説明

鋳型砂とその製造方法

【課題】耐熱性が高く低膨張性や低破砕性に優れ、注湯温度が高い大形鋳鋼品の鋳造にも適用でき、砂の再使用性に優れており、しかも製造時の収率が高く安価に実施できる鋳型砂およびその製造方法を提供する。
【手段】鋳型砂は、Alが50〜85重量%、MgOが5〜40重量%、SiOが0重量%を超え20重量%以下の化学成分を有し、Alの重量%とMgOの重量%とSiOの重量%との合計が100重量%以下であり、かつ、スピネル単独、または、スピネルとアルミナ、ムライト、コーディエライト、およびサフィリンのいずれかとの複合物を結晶構成の一種とする溶融球状物を含み、この溶融球状物が30〜3000μmの粒度分布を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は溶融球状物からなる鋳型砂とその製造方法に関する。詳しくは、耐熱性、低膨張性、低破砕性、生産収率、砂の再使用性に優れており、注湯温度が高い大形鋳鋼品の鋳造にも適用できるうえ、製造コストが安価な鋳型砂とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
鋳造工場で使用される鋳型砂は、一般に有機系や無機系の粘結剤を添加して所定形状にされ、これを硬化させることで鋳型に成型される。そしてこの鋳型に金属溶湯が注入されることで鋳造品が製造される。
【0003】
上記の鋳型の製造方法としては、フラン樹脂法やアルカリフェノール樹脂法、CO−水ガラス法、セラミックモールド法、セラミックシェルモールド法などが知られている。これら製造方法の相違点には、使用する粘結剤および成型方法がある。
【0004】
フラン樹脂法はフラン樹脂に有機酸を添加して硬化させるものである。アルカリフェノール樹脂法はアルカリフェノールを有機エステルで硬化させるものである。フェノール樹脂法はRCS法とも言われ、レジンコーテッドサンド(以下RCSという)を熱硬化させて鋳型を成型する方法である。CO−水ガラス法は珪酸ナトリウムを添加した鋳型砂に炭酸ガスを吹き付けて硬化成型する方法である。セラミックモールド法およびセラミックシェルモールド法は精密鋳造法に使用される鋳型造型法で、鋳型用砂は精密鋳造鋳型骨材またはスタッコ材としての使用がなされる。
【0005】
鋳型砂は、一般的に珪砂が用いられている。しかし、珪砂は573℃において急激な熱膨張が現れるため、それらによる鋳造欠陥を発生し易いといった問題点がある。また、珪砂は加熱によって砂粒子が破壊され易いため、鋳型砂とした場合に発塵が多くなり、廃棄物が多量に生じるという環境上の問題点がある。
【0006】
従来、上記問題点を解消するため、合成ムライトの原料からなる微粉末を焼成して球状化した鋳型砂が提案されている(特許文献1参照)。すなわち、この鋳型砂は、化学成分がAlが20〜70重量%でSiOが80〜30重量%となるようにスラリー状に泥漿(スラリー状物)を配合し、これに解こう剤を添加してスプレードライヤーにより微粒化し、これをロータリーキルンにて1550℃付近で焼結して球状の鋳型砂としている。
【0007】
このような鋳型砂は、珪砂に比べて強度が高く、廃棄物の減少化と砂の再使用率の向上、鋳型強度の向上、さらに粘結剤の使用量の減少によるコスト面での効果に優れている。しかしながら、これらの鋳型砂は上記配合のスラリー状物を噴霧して得た微粒子を焼結していることから、焼結物である微粒子の表面はムライト結晶として存在している。しかもその表面は、図9(c)に示す走査型電子顕微鏡(以下、「SEM」と称する)写真の如く、凹凸形状となっていて滑らかではない。
【0008】
このように、砂粒子の表面に凹凸が多いと、砂粒子への粘結剤の吸着量の増加、ひいては粘結剤の使用量が多くなりコスト高になるうえ、砂粒子の破砕性を増大させる傾向がある。また、回収した鋳型砂に含まれる残留物が多くなることで耐熱性と硬化特性を低下させる問題がある。その結果、この鋳型砂はリサイクル性や強度的に安定した鋳型特性を得る観点からは未だ十分とは言えない状態にある。
【0009】
そこで、砂粒子の表面を平滑にした鋳型砂を得るための製造方法として、上記の造粒して焼結する方法(特許文献1参照)の他に、アーク溶融吹き込み法(特許文献2参照)が提案されている。アーク溶融吹き込み法は、Al−SiO系の耐火物原料を溶融させ、高圧ガスを吹き付けて微粒子状に飛散させながら冷却固化することで、Alが40〜90重量%、SiOが60重量%以下でムライト並びにアルミナの結晶構造を有する溶融球状鋳型砂を得る方法である。この方法によれば、図9(a)に示すSEM写真の如く、表面が平滑な砂粒子を得ることができる。
【0010】
アーク溶融吹き込み法に用いられる鋳型砂製造装置が、製造装置としては簡易であり、汎用装置として適用実績が多く、連続溶融作業が可能であることから、アーク溶融吹き込み法は、工業的に実施する製造方法としては最適な方法として考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特公平3−47943号公報
【特許文献2】特許第3878496号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、Al−SiO系の原料をアーク法で溶融して高圧ガスで吹き込む場合、例えば、カオリン繊維(Alが45.5重量%、SiOが50.5重量%)やボーキサイト繊維(Alが70重量%、SiOが23重量%)のようなSiOの重量%が高い成分が原料中に多く含まれていると、原料の溶融点が低くなると同時に高圧ガスの吹き付けによって鋳型砂が繊維状や楕円状になり易い。つまりカオリン繊維やボーキサイト繊維のようなSiOの重量%が高い成分が原料中に多く含まれていると目的とする球状砂の作成が困難となる。
【0013】
また、上記の従来技術においてはムライト(3Al・2SiO;化学成分Alが71.8重量%、SiOが28.2重量%)およびアルミナに近い範囲にある組成の原料を使用する場合が多い。その場合においても、SiOの含有量は比較的高いため、高圧ガスで飛散した溶融物は繊維状や楕円状の粒子になる傾向があり、そのため、鋳型砂に適した球状粒子を容易に得ることができない。このように、鋳型砂に適した球状粒子砂を効率よく得ることに対しては更なる改善が必要であり、問題点として残されている。
【0014】
さらに、アーク溶融時の炭素による還元反応を原因としてシリカの分離が生ずることがある。シリカの分離が生ずると浮遊微粒子の粉塵が多量に発生し易い。それによって吹き付け後の球状粒子の生産性が劣ることや作業環境が劣悪となるといった作業環境の悪化が懸念されている。
【0015】
そこで、本願発明の目的は、上記課題を鑑み、耐熱性が高く低膨張性や低破砕性に優れ、注湯温度が高い大形鋳鋼品の鋳造にも適用でき、なおかつ、砂の再使用性に優れており、しかも製造時の収率が高い鋳型砂を提供することである。また、別の目的は、その鋳型砂の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記の課題を解決するために、本発明の請求項1に係る鋳型砂は、Alが50〜85重量%、MgOが5〜40重量%、SiOが0重量%を超え20重量%以下の化学成分を有し、Alの重量%とMgOの重量%とSiOの重量%との合計が100重量%以下であり、かつ、スピネル(MgO・Al)を結晶構成の一種とする溶融球状物を含み、この溶融球状物が30〜3000μmの粒度分布を有することを特徴とする。
【0017】
また、本発明の請求項2に係る鋳型砂は、スピネル(MgO・Al)と、アルミナ(α−Al)、ムライト(3Al・2SiO)、コーディエライト(2MgO・2Al・5SiO)、およびサフィリン(4MgO・5Al・2SiO)のいずれかとの複合物を結晶構成の一種とし、Alが50〜85重量%、MgOが5〜40重量%、SiOが0重量%を超え20重量%以下の化学成分を有する溶融球状物を含み、Alの重量%とMgOの重量%とSiOの重量%との合計が100重量%以下であり、溶融球状物が30〜3000μmの粒度分布を有することを特徴とする。
【0018】
また、本発明の請求項3に係る鋳型砂の製造方法は、MgO源およびアルミナ源の少なくとも一方から調製され、Alが50〜85重量%、MgOが5〜40重量%、SiOが0重量%を超え20重量%以下の化学成分を有し、Alの重量%とMgOの重量%とSiOの重量%との合計が100重量%以下である耐火物原料を溶融炉に投入後、耐火物原料を溶融し、耐火物原料が溶融することで形成された溶融物に高圧ガスを吹き付けて微粒子状に飛散させながら冷却固化することで、スピネルを結晶構成の一種とし、かつ、30〜3000μmの粒度分布を有する溶融球状物を形成することを特徴とする。
【0019】
また、本発明の請求項4に係る鋳型砂の製造方法は、MgO源およびアルミナ源の少なくとも一方から調製され、Alが50〜85重量%、MgOが5〜40重量%、SiOが0重量%を超え20重量%以下の化学成分を有し、Alの重量%とMgOの重量%とSiOの重量%との合計が100重量%以下である耐火物原料を溶融炉に投入後、耐火物原料を溶融し、耐火物原料が溶融することで形成された溶融物に高圧ガスを吹き付けて微粒子状に飛散させながら冷却固化することで、スピネルと、アルミナ、ムライト、コーディエライト、およびサフィリンのいずれかとの複合物を結晶構成の一種とし、かつ、30〜3000μmの粒度分布を有する溶融球状物を形成することを特徴とする。
【0020】
ここで、「溶融球状物」とは、耐火物原料を溶融状態で微粒子化し、球状のまま冷却固化して得たものをいう。この溶融球状物の化学成分はSiOが20重量%を越えると繊維状や楕円状の物が増加する傾向が認められるが、本発明ではスピネルにおけるシリカの重量%を0重量%を超え20重量%以下に設定した場合、溶融物に高圧ガスを吹き付けて飛散させることでより効率的に球状物の製造が可能となる。
【0021】
「複合物」とは、複数の種類の結晶が合わさって1つになったものを言う。上述した「スピネルと、アルミナ、ムライト、コーディエライト、およびサフィリンのいずれかとの複合物」とは、アルミナ、ムライト、コーディエライト、およびサフィリンのいずれかとスピネルとが合わさって1つになったものを意味する。
【0022】
Alが50〜85重量%、MgOが5〜40重量%、SiOが0重量%を超え20重量%以下の化学成分を有し、Alの重量%とMgOの重量%とSiOの重量%との合計が100重量%以下である溶融物は、Al−SiO系耐火物原料の場合の溶融性に比較して溶融時における発塵量が少なく、溶融性、作業環境および生産性が向上し、なおかつ、耐火性に優れるとの特徴がある。
【0023】
また、上記の溶融球状物の結晶構成の一種であるスピネルは硬度が高く、融点が高い(2100℃)。このスピネルの融点は、アルミナ2050℃、ムライト1850℃より高いので、耐熱性が高いうえ低破砕性に優れる結果が得られている。
【0024】
しかも、図3ないし図8に示すとおり、冷却して得られた溶融球状砂の表面はガラス質の如く平滑であり、鋳型砂としては最適な形状を示している。このように、前記の従来技術の焼結により得られた微粒子に比較して表面が極めて滑らかな球面を形成しており、粘結剤の過剰な吸着が防止される効果が現れる。
【0025】
上述したとおり、スピネルを結晶構成の一種とする溶融球状物は、硬度が高い。アルミナ、ムライト、コーディエライト、および、サフィリンのいずれかとスピネルとの複合物を結晶構成の一種とする溶融球状物も、硬度が高い。また、スピネルの融点は2100℃、アルミナの融点は2050℃、ムライトの融点は1850℃、サフィリンの融点は1475℃、コーディエライトの融点は1460℃であるが、これらの複合体の組成としては、スピネル、アルミナ、ムライトを多く含むものが耐熱性の観点からはより好ましい。即ち、鋳型砂として要求される耐熱性は、鋳鉄鋳物の通例の注湯温度が1300℃以上、銅合金鋳物の注湯温度が1100℃以上、アルミニウム合金鋳物の注湯温度が700℃以上で実施されていることを考慮した場合、サフィリン、コーディエライトを一部組成として含む本発明の鋳型砂を使用した場合においても実用上の耐熱性は特に問題はない。又、注湯温度の高い大物鋳鋼用として適用する場合は、スピネル単独又はスピネル、アルミナ、ムライトを多く含む組成物は耐熱性が高くなることから、これらを鋳型砂として適用した場合は実用上より効果的で好ましい。
【0026】
さらに、アルミナ、ムライト、コーディエライト、サフィリンは耐火物原料の溶融直後に含まれるAl−MgO−SiO系の非晶質組成物が1000℃以上の再加熱によって結晶質の安定結晶に転移することで生成する。このことは後述する表1によって明確に示されている。これらは耐熱性のある安定相となることからより好ましい結果となる。
【0027】
上記の鋳型砂は粘結剤を含んでいてもよく、この粘結剤としては、具体的にはフラン樹脂、フェノール樹脂、オイルウレタン樹脂、フェノールウレタン樹脂、アルカリフェノール樹脂、珪酸ソーダ、ベントナイト、耐火粘土、コロイダルシリカ、エチルシリケート加水分解液などをあげることができるが、これらに限定されるものではない。
【0028】
上記の鋳型砂の製造方法において用いる耐火物原料としては、具体的には、Mg−O系の耐火物原料(「MgO源」と称する。)、及び、Al−SiO系の耐火物原料(「アルミナ源」と称する。)を挙げることができる。MgO源の例には、マグネシアクリンカー、焼成マグネサイト、カンラン石、コーディエライト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、スピネル、MgOがある。アルミナ源の例には、合成ムライト、焼成ボーキサイト、ボーキサイト、溶融アルミナ、焼結アルミナ、水酸化アルミニウム、バン土頁岩、シャモット、焼熱焦宝石、焦宝石、仮焼フリントクレー、フリントクレー、カイヤナイト、シリマナイト、アンダルサイト、メタカオリン、及びカオリンがある。もちろん、MgO源、及び、アルミナ源は、これら例示したものに限定されない。さらに、MgO源として上述したものの中から選ばれた1種または2種以上の混合体を用いてもよいし、アルミナ源として上述したものの中から選ばれた1種または2種以上の混合体を用いてもよい。MgO源としてどのようなものを用いるかということ、および、アルミナ源としてどのようなものを用いるかということは、鋳型砂の性状には大きな影響を与えない。
【発明の効果】
【0029】
本発明は上記のように構成され作用することから次の効果(1)〜(3)を奏する。
【0030】
(1)スピネルを結晶構成の一種としているので、溶融球状物の融点が高く、耐熱性に優れるうえ、強度が高く、低膨張性や低破砕性に優れる。この結果、この鋳型砂で形成した鋳型は鋳型強度が高い上SK37(1825℃)以上の高い耐火度を有しており、注湯温度が1550〜1650℃と高い大形鋳鋼品の鋳造にも適用することができる。しかもこの鋳型砂で形成した鋳型は高温時における耐熱性や強度が高いことから、鋳型の高温における型崩れや熱膨張に起因する鋳造欠陥を防止でき、高精度の鋳物を製造することができる。
【0031】
(2)砂粒子が溶融球状物からなるので、砂粒子表面が平滑であり、粘結剤の砂粒子内への浸透等を少なくできることから、粘結剤の使用量が少なく済み経済的である。また、粘結剤の使用量が少ないので、鋳造後の鋳型の崩壊性がよくなり、砂回収時の砂に含まれる残留物が少なくなる。しかも、砂粒子が球状であることから、硬度が高く、破砕性が低い。これらの結果、鋳型砂の回収効率を高くでき、再使用性に優れる。さらに、砂粒子の硬度が高く破砕性が低いことから、粉塵の発生量を低減できる。作業環境を良好にできる上、産業廃棄物を少なくすることができる。
【0032】
(3)スピネルを結晶構成の一種とする溶融物はシリカの含有量が少ないため、高圧ガスの吹き付けによる組成物の繊維化や浮遊粒子の発塵の発生が少なくてほとんどが効率よく溶融球状物となることから、製造時の生産効率が向上して安価な製造を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の鋳型砂の製造に用いられる鋳型砂製造装置の一実施形態を示す概略構成図である。
【図2】鋳型砂のスピネルX線強度比と製品歩留まり、シリカ減耗比率、粉塵発生比率との関係を示したグラフである。
【図3】実施例1−1に係る鋳型砂のSEM写真である。
【図4】実施例2−1に係る鋳型砂のSEM写真である。
【図5】実施例3−1に係る鋳型砂のSEM写真である。
【図6】実施例4−1に係る鋳型砂のSEM写真である。
【図7】実施例5−1に係る鋳型砂のSEM写真である。
【図8】実施例6−1に係る鋳型砂のSEM写真である。
【図9】従来技術にかかる鋳型砂のSEM写真である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
なお、以下の説明では、
(A) 本発明の鋳型砂の製造に用いられる鋳型砂製造装置の説明
(B) 鋳型砂製造装置(A)により鋳型砂を製造する手順について
(C) 実施例と比較例との説明
(D) 実施例と比較例との対比
の流れに従い説明する。
【0035】
(A) 本発明の鋳型砂の製造に用いられる鋳型砂製造装置の説明
図1は、本発明の鋳型砂の製造に用いられる鋳型砂製造装置の一実施形態を示す概略構成図である。鋳型砂製造装置(1)は、耐火物原料(2)を収容し溶融する溶融炉(3)と、高圧空気を吹き出す(その結果、耐火物原料(2)の溶融物(4)を飛散させる)高圧空気吹付け装置(5)と、飛散して冷却固化した溶融球状物(6)を捕集する捕集容器(7)とからなる。
【0036】
溶融炉(3)はアーク溶融炉からなり、耐火物原料(2)を溶融するためのアークを発生させる電極(8)と、溶融物(4)を流出する出湯口(9)とを備える。
【0037】
高圧空気吹き付け装置(5)は高圧空気供給装置(10)と空気供給路(11)と吹き込みノズル(12)とを順に備える。この吹き込みノズル(12)のノズル口(13)は、出湯口(9)の下方位置で水平方向に位置している。そしてこのノズル口(13)の吹き出し方向前方の下方位置に捕集容器(7)を配置している。
【0038】
本実施形態では、耐火物原料(2)を溶融する溶融炉(3)としてアーク炉を用いたが、本発明に用いる溶融炉は特定の形式のものに限定されず、例えば、坩堝炉、誘導電気炉、電気炉、反射炉、真空溶融炉等を用いることができる。ただし、この実施形態のようにアーク炉を用いると、比較的操作が容易で経済的であるため好ましい。
【0039】
上記の溶融炉(3)の出湯口(9)から耐火物原料(2)の溶融物(4)を流出させる方法は、傾注方式や開孔方式などを用いることができるが、開孔方式を採用すると一定の流出量を容易に安定維持でき、好ましい。
【0040】
本実施形態では、耐火物原料(2)の溶融物(4)を飛散させる高圧ガスとして高圧空気を用いており安価に実施できるが、本発明で用いる高圧ガスは、得られる溶融球状物(6)に悪影響を与えない範囲で、この高圧空気に代えて高圧水蒸気や他の種類の高圧ガスを用いることができる。また、本実施形態では、高圧空気で飛散された溶融物(4)が大気中を移動する間に自然冷却するように構成してあるが、上記の鋳型砂製造装置(1)は、冷却水などを用いた強制冷却部を備えていてもよい。そのような強制冷却部の具体的構造は周知なので、ここではその詳細な説明は繰返さない。
【0041】
(B) 鋳型砂製造装置により鋳型砂を製造する手順について
次に鋳型砂製造装置(1)により鋳型砂を製造する手順について説明する。
最初に、作業者は、MgO源およびアルミナ源の少なくとも一方を、例えば100mm以下程度の適当なサイズになるまで粉砕し、溶融炉(3)に収容する。
【0042】
本実施形態で使用する耐火物原料(2)は、乾燥結晶水を除く化学成分がAlが50〜85重量%、MgOが5〜40重量%、SiOが0重量%を超え20重量%以下に調製してあればよい。ただし、Alの重量%とMgOの重量%とSiOの重量%との合計は100重量%以下でなくてはならない。上述したように、MgO源として、マグネシアクリンカー、焼成マグネサイト(重焼マグネシア、軽焼マグネシア)、カンラン石、コーディエライト、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、スピネル、MgOなどを用いる。アルミナ源として、合成ムライト、焼成ボーキサイト、ボーキサイト、溶融アルミナ、焼結アルミナ、水酸化アルミニウム、バン土頁岩、シャモット、焼熱焦宝石、焦宝石、仮焼フリントクレー、フリントクレー、カイヤナイト、シリマナイト、アンダルサイト、メタカオリン、カオリンなどを用いる。作業者は、MgO源とアルミナ源とのうち少なくとも一方を乾燥または仮焼して脱水することにより所定の化学成分となるように調製したものを上述した耐火物原料(2)として使用する。
【0043】
上記の耐火物原料(2)には、Fe、TiO、CaO、NaO、KOの少なくとも一種を、本実施形態にかかる鋳型砂の作用を阻害しない範囲で含んでもよい。鋳型砂の総含有量に占めるその含有量の割合は10重量%以下とすることが望ましい。
【0044】
作業者は、上記の溶融炉(3)内に収容した耐火物原料(2)を溶融させる。耐火物原料(2)は、溶融炉(3)内でアーク熱によって溶融する。アーク熱は溶融炭素電極(8)に通電することにより発生する。このときの炉内の溶融温度は、通常、1800〜2300℃の範囲が選ばれる。そしてこの溶融物(4)は、所定量が溶融炉(3)の出湯口(9)から流出して落下していく。
【0045】
上記の出湯口(9)から落下する溶融物(4)には、高圧空気供給装置(10)から供給され空気供給炉(11)を経由して吹き込みノズル(12)のノズル口(13)から水平方向へ広角に吹き出される高圧圧縮空気が吹き付けられる。これにより、上記の溶融物(4)は風砕分散される。風砕分散された溶融物(4)は直ちに溶融粒子自体の表面張力によって球状化するとともに、大気中を移動する間に自然冷却されて固化する。その結果、所定の粒子径を有した溶融球状物(6)が形成される。その溶融球状物(6)は補集容器(7)内に落下堆積して捕集される。
【0046】
なお、上記溶融球状物(6)の粒度分布は、耐火物原料(2)の組成や溶融温度、高圧空気の吹き付け位置、圧力、吹き付け速度、吹き込みノズル(12)のノズル口(13)の形状(円形状または板状など)、吹き付け面積、吹き付け角度(水平または上向きなど)、飛散距離によって調整が可能である。
【0047】
作業者は、上述した過程を経て捕集された溶融球状物(6)を、空冷および水冷の少なくとも一方により冷却したのち、3000μmよりも大きい粒子と30μm以下の小さい粒子とを篩分けにより除去する。これにより、30〜3000μmの粒度分布の溶融球状物(6)からなる鋳型砂が完成する。
【実施例】
【0048】
(C) 実施例と比較例との説明
以下、本発明の一実施形態における実施例1−1〜6−2と比較例1−1、1−2、2とについて説明する。
[実施例1−1]
作業者は、Alの重量%が約70重量%、SiOが1〜2重量%、そしてMgOが約20重量%となるよう、粒径10ミリメートル以下の溶融アルミナと粒径10ミリメートル以下のマグネシアクリンカーとを適宜混合した原料を調製した。作業者は、その原料15kgを図1に示す鋳型砂製造装置(1)の溶融炉(3)すなわちアーク炉(75KVA、3個の炭素アーク電極を上方部より挿入)で1時間溶融した。次に、作業者は、溶融した原料を溶融炉(3)より排出させて、高圧空気供給装置(10)すなわちコンプレッサー(風量11m/min)より排出した高圧圧縮空気をその溶融した原料に吹き付けた。これにより球状粒子化した溶融物(4)が得られたので、作業者は、そこから粒径が600マイクロメートル以下のものを採取し、鋳型砂とした。粒径が600マイクロメートル以下の溶融物(4)を採取したのは、そのようなものが鋳型砂として用いるための実用的な粒度分布を示すためである。
【0049】
[実施例1−2]
作業者は、実施例1−1の鋳型砂を1500℃で再焼成することにより、鋳型砂を得た。
【0050】
[実施例2−1]
作業者は、Alの重量%が約55重量%、SiOが約10重量%、そしてMgOが約30重量%となるよう、粒径20ミリメートル以下のAl−SiO系耐火物原料(ムライト−アルミナ結晶系、Alが75重量%、SiOが20重量%)と粒径10ミリメートル以下のマグネシアクリンカーとを適宜混合した原料を調製した。その後、作業者は、実施例1と同様の方法により鋳型砂を製造した。
【0051】
[実施例2−2]
作業者は、実施例2−1の鋳型砂を1500℃で再焼成することにより、鋳型砂を得た。
【0052】
[実施例3−1]
作業者は、Alの重量%が約65重量%、SiOが約10重量%、そしてMgOが約20重量%となるよう、実施例2−1と同様のAl−SiO系耐火物原料と粒径10ミリメートル以下の重焼マグネシアとを適宜混合した原料を調製した。その後、作業者は、実施例1と同様の方法により鋳型砂を製造した。
【0053】
[実施例3−2]
作業者は、実施例3−1の鋳型砂を1500℃で再焼成することにより、鋳型砂を得た。
【0054】
[実施例4−1]
作業者は、Alの重量%が約60重量%、SiOが約10重量%、そしてMgOが約15重量%となるよう、実施例2−1と同様のAl−SiO系耐火物原料と粒径10ミリメートル以下のカンラン石とを適宜混合した原料を調製した。その後、作業者は、実施例1と同様の方法により鋳型砂を製造した。
【0055】
[実施例4−2]
作業者は、実施例4−1の鋳型砂を1500℃で再焼成することにより、鋳型砂を得た。
【0056】
[実施例5−1]
作業者は、Alの重量%が約75重量%、SiOが約10重量%、そしてMgOが約10重量%となるよう、実施例2−1と同様のAl−SiO系耐火物原料と粒径10ミリメートル以下のマグネシアクリンカーとを適宜混合した原料を調製した。その後、作業者は、実施例1と同様の方法により鋳型砂を製造した。
【0057】
[実施例5−2]
作業者は、実施例5−1の鋳型砂を1500℃で再焼成することにより、鋳型砂を得た。
【0058】
[実施例6−1]
作業者は、Alの重量%が約80重量%、SiOが約10重量%、そしてMgOが約5重量%となるよう、実施例2−1と同様のAl−SiO系耐火物原料と粒径10ミリメートル以下のマグネシアクリンカーとを適宜混合した原料を調製した。その後、作業者は、実施例1と同様の方法により鋳型砂を製造した。
【0059】
[実施例6−2]
作業者は、実施例6−1の鋳型砂を1500℃で再焼成することにより、鋳型砂を得た。
【0060】
[比較例1−1]
作業者は、Alの重量%が約75重量%、SiOが約15重量%、そしてMgOが5重量%以下となるよう、原料に粒径20ミリメートル以下のAl−SiO系耐火物原料(ムライト−アルミナ結晶系、Alが63重量%、SiOが32重量%)を使用し、実施例1と同様の方法により鋳型砂を製造した。
【0061】
[比較例1−2]
作業者は、Alの重量%が約80重量%、SiOが約10重量%、そしてMgOが5重量%以下となるよう、原料に粒径20ミリメートル以下のAl−SiO系耐火物原料(ムライト−アルミナ結晶系、Alが75重量%、SiOが20重量%)を使用し、実施例1と同様の方法により鋳型砂を製造した。
【0062】
[比較例2]
市販の合成ムライト系球状砂であるセラビーズ(登録商標)#650を用いた。
【0063】
(D) 実施例と比較例との対比
[結晶組成について]
実施例1−1〜実施例6−2にかかる鋳型砂と比較例1−1、1−2、2にかかる鋳型砂との結晶組成の分析を行った。さらに、それらの鋳型砂についてX線回折を行った。表1は、それらの鋳型砂の組成とX線回折のメインピーク強度とを示す。
【0064】
【表1】

【0065】
表1から明らかな通り、実施例1−1〜実施例6−2にかかる鋳型砂では、全てにおいてスピネルが認められた。一方、比較例1−1、1−2、2いずれにおいてもスピネルは認められなかった。比較例1−1、1−2にかかる鋳型砂ではα−アルミナとムライトとが認められた。比較例2かかる鋳型砂ではムライトが認められた。このことから、従来方式の合成ムライト及びアルミナ系の溶融球状粒子と本実施形態にかかる鋳型砂とは結晶構造を異にしていることが明らかである。
【0066】
また、表1から明らかな通り、Al−MgO−SiO系鋳型砂においてスピネルが得られる成分組成がAlが50〜85重量%、MgOが5〜40重量%、SiOが0重量%を超え20重量%以下であってこれらの合計が100重量%以下であるものということが判明した。
【0067】
また、表1において示される実施例1−2、実施例2−2、実施例3−2、実施例4−2、実施例5−2、実施例6−2のX線回折分析の結果からは、それらに、アルミナ、ムライト、コーディエライト、サフィリンが含まれていると言える。このことは、実施例1−1にかかる鋳型砂、実施例2−1にかかる鋳型砂、実施例3−1にかかる鋳型砂、実施例4−1にかかる鋳型砂、実施例5−1にかかる鋳型砂、および、実施例6−1にかかる鋳型砂を1500℃の高温で再焼成したことにより、Al−MgO−SiO系の非晶質(これは鋳型砂製造時において主要結晶鉱物であるスピネルの他に残留していたもの)が、アルミナ、ムライト、コーディエライト、あるいはサフィリンといった安定相へ結晶変態したことを示す。また、これらの結晶変態からAl量、MgO量、SiO量によって再結晶化の量が異なり組成の影響の大きいことが示された。
【0068】
[シリカの減耗比率について]
アーク熱による溶融時には溶融物(4)よりシリカの分離が生じて粉塵化し易いが、シリカの分離が生じて粉塵化した場合には作業環境の劣化と溶融球状粒子の生成歩留まりが低下する結果とを伴う。このことから、シリカの減耗比率が溶融球状粒子の生成歩留まりの高低に影響することと、シリカの減耗比率がシリカの分離による作業時の粉塵発生量に対する尺度となることが類推される。そして、シリカの減耗比率がシリカの分離による作業時の粉塵発生量に対する尺度となること(言い換えると、減耗したシリカが作業時の粉塵となっていること)は、溶融作業時の粉塵発生状況の観察結果と局所的に設置した集塵機で回収した集塵粉の量とからも裏付けられている。そこで、これらの溶融物(4)の生成歩留まりと粉塵化を類推する方法として溶融前のシリカ成分と溶融後のシリカ成分とを測定し溶融前後のシリカ比を求めてシリカの減耗比率として算出した。溶融時の粉塵発生量の指標については従来技術(比較例1−1、1−2)の合成ムライト系におけるシリカ減耗比率に対する比較値として数値化することで示すものとした。
【0069】
以上の測定結果を表2および図2に示す。表2は、本実施形態に係る実施例1−1、2−1、3−1、4−1、5−1、6−1および比較例1−1、1−2の溶融球状粒子の成分と歩留まり(収率)と減耗比率と粉塵発生の比率とを示す。図2は、鋳型砂のスピネルX線強度比と、製品歩留まり、シリカ減耗比率、および粉塵発生比率との関係を示したグラフである。なお、表2に示す「減耗比率」とは、次の式(1)で示される値である。この比率が高いほど溶融時の発塵量SiO減量値が多くなる傾向となる。
【0070】
(数1)
減耗比率(%)=100-(溶融物のSiO値)/(原料のSiO値)×100 (1)
【0071】
【表2】

【0072】
製造時の溶融物の原料に対するSiOの減耗比率(表2参照)を調べた結果、実施例1−1、2−1、3−1、4−1、5−1、6−1にかかるスピネル系溶融物の製造にあたっては、従来技術のムライト、アルミナ系溶融物に比較してSiOの減耗比率が大幅に低くなる傾向となっている。すなわち、溶融時の溶融球状粒子の生成量が多くなり(=歩留まりが向上し)、更に、粉塵の発生量が少なくて溶融作業時の作業環境に優れることが明らかとなった。特に、600μm以下の粒径を有した溶融球状粒子の歩留まり(表2において「−600μm〜」と示される値)が比較例1−1、1−2のものに比べて大きく向上することが明らかとなっている。ちなみに、表2において「+600μm〜」と示される値は、600μmを超える粒径を有した溶融球状粒子の歩留まりを示す。
【0073】
なお、粉塵発生比率は、1500℃で焼成したときスピネルX線強度比が大きくなるに従って低下する傾向となり、実施例1−1および実施例2−1において特に顕著となる。「スピネルX線強度比」とは、実施例1−1にかかる鋳物砂のX線回折強度を「1」とした場合の各実施例にかかる鋳型砂のX線回折強度の比である。実施例1−1にかかる鋳型砂の成分は、スピネルの理論値成分である「Al/MgO=71.7/28.3」に最も近い。
【0074】
[粒度分布などについて]
実施例1−1〜実施例6−2にかかる鋳型砂について、粒度分布の分析、嵩密度(日本鋳造協会試験法S−10)、pH(日本鋳造協会試験法S−3)、および酸消費量(日本鋳造協会試験法S−4)の測定、ならびに耐熱性に関する試験を実施して、比較例1〜比較例2にかかる鋳型砂との比較を行った。その結果により、実施例1−1〜実施例6−2にて製造された鋳型砂が実用に充分耐えられるか、支障はないかを判断することができる。
【0075】
上記の粒度分布の分析は鋳型砂の粒度試験方法(JISZ2601)によって粒度分布を測定し、粒度指数(AFS)を算出した。すなわち、篩の呼び寸法が、2360μm、1180μm、850μm、600μm、425μm、300μm、212μm、150μm、106μm、75μm、53μm、となる標準篩を選び、それらを重ねて試料100gを投入して、ロータップ篩機で15分間篩い分ける。そして各篩の上に残った重量を計測して分布割合として表示する。
【0076】
一般に鋳型砂としては、粒度分布が3000μm以下(好ましくは600μm以下)から30μm篩上(好ましくは45μm篩上)の間に分布するのが好ましく、粒度分布についてはJISZ2601に規定されている方法に準じて粒度指数AFS30、40、50、60、70、100、150レベルのものが選ばれる。試験結果を表3に示す。
【0077】
【表3】

【0078】
表3に示したデータより、上記実施例で得られたそれぞれの鋳型砂が、具体的には粒度分布がほとんど75〜600μmの範囲内に収まり、粒度指数が46.7〜55.3となっていることが観測された。これらの観測データより、従来技術の鋳型砂と比べて、同等の鋳型砂の粒度指数を示し実用性が十分に得られることがわかった。
【0079】
実施例1−1〜実施例6−2にかかる鋳型砂の嵩密度は比較例1−1、1−2にかかる鋳型砂とほぼ同等であり、実用上支障はない。また、上記実施例で得られた鋳型砂それぞれのpH値は、6.62〜6.94の中性値の領域を示しており、酸消費量も従来技術の鋳型砂と同等である。
【0080】
よって、実施例1−1〜実施例6−2にかかる鋳型砂は実用上全く支障がないものであった。
【0081】
[鋳型砂の表面について]
図3ないし図8は、本実施形態に係る鋳型砂の走査型電子顕微鏡(SEM)による砂粒子の写真である。なお、図3は実施例1−1に係る鋳型砂のSEM写真である。図4は実施例2−1に係る鋳型砂のSEM写真である。図5は実施例3−1に係る鋳型砂のSEM写真である。図6は実施例4−1に係る鋳型砂のSEM写真である。図7は実施例5−1に係る鋳型砂のSEM写真である。図8は実施例6−1に係る鋳型砂のSEM写真である。図9は比較例1−1(a)、1−2(b)、比較例2(c)に係る鋳型砂のSEM写真である。図3ないし図8に示すSEMによる写真から明らかであるように、上記実施例の鋳型砂の表面はガラス質の如く平滑な球形をなし、特に比較例2の凹凸の顕著な形状に比べて、これらは鋳型を成型する場合の充填密度を向上させることや粘結剤の被覆性を向上させて添加量を削減することに効果を奏する。
【0082】
[耐熱性試験について]
本実施形態に係る鋳型砂は、スピネル(融点:2100℃、主成分:MgOおよびAl)を含む。スピネルの融点はアルミナ結晶の融点(2050℃)および合成ムライト結晶の融点(1850℃)より高いことから、スピネルには耐熱性に関する効果のあることが期待される。もちろん、アルミナ、ムライトに関しても一化学成分として鋳型砂として使用する場合の耐熱性は十分に認められ、これらも含有する本実施形態に係る鋳型砂の耐熱性は十分であることが認められる。よって、本実施形態に係る鋳型砂にこれらの組成物が含有されていても何ら差し支えはない。
【0083】
また、各結晶の化学組成の領域によっては、スピネル(MgO・Al;化学成分はAlが71.7重量%、MgOが28.3重量%)の他に、サフィリン結晶(4MgO・5Al・2SiO;化学成分はAlが64.4重量%、MgOが20.4重量%、SiOが15.2重量%)、コーディエライト結晶(2MgO・2Al・5SiO;化学成分はAlが34.9重量%、MgOが13.8重量%、SiOが51.3重量%)を含有する場合がある。サフィリン結晶の融点は1475℃であり、コーディエライト結晶の融点は1460℃であるが、本発明砂の組成の領域を示すものにおいては、鋳型砂として使用するに当たって、特に支障はない。
【0084】
以上の点を確認するため、次の試験を実施することにより耐熱性の比較を行った。
【0085】
実施例1−1〜6−2のスピネル溶融球状鋳型砂の中で、スピネル(MgO・Al)、アルミナ(α−Al)、ムライト(3Al・2SiO)、を主要組成(Al、MgO、SiO)とし、かつ、Feの成分値を同一レベルとした実施例1−1、2−1、3−1、5−1、6−1の鋳型砂(表1に記載の各実施例の溶融球状粒子の成分を参照)と、比較例1−1、1−2の鋳型砂(ムライト、アルミナ系溶融球状砂)と、比較例2の鋳型砂(合成ムライト焼結球状砂)と、クロマイトサンドとを使用してアルカリフェノール鋳型を製造し、それらを1550℃で焼成して耐熱性を調べた。
【0086】
鋳型の製造について、鋳型砂100重量部(2kg)に対して、アルカリフェノール樹脂(神戸理化学工業株式会社製、商品名PHENIX 510A)を1.1〜2.0重量部添加した。使用する樹脂添加量は各砂の比重を考慮して表4に示すとおり設定した。混合は、試験用品川式万能ミキサー(株式会社品川工業製、5DMR型)で行い、有機エステル硬化剤(神戸理化学工業株式会社製、C−10)をアルカリフェノール樹脂100重量部に対して20重量部添加し、30秒混合した後、さらに樹脂を添加して30秒混合し排砂した。混合砂は直ちに50φ×50mmの試験片取り木型に充填して成型し、24Hr放置後抜型して試験に供試した。試験片の焼成は、カンタル炉で1550℃×1Hr加熱し、取り出し空冷後、試料を14meshロータップ篩機(飯田製作所社製)に投入して1分間振とうした。その後、篩上に残留した焼結砂の量を計測し、投入砂に対する割合として算出した。このとき、篩上に残留した焼結砂の残留割合が鋳型砂の耐熱性の指標となるものとして比較した。
【0087】
表4は、焼結残留物量を示す。ちなみに、図中においてカッコ書きで示されている結晶名は1500℃で焼成した後に生成された結晶を示す。この表4に示される結果より、本実施形態に係る鋳型砂の組成として、スピネル並びにスピネルとα−アルミナ、ムライトを含む組成物(実施例1−1、実施例5−1、実施例6−1)に関しては、特に焼結残留物が極めて少なく、比較例1−1、1−2、2と比較しても耐火性に特に優れることが示されている。
【0088】
【表4】


【0089】
耐火性が高いことは、鋳造品に対する鋳型の焼着不良などの鋳造欠陥に対して有利になると同時に、鋳造後の鋳型の崩壊性に対しても有利になることが考えられる。その点においても、本実施形態に係る鋳型砂の特徴とするところである。
【0090】
[粘結剤について]
上記の鋳型砂は、従来の鋳型砂と同様に処理され各種の粘結剤を用いた鋳型に成型されて使用することができる。これらの粘結剤としては、例えば、フラン樹脂、フェノール樹脂、オイルウレタン樹脂、フェノールウレタン樹脂、アルカリフェノール樹脂、珪酸ソーダ、ベントナイト、耐火粘土、コロイダルシリカ、エチルシリケート加水分解液などが上げられる。
【0091】
上記の粘結剤はそれぞれの用途に応じた硬化剤の使用によって硬化させる。具体的には、フラン樹脂の硬化剤としては、硫酸、燐酸、燐酸エステル、ピロ燐酸などの無機酸、キシレンスルホン酸、トルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸が挙げられる。フェノール樹脂用の硬化剤としてはヘキサメチレンテトラミンなどが挙げられる。珪酸ソーダ用の硬化剤としては炭酸ガス、ダイカルシリケート、Fe−Si粉末、有機エステルなどが挙げられる。ベントナイト及び耐火粘土については所定量の水を添加して混練した後につき固めて、あるいはジョルトスクイズ方式で成型して使用される。コロイダルシリカ及びエチルシリケート加水分解液はロストワックス法やセラミックモールド法あるいは消失模型鋳造法の分野に使用され、本実施形態に係る鋳型砂をこれらの造型材として使用する。
【0092】
なお、これらの粘結剤の使用量は、鋳型砂の充填性や鋳造時のガス発生等の鋳造欠陥との関連性からできるだけ少ないほうが好ましい。本実施形態に係る鋳型砂を用いた場合は、従来の焼結法により作成した球状鋳型砂を用いた場合に比較して、後述のように鋳型強度が約1.5倍の値を示しており、砂粒子の表面が平滑なことも相まって粘結剤の使用量を減少させることができる。
【0093】
上記の鋳型砂で成型した鋳型は、対象鋳物としては特に限定されず、種々の鋳物の鋳造に使用することができる。具体的には、アルミニウム、銅、普通鋳鉄、ダクタイル鋳鉄、ステンレス鋼を挙げることができる。また、本実施形態に係る鋳型砂は、球形に近いことから高い充填性と通気性が得られるので、鋳型強度に起因する鋳造欠陥やガス欠陥の少ない鋳物の製造が可能である。具体的には、鋳型砂を、フラン鋳型鋳造法やアルカリフェノール鋳型鋳造法の肌砂に適用して高クロム鋳鋼品を鋳造した結果、鋳物離れの良い美麗な鋳物肌をもつ無欠陥の鋳物をつくることができた。
【0094】
[破砕性について]
上記の鋳型砂で鋳造を終えた後、この鋳型砂の回収再生率が鋳造工場の現場では重要な要因となる。この回収再生率は、鋳型砂の破砕性の良否が重要な決め手となり、破砕性が低いほど好ましい。そこで本実施形態に係る鋳型砂の破砕性を、上記の従来の溶融法及び焼結法による鋳型砂並びに一般鋳物砂との比較を行いながら本実施形態に係る品の優位性を調べた。
【0095】
破砕性の測定方法としては、鋳型砂の破砕試験方法(JFS試験法S−6)によって調べた。鋳型砂の破砕試験用の試験試料としては本実施形態に係るスピネル系溶融球状砂(実施例1−1、2−1、3−1、4−1、5−1、6−1)、ムライト、アルミナ系溶融球状砂(比較例1−1、1−2)、焼結法による球状砂(比較例2)、クロマイトサンド(比較例3)を用いた。
【0096】
試験方法は、1L磁性ポットミルに20mmアルミナセラミックボール10個と試料100gを入れ30分回転処理を行い、処理前後の砂の粒度測定を行う。粒度測定結果よりAFS粒度指数を算出し、次式(2)で破砕率を求めた。破砕性の測定結果を、表5に示す。
【0097】
(数2)
破砕率(%)=(回転処理後の粒度指数/原砂の粒度指数)×100 (2)
【0098】
【表5】

【0099】
本実施形態に係るスピネル系溶融球状砂(実施例1−1、2−1、3−1、4−1、5−1、6−1)の破砕性は、従来のムライト、アルミナ系溶融球状砂(比較例1−1、1−2)及び焼結法球状砂(比較例2)の場合に比較して、破砕による粒度の変化が小さく破砕性に優れることが認められた。さらに、本実施形態に係るスピネル系溶融球状砂(実施例1−1、2−1、3−1、4−1、5−1、6−1)の破砕性は、従来の鋳鋼用鋳型砂(クロマイトサンド;比較例3)の場合に比較しても、耐破砕性において顕著に優れる結果となった。これらの結果から、本実施形態に係る鋳型砂を鋳型として使用したとしても、従来技術(合成ムライト系焼結球状砂;比較例2)にて製造した鋳型砂を鋳型としたものと比較して、回収再生に対して有利となることが明らかとなった。
【0100】
また、本実施形態に係る鋳型砂を使用して実際に所定の形状を有した鋳物を製造後、その使用済みの鋳型から鋳型砂を回収したところ、容易に再生処理することができた。使用済みの鋳型から鋳型砂を再生処理する方法は、特に限定されず公知の方法の何れにおいても採用することができる。
【0101】
[試験1:フラン樹脂鋳型の圧縮強度]
本実施形態に係る鋳型砂(実施例1−1、2−1、3−1、4−1、5−1、6−1)、従来技術のムライト、アルミナ系溶融球状砂(比較例1−1、1−2)、合成ムライト系焼結法球状砂(比較例2)を使用して、フラン樹脂法(フラン樹脂に有機酸を添加し硬化させる鋳型形成法)によりそれぞれ鋳型を成型した。その成型方法としては、フラン樹脂(花王クエーカー社製、340B)鋳型砂100重量部(2kg)に対し、1.0重量部(合成ムライト系焼結法球状砂の場合は1.2重量部)使用し、酸硬化剤(花王クエーカー社製、C−14)はフラン樹脂100重量部に対し50重量部使用した。成型時の気温は20℃で、湿度は60%であった。なお、混合は上述した試験用品川式万能ミキサーを使用し、供試砂に酸硬化剤を添加して30秒混合後、更にフラン樹脂を添加して30秒混合して排砂した。排砂後50φ×50mmの試験片取り木型に充填して24Hr硬化させ抜型して試験片鋳型とした。得られた試験片鋳型の経過時間毎の圧縮強度及び充填密度を抗圧試験機(オリエンテック社製、H−3000D)により測定した。その結果を表6に示す。表6の「フラン樹脂鋳型の圧縮強度」欄には、実施例および比較例それぞれに関するフラン樹脂鋳型の圧縮強度および充填密度が記載されている。
【0102】
【表6】

【0103】
上記の結果から本実施形態に係る鋳型砂をフラン樹脂法に使用した結果、従来技術(比較例2)に比較して圧縮強度が極めて高く、特に24時間放置後の強度としては従来技術の比較例2に比べて約1.9倍の高強度を示した。これは本実施形態に係る溶融球状鋳型砂の平滑な表面形状と球状形状が効果的に作用したものであり、鋳型の充填密度の向上、強度の向上及び粘結剤の添加量の低減に対して効果が示された。
【0104】
[試験2:アルカリフェノール樹脂鋳型の圧縮強度]
本実施形態に係る鋳型砂(実施例1−1、2−1、3−1、4−1、5−1、6−1)、従来技術のムライト、アルミナ系溶融球状砂(比較例1−1、1−2)、合成ムライト系焼結法球状砂(比較例2)を使用して、アルカリフェノール樹脂法(アルカリフェノール樹脂を有機エステルで硬化させる鋳型形成法)によりそれぞれ鋳型を成型した。その成型の際、アルカリフェノール樹脂(神戸理化学工業株式会社製、商品名PHENIX 510A)を鋳型砂100重量部に対し2.0重量部(合成ムライト系焼結法球状砂の場合は2.5重量部)使用し、有機エステル硬化剤(神戸理化学工業株式会社製、C−10)をアルカリフェノール樹脂100重量部に対して20重量部使用した。また、成型時の気温は20℃で、湿度は60%であった。供試砂、硬化剤、樹脂の混合方法及び試験片作成方法は[試験1:フラン樹脂鋳型]の場合と同様の方法で実施した。得られた試験片鋳型の経過時間毎の圧縮強度及び充填密度を測定した。表6の「アルカリフェノール樹脂鋳型の圧縮強度」欄には、実施例および比較例それぞれに関するアルカリフェノール樹脂鋳型の圧縮強度および充填密度が記載されている。
【0105】
上記の測定結果から明らかなように、本実施形態に係る鋳型砂をアルカリフェノール樹脂法に使用した場合、従来技術(比較例2)に比べて高い圧縮強度が得られ、特に24時間放置後では従来技術に比べて1.5〜1.6倍の高い鋳型強度が得られた。これらについても前記[試験1:フラン樹脂鋳型]と同様に本実施形態に係る溶融球状鋳型砂の平滑な表面形状と球形形状が効果的に作用したものであり、鋳型の充填密度の向上、鋳型強度の向上及び粘結剤添加量の低減に対して効果が示された。
【0106】
[試験3:アルカリフェノール樹脂鋳型の熱膨張率]
本実施形態に係る鋳型砂(実施例1−1、2−1、3−1、4−1、5−1、6−1)を使用し、アルカリフェノール樹脂法により熱膨張率測定用の試験片を作製した。具体的には、アルカリフェノール樹脂(花王クエーカー社製、S661K)を鋳型砂100重量部に対し1.2重量部使用し、有機エステル硬化剤(花王クエーカー社製、QX140)をアルカリフェノール樹脂100重量部に対し25重量部使用して、直径50mm×高さ50mmの試験片を作製した。成型時の気温は20℃で、湿度は60%であった。なお、供試砂と硬化剤、樹脂の混合方法及び試験片作成方法は[試験1:フラン樹脂鋳型]の場合と同様の方法で実施した。上記の方法で作成した試験片を直示式熱膨張計(オザワ科学株式会社製、EOS-3)にセットし、1000℃に保持した電気炉内で急熱した時の熱膨張率を測定した。比較例として従来技術によるムライト、アルミナ系溶融球状砂(比較例1−1、1−2)、合成ムライト系焼結法球状砂(比較例2)、クロマイトサンド及びフラタリー珪砂(輸入珪砂)と比較して測定した。各砂に対する樹脂の添加量は表6に記載している。各例の熱膨張率の結果を表6の「アルカリフェノール樹脂鋳型の熱膨張率」欄に示す。表6に示した結果から明らかなように、本実施形態に係る鋳型球状砂は、熱膨張率が小さい。したがって、従来に比べて、熱膨張に起因するベーニング、すくわれ、絞られといった鋳造欠陥の防止に対して有効であることが明らかである。
【0107】
[試験4:再生砂]
本実施形態に係る鋳型砂(実施例1−1、2−1、3−1、4−1、5−1、6−1)、従来技術によるムライト、アルミナ系溶融球状砂(比較例1−1、1−2)、合成ムライト系焼結法球状砂(比較例2)を使用し、アルカリフェノール樹脂法により[試験2:アルカリフェノール樹脂鋳型の圧縮強度]に準じて作製した鋳型を成型し、市販の砂再生機を使用して再生砂を得た。さらに、これらの操作を3回繰り返して鋳型を成型し、24時間放置後の圧縮強度を測定した。鋳型の作成はアルカリフェノール樹脂(神戸理化学工業株式会社製、商品名PHENIX 510A)を鋳型砂100重量部に対し2.0重量部(合成ムライト系焼結法球状砂の場合は2.5重量部)使用し、有機エステル硬化剤(神戸理化学工業株式会社製、C−10)をアルカリフェノール樹脂100重量部に対して20重量部使用した。また、成型時の気温は20℃で、湿度は60%であった。再生砂を使用した試験片鋳型の経過時間毎の圧縮強度及び充填密度を測定した。その結果を表6の「再生砂の鋳型強度」欄に示す。上記の測定結果から明らかなように、本実施形態に係る鋳型砂を再生した場合の鋳型強度は、従来技術(比較例2)の鋳型砂に比較して再生砂を使用したことによる強度低下が少ない。特に、3回再生した砂を使用した場合には従来技術の約3倍の鋳型強度を有することがわかった。この結果は、本実施形態に係る溶融球状鋳型砂が平滑球状であることから、鋳型砂粒子表面に粘結剤の残留が少なく、粘結剤の繰り返し添加に対しても悪影響を与えないことを示唆している。比較例2の場合は、図9(b)の鋳型砂のSEM写真からも明らかな如く鋳型砂表面が多孔質であり、その結果、粘結剤の残留が多くなりやすく、それらが粘結剤の繰り返し添加の作用に悪影響を与えたものと推察される。
【0108】
[鋳造試験結果]
本実施形態により製造したスピネル系溶融砂(実施例1−1、2−1、3−1、4−1、5−1、6−1)、従来技術によるムライト、アルミナ系溶融砂(比較例1−1、1−2)、焼結法による球状砂(比較例2)を使用してアルカリフェノール鋳型の中子(50φ×60H)を作製した。上型には、中央に湯口と押し湯(この場合は、鋳型上部に設けられる溶湯を溜める部分のこと)を兼用設置した。下型には、270φ×120Hの空洞部を設けた。その空洞部の底部にあたる箇所に、上述した50φ×60Hの中子を設置した。中子は円周上に均等な間隔を保つよう配置した。中子の下端は空洞部の底部にあたる箇所に埋め込んだ。中子の埋め込み深さは10ミリメートルとした。これにより、中子のうち金属溶湯に接触する部分のサイズは50φ×50Hとなる。この鋳型に、高周波溶融炉で溶解した高クロムニッケル鋼(出湯温度1550℃、鋳込み重量50kg)を取鍋で注湯して中子部と接触した金属肌(ショットブラスト後)の観察を行った。
【0109】
なお、中子砂の配合は、溶融球状砂100重量部に対してアルカリフェノール樹脂1.5重量%、樹脂に対する硬化剤添加量を25重量%とし、これらを品川式万能ミキサーで混練して50φ×60H試験片取り木型に充填して24時間硬化抜型した。また、同一中子で塗型ありの領域と塗型なしの領域とを設けた。焼結球状砂(セラビーズ(登録商標)#650)の場合は樹脂添加量を2.0重量%とし、樹脂に対する硬化剤添加量を25重量%とし、外型の鋳型砂は三河6号硅砂100重量%に水ガラス6重量%を添加混練したもので成型し炭酸ガスで硬化させた。結果を表7に示す。表7に示す鋳造試験の結果から、本実施形態に係る溶融法で作成した中子の鋳物肌は良好であり実用性に対して問題のないことが明らかであった。
【0110】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0111】
本発明は、耐熱性が高く低膨張性と低破砕性に優れるうえ、鋳型特性及び砂の再使用性に優れている。しかも製造時の収率が高く安価に実施できるので、大形鋳鋼品用のほか各種の鋳型に用いる鋳型砂として利用することができる。
【符号の説明】
【0112】
1 鋳型砂製造装置
2 耐火物原料
3 溶融炉
4 溶融物
5 高圧空気吹き付け装置
6 溶融球状物
7 捕集容器
8 電極(炭素電極)
9 出湯口
10 高圧空気供給装置
11 空気供給路
12 吹き込みノズル
13 ノズル口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
Alが50〜85重量%、MgOが5〜40重量%、SiOが0重量%を超え20重量%以下の化学成分を有し、前記Alの重量%と前記MgOの重量%と前記SiOの重量%との合計が100重量%以下であり、かつ、スピネル(MgO・Al) を結晶構成の一種とする溶融球状物を含み、この溶融球状物が30〜3000μmの粒度分布を有することを特徴とする、鋳型砂。
【請求項2】
スピネルと、アルミナ、ムライト、コーディエライト、およびサフィリンのいずれかとの複合物を結晶構成の一種とし、Alが50〜85重量%、MgOが5〜40重量%、SiOが0重量%を超え20重量%以下の化学成分を有する溶融球状物を含み、前記Alの重量%と前記MgOの重量%と前記SiOの重量%との合計が100重量%以下であり、前記溶融球状物が30〜3000μmの粒度分布を有することを特徴とする、鋳型砂。
【請求項3】
MgO源およびアルミナ源の少なくとも一方から調製され、Alが50〜85重量%、MgOが5〜40重量%、SiOが0重量%を超え20重量%以下の化学成分を有し、前記Alの重量%と前記MgOの重量%と前記SiOの重量%との合計が100重量%以下である耐火物原料を溶融炉に投入後、前記耐火物原料を溶融し、前記耐火物原料が溶融することで形成された溶融物に高圧ガスを吹き付けて微粒子状に飛散させながら冷却固化することで、スピネルを結晶構成の一種とし、かつ、30〜3000μmの粒度分布を有する溶融球状物を形成することを特徴とする、鋳型砂の製造方法。
【請求項4】
MgO源およびアルミナ源の少なくとも一方から調製され、Alが50〜85重量%、MgOが5〜40重量%、SiOが0重量%を超え20重量%以下の化学成分を有し、前記Alの重量%と前記MgOの重量%と前記SiOの重量%との合計が100重量%以下である耐火物原料を溶融炉に投入後、前記耐火物原料を溶融し、前記耐火物原料が溶融することで形成された溶融物に高圧ガスを吹き付けて微粒子状に飛散させながら冷却固化することで、スピネルと、アルミナ、ムライト、コーディエライト、およびサフィリンのいずれかとの複合物を結晶構成の一種とし、かつ、30〜3000μmの粒度分布を有する溶融球状物を形成することを特徴とする、鋳型砂の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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