説明

鋳物砂の冷却装置及び鋳物砂の回収処理設備

【課題】水冷却や圧送空冷による問題点(水配管の必要性、冷却能の限界)を解決できる鋳物砂(古砂)の冷却装置を提供すること。
【解決手段】 鋳型を解砕(型ばらし・粉砕)して発生する鋳物砂(古砂)を冷却する装置。前記古砂を冷却する熱交換帯Z1、Z2を備え、該熱交換帯Z1,Z2の一端を、吸引式集塵機の吸引口を接続し、熱交換帯Z1、Z2が、上下方向に形成されるとともに、該熱交換帯に吸引式集塵機と接続させて上昇集塵気流が生成可能とされて、砂を上昇集塵気流と直接流動接触させて熱交換する。熱交換帯は、古砂の直立空気輸送をすると同時に冷却をする直立輸送管からなるリフタ部で形成する並流熱交換帯Z1とするか、又は、砂が流動層を形成しながら落下可能な径の小孔を多数有する多孔板7を、一端側に溢流間隙部を交互に形成可能に上下方向に多段に配した多段流動層部により形成する向流熱交換帯Z2とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳型を解砕(型ばらし・粉砕)して発生する鋳物砂(古砂)の冷却装置および該冷却装置を適用する鋳物砂の回収処理設備に関する。特に、自硬性鋳型や減圧造型(Vプロセス)鋳型、さらには生型の型ばらし砂に好適な鋳物砂の冷却装置および回収処理設備に係る発明である。なお、以下、「鋳物砂(古砂)」を、単に「砂」と称することがある。
【背景技術】
【0002】
使用後の鋳型の鋳物砂は、通常、鋳型を解砕(型ばらし・粉砕)および一連の副工程からなる回収処理をして再使用する。
【0003】
しかし、高温の砂をそのまま回収処理しようとすると、コンベアやサンドストレージに付着したり、造型の際模型にしみついたり、その他の鋳物不良の原因となる(非特許文献1;第600頁、特許文献1;第1頁最下段〜第2頁最上段等)。
【0004】
そして、型ばらし直後の砂の冷却装置として、水管式の熱交換器を用いることは公知である(例えば、特許文献1;第2頁第2・3段および第6・7図、特許文献2;段落0008・0009、図1〜4)。
【0005】
しかし、水管式の熱交換器には腐食や、それに伴う水漏れの問題、送水圧に耐える水密構造や、それを製作する上での、工作上の難しさや、さらには冷却水を循環利用するためのポンプや冷却塔などの付帯設備の必要性があった。
【0006】
他方、投射式サンドクーラや、振動式サンドクーラを用いたり(非特許文献1第600頁)、傾斜砂受け板等を備えたラックを傾斜方向が上下方向で千鳥となるように配置した鋳物砂冷却装置(特許文献1登録請求の範囲、図5)を用いたりして、砂を冷却用空気と直接接触させて空冷する方法も公知である。
【0007】
しかし、上記のような空冷式の場合には、いずれも空気を導入するための送風機を設ける必要がある。このため、送風機による圧縮のため導入空気の温度が上昇し、この分(例えば5℃以上)、砂温が高くなり、空冷による砂に必要な冷却効果を得難かった。
【0008】
また、砂を流動化して空冷する場合は、砂を流動化するのに適切な風量と冷却に必要な風量とは別に定まる。このため、適切な風速で、鋳物砂の冷却に必要な風量を吹き込むには、必要とされる流動床の延べ面積が増大し大規模の装置となったり、水管式の熱交換器を併設したりする必要があった(例えば、特許文献2;請求項1、図1等)。
【0009】
特に、自硬性鋳型の型ばらし砂を回収処理して再生利用する場合、下記の如く、砂の冷却温度は造型生産性に大きな影響を与える。
【0010】
自硬性鋳型は砂に樹脂や硬化剤を加え混練し型枠に流し込んで、化学反応により、樹脂を硬化させ鋳型を造型するものであるから、硬化が始まる前に造型に使える時間や、抜型可能な砂型強度に達するまでの時間は、周囲(即ち、気温)や砂の温度に大きく依存する。
【0011】
近年、自動的に、砂温や気温を測定し、硬化剤の成分や混合比を変化させ、硬化速度を調節する装置が普及している。この硬化速度の調節には、所定の工程時間で、ムラなく安定した鋳型の強度を得るために、周囲(即ち、気温)と砂の温度差が、小さくなるよう(例えば5℃以内)に管理することが求められる。
【0012】
また、自硬性鋳型の砂の回収処理では、砂が細粒化して微粉が増加するので、そのまま使用すると、比表面積の増加により、粘結剤の層厚が薄くなり、自硬性鋳型強度の低下を招くことになる。このため、通常、自硬性鋳砂の回収処理設備における砂再生機に、集塵気流を利用した微粉除去機構を組み込む必要があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】実願昭61−190307号添付明細書・図面(実開昭63−95648号)。
【特許文献2】特開平10−249483号公報
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】日本鋳物協会編「鋳物便覧改訂3版」丸善株式会社、昭和48年5月20日発行、p600
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、上記問題点(課題)「水の使用による装置の腐食や工作上の難しさや冷却水を得るための付帯設備の必要性、水を使わない場合でも、空気を吹込むための昇圧により気温が上昇(例えば気温+5℃以上)し、砂温が高くなる」を解決することのできる鋳物砂(古砂)の冷却装置および回収処理設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、上記課題を解決するために、鋭意開発に努力をする過程で、鋳物砂の回収処理設備等に付設されている集塵機の吸引圧を利用して室温空気を冷却装置内に導入して砂と直接流動接触させれば、上記問題点を解決できることを知見して下記構成の鋳物砂の冷却装置に想到した。
【0017】
鋳型を解砕(型ばらし・粉砕)して発生する鋳物砂(古砂)を冷却する装置であって、
前記砂を冷却する熱交換帯を備え、該熱交換帯の一端に、吸引式集塵機の吸引口が接続され、
前記熱交換帯が、上下方向に形成されるとともに、該熱交換帯が前記吸引式集塵機と接続されて上昇集塵気流が生成可能とされて、前記砂を前記上昇集塵気流と直接流動接触させて熱交換する構成であることを特徴とする。
【0018】
より具体的には、前記熱交換帯を、前記砂の直立空気輸送をすると同時に冷却をする一本又は複数本の直立輸送管からなるリフタ部により形成する並流熱交換帯とする構成としたり、又は、前記砂が流動層を形成しながら落下可能な径の小孔を多数有する多孔板を、一端側に溢流間隙部を交互に形成可能に上下方向に多段に配した多段流動層部により形成する向流熱交換帯としたりする構成とする。
【0019】
また、上記構成の砂の冷却装置を組み込んだ砂の回収処理設備は、下記のような構成となる。
【0020】
鋳型を解砕(型ばらし・粉砕)して発生する砂を回収処理する設備において、
前記鋳型の解砕装置と、回収処理後の砂を貯留する砂貯留ホッパとの間に、第一砂冷却装置と第二砂冷却装置とが配され、
前記第一砂冷却装置が、直立空気輸送をすると同時に冷却をする1本又は複数本の直立輸送管からなるリフタ部により形成されている並流熱交換帯を備えたものであり、
前記第二砂冷却装置が、砂が流動層を形成しながら落下可能な径の小孔を多数有する多孔板を、一端側に溢流間隙部を交互に形成可能に上下方向に多段に配した多段流動層部により形成されている向流熱交換帯を備えたものである、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、集塵気流を使用して、「水の使用による装置の腐食や工作上の難しさや冷却水を得るための付帯設備の必要性、および水を使わない場合でも、空気を吹込むための昇圧により到達可能な砂温が高くなる」という問題を解決できる。
【0022】
即ち、鋳物砂の回収処理設備において、一般的に使用される集塵機の負圧(吸引圧)による気流を使用することにより、空気を導入するための送風機を設ける必要無しに、砂粒子と空気の直接接触による空冷を行うことで解決することができる。
【0023】
本発明によれば、送風機によらずに外気(室温空気)を導入することで、室温近く(例えば気温+5℃以内)まで砂を冷却することが可能である。また、水を使わないので、耐蝕、耐圧構造とする必要が無く、工作上の難しさが無く、装置の構造が簡単になり、冷却水を得るための付帯設備も不要となる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明におけるリフタ式と多段流動層式とを連結させて構成する鋳物砂の冷却装置の一例を示す立面概略断面図である。
【図2】図1における多孔板における一端折り曲げ加工前の拡大平面図および多孔板と塔状筐体両側内壁との間に形成される溢流間隙部を示す要部拡大断面図である。
【図3】(A)、(B)は、本発明におけるリフタ式と多段流動層式の各冷却装置を分離して使用する場合の各鋳物砂の冷却装置の一例を示す立面概略図((B)は平面図も付記する。)である。
【図4】本発明の鋳物砂の冷却装置を組み込んだ自硬性鋳型の砂の回収処理設備の全体立面図である。
【図5】図4のV―V線矢視概略図である。
【図6】図4のVI―VI線矢視概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明を実施するための形態を、図例に基づいて説明する。以下の説明で、負圧は特に断らない限りゲージ圧を意味する。
【0026】
(1)図1〜2に、本発明におけるリフタ式と多段流動層式とを連結させて構成する鋳物砂の冷却装置の一例を示す。
【0027】
リフタ式の第一冷却装置Lと、多段流動層式の第二冷却装置Sと、連結シュート4とを備え、第一・第二冷却装置L,Sが、連結シュート4の入口側・出口側に接続されて連結されたものである。連結シュート4は第一冷却装置Lに対しては砂排出機能を、第二冷却装置Sに対しては、砂投入機能を担う。
【0028】
第一冷却装置Lは、リフタ式であって、1本又は複数本の直立輸送管2からなるリフタ部により並流熱交換帯Z1が形成されている。直立輸送管2は、砂の直立輸送をすると同時に冷却をするものである。ここで「直立輸送管」の「直立」の態様は、当該作用が阻害されない限り、若干傾斜する「直立」も含む。
【0029】
そして、該直立輸送管2の下部には砂投入シュート1を備えている。
【0030】
砂投入シュート1は、直立輸送管2の下部の側部位置に、蓋体1aにより閉じられる砂投入口1bを有し、直立輸送管2の左右両側に吸気口1cを有する構成である。該吸気口1cは、図例では、ガラリ(羽板)14で構成されている。ガラリ14を設けることで集塵機が停止した場合でも投入された砂は安息角で停留し、吸気口1cから砂こぼれしない構造となる。本実施例では中抜円板形状のガラリを3枚水平に設置している。さらに、ガラリ14の直下の砂投入シュート1の底壁には、圧縮空気供給源(図示せず)と連結された補助気吹(吹込み口)13が形成されている。
【0031】
この補助気吹13は、排気管6の負圧が不足する場合や、何らかの原因により輸送が不安定な場合、または、直立輸送管2が閉塞した場合に、圧縮空気を吹き込むことによりエゼクタとして作用させ、これらを解消するものである。
【0032】
また、連結シュート4における第一冷却装置Lとの連結側の天井部4aは気密構造とされ、該天井部4aの下面には衝突板(堰板)3が形成されている。衝突板3があることで、砂は周囲に飛散して壁面を損耗することなくシュートに落下し、第二冷却装置Sへ流下することとなる。
【0033】
第二冷却装置Sは、多段流動層式であって、連結シュート4の出口側に接続された塔状筐体12内に、砂が流動層を形成しながら落下可能な径の小孔7aを多数有する多孔板7を、一端側に溢流間隙部8を交互に形成可能に上下方向に多段に配した多段流動層部により向流熱交換帯Z2が形成されている。
【0034】
該向流熱交換帯Z2を形成する最下段の多孔板7の下側の塔状筐体12の側壁部に、外気(又は雑排気)導入口9と、塔状筐体12の底壁により形成される冷却砂排出シュート17とを備えている。
【0035】
ここで、向流熱交換帯Z2を形成する多孔板7の段数は、多段流動層部における交換すべき熱量と伝熱係数から求められるが、通常、10〜40段の範囲から要求特性に応じて適宜設定をする。
【0036】
ここで、多孔板7は、一端側に溢流間隙部8を交互に備えて、該溢流間隙部8に滞留した砂が、一端側から下方多孔板7に順次流下していく。
【0037】
このため、多孔板7は、水平でもよいが、砂の特性(粒径、比重、温度等)や運転条件によっては、多孔板7を、溢流間隙部8側へ向かって若干傾斜させることが望ましい。その場合の多孔板7の傾斜角度は、通常、10°以内、望ましくは1〜5°の範囲から適宜選定をする。
【0038】
傾斜角度が小さいと、砂の滞留量が増加して圧力損失が大となり易く、逆に、大きいと砂の滞留量が減少して時間あたりの熱交換に関与する砂量が不足し易く、それぞれ熱交換効率が低下するおそれがある。
【0039】
また、多孔板7が有する小孔(図例では、打ち抜き孔)7aの径は、砂の粒子径の300〜1000倍の範囲から適宜選定する。孔径が小さいと小孔を通過する風速が過大となって、圧力損失が大きくなり易い。逆に、大きいと小孔を通過する風速が小となり、小孔から砂が落ちて、砂の多孔板7上における滞留量が減少して熱交換に関与する砂量が少なくなって、熱交換効率が低下する。孔径は、要求冷却性能や、砂の種類等により異なるが、通常の自硬性鋳型の場合、20〜40mmΦである。
【0040】
該多孔板7の開口率は、小孔の通過風速が砂粒子の沈降速度より速くなるように設定して、砂粒子が小孔から落ちにくくなるようにしてある。要求冷却性能や、砂の種類等により異なるが、5〜30%とする。開口率が小さいと小孔を通過する風速が過大となり、圧力損失が大きくなり集塵動力の無駄が発生し易い。逆に、開口率が大きいと小孔を通過する風速が過小となり、小孔から砂が落ちて、熱交換効率に影響を及ぼす。
【0041】
また、多孔板7の一端部に交互に形成される溢流間隙部8は、本実施形態では、多孔板7の素材である打ち抜板(パンチングプレート)7Aの一端にスリット7bを形成するとともに、該スリット7bを跨ぐ位置7cで折り曲げて形成された櫛状折り曲げ部7dで形成されている。
【0042】
すなわち、該溢流間隙部8では、下段より冷却風が上がってくるが、直ちに筐体の壁面に冷却風の淀み(滞留)が発生してこの部分に砂が吸い寄せられて、砂閉塞層(ブリッジ)が形成される。そして、該砂閉塞層が厚くなると、重力が多孔板7の上下の風圧差に打ち勝って下段側へ滑り落ちる。
【0043】
また、連結シュート4における第二冷却装置Sとの連結側の天井部4bは、多孔構造とされ、天井部4bの下面には複数枚の整流板(案内板)5が形成されている。該整流板5は、乱流で回収すべき砂が集塵されるのを防ぐためのものである。
【0044】
天井部4bの上面は、排気屋根16を介して排気管6と接続されている。該排気管6は集塵機(図示せず)と接続されている。
【0045】
次に、上記冷却装置の作用について説明する。
【0046】
第一冷却装置Lでは、集塵機(図示せず)に接続された排気管6により並流熱交換帯Z1が負圧(例えば-500Pa)に引かれ、ガラリ14より外気(例えば30℃)が吸入され、直立輸送管2を砂の沈降速度より高速(例えば10m/s以上)で上昇する。砂投入口1bから投入された高温(例えば140℃)の砂は、前記ガラリ14よりの外気と共に直立輸送管2に吸い込まれる。
【0047】
吸い込まれた砂は乱流により空気中に分散され、空気と並流上昇しながら、並流熱交換帯(リフタ部)Z1で熱交換されて、中程度の温度(例えば70℃)にまで冷却される。輸送風量は、第一冷却装置Lの並流熱交換帯Z1で交換すべき熱量より設定する。このとき、ガラリ14より吸入される冷却空気は外気であり、該冷却装置の設置場所にもよるが、冷却空気の温度は、吸い込まれる砂より十分に低温であるため、並流式であっても一定の冷却効果を得ることができる。
【0048】
第二冷却装置Sでは集塵機に接続された排気管6により向流熱交換帯Z2が負圧(例えば、-500Pa)に引かれ、吸気口9より外気又は、解砕装置の雑排気など、気温に近い(例えば30℃)空気が吸入される。
【0049】
吸入される風量は、第二冷却装置Sの向流熱交換帯Z2で交換すべき熱量から定められるが、その風量となるようにダンパー10を調整する。
【0050】
多孔板7の小孔7aからは塔状筐体12を通過する空気が吹き上げられることになるが、小孔7aの個数は、小孔7aを通過する風速が、砂の沈降速度より高速(例えば4m/s以上)となるように設定されているので、小孔7aから噴出する気流で砂は浮遊(流動)する。
【0051】
塔状筐体12の断面積は、空気の上昇速度が砂の沈降速度より低速かつ、除去したい微粉の沈降速度より高速(例えば0.7m/s程度)となるように定められる。
【0052】
したがって、浮遊した砂に含まれる除去したい微粉は、塔状筐体12の中を、下から吹き上がってくる気流の中で第二冷却装置Sの上方に運ばれる。
【0053】
上部には整流板5が設けてあり、微粉は排気管6を通じて集塵される。
【0054】
多孔板7の片端は、溢流間隙部8として、その部分に砂が溜まり、その重量で多孔板7の上下の風圧差に打ち勝って、下段に砂が溢流するような構造になっている。
【0055】
上記の機構により、シュート4を経て第二冷却装置Sの多孔板7と整流板5の間に投入された中温域(例えば70℃)の砂は、多孔板7上に分散され、塔状筐体12の中で、下から吹き上がってくる気流中で、微粉が除去されつつ、多孔板7で仕切られた各段を浮遊して流動層を形成しつつ、左右に折り返しながら下り、空気と向流して熱交換が行なわれるので、吸気管9より吸引される気温近く(例えば室温+5℃以内)まで冷却される。
【0056】
但し、多孔板7の必要枚数(段数)は、第二冷却装置Sの向流熱交換帯Z2で交換すべき熱量と伝熱係数(実験値)から求まる伝熱面積に相当する砂量を浮遊させて流動層を形成する枚数となる。なお、伝熱面積(砂の表面積)はJIS粒度指数と浮遊砂量(実験値)より求まる。
【0057】
多孔板7は、圧力損失が小さく(例えば100Pa/全段)、整流板5の圧力損失(例えば50Pa)とあわせても、塔状筐体12の下部が、排気管6の負圧に近い負圧となっている。例えば、排気管6の負圧を-500Paとした場合、搭状筐体12の下部における負圧は、+150Paの-350Paとなる。
【0058】
塔状筐体12の下部に設けられた砂排出弁11は、外気の流入を防ぎ、この部分の負圧を保ち、吸気口9で、解砕装置などの雑排気を吸気して集塵可能とするものである。
【0059】
冷却されるとともに微粉が除去された砂は塔状筐体12の下部に溜まる。そして、所定量以上溜まると、その自重で砂排出弁11を押し開け排出される。
【0060】
また、本発明における砂は、その種類を問わないが、微粉を有する乾燥した砂に特に好適に用いることができる。例えば、ベントナイト等を粘結剤とする生型の砂や自硬性鋳型の砂等に好適に用いることができる。また、減圧鋳造鋳型の砂においては、冷却と同時に成形に用いたフィルムの残渣を除去することができ、本装置を好適に用いることができる。
【0061】
また、冷却水が沸騰する心配がないので、焙焼砂等さらに高温(例えば500℃)の砂の冷却にも適する。
【0062】
(2)図3に、本発明の砂冷却装置の他の例を示す。
【0063】
上記の複合冷却型の砂冷却装置において、リフタ式の第一冷却装置Lと、多段流動層式の第二冷却装置Sとを分離して、砂の回収処理装置に適宜組み込むことができる。
【0064】
図1〜2と同一図符号を付して、それらの説明を省略するとともに、相違点についてのみ説明する。
【0065】
図3(A)における第一冷却装置Lの並流熱交換帯Z1は1本又は複数本の直立輸送管2からなるリフタ部で形成されており、砂の冷却を行うと共に該回収処理設備における次工程への輸送装置も兼ねることができる。
【0066】
図3(B)における第二冷却装置Sの向流熱交換帯Z2は、塔状筐体12内に多孔板7を多段に配した多段流動層部により形成されている。向流熱交換帯Z2の上側に砂投入シュート24が連結され、下側に、排出パイプ25aを備えた砂排出ホッパ25が連結されている。
【0067】
さらに、砂投入シュート24の天井部には直接的に集塵可能に専用集塵機27が設置されている。
【0068】
上記砂の冷却装置の作用は、前述と同様であるが、使用に際して、供給用および排出用の各バケットコンベア28、29を本冷却装置Sの前後に配して使用する。なお、架台等を使用して砂を人力投入してもよい。図例中、30は第二冷却装置Sの砂投入口である。
【0069】
本構成により、砂回収処理設備において第一冷却装置Lにより砂の一次冷却を行い、第二冷却装置Sにより砂の二次冷却を行うことができる。これにより、本実施形態の分離タイプの砂の冷却装置は、例えば、自硬性鋳型の砂回収処理設備に好適に用いることができる。自硬性鋳型の砂回収処理設備のレイアウトにもよるが、砂を砂再生機に投入する際にはある程度の冷却が必要であり、その冷却を第一冷却装置Lで行うことができるからである。
【0070】
また、本実施例では第一冷却装置Lおよび第二冷却装置Sを分離し、双方とも該回収処理設備に組み込んだが、必要に応じどちらか一方のみ用いてもよい。また、第二冷却装置Sは該回収処理設備に組み込まず、単に砂冷却装置として使用することもできる。
(3)図4〜6に、本発明の砂冷却装置を組み込んだ自硬性鋳型の砂の回収処理設備(再生ライン)の一例を示す。なお、Aは工場建屋である。
【0071】
本実施形態の砂の回収処理設備は、基本的には、工程順に沿って、解砕(型ばらし・粉砕)装置31、第一冷却装置(リフタ式)L、磁選機33、砂再生機35、第二冷却装置(多段流動層式)S、砂貯留ホッパ(再生砂ホッパ)37を一組として、二列に配したものである。
【0072】
磁選機33と砂再生機35との間、砂再生機35と第二冷却装置Sとの間、第二冷却装置Sと回収処理後の砂を貯留する砂貯留ホッパ(再生砂ホッパ)37との間は、それぞれバケットコンベア41、42、43が配されている。
【0073】
なお、磁選機33には、第一冷却装置Lからの一次冷却砂を、磁選機33に供給するための砂回収ホッパ32が付設されている。さらに、砂再生機35の上方には、磁選後の砂を供給するためのホッパフィーダ34が配されている。
【0074】
第一冷却装置Lを磁選機33の前に配するのは、磁選機33および砂再生機35に解砕により発生した砂を投入する際、砂の温度を高温域(例えば、100〜150℃)から中温域(例えば、60〜80℃)まで冷却するためである。
【0075】
高温のままの砂が、磁選工程やその後の砂再生工程に搬送されると、1)充分な磁選や砂再生ができない、2)砂再生機35や磁選機33等の装置を耐熱性にする必要があるとともに、磁選機33とホッパフィーダ34との間や、磁選機33と第二冷却装置Sとの間に配されるバケットコンベア41、42を耐熱仕様にする必要がある、3)砂回収ホッパ32やホッパフィーダ34に砂が付着したりする(ただし、自硬性鋳型の砂の場合、混練砂以外は付着しない。)、等の問題点が発生し易い。
【0076】
上記解砕装置31は、解砕室44内に配され、鋳型の一次粉砕(粗砕)を行なうシェークアウトマシン45と;ピットP内に配設され、シェークアウトマシン45による型ばらしで発生した塊(団粒)を受けて該塊の二次粉砕(中間粉砕)を行う低床型砂塊粉砕機47と;同じくピットP内に配設され、低床型砂塊粉砕機47で発生する砕製砂から荒粒子を除去するとともに未粉砕団粒を粉砕する団粒粉砕振動篩49とで構成されている。
【0077】
なお、団粒粉砕振動篩49からの砂は、左右に配されたスクリューフィーダ51、51で、それぞれ、複数本(例えば5本)の直立輸送管2、2・・・からなる二組の第一冷却装置L、Lに振り分け可能とされている。
【0078】
解砕室44における使用済鋳型Mの搬入口44bは、駆動暖簾付きダストフード53で走行クレーン55により使用済鋳型Mを搬入可能とされている。
【0079】
なお、図例中、57は荒砂回収箱、59は鉄粉等回収箱、61は処理後の再生砂を混練装置63に搬送するための空気輸送機である。
【0080】
上記実施形態の砂の回収処理設備には、従来と同様、集塵機65が付設されている。
【0081】
そして、集塵機65の集塵本ダクト66は、回収処理設備に対して、下記の如く、各処理装置とともに、第一・第二冷却装置L,Sにも接続されて、第一・第二冷却装置L、Sが、集塵とともに冷却機能を発揮できるようになっている。
【0082】
一次冷却(並流発生)ダクト67は、砂回収ホッパ32の側壁の天井部直下位置に入口側が接続され、その高さ位置で、ホッパフィーダ34の両側を経て、第二冷却装置Sの天井部直下の両側位置で出口側が、集塵本ダクト66の入口側66aに合流接続されている。なお、当該並流発生ダクト67には、ホッパフィーダ34の集塵用パイプ34aが接続されている。
【0083】
ここで、第一冷却装置Sの並流熱交換帯Z1は、減圧度-300〜-1500Paの範囲の負圧に集塵ダクト66により並流発生ダクト67を介して吸引可能とされている。
【0084】
また、集塵本ダクト66には、砂貯留ホッパ(再生砂ホッパ)37の集塵用パイプ37aが接続されている。
【0085】
また、向流発生(二次冷却)ダクト69は、解砕室44の側壁の天井部直下位置に入口側が接続され、第二冷却装置Sの塔状筐体12の吸気口9の同一高さ位置まで下降し、磁選機33の側および砂再生機35の側を経て第二冷却装置Sの吸気口9に接続されている。なお、第二冷却装置Sの排気口70は、集塵本ダクト66の入口側66aに合流接続されている。
【0086】
各冷却装置における、冷却機構は前述と同様である。
【0087】
即ち、解砕室44のダストフード53の隙間から流入した外気は、低床型砂塊粉砕機47が設置されたピットPを経て第一冷却装置Lの直立輸送管2内に流入する。このとき、解砕室44内は搬入された使用済鋳型Mの熱で昇温するが、流入した外気の影響でそれ程昇温せず(周囲気温+0〜20℃)、第一冷却装置Lの直立輸送管2内に流入するため、解砕後の古砂は充分に中温域まで冷却される (例えば、150℃から80℃まで)。
【0088】
また、解砕室44の天井の吸気口44aから流入した外気は、解砕室44内の向流発生ダクト69を経て、第二冷却装置Sの向流熱交換帯Z2に下方から流入する。
【0089】
ここで、第二冷却装置Lの向流熱交換帯Z2は、減圧度-100〜-500Paの範囲の負圧に集塵ダクト(吸引ダクト)66により排気口70を介して吸引可能とされている。
【0090】
このとき、前述と同様、解砕室44内は搬入された使用済鋳型Mの熱で昇温しているが、解砕室44の両外側の下降ダクト69aに流入して外側を通過するため、気温(室温)と殆ど変わらない温度(常温)のままで、第二冷却装置Sの下側吸気口に流入する。このため、再生工程後の再生砂は充分に冷却される(例えば、70℃から気温±5℃)。
【0091】
本発明の実施形態は、上記各実施形態に限られるものではない。本発明は、各請求項に記載に基づく技術的範囲に含まれる限り、下記の如く、種々の態様に及ぶものである。
【0092】
1)本発明の鋳物砂の冷却装置は、自硬性鋳型の回収処理における砂の冷却ばかりでなく、減圧造型鋳型や生型の回収処理における砂の冷却にも適用できる。
【0093】
2)本発明の鋳物砂の冷却装置は、並流熱交換帯を備えたリフタ部と、向流熱交換帯を備えた多段流動層部に分割することが可能で、砂の回収処理設備の中で、それぞれの特性を生かして、単独または別々にレイアウトすることが出来る。
【0094】
3)本発明の並流熱交換帯(リフタ熱交換帯)は、解砕(型ばらし・粉砕)工程直後の高温域(例えば140℃)から異物除去や再生工程に適した中温域(例えば70℃)まで冷却する第一冷却装置として、単独で使用することが出来るとともに、直立空気輸送装置として使用することもできる。
【0095】
4)本発明の向流熱交換帯(多段流動層部)は、中温域(例えば70℃)から造型を行う混練工程に適した気温(例えば30℃)近く(例えば35℃以下)まで冷却可能な第二冷却装置として、単独でも使用することができる。
【0096】
5)本発明の多段流動層部は、圧力損失の大きい砂受用袋体などの流動床を使って、砂を流動化させるのではなく、低密度な状態で、集塵気流に載せるので圧力損失が小さく(例えば150Pa以下)、砂の回収処理設備で、一般に用いられている集塵機を使用することができる。
【0097】
6)本発明は、空気と砂を直接流動接触させるので、投入砂(例えば140℃)を気温近く(例えば気温+5℃以下)まで冷却するのに充分な伝熱面積を容易に確保できる。このため交換熱量は投入砂温にほぼ比例する。即ち、投入砂温が上昇すると、冷却される熱量も増大するので、排出される砂温の上昇は小さく、別段の温度制御機構を設けなくても、排出砂温が安定するという利点がある。
【0098】
7)本発明の向流熱交換帯(多段流動層部)は、塔状筐体内の通過風速を適切に設定することで、自硬性鋳型の砂の再生工程で生ずる微粉を除去することが可能であり、砂再生機と組み合わせて、微粉抜き装置として使用することもできる。
【0099】
8)本発明の多段流動層部を形成する多孔板は、例えば、孔径が砂粒子径の数百倍(例えばφ30)となる打抜板(パンチングプレート)で形成する。打抜板の小孔への通過風速が砂粒子の沈降速度より速くなるように開口率を設定することで、砂粒子が小孔から落ちにくくなるようにしてある。このため従来使用されてきた砂受用袋体などの流動床に比べ、圧力損失が小さく、筐体を集塵経路の一部として、例えば、本発明の冷却装置が組込まれる鋳物砂回収設備の解砕装置の局所排気等に、本発明の冷却装置の吸気口(外気取り入れ口)を接続して、鋳物砂回収設備全体の風量を増加させることなく、鋳物砂回収設備に組込むことができる。
【符号の説明】
【0100】
2・・・直立輸送管
7・・・多孔板
8・・・溢流間隙部
12・・・塔状筐体
L・・・第一冷却装置
S・・・第二冷却装置
Z1・・・並流熱交換帯(リフタ部)
Z2・・・向流熱交換帯(多段流動層部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳型を解砕(型ばらし・粉砕)して発生する鋳物砂(古砂:以下、単に「砂」ということがある。)を冷却する装置であって、
前記砂を冷却する熱交換帯を備え、該熱交換帯の一端に、吸引式集塵機の吸引口が接続され、
前記熱交換帯が、上下方向に形成されるとともに、該熱交換帯が前記吸引式集塵機と接続されて上昇集塵気流が生成可能とされて、前記砂を前記上昇集塵気流と直接流動接触させて熱交換する構成であることを特徴とする鋳物砂の冷却装置。
【請求項2】
前記熱交換帯が、前記砂の直立空気輸送をすると同時に冷却する1本又は複数本の直立輸送管からなるリフタ部により形成されている並流熱交換帯であることを特徴とする請求項1記載の鋳物砂の冷却装置。
【請求項3】
前記熱交換帯が、前記砂が流動層を形成しながら落下可能な径の小孔を多数有する多孔板を、一端側に溢流間隙部を交互に形成可能に上下方向に多段に配した多段流動層部により形成されている向流熱交換帯であることを特徴とする請求項1記載の鋳物砂の冷却装置。
【請求項4】
前記砂の送り方向に沿って第一熱交換帯と第二熱交換帯とを備え、
前記第一熱交換帯が、前記砂の直立空気輸送をすると同時に冷却をする1本又は複数本の直立輸送管からなるリフタ部により形成する並流熱交換帯であり、また、
前記第二熱交換帯が、前記砂が流動層を形成しながら落下可能な径の小孔を多数有する多孔板を、一端側に溢流間隙部を交互に形成可能に上下方向に多段に配した多段流動層部により形成する向流熱交換帯である、
ことを特徴とする請求項1記載の鋳物砂の冷却装置。
【請求項5】
前記第一熱交換帯と前記第二熱交換帯が連結されて構成されていることを特徴とする請求項4記載の鋳物砂の冷却装置。
【請求項6】
鋳型を解砕(型ばらし・粉砕)して発生する鋳物砂を回収処理する設備において、
前記鋳型の解砕装置と、回収処理後の砂を貯留する砂貯留ホッパとの間に、
第一砂冷却装置と第二砂冷却装置とが配され、
前記第一砂冷却装置が、直立空気輸送をすると同時に冷却をする1本又は複数本の直立輸送管からなるリフタ部で形成する並流熱交換帯を備えたものであり、
前記第二砂冷却装置が、前記砂が流動層を形成しながら落下可能な径の小孔を多数有する多孔板を、一端側に溢流間隙部を交互に形成可能に上下方向に多段に配した多段流動層部により形成する向流熱交換帯を備えたものである、
ことを特徴とする鋳物砂の回収処理設備。
【請求項7】
自硬性鋳型の砂の回収処理設備であることを特徴とする請求項6記載の鋳物砂の回収処理設備。
【請求項8】
砂再生機の前工程側及び後工程側に、それぞれ、前記第一砂冷却装置と前記第二砂冷却装置とが配されていることを特徴とする請求項7記載の鋳物砂の回収処理設備。
【請求項9】
前記第一砂冷却装置の後工程側で、且つ、前記砂再生機の前工程側に磁選機が配されていることを特徴とする請求項8記載の鋳物砂の回収処理設備。
【請求項10】
減圧造型鋳型の砂の回収処理設備であることを特徴とする請求項6記載の鋳物砂の回収処理設備。
【請求項11】
生型の砂の回収処理設備であることを特徴とする請求項6記載の鋳物砂の回収処理設備。
【請求項12】
請求項6〜11いずれか一記載の鋳物砂の回収処理設備の運転方法であって、前記第一砂冷却装置の並流熱交換帯を減圧度:-300〜-1500Pa(ゲージ圧)の負圧に吸引するとともに、前記第二砂冷却装置の向流熱交換帯を減圧度:-100〜-500Pa(ゲージ圧)の負圧に吸引して運転することを特徴とする鋳砂の回収処理設備の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−224599(P2011−224599A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−95303(P2010−95303)
【出願日】平成22年4月16日(2010.4.16)
【出願人】(000191009)新東工業株式会社 (474)
【Fターム(参考)】