説明

銅とアルミニウムの分離方法

【課題】電力機器または電気器具の廃棄処理において分別されたアルムニウム片および銅片の混合物から、銅とアルミニウムを分離し、アルミニウムの混入率が1%未満の銅を得る、低コストの分離方法を提供する。
【解決手段】電力機器または電気機器の廃棄処理において分別されたアルミニウム片および銅片の混合物を選別筒に入れ、水などの液体を選別筒の接線方向から流入し、選別筒内に回転上昇流を生じさせ、アルミニウム片を選別筒の上部に押し上げ溢流させ、銅片を選別筒の底部に沈降させることを含む、銅とアルミニウムの分離方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、銅とアルミニウムの分離方法に関する。より詳細には、本発明は、電力機器または電気器具の廃棄処理において分別されたアルムニウム片および銅片の混合物から、銅とアルミニウムを低コストで分離する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
使用済みの電力機器(トランスやコンデンサなど)や電気機器(冷蔵庫、洗濯機、テレビジョン、掃除機、エアコン、電子レンジ、ワープロ、パソコンなど)を分解破砕し、PCBなどの有害な物質を抜き出し、再利用可能な材料を分別し資源として活用することが行われている。
例えば、特許文献1には、廃棄する家電製品やOA機器を熱分解炉に入れ、廃棄構成部材中の合成樹脂類を熱分解し分解ガスと溶融残渣および金属類との混合物に分離し、油化工程、破砕工程、選別工程で処理して、各種物質に分別する処理システムが開示されている。この処理システムでは、分別された金属類をまず磁選機に通して鉄類金属を除去している。そして、渦電流選別機により渦電流の反発力を利用してアルミニウム、銅を分別し、それぞれをホッパーで回収している。この渦電流によるアルミニウムと銅の分離効率は差ほど高くなく、銅側のホッパーにアルミニウムが1%以上混入してしまう。
【特許文献1】特開平6−226242号公報
【0003】
特許文献2には、電力用トランス或いはコンデンサなどの電力機器の構成材を分割破砕する工程と、分割破砕した破砕片からPCBに汚染された金属を他の構成材から分離して取り出す工程と、前記分離した金属を洗浄剤により洗浄する工程と、を含むPCB処理方法が記載されている。この処理方法では、アルミニウムを酸またはアルカリにより溶解させてアルミニウムを沈殿回収し、他の金属と分離している。しかし、特許文献2は銅を単離する手法を提案していない。
【特許文献2】特開2002−143825号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、電力機器または電気器具の廃棄処理において分別されたアルムニウム片および銅片の混合物から、銅とアルミニウムを分離し、アルミニウムの混入率が1%未満の銅を低コストで得る分離方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
金属類の分別の手段として比重選別機やエアーテーブルなどが知られている。これらの分別手段は、直径2mm×長さ5mm以下の大きさのものへの利用に適している。本発明者の検討によると、比重選別機やエアーテーブルを電力機器または電気器具の廃棄処理において分別されたアルムニウム片および銅片などの、5mm以上の大きさで、大きさがばらばらで、形が不定のものに適用しても、分離効率が低く、アルミニウムの混入率が1%未満の銅を得ることができなかった。
【0006】
そこで、本発明者は、前記目的を達成するためにさらに検討した結果、アルミニウム片および銅片の混合物を選別筒に入れ、選別筒内に液体の回転上昇流を生じさせ、アルミニウム片を選別筒の上部に押し上げ溢流させ、銅片を選別筒の底部に沈降させることによって、銅とアルミニウムを分離し、アルミニウムの混入率が1%未満の銅が得られることを見出した。本発明はこの知見に基づいてさらに検討し完成したものである。
【0007】
すなわち、本発明は、以下の態様を含む。
(1) アルミニウム片および銅片の混合物を選別筒に入れ、選別筒内に液体の回転上昇流を生じさせ、アルミニウム片を選別筒の上部に押し上げ溢流させ、銅片を選別筒の底部に沈降させることを含む、銅とアルミニウムの分離方法。
(2) 液体を選別筒の接線方向から流入させる、(1)に記載の銅とアルミニウムの分離方法。
(3) 液体が水である、(1)または(2)に記載の銅とアルミニウムの分離方法。
(4) アルムニウム片および銅片の混合物が、電力機器または電気機器の廃棄処理において分別されたものである、(1)〜(3)のいずれかに記載の銅とアルミニウムの分離方法。
【発明の効果】
【0008】
本発明の銅とアルミニウムの分離方法によって、電力機器または電気器具の廃棄処理において分別されたアルムニウム片および銅片の混合物から、銅とアルミニウムを分離し、アルミニウムの混入率が1%未満の銅を低コストで得ることができる。分離された銅は、産業資源として、再利用ができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の分離方法に使用するシステムの一実施態様例を示す概念図
【図2】本発明の分離方法に使用するシステムの別の実施態様例を示す概念図
【図3】本発明の分離方法に使用するシステムの別の実施態様例を示す概念図
【符号の説明】
【0010】
1:選別筒
2:液体流入口
3:銅片
4:アルミニウム片
5:アルミニウム回収ホッパー
13:銅回収ホッパー
14:アルミニウム回収ホッパー
15:銅とアルミニウムとの混合物の供給用ホッパー
16:ベルトコンベアー
17:液体導入用のポンプ
18:水槽
21:ロータリーバルブ
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の銅とアルミニウムの分離方法は、アルミニウム片および銅片の混合物を選別筒に入れ、選別筒内に液体の回転上昇流を生じさせ、アルミニウム片を選別筒の頂部に押し上げ溢流させ、銅片を選別筒の底部に沈降させることを含むものである。
【0012】
〔実施態様1〕
図1は本発明の分離方法に使用するシステムの実施態様1を示す概念図である。選別筒1は、図1のような上部から下部まで直径が変わらない円筒状であってもよいし、上部直径と下部直径とが異なる円錐台状であってもよい。実施態様1の選別筒の底部は導入した液体が上昇流になる程度に閉じており、頂部は液体が溢流できるようになっている。
【0013】
実施態様1における選別筒1の側面には、接線方向から液体を流入するための液体導入口2が設けられており、この導入口から水などの液体を圧送する。導入された液体は選別筒内の側面に沿って回転しながら上昇する。アルミニウムの比重は2.7g/cm3、銅の比重は8.9g/cm3であり、切断・破砕されたアルミニウム線のかさ密度は1.2g/cm3、切断・破砕された銅線のかさ密度は4.6g/cm3であるので、アルミニウムを押し上げ、銅を押し上げない程度の圧力で液体を導入する。液体の適切な圧力は、水力分級における従来から知られている設計法によって求めてもよいし、または最も大きいアルミニウム片を押し上げることができる圧力を実験によって求めてもよい。
【0014】
押し上げられたアルミニウムは、選別筒の頂部から液体と伴に、溢流し、アルミニウム回収ホッパー5に集められる。頂部から溢流した液体および底部から抜き出された液体は、回収し、再利用することができる。
選別筒の底には、サンドコーン底部に設けられているようなゲート弁(図示なし)が設けられていて、沈降した銅片を抜き出すことができるようになっている。
【0015】
図1のシステムでは、液体を所定の圧力で導入している選別筒の頂部開放口から、アルミニウム片4および銅片3の混合物を入れる。混合物を入れると、銅はそのまま沈降し、アルミニウムは液体の上昇流によって浮き上がる。これによって、銅とアルミニウムが分離される。本発明の方法で分離された銅は、アルミニウムをほとんど含んでいない。
【0016】
〔実施態様2〕
図2は、本発明の分離方法に使用するシステムの実施態様2を示す概念図である。
実施態様2では、選別筒1が、水で満たされた水槽18内に設置され、水槽内の水をポンプ17で汲み上げ、選別筒1の側面に供給し、選別筒内に導入している。導入された水は、選別筒内で回転上昇流となる。銅とアルミニウムとの混合物は、供給用ホッパー15から選別筒内に供給される。供給された銅とアルミニウムとの混合物のうち、アルミニウム片は前記回転上昇流によって押し上げられ、選別筒の頂部から溢流し、アルミニウム回収ホッパー14に回収される。アルミニウム回収ホッパー14に注がれた液体は固液分離され、回収ホッパー14の底から水槽18に戻される。
銅は選別筒の底部に沈む。選別筒の底部には、ベルトコンベアーが設けられていて、沈降した銅はベルトコンベアー16にて、銅回収ホッパーに搬出される。水槽内の水の水位を調整することによって、底部から流出する水の量と頂部から溢流する水の量のバランスを調整できる。
【0017】
〔実施態様3〕
図3は、本発明の分離方法に使用するシステムの実施態様3を示す概念図である。
実施態様3では、選別筒1の底部にロータリーバルブが設けられている以外は、前述した実施態様とほぼ同じである。このロータリーバルブ21によって、水などの液体の漏れを抑制して銅を排出することができるようになっている。ロータリーバルブから排出された銅はベルトコンベアー16で運び出すことができる。
【0018】
図1〜3等に示したシステムを直列多段に設けることによって、分別効率を高めることができる。具体的には、図1等においてアルミニウム回収ホッパーとなっている部分に、第二選別筒を設け、上述の選別筒1頂部から溢流してきたアルミニウムを多く含む混合物を、第二選別筒に受ける。第二選別筒は上述と同様に側面から液体を接線方向から流入できるようになっていて、その液体上昇流によって、アルミニウム片を浮き上がらせ、銅片を沈降させて、両者を分離する。アルミニウム片は溢流と伴に頂部から押し流される。選別筒1の液体導入圧力、および第二選別筒の液体導入圧力は、分離効率を考慮して、適宜選択される。通常は選別筒1の液体導入圧力≧第二選別筒の液体導入圧力となる関係にするのが好ましい。
【実施例】
【0019】
次に、本発明の実施例を説明する。なお本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0020】
実施例1
図1に示すような、接線方向に液体を導入できるように直径3.9mmの液体導入管が側面に取り付けられた直径38mmの垂直に立てられた選別筒を用意した。液体導入管の設置位置から選別筒の頂部までの距離は170mm、底部までの距離が100mmである。
水道蛇口に液体導入管を接続し、水道水を水背圧86〜91kPaで流量6.4l/分(流速8.89m/s)で流した。
アルミニウム片および銅片の混合物100gを選別筒の頂部から入れた。混合物には塊状のもの、線状のもの、板状のものなどが含まれていた。アルミニウム片および銅片の大きさは3〜20mm程度であった。
選別筒の底に塊状または板状の銅片が沈降した。線状の銅片の一部は上昇流によって浮き上がっていた。アルミニウム片のほとんどは上昇流によって浮き上がり、頂部から溢流とともに回収ホッパーに回収された。
この分別によって、選別筒の底から、銅片99.06%、アルミニウム片0.94%の混合物が回収された。アルミニウム回収ホッパーには、アルミニウム片が主に含まれる混合物が回収されていた。
【0021】
実施例2
選別筒を45度に傾斜して、実施例1と同様に、アルミニウム片および銅片の混合物を分別した。
選別筒の底に塊状または板状の銅片が沈降した。線状の銅片の一部は上昇流によって浮き上がっていた。アルミニウム片のほとんどは上昇流によって浮き上がり、頂部から溢流とともに回収ホッパーに回収された。
この分別によって、選別筒の底から、銅片99.27%、アルミニウム片0.73%の混合物が回収された。アルミニウム回収ホッパーには、アルミニウム片が主に含まれる混合物が回収されていた。
【0022】
比較例1
直径64mmのシリンダーにジルコンサンド(比重4.5g/cm3、かさ密度3.05g/cm3)を充てんした。ここに比重2.7g/cm3、かさ密度1.2g/cm3のアルミニウム片、および比重8.9g/cm3、かさ密度4.6g/cm3の銅片の混合物を入れ、5分間バイブレータで振動させた。アルミニウム片と線状銅片がジルコンサンドの表面に浮き上がってきて、アルミニウム片と銅片を分別することができなかった。
【0023】
上記実施例の結果から、本発明の方法によれば、電力機器または電気器具の廃棄処理において分別されたアルムニウム片および銅片の混合物から、銅とアルミニウムを効率的に分離でき、アルミニウムの混入率が1%未満の銅を容易に得られることがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム片および銅片の混合物を選別筒に入れ、選別筒内に液体の回転上昇流を生じさせ、アルミニウム片を選別筒の上部に押し上げ溢流させ、銅片を選別筒の底部に沈降させることを含む、銅とアルミニウムの分離方法。
【請求項2】
液体を選別筒の接線方向から流入させる、請求項1に記載の銅とアルミニウムの分離方法。
【請求項3】
液体が水である、請求項1または2に記載の銅とアルミニウムの分離方法。
【請求項4】
アルムニウム片および銅片の混合物が、電力機器または電気機器の廃棄処理において分別されたものである、請求項1〜3のいずれかに記載の銅とアルミニウムの分離方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−97025(P2009−97025A)
【公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−267149(P2007−267149)
【出願日】平成19年10月12日(2007.10.12)
【出願人】(000004307)日本曹達株式会社 (434)
【Fターム(参考)】