の層などである。
【0149】
本発明の銀塩光熱ドライイメージング材料には、例えば特開昭63−159841号、同60−140335号、同63−231437号、同63−259651号、同63−304242号、同63−15245号、米国特許4,639,414号、同4,740,455号、同4,741,966号、同4,751,175号、同4,835,096号に記載された増感色素が使用できる。
【0150】
本発明に使用される有用な増感色素の具体例は、例えばRD17643IV−A項(1978年12月p.23)、同18431X項(1979年8月p.437)に記載もしくは引用された文献に記載されている。
【0151】
本発明においては、特に各種スキャナー光源の分光特性に適合した分光感度を有する増感色素を有利に選択することができる。例えばA)アルゴンレーザー光源に対しては、特開昭60−162247号、特開平2−48653号、米国特許第2,161,331号、西独特許第936,071号、特開平5−11389号等に記載のシンプルメロシアニン類、B)ヘリウム−ネオンレーザー光源に対しては、特開昭50−62425号、同54−18726号、同59−102229号等に記載の三核シアニン色素類、特開平7−287338号に記載のメロシアニン類、C)LED光源及び赤色半導体レーザーに対しては特公昭48−42172号、同51−9609号、同55−39818号、特開昭62−284343号、特開平2−105135号に記載されたチアカルボシアニン類、D)赤外半導体レーザー光源に対しては特開昭59−191032号、同60−80841号に記載されたトリカルボシアニン類、特開昭59−192242号、特開平3−67242号の一般式(IIIa)、一般式(IIIb)に記載された4−キノリン核を含有するジカルボシアニン類などが有利に選択される。
【0152】
これらの増感色素は単独に用いても、あるいはそれらの組合せを用いてもよく、増感色素の組合せでは、特に強色増感の目的でしばしば用いられる。増感色素とともに、それ自身分光増感作用をもたない色素あるいは可視光を実質的に吸収しない物質であって、強色増感を示す物質をハロゲン化銀乳剤中に含んでもよい。
【0153】
本発明の銀塩光熱ドライイメージング材料の露光は、Arレーザー(488nm)、He−Neレーザー(633nm)、赤色半導体レーザー(670nm)、赤外半導体レーザー(780nm、830nm)などのレーザー光源を用いて行うことが、1つの特徴であり、特に該レーザー光源の波長が700〜1000nmである赤外半導体レーザーが好ましい。
【0154】
本発明の銀塩光熱ドライイメージング材料には、ハレーション防止層として染料を含有する層を設ける事ができる。Arレーザー、He−Neレーザー、赤色半導体レーザー用には400nm〜750nmの範囲で、露光波長において少なくとも0.3以上、好ましくは0.8以上の吸収となるように染料を添加することが好ましい。赤外半導体レーザー用には750nm〜1500nmの範囲で、露光波長において少なくとも0.3以上、好ましくは0.8以上の吸収となるように染料を添加することが好ましい。染料は、1種でも数種を組み合わせても良い。該染料は、感光層と同じ側の支持体に近い染料層あるいは、感光層と反対側の染料層に添加することができる。
【0155】
本発明の銀塩光熱ドライイメージング材料は、いかなる方法で現像されても良いが、本発明においては、イメージワイズに露光した銀塩光熱ドライイメージング材料を昇温し、温度として80〜250℃で熱現像処理を行うことが1つの特徴であり、好ましくは100〜140℃である。現像時間としては1〜180秒が好ましく、10〜90秒が更に好ましい。
【実施例】
【0156】
以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明するが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0157】
実施例1
(下引済みPET支持体の作製)
市販の2軸延伸熱固定済みの厚さ100μmのPETフィルムの両面に8w/m2・分のコロナ放電処理を施し、一方の面に下記下引塗布液a−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設、乾燥させて下引層A−1とし、反対側の面には下記帯電防止加工用の下引塗布液b−1を乾燥膜厚0.8μmになるように塗設、乾燥させて帯電防止加工下引層B−1とした。
【0158】
《下引塗布液a−1》
ブチルアクリレート(30質量%)、t−ブチルアクリレート(20質量%)
、スチレン(25質量%)、2−ヒドロキシエチルアクリレート(25質量
%)の共重合体ラテックス液(固形分30%) 270g
(C−1) 0.6g
ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレンウレア) 0.8g
ポリスチレン微粒子(平均粒径3μm) 0.05g
コロイダルシリカ(平均粒径90μm) 0.1g
水で1リットルに仕上げる。
【0159】
《下引塗布液b−1》
SnO2/Sb(質量比9/1、平均粒径0.18μm)
200mg/m2になる量
ブチルアクリレート(30質量%)、スチレン(20質量%)、グリシジルアクリレー ト(40質量%)、の共重合体ラテックス液(固形分30%)
270g
(C−1) 0.6g
ヘキサメチレン−1,6−ビス(エチレンウレア) 0.8g
水で1リットルに仕上げる。
【0160】
引き続き、下引層A−1及び下引層B−1の上表面に、8w/m2・分のコロナ放電を施し、下引層A−1の上には、下記下引上層塗布液a−2を乾燥膜厚0.1μmになる様に塗設して下引上層A−2として、下引層B−1の上には下記下引上層塗布液b−2を乾燥膜厚0.8μmになる様に帯電防止機能をもつ下引上層B−2として塗設した。
【0161】
《下引上層塗布液a−2》
ゼラチン 0.4g/m2になる質量
(C−1) 0.2g
(C−2) 0.2g
(C−3) 0.1g
シリカ粒子(平均粒径3μm) 0.1g
水で1リットルに仕上げる。
【0162】
《下引上層塗布液b−2》
(C−4) 60g
(C−5)を成分とするラテックス液(固形分20%) 80g
硫酸アンモニウム 0.5g
(C−6) 12g
ポリエチレングリコール(重さ平均分子量600) 6g
水で1リットルに仕上げる。
【0163】
【化37】

【0164】
【化38】

【0165】
(支持体の熱処理)
上記下引済み支持体の下引乾燥工程において、支持体を140℃で加熱し、その後徐々に冷却した。
【0166】
(ハロゲン化銀乳剤Aの調製)
水900ml中にイナートゼラチン7.5g及び臭化カリウム10mgを溶解して温度35℃、pHを3.0に合わせた後、硝酸銀74gを含む水溶液370mlと(60/38/2)のモル比の塩化ナトリウムと臭化カリウムと沃化カリウム及び〔Ir(NO)Cl5〕塩を銀1モル当たり1×10-6モル、塩化ロジウム塩を銀1モル当たり1×10-6モルとを含む水溶液370mlを、pAg7.7に保ちながらコントロールドダブルジェット法で添加した。その後4−ヒドロキシ−6−メチル−1,3,3a,7−テトラザインデンを添加し、NaOHでpHを8、pAg6.5に調整することで還元増感を行い、平均粒子サイズ0.06μm、単分散度10%の投影直径面積の変動係数8%、〔100〕面比率87%の立方体ハロゲン化銀粒子を得た。このハロゲン化乳剤にゼラチン凝集剤を用いて凝集沈降させて脱塩処理を行いハロゲン化銀乳剤Aを得た。
【0167】
(ベヘン酸Na溶液の調製)
945mlの純水にベヘン酸32.4g、アラキジン酸9.9g、ステアリン酸5.6gを90℃で溶解した。次いで、高速で攪拌しながら1.5モル/Lの水酸化ナトリウム水溶液98mlを添加した。次に濃硝酸0.93mlを加えた後、55℃に冷却して30分攪拌させてベヘン酸Na溶液を得た。
【0168】
(ベヘン酸銀とハロゲン化銀乳剤Aのプレフォーム乳剤の調製)
上記ベヘン酸Na溶液に前記ハロゲン化銀乳剤Aを15.1g添加し、水酸化ナトリウム溶液でpH8.1に調整した後に1モル/Lの硝酸銀溶液147mlを7分間かけて加え、さらに20分攪拌し限外濾過により水溶性塩類を除去した。以上のようにして作製したベヘン酸銀は、平均粒子サイズ0.8μm、単分散度8%の粒子であった。上記分散物のフロックを形成後、水を取り除き、更に6回の水洗と水の除去を行った後乾燥させ、ベヘン酸銀とハロゲン化銀乳剤Aのプレフォーム乳剤を調製した。
【0169】
(感光性乳剤の調製)
できあがったプレフォーム乳剤を2分割し、その1部にポリビニルブチラール(平均分子量3000)のメチルエチルケトン溶液(17質量%)544gとトルエン107gを徐々に添加、混合した後に、0.5mmサイズZrO2のビーズミルを用いたメディア分散機で27.5MPaで30℃、10分間の分散を行い、感光性乳剤を調製した。
【0170】
前記下引き済み支持体上に以下の各層を両面同時塗布し、銀塩光熱ドライイメージング材料である試料1−1を作製した。尚、乾燥は60℃、15分間で行った。
【0171】
(バック面側塗布)
バック面層1:支持体のB−2層の上に以下の組成の液を塗布した。
【0172】
セルロースアセテートブチレート(10%メチルエチルケトン溶液)
15ml/m2
染料A 37mg/m2
マット剤:単分散度15%平均粒子サイズ8μm単分散シリカ
90mg/m2
817(CH2CH2O)12817 50mg/m2
919−C64−SO3Na 10mg/m2
(感光層面側塗布)
感光層1:支持体のA−2層の上に以下の組成の液を塗布銀量が2.4g/m2になる様に塗布した。
【0173】
感光性乳剤 240g
増感色素A(0.1%メタノール溶液) 1.7ml
ピリジニウムプロミドペルブロミド(6%メタノール溶液) 3ml
臭化カルシウム(0.1%メタノール溶液) 1.7ml
カブリ防止剤B−54(10%メタノール溶液) 1.2ml
2−(4−クロロベンゾイル)安息香酸(12%メタノール溶液)
9.2ml
2−メルカプトベンズイミダゾール(1%メタノール溶液) 11ml
比較化合物1 0.7g
フタラジン 0.6g
4−メチルフタル酸 0.25g
テトラクロロフタル酸 0.2g
平均粒径3μmの炭酸カルシウム 0.1g
還元剤−1:1,1−(2−ヒドロキシ−3,−5−ジメチルフェニル)−2−メチル プロパン(20%メタノール溶液) 20.5ml
イソシアネート化合物(モーベイ社製、Desmodur N3300)
0.5g
表面保護層1:以下の組成の液を前記感光層1の上に同時塗布した。
【0174】
アセトン 5ml/m2
メチルエチルケトン 21ml/m2
セルロースアセテートブチレート 2.3g/m2
メタノール 7ml/m2
フタラジン 250mg/m2
還元剤−1:1,1−(2−ヒドロキシ−3,−5−ジメチルフェニル)−2−メチル プロパン(20%メタノール溶液) 10ml/m2
マット剤:単分散度10%平均粒子サイズ4μm単分散シリカ
5mg/m2
CH2=CHSO2CH2CH2OCH2CH2SO2CH=CH2
35mg/m2
1225(CH2CH2O)101225 10mg/m2
817−C64−SO3Na 10mg/m2
次いで、試料1−1の感光層1における比較化合物1及び還元剤−1を表1に記載の様に変更した以外は同様にして試料1−2〜1−19を作製した。なお、それぞれの化合物は、比較化合物1あるいは還元剤−1と同質量添加した。
【0175】
【化39】

【0176】
以上の様にして得られた試料1−1〜1−19について、以下に示す熱現像処理及び各性能評価を行った。
【0177】
(露光及び熱現像処理)
各試料を780nmの半導体レーザーを搭載したイメージセッター機であるサイテックス社製Dolev 2dryを用いて300線の網点を用い、5%刻みで露光量を変化させるように網点露光し、120℃で25秒の熱現像処理を行った。その際、露光及び現像はすべて23℃、50%RHに調温調湿した部屋で行った。
【0178】
(写真性能の評価)
得られた熱現像済み試料の濃度を光学濃度計(コニカ社製:PDA−65)で測定し、濃度D−露光量LogEの特性曲線を作製した。特性曲線より、最大濃度(Dmax)及び感度(Dminより1.5高い濃度を与える露光量の逆数)を求めた。なお、感度は、試料1−1のそれを100としたときの相対感度で表した。また、特性曲線で濃度0.3と3.0の点を結ぶ直線の傾き(tanθ)を階調γとして測定した。
【0179】
(黒ポツの評価)
未露光の各試料について、上記と同様の熱現像処理を行った後、各熱現像済み試料を100倍のルーペを用いて目視評価を行い、下記の5段階にランク分けした。
【0180】
5:黒ポツの発生全くなし
4:黒ポツの発生が僅かにあるが実用上問題なし
3:実用上の下限レベル
2:実用上不可
1:視野中全体に黒ポツが発生し使用不可のレベル
なお、3〜5ランクを実用上使用可能レベルと判定した。
【0181】
(保存性の評価)
得られた試料は半切サイズに切断し、25℃50RH%の環境下で以下の包装材料に包装し、2週間常温下で保管した後、以下の評価を行った。
【0182】
(包装材料)
PET10μm/PE12μm/アルミ箔9μm/Ny15μm/カーボン3質量%を含むポリエチレン50μm
酸素透過率:0.02ml/atm・m2・25℃・day、
水分透過率:0.10g/atm・m2・25℃・day
尚、1atmは1.01325×105Paである。
【0183】
前記包装材料に包装し2週間保管した感光材料を開封した直後に、前記露光および熱現像を行い、濃度1.0における感度(露光レーザーエネルギーの逆数の対数)を求め、それぞれ製造直後に対する感度差(ΔS1.0)で示した。
【0184】
(画像保存性の評価)
感度測定の目的で熱現像された試料を、30℃、相対湿度70%の環境において1000Luxの蛍光灯下で24時間保存した後の画像の濃度評価を行なった。Dmin部の濃度増加量で評価した。
【0185】
(におい強度の評価)
におい識別装置FF−1((株)島津製作所製:カーボン系捕集管による昇温熱脱離濃縮方式、酸化物半導体センサ、6センサ)を用い、120℃におけるサンプルバッグ内の臭気を捕集し、におい強度(SC1軸の数値)を測定した。SC1軸の値で評価した。
【0186】
【表1】

【0187】
表1の結果から明らかなように、本発明の試料No.1−4〜1−19は感度、Dmax、階調、黒ポツ、試料保存性及び画像保存性、共に良好であり、優れた性能を有することが判る。
【0188】
実施例2
実施例1で作製した試料No.1−1〜1−19を熱現像部の前にプレヒート部を有する熱現像自現機を用いて、プレヒート部の設定温度を100℃にして熱現像処理する以外は実施例1と同様の評価を行った。その結果、実施例1の結果同様に、本発明試料No.1−4〜1−19は良好な結果を得た。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持体上に非感光性有機銀塩、該有機銀塩の還元剤、感光性ハロゲン化銀、硬調化剤およびバインダーを含有する画像形成層と該画像形成層を保護する非感光性層を各々少なくとも1層有する銀塩ドライイメージング材料において、前記還元剤が下記一般式(R1)または一般式(R2)で表される化合物であり、且つ前記硬調化剤が下記一般式(1)〜(3)で表される化合物であり、更に120℃における「におい強度」が−3以上1以下であることを特徴とする銀塩光熱ドライイメージング材料。
【化1】

(式中、R1およびR1′は、各々独立に炭素数1〜20のアルキル基を表す。R2およびR2′は、各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な置換基を表す。R3は、3ないし7員の炭素原子、酸素原子、窒素原子、硫黄原子及びリン原子から選ばれる原子により構成される環を形成する置換基を表す。XおよびX′は、各々独立に水素原子またはベンゼン環に置換可能な基を表す。)
【化2】

(式中、R1、R1′、R2、R2′、XおよびX′は、一般式(R1)と同義の基を表す。R3′は、アルケニル基又は不飽和結合を有するアルキル基を表す。)
【化3】

〔式中、R11、R12及びR13は各々水素原子又は一価の置換基を表し、X11は電子供与性のヘテロ環基、シクロアルキルオキシ基、シクロアルキルチオ基、シクロアルキルアミノ基又はシクロアルケニル基を表す。〕
【化4】

〔式中、R21はアルキル基を表し、R22及びR23は各々水素原子又は一価の置換基を表し、X21は電子吸引性基を表し、L21は芳香族炭素環基を表し、n2は0又は1を表す。〕
【化5】

〔式中、X31は電子吸引性のヘテロ環基、ハロゲン原子又はハロアルキル基を表し、R31又はR32のいずれか一方が水素原子であり、他方がヒドロキシル基を表す。〕
【請求項2】
請求項1に記載の銀塩光熱ドライイメージング材料を、熱現像自現機の熱現像部の前にプレヒート部を有し、該プレヒート部の温度が80〜120℃である熱現像機を用いて処理し、画像を形成することを特徴とする画像形成方法。