説明

銅含有金属有機骨格材料の製造方法

本発明は、(a)少なくとも1種の銅化合物及び第1の少なくとも二座の有機化合物を含有する液相中で反応混合物を反応させ、少なくとも1つの銅イオン及び第1の少なくとも二座の有機化合物を含有する錯体中間生成物を形成する工程、その際、この第1の少なくとも二座の有機化合物はジカルボン酸から誘導され、かつ、炭化水素である基本骨格を有する、及び、
(b)この錯体中間生成物を少なくとも第2の少なくとも二座の有機化合物と反応させる工程、その際この少なくとも第2の少なくとも二座の有機化合物が場合により置換された単環式−、二環式−又は多環式の飽和したか又は不飽和の炭化水素であり、この少なくとも2つの環炭素原子が、N、O及びSからなる群から選択されたヘテロ原子により置き換えられている、
を含有する、第1の及び少なくとも第2の、少なくとも1つの銅イオンに配位結合した、少なくとも二座の有機化合物を含有する多孔質金属有機骨格材料の製造方法であって、
工程(a)におけるこの反応混合物が、銅化合物の使用される銅に対して、3倍の過剰よりも少ない25ギ酸を有する、第1の及び少なくとも第2の、少なくとも1つの銅イオンに配位結合した、少なくとも二座の有機化合物を含有する多孔質金属有機骨格材料の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の詳細な説明
本発明は、銅イオンに配位結合している少なくとも2つの有機化合物を含有する多孔質の金属有機骨格材料の製造方法に関する。
【0002】
多孔質の金属有機骨格材料は、技術水準において一般的に公知であり、かつ、数々の適用のために提案されている。このような適用は例えば、化学物質、例えばガスの貯蔵、分離又は制御された添加、又は触媒の領域である。この際、とりわけ、この金属有機骨格材料の多孔性は、決定的な役割を果たす。この際、同様に、このような金属有機骨格材料の製造の際に、その特性、特にその比表面積に関して高い再現性を有する骨格材料を提供することを可能にする方法を提供することに意義がある。
【0003】
典型的には、多孔質の金属有機骨格材料は金属イオン並びに多座リガンドから形成され、これにより、多次元の骨格が構成され、これはポリマーとして果てしなく又は−リガンドの選択に応じて−多面体として伸びる。
【0004】
この際、一次元の、二次元の、また同様に三次元の骨格材料が可能である。
【0005】
適用に応じて、リガンド並びに金属イオンの相応する選択により、この多孔質の金属有機骨格材料の効率は最適化されることができる。
【0006】
従って、文献中には、多数のリガンド又は金属を記載する数々の提案が存在する。
【0007】
多孔質の金属有機骨格材料の興味深い群は、金属イオンとしての銅を基礎とし、その際リガンドとして2つの有機化合物が使用される。この際、第1の有機化合物は典型的には、銅と共に二次元の多孔質の金属有機骨格材料を形成できるジカルボン酸である。典型的にはアミンベースである更なるリガンドの添加により次のことが達成されることができ、つまり、この第2の化合物の配位により、この第2の化合物が銅錯化を介してかつての二次元の層の架橋化を引き起こすことにより、三次元の骨格構造が形成される。
【0008】
このような系のための一例は、テレフタル酸及びトリエチレンジアミンを有する銅錯体である。
【0009】
このような多孔質の金属有機骨格材料の製造のためには、典型的には硫酸銅五水和物である銅化合物から出発する。更に、テレフタル酸が添加され、その際この工程においてギ酸の存在下で反応が行われる。
【0010】
この際、このギ酸は、相応する金属有機骨格材料を形成することができるように使用され、これは、上記した多孔質の金属有機骨格材料を形成するために、次いで第2工程においてトリエチレンジアミンと接触する。
【0011】
この際、ギ酸は、沈殿のための助剤の種類として使用され、しかしながらその際、ギ酸は技術水準において、使用される銅に対して極めて過剰の量で使用される。
【0012】
従って、例えば、JP-A 2005/093181は、Cu−BDC−TEDAの製造を記載し、その際ギ酸は、95倍の過剰量で使用される。このようにして得られる骨格材料は、ガス、特に水素の貯蔵のために適している。JP-A 2005/093181はしかしながら、芳香族リガンド、テレフタル酸の代わりにテトラジンを基礎とする複素環式リガンドを使用することを提案する。これにより、トリエチレンジアミンとの反応が、ギ酸を使用すること無しにうまく行く。これは、複素環式リガンドが使用されない場合にのみ必要であるとみなされる。これは従って、第1の錯体中間生成物の形成がより簡単に可能であることにより説明されることができ、この結果トリエチレンジアミンとの引き続く反応が問題なしに行われ、これは例えばテレフタル酸を用いて可能であるものである。
【0013】
多孔質金属有機骨格材料としてのCu−BDC−TEFAの製造は、K. Seki et al., J. Phys. Chem. B 106 (2002), 1380-1385によっても記載されている。この際、銅に対して43倍の過剰量のギ酸が使用される。
【0014】
最後に、JP-A 2004/305985は、この上記した金属有機骨格材料をも記載し、その際ギ酸は7倍の過剰量で使用される。このようにして得られる材料は、液状ガス貯蔵のために適している。
【0015】
上記した金属有機骨格材料の製造のための数々の方法が存在するが、更に、特にスケールアップが可能であり、かつ、所望される金属有機骨格材料が、特にこの比表面積に関して、再現可能な様式で提供することに適している代替的な方法に関する要求が存在する。
【0016】
本発明の課題は、従って、このような方法の提供にある。
【0017】
この課題は、
(a)少なくとも1種の銅化合物及び第1の少なくとも二座の有機化合物を含有する液相中で反応混合物を反応させ、少なくとも1つの銅イオン及び第1の少なくとも二座の有機化合物を含有する錯体中間生成物を形成する工程、その際、この第1の少なくとも二座の有機化合物はジカルボン酸から誘導され、かつ、炭化水素である基本骨格を有する、及び、
(b)この錯体中間生成物を少なくとも第2の少なくとも二座の有機化合物と反応させる工程、その際この少なくとも第2の少なくとも二座の有機化合物が場合により置換された単環式−、二環式−又は多環式の飽和したか又は不飽和の炭化水素であり、この少なくとも2つの環炭素原子が、N、O及びSからなる群から選択されたヘテロ原子により置き換えられている、
を含有する、第1の及び少なくとも第2の、少なくとも1つの銅イオンに配位結合した、少なくとも二座の有機化合物を含有する多孔質金属有機骨格材料の製造方法であって、
工程(a)におけるこの反応混合物が、銅化合物の使用される銅に対して、3倍の過剰よりも少ないギ酸を有することを特徴とする、第1の及び少なくとも第2の、少なくとも1つの銅イオンに配位結合した、少なくとも二座の有機化合物を含有する多孔質金属有機骨格材料の製造方法により解決される。
【0018】
意外にも、特に、ギ酸の減少した使用により、そして、特にとりわけギ酸の不使用により、この上記した金属有機骨格材料の製造の際には、この骨格材料が高い比表面積でもって得られることができ、かつ、このような骨格材料のより高い再現性が達成されることができることが示された。上記した多孔質の金属有機骨格材料を適した様式で獲得することができるために、ギ酸又は他のモノカルボン酸の存在が必要であろうとの、技術水準に存在する先入観は、本発明による方法により時代遅れになることができる。
【0019】
第1の及び少なくとも1つの第2の、少なくとも1つの銅イオンに配位結合している、少なくとも二座の有機化合物を含有する多孔質の金属有機骨格材料の製造のための本発明による方法は、少なくとも2つの工程を含有する。
【0020】
工程(a)においては、反応混合物の反応は液相中で行われ、その際この反応混合物は少なくとも1種の銅化合物及び第1の少なくとも二座の有機化合物を含有する。この反応により、少なくとも1つの銅イオン及びこの第1の少なくとも二座の有機化合物を含有する錯体中間生成物が形成される。
【0021】
使用される銅化合物とは、銅(I)化合物又は銅(II)化合物である。有利には、銅(II)化合物である。この際、この銅化合物が塩の形に存在する場合に、特に有利である。特に、この塩は、無機の銅塩である。
【0022】
有利には、この銅(II)化合物は、硫酸銅(II)、臭化銅(II)、塩化銅(II)、炭酸銅(II)及びその水和物からなる群から選択されている。更に、硝酸銅(II)又はその水和物が同様に使用されることができる。
【0023】
特に有利には、硫酸銅(II)並びにその一水和物又は五水和物である。
【0024】
有利な銅(I)化合物は、同様に、銅(II)のために挙げたのと同様の同じ化合物であり、即ち、硫酸塩、臭化物、塩化物、炭酸塩、硝酸塩並びにその水和物である。
【0025】
多孔質の金属有機骨格材料の製造のための本発明による方法の工程(a)においては、技術水準とは対照的に、銅化合物の使用される銅に対して、3倍よりも少ない過剰量のギ酸が使用される。
【0026】
本発明の範囲内において「過剰量」との概念は、ギ酸、ホルミアート又はギ酸のモル物質量又はギ酸及びホルミアートのモル量の合計の、銅化合物の銅のモル量に対する比を、この比が>1である場合に、理解すべきである。相応して、この商<1である場合には過少量が存在する。本発明によれば、従って、過剰量のための値が<1である場合に、過小量が存在する。
【0027】
本発明の範囲内において、過剰量は、銅化合物の使用される銅に対して3倍のギ酸よりも少なくなくてはならない。より一層有利には、この過剰量は、2倍よりも少ない。更により一層有利には、使用される銅に対して下回る量のギ酸が存在する。
【0028】
更により一層有利には、工程(a)においては、多孔質の金属有機骨格材料の製造のための本発明による方法においては、ギ酸は使用されない。
【0029】
本発明の範囲内において、概念「ギ酸無し」とは、ギ酸、ホルミアートのモル量又はギ酸及びホルミアートのモル量の合計が銅化合物のモル量に対して、<1000ppm、有利には10ppmより少ない、更により有利には1ppmよりも少ない値を有することを理解すべきである。
【0030】
更に、本発明の範囲内において、有利には、この反応混合物の全体の質量に対して、それぞれ、ギ酸の割合が2質量%よりも少ない、更に有利には1質量%よりも少ない、更に一層有利には0.1質量%よりも少ない、とりわけ0.01質量%よりも少ない場合である。
【0031】
とりわけ、「ギ酸無し」との概念下に、ギ酸又はホルミアートの存在が、少なくとも原則的に適する検出方法により検出されることができないことが理解されるべきである。ギ酸の検出のためには、様々な慣用の検出方法が使用されることができる。この際、例えば、UV分光法、IR分光法、核共鳴分光法、質量分光法、火炎イオン化検出並びに更なる方法を挙げることができる。
【0032】
更には、一層有利には、多孔質の金属有機骨格材料の製造のための本発明による方法において、ギ酸又はそのホルミアート又はこの両者が記載された量で存在しないのみでなく、他のモノカルボン酸、そのカルボキシラート又は両者もがギ酸のために挙げられたモル比で存在することである。
【0033】
例示的には、モノカルボン酸として、安息香酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、アクリル酸又はメタクリル酸を挙げることができる。
【0034】
多孔質の金属有機骨格材料の本発明による製造方法の工程(a)においては、第1の少なくとも二座の有機化合物の存在下において反応が生じる。
【0035】
この際、この第1の少なくとも二座の有機化合物は、ジカルボン酸から誘導され、かつ、炭化水素である基本骨格を有する。
【0036】
「誘導する」という概念は、本発明の範囲内で、骨格材料中のジカルボン酸が、部分的に脱プロトン化されたか又は完全に脱プロトン化された形で存在できることを意味する。更に、ジカルボン酸は、1個の置換基又は相互に独立した複数の置換基を含有することができる。このような置換基のための例は、−OH、−NH2、−OCH3、−CH3、−NH(CH3)、−N(CH32、−CN並びにハロゲン化物である。更に、「誘導する」との概念は、本発明の範囲内において、ジカルボン酸が、相応する硫黄類似体の形においても存在することができることを意味する。硫黄類似体は、官能基−C(=O)SH並びにその互変異性体及びC(=S)SHであり、これらは1個以上のカルボン酸基の代わりに使用されることができる。更に、「類似する」との概念は、本発明の範囲内において、1個又は両方のカルボン酸官能基が、スルホン基(−SO3H)により置き換えられていることができることを意味する。更に、同様に、この2つのカルボン酸官能基の他に、スルホン基が存在することができる。
【0037】
このジカルボン酸は、この上記した官能基の他に、このジカルボン酸に結合している、有機の基体又は有機化合物を有する。この際、上記した官能基は、原則的に、これらの官能基を有する有機化合物が、配位結合の形成のため骨格材料の製造のために適している、かつ、炭化水素である、ことが保証されている限り、各々適した有機化合物に結合されていてよい。
【0038】
有利には、この第1の有機化合物は、飽和したか又は不飽和の脂肪族の化合物又は芳香族の化合物、又は、脂肪族のまた同様に芳香族の化合物から誘導される。
【0039】
脂肪族化合物、又は脂肪族でも芳香族でもある化合物の脂肪族部分は、線状及び/又は分枝鎖状及び/又は環状であってよく、その際に1つの化合物につき複数の環も可能である。更に有利には、脂肪族化合物、又は脂肪族でも芳香族でもある化合物の脂肪族部分は、炭素原子1〜18個、更に有利には1〜14個、更に有利には1〜13個、更に有利には1〜12個、更に有利には1〜11個及び特に有利には1〜10個、例えば炭素原子1、2、3、4、5、6、7、8、9又は10個を有する。この場合に、とりわけメタン、アダマンタン、アセチレン、エチレン又はブタジエンが特に好ましい。
【0040】
芳香族化合物、又は芳香族でも脂肪族でもある化合物の芳香族部分は、1つ又はまたそれ以上の核、例えば2、3、4又は5個の核を有していてよく、その際にこれらの核は互いに別個に及び/又は少なくとも2個の核が縮合された形で存在していてよい。特に有利には、芳香族化合物、又は脂肪族でも芳香族でもある化合物の芳香族部分は、1、2又は3個の核を有し、その際に1又は2個の核が特に好ましい。更に有利には、芳香族化合物、又は芳香族でも脂肪族でもある化合物の芳香族部分は、1又は2個のC6核を有し、その際に2個のC6核は、互いに別個に又は縮合された形で存在する。特に、芳香族化合物として、ベンゼン、ナフタレン、ピレン及びジヒドロピレンを挙げることができる。
【0041】
特に有利な炭化水素は、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ピレン、ジヒドロピレン及びエテンである。
【0042】
例えば、第1の有機化合物は、ジカルボン酸、例えば、シュウ酸、コハク酸、酒石酸、1,4−ブタンジカルボン酸、1,4−ブテンジカルボン酸、1,6−ヘキサンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、1,8−ヘプタデカンジカルボン酸、1,9−ヘプタデカンジカルボン酸、ヘプタデカンジカルボン酸、アセチレンジカルボン酸、1,2−ベンゼンジカルボン酸、1,3−ベンゼンジカルボン酸、1,3−ブタジエン−1,4−ジカルボン酸、1,4−ベンゼンジカルボン酸、4,4′−ジアミノフェニルメタン−3,3′−ジカルボン酸、ペリレン−3,9−ジカルボン酸、ペリレンジカルボン酸、3,5−シクロヘキサジエン−1,2−ジカルボン酸、オクタジカルボン酸、ペンタン−3,3−ジカルボン酸、4,4′−ジアミノ−1,1′−ビフェニル−3,3′−ジカルボン酸、ベンジジン−3,3′−ジカルボン酸、1,1′−ジナフチルジカルボン酸、1,4,5,6,7,7−ヘキサクロロ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸、フェニルインダンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレン−1,8−ジカルボン酸、ヒドロキシベンゾフェノンジカルボン酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,3−アダマンタンジカルボン酸、1,8−ナフタレンジカルボン酸、2,3−ナフタレンジカルボン酸、8−メトキシ−2,3−ナフタレンジカルボン酸、8−ニトロ−2,3−ナフタレンジカルボン酸、アントラセン−2,3−ジカルボン酸、5−tert−ブチル−1,3−ベンゼンジカルボン酸、4−シクロヘキセン−1,2−ジカルボン酸、テトラデカンジカルボン酸、1,7−ヘプタデカンジカルボン酸、5−ヒドロキシ−1,3−ベンゼンジカルボン酸、2,5−ジヒドロキシベンゼン−1,4−ジカルボン酸、1−ノネン−6,9−ジカルボン酸、エイコセンジカルボン酸、4,4′−ジヒドロキシジフェニルメタン−3,3′−ジカルボン酸、シクロヘキセン−2,3−ジカルボン酸、2−ニトロベンゼン−1,4−ジカルボン酸、ヘプタン−1,7−ジカルボン酸、シクロブタン−1,1−ジカルボン酸、1,14−テトラデカンジカルボン酸、5,6−デヒドロノルボルナン−2,3−ジカルボン酸、又はカンファージカルボン酸から誘導される。
【0043】
更により一層有利には、この第1の有機化合物は、この上記で例示したジカルボン酸自体である。
【0044】
特に有利なジカルボン酸は、テレフタル酸、1,4−ナフタレンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,5′−ビフェニルジカルボン酸、4,4′−ビフェニルジカルボン酸、フマル酸、イソフタル酸である。特にとりわけ有利には、テレフタル酸及び2,6−ナフタレンジカルボン酸である。
【0045】
多孔質の金属有機骨格材料の製造のための本発明による方法の工程(a)における反応により、第1の少なくとも二座の有機化合物及び少なくとも1つの銅イオンを含有する錯体中間生成物が生じる。
【0046】
製造が行われた後に、一般的に結晶質で多孔質の錯体中間生成物は、初晶の形で母液中に存在する。
【0047】
錯体中間生成物の製造が行われた後に、錯体中間生成物の骨格材料−固体は、その母液から分離されることができる。この分離過程は原則的に、適した全ての方法に従い行われることができる。有利には、中間生成物は、固液分離、遠心分離、抽出、ろ過、膜ろ過、クロスフローろ過、ダイアフィルトレーション、限外ろ過、フロキュレーション助剤、例えば非イオン性、カチオン性及び/又はアニオン性の助剤の使用下でのフロキュレーション、添加剤、例えば塩、酸又は塩基の添加によるpHシフト、浮選、噴霧乾燥、噴霧造粒、又は高められた温度で及び/又は真空中での母液の蒸発及び固体の濃縮によって分離される。
【0048】
分離後に、少なくとも1つの更に付加的な洗浄工程、少なくとも1つの更に付加的な乾燥工程及び/又は少なくとも1つの更に付加的なか焼工程を続けることができる。
【0049】
本発明による方法において、工程(a)において、少なくとも1つの洗浄工程が続く場合には、有利には、工程(a)における反応の際に使用される少なくとも1つの溶剤で洗浄される。
【0050】
本発明による方法の工程(a)のための適した溶剤は、例えばN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、N,N−ジエチルホルムアミド(DEF)又はN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)である。有利には、これはアルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール、ケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトン又は水との混合物としても使用されることができる。
【0051】
有利には、この際、第1の少なくとも二座の有機化合物は、DMF、DEF又はDMAc中で、反応混合物に添加され、かつ、この銅化合物は、アルコール、ケトン又は水と共に反応混合物に添加され、この結果、この液相は、上記した混合物を有する。
【0052】
更に有利には、アルコール混合物であり、特に有利にはDMF/メタノール混合物である。
【0053】
最後に、本発明による方法において、工程(a)において、場合により少なくとも1つの洗浄工程後に、少なくとも1つの乾燥工程が続く場合には、骨格材料−固体は一般的に20〜200℃の範囲内、有利には25〜120℃の範囲内、特に有利には56〜65℃の範囲内の温度で乾燥される。
【0054】
真空中での乾燥は同様に好ましく、その際に温度は一般的に、少なくとも1つの洗浄剤が少なくとも部分的に、有利には本質的に完全に、結晶質で多孔質の金属有機骨格材料から除去され、かつ同時に骨格構造が破壊されないように選択されることができる。
【0055】
例示的な温度は、この際40℃〜200℃の範囲内に、有利には50℃〜120℃の範囲内に、特に20℃〜110℃の範囲内にある。
【0056】
乾燥時間は、一般的に0.1〜15hの範囲内、有利には0.2〜5hの範囲内、特に有利には0.5〜1hの範囲内である。
【0057】
場合により少なくとも1つの洗浄工程及び場合により少なくとも1つの乾燥工程に、工程a)において、少なくとも1つのか焼工程を続けることができ、その際に温度は有利には、骨格材料の構造が破壊されないように選択される。
【0058】
特に洗浄及び/又は乾燥及び/又はか焼により、例えば、骨格材料の本発明による電気化学的製造に場合により使用された少なくとも1つのテンプレート化合物を、少なくとも部分的に、有利には本質的に定量的に、除去することが可能である。
【0059】
本発明による方法の工程(b)において、上記で説明された通り、単離されない錯体中間生成物は、第2の有機化合物と反応されるか、又は中間生成物は、分離され、かつ有利には溶剤中で第二の有機化合物と反応されるかのいずれかである。この反応は典型的には工程(a)に類似に行われる。これは、引き続く後処理にも当てはまる。
【0060】
有利には、この錯体中間生成物は、母液からの分離により得られ、かつ、更なる後処理無しに工程(c)において使用される。
【0061】
有利には、工程(b)における反応は溶剤又は溶剤混合物中で実施される。この際に、例えば本発明による方法の工程(a)に使用されることができるような液相が使用されることができる。錯体中間生成物及び第2の有機化合物に加えて、別の添加剤がこの反応の際に関与されていてよい。
【0062】
適した溶剤は、この際、アルコール、例えばメタノール、エタノール、n−プロパノール、i−プロパノール又はケトン、例えばアセトン、メチルエチルケトンである。有利にはメタノールである。
【0063】
有利には、工程(b)については、ギ酸又はモノカルボン酸に関して、工程(a)で挙げたことが当てはまる。
【0064】
本発明による方法の工程(b)において、錯体中間生成物と少なくとも第2の少なくとも二座の有機化合物との反応が行われ、その際、この少なくとも第2の少なくとも二座の有機化合物は、場合により置換された、単環式−、二環式−又は多環式の飽和したか又は不飽和の炭化水素であり、この際、この少なくとも2個の環炭素原子がN、O及びSからなる群から選択されたヘテロ原子により置き換えられている。
【0065】
有利には、この第2の有機化合物は少なくとも窒素を環原子として含有し、より一層有利にはヘテロ原子として窒素のみを有する。
【0066】
この炭化水素は、非置換又は置換されていてよい。1個よりも多い置換基が存在する場合に、置換基は同じか又は異なっていてよい。置換基は、相互に独立してフェニル、アミノ、ヒドロキシ、チオ、ハロゲン、プソイドハロゲン、ホルミル、アミド、アシル、これは1〜4個の炭素原子を有する脂肪族の飽和したか又は不飽和の炭化水素残基を有する、及び、脂肪族の又は分枝したか又は分枝していない飽和したか又は不飽和の1〜4個の炭素原子を有する炭化水素であることができる。置換基が1個以上の水素原子を有する場合には、これらの置換基のそれぞれが、互いに独立して、炭素原子1〜4個を有する脂肪族の分枝したか又は分枝していない飽和したか又は不飽和の炭化水素により置換されていてもよい。
【0067】
ハロゲンは、フッ素、塩素、臭素又はヨウ素であってよい。プソイドハロゲンは、例えばシアノ、シアナト又はイソシアナトである。
【0068】
炭素原子1〜4個を有する脂肪族の分枝したか又は分枝していない飽和したか又は不飽和の炭化水素は、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、t−ブチル、ビニル、エチニル又はアリルである。
【0069】
1〜4個の炭素原子を有する、脂肪族の飽和したか又は不飽和の炭化水素残基を有するアシルは、例えばアセチル又はエチルカルボニルである。
【0070】
有利には、この第2の有機化合物は非置換であるか又はメチル又はエチルである置換基を有する。
【0071】
有利には、単環式−、二環式又は多環式の炭化水素は、5又は6−環を有し、一層有利6−環である。
【0072】
更に、少なくとも2つのヘテロ原子が窒素であることが好ましい。
【0073】
更に有利には、第2の有機化合物は、ちょうど2個のヘテロ原子、有利には窒素を有する。
【0074】
炭化水素が、2個のヘテロ原子、有利には窒素が存在している6−環を有する場合に、これらの原子は有利には、互いにパラ位にある。
【0075】
更に、第2の有機化合物が、不飽和炭化水素から誘導されることができ、芳香族であるか又は完全に飽和であることが好ましい。この第2の有機化合物が1より多い環を有する場合には、有利には少なくとも1つの環は芳香族である。
【0076】
第2の有機化合物が誘導される単環式炭化水素は、例えばシクロブタン、シクロブテン、シクロブタジエン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロペンタジエン、ベンゼン、シクロヘキサン又はシクロヘキセンである。有利には、第2の有機化合物が誘導される単環式炭化水素は、ベンゼン又はシクロヘキサンである。
【0077】
第2の有機化合物が誘導される二環式炭化水素は、例えば、共有の単結合を介して又は基Rを介して互いに結合されている2個の環からなっていてよい。
【0078】
Rは、−O−、−NH−、−S−、−OC(O)−、−NHC(O)−、−N=N−、又は炭素原子1〜4個を有する脂肪族の分枝したか又は分枝していない飽和したか又は不飽和の炭化水素であってよく、この炭化水素は、−O−、−NH−、−S−、−OC(O)−、−NHC(O)−及び−N=N−からなる群から選択される、1つ又は互いに独立して複数の原子又は官能基で中断されていてよい。
【0079】
第1の有機化合物が誘導され、かつ共有の単結合を介して又は基Rを介して互いに結合されている2個の環からなる二環式炭化水素の例は、ビフェニル、スチルベン、ビフェニルエーテル、N−フェニルベンズアミド及びアゾベンゼンである。ビフェニルが好ましい。
【0080】
更に、第2の化合物が誘導される二環式炭化水素は、縮合された環系であってよい。
【0081】
これらの例は、デカリン、テトラリン、ナフタレン、インデン、インダン、ペンタレンである。テトラリン及びナフタレンが好ましい。
【0082】
更に、第2の有機化合物が誘導される二環式炭化水素は、橋かけされた環系を有していてよい。
【0083】
これらの例は、ビシクロ[2.2.1]ヘプタン又はビシクロ[2.2.2]オクタンであり、その際に後者が好ましい。
【0084】
同じように、第一の有機化合物が誘導される多環式炭化水素は、縮合された及び/又は橋かけされた環系を有していてよい。
【0085】
これらの例は、ビフェニレン、インダセン、フルオレン、フェナレン、フェナントレン、アントラセン、ナフタセン、ピレン、クリセン(Crysen)、トリフェニレン、1,4−ジヒドロ−1,4−エタノナフタレン及び9,10−ジヒドロ−9,10−エタノアントラセンである。ピレン、1,4−ジヒドロ−1,4−エタノナフタレン及び9,10−ジヒドロ−9,10−エタノアントラセンが好ましい。
【0086】
この第2の有機化合物が1よりも多い環を有する場合には、この少なくとも2個のヘテロ原子は1つ又は複数の環にあることができる。
【0087】
特に有利には、この第2の有機化合物は、
【化1】

及び置換されたこの誘導体からなる群から選択される。
【0088】
適した置換基は、上記した第2の有機化合物のために一般的に挙げられる置換基である。特に好ましい置換基は、メチルおよびエチルである。特に有利には、この置換された誘導体は1個のみの置換基を有する。特にとりわけ有利な置換された誘導体は、2−メチルイミダゾール及び2−エチルイミダゾールである。
【0089】
工程(a)及び/又は(b)における反応は有利には50〜160℃の温度範囲で実施される。より一層有利には、この反応は55℃〜135℃の温度範囲内、更に一層有利には60℃〜100℃の範囲内、特に60℃〜80℃の範囲で行われる。この際、工程(a)における反応を雰囲気圧力下で行うことが更に有利である。
【0090】
工程(a)及び/又は(b)における反応は、本発明による方法において、有利には雰囲気圧力で行われる。即ち、反応の実施のために高められた圧力は必要でない。特に、より高い比表面積を達成するために高められた圧力下で作業することは必要でない。特に、ソルボサーマル条件下で作業することは必要でない。雰囲気圧力で反応を実施するにもかかわらず、装置に条件付けられて、容易な過圧又は陰圧が反応の間に生じることができる。「雰囲気圧力」との概念は、本発明の範囲内において、上方に及び下方に、最大で250mbarだけ、有利には最大で200mbarだけ、逸脱する雰囲気圧力により定義される圧力範囲を理解することができる。
【0091】
この反応の際の実際の圧力は従って、この上記した範囲内にある。更に有利には、この実際の圧力は雰囲気圧力と同じである。
【0092】
実施例
実施例1:Cu−BDC−TEDAからなる金属有機骨格材料の製造
100mlのメタノール中の6.2gのCuSO4*5(H2O)からなる溶液を、DMF120ml中の4.2gのテレフタル酸(BDC)からなる懸濁液に、撹拌機を有するガラスフラスコ中で添加する。自然に迅速な沈殿物形成が生じる。この溶液を65℃で6時間後撹拌する。引き続き青い沈殿物を濾別し、かつ、160mlのメタノール中の1.4gのトリエチレンジアミン(TEDA)の溶液中に16時間約70℃で還流下で撹拌する。
【0093】
この生成物を再度濾別し、かつ、複数回メタノールで洗浄する。引き続きこの生成物を16時間110℃で真空乾燥棚中で乾燥させる。5.7gのターコイズブルーに着色したCu−BDC−TEDA−MOFsが得られる。この表面積(LangmuirによるN2吸着)は2063m2/gである。
【0094】
実施例2及び3:この合成の再現性
実施例1を2回繰り返す。ある場合には他の会社のトリエチレンジアミンを使用する(実施例1及び2;Johnson Matthey社による商品名Alfa Aesar、実施例3:Aldrich社)。
【0095】
2031m2/g(実施例2)又は1889m2/g(実施例3)の表面積を有する生成物が得られる。この合成は、即ち、原則的に、同じ使用物質の使用の際に極めて良好に再現可能である。明らかに低価値の使用物質の使用の際には、明らかに逸脱が生じることができる。しかしながら、ここでも、10%よりも少ない逸脱を有する、極めて高い表面積の値が達成されることができる。
【0096】
この着色は、全ての試料中で類似である(ターコイズブルー)。
【0097】
比較例4:大量(8質量%)のHCOOHの存在下でのCu−BDC−TEDA−MOFsの製造
この合成を実施例1と同様に実施し、しかしながら、DMF 12.8mlと一緒にギ酸を装入する。表面積が621m2/gのみを有する生成物5.2gを得る。
【0098】
比較例5:少量(2質量%)のHCOOHの存在下でのCu−BDC−TEDA−MOFsの製造
この合成を実施例1と同様に実施し、しかしながら、DMF 3.2mlと一緒にギ酸を装入する。表面積が1329m2/gのみを有する生成物1.2gを得る。
【0099】
比較例6−10:中間の量(4質量%)のHCOOHの存在下でのCu−BDC−TEDA−MOFsの製造
この合成を実施例1と同様に実施し、しかしながら、DMF 6.4mlと一緒にギ酸を装入する。この際以下の表面積の値を有する生成物が得られる。
【0100】
【表1】

【0101】
1390m2/gのみの平均値が生じる。この合成は、加えて顕著により劣悪に再現可能である。下方の最大の逸脱は31%である。この標準の逸脱は317m2/g(23%)である。この個々の試料の着色もまた、明らかに可視可能な差異を示し、かつ、ミントグリーンとターコイズブルーの間で変動する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)少なくとも1種の銅化合物及び第1の少なくとも二座の有機化合物を含有する液相中で反応混合物を反応させ、少なくとも1つの銅イオン及び第1の少なくとも二座の有機化合物を含有する錯体中間生成物を形成する工程、その際、この第1の少なくとも二座の有機化合物はジカルボン酸から誘導され、かつ、炭化水素である基本骨格を有する、及び、
(b)この錯体中間生成物を少なくとも第2の少なくとも二座の有機化合物と反応させる工程、その際この少なくとも第2の少なくとも二座の有機化合物が場合により置換された単環式−、二環式−又は多環式の飽和したか又は不飽和の炭化水素であり、この少なくとも2つの環炭素原子が、N、O及びSからなる群から選択されたヘテロ原子により置き換えられている、
を含有する、第1の及び少なくとも第2の、少なくとも1つの銅イオンに配位結合した、少なくとも二座の有機化合物を含有する多孔質金属有機骨格材料の製造方法であって、
工程(a)におけるこの反応混合物が、銅化合物の使用される銅に対して、3倍の過剰量よりも少ないギ酸を有することを特徴とする、第1の及び少なくとも第2の、少なくとも1つの銅イオンに配位結合した、少なくとも二座の有機化合物を含有する多孔質金属有機骨格材料の製造方法。
【請求項2】
銅化合物が、硫酸銅(II)、臭化銅(II)、塩化銅(II)、炭酸銅(II)及びその水和物からなる銅(II)化合物の群から選択されていることを特徴とする、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ギ酸が使用されないことを特徴とする、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
工程(a)において反応混合物が、銅化合物の使用される銅に対して、3倍の過剰量よりも少ないモノカルボン酸を有することを特徴とする、請求項1から3までのいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
モノカルボン酸が使用されないことを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の方法。
【請求項6】
炭化水素が、ベンゼン、ナフタレン、ビフェニル、ピレン、ジヒドロピレン及びエーテルからなる群から選択されていることを特徴とする、請求項1から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
少なくとも第2の少なくとも二座の有機化合物が、
【化1】

及び置換されたその誘導体からなる群から選択されていることを特徴とする、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
工程(a)における反応が、温度範囲50〜160℃で実施されることを特徴とする、請求項1から7までのいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
工程(a)における反応が、雰囲気圧力下で行われることを特徴とする、請求項1から8までのいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
錯体中間生成物が、母液からの分離により得られ、かつ、更なる後処理無しに工程(b)において使用されることを特徴とする、請求項1から9までのいずれか1項記載の方法。

【公表番号】特表2009−544646(P2009−544646A)
【公表日】平成21年12月17日(2009.12.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−521207(P2009−521207)
【出願日】平成19年7月13日(2007.7.13)
【国際出願番号】PCT/EP2007/057252
【国際公開番号】WO2008/012216
【国際公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【出願人】(508020155)ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア (2,842)
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】D−67056 Ludwigshafen, Germany
【Fターム(参考)】