説明

鋳造用具、鋳造用具の生産方法及び精密鋳造方法

【課題】TiAl基合金で鋳造をした場合に鋳造品の表面および内部が酸化物へ変質することを抑止すると共に、TiAl基合金中の酸素濃度が高くなることを抑止する。
【解決手段】TiAl基合金の精密鋳造に用いられる鋳造用具1(10)であって、前記TiAl基合金の溶湯を貯留可能な内部空間を画定する隔壁3を備え、前記隔壁3は、セラミックスで形成された基層3aと、前記セラミックスよりも酸素との結合が強い金属酸化物で形成され、前記内部空間2(12)側において基層3aを被膜する被膜層3bと、を有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造用具、鋳造用具の生産方法及び精密鋳造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、ロストワックス法等の精密鋳造法は、機械加工の困難な材質及び複雑な形状の部品を高い寸法精度で製造することが可能である。
例えば、比強度、耐熱性及び耐食性に優れたTiAl基合金は、航空機エンジンの各種部品やタービン翼等の材質として好適であるが、一般の金属や合金に比べて硬くて脆いために機械加工が困難である。このようなTiAl基合金の加工に、上述した精密鋳造法が広く用いられている。
【0003】
このような精密鋳造法においては、鋳造用具をセラミックスで形成するのが通常であり、アルミナ、ジルコンで形成した鋳型やアルミナ、ジルコニアで形成した坩堝が多く用いられている(例えば、下記特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−50198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、TiAl基合金は、非常に活性で酸素に対する親和性が高いために、従来の技術においては、セラミックスに含まれる酸素とTiAl基合金とが反応(酸化)してしまって(換言すれば、TiAl基合金がセラミックスに含まれる酸素を奪ってしまって)、鋳造品の表面および内部が酸化物へ変質してしまう、あるいは、TiAl基合金中の酸素濃度が高くなってしまうという問題がある。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、TiAl基合金で精密鋳造をした場合に鋳造品の表面および内部が酸化物へ変質することを抑止すると共に、TiAl基合金中の酸素濃度が高くなることを抑止することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は以下の手段を採用している。
すなわち、本発明に係る鋳造用具は、TiAl基合金の精密鋳造に用いられる鋳造用具であって、前記TiAl基合金の溶湯を貯留可能な内部空間を画定する隔壁を備え、前記隔壁は、セラミックスで形成された基層と、前記セラミックスよりも酸素との結合が強い金属酸化物で形成され、前記内部空間側において前記基層を被膜する被膜層と、を有することを特徴とする。
この構成によれば、セラミックスよりも酸素との結合が強い金属酸化物で形成され、内部空間側において基層を被膜する被膜層を有するので、TiAl基合金の溶湯に対して被膜層が接触することとなる。この被膜層は、セラミックスよりも酸素との結合が強い金属酸化物で形成されているので、セラミックスで形成された基層に比べて、TiAl基合金の溶湯が反応し難くなって鋳造品の表面および内部が酸化物へ変質することを抑止すると共に、TiAl基合金の酸素濃度が高くなることを防止することができる。
【0008】
さらに、TiAl基合金の溶湯の温度を上昇させるとTiAl基合金が更に活性になるが、被膜層を有することでTiAl基合金の溶湯が反応し難くなるので、溶湯を高温に設定して湯周り性を向上させることができる。
また、隔壁全部を金属酸化物で形成する構成も考えられるが、鋳造用具用製造型にスラリを流し込んで固化させようとすると固化が完了するまでに金属酸化物が沈殿してしまうので、鋳造用具の製作が困難となる。しかしながら、本発明に係る鋳造用具は、セラミックスの基層を金属酸化物で被覆する構成であるので、隔壁全部を金属酸化物で形成する場合に比べて鋳造用具の製作を容易にすることができる。
【0009】
また、前記金属酸化物は、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム及び酸化エルビウムのうちいずれか一つであることを特徴とする。
この構成によれば、金属酸化物が酸化イットリウム、酸化イッテルビウム及び酸化エルビウムのうちいずれか一つであるので、酸素との結合がより強い金属酸化物で被膜層を形成することができる。これにより、TiAl基合金の溶湯が更に反応し難くなってTiAl基合金の酸素濃度が高くなることを十分に防止することができる。
【0010】
また、前記被膜層は、厚さが0.08mm以上0.48mm以下であることを特徴とする。
この構成によれば、被膜層の厚さが0.08mm以上かつ0.48mm未満であるので、後述するように、内部空間に溶湯を貯留した場合において被膜層が剥離するまでの耐久時間を長くすることができる。
【0011】
また、前記基層は、ジルコニアで形成されていることを特徴とする。
この構成によれば、基層がジルコニアであるので、被膜層が基層から不測に剥離した場合であっても、ジルコニアとTiAl基合金の溶湯とが接触することとなる。これにより、他のセラミックスと比べて比較的に酸素との結合が強いジルコニアが、TiAl基合金の溶湯と接触するので、TiAl基合金と基層とが反応し難くなって鋳造品の表面および内部が酸化物へ変質することを抑止すると共に、TiAl基合金の酸素濃度が高くなることを抑止することができる。
【0012】
また、本発明に係る鋳造用具の生産方法は、上記のうちいずれかに記載の鋳造用具の生産方法であって、前記金属酸化物の粉体と溶媒とを混合してスラリを製造するスラリ製造工程と、前記基層のうち前記内部空間側に前記スラリを噴霧するスラリ噴霧工程とを有することを特徴とする。
この構成によれば、スラリ製造工程とスラリ噴霧工程とを有するので、被膜層を容易に均一的かつ十分な薄さに形成することができる。
【0013】
また、前記粉体は、粒径が0.5μm以上3μm以下であることを特徴とする。
この構成によれば、粉体の粒径が0.5μm以上であるので、スラリが乾燥する際の凝集を緩和し、かつ、被膜層が柔らかくなることを抑止すると共に、TiAl基合金の溶湯に接触した際の焼結による収縮を緩和して被膜層の剥離を抑止することができる。また、粉体の粒径が3μm以下であるので、基層に対する被膜層の良好な付着性を確保することができる。
【0014】
また、前記溶媒は、水を含まない非水系溶剤であることを特徴とする。
この構成によれば、溶媒が水を含まない非水系溶剤であるので、水を含む溶媒と比べて、金属酸化物の凝集を抑止することができる。すなわち、一般に金属酸化物は水と反応して直ぐに凝集してしまうために、溶媒が水を含むとスラリ製造工程において凝集が進行してしまってスラリ噴霧工程の作業性を悪化させる恐れがある。しかしながら、溶媒に水を含まない非水系溶剤を用いることで凝集が防止されるので、スラリ噴霧工程の作業性を良好なものにすることができる。
【0015】
また、前記スラリは、アルコール系の分散剤が添加されていることを特徴とする。
この構成によれば、スラリにアルコール系の分散剤が添加されているので、金属酸化物の粉体の分散を図ることができると共に、速乾性があるためにスラリ噴霧工程後の作業性を向上させることができる。
【0016】
また、本発明に係る精密鋳造方法は、上記のうちいずれかに記載の鋳造用具を用いることを特徴とする。
この構成によれば、上記のうちいずれかの鋳造用具を用いるので、活性で酸素との親和性が高いTiAl基合金を用いて精密鋳造をした場合に鋳造品の表面および内部が酸化物へ変質することを抑止すると共に、TiAl基合金中の酸素濃度が高くなることを抑止して、所望の品質の鋳造品を得ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る鋳造用具によれば、TiAl基合金で精密鋳造をした場合に鋳造品の表面および内部が酸化物へ変質することを抑止すると共に、TiAl基合金中の酸素濃度が高くなることを抑止することができる。
また、本発明に係る鋳造用具の生産方法によれば、被膜層を均一的かつ十分な薄さに容易にすることができる。
また、本発明に係る精密鋳造方法によれば、所望の品質の鋳造品を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の実施形態に係る坩堝1の概略構成斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る鋳型10の要部断面図である。
【図3】図3は図1におけるI−I線断面図(図2における要部IIの拡大図)である。
【図4】本発明の実施形態に係る被膜層3bの厚さdと耐久時間tとの関係を示すグラフであって、被膜層3bを酸化イットリウム(Y)で形成した場合のグラフである。
【図5】本発明の実施形態に係る被膜層3bの厚さdと耐久時間tとの関係を示すグラフであって、被膜層3bを酸化イッテルビウム(Yb)で形成した場合のグラフである。
【図6】本発明の実施形態に係る被膜層3bの厚さdと耐久時間tとの関係を示すグラフであって、被膜層3bを酸化エルビウム(Er)で形成した場合のグラフである。
【図7】本発明の実施形態に係る鋳造用具の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。
(鋳造用具)
図1は本発明の実施形態に係る坩堝(鋳造用具)1の概略構成斜視図である。
図1に示すように、坩堝1は、有底円筒状に形成されており、TiAl基合金の溶湯を貯留可能な内部空間2が隔壁3によって画定されている。
【0020】
図2は本発明の実施形態に係る鋳型(鋳造用具)10の要部断面図である。
鋳型10は、直方体状に形成されており、TiAl基合金の溶湯を貯留可能である内部空間12が隔壁3によって画定されている。なお、内部空間12は、タービン翼の形状に対応して形成された形状の鋳造スペースを複数有している。
【0021】
図3は図1におけるI−I線断面図(図2における要部IIの拡大図)である。
隔壁3は、図3に示すように、セラミックスCで形成された基層3aと、金属酸化物Oで形成され、内部空間2(12)側において基層3aを被膜する被膜層3bとを有している。
被膜層3bは、その厚さdが0.08mm以上かつ0.48mm以下に形成されている。
【0022】
基層3aを形成するセラミックスCは、例えば、アルミナ(Al)やジルコニア(ZrO)を用いることができる。
また、被膜層3bを形成する金属酸化物Oは、例えば、酸化イットリウム(Y)、酸化イッテルビウム(Yb)及び酸化エルビウム(Er)のうちいずれか一つを用いることができる。
なお、坩堝1及び鋳型10の製造方法については、後に詳述する。
【0023】
ここで、セラミックスCと酸素との結合の強さ及び金属酸化物Oと酸素との結合の強さについて説明する。
TiAl基合金の溶湯の酸化メカニズムは、TiAl基合金の溶湯に含有されるTiが坩堝1のセラミックスCの酸素を奪い取る、以下の反応による。なお、以下の反応におけるMは、任意の元素を示している。
1/3M+Ti→TiO+2/3M
表1は、セラミックスC及び金属酸化物Oの上記反応での各平衡定数Kpを示したものである。表1における各平衡定数Kpは、生成自由エネルギーによる平衡計算によって求めたものであり、対数表記している。
【0024】
【表1】

【0025】
表1に示すように、セラミックスCのアルミナ(Al)やジルコニア(ZrO)に比べて、金属酸化物Oの酸化イットリウム(Y)、酸化イッテルビウム(Yb)及び酸化エルビウム(Er)は平衡定数Kpが小さい。このため、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム及び酸化エルビウムに対して、TiAl基合金の溶湯が反応し難いことがわかる。
【0026】
すなわち、上述した坩堝1及び鋳型10によれば、セラミックスCよりも酸素との結合が強い金属酸化物Oで形成され、内部空間2,12側において基層3aを被膜する被膜層3bを有するので、TiAl基合金の溶湯に対して被膜層3bが接触することとなる。この被膜層3bは、セラミックスCよりも酸素との結合が強い金属酸化物Oで形成されているので、セラミックスCで形成された基層3aに比べて、TiAl基合金の溶湯が反応し難くなってTiAl基合金の酸素濃度が高くなることを防止することができる。
【0027】
さらに、TiAl基合金の溶湯の温度を上昇させるとTiAl基合金が更に活性になるが、被膜層3bを有することでTiAl基合金の溶湯が反応し難くなるので、溶湯を高温に設定して湯周り性を向上させることができる。
また、金属酸化物Oのスラリ20は安定性が悪いために、スラリ20を型に流し込んで相当時間放置して固化させることにより、隔壁3全部(鋳造用具全部)を金属酸化物Oで形成するのは困難であるが、
また、隔壁3全部を金属酸化物Oで形成する構成も考えられるが、鋳造用具用製造型にスラリ20を流し込んで固化させようとすると固化が完了するまでに金属酸化物Oが沈殿してしまうので、坩堝及び鋳型の製作が困難となる。これに対して、坩堝1及び鋳型10によれば、セラミックスCの基層3aを金属酸化物Oで被覆する構成であるので、隔壁3全部を金属酸化物Oで形成する場合に比べて坩堝1及び鋳型10の製作を容易にすることができる。
【0028】
また、金属酸化物Oが酸化イットリウム、酸化イッテルビウム及び酸化エルビウムのうちいずれか一つであるので、酸素との結合がより強い金属酸化物Oで被膜層3bを形成することができる。これにより、TiAl基合金の溶湯が更に反応し難くなって鋳造品の表面および内部が酸化物へ変質することを抑止すると共に、TiAl基合金の酸素濃度が高くなることを十分に防止することができる。
【0029】
また、被膜層3bの厚さdが0.08mm以上かつ0.48mm以下であるので、以下の実験結果に示されるように、内部空間2,12に溶湯を貯留した場合において被膜層3bが剥離するまでの耐久時間を長くすることができる。
【0030】
図4〜図6は、被膜層3bの厚さdと耐久時間tとの関係を示すグラフであって、図4が酸化イットリウム(Y)、図5が酸化イッテルビウム(Yb)、図6が酸化エルビウム(Er)のグラフを示している。
各グラフは、被膜層3bの厚さdを0.01,0.10,0.35,0.60mmに代えた坩堝を複数用意し、TiAl基合金の溶湯(1650℃)を貯留した状態で各坩堝を炉内に放置し、その後、被膜層3bの剥離によって生じるバブリングまでの時間を耐久時間tとして測定したものである。なお、バブリングは炉が備える観察窓を介して目視で判定した。
【0031】
図4〜図6に示すように、被膜層3bの厚さdは、小さ過ぎても大き過ぎても被膜層3bの耐久時間tが短くなる。一般に、精密鋳造においては坩堝及び鋳型がTiAl基合金に接触する時間がそれぞれ30分以下となるために、被膜層3bの厚さdを0.08mm以上0.48mm以下に形成すると、坩堝及び鋳型の使用中に被膜層3bが剥離してしまうことを防止することができる。
【0032】
なお、基層3aを99%以上のジルコニアにすれば、被膜層3bが基層3aから不測に剥離した場合であっても、ジルコニアとTiAl基合金の溶湯とが接触することとなる。これにより、他のセラミックスCと比べて比較的に酸素との結合が強いジルコニアが、TiAl基合金の溶湯と接触するので(表1参照)、TiAl基合金と基層3aとが反応し難くなって鋳造品の表面および内部が酸化物へ変質することを抑止すると共に、TiAl基合金の酸素濃度が高くなることを抑止することができる。
また、高純度のジルコニアを用いることで更にTiAl基合金と基層3aとが反応することを抑制することができる。さらに、ジルコニアに5%以上の酸化イットリウム(Y)、酸化イッテルビウム(Yb)あるいは酸化エルビウム(Er)を添加した場合も同様の効果が得られる。
【0033】
このような坩堝1及び鋳型10を用いることにより、活性で酸素との親和性が高いTiAl基合金を用いて精密鋳造をした場合に鋳造品の表面および内部が酸化物へ変質することを抑止すると共に、TiAl基合金中の酸素濃度が高くなることを抑止して、所望の品質の鋳造品を得ることができる。
【0034】
(鋳造用具の製造方法)
続いて、本発明に係る鋳造用具の製造方法について説明する。
図7は、本発明に係る鋳造用具の製造方法を説明する図である。
本発明に係る鋳造用具の製造方法は、金属酸化物Oの粉体と溶媒とを混合してスラリ20を製造し(スラリ製造工程)、製造したスラリ20を隔壁3の基層3aのうち内部空間2,12側にスラリ20を噴霧して(スラリ噴霧工程)、坩堝1及び鋳型10を得るものである。
【0035】
スラリ製造工程においては、金属酸化物Oの粉体として粒径が0.5μm以上3μm以下のものを用いると共に、溶媒として水を含まない非水系溶剤のものを用いている。さらに、スラリ20は、アルコール系の分散剤が添加されている。この際、溶媒に水を含まない非水系溶剤を用いているために、金属酸化物Oと溶媒とが反応することなく凝集をすることがない。
【0036】
スラリ噴霧工程においては、図7に示すように、スプレーガンGを用いてスラリ20を噴霧している。すなわち、基層3aのみで隔壁(3)が構成された坩堝1に対して、基層3aのうち内部空間2側にスラリ20を噴霧する。
同様に、基層3aのみで隔壁(3)が構成された鋳型10に対して、基層3aのうち内部空間12側にスラリ20を噴霧する。
【0037】
そして、基層3aに噴霧したスラリ20を乾燥させて坩堝1及び鋳型10を得る。
この乾燥の際、分散剤成分が速やかに揮発する。また、金属酸化物Oの粉体の粒径が0.5μm以上であるので、スラリ20が乾燥する際の凝集が緩和され、かつ、被膜層3bが適度な硬さに維持される。
また、粉体の粒径が3μm以下となっているために、基層3aに対して被膜層3bが良好に付着する。
【0038】
すなわち、上述した鋳造用具の製造方法によれば、スラリ製造工程と、スラリ噴霧工程とを有するので、被膜層3bを均一的かつ十分な薄さに容易にすることができる。
この際、スラリ20にアルコール系の分散剤が添加されているので、スラリ20における金属酸化物Oの粉体の分散が良好に維持された状態で、スラリ20を噴霧することができる。
【0039】
また、粉体の粒径が0.5μm以上であるので、スラリ20が乾燥する際の凝集を緩和し、かつ、被膜層3bが柔らかくなることを抑止すると共に、溶湯に接触した際の焼結による収縮を緩和して被膜層3bの剥離を抑止することができる。また、粉体の粒径が3μm以下であるので、基層3aに対する良好な付着性を確保することができる。
【0040】
また、溶媒が水を含まない非水系溶剤であるので、溶媒が水を含まない非水系溶剤であるので、水を含む溶媒と比べて、金属酸化物Oの凝集を抑止することができる。すなわち、一般に金属酸化物Oは水と反応して直ぐに凝集してしまうために、溶媒が水を含むとスラリ製造工程において凝集が進行してしまってスラリ噴霧工程の作業性を悪化させる恐れがあるが、溶媒に水を含まない非水系溶剤を用いることで凝集を抑止するので、スラリ噴霧工程の作業性を良好なものにすることができる。
【0041】
また、スラリ20にアルコール系の分散剤が添加されているので、スラリ20にアルコール系の分散剤が添加されているので、金属酸化物Oの粉体の分散を図ることができると共に、速乾性があるためにスラリ噴霧工程後の作業性を向上させることができる。
【0042】
なお、上述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上述した実施形態においては、鋳型10の内部空間12がタービン翼の鋳造スペースを有する構成としたが、他の部品であってもよい。
また、坩堝1と鋳型10とは必ずしもセットで用いる必要はなく、単独で用いてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…坩堝
2,12…内部空間
3…隔壁
3a…基層
3b…被覆層
3b…被膜層
10…鋳型
20…スラリ
C…セラミックス
G…スプレーガン
O…金属酸化物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
TiAl基合金の精密鋳造に用いられる鋳造用具であって、
前記TiAl基合金の溶湯を貯留可能な内部空間を画定する隔壁を備え、
前記隔壁は、セラミックスで形成された基層と、
前記セラミックスよりも酸素との結合が強い金属酸化物で形成され、前記内部空間側において前記基層を被膜する被膜層と、
を有することを特徴とする鋳造用具。
【請求項2】
前記金属酸化物は、酸化イットリウム、酸化イッテルビウム及び酸化エルビウムのうちいずれか一つであることを特徴とする請求項1に記載の鋳造用具。
【請求項3】
前記被膜層は、厚さが0.08mm以上0.48mm以下であることを特徴とする請求項1又は2に記載の鋳造用具。
【請求項4】
前記基層は、ジルコニアで形成されていることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか一項に記載の鋳造用具。
【請求項5】
請求項1から4のうちいずれか一項に記載の鋳造用具の生産方法であって、
前記金属酸化物の粉体と溶媒とを混合してスラリを製造するスラリ製造工程と、
前記基層のうち前記内部空間側に前記スラリを噴霧するスラリ噴霧工程とを有することを特徴とする鋳造用具の生産方法。
【請求項6】
前記粉体は、粒径が0.5μm以上3μm以下であることを特徴とする請求項5に記載の鋳造用具の生産方法。
【請求項7】
前記溶媒は、水を含まない非水系溶剤であることを特徴とする請求項5又は6に記載の鋳造用具の生産方法。
【請求項8】
前記スラリは、アルコール系の分散剤が添加されていることを特徴とする請求項5から7のうちいずれか一項に記載の鋳造用具の生産方法。
【請求項9】
請求項1から3のうちいずれか一項に記載の鋳造用具を用いることを特徴とする精密鋳造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−255398(P2011−255398A)
【公開日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−131899(P2010−131899)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】