説明

鋳物砂の混練調整装置及び混練調整方法

【課題】鋳物砂の混練調整装置の稼動開始時と稼動中とに関わらず、鋳物砂を適切に混練調整できて、混練後の鋳物砂の砂特性を安定させる。
【解決手段】鋳物砂の混練調整装置11は、混練機12と、混練前の鋳物砂の温度及び水分量を測定する第1測定手段13と、混練機12内の鋳物砂に水を供給する給水手段14と、給水手段14による水の給水量を制御する制御装置15と、混練後の鋳物砂の特性値を測定する第2測定手段16とを備える。制御装置15の制御部15aは、第1検量線19と第2検量線20とを有しており、第2測定手段16で測定した混練後の鋳物砂の特性値に応じて、特性値が管理範囲内にあるときには、第1検量線19に基づく制御を行い、特性値が管理範囲から外れるときは、第1検量線19に基づく制御から第2検量線20に基づく制御に切り換える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造用の生型の造型に用いられる鋳物砂の混練調整装置及び混練調整方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、鋳造用の生型(鋳型)を造型する生型造型ラインにおいては、鋳物砂の混練調整装置により鋳物砂が混練調整され、その混練調整された鋳物砂が造型機により造型されて生型となる。そして、鋳造ラインにおいては、生型に取鍋から溶湯が注湯され、注湯後の生型は、型バラシ機により型バラシされ、鋳物砂として回収される。その後、回収された鋳物砂(回収砂)は、再び生型造型ラインの混練調整装置に戻される。以上のように、鋳物砂は、一連の循環サイクルを通じて何度も使用されるようになっている。この場合、鋳物砂の混練調整装置には、必要に応じて新砂(新しい鋳物砂)が加えられることもある。
【0003】
ここで従来、鋳物砂の混練調整装置及び混練調整方法としては、例えば、特許文献1に記載されたものが知られている。この鋳物砂の混練調整装置及び混練調整方法は、混練中の鋳物砂の砂高さを距離センサーで測定し、この砂高さとコンパクタビリティ値(CB値)との相関関係から鋳物砂の混練状態を把握し、鋳物砂の不足水分量を演算器及び注水器により注水制御して当該鋳物砂の混練調整を行うものである。
【特許文献1】特開平5−212490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来技術に係る鋳物砂の混練調整装置及び混練調整方法では、混練中の鋳物砂の砂高さとCB値との相関関係に基づいて水の添加量を制御することから、混練調整時において鋳物砂の温度が大きく異なる場合には、水の添加量が適切でないことがあり、混練後の鋳物砂の砂特性を安定させることができなかった。すなわち、鋳物砂の混練調整装置が稼動するまで(長時間)放置されていた鋳物砂と、鋳物砂の混練調整装置を経由して得られる鋳型の型バラシ後に回収された鋳物砂(回収砂)とでは、放置されていた鋳物砂の温度よりも回収砂の温度が高くて大きく異なることから、当該回収砂を混練調整する場合には、添加する水の蒸発分も考慮して水の添加量を適切なものとしなければならず、混練後の砂特性が安定しないという問題がある。
【0005】
本発明は、上述した実情に鑑みてなされたものであり、鋳物砂の混練調整装置の稼動開始時と稼動中とに関わらず、鋳物砂を適切に混練調整できて、混練後の鋳物砂の砂特性を安定させることができる鋳物砂の混練調整装置及び混練調整方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、鋳物砂を水と共に混練可能な混練機と、前記混練機に設けられ、前記混練機内における混練前の鋳物砂の温度及び水分量を測定する第1測定手段と、前記混練機内の鋳物砂に対して水を供給するための給水手段と、前記混練機内の鋳物砂に対して前記給水手段により供給する水の給水量を制御する制御装置と、前記混練機内で混練された混練後の鋳物砂の特性値を測定する第2測定手段とを備えた鋳物砂の混練調整装置であって、前記制御装置は、前記第1測定手段、前記給水手段及び前記第2測定手段にそれぞれ接続された制御部を有すると共に、鋳物砂の混練調整装置が稼動するまで放置されていた鋳物砂の温度及び水分量に基づき、前記混練機内の混練前の鋳物砂に対する前記給水量を決定するための第1検量線と、鋳物砂の混練調整装置を経由して得られる鋳型の型バラシ後に回収された鋳物砂の温度及び水分量に基づき、前記混練機内の混練前の鋳物砂に対する前記給水量を決定するための第2検量線とを有しており、前記制御部は、前記第2測定手段で測定した混練後の鋳物砂の特性値に応じて、当該特性値が管理範囲内にあるときには、前記第1検量線に基づく制御を行うことにより、前記第1測定手段で測定した鋳物砂の温度及び水分量と前記第1検量線とに基づいて前記給水量を決定すると共に、当該給水量を制御し、当該特性値が管理範囲から外れるとき、又は、当該特性値が管理範囲から連続して外れるときには、前記第1検量線に基づく制御から前記第2検量線に基づく制御に切り換えることにより、前記第1測定手段で測定した鋳物砂の温度及び水分量と前記第2検量線とに基づいて前記給水量を決定すると共に、当該給水量を制御することをその要旨としている。
【0007】
請求項1に記載の発明によれば、鋳物砂の混練調整装置を稼動した場合、鋳物砂の混練調整装置が稼動するまで放置されていた鋳物砂が水と共に混練機で混練される。この場合、混練機内の鋳物砂に対して給水手段で供給する水の給水量は、第1測定手段で測定された混練前の鋳物砂の温度及び水分量と第1検量線とに基づいて制御装置の制御部で決定され、その決定された給水量の水は、給水手段によって混練機内の鋳物砂に対して供給される。鋳物砂と水との混練後、混練機内で混練された混練後の鋳物砂は、その特性値が第2測定手段で測定され、第2測定手段で測定された鋳物砂の特性値に応じ、混練機内の鋳物砂に対する給水量が制御部で決定されて制御されるようになる。この場合、混練後の鋳物砂の特性値が管理範囲内にあるときには、制御部で第1検量線に基づく制御が行われることとなり、第1測定手段で測定した鋳物砂の温度及び水分量と第1検量線とに基づいて給水量が決定されると共に、当該給水量が制御される。一方、鋳物砂の混練調整装置が稼動するまで放置されていた鋳物砂の他に、又は、鋳物砂の混練調整装置が稼動するまで放置されていた鋳物砂に変わって、鋳物砂の混練調整装置を経由して得られる鋳型の型バラシ後に回収された鋳物砂が混練機内で水と共に混練された場合には、混練後の鋳物砂の特性値が管理範囲から外れるとき、又は、混練後の鋳物砂の特性値が管理範囲から連続して外れるときがあることから、混練後の鋳物砂の特性値が管理範囲から外れたとき、又は、混練後の鋳物砂の特性値が管理範囲から連続して外れたときには、制御部で第1検量線に基づく制御から第2検量線に基づく制御に切り換えられることとなり、第1測定手段で測定した鋳物砂の温度及び水分量と第2検量線とに基づいて給水量が決定されると共に、当該給水量が制御される。以上のようにして、鋳物砂の混練調整装置が稼動するまで放置されていた鋳物砂や、鋳物砂の混練調整装置を経由して得られる鋳型の型バラシ後に回収された鋳物砂は、その混練後の鋳物砂の特性値に応じて、第1検量線又は第2検量線に基づく制御部での制御によって給水量が決定され、当該給水量の水と共に混練機内で混練調整される。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明の鋳物砂の混練調整装置を用いて鋳物砂を混練調整する方法である。すなわち、請求項2に記載の発明の鋳物砂の混練調整方法は、鋳物砂を水と共に混練可能な混練機と、前記混練機に設けられ、前記混練機内における混練前の鋳物砂の温度及び水分量を測定する第1測定手段と、前記混練機内の鋳物砂に対して水を供給するための給水手段と、前記混練機内の鋳物砂に対して前記給水手段により供給する水の給水量を制御する制御装置と、前記混練機内で混練された混練後の鋳物砂の特性値を測定する第2測定手段とを備え、前記制御装置は、前記第1測定手段、前記給水手段及び前記第2測定手段にそれぞれ接続された制御部を有すると共に、鋳物砂の混練調整装置が稼動するまで放置されていた鋳物砂の温度及び水分量に基づき、前記混練機内の混練前の鋳物砂に対する前記給水量を決定するための第1検量線と、鋳物砂の混練調整装置を経由して得られる鋳型の型バラシ後に回収された鋳物砂の温度及び水分量に基づき、前記混練機内の混練前の鋳物砂に対する前記給水量を決定するための第2検量線とを有してなる鋳物砂の混練調整装置を用いて鋳物砂を混練調整する方法であって、
前記鋳物砂の混練調整装置を稼動するにあたり、前記鋳物砂の混練調整装置が稼動するまで放置されていた鋳物砂を前記混練機内に投入すると共に、前記混練機内に投入された混練前の鋳物砂の温度及び水分量を前記第1測定手段で測定し、前記第1測定手段で測定された鋳物砂の温度及び水分量と前記第1検量線とに基づいて前記制御部が前記給水量を決定すると共に、当該給水量を制御して前記給水手段から前記混練機内の鋳物砂に対して水を供給し、当該鋳物砂を前記水と共に混練機で混練した後、前記混練機内で混練された混練後の鋳物砂の特性値を前記第2測定手段で測定し、前記第2測定手段で測定された混練後の鋳物砂の特性値に応じて、当該特性値が管理範囲内にあるときには、前記制御部が前記第1検量線に基づく制御を行うことにより、前記第1測定手段で測定された鋳物砂の温度及び水分量と前記第1検量線とに基づいて前記給水量を決定すると共に、当該給水量を制御し、当該特性値が管理範囲から外れるとき、又は、当該特性値が管理範囲から連続して外れるときには、前記制御部が前記第1検量線に基づく制御から前記第2検量線に基づく制御に切り換えることにより、前記第1測定手段で測定された鋳物砂の温度及び水分量と前記第2検量線とに基づいて前記給水量を決定すると共に、当該給水量を制御し、前記第1検量線に基づく制御から前記第2検量線に基づく制御に切り換えた後の前記鋳物砂の混練調整装置の稼動中においては、前記第1測定手段で測定された鋳物砂の温度及び水分量と前記第2検量線とに基づいて前記制御部が前記給水量を決定すると共に、当該給水量を制御することをその要旨としている。
【0009】
請求項2に記載の発明によれば、鋳物砂の混練調整装置を稼動するにあたり、鋳物砂の混練調整装置が稼動するまで放置されていた鋳物砂が混練機内に投入されると共に、混練機内に投入された混練前の鋳物砂の温度及び水分量が第1測定手段で測定される。第1測定手段で測定された鋳物砂の温度及び水分量と第1検量線とに基づいて制御部により給水量が決定されると共に、当該給水量が制御されて給水手段から混練機内の鋳物砂に対して水が供給される。鋳物砂が水と共に混練機で混練された後、混練機内で混練された混練後の鋳物砂の特性値が第2測定手段で測定され、第2測定手段で測定された混練後の鋳物砂の特性値に応じ、混練機内の鋳物砂に対する給水量が制御部で決定されて制御されるようになる。この場合、混練後の鋳物砂の特性値が管理範囲内にあるときには、制御部で第1検量線に基づく制御が行われることとなり、第1測定手段で測定した鋳物砂の温度及び水分量と第1検量線とに基づいて給水量が決定されると共に、当該給水量が制御される。一方、鋳物砂の混練調整装置が稼動するまで放置されていた鋳物砂の他に、又は、鋳物砂の混練調整装置が稼動するまで放置されていた鋳物砂に変わって、鋳物砂の混練調整装置を経由して得られる鋳型の型バラシ後に回収された鋳物砂が混練機内に投入されて水と共に混練された場合には、混練後の鋳物砂の特性値が管理範囲から外れるとき、又は、混練後の鋳物砂の特性値が管理範囲から連続して外れるときがあることから、混練後の鋳物砂の特性値が管理範囲から外れたとき、又は、混練後の鋳物砂の特性値が管理範囲から連続して外れたときには、制御部で第1検量線に基づく制御から第2検量線に基づく制御に切り換えられることとなり、第1測定手段で測定した鋳物砂の温度及び水分量と第2検量線とに基づいて給水量が決定されると共に、当該給水量が制御される。そして、第1検量線に基づく制御から第2検量線に基づく制御に切り換えた後の鋳物砂の混練調整装置の稼動中においては、第1測定手段で測定された鋳物砂の温度及び水分量と第2検量線とに基づいて制御部によって給水量が決定されると共に、当該給水量が制御される。以上のようにして、鋳物砂の混練調整装置が稼動するまで放置されていた鋳物砂や、鋳物砂の混練調整装置を経由して得られる鋳型の型バラシ後に回収された鋳物砂は、その混練後の鋳物砂の特性値に応じて、第1検量線又は第2検量線に基づく制御部での制御によって給水量が決定され、当該給水量の水と共に混練機内で混練調整される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、鋳物砂の混練調整装置の稼動開始時と稼動中とに関わらず、鋳物砂を適切に混練調整できて、混練後の鋳物砂の砂特性を安定させることができる。その結果、一連の循環サイクルを通じて鋳物砂を何度も使用することができるようになるため、鋳物砂の有効利用を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に、本発明に係る鋳物砂の混練調整装置及び鋳物砂の混練調整方法について、詳細に説明することとする。図1は、本発明における鋳物砂の混練調整装置の一実施形態を示す正面図である。
【0012】
図1に示すように、鋳物砂の混練調整装置11は、鋳物砂を水と共に混練可能な混練機12と、混練機12内における混練前の鋳物砂の温度及び水分量を測定する第1測定手段13(例えば、砂温・水分測定センサ)と、混練機12内に水を供給するための給水手段14と、混練機12内の鋳物砂に対して供給する水の給水量、すなわち給水手段14の給水量を制御する制御装置15と、混練後の鋳物砂(以下、「混練砂」と言う。)の特性値〔特にCB値及び/又は抗圧力(圧縮強さ)〕を測定する第2測定手段16(例えば、砂特性値測定センサ)とを備えている。なお、鋳物砂の特性値として、CB値を用いることが好ましく、CB値及び抗圧力(圧縮強さ)を用いることがより好ましい。
【0013】
混練機12の一側部には、第1測定手段13が設けられており、混練機12の下部には、混練砂ホッパー17及び切出しフィーダー18が設けられている。そして、鋳物砂が混練機12で混練調整された混練後において、その混練砂が混練機12から混練砂ホッパー17へと排出され、混練砂ホッパー17から切出しフィーダー18へと案内されるようになっている。なお、鋳物砂を水と共に混練機12で混練して調整する際には、混練機12内の鋳物砂に対して添加剤(例えばベントナイト)を添加することが好ましい。
【0014】
制御装置15は、第1測定手段13、給水手段14及び第2測定手段16にそれぞれ接続された制御部15aを有する。また、制御装置15は、鋳物砂の混練調整装置11が稼動されるまで放置されていた鋳物砂(混練前の長時間放置されていた鋳物砂)の温度及び水分量に基づき、混練機12内の鋳物砂に対する給水量を決定するための第1検量線19と、鋳物砂の混練調整装置11を経て形成される鋳型(生型)の型バラシ後に回収された鋳物砂(回収砂)の温度及び水分量に基づき、混練機12内の鋳物砂に対する給水量を決定するための第2検量線20とを有している。なお、第1検量線19及び第2検量線20は、実際のデータに基づいて経験的に設定されている。また、第1検量線19及び第2検量線20は、それぞれ、横軸に温度(鋳物砂の温度)、縦軸に水分量(鋳物砂の必要とする水分量)の関係で表されたグラフである。
【0015】
制御部15aは、第1測定手段13、給水手段14及び第2測定手段16にそれぞれ接続されている。そして、第1測定手段13で測定された混練機12内の鋳物砂の温度及び水分量に係る情報が第1測定手段13から制御部15aに伝達され、制御部15aでは、当該情報と第1検量線19又は第2検量線20とに基づいて給水手段14から混練機12内へ供給する水の給水量を算出し(決定し)、給水手段14から混練機12内へ供給する水の給水量を制御する。また、第1検量線19に基づく制御を行っている状態において、第2測定手段16で測定された混練砂の特性値〔特にCB値及び/又は抗圧力(圧縮強さ)〕の情報が第2測定手段16から制御部15aに伝達され、制御部15aでは、当該特性値が管理範囲から外れると、第1検量線19に基づく制御から第2検量線20に基づく制御に即座に切り換えるようになっている。なお、制御部15aにおいては、当該特性値が管理範囲から連続(例えば数回〜5回)して外れたときに、第1検量線19に基づく制御から第2検量線20に基づく制御に切り換えるようにしても良い。また、特性値は、目標とする値(ネライ値)から例えば±20%の値、±10%の値、±5%の値までの管理範囲で管理されている。
【0016】
鋳物砂の混練調整装置11を稼動する前において、ホッパー21内には、(長時間)放置されていた混練前の鋳物砂が収容されている。この放置されていた鋳物砂は、鋳型(生型)の型バラシによって得られる鋳物砂(回収砂)とは、その温度及び/又は水分量や膨潤度の点で異なっている。ホッパー21の下方には、ベルトコンベア22が設けられており、ベルトコンベア22と混練機12との間には、両者を橋渡しするようにバケットコンベア23が設けられている。そして、ホッパー21から排出された混練前の鋳物砂は、ベルトコンベア22によってバケットコンベア23へ運ばれ、バケットコンベア23へ運ばれた混練前の鋳物砂は、バケットコンベア23によって下から上へ移動された後、混練機12内に投入される。その後、混練機12内に投入された鋳物砂は、水と共に混練機12で混練調整され、その混練砂は、混練機12からホッパー17及び切出しフィーダー18を介して下方へ排出されるようになっている。なお、混練砂の特性値〔特にCB値及び/抗圧力(圧縮強さ)〕を第2測定手段16で測定する場合には、後述するように、混練機12の外方で行われる。
【0017】
切出しフィーダー18の下方には、ベルトコンベア24が設けられており、ベルトコンベア24の途中には、第2測定手段16が設けられている。ベルトコンベア24上に排出された混練砂は、ベルトコンベア24によって左から右へ移動されると共に、第2測定手段16により特性値〔特にCB値及び/抗圧力(圧縮強さ)〕が測定され、当該混練砂は、ベルトコンベア24により造型機(図示略)の方へ案内されるようになっている。
【0018】
次に、鋳物砂の混練調整装置11を用いた鋳物砂の混練調整方法の一実施形態について、図1及び図2を併せ参照して以下に説明する。図2は、鋳物砂の一連の循環サイクルを示す工程図である。
【0019】
まず、鋳物砂の混練調整装置11を稼動するにあたり、ホッパー21内に(長時間)放置されていた混練前の鋳物砂を、ホッパー21の下方のベルトコンベア22へ排出した後、ベルトコンベア22によってバケットコンベア23へ運ぶ。そして、バケットコンベア23へ運んだ混練前の鋳物砂を、バケットコンベア23によって下から上へ移動させた後、混練機12内に投入する。このとき、混練機12内の混練前の鋳物砂における温度及び水分量を第1測定手段13で測定し、当該鋳物砂の温度及び水分量に係る情報と第1検量線19とに基づいて、制御装置15の制御部15aで制御を行う。すなわち、制御部15aは、鋳物砂の温度及び水分量に係る情報と第1検量線19とに基づいて、混練機12内へ供給する水の給水量(不足する水の給水量)を算出し(決定し)、当該給水量の水を給水手段14から混練機12内の鋳物砂に対して供給するように制御する。そして、図2に示したS21の砂混練工程において、混練機12内の鋳物砂を所定給水量の水と共に混練機12で混練して調整し、その混練砂を混練機12から混練ホッパー17及び切出しフィーダー18を介してベルトコンベア24上に排出する。
【0020】
その後、ベルトコンベア24上に排出した混練砂をベルトコンベア24によって左から右へ移動させて、混練砂の特性値〔特にCB値及び/又は抗圧力(圧縮強さ)〕を第2測定手段16により測定すると共に、第1検量線19に基づく制御を行っている状態で、当該特性値が管理範囲から外れていないかどうか制御部15aで判断し、当該混練砂をベルトコンベア24により造型機(図示略)の方へ案内する。このとき、混練砂の特性値が管理範囲から外れていない場合には、第1検量線19に基づく制御部15aでの制御を続けて行う。そして、図2に示したS22の造型工程において、造型機(図示略)へ案内した混練砂を造型に用いることで鋳型として形成し、図2に示したS23の注湯工程において、鋳型に溶湯を注湯する。その後、図2に示したS24の型バラシ工程において、鋳型を型バラシ機(図示略)でバラシ、図2に示したS25の砂回収工程において、型バラシによって得られる鋳物砂を回収装置25で回収する。なお、この回収した鋳物砂は、鋳型の型バラシ後に得られることから、比較的温度が高く、水分量も少なくなっている。
【0021】
次に、図2に示したS25の砂回収工程から図2に示したS21の砂混練工程に移り、鋳物砂の混練調整装置11に鋳物砂を戻す。すなわち、回収装置25で回収した鋳物砂(回収砂)をホッパー21に運び、ホッパー21からベルトコンベア22及びバケットコンベア23を介して混練機12内に投入する。回収装置25で回収した鋳物砂(回収砂)も、既述した放置されていた鋳物砂の場合と同様に、S21の砂混練工程において、混練機12によって混練する。そして、ベルトコンベア24上に排出した混練砂を、ベルトコンベア24によって左から右へ移動させて、第2測定手段16により混練砂の特性値〔特にCB値及び/又は抗圧力(圧縮強さ)〕を測定すると共に、第1検量線19に基づく制御を行っている状態で、当該特性値が管理範囲から外れていないかどうか制御部15aで判断し、当該混練砂をベルトコンベア24により造型機(図示略)の方へ案内する。このとき、測定手段16で測定した特性値〔特にCB値及び/又は抗圧力(圧縮強さ)〕が管理範囲から外れている場合には、制御部15aで第1検量線19に基づく制御から第2検量線20に基づく制御に即座に切り換える。すなわち、制御部15aは、鋳物砂の温度及び水分量に係る情報と第2検量線20とに基づいて、混練機12内へ供給する水の給水量(不足する水の給水量)を算出し(決定し)、当該給水量の水を給水手段14から混練機12内の鋳物砂に対して供給するように制御する。
【0022】
以上のように、本実施形態における鋳物砂の混練調整装置及び混練調整方法によれば、混練後の鋳物砂の特性値に応じて、制御装置15の制御部15aで第1検量線19に基づく制御から第2検量線20に基づく制御に即座に切り換えることにより、鋳物砂の混練調整装置11の稼動開始時と稼動中とに関わらず、鋳物砂の混練調整装置が稼動するまで放置されていた鋳物砂や、鋳物砂の混練調整装置を経由して得られる鋳型の型バラシ後に回収された鋳物砂を適切に混練調整できて、混練機12から排出された混練砂の砂特性を安定させることができる。換言すれば、鋳物砂の混練調整装置及び混練調整方法において、(長時間)放置されていた鋳物砂に対しては第1検量線に基づく制御をすると共に、鋳型の鋳造後の型バラシによって得られる鋳物砂(回収砂)に対しては第2検量線に基づく制御をすることで、砂特性〔特にCB値及び/又は抗圧力(圧縮強さ)〕の安定した混練砂をS22の造型工程の造型機(図示略)へ供給することができる。その結果、一連の循環サイクル(砂混練工程S21、造型工程S22、注湯工程S23、型バラシ工程S24、砂回収工程S25)を通じて鋳物砂を何度も使用することができるようになるため、鋳物砂の有効利用を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明に係る鋳物砂の混練調整装置の一実施形態を示す正面図である。
【図2】鋳物砂の一連の循環サイクルを簡略化して示す工程図である。
【符号の説明】
【0024】
11 鋳物砂の混練調整装置
12 混練機
13 第1測定手段
14 給水手段
15 制御装置
15a 制御部
16 第2測定手段
19 第1検量線
20 第2検量線
S21 砂混練(砂混練工程)
S22 造型(造型工程)
S23 注湯(注湯工程)
S24 型バラシ(型バラシ工程)
S25 砂回収(砂回収工程)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋳物砂を水と共に混練可能な混練機と、
前記混練機に設けられ、前記混練機内における混練前の鋳物砂の温度及び水分量を測定する第1測定手段と、
前記混練機内の鋳物砂に対して水を供給するための給水手段と、
前記混練機内の鋳物砂に対して前記給水手段により供給する水の給水量を制御する制御装置と、
前記混練機内で混練された混練後の鋳物砂の特性値を測定する第2測定手段と
を備えた鋳物砂の混練調整装置であって、
前記制御装置は、
前記第1測定手段、前記給水手段及び前記第2測定手段にそれぞれ接続された制御部を有すると共に、鋳物砂の混練調整装置が稼動するまで放置されていた鋳物砂の温度及び水分量に基づき、前記混練機内の混練前の鋳物砂に対する前記給水量を決定するための第1検量線と、鋳物砂の混練調整装置を経由して得られる鋳型の型バラシ後に回収された鋳物砂の温度及び水分量に基づき、前記混練機内の混練前の鋳物砂に対する前記給水量を決定するための第2検量線とを有しており、
前記制御部は、
前記第2測定手段で測定した混練後の鋳物砂の特性値に応じて、
当該特性値が管理範囲内にあるときには、前記第1検量線に基づく制御を行うことにより、前記第1測定手段で測定した鋳物砂の温度及び水分量と前記第1検量線とに基づいて前記給水量を決定すると共に、当該給水量を制御し、
当該特性値が管理範囲から外れるとき、又は、当該特性値が管理範囲から連続して外れるときには、前記第1検量線に基づく制御から前記第2検量線に基づく制御に切り換えることにより、前記第1測定手段で測定した鋳物砂の温度及び水分量と前記第2検量線とに基づいて前記給水量を決定すると共に、当該給水量を制御することを特徴とする鋳物砂の混練調整装置。
【請求項2】
鋳物砂を水と共に混練可能な混練機と、
前記混練機に設けられ、前記混練機内における混練前の鋳物砂の温度及び水分量を測定する第1測定手段と、
前記混練機内の鋳物砂に対して水を供給するための給水手段と、
前記混練機内の鋳物砂に対して前記給水手段により供給する水の給水量を制御する制御装置と、
前記混練機内で混練された混練後の鋳物砂の特性値を測定する第2測定手段と
を備え、
前記制御装置は、
前記第1測定手段、前記給水手段及び前記第2測定手段にそれぞれ接続された制御部を有すると共に、鋳物砂の混練調整装置が稼動するまで放置されていた鋳物砂の温度及び水分量に基づき、前記混練機内の混練前の鋳物砂に対する前記給水量を決定するための第1検量線と、鋳物砂の混練調整装置を経由して得られる鋳型の型バラシ後に回収された鋳物砂の温度及び水分量に基づき、前記混練機内の混練前の鋳物砂に対する前記給水量を決定するための第2検量線とを有してなる鋳物砂の混練調整装置を用いて鋳物砂を混練調整する方法であって、
前記鋳物砂の混練調整装置を稼動するにあたり、前記鋳物砂の混練調整装置が稼動するまで放置されていた鋳物砂を前記混練機内に投入すると共に、前記混練機内に投入された混練前の鋳物砂の温度及び水分量を前記第1測定手段で測定し、前記第1測定手段で測定された鋳物砂の温度及び水分量と前記第1検量線とに基づいて前記制御部が前記給水量を決定すると共に、当該給水量を制御して前記給水手段から前記混練機内の鋳物砂に対して水を供給し、当該鋳物砂を前記水と共に混練機で混練した後、前記混練機内で混練された混練後の鋳物砂の特性値を前記第2測定手段で測定し、前記第2測定手段で測定された混練後の鋳物砂の特性値に応じて、当該特性値が管理範囲内にあるときには、前記制御部が前記第1検量線に基づく制御を行うことにより、前記第1測定手段で測定された鋳物砂の温度及び水分量と前記第1検量線とに基づいて前記給水量を決定すると共に、当該給水量を制御し、当該特性値が管理範囲から外れるとき、又は、当該特性値が管理範囲から連続して外れるときには、前記制御部が前記第1検量線に基づく制御から前記第2検量線に基づく制御に切り換えることにより、前記第1測定手段で測定された鋳物砂の温度及び水分量と前記第2検量線とに基づいて前記給水量を決定すると共に、当該給水量を制御し、
前記第1検量線に基づく制御から前記第2検量線に基づく制御に切り換えた後の前記鋳物砂の混練調整装置の稼動中においては、前記第1測定手段で測定された鋳物砂の温度及び水分量と前記第2検量線とに基づいて前記制御部が前記給水量を決定すると共に、当該給水量を制御することを特徴とする鋳物砂の混練調整方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−166097(P2009−166097A)
【公開日】平成21年7月30日(2009.7.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−7804(P2008−7804)
【出願日】平成20年1月17日(2008.1.17)
【出願人】(000100805)アイシン高丘株式会社 (202)
【Fターム(参考)】