説明

鋲打機および鋲打機の操作方法

【課題】鋲打機のトリガーの誤動作を防止する。
【解決手段】設定動作を開始するために、反発力に対抗する力を作用させることによって作動することができるトリガー15を備える。鋲打機1の操作を更に改善するため、局所的最大値を有する反発力移動曲線をもつ反発力生成装置20がトリガー15に付随する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は留め具を基材に設定するための鋲打機に関し、設定動作を開始するために、反発力に対抗して力を作用させることによって、起動されるトリガーを有する。本発明は、さらに、このような鋲打機を操作する方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
燃料および点火器を有する燃料駆動の鋲打機は特許文献1から知られており、それは鋲打機のハンドルのトリガー・スイッチを介して起動できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】独国特許出願公開第102005000032号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、鋲打機の使用について更なる改善を図ることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この目的は、基材に留め具を設定するための鋲打機に、トリガーに付随して、局所的最大値を有する反発力移動曲線をもつ反発力生成装置を備え、設定動作を開始するために、この反発力に対抗する力を作用させることによりトリガーを動かせるようにして、解決される。鋲打機の起動装置すなわち解除機構はトリガーと呼ばれている。トリガーが起動されると、例えば、鋲が設定される。鋲を設定する時、鋲打機は描が設定されるべき基材に対して押圧される。基材に対して鋲打機を押圧することにより、鋲を鋲打機で設定するための、阻止されていた準備段階の実行が解除される。実際の設定動作は、トリガーの起動、すなわち、引き込みまたは押圧により開始される。反発力移動曲線の局所的最大値により、反発力にはピークがあり、設定動作が意図せずに起動させられることを確実に防止する。さらに、設定品質は、本発明に係る反発力移動曲線により改良され得る。
【0006】
鋲打機の好ましい態様の例では、反発力は局所的最大値の前そして/または後で、直線的に上昇することを特徴とする。トリガーに対し起動力を加えると、反発力はゼロから局所的最大値まで安定的に上昇するのが好ましい。続いて、反発力は即座に低い値に落ちるのが好ましい。その低い値から、反発力は続けてふたたび直線的に、上昇するのが好ましい。
【0007】
鋲打機の好ましい別の態様では、反発力は局所的最大値の後に局所的最小値を有することを特徴とする。局所的最大値から局所的最低値への移行は、好ましくはスナップ動作またはクリッカー作用によって、即座にすなわち急速に行われる。
【0008】
鋲打機の好ましい別の態様では、反発力は、局所的最大値または局所的最小値の後よりも、局所的最大値の前で、より急傾斜で上昇することを特徴とする。反発力は、局所的最大値の後よりもまたは局所的最小値の後よりも、局所的最大値の前ではっきりとより急傾斜で上昇するのが好ましい。
【0009】
鋲打機の好ましい別の態様では、反発力は、局所的最大値の後は経路終端まで局所的最大値以下に保たれることを特徴とする。経路終端では、反発力は、局所的最大値の半分以下の終端値を有するのが好ましい。
【0010】
鋲打機の好ましい別の態様では、局所的最大値は、到達すると鋲打機の特定の機能が起動する経路地点の、少なくとも1つより前に位置することを特徴とする。局所的最大値は、到達すると鋲打機の特定の機能が起動する経路地点の複数より前に位置するのが好ましい。反発力の突然の、すなわち瞬間的な低下の後、トリガーは、局所的反発力の最大値を越えるのに必要であった比較的大きな作動力とともに、続けて移動するのが好ましい。このように、特に効果的な方法で、トリガーは経路終端まで急速に移動し、それにより鋲打機のすべての所定の機能は確実に起動する。
【0011】
鋲打機の好ましい別の態様では、局所的最大値は、到達すると設定動作が起動する経路地点の前に設けられることを特徴とする。本発明に係る反発力移動曲線により、鋲打機から鋲が遅れて出ることが防止され得る。
【0012】
鋲打機の好ましい別の態様では、反発力生成装置は、反発力スプリングからなることを特徴とする。反発力スプリングは、玩具のクリッカー・スプリングに類似かまたは同一の構成を有するのが好ましい。クリッカー・スプリングは、例えば成形されたかまたは打ち抜かれた、ばね鋼の帯から作製され、力が作用したときに、急激にそして瞬時に跳ね返り、クリック・ノイズを発生する。
【0013】
鋲打機の好ましい別の態様では、反発力スプリングは湾曲した板ばねとして構成されることを特徴とする。この湾曲によって、スプリングにより生み出される、局所的反発力の最大値から局所的反発力の最低値までの反発力の急転、特に急な一定な減少が、起動力が加わった際に実現できる。
【0014】
鋲打機の好ましい別の態様では、反発力スプリングは2つの支持点および1つの力導入点を有することを特徴とする。力導入点は、板ばねの端部の2つの支持点の間に、基本的にその中央に設けられるのが好ましい。鋲打機のこれに代わる態様の例では、反発力スプリングが、ちょうど1つの支持点および1つの力導入点を備えることを特徴とする。
【0015】
上述の鋲打機の操作方法においては、上述した目的は、それに代えてまたはそれに加えて、トリガーに対して力が加わった際、反発力ピークを越えた後に設定動作が起動することで解決される。反発力ピークは反発力移動曲線の局所的最大値に対応し、したがって、最大反発力とも呼ばれる。この力ピークを越えた後に、使用者はトリガーを経路終端まで自動的に引くかまたは押すこととなる。これによって、確実に所定の機能の全てが短時間内で起動される。
【0016】
以下の、異なる実施例を図面を参照して詳細に説明した記載から、本発明のさらなる効果、特徴および詳細が明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】反発力生成装置を有する鋲打機の、基材に対して押圧されていない、打込み操作がされていないときの、簡略化された図である。
【図2】基材に対して押圧されたときの、図1の鋲打機を示す図である。
【図3】トリガーが起動したときの、図2の鋲打機を示す図である。
【図4】本発明の反発力移動曲線を示す特性曲線のデカルト座標図である。
【図5】図4に示すような反発力移動曲線を示す、反発力スプリングの斜視図である。
【図6】図5の反発力スプリングの正面図である。
【図7】図6の線VII〜VIIに沿う断面図である。
【図8】図5〜図7で示した、トリガーおよび反発力スプリングが見られる、ハウジングが開いた状態の、鋲打機の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1〜図3は鋲打機1の各種の状態を示す。鋲打機1は、シリンダ3およびハンドル4を有するハウジング2を備える。鋲打機1は、留め具を打ち込むため、ハンドル4で握持され得る。留め具は、鋲設定端部5の鋲ガイド6から打出される。
【0019】
基材に留め具を打ち込むにはエネルギーが必要となる。そのエネルギーは、例えば鋲打機内のガス・カートリッジから得られる。ガス・カートリッジは、供給用バルブを介して燃焼室スリーブ8の燃焼室に接続している。燃焼室内では、ガス・カートリッジからのガスは、可燃混合気を形成するために空気と混ぜ合わせられ、基材に鋲を打ち込むために必要なエネルギーを得るために、点火される。
【0020】
鋲打機の操作に当たっては、設定準備完了状態とするために鋲打機1を基材に対して押圧しなければならない。鋲打機1が基材に対して押圧されると、プレス・ロッド機構10は鋲設定端部5が基材に対して面一となるまで、圧縮ばね12の付勢力に対抗しながら鋲打機1内に移動する。
【0021】
鋲打機1が基材に押圧されると、設定動作がトリガー15によ開始される。トリガー15は、スイッチ装置18に相互作用して、例えば、鋲をセットするための信号を制御ユニットに送る。その信号は、次に燃焼室スリーブ8の燃焼室の可燃性の混合気の点火を引き起こす。ここでは、トリガー15には制御および発信機能がある。
【0022】
トリガー15の起動、すなわち、引込みまたは押圧することにより、トリガー15は、スイッチ装置18の方へ、反発力生成装置20の反発力に対抗して移動する。反発力生成装置20には、図5〜図7に示すような反発力スプリングを備えているのが好ましい。反発力スプリングは図4で示すような反発力移動曲線を備えるのが好ましい。
【0023】
鋲打機1のハンドル4の、ハウジング2のハウジング壁の特製の支持具25により案内されるブラケット24は、トリガー15に蝶番で係止されている。図1に示すように、打込み操作がされていない状態にあるときは、ブラケット24は、燃焼室スリーブ8にいわば寄りかかり、それにより、その支持25と合わせて、トリガー15の起動を阻止する。
【0024】
鋲打機が、図2に示すように、基材に対して完全に押圧されると、ブラケット24、そしてしたがってトリガー15は、燃焼室スリーブ8の阻止が解かれる。図3において、阻止が解かれたトリガー15が引込まれると、スイッチ装置18が作動し、信号が発生することが分かる。同時に、ブラケット24が、その支持具25のため、燃焼室スリーブ8のへこみまたは凹状形状に向かって揺動動作をするので、ブラケット24によって軸方向に阻止される。
【0025】
設定動作の間に起こる機能からみて、トリガー15にとっては、個々の機能、制御そして/または信号の間に、可能な限り長い作動経路を確保すると都合がよい。これにより、機能の所望の順序が確実になる。加えて、部品の許容誤差の影響が最小化される。さらに、設定頻度がゆっくりの場合、鋲打機は異なる使用者の習性に影響されない。
【0026】
しかしながら、設定頻度が急速な場合には、長い作動経路は使用者の習性による影響を増強し得る。例えば、トリガー15が完全に引かれる前に、鋲打機1がすでに少し基材から持ち上げられるようなことが起こりうる。慣性のため、鋲打機は、持ち上げられた後の少しの間は動作が阻止されていない状態のままなので、トリガー15が引かれ得る。この場合に、鋲を導く鋲ガイド6は基材にもはや接続されていないので、鋲は遅れて鋲打機を出て、その結果、設定品質が貧弱になることが起こり得る。
【0027】
本発明の重要な態様によれば、反発力生成装置20は、図4のデカルト座標図の特性曲線30に示される特別な反発力移動曲線を有する。デカルト座標図はx軸31とy軸32とを備える。反発力生成装置20によって発生する反発力は、y軸32上に単位ニュートンによりプロットされている。関連するトリガー15の移動は、x軸31上に単位ミリメータによりプロットされている。トリガー15の信号そして/または制御機能は、特性曲線30により簡単な方法で確実に実行され得る。これにより設定頻度が急速な場合であっても、高い設定品質が確実に得られ得る。
【0028】
反発力生成装置20の特性曲線30は、最初のうちはゼロから局所的最大値34まで上昇する。局所的最大値は、反発力のピークに対応し、それがトリガー15に明確な圧点(pressure point)習性を与える。ここで、本発明の反発力生成装置20は、反発力が、局所的最大値34の後に、即座にまたは急速に局所的最低値35に落ちる、ように設計される。局所的最低値35の後、曲線30は、直線的に、しかし局所的最大値34の前と比べると明らかに小さな傾斜によって、上昇する。
【0029】
信号、そして/または制御機能35、37および38は、局所的最大値34および局所的最低値35を過ぎた後に作動する。局所的最大値34から局所的最低値35までの反発力の低下の後に、使用者はそう急速には反応できない。従って、局所的最大値34より大きくなければならない、比較的大きな、当初の加動力によって、使用者はトリガー15を押圧し続ける。結果として、トリガー15の経路終端39の止点まで、トリガー15はきわめて急速に引込まれるかまたは押圧されるので、すべての機能36〜38は確実に開始されることとなる。これにより、使用者の習性による影響は減らされる。
【0030】
トリガー15の個々の機能36〜38の間に充分なあそびを設けることができる。これにより、部品の誤差による影響は減らされる。鋲打機1を基材から持ち上げた後に、鋲が遅れて出る可能性はもはやない。鋲打機の鋲設定端部5が基材に対してなおも押圧される間に限って、点火が起こるからである。これは、一方でよりよい設定品質に、そして他方で安全性の改善に寄与する。
【0031】
これによる別の効果は、使用者が、本人がトリガー15を起動させたことを示す、明白な触覚的フィードバックを感じ取ることにある。この方法により、本人は、鋲打機が起動した時点をよりよく認識できる。きわめて正確な設定位置決めが必要とされるときに、これは特に有効である。使用者は、本人が鋲設定端部5により狙いをつけると同時に、比較的に小さな印加力で反発力ピークを越えて望まない設定動作を開始してしまうことを恐れることなく、トリガー15上に指を置くことができる。
【0032】
図5〜図7は、反発力スプリング40を異なる視点から示している。反発力スプリング40は湾曲する板ばねとして構成され、鋲打機のハンドル内でその端部の2つの支持点41および42で支持される。板ばね40の曲がった形状によるクリッカー作用があり、使用者は、板ばねの曲げの始めの数ミリメートルにおいて、図4の局所的最大値34の形の力のピークを越えなければならない。局所的最大値34を過ぎてから、板ばね40によって動作する反発力は、局所的最低値35に急速に下がり、作動経路の残り部分は低い値のままである。図7の矢印45は、トリガー15により力がおおよそ板ばね40の湾曲の凸形側の中央に作用することを示す。
【0033】
図8は、ハウジングが開いた状態の、鋲打機51の実施例の斜視図を示す。鋲打機51のハンドル54内において、図5〜図7に示した反発力スプリング40が、図1〜図3のトリガー15に対応するトリガー55とスイッチ装置58との間に、取り付けられている。
【符号の説明】
【0034】
1 鋲打機
2 ハウジング
3 シリンダ
4 ハンドル
5 鋲設定端部
6 鋲ガイド
8 燃焼室スリーブ
10 プレス・ロッド機構
12 圧縮ばね
15 トリガー
18 スイッチ装置
20 反発力生成装置
24 ブラケット
25 支持具
30 曲線
31 x軸
32 y軸
40 反発力スプリング
42、42 支持点
45 矢印
51 鋲打機
54 ハンドル
55 トリガー
58 スイッチ装置






【特許請求の範囲】
【請求項1】
設定動作を開始するために、反発力に対抗する力を作用させることによって作動することができるトリガー(15、55)を備えた、留め具を基材に設定するための鋲打機において、
局所的最大値(34)を有する反発力移動曲線をもつ反発力生成装置(20)が当該トリガー(15、55)に付随する、
ことを特徴とする鋲打機。
【請求項2】
前記反発力は前記局所的最大値(34)の前そして/または後で、直線的に前記局所的最大値(34)まで上昇する、ことを特徴とする請求項1に記載の鋲打機。
【請求項3】
前記反発力は、前記局所的最大値(34)の後に局所的最小値(35)を有する、ことを特徴とする請求項1または2に記載の鋲打機。
【請求項4】
前記反発力は、前記局所的最大値(34)の後よりも前記局所的最大値(34)の前でより急傾斜で上昇する、ことを特徴とする前記請求項のいずれか1に記載の鋲打機。
【請求項5】
前記反発力は、前記局所的最大値(34)の後は経路終端まで前記局所的最大値(34)以下に保たれる、ことを特徴とする前記請求項のいずれか1に記載の鋲打機。
【請求項6】
前記局所的最大値(34)は、到達すると前記鋲打機(1、51)の所定の機能が起動する経路地点(36、37、38)の少なくとも一つより前に位置する、ことを特徴とする前記請求項のいずれか1に記載の鋲打機。
【請求項7】
前記局所的最大(34)は、到達すると設定動作が起動する前記経路地点(36)の前に設けられる、ことを特徴とする前記請求項のいずれか1に記載の鋲打機。
【請求項8】
前記反発力生成装置(20)は、反発力スプリング(40)からなる、ことを特徴とする前記請求項のいずれか1に記載の鋲打機。
【請求項9】
前記反発力スプリング(40)は、湾曲した板ばねとして構成される、ことを特徴とする請求項8に記載の鋲打機。
【請求項10】
前記反発力スプリング(40)は、前記トリガー(15、55)と前記スイッチ装置(18、58)との間に設けられる、ことを特徴とする請求項8または9に記載の鋲打機。
【請求項11】
前記反発力スプリング(40)は、2つの支持点(41、42)および1つの力導入点(45)を有する、ことを特徴とする前記請求項のいずれか1に記載の鋲打機。
【請求項12】
前記反発力スプリング(40)は、1つの支持点(41)および1つの力導入点(45)を備える、ことを特徴とする前記請求項のいずれか1に記載の鋲打機。
【請求項13】
トリガー(15、55)に対し力が加えられたとき、
反発力ピーク(34)を越えた後に設定動作が起動する、
ことを特徴とする前記請求項のいずれか1に記載の鋲打機の操作方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−240195(P2012−240195A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−106639(P2012−106639)
【出願日】平成24年5月8日(2012.5.8)
【出願人】(591010170)ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト (339)
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, LIECHTENSTEIN
【Fターム(参考)】